JP5190280B2 - 液体塗布装置及び液体塗布方法 - Google Patents

液体塗布装置及び液体塗布方法 Download PDF

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Description

本発明は液体塗布装置及び液体塗布方法に関する。詳しくは、ノズルに静電力を作用させて液体を噴霧状に散布し、被塗布物表面の広範囲に液体を塗布する液体塗布装置及び液体塗布方法に関する。
従来、液体をノズルから吐出させる際に、ノズルに静電力を作用させて液滴、液糸、ミストを生成し、液流の方向をコントロールすることが行なわれている。例えば、ノズルの軸線方向に被塗布物を配置し、ノズルの軸線方向に静電力を作用させて、液体を曳糸状に吐出する薄膜製造装置等が提案されている。これによれば、ノズルと被塗布物に印加する電圧と液体の比抵抗により、液体の状態が(a)液滴状、(b)曳糸状、(c)噴霧状の3通りに変化し、噴霧状にするには高電圧を要する。(例えば特許文献1参照)
特開平8−71489号公報(段落0023〜0104、図1〜図8)
しかしながら、上記薄膜製造装置などの従来の装置では、広範囲に塗布を行うためにはノズルと被塗布物の距離を大きくするが、この場合、ノズルと被塗布物間の静電力が減少して液が分散し難くなる。そこで、距離を大きくすることによって減少した静電力を補うためには高電圧が必要となるという問題があった。他方、高電圧を印加すると、ノズル先端と被塗布物間で放電が発生し、ノズル先端や被塗布物が破壊されるという問題があった。また、導電性の液体を塗布する場合には、その液体を介してノズル先端と被塗布物間で放電が生じる場合もあるため絶縁距離を大きく確保する必要があるが、この場合にも上記と同様に、ノズルと被塗布物間の静電力が低下して高電圧が必要となるという問題があった。このように、ノズル先端と被塗布物間の距離と印加電圧とのトレードオフ関係の中で塗布に適したノズル先端と被塗布物間の距離の設定は困難であった。
本発明は、従来より低い印加電圧で液体を広範囲に分散させて塗布できる液体塗布装置及び液体塗布方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る液体塗布装置1は、例えば図1に示すように、液体9を被塗布物2に塗布する液体塗布装置であって、被塗布物2を載置する載置台3と、載置台3に載置される被塗布物2に対向して配置され、被塗布物2に向けて液体9を吐出するノズル4と、ノズル4内の液体9を帯電状態にする第1の電極6と、ノズル4を中心軸としてノズル4の周りに配置された環状の第2の電極7と、被塗布物2に電位を与えるように載置台3に取り付けられた第3の電極8とを備え、第2の電極7の電位が第1の電極6の電位と第3の電極8の電位の間になるように電位が設定される。
ここにおいて、被塗布物2と液体との組み合わせとして、半導体ウエハとレジスト、絶縁膜溶液、拡散剤や保護膜用溶液の組み合わせ、ガラスやレンズとコーティング液の組み合わせ、板金とメッキ液やペンキの組み合わせ等が挙げられる。また、トレーや型枠に溶融ポリマーを噴霧し、ナノサイズのポリマー粒子、ファイバーなどを得ることもできる。また、ノズル4が被塗布物2に対向して配置されとは、ノズル4からの液吐出方向に被塗布物2が在るように配置されることを意味する。典型的には、被塗布物2が水平に載置され、ノズル4が被塗布物2表面の垂直上方に配置され、被塗布物2の中心がノズル4の軸線上に一致することが好ましいが、必ずしもこれに限定されず、液体が被塗布物2の表面に広範囲に散布されるように配置されれば良い。また、第1の電極6がノズル4内の液体9を帯電状態にするとは、ノズル4が導電体からなる場合には、ノズル4自体を第1の電極6とし内部の液体9に接触して内部の液体9を帯電状態にしても良く、別に設けた電極接続部6Aからノズル4に電気的に接続し、この電極接続部6Aとノズル4を含めて第1の電極6としノズル4内の液体9を帯電状態にしても良い。また、これらの場合にノズル4は液体9に接触する内側が導電体で、外側が絶縁体で覆われていても良いが、この場合には、電極接続部6Aを通してノズル4の内側が電源と電気的に接続される。また、ノズル4が絶縁体からなる場合には、ノズル4の入り口近傍に配置された第1の電極6が中を貫通する液体9に接触して液体9を帯電状態にしてノズル4内に送り込んでも良い。また、環状とは、典型的には円環状をいうが、楕円環状でも良く、矩形環状、多角形環状でも良い。また、環の一部が途切れていても、環の大部分が電極として構成されれば良い。また、第3の電極8が被塗布物2に電位を与えるように載置台3に取り付けられたとは、例えば、被塗布物2が導電体であれば被塗布物2に接触するように電極を取り付ければ良く、載置台3が導電体であれば載置台3の一部に電極を接続すれば良く、載置台3が絶縁体であれば、その上部、下部に円板状、ドーナツ状の電極を取り付けても良く、載置台3の内部に円板状、ドーナツ状の電極を埋め込んでも良い。このようにすると、電気力線が載置台3に載置された被塗布物2を通過して電極に到るので、被塗布物2に電位を与えることができる。
このように構成すると、第2の電極7を設けることにより、ノズル4と載置台3間の電圧V1−V3を第2の電極7を設けない場合に比して低減しても、液体を分散させて塗布することができる。また、第1の電極6と第2の電極7の距離を一定と仮定すると、第1の電極6から第3の電極8に向かう噴霧は略円錐状となるので、被塗布物2が載置された第3の電極8をノズル4から遠ざけると噴霧範囲を広げることができ、逆に第3の電極8を近づけると噴霧範囲を狭めることができる。したがって、従来より低い印加電圧で液体を広範囲に分散させて塗布できる液体塗布装置を提供できる。
また、本発明の第2の態様に係る液体塗布装置1は、第1の態様において、例えば図2(B)に示すように、第1の電極6から第3の電極8に到る電気力線は、ノズル4から外側に放射状に広がり、第2の電極7に近付いた後に、第3の電極8に到達するように形成される。このように構成すると、帯電した液体微粒を電気力線に沿って移動させる力が働くので、被塗布物2表面の広範囲を塗布できる。
また、本発明の第3の態様に係る液体塗布装置1Aは、第1又は第2の態様において、例えば図4に示すように、第1の電極6と第2の電極7の間に第1の抵抗R1を、第2の電極6と第3の電極7の間に第2の抵抗R2を備え、第1の電極6と第2の電極7との間の電位差V1−V2と第2の電極7と第3の電極8との間の電位差V2−V3の比率は、第1の抵抗R1と第2の抵抗R2の抵抗値の比率により設定される。このように構成すると、抵抗R1,R2を使用できるので、電位付与手段の構成を簡易かつ小型にできる。
また、本発明の第4の態様に係る液体塗布装置1は、第1又は第2の態様において、例えば図1に示すように、第1の電極6と第3の電極8の間に第1の電源E1を、第2の電極7と第3の電極8の間に第2の電源E2を備え、第1の電極6と第2の電極7との間の電位差V1−V2と第2の電極7と第3の電極8との間の電位差V2−V3の比率は、第1の電源E1と第2の電源E2の起電力の比率により設定される。このように構成すると、電源E1,E2により、電位の調整が容易である。
また、本発明の第5の態様に係る液体塗布装置1Bは、第1ないし第4のいずれか1態様において、第2の電極7は少なくとも外周側でノズルの液吐出方向側の端部が絶縁体で覆われている。このように構成すると、外周側でノズルの液吐出方向側の端部への電界集中が緩和される。さらに、例えば図5及び図6に示すように、端部だけでなく、外周側全体及び載置台側全体を絶縁体で覆うと、噴霧状の液体が第2の電極7Aの本体部7B及び電極カバー10へ付着することを防止できるので、付着した液滴により本体部7Bが腐食すること、液滴の落下により第2の電極7Aの下側に配置されるワークやステージに余計な液が付着することを防止できる。また、絶縁性を保つには比誘電率εが2以上が好ましく、さらに高い方がより好ましい。
また、本発明の第6の態様に係る液体塗布装置1は、第1の態様において、例えば図1に示すように、第2の電極7は吐出口4の先端から液吐出方向と反対側に所定の長さ離して設置される。ここにおいて、所定の長さとは、噴霧状の液体(ミスト)が第2の電極7に付着するのを避け、かつ第1の電極6から第3の電極8に到る電気力線を広げるのに有効に作用させる高さであり、第2の電極7の半径にもよるが、例えば1〜10mmが好適であり、5〜10mmがより好適である。このように構成すると、噴霧状の液体が第2の電極7に付着し難くなり、また、第1の電極6と第2の電極7のいずれかの電線が断線した際などに、第1の電極6と第2の電極7の間で放電が起こったとしても、所定の長さ離れているためノズル4の先端で放電が起こる可能性は低くなり、先端は保護される。
上記課題を解決するために、本発明の第7の態様に係る液体塗布方法は、例えば図3に示すように、液体を被塗布物2に塗布する液体塗布方法であって、被塗布物2を載置台3に載置し、被塗布物2に向けて液体9を吐出するノズル4に対向して配置する被塗布物配置工程(S1)と、ノズル4内の液体9を帯電状態にする第1の電極6と、ノズル4を中心軸としてノズル4の周りに配置された環状の第2の電極7と、被塗布物2に電位を与えるように載置台3に取り付けられた第3の電極8に対して、第2の電極7の電位が第1の電極6の電位と第3の電極8の電位の間になるように電位を設定する電位設定工程(S2)と、ノズル4から被塗布物2に向けて液体を吐出し、被塗布物2の表面全体に液体を噴霧状に散布する液体散布工程(S3)とを備える。
このように構成すると、第2の電極7を用いることにより、ノズル4と載置台3間の電圧V1−V3を第2の電極7を設けない場合に比して低減しても、液体を分散させて塗布することができる。したがって、従来より低い印加電圧で液体を広範囲に分散させて塗布できる液体塗布方法を提供できる。
本発明によれば、従来より低い印加電圧で液体を広範囲に分散させて塗布できる液体塗布装置及び液体塗布方法を提供できる。
以下に図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
図1に、第1の実施の形態における液体塗布装置の構成例を示す。図1において、1は液体塗布装置である。2は被塗布物で、載置台3に載置されている。本実施の形態では、載置台3は水平に設置され、ノズル4は載置台3に対向して鉛直下方向きに設置される。ノズル4はオペレートバルブ5を介して図示しない液体タンクに接続され、オペレートバルブ5を開にすると、液体タンクから液体がノズル4に供給される。当初はオペレートバルブ5を閉にしておく。
ノズル4は金属や合金等の導電体で形成され、電極接続部6Aはノズル4に電気的に接続され、電極接続部6Aとノズル4により第1の電極6が構成される。ノズル4は内側の液体9に接触する部分が導電性であれば良く、周囲が絶縁体で覆われていても良い。これにより、ノズル内の液体は帯電し、吐出口から噴霧状に分散される。ノズル4は吐出される液体微粒(噴霧すなわちミストを構成する個々の液体微粒)の多くが帯電されるように、吐出口付近ではテーパ環状にして吐出口を絞っている。第2の電極7はノズル4を中心軸としてノズル4の周りに配置されている。第2の電極の位置をノズル4の吐出口より高くするのは、ミストが第2の電極に付着し難くして、ノズル4と第2の電極間の放電を防止するためである。例えば、ノズル4の吐出口の先端からの第2の電極6のまでの間隔は1〜10mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。また、ノズル4と第2の電極7との間隔は、狭いと放電が生じるようになり、大きいと電界が有効に作用しなくなるので、適切な範囲とする必要がある。例えば、ノズル4の外径を最大で6mmとした場合には、第2の電極7の内径を10〜20mmとするのが好ましい。また、第3の電極8は載置台3に取り付けられ、載置台3に載置された被塗布物2に電位を与えるようになっている。第3の電極8は接地され、第3の電極8の電位V3は0Vである。例えば、第3の電極8は載置台3の上部に一体的に取り付けられる。なお、図示されないが、ノズル4と第2の電極7を支持・移動するワーク、載置台3に被塗布物2を載置・除去するワーク、載置台3を上下させるワーク、載置台3やこれらのワークを搭載するステージなどが在る。
本実施の形態では、第1の電極6と第2の電極7との間の電位差V1−V2と第2の電極7と第3の電極8との間の電位差V2−V3の比率は電源の起電力の比率により設定される例を示す。E1,E2は第1、第2の電源、SW1,SW2はそれぞれ第1、第2の電源E1,E2と第1、第2の電極6,7との接続をオンオフする第1、第2のスイッチである。第1のスイッチSW1をオンにすると、第1の電極6と第3の電極8間に第1の電源E1の起電力により電圧V1−V3が印加され、ノズル4に電位V1が付与される。第2のスイッチSW2をオンにすると、第2の電極7と第3の電極8間に第2の電源E2の起電力により電圧V2−V3が印加され、第2の電極7に電位V2が付与される。結果的にノズル4と第2の電極7間に電位差V1−V2が与えられる。ここで、第2の電極7の電位V2は第1の電極6の電位V1と第3の電極8の電位V3の間になるように、すなわち、V1>V2>V3(=0V)に設定される。図中第1〜第3の電極6〜8に印加される電位V1〜V3を( )内に示す。例えば、第1の電極6と第3の電極8間に印加される電圧V1−V3を10kV、第2の電極7と第3の電極8間に印加される電圧V2−V3を6kVとすると、ノズル4と第2の電極7間に印加される電圧V1−V2は4kVとなり、第1の電極6の電位V1と第2の電極7の電位V2間の電位差(V1−V2)と第2の電極6の電位V2と第3の電極8間の電位差(V2−V3)の比率は2:3となる。なお、本実施の形態では、第1、第2の電源E1,E2の起電力をそれぞれ可変にすることにより、電位の調整が容易であるという利点がある。また、第1、第2のスイッチSW1,SW2を連動して開閉するように構成することにより、第1、第2のスイッチSW1,SW2のいずれか一方のみが開となり、第1の電極6と第2の電極7の間の電位差が大きくなることを防止できる。また、スイッチのオン・オフの時間差による各電極への電圧印加のタイミングずれの発生を防止でき、適切な電気力線を瞬時に形成・解消できる。
このように電位が設定された状態でオペレートバルブ5を開にして、ノズル4に液体を供給すると、静電力の作用により液体が噴霧状になって散布される。ノズル4と第3の電極8間に電圧が印加されていないときは、液体はノズルから吐出される初速度と重力により鉛直下方に滴下されるが、電圧が印加されると、液体9はノズル4から電荷を得てミスト化され、電極間に形成された電気力線に沿って移動するような力を受けて、載置台3上の被塗布物2の表面に散布される。これにより被塗布物2に液体が塗布される。
図2に第2の電極7の有無による電気力線の差異を示す。図2(A)に第2の電極7が無い場合、図2(B)に第2の電極7が有る場合の電気力線を模式的に示す。図2(A)の液体塗布装置を1Eで示す。すなわち、第2の電極7が無い場合には、図2(A)に示すように、電気力線はノズル4から載置台3に向かって、略円錐状に形成され、ノズル4から吐出された液体微粒は、第1の電極6と第3の電極8間に形成される電気力線に沿うように被塗布物2に散布される。これに対して、第2の電極7が有る場合には、図2(B)に示すように、電気力線はノズル4から放射状に広がるように形成され、液体微粒は被塗布物2表面の広い範囲に散布されるようになる。この場合、第1の電極6と第3の電極8間の電気力線φ2は、ノズル4から外側に放射状に広がり、第2の電極7の方向に導かれ、第2の電極7のほぼ直下で最も第2の電極7に近付き、その後は第3の電極8の方向すなわち下方に向かって導かれる。少なくとも、電気力線φ2は第2の電極7の半径を越えて外周方向に広がり、第3の電極8に到るように形成される。これにより、第2の電極7が無い場合に比較して、液体微粒は広い範囲に拡散される。また、液体微粒の拡散方向は主に第1の電極6と第2の電極7で定まるため、第1の電極6と第3の電極8の間隔は、塗布範囲に応じて自由に設定することができる。すなわち、塗布範囲を大きくしたい場合には被塗布物2が載置された載置台3の位置を下げ、塗布範囲を小さくしたい場合には被塗布物2が載置された載置台3の位置を上げれば良い。
図3に本実施の形態による液体塗布方法の処理フロー例を示す。まず、被塗布物2を載置台3に載置し、導電体からなるノズル4に対向して配置する(被塗布物配置工程:ステップS1)。この際に、被塗布物2を載置した載置台3をノズル4下に移動しても良く、ノズル4を、被塗布物2を載置した載置台3上に移動しても良く、予めノズル4を載置台3上に配置しておき、被塗布物2を載置台3上にベルトコンベア等で移送するようにしても良い。次に、第1のスイッチSW1をオンにして、第1の電極6と第3の電極8間に第1の電源E1の起電力により電圧V1−V3を印加し、ノズル4に電位V1を付与する。また、第2のスイッチSW2をオンにして、第2の電極7と第3の電極8間に第2の電源E2の起電力により電圧V2−V3を印加し、ノズル4の周りに配置された環状の第2の電極7に電位V2を付与する(電位設定工程:S2)。結果的にノズル4と第2の電極7間に電位差V1−V2が付与される。第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2とは連動して開閉されるので、これをオンすることにより、第1の電極6と第2の電極7に同時に電位V1とV2が付与される。この際に、第2の電極の電位V2が第1の電極の電位V1と第3の電極の電位の間になるように、すなわち、V1>V2>V3(=0V)になるように、電位を設定する。
次に、オペレートバルブ5を開にしてノズル4内に液体を導入し、ノズル4から被塗布物2に向けて液体9を吐出する。これにより、被塗布物2の表面全体に液体微粒が噴霧状に散布される(液体散布工程:S3)。ノズル4から吐出された液体9は、ノズル4と第2の電極7間に電圧V1−V2が印加されているためにミスト化され(噴霧状となり)、散布範囲が拡大する。詳しく説明すると、基本的には、ノズル4と被塗布物2間に形成された電界の作用により、ミスト化された液体9は、被塗布物2の方向に向かって飛散する。しかし、ノズル4と第2の電極7間に形成された電界の作用により、ミスト化された液体9は、ノズル4を中心軸として放射外方向(被塗布物2の内周方向から外周方向)に広がろうとする力が働く。このため、ノズル4から吐出された液体9は、ノズル4から第2の電極7の方向に引き寄せられて飛散し、ノズル4を中心として放射外方向に広がるが、その後、ノズル4と被塗布物2間に形成された電界によって、被塗布物2の方向に向かって散布される。例えば、第1の電極6と第3の電極8間に印加される電圧V1−V3を10kV、第2の電極7と第3の電極8間に印加される電圧V2−V3を6kVとすると、第1の電極6と第2の電極7との間の電位差V1−V2と第2の電極7と第3の電極8との間の電位差V2−V3の比率は2:3である。このように、ノズル4と被塗布物2間に形成された電界の作用及びノズル4と第2の電極7間に形成された電界の作用によって、液体9を分散させて被塗布物2に塗布することができるため、第2の電極7を設けない場合に比して、ノズル4と被塗布物2間の電圧V1−V3を低減した状態でも、十分に塗布面積を拡大することが可能となる。
次に、オペレートバルブ5を閉にしてノズル4への液体を導入を停止し(ステップS4)、第1及び第2の電源E1,E2の第1、第2のスイッチSW1,SW2をオフにする(ステップS5)。第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2とは連動して開閉される。次に、載置台3から被塗布物2を取り出す(ステップS6)。
本実施の形態によれば、第2の電極7を設けることにより、第2の電極7を設けない場合に比して、ノズル4と載置台3間の電圧V1−V3を低減した状態でも、液体9を分散させて塗布することができる。第2の電極7を設けることにより、例えば、第1の電極6と第3の電極8の間隔が100mmの場合に約1.5倍の塗布面積を得ることができた。したがって、第2の電極7を設けることにより、第2の電極7を設けない場合に比べて印加電圧を低減して液体を広範囲に分散させて塗布できる液体塗布装置及び液体塗布方法を提供できる。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態は、第1の電極と第2の電極との間の電位差と第2の電極と第3の電極との間の電位差の比率は電源の起電力の比率により設定される例を説明したが、第2の実施の形態では、第1の電極と第2の電極との間の電位差と第2の電極と第3の電極との間の電位差の比率は抵抗の抵抗値の比率により設定される例を説明する。
図4に、第2の実施の形態における液体塗布装置の構成例を示す。図2において、図1と同じ部位には同一の符号を付して重複した説明を省略する(以下の実施の形態についても同様とする)。主として第1の実施の形態と異なる点を説明する。第1の電極6と第3の電極8間に第1の電源E1の起電力により電圧V1−V3が印加される(この点は第1の実施の形態と同じである)。第1の電源E1と第1の電極6間に第3のスイッチSW3が設けられている。第1の電極6と第2の電極7との間に第1の抵抗R1が、第2の電極7と第3の電極8との間に第2の抵抗R2が設置され、これにより、第1の電極6と第2の電極7との間の電位差(V1−V2)と第2の電極7と第3の電極8との間の電位差(V2−V3=V2)の比率は、第1の抵抗R1と第2の抵抗R2の抵抗値の比率により定まる。この比率は例えば3:2とする。第3のスイッチSW3をオンすることにより第1の電極6と第2の電極7に同時に電位V1とV2が付与される。電位付与回路を抵抗で構成するので、簡易で小型に構成できるという利点がある。なお、抵抗を高くすると電源の容量も少なくてすむ。特に、各電極への電圧の供給が、第1の電源E1及び第3のスイッチSW3の1組のみで行なわれるため、スイッチのオン・オフ時の遅延時間による各電極への電圧印加のタイミングずれの発生を防止でき、適切な電気力線を瞬時に形成・解消できる。その他の構成及び処理フローは第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態と同様な効果を奏する。
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態は、第2の電極が環状の電極である例を説明したが、第3の実施の形態では、第2の電極の外周下端部が絶縁体で覆われている例を説明する。主として第1の実施の形態と異なる点を説明する。
図5に、第3の実施の形態における液体塗布装置1Bの構成例を、図6に、第3の実施の形態における第2の電極7Aの構成例を示す。少なくとも第2の電極7Aの本体部7Bの外周側でノズルの液吐出方向側の端部(エッジ部分)が絶縁体の電極カバー10で覆われている。図6(A)に絶縁体の電極カバー10を有する第2の電極7Aの斜視図を、図6(B)に、これを図6(A)の矢印方向から見たA−A断面図を示す。図5、図6において、カバー10を有する第2の電極を7A、環状の電極本体部を7Bで示す。環状の電極本体部7Bの外側と液吐出方向側(本実施の形態では下側)の大部分は誘電率の高い絶縁体の電極カバー10に覆われている。絶縁体は、例えば、テフロン(登録商標)(比誘電率ε=約2)を使用できる。少なくとも環状の電極本体部7Bの外周側でノズルの液吐出方向側の端部を絶縁体で覆うことによって、上記端部における電界の集中が緩和されて、放電を防止できる電極構成を提供できる。さらに、図5、図6に示すように、外周側全体及び載置台側全体を絶縁体で覆うと第2の電極7A周辺の電界が弱まり、帯電されミスト化された液体微粒が環状の第2の電極本体部7B及び電極カバー10に付着することを防止できるので、付着した液滴により本体部7Bが腐食すること、液滴の落下により第2の電極7Aの下側に配置されるワークやステージに余計な液が付着することを防止できる。その他の構成及び処理フローは第1の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
第1の実施の形態は、第2の電極が円環状の電極であり、被塗布物及び載置台が円形の例を説明したが、第4の実施の形態では、第2の電極が矩形で環状の電極であり、被塗布物及び載置台が矩形の例を説明する。第2の電極の形状が矩形であっても、ノズルから吐出された液体微粒は、第2の電極に上記の電位V2が付与されると、第1の電極と第3の電極間に形成される電気力線は広がるように形成され、液体微粒は広い範囲に散布されるようになる。そして、電気力線の広がり及び液体微粒の広がりは第2の電極の形状に依存するので、被塗布物が矩形の場合には、第2の電極の形状も矩形であることが望ましい。その他の構成及び処理フローは第1の実施の形態と同様である。
[第5の実施の形態]
第1の実施の形態は、第3の電極が円形で、載置台の上部に取り付けられる例を説明したが、第5の実施の形態ではドーナツ状であり、載置台の下部に取り付けられる例を説明する。
図7に、第5の実施の形態における第3の電極8Aの例を示す。図7(A)に正面の底面側から見た斜視図を、図7(B)に中心軸を通る断面図を示す。ドーナツ状の外周が載置台3の外周と一致する例を示す。被塗布物2のノズル4の中心軸近傍の表面においては、液体微粒が初速度と重力の影響を受けて、被塗布物2の外周部に比して塗布量が多くなる傾向にあり、これを抑制するために、ドーナツ状の第3の電極8Aが非導電体の載置台3の下部に取り付けられている。本実施の形態においては、被塗布物2及び載置台3の厚さにもよるが、ドーナツ状の穴の部分を除いて、第1の実施の形態と同様な電気力線が形成される。したがって、被塗布物2のノズル4直下の近傍において、液体が過剰に塗布されることを防止でき、全体的に均一に塗布することが可能となる。その他の構成及び処理フローは第1の実施の形態と同様である。
[第6の実施の形態]
第1の実施の形態は、ノズルを中心軸として環状の第2の電極7が単数配置される例を説明したが、第6の実施の形態ではノズルを中心軸として環状の電極が複数配置される場合について説明する。
図8に、第6の実施の形態における液体塗布装置1Cの構成例を示す。主として第1の実施の形態と異なる点を説明する。載置台3に載置された被塗布物2の上方に、ノズル4を中心軸としてノズル4の周りに環状の第4の電極74が、ノズル4を中心軸としてノズル4の周りのやや下方に環状の第5の電極75が配置されている。第4の電極74はノズル4に近く、比較的高い位置に配置されている。第4の電極74の電位V4及び第5の電極75の電位V5は、電源E4及び電源E5の起電力により、V1>V4>V5>V3になるように設定される。例えば、第1の電極6の電位V1を10kV、第4の電極74の電位V4を7kV、第5の電極75の電位V5を4kV、第3の電極8の電位V3を0kVとする。SW4及びSW5はそれぞれ、第4、第5の電源E4,E5と第4、第5の電極74,75との接続をオンオフする第4、第5のスイッチである。スイッチSW1,SW4及びSW5は連動して開閉される。第1の電極6と第3の電極8間に形成される電気力線φ3は、第4の電極74及び第5の電極75の両者の影響により広がる。第5の電極75を第3の電極8近傍に配置した場合は広がりが抑えられ、第4の電極74近傍に配置した場合にはさらに広がるように形成される。このように第5の電極の電位を調整することにより、液体微粒の散布範囲を調整することが可能である。なお、第4の電極74及び第5の電極の電位を調整することによっても、液体微粒の散布範囲を調整可能である。その他の構成及び処理フローは第1の実施の形態と同様である。
[第7の実施の形態]
第1の実施の形態では、ノズル4が導電体であり、電極接続部6Aとノズル4を含めて第1の電極6としノズル4内の液体9を帯電状態にする例を説明したが、第7の実施の形態では、ノズルが絶縁体からなり、ノズルの入り口近傍に配置された第1の電極が中を貫通する液体に接触して液体を帯電状態にしてノズル内に送り込む例を示す。
第1の実施の形態(図1参照)におけるノズル4が導電体から絶縁体に変わり第1の電極を構成せず、電極接続部6Aのみが第1の電極6を構成する。この電極接続部6Aが中を貫通する液体9に接触して液体9を帯電状態にし、帯電した液体9がノズル4内に送り込まれる。この場合でも、ノズル4から吐出される液体9は帯電しており、第2の電極7の存在により、液体微粒は被塗布物2表面の広い範囲に散布される。また、電気力線はノズル4からではなく、電極接続部6Aから第2の電極7の方向に導かれ、さらに第3の電極8の方向に向かって導かれ、液体の散布経路が幾分変化する。その他の構成及び処理フローは第1の実施の形態と同様である。
[第8の実施の形態]
第1の実施の形態は、被塗布物2が水平に載置され、ノズル4が被塗布物2表面の垂直上方に配置され、被塗布物2の中心がノズル4の軸線上に在る例を説明したが、第8の実施の形態では、被塗布物2が垂直に載置され、ノズル4が被塗布物2表面の垂直方向に配置され、被塗布物2の中心がノズル4の軸線上に在る例について説明する。
図9に、第7の実施の形態における液体塗布装置1Dの構成例を示す。主として第1の実施の形態と異なる点を説明する。第7の実施の形態の構成は、第1の実施の形態の構成すなわち、被塗布物2、載置台3、ノズル4、第1〜第3の電極6〜8の配置を垂直−水平面内に90°回転した(水平方向と垂直方向が入れ替わる)構成とする。したがって、電気力線も同様に90°回転する。その他の構成及び処理フローは第1の実施の形態と同様である。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態に種々変更を加えられることは明白である。
例えば、第1の実施の形態では、第1〜第3の電極の電位をV1>V2>V3(=0V)に設定する例を説明したが、V1<V2<V3(=0V)のように極性を逆に設定しても良く、第3の電極の電位V3を0V以外に設定しても良い。また、第1の実施の形態では、第1〜第3の電極の電位を設定した後に、液体をノズルから吐出する例を説明したが、第1〜第3の電極の電位を設定した後に、液体をノズルから吐出し、その後に第1、第2の電極の電位を調整して液体の散布範囲を調整しても良い。また、第1の実施の形態では、ノズルが金属等の導電体の例を説明したが、ノズルに絶縁体をコーティングしても良い。また、第1の実施の形態では複数の電極間に電源を並列に配置する例を説明したが、直列に配置する構成も可能であり、第2の実施の形態では複数の電極間に抵抗を直列に配置する例を説明したが、並列に配置する構成も可能である。また、その他、第1〜第3の電極の電位、設置位置、寸法等は種々変更可能である。
本発明は、半導体デバイスの製造における液体の塗布、ガラスやレンズのコーティング、メッキやペンキの塗布等に利用可能である。
第1の実施の形態における液体塗布装置の構成例を示す図である。 第2の電極の有無による電気力線の差異を示す図である。 第1の実施の形態における液体塗布方法の処理フロー例を示す図である。 第2の実施の形態における液体塗布装置の構成例を示す図である。 第3の実施の形態における液体塗布装置の構成例を示す図である。 第3の実施の形態における第2の電極の構成例を示す図である。 第5の実施の形態における第3の電極の形状の例を示す図である。 第6の実施の形態における液体塗布装置の構成例を示す図である。 第8の実施の形態における液体塗布装置の構成例を示す図である。
符号の説明
1,1A〜1E 液体塗布装置
2 被塗布物
3 載置台
4 ノズル
5 オペレートバルブ
6 第1の電極
6A 電極接続部
7 第2の電極
7A カバーを有する第2の電極
7B 第2の電極の本体部
8,8A 第3の電極
9 液体微粒
10 電極カバー
74 第4の電極
75 第5の電極
E1,E2 第1、第2の電源
E4,E5 第4、第5の電源
SW1〜SW5 第1〜第5のスイッチ
V1〜V5 第1〜第5の電極の電位
φ1,φ2,φ3 電気力線

Claims (7)

  1. 液体を被塗布物に塗布する液体塗布装置であって;
    前記被塗布物を載置する載置台と;
    前記載置台に載置される前記被塗布物に対向して配置され、前記被塗布物に向けて前記液体を吐出するノズルと;
    前記ノズル内の前記液体を帯電状態にする第1の電極と;
    前記ノズルを中心軸として前記ノズルの周りに、前記ノズルの吐出口の先端から液吐出方向と反対側に所定の長さ離して配置された環状の第2の電極と;
    前記被塗布物に電位を与えるように前記載置台に取り付けられた第3の電極とを備え;
    前記第2の電極の電位が前記第1の電極の電位と前記第3の電極の電位の間になるように、かつ前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差が前記第2の電極と前記第3の電極との間の電位差より小さくなるように、電位が設定され
    前記第1の電極から前記第3の電極に至る電気力線は、前記ノズルから外側に放射状に広がり、前記第2の電極のほぼ直下で最も前記第2の電極に近付いた後に、前記第2の電極の半径を越えて外周方向に広がり、前記第3の電極に到達するように形成される;
    液体塗布装置。
  2. 前記第1の電極と前記第2の電極の間に第1の抵抗を、前記第2の電極と前記第3の電極の間に第2の抵抗を備え;
    前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差と前記第2の電極と前記第3の電極との間の電位差の比率は、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗の抵抗値の比率により設定される;
    請求項1に記載の液体塗布装置。
  3. 前記第1の電極と前記第3の電極の間に第1の電源を、前記第2の電極と前記第3の電極の間に第2の電源を備え;
    前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差と前記第2の電極と前記第3の電極との間の電位差の比率は、前記第1の電源と前記第2の電源の起電力の比率により設定される;
    請求項1に記載の液体塗布装置。
  4. 前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差と前記第2の電極と前記第3の電極との間の電位差の比率は、2:3である;
    請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液体塗布装置。
  5. 前記第2の電極は少なくとも外周側でノズルの液吐出方向側の端部が絶縁体で覆われている
    請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の液体塗布装置。
  6. 前記所定の長さは5〜10mmであり、前記第2の電極は、前記第2の電極を設けることにより塗布面積が1.5倍以上になるように、前記中心軸から円周方向に離して設置される;
    請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液体塗布装置。
  7. 液体を被塗布物に塗布する液体塗布方法であって;
    前記被塗布物を載置台に載置し、前記被塗布物に向けて前記液体を吐出するノズルに対向して配置する被塗布物配置工程と;
    前記ノズル内の前記液体を帯電状態にする第1の電極と、前記ノズルを中心軸として前記ノズルの周りに、前記ノズルの吐出口の先端から液吐出方向と反対側に所定の長さ離して配置された環状の第2の電極と、前記被塗布物に電位を与えるように前記載置台に取り付けられた第3の電極に対して、前記第2の電極の電位が前記第1の電極の電位と前記第3の電極の電位の間になるように電位を設定する電位設定工程と;
    前記ノズルから前記被塗布物に向けて前記液体を吐出し、前記被塗布物の表面全体に前記液体を噴霧状に散布する液体散布工程とを備え
    前記電位設定工程において、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電位差が前記第2の電極と前記第3の電極との間の電位差より小さくなるように設定され;
    前記第1の電極から前記第3の電極に至る電気力線は、前記ノズルから外側に放射状に広がり、前記第2の電極のほぼ直下で最も前記第2の電極に近付いた後に、前記第2の電極の半径を越えて外周方向に広がり、前記第3の電極に到達するように形成される;
    液体塗布方法。
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