JP5193927B2 - 耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法 - Google Patents

耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法に関し、特に、自動車のボデーやシャシー、あるいはそれらの部品等に使用されるプラズマテーラードブランク材において、板厚の異なる鋼板同士の突合せ部にギャップが存在する場合であっても、薄い鋼板側で溶落ちが生じるのを防止して、鋼板間で良好な架橋性を実現し、異厚鋼板同士を安定して溶接することが可能な、耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法に関するものである。
近年、自動車分野においては、低燃費化や炭酸ガス(CO)排出量削減の他、搭乗者の安全性を確保する衝突安全性の向上を目的として、ボデーやシャシー等にテーラードブランク材を採用するニーズが高まっている。テーラードブランク材とは、目的に応じて、複数の鋼板の端面を溶接によって接合したプレス用素材である。このようなテーラードブランク材を用いることにより、一つの部品の中で板厚や強度を自由に変化させることができるようになるため、部品の機能性を向上させ、また、部品点数の削減も可能となる。
一方、テーラードブランク材を製造する際、鋼板同士を溶接する方法としては、一般に、レーザ溶接やマッシュシーム溶接、プラズマ溶接等の方法が適宜選択されて用いられている(例えば、非特許文献1、2を参照)。これらの溶接方法の内、鋼板の突合せ端部のギャップが大きい場合や、低コストでテーラードブランク材を製造する場合には、主としてプラズマ溶接が用いられる。なぜなら、レーザ溶接の場合には、ビーム径が0.5mm程度と小さいために熱の影響範囲が小さく、その結果、鋼板間のギャップが大きい場合には安定した溶接が困難になるからである。これに対し、プラズマ溶接の場合には、熱の影響範囲が大きいため、幅広い範囲を溶融させることが可能となり、その結果、大きなギャップが存在しても安定した溶接が可能となる。
しかしながら、非特許文献1、2に記載の方法により、プラズマ溶接を用いてテーラードブランク材を製造する際、接合する各鋼板同士の板厚比が高い場合には、以下に説明するような問題が生じる。
まず、テーラードブランク材を製造する場合には、各鋼板の突合せ端部に一定のギャップが存在した状態で溶接を行なうことになる。特に、高強度鋼板を用いた場合には、切断加工時の寸法精度が低下するため、ギャップの拡大が顕著になる。このような場合には、各鋼板の突合せ端部をバランス良く溶融させ、各突合せ端部の間に溶融池を安定して形成させ、各鋼板同士を架橋させることが必要となる。しかしながら、テーラードブランク材の生産性向上のために、例えば、1.0〜3.0m/分程度の高速でプラズマ溶接する場合には、電流を増加させる必要性が生じる。ここで、溶接の際の入熱は、次式{入熱(H)=60×電圧(V)×電流(I)/溶接速度(v)}で表されるが、溶接速度(v)の増加に伴って電流(I)を増加させた場合、これに伴ってアーク力も増加する。板厚の異なる鋼板同士を突き合わせてプラズマ溶接する場合には、両者を均等に溶融させる必要性があるため、薄い鋼板に対しては過大入熱となるが、鋼板間にギャップが存在した状態で高速プラズマ溶接を行うと、主に薄い鋼板側に熱が手中し、また、増加したアーク力によって溶融金属が下方に押し出される。このため、薄い鋼板側の溶融部で溶落ちが発生し、板厚の異なる鋼板同士を架橋性良く溶接することが困難となる。
上述のように、ギャップが存在する状態で板厚の異なる鋼板同士をプラズマ溶接する際に、溶接部における溶落ちを防止し、架橋性良く鋼板同士を溶接する方法としては、例えば、プラズマトーチを厚い鋼板側に移動することにより、加熱の中心を厚い鋼板側に移動させて溶接を行なう方法が知られている。しかしながら、このような方法を用いた場合でも、特に、一方の鋼板の板厚が非常に薄い場合には、薄い鋼板側で溶落ちが起こり、架橋性良く溶接することが困難であるという問題がある。
また、ギャップが存在する状態で板厚の異なる鋼板同士をプラズマ溶接する際、ギャップ間にフィラーワイヤを配してプラズマ溶接を行なうことにより、鋼板同士の架橋性を向上させることも考えられる。しかしながら、この方法では、ギャップを埋める役割を担うフィラーワイヤも溶融させる必要性が生じるため、溶接速度の低下を招き、また、溶接条件によっては溶接金属部に凝固割れが生じるという問題があった。
宮崎康信、他3名,「テーラードブランク材の溶接と成形」,新日鐵技報,2003年,第378号 宮崎康信、他2名,「テーラードブランクの溶接技術」,新日鐵技報,2006年,第385号
上述のように、板厚の異なる鋼板同士をプラズマ溶接してテーラードブランク材を製造する際、鋼板間の突合せ端部にギャップが存在すると、薄い鋼板側で溶落ちが生じ易くなり、鋼板同士を架橋性良く溶接することが困難になる。また、架橋した部分の溶接金属量が十分でないと、静的引張強さや疲労強度が低下する。従って、従来は、自動車分野において、板厚比が大きい鋼板同士を接合したプラズマテーラードブランク材を使用するのが困難であったため、低燃費化や炭酸ガス(CO)排出量削減を目的とした車体軽量化や衝突安全性向上等の効果を十分に享受することが難しいという問題があった。このため、板厚の異なる鋼板同士の間にギャップが存在する状態でプラズマ溶接してテーラードブランク材を製造する場合であっても、架橋性に優れるとともに高い静的引張強さ及び疲労強度を備えるプラズマテーラードブランク材を製造する方法が強く求められていた。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、板厚の異なる鋼板同士をプラズマテーラードブランク溶接で接合する際に、アークが安定するとともに溶接時のスパッタ発生量が抑制され、溶接時に溶落ちが生じるのを防止して鋼板同士を良好に架橋させることができ、静的引張強さと疲労強度に優れる信頼性の高い溶接継手が、実操業に適した良好な溶接作業性で得られる、耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等が上記問題を解決するために鋭意研究したところ、板厚の異なる鋼板同士をプラズマ溶接してテーラードブランク材を製造する際、溶接線上における溶接始端部から溶接終端部までの間の溶接速度を適性化することにより、溶接継手における溶落ちが生じるのを抑制できることを発見した。これにより、プラズマの照射位置を細かく設定したり、架橋性の高いフィラーワイヤを用いたりすることなく、また、溶込み量の制御のための特殊な電源を用いることもなく、通常のプラズマ電源やプラズマトーチを用いて溶接を行なった場合でも、板厚が異なる鋼板同士の溶接において、溶落ちが起こることなく架橋性に優れ、接合部において優れた静的引張強さや疲労強度が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板と、該一方の鋼板との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板とを突き合わせ、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板の各々の突合せ端部の間のギャップを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法であって、前記各々の突合せ端部の溶接線上において、溶接始端部に溶融池を形成するとともに、該溶融池のプール幅が0.5mmに達するまでの溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲とし、前記溶融池のプール幅が0.5mmを超えた後、前記溶接線上の溶接終端部までの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接することを特徴とする耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
[2] 板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板と、該一方の鋼板との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板とを突き合わせ、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板の各々の突合せ端部の間のギャップを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法であって、
前記各々の突合せ端部の溶接線上において、溶接始端部から溶接長が30mmまでの間の溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲として溶融池を形成し、その後の溶接長が30mmまでの間の溶接速度を1.2〜1.5m/分の範囲とし、その後、溶接終端部までの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接することを特徴とする耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
[3] 前記プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴン、又は、アルゴンに7vol%以下の水素ガスが添加されたガスを用いることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
[4] 前記プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴンガスを用いるとともに、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板が、引張強さ590MPa以上の高強度鋼板であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
本発明の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法によれば、溶接線上における溶接始端部から溶接終端部までの間の溶接速度を所定の条件に規定してプラズマ溶接を行なうことにより、軽量化並びに衝突安全性向上に資するプラズマテーラードブランク材を得るにあたり、良好な溶接作業性を確保しつつ、各鋼板の間にギャップが存在する状態において、板厚の異なる鋼板同士を良好に溶接することが可能となる。従って、本発明の製造方法で得られる異厚鋼板プラズマテーラードブランク材を自動車分野に適用することで、高強度鋼板の適用による衝突安全性向上や、軽量化による低燃費化、炭酸ガス(CO)排出量削減のメリット等を十分に享受することができ、その社会的な貢献は計り知れない。
本発明に係る耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法の一例を模式的に説明する断面図である。 本発明に係る耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法の一例を模式的に説明する平面図である。
以下、本発明の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材(以下、プラズマテーラードブランク材と略称することがある)の製造方法の実施形態について、図1(a)、(b)及び図2を参照しながら説明する。なお、本実施形態は、本発明の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
上述したように、自動車分野においては、低燃費化や炭酸ガス(CO)排出量削減を目的とする車体の軽量化や、搭乗者の安全性を確保する衝突安全性向上の観点から、車体や車体部品等にテーラードブランク材を採用するニーズが高まっている。また、鋼板同士の間に大きなギャップが存在する状態で溶接してテーラードブランク材を製造する場合には、主としてプラズマ溶接が用いられている。
本発明は、上記ニーズに対し、溶接線上における溶接始端部から溶接終端部までの間の溶接速度を所定の条件とした上でプラズマ溶接を行なう方法とすることにより、静的引張強さと疲労強度に優れ、架橋性が良好で高い接合強度を備えるプラズマテーラードブランク材が、良好な溶接作業性で得られるものである。
[第1の実施形態]
本発明の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の第1の実施形態について、以下に詳述する。
本実施形態のプラズマテーラードブランク材10の製造方法は、板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板1と、該一方の鋼板1との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板2とを突き合わせ、一方の鋼板1及び他方の鋼板2の各々の突合せ端部11、21の間のギャップCを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう方法であり、各々の突合せ端部11、21の溶接線L上において、溶接始端部11a、21aに溶融池4を形成するとともに、該溶融池4のプール幅Wが0.5mmに達するまでの溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲とし、溶融池4のプール幅Wが0.5mmを超えた後、溶接線L上の溶接終端部11b、21bまでの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接する方法である。
本実施形態の製造方法で溶接継手3を形成することにより、板厚や鋼板特性の異なる各鋼板1、2を用いて、図2に示すようなプラズマテーラードブランク材10を製造することができる。
本実施形態の製造方法について、各鋼板1、2の突合せ端部11、21をプラズマ溶接して溶接継手3を形成し、例えば、自動車の車体や車体部品に用いることが可能なプラズマテーラードブランク材10を得る場合を例に、以下に説明する。
図1(a)、(b)及び図2に示すように、本実施形態の製造方法においては、まず、例えば、板厚が0.6〜1.0mmの範囲にある薄い一方の鋼板1と、一方の鋼板1に対する板厚比が1.3〜2.7の範囲である厚い他方の鋼板2を準備する。一般に、自動車分野等において用いられるテーラードブランク材の最大寸法は、平面視において、1800mm×500〜600mm程度とされている。従って、図2に示す各鋼板1、2としては、例えば、長手方向(図2において上下方向)の寸法が1800mmとされ、横長方向の寸法が600mmのものを使用している。
次に、図2に示すように、一方の鋼板1及び他方の鋼板2の各々の突合せ端部11、21を突き合わせる。この際、各々の突合せ端部11、21の間のギャップCを、0.10〜0.35mmの範囲に調整しながら、各鋼板1、2を固定する。
次いで、図1(a)に示すように、プラズマトーチ5を用いて、突合せ端部11、21の溶接始端部11a、21aの位置をプラズマアーク20によって溶融させることで、この部分に溶融池4を形成する。そして、プラズマトーチ5を、溶接線L、即ち、各々の突合せ端部11、21の長手方向に沿って移動させながら、溶接線L上にプラズマアーク20を照射する。
ここで、上記プラズマ溶接におけるプラズマトーチ5の移動速度、即ち、溶接速度は、まず、溶融池4のプール幅Wが0.5mmに達するまでの速度を、0.4〜0.6m/分の範囲とする。そして、溶融池4のプール幅Wが0.5mmを超えた後、溶接線L上の溶接終端部11b、21bまでの間における最終速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接する。
上記手順により、一方の鋼板1と他方の鋼板2とを接合する溶接継手3を製造することができるとともに、上記各鋼板1、2が溶接継手3によって接合されてなるプラズマテーラードブランク材10が得られる。
本発明に係るプラズマテーラードブランク材の製造方法は、上述のようなプラズマテーラードブランク溶接において、鋼板の仕様と溶接条件を以下に説明するような適正範囲に限定することにより、良好な溶接作業性を確保しつつ、板厚の異なる鋼板同士を優れた架橋性で溶接することが可能になるという方法である。
以下、本発明で規定する条件について詳述する。
『鋼板』
本発明における被接合物である鋼板に関し、特に、板厚の異なる各鋼板1、2同士を、プラズマ溶接で溶接継手3を形成することによって接合する際の各種条件について説明する。
「鋼種」
本発明に係るプラズマテーラードブランク材の製造方法で用いる一方の鋼板1並びに他方の鋼板2としては、その成分組成や金属組織については何ら限定されず、固溶強化型(例えば、C−Mn強化型、P添加型)、析出強化型(例えば、Ti析出型、Nb析出型)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織、あるいはフェライト中にその両方を含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(微細なフェライトが主体の組織)等、いずれの型の鋼板であっても良い。また、鋼板1、2の強度についても特に限定する必要はなく、本発明のプラズマテーラードブランク材の製造方法を適用することにより、鋼板1、2の特性を損なうことなく、優れた引張強さと疲労強度を有する溶接継手3を形成することができる。
また、本発明の製造方法の適用は、同種鋼板の組合せに限定されるものではなく、各規定を満たす鋼板の接合であれば、異種異厚の組合せで行なうことも可能である。
「めっき」
本発明で用いられる各鋼板1、2の表層に施されためっき層の種類としては、Zn系、Zn−Fe系、Zn−Ni系、Zn−Al系、Zn−Mg系、Pb−Sn系、Sn−Zn系、Al−Si系、等、何れのものであっても良く、特に限定されるものではない。また、めっき層の表層に無機系、有機系の皮膜(例えば、潤滑皮膜等)が施されていても良い。これらのめっき層の目付量は、特に限定されないが、鋼板1、2の両面で100g/100g/m以下であることが好ましい。
「一方の鋼板の板厚:0.6〜1.0mm」
本発明では、非接合物である各鋼板1、2の内の一方、即ち、板厚が薄い一方の鋼板1の板厚を0.6〜1.0mmの範囲に規定する。板厚の薄い、一方の鋼板1の板厚が0.6mm未満だと、一方の鋼板1における溶落ちが生じ易くなる。
なお、一方の鋼板の板厚が1.0mmを超える場合には、如何なる溶接方法並びに溶接条件を採用した場合であっても、一方の鋼板の溶落ちが生じ難くなるので、本発明の製造方法を必ずしも適用するものでは無い。
「一方の鋼板と他方の鋼板の板厚比:1.3〜2.7」
本発明では、上記板厚の範囲で薄い一方の鋼板1と、これよりも厚く構成される他方の鋼板2の板厚比を1.3〜2.7の範囲に規定する。一方の鋼板と他方の鋼板の板厚比が1.3未満の場合には、各鋼板の板厚がほぼ同寸のレベルとなり、如何なる溶接方法並びに溶接条件を採用した場合であっても溶落ちが生じ難くなるので、本発明の製造方法を必ずしも適用する必要性は無い。一方、板厚比が2.7を超えた場合には、如何なる溶接方法並びに溶接条件を採用した場合であっても、鋼板の溶落ちが生じてしまう。
「各鋼板の突合せ端部の間のギャップ」
本発明では、上記テーラードブランクプラズマ溶接によって各鋼板1、2を接合する際の、各々の突合せ端部11、21の間のギャップCは、0.10〜0.35mmの範囲であることが好ましい。また、本発明で説明する上記のギャップCは、溶接始端部11a、21aから溶接終端部11b、21bまでの溶接線L上において、0.10〜0.35mmの範囲であれば、如何なる態様で変化する場合も含むものである。
各々の突合せ端部の間のギャップが0.35mmを超えると、如何なる溶接方法並びに溶接条件を採用した場合であっても、鋼板の溶落ちが生じてしまう。また、一般に、各鋼板の突合せ端部間のギャップが0.10mm未満である場合には、如何なる溶接方法並びに溶接条件を採用した場合であっても溶落ちが生じ難くなるので、本発明の製造方法を必ずしも適用するものでは無い。
なお、上述したように、異なる厚さの鋼板を用いてプラズマテーラードブランク溶接を行なう場合各鋼板1、2の突合せ端部11、21の間の少なくとも一部に、加工誤差等に起因する一定のギャップが存在する状態で溶接を行なうことになる。このような各鋼板1、2間のギャップは、最大で0.35mm程度であることが一般に知られているため、本発明においては、各々の突合せ端部11、21の間のギャップCの最大値を0.35mmに規定している。
なお、一般に、プラズマテーラードブランク溶接において、プラズマトーチ5によるプラズマアーク20の焦点の位置精度は、薄板である一方の鋼板1、及び、厚板である他方の鋼板2の何れにおいても、各々の突合せ端部11、21から鋼板面内方向で0.5mmの範囲である。
『異厚鋼板プラズマテーラードブランク溶接(プラズマ溶接)』
本発明において用いられるプラズマ溶接とは、図1(a)、(b)に示す例のようなプラズマトーチ5を用いて、高温のプラズマ気流を、鋼板1、2において溶接継手3を形成する突合せ端部11、21に吹き付けて熱伝導型の溶接を行なう方法である。図1(a)、(b)に示す例のプラズマトーチ5は、図示略のタングステン電極から発生するプラズマを、水冷された拘束ノズルの熱ピンチ効果によって収束させることにより、熱源として、エネルギー密度の高いプラズマアーク20を照射するものである。
プラズマ溶接は、プラズマトーチ5において図示略のタングステン電極が露出しないため、ティグ溶接と比べて電極交換頻度が低く、溶接工程の自動化等に適した方法である。また、プラズマ溶接は、レーザ溶接に比べて溶接ビードが太くなり、未塗装状態においては外観が劣ることがあるものの、溶接装置が非常に安価であるという特徴がある。
ここで、本発明において説明するプラズマテーラードブランク溶接とは、上述のようなプラズマ溶接方法を用いて、複数の鋼板1、2で溶接継手3を形成させて各鋼板を繋ぎ合せる方法であり、これによってテーラードブランク材10を仕立て上げることができる(上記非特許文献1、2も参照)。また、本発明は、プラズマテーラードブランク溶接を行なうにあたり、それぞれ板厚が異なる鋼板1、2をプラズマ溶接することにより、異厚鋼板が組み合わされた溶接継手3を形成する方法である。
以下、本発明に係る製造方法により、プラズマテーラードブランク溶接を行なって溶接継手3を形成し、異厚鋼板(鋼板1、2)同士を接合する際の各条件について詳述する。ここで、本発明で採用するプラズマテーラードブランク溶接の手順そのものは、上記非特許文献1、2等に記載の従来のプラズマテーラードブランク溶接と同様であるが、本発明では、板厚の異なる各鋼板1、2同士を架橋性良く接合するため、溶接を行う際の条件を下記条件とする。
「シールドガス」
本発明に係るプラズマテーラードブランク材の製造方法では、プラズマ溶接を行なう際、プラズマアーク20の安定性向上や溶接継手における酸化防止等を目的としてシールドガスが必要となる。このような、プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴン、又は、アルゴンに7vol%以下の水素ガスが添加されたガスを用いることが好ましい。このような組成とされたシールドガスを用いることにより、溶落ちが起こらず、架橋性の良い溶接が可能となる。また、水素ガスが添加されることによって、溶接時の溶込みがより得られ易くなり、プラズマトーチ5に印加する電流が低い場合であっても、溶接の高速化が可能となる。しかしながら、シールドガスに添加される水素ガスが7vol%を超えると、溶落ちが生じ易くなる。なお、シールドガスに添加される水素ガスが2vol%未満だと、水素ガスを含有させることで得られる上記効果が発現し難くなるので、アルゴンに水素を添加する場合には、2vol%以上で添加することが好ましい。
なお、例えば、各鋼板1、2として、母材の引張強さが590MPa以上の高強度鋼板を使用する場合、水素を含有するシールドガスを用いてプラズマ溶接すると、溶接継手に水素脆化が生じる恐れがある。このため、各鋼板1、2に引張強さが590MPa以上の高強度鋼板を用いる場合には、プラズマ溶接に用いるシールドガスとして、水素を含有しないアルゴンガスを用いることが好ましい。
また、シールドガスとして水素を含有しないアルゴンガスを用いた場合、溶落ちは生じ難いものの、溶接時の十分な溶込みを得るためには、プラズマトーチ5に印加する電流値を高めに設定する必要がある。
「溶接速度」
本実施形態の製造方法では、プラズマ溶接によって各鋼板1、2の突合せ端部11、21をプラズマ溶接して溶接継手3を形成する際、各々の突合せ端部11、21の溶接線L上において、溶接始端部11a、21aに溶融池4を形成させるとともに、該溶融池4のプール幅Wが0.5mmに達するまでの溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲に規定する。また、本実施形態では、上記プラズマ溶接処理によって溶融池4のプール幅Wが0.5mmを超えた後、溶接線L上の溶接終端部11b、21bまでの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接を行なう。
溶接池4のプール幅Wが0.5mmとなるまでの溶接速度が0.4m/分未満だと溶接効率が低下し、また、0.6m/分を超えると溶落ちが生じる恐れがある。
また、溶接池4のプール幅Wが0.5mmを超えた後の最終溶接速度が2.0m/分未満だと、溶落ちは生じ難いものの、溶接効率が低いという問題がある。また、最終溶接速度が3.0m/を超えると、プラズマアーク20の安定性が低下し、また、アーク力も増加して、溶落ちが生じる恐れがある。
本実施形態では、溶接池4のプール幅Wが0.5mmとなるまでの溶接速度を低い速度とすることにより、まず、安定した溶接池4を形成する。そして、溶接池4のプール幅Wが0.5mmに達して安定した後、溶接速度を漸増させてゆき、溶接終端部11b、21bに至るまでの最終溶接速度を高い速度とすることにより、高い溶接効率で生産性良く溶接継手3を形成することが可能となる。
本実施形態の製造方法によれば、溶接速度を上記のように速度を変化させることにより、板厚の異なる各鋼板1、2をプラズマテーラードブランク溶接する場合であっても、アークが安定するとともにスパッタ発生量が抑制され、溶接継手3において溶落ちが生じるのを防止できる。これにより、プラズマアーク20の照射位置を詳細に設定したり、架橋性の高いフィラーワイヤを用いたりすることなく、また、溶込み量の制御のための特殊な電源を用いることなく従来公知のプラズマ電源並びにプラズマトーチを用いた場合でも、板厚が異なる各鋼板1、2間を良好に架橋性させることができる。従って、静的引張強さと疲労強度に優れる信頼性の高い溶接継手3を、良好な溶接作業性で形成することが可能となる。
[第2の実施形態]
本発明の対ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法の第2の実施形態について、以下に説明する。
なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同じ図面を参照してその構成を説明するとともに、共通する構成については同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
本実施形態のプラズマテーラードブランク材の製造方法は、まず、各々の突合せ端部11、21の溶接線L上において、溶接始端部11a、21aから溶接長Dが30mmまでの間の溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲として溶融池4を形成し、その後の溶接長Eが30mmまでの間の溶接速度を1.2〜1.5m/分の範囲とし、その後、溶接終端部11b、21bまでの間の溶接長Fにおける最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接を行う点で、上記第1の実施形態の製造方法とは異なる。
本実施形態では、上述のように、プラズマ溶接の初期段階、即ち、溶接始端部11a、21aから溶接長Dが30mmまでの間の溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲とし、このような低い溶接速度で溶融池4を形成させることが好ましい。この溶接長D=30mmにおける溶接速度が0.4m/分未満だと溶接効率が低下し、また、0.6m/分を超えると溶落ちが生じる恐れがある。
また、上記条件で溶接長D=30mmの溶接を行なった後の、溶接長E=30mmにおける溶接速度は、1.2〜1.5m/分の範囲とすることが好ましい。この溶接長E=30mmにおける溶接速度が1.2m/分未満だと溶接効率が低下し、また、1.5m/分を超えると溶落ちが生じる恐れがある。
さらに、上記条件で溶接長E=30mmの溶接を行なった後、溶接終端部11b、21bまでの間の溶接線L上における溶接長Fの範囲で、溶接速度を漸増させながら、最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲としてプラズマ溶接を行なうことが好ましい。この際の最終溶接速度が2.0m/分未満だと、溶落ちは生じ難いものの、溶接効率が低いという問題がある。また、最終溶接速度が3.0m/を超えると、プラズマアーク20の安定性が低下し、また、アーク力が増加して、溶落ちが生じる恐れがある。
本実施形態では、まず、プラズマ溶接の初期段階における溶接速度を低い速度とすることにより、安定した溶接池4を形成する。そして、その後、溶接線L上における中間部の溶接速度を1.2〜1.5m/分の範囲とし、その後、溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲の最終溶接速度まで漸増させることで、溶接終端部11b、21bに至るまでの最終溶接速度を高い速度としている。これにより、高い溶接効率で生産性良く溶接継手3を形成することができ、耐ギャップ性に非常に優れたプラズマテーラードブランク材10を製造することが可能となる。
以上説明したような、本発明の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材10の製造方法によれば、溶接線上における溶接始端部から溶接終端部までの間の溶接速度を所定の条件に規定してプラズマ溶接を行なうことにより、軽量化並びに衝突安全性向上に資するプラズマテーラードブランク材10を得るにあたり、良好な溶接作業性を確保しつつ、各鋼板1、2の間にギャップCが存在する状態において、板厚の異なる鋼板1、2同士を良好に溶接することが可能となる。従って、本発明の製造方法で得られる異厚鋼板プラズマテーラードブランク材を自動車分野に適用することで、高強度鋼板を適用することによる安全性向上や、軽量化による低燃費化、炭酸ガス(CO)排出量削減のメリット等を十分に享受することができ、その社会的な貢献は計り知れない。
以下、本発明に係る耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
[実施例1]
実施例1においては、まず、下記表1に示すような特性を備えるとともに、種々の板厚(下記表2及び表3も参照)である、引張強さが270MPa級並びに590MPa級の冷延鋼板(鋼種記号:CR)、熱延鋼板(鋼種記号:HR)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(鋼種記号:GA)を準備した。
次いで、これらの各鋼板から、幅100mm、長さ300mmの試験片を切り出し、図1(a)、(b)に示すように、2枚の鋼板を下記表2及び表3に示す組合せで突き合わせ、また、下記表2及び表3に示すプラズマ溶接条件で、各々の突合せ端部の間をプラズマ溶接して溶接継手を形成した。これにより、板厚の異なる2枚の鋼板が溶接されてなるプラズマテーラードブランク材を製造し、試験サンプルとした。
ここで、上記プラズマ溶接を行なう工程において、プラズマアークの安定性を目視で観察した。また、溶接中に発生した溶接金属のスパッタ発生量についても、目視で観察した。そして、上記手順で得られた各試験サンプルについて、溶接継手の外観の目視観察を行い、溶落ちの有無を確認するとともに、溶接ビードが鋼板の裏側まで形成されているかどうかを評価した。そして、上記各々の評価結果について、合格を「○」印、不合格を「×」印で下記表2及び表3に示した。
Figure 0005193927
Figure 0005193927
Figure 0005193927
表2は、本発明で規定する条件の範囲内で板厚の異なる鋼板同士をプラズマ溶接し、溶接継手を形成することでプラズマテーラードブランク材を製造した本発明例の一覧であり、表3は、本発明の範囲外の条件でプラズマテーラードブランク材を製造した比較例の一覧である。
表2に示すように、本発明例(条件No.1〜33)においては、何れの条件でも溶落ちが発生せず、また、プラズマアークの安定性、スパッタ発生量、鋼板裏側への溶接ビード形成の何れの評価も「○」となり、溶接作業性が良好であるとともに、板厚の異なる鋼板同士を良好に溶接できることが確認された。
これに対し、表3に示すように、溶接線上における溶接始端部から溶接終端部までの間において、本発明で規定するような溶接速度を段階的に変化させる方法を採用せず、従来公知である通常の条件でプラズマ溶接を行なった比較例(条件No.34〜57)では、全てのサンプルにおいて溶落ちが発生し、この評価が不合格「×」となった。
また、一方の鋼板の板厚が本発明の範囲外とされた比較例(条件No.58〜63)においても、全てのサンプルにおいて溶落ちが発生し、この評価が不合格「×」となった。
また、一方の鋼板と他方の鋼板との板厚比が本発明で規定する条件の範囲外とされた比較例(条件No.64)においても溶落ちが発生し、この評価が不合格「×」となった。
また、溶接始端部からの溶接初期の速度あるいは最終溶接速度が本発明で規定する範囲外とされた比較例(条件No.65〜70)でも、全てのサンプルにおいて溶落ちが発生するとともに、鋼板の裏側に溶接ビードが形成されず、これらの評価が不合格「×」となった。
なお、プラズマ溶接に用いるシールドガスとして、アルゴンに8vol%の水素が添加されたガスを用いた試験例(条件No.71〜73)においては、各鋼板間のギャップや溶接速度については本発明で規定する条件を満たしているものの、シールドガス中の水素ガスが過剰なため、溶接直後にエリクセン試験をすると、シールドガスとしてArを用いた場合に比べ、エリクセン値が70〜80%の値を示したり、溶接後や溶接後のプレスで割れが生じたりする等の問題が生じた。
[実施例2]
実施例2においては、各鋼板同士をプラズマ溶接して溶接継手を形成する際の溶接速度を下記表4に示す条件とした点を除き、実施例1と同様の鋼板を用い、同様の方法により、板厚の異なる2枚の鋼板が溶接されてなるプラズマテーラードブランク材を製造し、試験サンプルとした。
そして、実施例1と同様の方法で、プラズマアークの安定性、溶接金属のスパッタ発生量、溶落ちの有無、及び、溶接ビードの鋼板裏側までの形成の有無を評価し、各々の評価結果について、合格を「○」印、不合格を「×」印で下記表4に示した。
Figure 0005193927
表4に示すように、本発明で規定する条件の範囲内で板厚の異なる鋼板同士をプラズマ溶接し、溶接継手を製造した本発明例(条件No.74〜No.97)においては、これらの何れの条件でも溶落ちが発生しなかった。また、本発明例においては、プラズマアークの安定性、スパッタ発生量、鋼板裏側への溶接ビード形成の何れの評価も「○」となり、溶接作業性が良好であるとともに、板厚の異なる鋼板同士を良好に溶接できることが確認された。
これに対し、表4に示すように、溶接線上における溶接始端部から溶接終端部までの間において、本発明で規定する条件の範囲外の溶接速度で、この速度を段階的に変化させてプラズマ溶接を行なった比較例(条件No.98〜106)では、全てのサンプルにおいて溶落ちが発生し、この評価並びに裏側ビード形成の有無の評価が全て不合格「×」となった。
上述のように、厚さの異なる鋼板同士をプラズマ溶接する際の条件が、本発明で規定する溶接条件の範囲外とされた比較例においては、溶落ちの有無、プラズマアークの安定性、スパッタ発生量、鋼板裏側への溶接ビード形成の内の何れかの評価が「×」となり、各鋼板間を良好に溶接することができなかった。
以上説明した実施例の結果より、本発明の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法を適用することにより、板厚の異なる鋼板同士をプラズマ溶接する場合でも、溶接継手における溶落ちが生じるのを防止して鋼板同士を良好に架橋させることができることが明らかである。
本発明は、例えば、自動車分野におけるボデー部品やシャシー部品、衝突安全対策用補強部品のみならず、引張強さや疲労強度が要求され、且つ、軽量化が必要とされる部品を製造する場合に適用することができる。これにより、車体全体の軽量化による低燃費化や炭酸ガス(CO)排出量削減、並びに衝突安全性向上等のメリットを十分に享受することができ、その社会的貢献は計り知れない。
1…一方の鋼板(鋼板)、2…他方の鋼板(鋼板)、11、21…突合せ端部、11a、21a…溶接始端部、11b、21b…溶接終端部、3…溶接継手、4…溶融池、5…プラズマトーチ、10…プラズマテーラードブランク材(異厚鋼板プラズマテーラードブランク材)、20…プラズマアーク(アーク)、C…ギャップ、L…溶接線、W…プール幅

Claims (4)

  1. 板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板と、該一方の鋼板との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板とを突き合わせ、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板の各々の突合せ端部の間のギャップを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法であって、
    前記各々の突合せ端部の溶接線上において、溶接始端部に溶融池を形成するとともに、該溶融池のプール幅が0.5mmに達するまでの溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲とし、
    前記溶融池のプール幅が0.5mmを超えた後、前記溶接線上の溶接終端部までの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接することを特徴とする耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
  2. 板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板と、該一方の鋼板との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板とを突き合わせ、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板の各々の突合せ端部の間のギャップを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法であって、
    前記各々の突合せ端部の溶接線上において、溶接始端部から溶接長が30mmまでの間の溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲として溶融池を形成し、その後の溶接長が30mmまでの間の溶接速度を1.2〜1.5m/分の範囲とし、その後、溶接終端部までの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接することを特徴とする耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
  3. 前記プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴン、又は、アルゴンに7vol%以下の水素ガスが添加されたガスを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
  4. 前記プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴンガスを用いるとともに、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板が、引張強さ590MPa以上の高強度鋼板であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
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