JP5187243B2 - 非線形破壊力学パラメータの導出方法及び評価方法 - Google Patents

非線形破壊力学パラメータの導出方法及び評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、非線形破壊力学パラメータの導出方法及び評価方法に関するものである。
近年、LNG(Liquefied Natural Gas;液化天然ガス)タンク設備(タンク屋根やタンク底隅肉隅角部)、原子力発電設備、ボイラ設備、海洋構造物等の大型構造物において、欠陥許容基準(維持管理基準)が緩和されてきたことに伴い、構造物の構造健全性を評価する健全性評価制度が導入されてきている。
構造物の構造健全性を評価する際は、定期的な検査を行い、目視あるいは特殊な計測機器を用いて構造物の傷やき裂等の欠陥を調べると共に、欠陥が発見された構造物が、その後も継続して運転可能か否かを判断する。
より具体的には、欠陥が発見された構造物についてき裂進展解析を実施し、当該構造物の構造健全性がその後どの程度の期間まで保証されるか、あるいは、次の点検までの運用時間を考慮した場合に、欠陥が存在したまま運用しても破壊力学上問題がないか否かを判断(余寿命評価)する。問題がある場合、補修もしくは運用停止などの措置をとり、欠陥が存在したまま構造物を運用しても健全性が保たれると判断されれば、補修などの措置をとらずにそのまま運用する。
き裂進展解析では、き裂(欠陥)が進展する速度(疲労き裂進展速度)と、その疲労き裂進展速度を決定付ける破壊力学パラメータとの関係を用いて解析を行う。したがって、構造物の健全性を精度よく評価するためには、疲労き裂進展速度と破壊力学パラメータの関係を精度よく取得することが重要となる。
き裂進展解析に用いる破壊力学パラメータとしては、従来、線形破壊力学に基づく線形破壊力学パラメータ(応力拡大係数範囲ΔK)を用いていた。しかし、この線形破壊力学パラメータは小規模降伏状態においてのみ有効であるため、例えば、大地震のように変形規模が大きくなり、大きな塑性変形を伴うような場合、線形破壊力学パラメータの妥当性は失われ、用いることができない。
そのため、地震等の大きな荷重が加わる場合を想定した構造健全性評価では、非線形破壊力学パラメータの導入が必要になる。
非線形破壊力学パラメータは、各種試験片に応じて簡易式が提案されている。試験片として中央切欠き平板、あるいは両側貫通切欠き平板を用いた場合、非線形破壊力学パラメータΔJの簡易式は[数1]に示す式(2)で表される(例えば、非特許文献1参照)。
Figure 0005187243
式(2)において、S*は荷重−変位曲線(荷重−荷重線変位曲線、P−V曲線)より求まるエネルギを表し、図13に示すP−V曲線では斜線で示す面積となる。
星出敏彦、田中啓介、仲田摩智、「弾性,弾塑性および全面降伏条件下での疲労き裂伝ぱ則の実験的検討」、日本材料学会会誌「材料」、日本材料学会、1982年6月、第31巻、第345号、pp.566−572
しかしながら、上述の式(2)に示す簡易式は、弾性変形量が塑性変形量に比べて十分小さいときに、非線形破壊力学パラメータΔJが近似的に与えられるものであった。
したがって、弾性変形量が大きい場合には、この近似が適用できなくなり、疲労き裂進展速度を評価し得る非線形破壊力学パラメータΔJを導出することができないという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、弾性変形量が大きい場合でも、非線形破壊力学パラメータを精度よく導出することが可能な非線形破壊力学パラメータの導出方法及び評価方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、引張支配型の所定の試験片を用いて疲労き裂進展試験を行い、該疲労き裂進展試験の結果から荷重−変位曲線を求め、求めた荷重−変位曲線を基に、前記試験片ごとに与えられている簡易式を用いて非線形破壊力学パラメータを求める非線形破壊力学パラメータの導出方法において、前記試験片が中央切欠き平板あるいは両側貫通切欠き平板であり、前記荷重−変位曲線を基に、[数2]に示す式(1)
Figure 0005187243
で表される簡易式を用いて、非線形破壊力学パラメータΔJを求める非線形破壊力学パラメータの導出方法である。
前記試験片における荷重線変位がある所定値を繰り返すように、繰返し荷重を作用させて前記疲労き裂進展試験を行い、該疲労き裂進展試験の結果から前記荷重−変位曲線を求めてもよい。
また、本発明は、上述の非線形破壊力学パラメータの導出方法により求めた非線形破壊力学パラメータΔJと、前記疲労き裂進展試験で得られた疲労き裂進展速度とに基づき、非線形破壊力学パラメータΔJと疲労き裂進展速度との関係式を求め、該関係式を用いて構造体の健全性を評価する評価方法である。
本発明によれば、弾性変形量が大きい場合でも、非線形破壊力学パラメータを精度よく導出することが可能な非線形破壊力学パラメータの導出方法及び評価方法を提供できる。
本発明の非線形破壊力学パラメータの導出方法に用いるパラメータ導出装置の概略図である。 本発明の非線形破壊力学パラメータの導出方法のフローチャートである。 図3(a)は中央切欠き平板の斜視図であり、図3(b)は両側貫通切欠き平板の斜視図である。 図4(a),(b)は、本発明の非線形破壊力学パラメータの導出方法における変位の測定方法を説明する図である。 本発明の非線形破壊力学パラメータの導出方法で求める荷重−変位曲線(P−V曲線)の一例を示す図である。 本発明の評価方法で求める疲労き裂進展速度と非線形破壊力学パラメータの関係の一例を示す図である。 P−V曲線における弾性変形領域と塑性変形領域を説明する図である。 従来用いていた簡易式におけるエネルギを説明する図である。 従来用いていた簡易式が、弾性変形が大きくなると適用できないことを説明する図である。 本発明の非線形破壊力学パラメータの導出方法で用いる簡易式におけるエネルギを説明する図である。 図11(a)は、従来用いていた簡易式で求めた非線形破壊力学パラメータと疲労き裂進展速度の関係を示す図であり、図11(b)は、本発明により求めた非線形破壊力学パラメータと疲労き裂進展速度の関係を示す図である。 図12(a)はCT試験片の斜視図であり、図12(b)は3点曲げ試験片の平面図である。 従来用いていた簡易式におけるエネルギを説明する図である。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
本発明の非線形破壊力学パラメータの導出方法は、欠陥が存在したままでも継続運転可能な機器および大型構造物(例えば、LNGタンク屋根、タンク底隅肉隅角部、原子力発電設備、ボイラ設備、海洋構造物など)の構造健全性を評価する前段階として、試験片に中央切欠き平板、あるいは両側貫通切欠き平板を用いた場合の非線形破壊力学パラメータΔJを導出する方法である。
まず、本実施形態に係る非線形破壊力学パラメータの導出方法に用いるパラメータ導出装置について説明する。
図1に示すように、パラメータ導出装置1は、引張支配型の所定の試験片を用いた疲労き裂進展試験の結果(実験データ)を入力する実験データ入力部2と、試験片に用いた材料データを記憶する材料データ記憶部3と、解析条件を記憶する解析条件記憶部4と、実験データ入力部2に入力された実験データ、材料データ記憶部3に記憶された材料データ、および解析条件記憶部4に記憶された解析条件を基に解析を行う解析部5と、解析部5での解析結果を記憶する解析結果記憶部6と、解析結果記憶部6に記憶された解析結果を出力する出力部7とを主に備える。
これら実験データ入力部2、材料データ記憶部3、解析条件記憶部4、解析部5、解析結果記憶部6、および出力部7は、インターフェイス、メモリ、CPU、ソフトウェアなどを適宜組み合わせて実現される。
解析部5は、実験データ入力部2から入力された実験データを基に、荷重−変位曲線(P−V曲線)を作成するP−V曲線作成部8と、P−V曲線作成部8で作成されたP−V曲線、実験データ入力部2から入力された実験データ、材料データ記憶部3に記憶された材料データ、および解析条件記憶部4に記憶された解析条件を基に非線形破壊力学パラメータΔJを算出するΔJ算出部9と、ΔJ算出部9で算出した非線形破壊力学パラメータΔJ、実験データ入力部2で入力された実験データ、および解析条件記憶部4に記憶された解析条件を基に、疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJの関係式を求める関係式導出部10とを備える。
次に、本実施形態に係る非線形破壊力学パラメータの導出方法を、パラメータ導出装置1の動作と共に説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る非線形破壊力学パラメータの導出方法では、まず、試験片の作製を行う(ステップS1)。
図3(a)に示すように、本実施形態では、試験片として、幅W、厚さBの板状部材32の中央部に、板状部材32を貫通する欠陥(き裂)33を形成した中央切欠き平板31を用いる。欠陥33の初期の高さはV0、初期の欠陥長さ(幅)は2a0とする。本実施形態では、試験片として中央切欠き平板31を用いたが、試験片としては、図3(b)に示すように、板状部材32の両側端部に初期の高さV0、初期の欠陥長さa0の欠陥34をそれぞれ形成した両側貫通切欠き平板35を用いてもよい。
ステップS1で中央切欠き平板31を作製した後、作製した中央切欠き平板31を用いて疲労き裂進展試験を行う(ステップS2)。
疲労き裂進展試験は、変位制御や荷重制御により行う。具体的には、例えば、中央切欠き平板31の上下に荷重Pを加え、その荷重線における変位(荷重線変位)Vが0(基準値、すなわち初期の高さV0)と所定値を繰り返すように、繰返し荷重を作用させて疲労き裂進展試験を行う。
荷重線における変位の計測は、例えば、図4(a)に示すように、欠陥33近傍の荷重線に沿った位置に、先端にエッジ部を有するナイフエッジ部材41を、その先端が欠陥33側に向くように取り付け、両ナイフエッジ部材41のエッジ部間の距離を計測することにより行うとよい。ナイフエッジ部材41は、ネジ止め、あるいは接着剤を用いるなど、任意の方法で中央切欠き平板31に固定するとよい。
ナイフエッジ部材41のエッジ部間の距離を計測する際は、図4(b)に示すように、両ナイフエッジ部材41のエッジ部に変位計測器42のプローブ43をそれぞれ接触させ、プローブ43が基準となる位置から移動した距離を計測することにより行うとよい。
疲労き裂進展試験では、荷重Pに対する変位(欠陥33の高さ、荷重線変位、欠陥開口変位)Vを計測すると共に、繰返し荷重を与えた回数Nに対する欠陥33の欠陥長さ2aの変化を計測し、疲労き裂進展速度da/dNを求めておく。変位Vについては、欠陥33の初期の高さV0(ここではナイフエッジ部材41のエッジ部間の距離)を基準値0とする。また、P−V曲線の荷重範囲を用いて、き裂開口点以上の有効応力拡大係数範囲ΔKeffを求めておく。
ステップS2で疲労き裂進展試験を行った後、疲労き裂進展試験で得た実験データを基にP−V曲線を作成する(ステップS3)。
疲労き裂進展試験で得た荷重Pに対する変位(欠陥33の高さ)Vの実験データを、パラメータ導出装置1の実験データ入力部2に入力し、この実験データを基に、解析部5のP−V曲線作成部8にてP−V曲線を作成する。作成したP−V曲線の一例を図5に示す。
ステップ3でP−V曲線を作成した後、これを基に非線形破壊力学パラメータΔJを算出する(ステップS4)。
解析部5のΔJ算出部9は、P−V曲線作成部8で作成したP−V曲線、実験データ入力部2から入力された実験データ(き裂開口点以上の有効応力拡大係数範囲ΔKeff、欠陥長さ2a)、材料データ記憶部3に予め記憶された試験片に用いた材料の材料データ(ヤング率E)、および解析条件記憶部4に記憶された解析条件(板厚B、試験片幅W)を基に、[数3]に示す式(1)で表される簡易式を用いて、非線形破壊力学パラメータΔJを求める。
Figure 0005187243
ステップ4で求めた非線形破壊力学パラメータΔJは、繰返し回数Nと対応づけて解析結果記憶部6に記憶される。
ステップ4で非線形破壊力学パラメータΔJを求めた後、これを基に疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJの関係式を求める(ステップS5)。
解析部5の関係式導出部10は、ΔJ算出部9で求めた非線形破壊力学パラメータΔJと、実験データ入力部2で入力された疲労き裂進展速度da/dNの関係をプロットし、解析条件記憶部4に記憶された解析条件に基づき、疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJの関係式を求める。
図6に示すように、疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJは両対数にて直線関係となり、これらの関係式は下式(3)で表される。
da/dN=Cj(ΔJ)mj …(3)
式(3)において、Cj,mjは定数である。関係式導出部10は、解析条件記憶部4に記憶された解析条件(例えば、最小二乗法など)に基づき、プロットされたデータを用いて定数Cj,mjの最適値を算出し、式(3)の関係式を導出する。
疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJの関係式は、解析結果記憶部6に記憶され、出力部7を介して外部のモニターなどに出力される。
以上により、疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJの関係式が得られる。この常微分方程式で表される式(3)の関係式を用い、数値計算により、逐次、非線形破壊力学パラメータΔJと欠陥長さを更新しながら計算する手法を用いることで、構造物の余寿命を評価することが可能となる。
ここで、非線形破壊力学パラメータΔJの簡易式として式(1)を用いる理由について説明する。
本実施形態では、非線形破壊力学パラメータΔJの簡易式として[数4]に示す式(1)を用いている。
Figure 0005187243
これに対して、従来方法では、非線形破壊力学パラメータΔJの簡易式として[数5]に示す式(2)を用いている。
Figure 0005187243
式(1)および式(2)において、右辺の第1項は、弾性変形による非線形破壊力学パラメータΔJへの寄与を表すものであり、弾性項(線形項)と呼ばれる。また、右辺の第2項は、塑性変形による非線形破壊力学パラメータΔJへの寄与を表すものであり、塑性項(非線形項)と呼ばれる。
式(1)と式(2)とを比較すると、弾性項は全く同じであり、塑性項におけるエネルギS*に対応する部分が異なっている。この理由について以下に述べる。
図7は、ある繰返し回数NにおけるP−V曲線である。図7に示すように、このP−V曲線の下側の曲線を延長することで、変位量の基準点となる開始点(opening point)Oが決定される。また、図7のP−V曲線において、荷重Pおよび変位Vが最大となる点を最大点Zという。
P−V曲線における全変位量(開始点Oから最大点Zまでの合計の変位量)は、弾性変位量δelと塑性変位量δplの合計値で表すことができる。
弾性変形では荷重Pと変位Vが直線関係になることを考慮すると、最大点ZからP−V曲線に沿った接線を引き、この接線と開始点Oから水平(X軸に平行)に引いた直線との交点Xより右側の変位量、すなわち交点Xから最大点Zまでの変位量が弾性変位量δelであると考えられる。よって、残りの開始点Oから交点Xまでの変位量が塑性変位量δplとなる。
さらに、荷重Pが大きくなるにしたがい弾性変形から塑性変形に移行することを考慮すると、開始点Oからの変位量が弾性変位量δelと等しくなるまでの領域(図示左の領域)Aは弾性変形領域となり、そこから最大点Zまでの領域(図示右の領域)Bが塑性変形領域となる。
従来用いていた式(2)で表される簡易式では、エネルギS*を、図8にハッチングで示した面積としている。この面積は、荷重Pを開始点Oから最大点Zまで積分した面積(図示右斜め下斜線部分)から、1/2・P・(δpl+δel)で表される三角形の面積(図示左斜め下斜線部分)を引くことで求められる。
このように、従来用いていた簡易式では、弾性変形領域と塑性変形領域とを含む全変形領域を考慮して、エネルギS*を求めている。そのため、その塑性項には、塑性項であるにもかかわらず弾性成分が寄与することとなる。よって、弾性変形量が大きい場合、精度よく非線形破壊力学パラメータΔJを求めることができなかった。
つまり、従来用いていた簡易式は、図9に破線で示すように弾性変位量δelが小さい場合、すなわち弾性変形が無視できる場合には有効であるが、図9に実線で示すように弾性変位量δelが大きい場合、塑性項における誤差が大きくなり、精度よく非線形破壊力学パラメータΔJを求めることができない。
これに対して、本実施形態で用いる簡易式では、塑性項において考慮するエネルギを、図10にハッチングで示した面積としている。この面積は、塑性変形領域において荷重Pを積分した面積(図示右斜め下斜線部分)から、1/2・P・δplで表される三角形の面積(図示左斜め下斜線部分)を引くことで求められる。
すなわち、本実施形態で用いる簡易式では、弾性変形領域を除き、塑性変形領域のみを考慮している。そのため、塑性項に弾性成分が寄与することがなくなり、弾性変位量δelが大きい場合でも、精度よく非線形破壊力学パラメータΔJを求めることが可能となる。
図11(a)に、従来の簡易式を用いて求めた非線形破壊力学パラメータΔJと疲労き裂進展速度da/dNの関係を示す。また、図11(b)に本実施形態で求めた非線形破壊力学パラメータΔJと疲労き裂進展速度da/dNの関係を示す。
図11(a)、(b)において、図示左側の群集団は試験片に与える変形量を小さく(荷重Pを小さく)した場合の実験結果であり、図示右側の群集団は変形量を大きく(荷重Pを大きく)した場合の実験結果である。また、丸のプロットと四角のプロットでは、試験片の板厚Bが異なる。
図11(a)に示すように、従来の簡易式を用いて求めた非線形破壊力学パラメータΔJと疲労き裂進展速度da/dNの関係は、変形量の大小により別の直線(図示破線で示す直線)で表され、変形量ごとに別の関係式となってしまうため、統一的に評価できないことがわかる。これは、変形量の大小により弾性変位量δelが変化するため、弾性成分の寄与による誤差が影響を及ぼしているためであると考えられる。
したがって、従来の簡易式を用いた場合、安全側の判断とするために、全てのデータを包含するように、図11(a)に実線で示すような関係式とする必要があり、過度に安全側の判断となっていた。
これに対して、式(1)の簡易式を用いた本実施形態では、弾性成分の寄与による誤差がないため、図11(b)に示すように、試験片の板厚Bや変形量の大小にかかわらず、疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJを一つの関係式で表すことが可能となり、統一的な評価が可能である。
以上説明したように、本実施形態に係る非線形破壊力学パラメータの導出方法では、疲労き裂進展試験で得た実験データを用いて作成したP−V曲線を基に、[数6]に示す式(1)
Figure 0005187243
で表される簡易式を用いて、非線形破壊力学パラメータΔJを求めている。
これにより、欠陥が進展するにつられて大きくなる弾性変位量δelの増分や、それによる塑性変位量δplの変化を考慮し、塑性項における弾性成分の寄与を排除できるため、弾性変位量δelが大きい場合であっても、精度よく非線形破壊力学パラメータΔJを求めることが可能となる。換言すれば、塑性変位量δplの大小にかかわらず、非線形破壊力学パラメータΔJを精度よく導出することができる。
また、非線形破壊力学パラメータΔJを精度よく導出できるため、疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJとの関係式も精度よく求めることが可能となり、この関係式を用いることで、構造体の健全性(余寿命)を精度よく評価することが可能となる。つまり、余寿命評価に必要な疲労き裂進展速度da/dNと非線形破壊力学パラメータΔJの関係を実験的に取得可能となる。
本実施形態では、試験片として、中央切欠き平板31あるいは両側貫通切欠き平板35を用いた場合を説明したが、例えば、図12(a)に示すCT試験片120や、図12(b)に示す3点曲げ試験片121など、他の形状の試験片にも本発明を適用することが可能である。つまり、CT試験片120や3点曲げ試験片121では、試験片の形状ごとに弾性変位量を無視した簡易式が提案されているが、弾性変位量δelが大きくなるような場合には、本発明と同様に、弾性変位量δelの増分を考慮する(塑性項において弾性変形による寄与を排除する)ようにすればよい。
1 パラメータ導出装置
2 実験データ入力部
3 材料データ記憶部
4 解析条件記憶部
5 解析部
6 解析結果記憶部
7 出力部
8 P−V曲線作成部
9 ΔJ算出部
10 関係式導出部

Claims (3)

  1. 引張支配型の所定の試験片を用いて疲労き裂進展試験を行い、該疲労き裂進展試験の結果から荷重−変位曲線を求め、求めた荷重−変位曲線を基に、前記試験片ごとに与えられている簡易式を用いて非線形破壊力学パラメータを求める非線形破壊力学パラメータの導出方法において、
    前記試験片が中央切欠き平板あるいは両側貫通切欠き平板であり、前記荷重−変位曲線を基に、[数1]に示す式(1)
    Figure 0005187243
    で表される簡易式を用いて、非線形破壊力学パラメータΔJを求めることを特徴とする非線形破壊力学パラメータの導出方法。
  2. 前記試験片における荷重線変位がある所定値を繰り返すように、繰返し荷重を作用させて前記疲労き裂進展試験を行い、該疲労き裂進展試験の結果から前記荷重−変位曲線を求める請求項1記載の非線形破壊力学パラメータの導出方法。
  3. 請求項1または2記載の非線形破壊力学パラメータの導出方法により求めた非線形破壊力学パラメータΔJと、前記疲労き裂進展試験で得られた疲労き裂進展速度とに基づき、非線形破壊力学パラメータΔJと疲労き裂進展速度との関係式を求め、該関係式を用いて構造体の健全性を評価することを特徴とする評価方法。
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