JP5193927B2 - 耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法 - Google Patents
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Description
まず、テーラードブランク材を製造する場合には、各鋼板の突合せ端部に一定のギャップが存在した状態で溶接を行なうことになる。特に、高強度鋼板を用いた場合には、切断加工時の寸法精度が低下するため、ギャップの拡大が顕著になる。このような場合には、各鋼板の突合せ端部をバランス良く溶融させ、各突合せ端部の間に溶融池を安定して形成させ、各鋼板同士を架橋させることが必要となる。しかしながら、テーラードブランク材の生産性向上のために、例えば、1.0〜3.0m/分程度の高速でプラズマ溶接する場合には、電流を増加させる必要性が生じる。ここで、溶接の際の入熱は、次式{入熱(H)=60×電圧(V)×電流(I)/溶接速度(v)}で表されるが、溶接速度(v)の増加に伴って電流(I)を増加させた場合、これに伴ってアーク力も増加する。板厚の異なる鋼板同士を突き合わせてプラズマ溶接する場合には、両者を均等に溶融させる必要性があるため、薄い鋼板に対しては過大入熱となるが、鋼板間にギャップが存在した状態で高速プラズマ溶接を行うと、主に薄い鋼板側に熱が手中し、また、増加したアーク力によって溶融金属が下方に押し出される。このため、薄い鋼板側の溶融部で溶落ちが発生し、板厚の異なる鋼板同士を架橋性良く溶接することが困難となる。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[2] 板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板と、該一方の鋼板との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板とを突き合わせ、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板の各々の突合せ端部の間のギャップを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法であって、
前記各々の突合せ端部の溶接線上において、溶接始端部から溶接長が30mmまでの間の溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲として溶融池を形成し、その後の溶接長が30mmまでの間の溶接速度を1.2〜1.5m/分の範囲とし、その後、溶接終端部までの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接することを特徴とする耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
[4] 前記プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴンガスを用いるとともに、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板が、引張強さ590MPa以上の高強度鋼板であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
本発明は、上記ニーズに対し、溶接線上における溶接始端部から溶接終端部までの間の溶接速度を所定の条件とした上でプラズマ溶接を行なう方法とすることにより、静的引張強さと疲労強度に優れ、架橋性が良好で高い接合強度を備えるプラズマテーラードブランク材が、良好な溶接作業性で得られるものである。
本発明の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の第1の実施形態について、以下に詳述する。
本実施形態のプラズマテーラードブランク材10の製造方法は、板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板1と、該一方の鋼板1との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板2とを突き合わせ、一方の鋼板1及び他方の鋼板2の各々の突合せ端部11、21の間のギャップCを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう方法であり、各々の突合せ端部11、21の溶接線L上において、溶接始端部11a、21aに溶融池4を形成するとともに、該溶融池4のプール幅Wが0.5mmに達するまでの溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲とし、溶融池4のプール幅Wが0.5mmを超えた後、溶接線L上の溶接終端部11b、21bまでの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接する方法である。
本実施形態の製造方法で溶接継手3を形成することにより、板厚や鋼板特性の異なる各鋼板1、2を用いて、図2に示すようなプラズマテーラードブランク材10を製造することができる。
ここで、上記プラズマ溶接におけるプラズマトーチ5の移動速度、即ち、溶接速度は、まず、溶融池4のプール幅Wが0.5mmに達するまでの速度を、0.4〜0.6m/分の範囲とする。そして、溶融池4のプール幅Wが0.5mmを超えた後、溶接線L上の溶接終端部11b、21bまでの間における最終速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接する。
以下、本発明で規定する条件について詳述する。
本発明における被接合物である鋼板に関し、特に、板厚の異なる各鋼板1、2同士を、プラズマ溶接で溶接継手3を形成することによって接合する際の各種条件について説明する。
本発明に係るプラズマテーラードブランク材の製造方法で用いる一方の鋼板1並びに他方の鋼板2としては、その成分組成や金属組織については何ら限定されず、固溶強化型(例えば、C−Mn強化型、P添加型)、析出強化型(例えば、Ti析出型、Nb析出型)、2相組織型(例えば、フェライト中にマルテンサイトを含む組織、フェライト中にベイナイトを含む組織、あるいはフェライト中にその両方を含む組織)、加工誘起変態型(フェライト中に残留オーステナイトを含む組織)、微細結晶型(微細なフェライトが主体の組織)等、いずれの型の鋼板であっても良い。また、鋼板1、2の強度についても特に限定する必要はなく、本発明のプラズマテーラードブランク材の製造方法を適用することにより、鋼板1、2の特性を損なうことなく、優れた引張強さと疲労強度を有する溶接継手3を形成することができる。
本発明で用いられる各鋼板1、2の表層に施されためっき層の種類としては、Zn系、Zn−Fe系、Zn−Ni系、Zn−Al系、Zn−Mg系、Pb−Sn系、Sn−Zn系、Al−Si系、等、何れのものであっても良く、特に限定されるものではない。また、めっき層の表層に無機系、有機系の皮膜(例えば、潤滑皮膜等)が施されていても良い。これらのめっき層の目付量は、特に限定されないが、鋼板1、2の両面で100g/100g/m2以下であることが好ましい。
本発明では、非接合物である各鋼板1、2の内の一方、即ち、板厚が薄い一方の鋼板1の板厚を0.6〜1.0mmの範囲に規定する。板厚の薄い、一方の鋼板1の板厚が0.6mm未満だと、一方の鋼板1における溶落ちが生じ易くなる。
なお、一方の鋼板の板厚が1.0mmを超える場合には、如何なる溶接方法並びに溶接条件を採用した場合であっても、一方の鋼板の溶落ちが生じ難くなるので、本発明の製造方法を必ずしも適用するものでは無い。
本発明では、上記板厚の範囲で薄い一方の鋼板1と、これよりも厚く構成される他方の鋼板2の板厚比を1.3〜2.7の範囲に規定する。一方の鋼板と他方の鋼板の板厚比が1.3未満の場合には、各鋼板の板厚がほぼ同寸のレベルとなり、如何なる溶接方法並びに溶接条件を採用した場合であっても溶落ちが生じ難くなるので、本発明の製造方法を必ずしも適用する必要性は無い。一方、板厚比が2.7を超えた場合には、如何なる溶接方法並びに溶接条件を採用した場合であっても、鋼板の溶落ちが生じてしまう。
本発明では、上記テーラードブランクプラズマ溶接によって各鋼板1、2を接合する際の、各々の突合せ端部11、21の間のギャップCは、0.10〜0.35mmの範囲であることが好ましい。また、本発明で説明する上記のギャップCは、溶接始端部11a、21aから溶接終端部11b、21bまでの溶接線L上において、0.10〜0.35mmの範囲であれば、如何なる態様で変化する場合も含むものである。
本発明において用いられるプラズマ溶接とは、図1(a)、(b)に示す例のようなプラズマトーチ5を用いて、高温のプラズマ気流を、鋼板1、2において溶接継手3を形成する突合せ端部11、21に吹き付けて熱伝導型の溶接を行なう方法である。図1(a)、(b)に示す例のプラズマトーチ5は、図示略のタングステン電極から発生するプラズマを、水冷された拘束ノズルの熱ピンチ効果によって収束させることにより、熱源として、エネルギー密度の高いプラズマアーク20を照射するものである。
プラズマ溶接は、プラズマトーチ5において図示略のタングステン電極が露出しないため、ティグ溶接と比べて電極交換頻度が低く、溶接工程の自動化等に適した方法である。また、プラズマ溶接は、レーザ溶接に比べて溶接ビードが太くなり、未塗装状態においては外観が劣ることがあるものの、溶接装置が非常に安価であるという特徴がある。
本発明に係るプラズマテーラードブランク材の製造方法では、プラズマ溶接を行なう際、プラズマアーク20の安定性向上や溶接継手における酸化防止等を目的としてシールドガスが必要となる。このような、プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴン、又は、アルゴンに7vol%以下の水素ガスが添加されたガスを用いることが好ましい。このような組成とされたシールドガスを用いることにより、溶落ちが起こらず、架橋性の良い溶接が可能となる。また、水素ガスが添加されることによって、溶接時の溶込みがより得られ易くなり、プラズマトーチ5に印加する電流が低い場合であっても、溶接の高速化が可能となる。しかしながら、シールドガスに添加される水素ガスが7vol%を超えると、溶落ちが生じ易くなる。なお、シールドガスに添加される水素ガスが2vol%未満だと、水素ガスを含有させることで得られる上記効果が発現し難くなるので、アルゴンに水素を添加する場合には、2vol%以上で添加することが好ましい。
また、シールドガスとして水素を含有しないアルゴンガスを用いた場合、溶落ちは生じ難いものの、溶接時の十分な溶込みを得るためには、プラズマトーチ5に印加する電流値を高めに設定する必要がある。
本実施形態の製造方法では、プラズマ溶接によって各鋼板1、2の突合せ端部11、21をプラズマ溶接して溶接継手3を形成する際、各々の突合せ端部11、21の溶接線L上において、溶接始端部11a、21aに溶融池4を形成させるとともに、該溶融池4のプール幅Wが0.5mmに達するまでの溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲に規定する。また、本実施形態では、上記プラズマ溶接処理によって溶融池4のプール幅Wが0.5mmを超えた後、溶接線L上の溶接終端部11b、21bまでの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接を行なう。
また、溶接池4のプール幅Wが0.5mmを超えた後の最終溶接速度が2.0m/分未満だと、溶落ちは生じ難いものの、溶接効率が低いという問題がある。また、最終溶接速度が3.0m/を超えると、プラズマアーク20の安定性が低下し、また、アーク力も増加して、溶落ちが生じる恐れがある。
本発明の対ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法の第2の実施形態について、以下に説明する。
なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同じ図面を参照してその構成を説明するとともに、共通する構成については同じ符号を付し、その詳しい説明を省略する。
実施例1においては、まず、下記表1に示すような特性を備えるとともに、種々の板厚(下記表2及び表3も参照)である、引張強さが270MPa級並びに590MPa級の冷延鋼板(鋼種記号:CR)、熱延鋼板(鋼種記号:HR)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(鋼種記号:GA)を準備した。
次いで、これらの各鋼板から、幅100mm、長さ300mmの試験片を切り出し、図1(a)、(b)に示すように、2枚の鋼板を下記表2及び表3に示す組合せで突き合わせ、また、下記表2及び表3に示すプラズマ溶接条件で、各々の突合せ端部の間をプラズマ溶接して溶接継手を形成した。これにより、板厚の異なる2枚の鋼板が溶接されてなるプラズマテーラードブランク材を製造し、試験サンプルとした。
表2に示すように、本発明例(条件No.1〜33)においては、何れの条件でも溶落ちが発生せず、また、プラズマアークの安定性、スパッタ発生量、鋼板裏側への溶接ビード形成の何れの評価も「○」となり、溶接作業性が良好であるとともに、板厚の異なる鋼板同士を良好に溶接できることが確認された。
また、一方の鋼板の板厚が本発明の範囲外とされた比較例(条件No.58〜63)においても、全てのサンプルにおいて溶落ちが発生し、この評価が不合格「×」となった。
また、溶接始端部からの溶接初期の速度あるいは最終溶接速度が本発明で規定する範囲外とされた比較例(条件No.65〜70)でも、全てのサンプルにおいて溶落ちが発生するとともに、鋼板の裏側に溶接ビードが形成されず、これらの評価が不合格「×」となった。
実施例2においては、各鋼板同士をプラズマ溶接して溶接継手を形成する際の溶接速度を下記表4に示す条件とした点を除き、実施例1と同様の鋼板を用い、同様の方法により、板厚の異なる2枚の鋼板が溶接されてなるプラズマテーラードブランク材を製造し、試験サンプルとした。
そして、実施例1と同様の方法で、プラズマアークの安定性、溶接金属のスパッタ発生量、溶落ちの有無、及び、溶接ビードの鋼板裏側までの形成の有無を評価し、各々の評価結果について、合格を「○」印、不合格を「×」印で下記表4に示した。
Claims (4)
- 板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板と、該一方の鋼板との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板とを突き合わせ、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板の各々の突合せ端部の間のギャップを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法であって、
前記各々の突合せ端部の溶接線上において、溶接始端部に溶融池を形成するとともに、該溶融池のプール幅が0.5mmに達するまでの溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲とし、
前記溶融池のプール幅が0.5mmを超えた後、前記溶接線上の溶接終端部までの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接することを特徴とする耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。 - 板厚が0.6〜1.0mmである一方の鋼板と、該一方の鋼板との板厚比が1.3〜2.7の範囲である他方の鋼板とを突き合わせ、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板の各々の突合せ端部の間のギャップを0.10〜0.35mmの範囲としてプラズマ溶接を行なう異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法であって、
前記各々の突合せ端部の溶接線上において、溶接始端部から溶接長が30mmまでの間の溶接速度を0.4〜0.6m/分の範囲として溶融池を形成し、その後の溶接長が30mmまでの間の溶接速度を1.2〜1.5m/分の範囲とし、その後、溶接終端部までの間における最終溶接速度を2.0〜3.0m/分の範囲として、溶接速度を漸増させながらプラズマ溶接することを特徴とする耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。 - 前記プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴン、又は、アルゴンに7vol%以下の水素ガスが添加されたガスを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
- 前記プラズマ溶接を行なう際のシールドガスとして、アルゴンガスを用いるとともに、前記一方の鋼板及び前記他方の鋼板が、引張強さ590MPa以上の高強度鋼板であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐ギャップ性に優れた異厚鋼板プラズマテーラードブランク材の製造方法。
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JP2010247174A (ja) | 2010-11-04 |
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