JP5194351B2 - バイポーラ電池 - Google Patents

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Description

本発明は、容量バランスを自動的にとることができる放電回路を内蔵したバイポーラ電池、組電池及びそれらの電池を搭載した車両に関する。
バイポーラ電池は、下記特許文献1にも記載されているように、複数のバイポーラ電極を積層して構成した電池であり、薄型、軽量で放熱性が良好であるなど、種々の優れた特性を備えている。
バイポーラ電池を車両の動力源として使用する場合には、信頼性と安定性が要求される。バイポーラ電池を構成する複数の単電池(バイポーラ電極間で1つの単電池が形成される)がそれぞれ同一の充電量でない場合には、要求されている出力性能および容量性能を発揮できない。したがって、単電池それぞれの容量は常に均一にしておく必要がある。そのため、単電池ごとに電圧検出線(単電池の電圧を検出するために用いられる)及びバイパス線(単電池をバイパスするために用いられる)を接続し、その電圧接続線から検出される電圧に応じてバイパス線の接続を制御しそれぞれの単電池の充放電を個別に制御できるようにしている。
特開2000−195495号公報
ところが、電圧検出線とバイパス線は、バイポーラ電極間に設けられた集電体の各々から引き出さなければならないためその引き出しに工数がかかるのと、外装材のシール部分の密閉性を確保しなければならないという点においてその省略が望まれていた。
本発明は、以上のような従来の技術の問題点を解消するために成されたものであり、電圧検出線やバイパス線を用いることなく、容量バランスを自動的にとることができる放電回路が内蔵されたバイポーラ電池、組電池及びそれらの電池を搭載した車両の提供を目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係るバイポーラ電池は、集電体の一方の面には正極層が形成されその他方の面には負極層が形成されたバイポーラ電極と、当該バイポーラ電極相互間でイオン交換を行う電解質層とを交互に複数積層してなるバイポーラ電池において、前記正極層または負極層、または前記電解質層の内の少なくとも1つの層の同一平面内に、隣接する前記バイポーラ電極同士を電気的に導通させる放電回路が形成され、前記放電回路は、ツェナーダイオード層と定電流回路とを含み、前記放電回路は発光層を含み、前記定電流回路と前記発光層とは直列に配置されていることを特徴とする。
本発明に係るバイポーラ電池においては、放電回路がバイポーラ電極の正極層または負極層、または電解質層の内の少なくとも1つの層の同一平面内に形成されているので、電圧検出線及びバイパス線を外部に引き出すことなく、単電池それぞれの電圧に基づいて最適な容量バランスを自動的にとることができる。
以上のように構成された本発明に係るバイポーラ電池によれば、集電体の正極層または負極層、または電解質層の内の少なくとも1つの層の同一平面内に、隣接するバイポーラ電極同士を電気的に導通させる放電回路を形成したので、電圧検出線及びバイパス線をバイポーラ電池外に引き出さなくとも、各単電池の容量バランスを自動的にとることができるようになり、製造工数の低減及びバイポーラ電池の信頼性の向上を図ることができる。
以下に、本発明に係るバイポーラ電池、組電池及びそれらの電池を搭載した車両の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態で引用する図面では、バイポーラ電池を構成する各層の厚みや形状を誇張して描いているが、これは発明の内容の理解を容易にするために行っているものであり、実際のバイポーラ電池の各層の厚みや形状と整合しているものではない。
図1は本実施の形態に係るバイポーラ電池の外観図である。バイポーラ電池100は、図に示すように長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ120A、負極タブ120Bが引き出されている。発電要素160はバイポーラ電池100の外装材(たとえばラミネートフィルム)180によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素160は正極タブ120A及び負極タブ120Bを引き出した状態で密封されている。
図2及び図3はバイポーラ電池100内部の概略構成図、図4〜図9はバイポーラ電池100に内蔵される放電回路の説明に供する図である。本実施の形態に係るバイポーラ電池100は、インクジェットプリンタを用いて画像を印刷するのと同様に、複数のノズルからそれぞれの層の形成に必要な材料を選択的に吐出させ、1層ずつ絵を描くようにして下の層から順番に層を形成していくことによって作成したものである。また、バイポーラ電池100は放電回路を有しているが、この放電回路もインクジェット方式で描かれる。
図2はバイポーラ電池100の内部構造を説明するための分解斜視図である。この図では、説明の便宜上各層を分解しているが、本実施の形態では上記のようにインクジェット方式で層を下から上に順番に描いていくので、実際には層を分解することはできない。
本実施の形態においては、発電要素160を、インクジェットプリンタ方式で層ごとに所定の付着パターンを重ね塗りすることによって形成する。つまり、本実施の形態では図2に示すように基材200に第1層目から第5層目に示す付着パターンをインクジェットプリンタでカラー画像を形成するときのように順番に重ね塗りして単電池150を形成し、この単電池150を繰り返し7回積層させるように形成して図3に示すような発電要素160を形成している。
以下それぞれの層の形成に必要な材料を説明する。
1.正極インクの作製:正極活物質212の形成に用いる
正極活物質としてLiMn(85wt%)、導電助剤としてアセチレンブラック(5wt%)、バインダーとしてPVdF(10wt%)を準備した。スラリー粘度調整溶媒としてNMPを用いて、インクの粘度を調節した。
正極層は、活物質と、必要に応じて導電助剤、バインダー、電解質等を混合して構成される層である。活物質は、本実施形態においては特に制限されない。正極活物質としては、LiMnなどのLi−Mn系複合酸化物やLiNiOなどのLi−Ni系複合酸化物、LiCoOなどのLi−Co系複合酸化物、Li−FePOなどのリン酸鉄系複合酸化物などが挙げられる。なかでも、導電性に優れるという観点から、Li−Ni系複合酸化物が好ましい。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。また、ここではLi電池の材料を挙げたが、炭素を使用してキャパシタとして使用しても良い。また、水電解質の電池材料、例えばニッケル水酸化物や鉛酸化物、硫酸鉛等を用いても良い。
導電助剤は、カーボンブラック、グラファイト粉末等の炭素材料、金、白金等、導電性が高く、電気分解されにくい材料を用いている。バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン等が挙げられる。電解質はイオン伝導性ポリマーと支持電解質の混合物である。イオン伝導性ポリマーは、特に制限されない。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。なお、活物質層に含まれるイオン伝導性ポリマーは、本発明の電極が採用される電池の電解質層において電解質として用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。支持電解質としては、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSON)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
2.負極インクの作製:負極活物質202の形成に用いる
負極活物質としてハードカーボン(90wt%)、バインダーとしてPVdF(10wt%)を準備した。スラリー粘度調整溶媒としてNMPを用いて、インクの粘度を調節した。
負極層は、活物質と必要に応じて導電助剤、バインダー、電解質を混合して構成される層である。負極活物質としては、結晶性炭素材や非結晶炭素材等の炭素材料が挙げられる。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛系炭素材料、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。なかでも、電池制御の観点から、ハードカーボンが好ましい。キャパシタの場合は炭素材料、水電解質電池では水素吸蔵合金、カドミウム水酸化物、硫酸鉛等を用いても良い。
3.電解質インクの作製:イオン伝導材208の形成に用いる
電解液としてPC−EC 1MLiBETI(90wt%)、ホストポリマーとしてHFPコポリマーを10%含むPVdF−HFP(10wt%)を準備した。スラリー粘度調整溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)を用いて、インクの粘度を調節した。
電解質層は、液体、ゲル、固体のいずれの相であってもよい。電池が破損した際の安全性や液絡の防止を考慮すると、電解質層は、ゲルポリマー電解質層、または全固体電解質層であることが好ましい。電解質としてゲルポリマー電解質層を用いることで、電解質の流動性がなくなり、集電体への電解質の流出をおさえ、各層間のイオン伝導性を遮断することが可能になる。ゲル電解質のホストポリマーとしては、PEO、PPO、PVdF、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、PAN、PMA、PMMAなどがあげられる。イオン伝導性を確保するために支持塩が含まれることが好ましい。電池がリチウム二次電池である場合には、支持塩としては、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。PEO、PPOのようなポリアルキレンオキシド系高分子は、前述の通り、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SOなどのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
4.導電材インクの作製:導電材200、204、204A、214等の形成に用いる。
導電性粒子としてカーボン粒子であるグラファイト(平均粒径0.8m;90wt%)、バインダーとしてPVdF(10wt%)を準備し、粘度調整溶媒としてNMPを用い、導電性粒子を含む集電体インクを調製した。
導電材は導電性を具えておればよく、本実施形態に限定されない。例えばカーボン粒子ではなく、アルミニウム粒子、SUS粒子、銀粒子、金粒子、銅粒子、チタン粒子などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。合金粒子が用いられてもよい。バインダーとしても、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはこれらの混合物である。さらに導電材は電子導電性の高い高分子材料(導電性ポリマー)を用いて、必ずしも導電性粒子を含む必要はない。導電性ポリマーとしてはポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物が挙げられる。
5.絶縁材インクの作製:絶縁材206の形成に用いる
ホストポリマーとしてHFPコポリマーを10%含むPVdF−HFP(100wt%)を準備した。スラリー粘度調整溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)を用いて、インクの粘度を調節した。
絶縁材は導電性を具えていなければよく、本実施形態に限定されない。例えば電解質層の形成に用いた高分子材料が好適に利用できる。PEO、PPO、PVdF、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、PAN、PMA、PMMAなどがあげられる。
6.放電回路インクの作製:放電回路210の形成に用いる
これについては後述する。
7.正極タブ120A、負極タブ120B
AL板を用いる。電流を取り出すためには低抵抗であることが望ましく、100μm程度の厚さを具えることが好ましい。
8.製造装置
インクジェット方式によるインクの塗布は、以下の手順により行った。なお、インクの溶媒により、インクジェットプリンタのインク導入部分にあるプラスチック部品が溶解する問題を防止するため、インク導入部分にある部品を金属製の部品と交換し、インク溜から直接金属部品にインクを供給させた。また、インク中の活物質が沈殿することを防止するため、インク溜りを常に回転翼を用いて攪拌した。インクジェットプリンタは、市販のコンピューターおよびソフトウェアによって制御された。インクの塗布は、コンピューター上で作成したパターンを、インクジェットプリンタを用いて印刷することによって作製された。
図2に示す基材としての導電材200上には、図示してあるとおり、その中央部分に負極活物質202を印刷すると共に、その一部に導電材204、その外周部分に絶縁材206を印刷する。導電材200のどの部分に負極活物質202、導電材204A、絶縁材206などの材料を印刷するのかといった付着パターンは層ごとにあらかじめ設定しておき、材料の噴射を制御するプリンタはこの付着パターンに応じて導電材や絶縁材をそれぞれの領域において選択的に噴射する。
第1層目の印刷が終了すると、第2層目の印刷が開始される。第1層の上には、その中央部分にリチウムイオンの交換を行う電解質層としてのイオン伝導材208を印刷すると共に、その一部に導電材204B、204C、その外周部分に絶縁材206を印刷する。本実施の形態では、第2層の同一平面内に導電材204B及び204Cに挟まれるように放電回路210を形成している。放電回路210は単電池150の電圧に応じてオン、オフするものである。放電回路210の構造などは図4以降の図面に基づいて後で説明する。
第2層目の印刷が終了すると、第3層目の印刷が開始される。第2層の上には、その中央部分にバイポーラ電極の正極層を形成する正極活物質212を印刷すると共に、その一部に導電材204D、その外周部分に絶縁材206を印刷する。
第3層目の印刷が終了すると第4層目の印刷が開始される。第3層の上にはその全面に集電体となる導電材214を印刷する。
第4層目の印刷が終了すると第5層目の印刷が開始される。第4層の上には第5層目の印刷が行われるが、第5層目の印刷は上記の第1層目の印刷と同一である。つまり、第4層の上には、その中央部分にバイポーラ電極の負極層を形成する負極活物質202を印刷すると共に、その一部に導電材204A、その外周部分に絶縁材206を印刷する。
なお、導電材200と第4層の導電材214およびその間の層が単電池150となり、第3層から第5層がバイポーラ電極220となる。
上記のような印刷を合計7回繰り返し行って、図2に示すような発電要素160が形成される。発電要素160の最下層の基材である導電材200は負極タブ120Bに接続され、その最上層の基材である導電材200は正極タブ120Aに接続される。発電要素160は単電池150が7個直列に接続されたものとなるので、正極タブ120Aと負極タブ120Bとの間には単電池150の7倍の電圧が現れる。
上記のように形成された発電要素160の各単電池150には放電回路210が設けられることになる。放電回路210は積層方向に隣接するバイポーラ電極220同士を電気的に導通させる機能を有している。このように、放電回路210を発電要素160に内蔵させることによって、単電池150の電圧を検出するための電圧検出線および単電池150をバイパスさせるためのバイパス線をバイポーラ電池100の内部から外部に引き出す必要がなくなり、外装材180のシール性が向上して信頼性が向上する。もちろん、電圧検出線およびバイパス線を設けなくて済む分部品点数が削減されて、組立工数の低減と製造コストの低減を図ることができる。さらに、各電圧検出線および各バイパス線をバイポーラ電池100の内外において絶縁する処理も不要となるので、内部短絡などの故障の恐れがなくなり、絶縁性の確保の面でも信頼性が向上する。さらには、バイポーラ電池100の外部に放電回路群(容量バランス調整回路)を別体で設ける必要もなくなるので、バイポーラ電池100の設置面積の縮小化を図ることもできる。
なお、本実施の形態では放電回路210をイオン伝導材208が印刷される層と同一の平面に設けたが、負極活物質202又は正極活物質212が印刷される層と同一の平面に設けても良い。もしくは複数の層にまたがって形成されてもよい。
放電回路210は、放電電圧の閾値を形成する機能を有し、単電池150の電圧がその閾値以上の電圧に達していれば単電池150の+側と−側とを導通状態にして積極的に放電させ、一方単電池150の電圧がその閾値に達していなければ積極的な放電は行わないというように機能する。なお単電池150の電圧は相互に導通する導電材204A〜204Dを介して検出される。したがって、放電回路210には、図4に示すように、放電電圧の閾値を形成するためのツェナーダイオード231および232が設けられている。具体的には、放電電圧の閾値は3.6Vから4.1Vの間に設定される。放電回路210には、導通状態になっているときには導通状態になっていないときの100倍以上の電流が流れる。放電電圧の閾値をこのような範囲に設定するのは、充電状態の高い単電池を電圧で判断し、動作電圧範囲を3.0〜4.2Vとすると、フルに充放電を行う電気自動車の場合は4.1V以上の電圧を有する単電池を放電させて電圧を揃えることができるし。中間の充電状態しか使わないハイブリッド自動車の場合、3.6V以上の電池を放電させて電圧を揃えることができるからである。
また、放電回路210は、単電池150を放電させる時に流れる電流で発光する発光素子233および234を備え、この発光素子233および234の近傍にはその発光に感応する光センサ503が設けられている。発光素子233および234は流れる電流が大きすぎると壊れてしまうので、放電回路210には定電流回路235および236が設けてある。本実施の形態では定電流回路を形成する素子としてMOSFET、JFET、MSSFETなどの素子を使用している。
バイポーラ電極220、イオン導電材208、放電回路210及び光センサは外装材としてのラミネートフィルム(光反射性の)180で覆われて密封され、図1に示したように、正極タブ120A、負極タブ120B及電圧検出線140を引き出した状態でラミネートフィルム180の外周部分が熱融着される。放電回路210に設けられている発光素子233および234が発光すれば、すなわち、単電池がツェナーダイオードの降伏電圧以上の場合と、逆充電されてツェナーダイオードの順方向電圧以下の負の電圧になった場合に、その光はラミネートフィルム内で反射して光センサで検出され、外部で異常を検知し、たとえば電池の充放電を停止することができる。したがって、光センサ503の設置場所はラミネートフィルム内で発光素子233および234の発光が検知可能な場所であればよい。なお、光センサからの信号で発電要素160を構成する単電池150のいずれかが過電圧状態であることがわかる。
なお、本実施の形態では、光センサが設けられ、発光素子233および234を備えた放電回路210を例示して説明するが、光センサを設けずまた発光素子を備えていない放電回路とすることも可能である。
図4に示したような放電回路210は、図2に示したようにイオン導電材208が印刷されたイオン導電層と同一平面内に形成されているが、この放電回路210もやはり印刷技術を用いて形成する。放電回路210の具体的な層構造を図5に示す。なお、印刷技術には様々なものが存在するが、本実施の形態ではインクジェット方式を用いて形成している。
放電回路は、アセン系、チオフェン系、フェニレン系、ビニレン系、金属置換フタロシアニン、PEDOT、TCNQ、PTCDA、NTCDA、PTCDI、NTCDI、C60およびC70、Alq3、Ir(ppy)3、BCP、TPD、NPD等の有機半導体層と、ITO等の酸化物、アルミ、マグネシウム、金、銀等の金属を含むダイオードやトランジスタにより構成され、有機半導体層を用いて放電回路を形成することにより、薄く、小さい放電回路の形成を実現することができる。また、この放電回路411は、有機半導体と金属とを積層して成るショットキダイオードと有機発光ダイオード層を含んで構成することが好ましく、ショットキダイオード層で放電回路411を構成することにより、より単純な構成となり、低コスト化を実現することができる。
ショットキダイオードは、例えば、金の上に半導体層としてアセン系材料であるペンタセンを形成し、さらにその上に銀またはアルミを形成して積層した。ここで半導体層とアルミ、銀の接合がショットキー接合になっていれば材料はこれに限るものではない。
有機発光ダイオードは、例えば、金の上にTPD、NPD等の正孔輸送材料、次にAlq3、Ir(ppy)3等の発光材料、次にBCP等の電子伝導材料、アルミ、銀などの金属の順で積層した。金と正孔輸送材料の間で正孔注入が出来、アルミとBCPの間で電子注入が行われている。発光材料層まで電子と正孔が注入されれば発光材料で光が生成するので、材料の組み合わせはこれらに限らない。
トランジスタは、ソース電極である金の上に半導体層としてアセン系材料であるペンタセン、ゲート電極として網状のアルミ、銀などの金属、ペンタセン、ドレイン電極の金の順で積層した。トランジスタは、ショットキー接合のゲート電極、ペンタセンの接合にかかる電圧で、ペンタセン中の空亡層の領域を変化させて二つの金電極間の抵抗を変化させる、SIT構造を例示した。ソース、ドレイン電極でオーミック接合、ゲート電極でショットキー接合が出来るSIT構造であれば、材料は特にこれらに限らない。また、MOSFET構造、JFET構造、バイポーラトランジスタ構造などを構成しても良い。
図5に示すように、導電材260の上に負極材料261、絶縁材料262、正孔伝導材料263、電子伝導材料264を所定のパターンにしたがって噴射し、正孔伝導材料263、電子伝導材料264の厚みが確保できたら、正孔伝導材料263、電子伝導材料264の上にEL(エレクトロルミネセンス)材料265を噴射する。EL材料265の厚みが確保できたら、今度は電解質266、絶縁材料262、電子伝導材料264、正孔伝導材料263を所定のパターンにしたがって噴射する。電子伝導材料264、正孔伝導材料263の厚みが確保できたら、電子伝導材料264、正孔伝導材料263の上に導電材料267を噴射する。導電材料267の厚みが確保できたら、導電材料267の上にP型半導体268を噴射する。P型半導体268が所定の厚みになる前に、電解質266の厚みが確保できたら電解質266に代えて正極材料269を噴射する。P型半導体268が所定の厚みになったら、P型半導体268の上にN型半導体270と金属(図中四角で囲まれている部分)を所定のパターンに従って噴射する。そして最後に導電材260を噴射して放電回路を形成する。
図5において、正孔伝導材料263、EL材料265、電子伝導材料264の積層体で構成されるものが発光層すなわち発光素子(発光ダイオード)233または234であり、P型半導体268とN型半導体270とでツェナーダイオード層、すなわちツェナーダイオード231または232が形成される。N型半導体270内にP型半導体268が形成されている部分は定電流回路235又は236である。なお、ツェナーダイオード231又は232のN型半導体層にP型半導体層、又は金属層が縞状に形成されるが、金属層は外部でP型半導体層と接続される。
放電回路210とバイポーラ電極150との接触面積は、バイポーラ電極150の電池容量1Ahに対して0.06mm以上とするのが好ましい。このように、電池容量に対して接触面積が決まるのは次のような理由からである。たとえば、1ヶ月で自己放電により50%放電してしまう電池は1Ah当り0.7mAが自然に放電されていることになる。この場合には、1ヶ月の放置に耐えられないので電池の交換が必要となる。自己放電の3倍の速度で電圧バランスを回復しようとすると、放電回路210での電圧バランス機能の下限放電電流を自己放電電流の3倍の2mAとする必要がある。半導体のPN接合の許容発熱量は1mm当り約120mwである。電池電圧を3.5Vとすると、電池1Ah当り約0.06平方ミリメートルの放電回路面積が必要となる。
このように、実使用条件で十分な放電電流を確保し、放電回路部分の発熱量を最適なものとすれば、放電回路210の面積を小さくできる。
放電回路210を構成する異常電圧検出回路及び電圧バランス回路並びにそれらの放電特性が図6及び図7に示されている。異常電圧検出回路の特性は、単電池150の電圧があらかじめ設定されている放電電圧の閾値以上の電圧であれば(電池の異常電圧)その電圧値に応じて電流が増加する特性を持っている。一方、放電電圧の閾値未満の電圧であれば、ほとんど電流は流れない(許容暗電流)という特性を持っている。閾値以上の電圧であると発光素子233、234に大きな電流が流れるので発光する。発光素子233、234に流れる電流は抵抗器240の抵抗値で規制されるが、その電流が発光素子233、234の許容電流を超えないように定電流回路236が設けられている(図4参照)。なお発光素子の近傍には光センサが設置され、この光センサで放電電圧の閾値の範囲を逸脱したことを電位変換により外部に伝達する為の光絶縁通信の最小の手段が構成される。
電圧バランス回路の特性は、単電池150の電圧があらかじめ設定されている放電電圧の閾値以上の電圧であれば(電池の異常電圧)閾値を越えないようにツェナーダイオード231に電流が流れるという特性を持っている。ツェナーダイオード231及び232におけるPN接合の降伏電圧を放電電圧の閾値の設定と同一にすべく、ドーピング濃度は1017〜1018 cm −3 の範囲に、また空亡層の厚みは0.1μm〜1.0μmの範囲としている。図8に示してあるように、半導体のPN接合の降伏電圧は、ドーピング濃度と空亡層厚みで決定される。したがって、図から必要なドーピング濃度と厚みを決定することができる。ツェナーダイオード231及び232の特性を最適なものとすれば、放電回路210の暗電流を抑え、長期放置時における電池の過放電を回避でき、信頼性の高い電池の供給が可能となる。
本実施の形態では、ツェナーダイオード231及び232を、導電材料267の上にP型半導体268、さらにその上にN型半導体270層を積層してPN接合を形成し、ドーピング濃度の低いパンチスルー領域をPN接合部に0.5μm以下で設けることにより、降伏電圧をパンチスルー領域の厚みで制御するようにした。これにより、ダイオードの降伏電圧まで電池がゆっくりと放電され、降伏電圧が高精度で揃う為、直列電池の電圧が揃い、電池の本来もっている容量をより多く使用することができることになる。ドーピング濃度の低い領域を作成せずにP型、N型層のドーピング濃度を調整することで降伏電圧を制御することもできるようになる。
図9には、放電回路210の他の形態を示したが、図5と異なるのは、定電流回路を構成することになる部分の層構造だけである。すなわち、導電材料267の上に、P型半導体層にN型半導体層、又は金属層を縞状に形成する層を積層し、さらにその層の上にP型半導体271を積層し、さらにその上にN型半導体を積層している点のみが異なる。
放電回路210をこのような層構造としても上述したような異常電圧検出回路及び電圧バランス回路としての機能を持たせることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、各単電池間に放電回路が挟み込まれるようにして形成されているので、電圧検出線及びバイパス線をバイポーラ電池外に引き出さなくとも、各単電池の容量バランスを自動的にとることができるようになり、製造工数の低減及びバイポーラ電池の信頼性の向上を図ることができることになる。
次に発光素子233、234を用いる場合の好適な実施形態を説明する。特に本実施形態では電極の形成を、インクジェット工法を特に用いておらず、通常の方法で作製された集電箔260の両面に正極層269、負極層261が塗布済みの電極の外周部に前述のインクジェット工法により電極の両面に各々定電流回路(ツェナーダイオード231及び232を含む)235、236、発光素子233、234を形成している。隣接する定電流回路と発光素子との電気的接続は後述するように導電性の接着材を用いて行う。
図10に示すように発光素子は電極260の側面に細長く形成することが好ましい。発光素子は電池の面と垂直な方向に光を多く放出するが、光の取出し口は電池の側面端部である。よって、側面より遠い位置からの光は途中で吸収されてしまうため、発光素子を電池の側面から遠くにおいては光を取出しにくい。発光素子は電池側面に細長く作成することが望ましい。本実施形態では長さは10mm以下で、電池全体の面積の1%以下とすることが望ましい。
次に図11に発光素子233、234周辺部の詳細を説明する。ここで、導電性接着シール剤501としては、導電性粒子を含んだ高分子材料であって、本実施形態では反射層を形成するために金属の導電性粒子を含んだものが好ましい。シール剤502は導電性のない高分子材料で構成されており透明である。
図12は図11のA面の断面図である。
図11、図12の実施形態によれば、発光素子233、234に対して導電性接着シール剤501、シール剤502の両者が接合しているので、シール剤502を介して発光素子233、234の光を電池側面に導くことができる。さらに導電性シール剤501を電解質層近傍で広げることで、導電性シール剤501が反射板の役割を果たし、より好適に光を電池側面に導くことができる。また発光素子233、234を接続する導電性接着剤の層の抵抗値を、発光素子233、234の抵抗として活用する。電池は10V程度まで電圧が上昇することがあり、発光素子233、234は1A/cmまで耐えるため、抵抗値は10Ω/cm以上が望ましい。
以上説明してきたバイポーラ電池は、複数、直列に又は並列に接続して組電池モジュール250(図13参照)を形成し、この組電池モジュール250をさらに複数、直列に又は並列に接続して組電池300を形成することもできる。図13は、組電池300の平面図(図A)、正面図(図B)、側面図(図C)を示しているが、作成した組電池モジュール250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、組電池モジュール250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個のバイポーラ電池110を接続して組電池モジュール250を作成するか、また、何段の組電池モジュール250を積層して組電池300を作成するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
このように、組電池モジュール250を複数直並列接続されてなる組電池300は、高容量、高出力を得ることができ、一つ一つの組電池モジュール250の信頼性が高いことから、組電池300としての長期的な信頼性の維持が可能である。また一部の組電池モジュール250が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能になる。
組電池300の場合、多数のバイポーラ電池100が直列接続されているので、一つのバイポーラ電池100の微小短絡などによる自己放電が加速すると充電状態のバランスが崩れてしまう。最悪の場合、充電状態0%のバイポーラ電池と100%のバイポーラ電池とが直列に接続されている状態であれば、片方のバイポーラ電池が過充電、放電すれば片方のバイポーラ電池が過放電になる為、電流を流せなくなる。本発明に係るバイポーラ電池はその内部に放電回路を備えているので、バイポーラ電池ごとに充放電容量のバランスが自動的にとられており、組電池としての信頼性と耐久性を向上させることができる。また、外部に容量を調整するための装置が不要になるので、組電池の小型化を図ることもできる。
組電池300を、電気自動車400に搭載するには、図14に示したように、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。さらに、組電池コントローラ401により、光センサ503の受光中は容量調整中であると判断して、出力を制限することで組電池の寿命を延ばすことができる。
なお、本発明では、組電池300だけではなく、使用用途によっては、組電池モジュール250のみを搭載するようにしてもよいし、これら組電池300と組電池モジュール250を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明の組電池または組電池モジュールを搭載することのできる車両としては、上記の電気自動車やハイブリッドカーが好ましいが、これらに制限されるものではない。
本発明によれば、電圧検出線及びバイパス線を外部に引き出すことなく、単電池それぞれの電圧に基づいて最適な容量バランスを自動的に確保することができるので、バイポーラ電池の量産化と信頼性向上に大いに役立つ。
本実施形態に係るバイポーラ電池の外観図である。 バイポーラ電池内部の概略構成図である。 バイポーラ電池内部の概略構成図である。 バイポーラ電池に内蔵される放電回路の説明に供する図である。 バイポーラ電池に内蔵される放電回路の説明に供する図である。 バイポーラ電池に内蔵される放電回路の説明に供する図である。 バイポーラ電池に内蔵される放電回路の説明に供する図である。 バイポーラ電池に内蔵される放電回路の説明に供する図である。 バイポーラ電池に内蔵される放電回路の説明に供する図である。 バイポーラ電池に内蔵される発光素子の説明に供する図である。 バイポーラ電池に内蔵される発光素子の説明に供する図である。 バイポーラ電池に内蔵される発光素子の説明に供する図である。 組電池の概略構成図である。 組電池が車両に搭載された状態を示す図である。
符号の説明
100 バイポーラ電池、
120A 正極タブ、
120B 負極タブ、
150 単電池、
160 発電要素、
180 ラミネートフィルム、
200 導電材、
202 負極活物質、
204A〜204D 導電材、
206 絶縁材、
208 イオン伝導材、
210 放電回路、
212 正極活物質、
214 導電材、
220 バイポーラ電極、
231、232 ツェナーダイオード、
233、234 発光素子、
235、236 定電流回路、
250 組電池モジュール、
261 負極材料、
262 絶縁材料、
263 正孔伝導材料、
264 電子伝導材料、
265 EL材料、
266 電解質、
267 導電材料、
268 P型半導体、
269 正極材料、
270 N型半導体、
271 P型半導体、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車、
401 組電池コントローラ、
501 導電性シール剤、
502 シール剤、
503 光センサ。

Claims (7)

  1. 集電体の一方の面には正極層が形成されその他方の面には負極層が形成されたバイポーラ電極と、当該バイポーラ電極相互間でイオン交換を行う電解質層とを交互に複数積層してなるバイポーラ電池において、
    前記正極層または負極層、または前記電解質層の内の少なくとも1つの層の同一平面内に、隣接する前記バイポーラ電極同士を電気的に導通させる放電回路が形成され、
    前記放電回路は、ツェナーダイオード層と定電流回路とを含み、
    前記放電回路は発光層を含み、前記定電流回路と前記発光層とは直列に配置されていることを特徴とするバイポーラ電池。
  2. 前記放電回路の近傍には前記発光層からの光に感応する光センサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池。
  3. 前記発光層と前記電池の端部との間に導光層を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のバイポーラ電池。
  4. 前記放電回路の前記バイポーラ電極との接触面積は、当該バイポーラ電池の電池容量1Ahに対して0.06mm 以上とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバイポーラ電池。
  5. 前記放電回路における放電電圧の閾値は3.6Vから4.1Vの間に設定され、前記放電回路が有するPN接合の降伏電圧を当該閾値の設定と同一にすべく、ドーピング濃度は10 17 〜10 18 cm −3 の範囲に、また空乏層の厚みは0.1μm〜1.0μmの範囲としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバイポーラ電池。
  6. 前記バイポーラ電極、前記電解質層及び前記放電回路は、外装材によって覆われ密封されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバイポーラ電池。
  7. 前記バイポーラ電極、前記電解質層及び前記放電回路並びに光センサは、外装材によって覆われ密封されていることを特徴とする請求項に記載のバイポーラ電池。
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