以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。以下の実施形態では、電子機器としてビデオカメラを一例に挙げて説明する。
<第1の実施形態>
[電子機器の構成]
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るビデオカメラ100を示す斜視図であり、表示部300を開いた状態を示している。図2は、図1のビデオカメラ100を別の角度から見た斜視図である。図3は、表示部300を閉じたビデオカメラ100を示す斜視図である。図4は、表示部300を開き、さらにX軸の回り方向に回動させた様子を示す斜視図である。図5は、ビデオカメラ100の電気的な構成を示すブロック図である。図6は、ビデオカメラ100の本体部200と表示部300とを連結する2軸ヒンジ401を示す斜視図である。
図1〜図5に示すように、ビデオカメラ100は、本体部200(第1の筐体)と、表示部300(第2の筐体)と、本体部200の一端と表示部300の一端とを互いに回動自在に連結するヒンジ部400とを有する。ビデオカメラ100は、例えばバッテリにて電源供給されるポータブル機器である。
表示部300は、表示画面306を有する表示器301と、表示器駆動部302と、これらを収容する筐体303とを有する。
表示器301は、例えばLCD(Liquid Crystal Display;液晶表示装置)などであり、全体として例えばおよそ8000mm2以上の表面積を有する。表示器駆動部302は、本体部200の制御処理部201から受け取ったデータを基に描画処理を行って映像信号を生成し、生成した映像信号を表示器301へ表示させるように制御を行う。表示器駆動部302は、具体的には、プリント基板の面に複数のチップを実装した部材である。筐体303は、熱伝導率が比較的大きい材料により作製されたものである。例えば、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック材料よりも熱伝導率が大きい高分子材料又はアルミニウム等の金属材料等が用いられる。
ヒンジ部400は、内部に2軸ヒンジ401(連結部)を有する。2軸ヒンジ401は、互いに直交する向きで連結された2本の軸を有し、表示部300を本体部200に対して、各々の軸回り方向に回動自在に連結する。この2軸ヒンジ401によって、表示部300は、本体部200に臥せた閉状態と、本体部200から起き上がった開状態との間で操作可能とされている。
図6に示すように、2軸ヒンジ401は、互いに直交する向きで連結された2本の軸であるチルト軸430および回転軸440と、支持部材420と、連結部材410とを有する。支持部材420は、本体部200側に固定された一対の支持部材である。チルト軸430は、一対の支持部材420の間に回転自在に架設されている。回転軸440は、チルト軸430の軸方向に対して直交する向きで配置され、一端部がチルト軸430の中間の部位に回転自在に支持されている。連結部材410は、回転軸440の他端と表示部300とを連結する連結板である。2軸ヒンジ401のより詳細な構造は、後に説明する。
この2軸ヒンジ401により、表示部300は、矢印Aに示すようにチルト軸430の軸回り方向に回動させ、かつ矢印Bに示すように回転軸440の軸回り方向に回動させることができる。なお、2軸ヒンジ401の構成部品は、連結強度を高く保つため、例えばステンレス等の強度の高い金属材料からなる。
本体部200は、制御処理部201と、電源スイッチ202と、操作検出部203と、開閉スイッチ204と、開閉検出部205と、温度センサ206と、温度検出部207と、第1のドライバ部208とを有する。本体部200は、第2のドライバ部209と、レンズ222と、レンズアクチュエータ210と、撮像素子211と、映像処理回路212と、マイク213と、音声処理回路214と、メモリ215とをさらに有する。本体部200は、記録再生部216と、記録部217と、これら各部材を収容する筐体218とをさらに有する。
制御処理部201は、CPU、メモリ等で構成され、ビデオカメラ100の全体的な制御を行う。制御処理部201は、例えば、映像処理回路212から出力された映像信号をヒンジ部400内に保持された図示しない配線を通じて表示器駆動部302に伝送することで、表示器301に撮影像を表示させるように制御を行う。
電源スイッチ202は、ユーザからの操作入力を受ける。操作検出部203は、電源スイッチ202に対するユーザからの操作入力を検出して、制御処理部201にこれを通知する。制御処理部201は、この通知を受けてビデオカメラ100の主電源のオン/オフの切り替え、スタンバイ状態からの復帰処理などを行う。なお、ビデオカメラ100は、ユーザからの操作入力を受けるスイッチとして、上記の電源スイッチ202のほか、モード切替スイッチ、録画開始/終了スイッチ、写真撮影スイッチ、ズームスイッチ、フラッシュ切替スイッチ等の各種スイッチや各種ボタン等を備える。
開閉スイッチ204は、例えば、押しボタン式のスイッチなどで構成される。より具体的には、開閉スイッチ204は、表示部300が開状態から閉状態に回動操作された際に表示部300に押圧される押しボタン式のスイッチなどで構成される。開閉検出部205は、開閉スイッチ204の状態を監視して、表示部300が本体部200に対して閉状態にあるか、開状態にあるかを検出して制御処理部201に検出結果を通知する。制御処理部201は、開状態が検出されると、ビデオカメラ100の電源オン動作又はスタンバイ状態からの復帰処理を行い、閉状態が検出されると、電源オフ動作又はスタンバイ状態への移行を行う。
温度センサ206は、例えば熱電対などからなり、本体部200の例えば撮像素子211に取り付けられ、この温度を検出する。検出された温度は、アナログ信号として温度検出部207に入力される。温度検出部207は、A/D(Analog/Digital)変換回路からなり、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、これを制御処理部201に通知する。
第1のドライバ部208は、制御処理部201により制御され、表示部300に設けられた後述する熱輸送デバイス700の駆動を制御する。
第2のドライバ部209は、撮影時にレンズ222を光学的に調整するためレンズアクチュエータ210を駆動する。
撮像素子211は、レンズ222から入力された光情報を電気信号に変換し、これを映像処理回路212に入力する。
映像処理回路212は、A/D変換回路からなり、撮像素子211から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して制御処理部201に出力する。
マイク213は、音声を捕えて電気信号を生成し、音声処理回路214に入力する。音声処理回路214は、A/D変換回路からなり、マイク213から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して制御処理部201に出力する。
メモリ215は、例えばRAM(Random Access Memory)であり、情報の読み書きを行う。
記録再生部216は、動画記録部219と、静止画記録部220と、再生部221とを有する。動画記録部219には、映像処理回路212にて得られたフレーム毎の映像信号と音声処理回路214により得られた音声信号が入力される。動画記録部219は、入力された連続する各フレームの映像信号と音声信号から、例えばMPEG2(Moving Picture Experts Group2)方式などの動画圧縮符号化データを生成する。静止画記録部220は、映像処理回路212にて得られたフレーム毎の映像信号を入力して、例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式などの静止画圧縮符号化データを生成する。
記録部217は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置であり、例えば、記録再生部216で生成された動画圧縮符号化データ、静止画圧縮符号化データを記録媒体に記録する。
再生部221は、記録部217から動画圧縮符号化データ、静止画圧縮符号化データを読み出し、それぞれのデータのフォーマットに応じて動画データのデコード、静止画データのデコードを行う。デコードにより復元された映像信号は表示器駆動部302に出力される。表示器駆動部302は、入力された映像信号から表示用の映像信号を生成して表示器301に出力する。
動画記録部219による動画記録機能、静止画記録部220による静止画記録機能及び再生部221による再生機能の選択は、筐体218に設けられた図示しないスイッチ等に対するユーザ操作に基いて制御処理部201により行われる。
上述のように本体部200と表示部300とが2軸ヒンジ401で連結された構成を有するビデオカメラ100には、以下のような状態が生じうる。ビデオカメラ100と同様のビデオカメラにおいて、例えば約25℃の常温環境下では、本体部に実装されたCPUは起動時に約70℃まで上昇する一方、表示部に実装されたLCD回路は起動時に約30℃までしか上昇しない。この温度上昇の差は、ビデオカメラに用いられるCPUの動作周波数がLCD回路に比べ格段に高く、消費電力が大きいことに拠る。また、本体部に実装された撮像素子も光電変換を行う際に発熱を伴う。このため、表示部に比べて本体部の温度が上昇する。
一般に、本体部と表示部とが2軸ヒンジにより連結されたビデオカメラにおいては、例えばノート型パーソナルコンピュータ等の1軸ヒンジを用いた電子機器に比べて、本体部と表示部との間での熱伝導量が小さい。とりわけ、表示部が本体部から離間されて位置する使用状態(表示部の開状態)においては、本体部で発生した熱が表示部へ伝導されにくい。これは、2軸ヒンジの場合、1軸ヒンジに比べ、部品の点数が多く、本体部と表示部との間での熱の伝導路の断面を大きくすることができないことに起因する。その結果、本体部で発生した熱が表示部に効率的に伝導されず、本体部に熱を溜め込んでしまう。このようなビデオカメラで撮影等を行うとき、ユーザは本体部を把持等する。高温状態にある本体部を把持等するとき、ユーザが不快に感じるおそれがある。
そこで、本体部の熱を表示部に効率良く伝導させれば、本体部の温度を低下させることができることから、本実施形態によれば、本体部の熱を表示部に効率良く伝導させるための機構として、2軸ヒンジに熱伝導部材を設けている。
[第1熱伝導部502の詳細な説明]
2軸ヒンジ401に設けられた熱伝導部材(第1熱伝導部502)の構成について、2軸ヒンジ401の関係とともに詳細に説明する。
図7は、第1熱伝導部502が設けられた2軸ヒンジ401を示す斜視図である。図8は、第1熱伝導部502が設けられた2軸ヒンジ401の分解斜視図である。
図7及び図8に示すように、第1熱伝導部502(第1の熱伝導部)は、2軸ヒンジ401に一体的に設けられており、第1の伝導部材510、510と、第2の伝導部材520と、第3の伝導部材530とからなる。第1の伝導部材510、510は、本体部200側に固定される一対の部材である。第2の伝導部材520は、一対の第1の伝導部材510、510同士を接続し、それぞれの第1の伝導部材510、510の一部と摺接される部位を有し、チルト軸430と同軸で回転自在とされた部材である。第3の伝導部材530は、第2の伝導部材520と摺接される部位532と、熱輸送デバイス700に接続される部位531とを有し、回転軸440と同軸で回転自在とされた部材である。第1の伝導部材510、510、第2の伝導部材520、および第3の伝導部材530は、それぞれ例えばおよそ0.5mmの厚さを有する板金状の熱伝導部材によって構成され、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなる。
より詳細には、第1の伝導部材510、510は、本体部200と接続される部位513と、第2の伝導部材520に摺接される部位514とで構成される。部位513には、本体部200に螺子を使って固定されるための螺子穴511が設けられる。一方、第2の伝導部材520に摺接される部位514には、チルト軸430を回転自在に支持するための開口512が設けられる。
支持部材420は、第1の伝導部材510、510と略同一形状を有する。部位513に対応する部位には、螺子穴511に対応し、支持部材420を本体部200に螺子を使って固定するための螺子穴421が設けられる。一方、支持部材420の、第1の伝導部材510、510の部位514に対応する部位には、開口512に対応し、チルト軸430を回転自在に支持するための開口422が設けられる。
第1の伝導部材510、510と支持部材420とは、第1の伝導部材510、510が本体部200側に位置するように、互いに当接して重ね合わされる。このようにして重ね合わせられた第1の伝導部材510、510及び支持部材420の組み合わせは、本体部200に所定の距離を隔てて固定される。開口512、422には、チルト軸430の端部が回転自在に挿通されて支持されている。
チルト軸430は、略円筒形状を有する円筒部434と、円筒部434の両端部に設けられた一対の突出部431とを有する。円筒部434には、円筒周面を軸方向に垂直な方向に貫通するようにして設けられた軸穴432が設けられる。
第2の伝導部材520は、チルト軸430に設けられる。第2の伝導部材520は、より詳細には、チルト軸430の軸方向と平行に配置される部位521と、この部位521の両端に設けられ、第1の伝導部材510、510に摺接する一対の部位522とで構成される。部位521の長さは、円筒部434の軸方向長さと略等しい。また、この部位521は、所定の距離を隔てて配置された一対の第1の伝導部材510、510の距離と略等しく構成されており、一対の部位522は、第1の伝導部材510、510の部位514に摺接するよう配置される。第2の伝導部材520の部位521には、チルト軸430の軸穴432に対応して、開口523が設けられる。一方、第2の伝導部材520の一対の部位522には、第1の伝導部材510、510の開口512に対応して、開口512よりも大きい径を有する開口524が設けられる。第2の伝導部材520は、部位522が第1の伝導部材510、510に摺接するとともに、開口524が第1の伝導部材510、510の開口512及び支持部材420の開口422と互いに連通するように配置される。
チルト軸430の両端に設けられたそれぞれの突出部431は、開口524、512、422にワッシャ435を介して挿入される。このワッシャ435は、第2の伝導部材520の開口524内に嵌め込まれるように配置される。それぞれの突出部431の先端にはストッパ433が設けられる。この結果、チルト軸430は、一対の第1の伝導部材510、510及び支持部材420に対して回転自在に支持される。さらに、チルト軸430を貫通するようにして設けられた第2の伝導部材520も、一対の第1の伝導部材510、510に摺接しつつ回転自在に支持される。第2の伝導部材520に設けられた開口523及びチルト軸430に設けられた軸穴432には、両端に縮径部445を有する回転軸440が回転自在な状態で挿入される。これにより、第2の伝導部材520は、チルト軸430の回転に伴い回転する。
第3の伝導部材530は、熱輸送デバイス700が装着される部位531と、第2の伝導部材520に摺接する部位532とにより構成される。この部位532には、第2の伝導部材520の開口523に対応して開口533が設けられる。
回転軸440の一方の縮径部445は、第3の伝導部材530の開口533及びワッシャ443を介して、チルト軸430の軸穴432に回転自在に挿入され、ストッパ444により固定される。ワッシャ443は、第2の伝導部材520の開口523内に嵌め込まれるように配置される。もう一方の縮径部445aは連結部材410の支持部411に支持される。
連結部材410には、連結部材410を表示部300に螺子などにより固定するための複数の螺子穴412とが設けられる。
以上のように、第1熱伝導部502が2軸ヒンジ401に設けられる。これにより、本体部200に発生した熱を第1熱伝導部502を介して表示部300に効率よく伝導させ、表示部300から放熱させることができる。その結果、本体部200を良好に冷却することができる。
また、チルト軸430が矢印A方向に回転するとき、第2の伝導部材520は、チルト軸430の回転と同期して矢印A方向に回転する。回転軸440が矢印B方向に回転するとき、第3の伝導部材530は、回転軸440の回転と同期して矢印B方向に回転する。すなわち、第1熱伝導部502は、チルト軸430や回転軸440の回転を妨げない。
この構成により、表示部300が本体部200に対して開状態と閉状態との間のどのような位置関係にあっても、第1の伝導部材510、510、第2の伝導部材520及び第3の伝導部材530同士の摺接が解除され難い。そのため、本体部200と表示部300との熱伝導を効率的に行うことができる。すなわち、表示部300が本体部200から離間されて位置する使用状態(開状態)において本体部200の温度が表示部300と比べて上昇する場合であっても、本体部200で発生した熱を表示部300に伝導させることができる。
また、上述のように、チルト軸430の一対の突出部431を開口523、431、512に挿入するときに使用されるワッシャ435は、第1の伝導部材510、510の開口512内に嵌め込まれるように配置される。これにより、第1の伝導部材510、510と第2の伝導部材520との接触部位が、ワッシャ435との接触を回避することができるため、熱伝導を効率よく行うことが可能となる。同様に、回転軸440の一方の縮径部445を開口533、523、432に挿入するときに使用されるワッシャ443もまた、第2の伝導部材520の開口523内に嵌め込まれるように配置される。これにより、第2の伝導部材520と第3の伝導部材530との接触部位が、ワッシャ435との接触を回避することができるため、熱伝導を効率よく行うことが可能となる。
第1熱伝導部502及び2軸ヒンジ401において、回転機構の円滑性等を向上させるために図示しないグリスを使用すればよい。ここで、各熱伝導部材510、520、530同士の摺接面には、銀等の熱伝導率の高い材料からなる粒子を混合した熱伝導性グリスを使用すればよい。その結果、第1熱伝導部502による本体部200と表示部300との間の熱伝導を、さらに効率よく行うことができる。
なお、2軸ヒンジ401に、回転角度の制限や各部材の保持を行うため、各軸端に回転バネやロック機構等を設けてもよいが、図示及び説明は省略する。
次に、上記2軸ヒンジ401に設けられた第1熱伝導部502の、本体部200及び表示部300に対する取付け構造について、より詳細に説明する。
図9は、ビデオカメラ100における熱伝導部材の接続構造を示す斜視図である。図10は、ビデオカメラ100を別の角度から見た斜視図である。図11は、熱伝導部材の接続構造を示す分解斜視図である。
図9〜図11に示すように、2軸ヒンジ401に設けられた第1熱伝導部502は、本体部200において、第2熱伝導部501(第2の熱伝導部)を介して、駆動時に発熱を伴う撮像素子221に接続される。第2熱伝導部501も、第1熱伝導部502を構成する各部材と同様に、0.5mmの厚さを有する板金状の例えば銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなる熱伝導部材である。
第1熱伝導部502の第1の伝導部材510、510は、第2熱伝導部501の一端部と例えば螺子止めにより、互いの面を当接させて接続される。すなわち、一対の重ね合わせられた第1の伝導部材510、510及び支持部材420は、第2熱伝導部501に、所定の距離を隔てて例えば螺子を使って螺子穴511、421を介して固定される。
第2熱伝導部501の他端部には、本体部200に設けられた撮像素子211がグラファイトシート601を介して接続される。これにより、撮像素子211が発生した熱が第2熱伝導部501に伝導される。
グラファイトシート601は、極めて熱伝導率の高いため、撮像素子211が発生する熱を効率的に第2熱伝導部501に伝導することができる。また、グラファイトシート601は可撓性を有するため、例えば振動等により各部材同士の位置関係が変化等した場合であっても、撮像素子211と第2熱伝導部501とを確実に接続させることができる。
これにより、第2熱伝導部501が、熱源としての撮像素子211と、2軸ヒンジ401に設けられた第1熱伝導部502とを接続する。従って、撮像素子211が発生した熱は、第2熱伝導部501を介して、第1熱伝導部502に効率的に伝導される。
一方、2軸ヒンジ401に設けられた第1熱伝導部502の第3の伝導部材530には、熱輸送デバイス700が接続される。より詳細には、第3の伝導部材530の部位531には、可撓性に優れた熱伝導材である、例えばジェルシートなどのシート部材602を介して熱輸送デバイス700が貼着される。熱輸送デバイス700は、受熱板と、放熱板と、これら受熱板と放熱板との間に設けられたペルチェ素子とで主に構成されるデバイスである。熱輸送デバイス700については、後により詳細に説明する。
熱輸送デバイス700は、シート部材602と同様のシート部材603を介して、表示部300のシャーシ305に貼着される。より詳細には、シャーシ305には、熱輸送デバイス700と略同形状を有する凹部304が設けられている。この凹部304に熱輸送デバイス700が収容されるようにして貼着される。
なお、以下の説明において、第1熱伝導部502とシャーシ305とを接続する部位である、第3の伝導部材530の部位531と、熱輸送デバイス700とシート部材602、603を「第3熱伝導部503」と総称する。
熱輸送デバイス700が表示部300のシャーシ305に接続されることで、2軸ヒンジ401に設けられた第1熱伝導部502は、第3熱伝導部503を介してシャーシ305と接続される。これにより、第1熱伝導部502に伝導された熱は、第3熱伝導部503中の熱輸送デバイス700の放熱板702からシャーシ305に伝導される。シャーシ305に伝導された熱は、表示器301の表示画面306から放熱される。
上述した接続構造によれば、高い熱伝導性を有する材料からなる第2熱伝導部501により撮像素子211と第1熱伝導部502とを接続し、熱輸送デバイス700を介して第1熱伝導部502とシャーシ305とを接続している。すなわち、ヒンジに熱伝導部材を設けただけでなく、本体部200の熱源から放熱部として機能する表示画面306までを連続する熱伝導経路で接続することとなるので、本体部200の熱源の熱をさらに効率良く表示画面306まで伝導させることが可能となる。
なお、表示器301への熱伝導量が大きく、表示器301の表示画面306における画質等に影響が及ぶおそれがあるときは、熱輸送デバイス700を、表示部300の表示画面306が設けられた面とは逆側の面に設けてもよい。この場合、表示部300の筐体303に放熱板を設け、この放熱板に熱輸送デバイス700を貼着等し、この放熱板から放熱を行えばよい。
また、第2熱伝導部501として、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなる板金状の部材を使用した。しかしながら、これに限定されない。例えば、第2熱伝導部501をヒートパイプやヒートスプレッダ等の熱輸送デバイスとしてもよい。これにより、熱伝導経路の熱抵抗を低減させることが可能となる。
なお、撮像素子211は、一般に、動作保証温度が制御処理部201の動作保証温度よりも低い。そこで、本実施形態においては、本体部200中特に発熱量が大きい制御処理部201及び撮像素子211のうち、撮像素子211だけを第2熱伝導部501に接続している。一方、制御処理部201が発生する熱の一部は本体部200から放散される。これにより、撮像素子211の放熱の経路と制御処理部201の放熱の経路とが分けられることとなり、熱設計を容易化することができる。
[熱輸送デバイス700の構成及び動作]
次に、熱輸送デバイス700の構成及び動作についてより詳細に説明する。
図12は、熱輸送デバイス700を示す説明図である。
図12に示すように、熱輸送デバイス700はペルチェモジュールからなり、より具体的には、受熱板701と、放熱板702と、複数のP型半導体703と、複数のN型半導体704と、複数の接合板705、706とを有する。熱輸送デバイス700の厚さは例えばおよそ1mm〜2mmである。
受熱板701及び放熱板702は、絶縁材料からなるプレート状の部材であり、例えばセラミック板からなる。受熱板701は、第3の伝導部材530の部位531にシート部材602により貼着される。放熱板702は、シャーシ305の凹部304にシート部材603により貼着される。撮像素子211が発生した熱が伝導される第3の伝導部材530の温度は、シャーシ305の温度よりも高いので、受熱板701側は、放熱板702側よりも高い温度を有する。
接合板705、706は金属材料からなり、複数のP型半導体703と複数のN型半導体704とを直列に接続する板部材である。ここで、受熱板701に設けられる接合板705はNP接合部であり、放熱板702に設けられる接合板706はPN接合部である。接合板705は温度Tcを有し、接合板706は温度Thを有する(Tc>Th)。
このような構成を有する熱輸送デバイス700には、例えば接合板705に図示しないリード線が接続される。このリード線を介して、熱輸送デバイス700に電流が供給される。電流が供給されると、熱輸送デバイス700は、受熱板701が第3の伝導部材530から熱Qcを吸収する。
ここで、αはゼーベック係数、Iはペルチェ素子を流れる電流値、Rは電気抵抗、KはPN接合されたペルチェ素子の放熱側と受熱側間の熱コンダクタンス、ΔTは同ペルチェ素子の放熱側と受熱側間の温度差分を示す。なお、接合板705、706の電気抵抗、受熱板701及び放熱板702の熱コンダクタンスは、無視できるものとしてここでは考慮しない。
ペルチェ効果により、放熱板702がシャーシ305へと放熱を行う。すなわち、熱輸送デバイス700は、伝導された撮像素子211の発生した熱を吸収し、シャーシ305へと放熱Qhを行う。
上記熱輸送デバイス700によれば、撮像素子211の熱を第2熱伝導部501を介して表示部300に伝導することで本体部200の温度を低下させるだけでなく、ペルチェ効果によってさらに積極的に吸放熱を行い、本体部200の温度をさらに低下させることができる。
[電子機器の動作]
次に、以上のように構成されたビデオカメラ100の動作、具体的には熱輸送デバイス700の駆動制御について説明する。
図13は、ビデオカメラ100による熱輸送デバイス700の駆動制御を示すフローチャートである。図14は、ビデオカメラ100による熱輸送デバイス700の駆動制御を示す別のフローチャートである。図15は、ビデオカメラ100による熱輸送デバイス700の駆動制御を示す別のフローチャートである。図16は、ビデオカメラ100の電気的な構成を示す別のブロック図である。
図13に示すように、ビデオカメラ100の駆動状態においてまず、温度センサ206は、撮像素子211あるいは本体部200内の特定の場所の温度を検出する(ステップS101)。検出された温度は、アナログ信号として温度検出部207に入力される。温度検出部207は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、これを制御処理部201に通知する。制御処理部201は、通知されたデジタル信号としての温度を閾値と比較する。この温度が閾値以上である場合(ステップS102でYes)、制御処理部201は、熱輸送デバイス700を駆動するように第1のドライバ部208を制御信号を出力する。第1のドライバ部208は、この制御信号を受けると、熱輸送デバイス700に駆動用の電流を供給するよう制御を行う。これにより熱輸送デバイス700は駆動状態となり、熱伝導経路の熱伝導量が増大し、本体部200の冷却効果が高くなる(ステップS103)。また、制御処理部201に通知されたデジタル信号としての温度が閾値未満である場合は、何もせずフローを終了する(ステップS102でNo)。
上記駆動制御によれば、撮像素子211または本体部200内の特定の場所の温度が閾値以上になったときに熱輸送デバイス700を駆動するので、熱輸送デバイス700の不要な駆動を回避でき、全体的な電力消費量を抑えることが可能となる。
熱輸送デバイス700の制御については、熱輸送デバイス700の駆動をオン/オフ切替するほか、熱輸送デバイス700により放熱したい熱量を推定し、その熱量に従い電流値を変化させるよう制御してもよい。この場合、ビデオカメラ100の温度と発熱量または消費電力を予め測定することで放熱したい熱量を計算すればよい。
図13に示す駆動制御によれば、本体部200具体的には撮像素子211の温度に基いて熱輸送デバイス700の駆動制御を行ったが、これに限定されず、図14に示すような制御を行ってもよい。
図14に示すように、まず、開閉検出部205は、表示部300が本体部200に対して開状態になったことを検出して制御処理部201に検出結果を通知する(ステップS201でYes)。制御処理部201は、開状態が検出されると、ビデオカメラ100の電源オン又はスタンバイ状態からの復帰を行う(ステップS202)。ビデオカメラ100が電源オン又はスタンバイ状態からの復帰が行われると、制御処理部201は、第1のドライバ部208を、熱輸送デバイス700を駆動するよう制御する。これにより、第1のドライバ部208は、熱輸送デバイス700に駆動用の電流を供給するよう制御を行う。電流の供給を受けると熱輸送デバイス700は駆動状態となり、熱伝導経路の熱伝導量が増大し、本体部200の冷却効果が高くなる(ステップS203)。なお、開閉検出部205が開状態を検出しない場合は何もせずにフローを終了する(ステップS201でNo)。また、開閉検出部205が閉状態を検出した場合は、制御処理部201は第1のドライバ部208に対して、熱輸送デバイス700に対する電流供給を停止するよう制御を行う(図示せず)。
上記駆動制御によれば、発熱量が極めて少ないスタンバイ状態及び電源オフ状態においては熱輸送デバイス700を駆動しないので、熱輸送デバイス700の駆動電力をその分抑えることが可能となる。
上記駆動制御において、ステップS201及びステップS202において、開状態の検出及び電源オン又はスタンバイ状態からの復帰を行った。しかしながら、これらの代わりに、操作検出部203による電源スイッチ202に対するユーザからの操作入力を検出を行うようにしてもよい。この場合、ユーザ入力を検出すると、操作検出部203は制御処理部201にこれを通知し、制御処理部201は、この通知を受けてビデオカメラ100の電源をオン状態にしたりスタンバイ状態からの復帰を行う。
上記駆動制御によれば、ステップS202において、電源オン又はスタンバイ状態からの復帰を行った。しかしながら、このステップを省いてもよい。すなわち、駆動状態にあるビデオカメラ100において、表示部300が本体部200に対して開状態になった場合、これらがヒンジ部400を介して離間することとなる。これにより、本体部200が発生する熱が表示部300へと伝導されにくくなり、本体部200が熱を溜め込んでしまう。この様な状態になったとき、熱輸送デバイス700を駆動すればよい。
図14に示す駆動制御によれば、ビデオカメラ100の電源オン状態又はスタンバイ復帰状態に基いて熱輸送デバイス700の駆動制御を行ったが、これに限定されず、図15に示すような制御を行ってもよい。
図15に示すように、まず、動画記録部219による動画記録機能、静止画記録部220による静止画記録機能及び再生部221による再生機能の何れかが、筐体218に設けられた図示しないスイッチ等に対するユーザ操作により選択される。制御処理部201はこれを検出する(ステップS301)。動画記録部219による動画記録機能が選択された場合(ステップS302でYes)、制御処理部201は、動画記録部219を駆動するとともに、第1のドライバ部208を、熱輸送デバイス700を駆動するよう制御する。これにより第1のドライバ部208は、熱輸送デバイス700に駆動用の電流を供給するよう制御を行う。これにより熱輸送デバイス700は駆動状態となり、熱伝導経路の熱伝導量が増大し、本体部200の冷却効果が高くなる(ステップS303)。静止画記録部220による静止画記録機能又は再生部221による再生機能が選択された場合は何もせずフローを終了する(ステップS302でNo)。
動画記録部219の動作時には、撮像素子211だけでなく、MPEGエンコード処理などの機能を持つ動画記録部219や制御処理部201からの発熱量が大きい。このため、動画記録部219の動作時は、静止画記録部220の動作時及び再生部221の動作時と比較して、本体部200が高温状態となる場合がある。そこで、上記駆動制御によれば、動画記録部219の動作時にのみ熱輸送デバイス700を駆動することで、熱輸送デバイス700の消費電力を抑えることが可能となる。
ステップS303において、制御処理部201が第1のドライバ部208を熱輸送デバイス700を駆動するよう制御することで、熱輸送デバイス700が駆動された。しかし、これに限定されない。
図16に示すように、動画記録部219が第1のドライバ部208を熱輸送デバイス700を駆動するよう制御してもよい。すなわち、動画記録機能の一つとして、動画記録部219の駆動と熱輸送デバイス700の駆動とを同期して行ってもよい。
なお、この場合、動画記録機能、静止画記録機能及び再生機能等の機能毎に撮像素子211及び制御処理部201等の発熱量を見積もることが可能である。そこで、熱輸送デバイス700による放熱量と熱輸送デバイス700に供給する電流量を予め算出しておき、これに基いて温度検出部207を用いずに熱輸送デバイス700の制御を行うことができる。例えば、動画記録部219駆動時には熱輸送デバイス700に供給する電流量を最大とし、再生部221駆動時には供給電流量を最小とし、静止画記録部220駆動時には供給電流量をこれらの間としてもよい。しかし、これに限定されず、温度検出部207を用いた図13の撮像素子211の温度に基いた駆動制御と組み合わせて、熱輸送デバイス700の制御を行ってもよい。
さらに、図13の撮像素子211の温度に基いた駆動制御と図14の電源オン状態又はスタンバイ復帰状態に基いた駆動制御とを組み合わせてもよい。図14の電源オン状態又はスタンバイ復帰状態に基いた駆動制御と図15の動作機能に基いた駆動制御とを組み合わせてもよい。図13の撮像素子211の温度に基いた駆動制御と、図14の電源オン状態又はスタンバイ復帰状態に基いた駆動制御と、図15の動作機能に基いた駆動制御とを組み合わせてもよい。
[第1熱伝導部の変形例]
次に、以上のように構成されたビデオカメラ100の変形例を図面を参照して説明する。具体的には、ビデオカメラ100における第1熱伝導部502の変形例を説明する。なお、以下の説明において、既に説明した部材等と同様の部材等に関しては同様の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図17は、第1熱伝導部502aが設けられた2軸ヒンジ401を示す斜視図である。
図17に示すように、第1熱伝導部502aは、上記第1熱伝導部502と同様の第1の伝導部材510、510と、第2の伝導部材520とを有する。第1熱伝導部502aは、第3の伝導部材530aをさらに有する。
第3の伝導部材530aは、第2の伝導部材520に摺接する部位532と、回転軸440の軸方向と平行に設けられる部位534aと、連結部材410に設けられる部位535aとにより構成される。第3の伝導部材530aは、部位532が第2の伝導部材520に摺接し、連結部材410に設けられた部位535aが表示器301を支持するシャーシ305に固定される。これにより、撮像素子211が発生した熱が、シャーシ305へと伝導され、表示部300より放熱を行うことができる。
なお、第1熱伝導部502aは、第1熱伝導部502における熱輸送デバイス700の受熱面が装着される部位531に相当する部位を有さないので、第1熱伝導部502aを用いる場合は、熱輸送デバイス700を用いなくてもよい。
[第1熱伝導部の別の変形例]
図18は、第1熱伝導部502bが設けられた2軸ヒンジ401を示す斜視図である。
図18に示すように、第1熱伝導部502bは、第3の伝導部材530bを有する。第3の伝導部材530bは、熱輸送デバイス700の受熱面が装着される部位531bと、連結部材410に設けられる部位535bとにより構成される。部位531bには、熱輸送デバイス700の受熱板701がシート部材602により貼着され、この熱輸送デバイス700の放熱板702は、シャーシ305の凹部304にシート部材603により貼着される。部位535bは、表示器301を支持するシャーシ305に固定される。これにより、撮像素子211が発生した熱が、シャーシ305へと伝導され、熱輸送デバイス700を介して、表示部300より放熱を行うことができる。
[電子機器の放熱効果]
次に、各上記第1熱伝導部502、502a、502bを有するビデオカメラの放熱効果について説明する。
以下の説明において、ビデオカメラ100は、第1熱伝導部502と熱輸送デバイス700とを備える電子機器である。ビデオカメラ100aは、第1熱伝導部502aを備え、熱輸送デバイス700が設けられていない電子機器である。ビデオカメラ100bは、第1熱伝導部502bと、熱輸送デバイス700とを備える電子機器である。ビデオカメラ100cは、比較例であり、熱輸送デバイス700を備えず、何れの熱伝導部も備えない一般的な電子機器である。なお、各ビデオカメラ100、100a、100b、100cにおいて、上記第1熱伝導部502、502a、502b及び熱輸送デバイス700の有無を除いた構成は同一であるものとする。
図19は、各ビデオカメラ100、100a、100b、100cの各部材における熱コンダクタンスを示す表である。
図19に示すように、何れのビデオカメラ100、100a、100b、100cも、撮像素子211に接続された第2熱伝導部501及びグラファイトシート601を同様に有する。そのため、何れのビデオカメラ100、100a、100b、100cも、当該部位における熱コンダクタンスは0.03W/Kと差異が無い(A欄)。また、何れのビデオカメラ100、100a、100b、100cも、表示器301及びシート部材603を有する。そのため、何れのビデオカメラ100、100a、100b、100cも、当該部位における熱コンダクタンスは0.05W/Kと差異が無い(D欄)。従って、これら部位に関しては検討を行わず、ビデオカメラ100、100a、100b、100cによって異なる部位に関して検討を行う。具体的には、2軸ヒンジ401及びこれに設けられた第1熱伝導部502、502a、502b(B欄)並びに熱輸送デバイス700及びこれを接着するためのシート部材602の有無(C欄)に関して検討を行う。
なお、第2熱伝導部501及び第1熱伝導部502、502a、502bは、およそ0.5mmの厚さを有する銅板からなる。表示器301の表面積は全体としておよそ8000mm2であり、一般的なビデオカメラの表示器と同様のサイズである。熱輸送デバイス700は、およそ1mm〜2mmの厚さを有する。熱輸送デバイス700の全てのP/N素子を合わせた特性は、例えば、ゼーベック係数S=0.028V/Kであり、電気抵抗R=15.5Ωであり、熱コンダクタンスK=0.025W/Kである(I=0.1A)。
まず、B欄について検討する。ビデオカメラ100、100aの熱コンダクタンスは0.05W/Kである一方、ビデオカメラ100b、100cの熱コンダクタンスは0.03W/Kである。すなわち、熱伝導部が大きいほど、熱コンダクタンスが高い。
次に、C欄について検討する。ビデオカメラ100a、100cには熱輸送デバイス700は設けられていないため、N/Aとした。ビデオカメラ100、100bに設けた熱輸送デバイス700およびシート部材602の熱コンダクタンスは、0.025W/Kである。
次に、熱輸送デバイス700の駆動について検討する。2軸ヒンジ401は、熱の伝導路の断面を大きくすることができないため本来は熱伝導性が悪い。しかしながら、熱輸送デバイス700に所定の電流値を有する電流を供給することで、上記数式1にて示すペルチェ効果による吸熱量を、2軸ヒンジ401から吸収することが可能である。数式1が1項目と2項目の符号が逆となる2次関数であることからも分かるように、吸熱量は所定の電流値にて最大値となるが、その値よりも電流値を大きくした場合には吸熱量は逆に低下する。このことはつまり、熱輸送デバイス700の電気抵抗によって生じる熱量が増大することで、ペルチェ効果による吸熱量が電気抵抗によって生じる熱量に相殺されてしまうことを意味する。また、ビデオカメラ100はバッテリにて電源供給されるポータブル機器であるため、最小限の熱量のみを吸熱することで、熱輸送デバイス700にて消費される電力は出来るだけ小さくすることが好ましい。
そのため、ここでは撮影素子にて発生する熱量を0.5W程度であると想定し、この熱量を吸熱するために、ペルチェ素子に流す電流値を0.1Aとする。数式1にて推定可能な熱量Qcは、放熱側温度Tcを26℃とした場合、仮に受熱側と放熱側との間の温度差ΔTを0℃とすると、0.76W(=0.028×(273+26)×0.1−15.5×0.1×0.1/2−0.025×0)となる。ΔTを10℃とすると、0.51W(=0.028×(273+26)×0.1−15.5×0.1×0.1/2−0.025×10)となり、ΔTが10℃程度までならば、撮影素子211にて発生した熱量を2軸ヒンジ401を介して吸熱することは可能である。
図20は、上記各ビデオカメラ100、100a、100b、100cの各部材における温度差分を示すグラフである。
より詳細には、図20は、ビデオカメラ100、100a、100b、100cの駆動時における、撮像素子211、2軸ヒンジ401の連結部材410、熱輸送デバイス700の放熱板702及び表示器301の表示画面306の各部位における温度差分を示す。グラフに示す温度差分は、各部材における平均温度から室温(24℃)を減じた値である。
図中破線楕円で示すように、ビデオカメラ100cの撮像素子211は、他のビデオカメラと比較して極めて高い温度を有する。また、撮像素子211と表示器301との温度差が最も大きい。これは、撮像素子211が発生した熱は、第2熱伝導部501を介して2軸ヒンジ401に伝導されるものの、2軸ヒンジ401はこの熱を表示器301に積極的に伝導しないためである。
ビデオカメラ100aは、撮像素子211における温度がビデオカメラ100cと比較しておよそ8.1℃低下している。これは、撮像素子211が発生した熱は、第2熱伝導部501を介して2軸ヒンジ401に伝導され、この熱が2軸ヒンジ401に設けた第1熱伝導部502aにより表示器301に伝導されたためである。一方、シャーシ305に熱輸送デバイス700が設けられていないため、この伝導された熱が積極的に表示器301へと放熱されていない。
ビデオカメラ100bも、撮像素子211における温度がビデオカメラ100cと比較しておよそ8.1℃低下している。すなわち、ビデオカメラ100bは、本体部200の温度低減において、ビデオカメラ100aと同程度の効果を得ることができる。撮像素子211が発生した熱は、2軸ヒンジ401及び第1熱伝導部502bを介して熱輸送デバイス700に伝導される。熱輸送デバイス700は、連結部材410側から吸熱を行い、この熱を積極的に表示器301へと放熱する。その結果、連結部材410の温度が低下するとともに表示器301の温度がビデオカメラ100a、100cと比較しておよそ3.9℃上昇する。
ビデオカメラ100は、撮像素子211の温度がビデオカメラ100cと比較しておよそ16.2℃、ビデオカメラ100a、100bと比較しておよそ8.1℃低下している。撮像素子211が発生した熱は、2軸ヒンジ401及び第1熱伝導部502を介して熱輸送デバイス700に伝導される。熱輸送デバイス700は、連結部材410側から吸熱を行い、この熱を積極的に表示器301へと放熱する。その結果、連結部材410の温度が低下するとともに表示器301の温度がビデオカメラ100a、100cと比較しておよそおよそ3.9℃上昇する。
以上より、グラフ中破線楕円で示すように、ビデオカメラ100が撮像素子211の温度を最も低下させることができる。その結果、ビデオカメラ100によれば、本体部200の温度が低下するので、例えばユーザが本体部200を把持したり、本体部200に設けられた操作部等を操作したりする使用状態において、ユーザが不快に感じるおそれを最も低減させることができる。また、ビデオカメラ100a、100bも、比較例としての一般的なビデオカメラ100cと比較して、撮像素子211の温度を低下させることができる。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態を図面に基づき説明する。図21は、第2の実施形態に係るビデオカメラ100の熱伝導部材の接続構造を示す斜視図である。図22は、ビデオカメラ100を別の角度から見た斜視図である。図23は、熱伝導部材を示す分解斜視図である。
図21〜図23に示すように、第2の実施形態に係るビデオカメラ100は、第1の実施形態に係るビデオカメラ100と同様に、本体部200と、表示部300と、これらを2軸方向に回動自在に連結する2軸ヒンジ401を有する。2軸ヒンジ401には、第1熱伝導部502が設けられる。本実施形態によれば、この第1熱伝導部502の、表示部200の熱源に対する接続構造が、第1の実施形態の接続構造と異なる。なお、以下の説明において、既に説明した部材等と同様の部材等に関しては同様の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本体部200には、2軸ヒンジ401に設けられた第1熱伝導部502と熱源とを接続するため、第4の伝導部材810と、第5の伝導部材820と、第6の伝導部材830とを有する第3熱伝導部800が設けられる。第4の伝導部材810、第5の伝導部材820及び第6の伝導部材830は、第4の伝導部材810と同様に、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなり、それぞれ例えばおよそ0.5mmの厚さを有する板金状の熱伝導部材からなる。
第4の伝導部材810は、一端部が本体部200に設けられた撮像素子211に、グラファイトシート601を介して接続される。これにより、撮像素子211が発生した熱が、第4の伝導部材810に伝導される。第4の伝導部材810の他端部には、段差部811が設けられる。
第5の伝導部材820は、制御処理部201に装着される部位821と、第4の伝導部材810に接続される部位822と、これら部位821、822を連結する部位823とを有する。より詳細には、部位821は、制御処理部201のプリント基板面に設けられたCPUやLSI等の表面に、熱伝導材を介して貼着される。この熱伝導材として、例えば可撓性に優れたジェルシートやサーマルグリス等が挙げられる。このような熱伝導剤を用いることで、接触面に生じる熱抵抗を低減させることができる。部位822は、第4の伝導部材810の段差部811に嵌め込まれるようにして組み合わせられ、互いに当接する。
第6の伝導部材830は、第1熱伝導部502に接続される部位831と、第4の伝導部材810及び第5の伝導部材820に熱的に接続される部位832とを有する。部位831には開口が設けられ、この開口を介して第1の伝導部材510、510に固定される。部位831は、上述の熱輸送デバイス700と同様の構成を有する熱輸送デバイス710を介して、第4の伝導部材810及び第5の伝導部材820に熱的に接続される。
より詳細には、第4の伝導部材810の段差部811に当接する第5の伝導部材820の部位822に、熱輸送デバイス710の受熱板701が接続される。より詳細には、部位822には、シート部材602、603と同様のシート部材604を介して、受熱板701が貼着される。熱輸送デバイス710の放熱板702は、第6の伝導部材830の部位832に、シート部材604と同様のシート部材605を介して貼着される。
この構成により、撮像素子211で発生した熱は、第4の伝導部材810を伝導し、第5の伝導部材820の部位822及びシート部材604を介して熱輸送デバイス710にさらに伝導する。一方、制御処理部201で発生した熱は、第5の伝導部材820を伝導し、シート部材604を介して熱輸送デバイス710にさらに伝導する。熱輸送デバイス710の受熱板701は、これら伝導された熱を吸収し、ペルチェ効果により、放熱板702より第6の伝導部材830へと放熱を行う。第6の伝導部材830に伝導された熱は、第1熱伝導部502へとさらに伝導される。
第1熱伝導部502、2軸ヒンジ401及び表示部300に設けられた熱輸送デバイス700等の部材については上述の第1の実施形態で説明した各部材と同様の部材であり、同様の構成を有する。従って、第1熱伝導部502へと伝導された熱は、第1の実施形態と同様に、熱輸送デバイス700を経て表示部300の表示画面306より放熱される。
これにより、撮像素子211が発生した熱だけでなく、制御処理部201が発生した熱も表示画面306から放熱することができるので、本体部200の温度をさらに低下させることができる。その結果、例えばユーザが本体部200を把持したり、本体部200に設けられた操作部等を操作したりする使用状態において、ユーザが不快に感じるおそれをさらに低減させることができる。
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が考えられる。
第4の伝導部材810と第5の伝導部材820とは嵌め込むようにして組み合わせられ、互いに当接させたが、これに限定されない。例えば、第4の伝導部材810と第5の伝導部材820とは、共締めやカシメ等により固定してもよいし、板金加工により一体化して成形してもよい。或いは、熱輸送デバイス710を設けなくてもよい。この場合、各熱伝導部材810、820、830は共締めやカシメ等により固定してもよいし、板金加工により一体化して成形してもよい。
また、第4の伝導部材810と第5の伝導部材820として、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属材料からなる板金状の部材を使用した。しかしながら、これに限定されない。例えば、第4の伝導部材810と第5の伝導部材820のうち、少なくとも何れか一方をヒートパイプやヒートスプレッダ等の熱輸送デバイスとしてもよい。これにより、熱輸送経路の熱抵抗を低減させることが可能となる。
また、撮像素子211及び制御処理部201の双方にそれぞれ熱伝導部材810、820を接続し、これら双方が発生した熱を表示部300側へと伝導させた。しかしながら、これに限定されない。例えば、撮像素子211の発熱量が小さい場合、第4の伝導部材810及びグラファイトシート601を設けなくてもよい。すなわち、制御処理部201のみを熱輸送デバイス710を介して第1熱伝導部502に熱的に接続してもよい。或いは、第5の伝導部材820を設けず、制御処理部201のみを熱輸送デバイス710を介して第1熱伝導部502に熱的に接続してもよい。
また、本体部200に熱輸送デバイス710を、表示部300に熱輸送デバイス700を設けた。しかしながら、これに限定されない。表示部300に熱輸送デバイス700を設け、本体部200には熱輸送デバイス710を設けなくてもよい。本体部200に熱輸送デバイス710を設け、表示部300には熱輸送デバイス700を設けなくてもよい。この場合、第1熱伝導部502の代わりに第1熱伝導部502aを使用すればよい。
また、熱輸送デバイス700、710にペルチェモジュールを用いた。しかしながら、これに限定されない。例えば、熱輸送デバイス700、710は、内部に液冷媒を有する相変化型ヒートスプレッダその他のヒートスプレッダでもよい。
また、電子機器としてビデオカメラを例に挙げた。しかしながら、これに限定されない。例えば、電子機器としては、折りたたみ式携帯電話、ノート型PC、ゲーム機器及び電子辞書等、2軸ヒンジのみならず1軸ヒンジを有する電子機器としてもよい。さらに、電子機器として、PDA(Personal Digital Assistance)、カメラ、ディスプレイ装置、オーディオ/ビジュアル機器、プロジェクタ、カーナビゲーション機器、ロボット機器、レーザ発生装置等が挙げられる。