JP5184251B2 - 分光素子、分光装置および分光方法 - Google Patents

分光素子、分光装置および分光方法 Download PDF

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Description

本発明は入力された光を分光するための分光素子および、前記分光素子を用いた分光装置および分光方法に関する。
分光素子や分光装置および分光方法としては種々の構成のものが知られているが、一般的にはプリズムを用いて入射した光を分光し、撮像素子を用いて電気信号とした後に記録する。このような構成の従来の分光光度計においては、分光される波長の変化はプリズムの駆動機構を用いた機械的変化に対応するために、同時に複数の波長を検出することは困難であった。この問題を解決するために、次に示すような発明がなされている。
特許文献1には、光路上に順に配置された第1結像レンズ、スリット板、第1コリメータレンズ、分光手段、第2コリメータレンズ、マイクロプリズムアレイ、第2結像レンズ及び2次元アレイセンサを備える分光装置が開示されている。分光手段によって分光された光束のうち所定波長を有するものは、マイクロプリズムアレイによって屈曲され、所定の方向に出射される。これにより、2次元アレイセンサの所定のセンサ上に所定の波長を有する分光画像が結像されることで、多数同時に分光を得ることの可能な分光装置を実現している。
特許文献2には、視野マスクと光学系の光軸に対して異なる方向に法線を有する複数の光屈折面が形成され、その各光屈折面によりレンズの瞳面が分割されるようにレンズの瞳面近傍に設置されたプリズムとレンズと撮像素子を備える分光装置が開示されている。これにより、撮像素子上に生成される複数の同一画像は互いに異なる波長成分の複数の同一分光画像として形成され、複数の波長に対応する分光画像を同時に取得できる分光装置を実現している。
特開平8−193884号公報 特開平8−233658号公報
このような分光装置では、分光像を撮像する撮像素子に対し、それぞれにレンズやプリズムからなる光学系を必要とするため、部品配置上及び光学設計上必要なスペースが大きくなり、このため分光装置のサイズが非常に大きいものとなっている。またプリズムやレンズおよび撮像素子などの部品を、筐体を介して位置合わせするため、調整に時間を要するほか、位置合わせ精度にも限界があった。
本発明は、従来の分光素子、分光装置および分光方法における上記問題点を解消した新規な分光素子を提供することを目的とするものである。
本発明の分光素子は、上方に開口した穴部もしくは孔部であって、水平断面が互いに平行でない少なくとも一対の対向面を有する多角形である穴部もしくは孔部を有する金属板からなり、前記穴部もしくは孔部の内側面が鏡状の反射面となっており、前記開口から前記穴部もしくは孔部に入射する偏光された入射光を、前記反射面において反射することによる干渉によって、前記穴部もしくは孔部の内部に定在波を生じさせて、前記入射光を複数の波長帯に分光することを特徴とするものである。
ここで、「穴部」とは、底のあるもの、「孔部」とは貫通孔を意味するものとする。
また、この穴部もしくは孔部は、その中に入射された光を内部で反射させることにより内部に定在波を生じさせる大きさ、すなわち光の波長に比して著しく大きくない程度の大きさ、例えば数倍程度の大きさを有するものである。
また、金属板とは、一般には平行な上面(表面)と下面(裏面)を有する薄いものを意味するが、ここでは、必ずしも表面と裏面が正確に平行なものに限らないものとし、厚さも、必ずしも水平方向の大きさに比して小さいものに限定されない。
また、入射光を複数の波長帯に分光するとは、穴部もしくは孔部の内部の異なる位置に異なる波長帯の光が集光もしくは定在するようにすることを意味し、それらの場所にそれぞれ受光部を持つセンサを配置すれば、受光部ごとに異なる波長帯の光を検知することができることを意味する。一つの例としては、その穴部もしくは孔部の底部において、水平方向に異なる位置に異なる波長帯の分光成分を集光させることができる。
前記穴部もしくは孔部の水平断面の形状は、互いに平行でない少なくとも一対の対向面を有する多角形である必要があるが、これは上記定在波を生ぜしめて、異なる位置に異なる波長帯を集光させるための条件であり、具体的には、例えば等脚台形などの台形とすることができる。台形の両脚は互いに平行でない対向面を形成するから、穴部もしくは孔部の上方すなわち前記開口から入射された偏光が、その対向面間において反射を繰り返して、穴部もしくは孔部の底部付近の異なる位置に異なる波長帯を集光させることができると考えられる。
また、さらに具体的には、本発明の分光素子は、厚さの均一な金属板の上面と下面を、上面および下面に貫通する孔部を有し、前記孔部は、前記金属板の上面方向または下面方向から見た横断面を構成する辺のうち、3辺の延長線が囲む図形が、頂角が狭角である二等辺三角形を形成すると共に、少なくとも前記横断面を構成する辺のうち、二等辺三角形の等辺に接する前記孔部の内側面は鏡状の反射面となっていて、前記金属板の上面から前記孔部に入射する偏光された入射光が、前記孔部の前記反射面において前記入射光が反射されることによる干渉によって複数の波長帯に分光することを特徴とするものとすることができる。
また本発明の分光素子は、前記分光素子の上部に偏光素子を設け、前記偏光素子の偏光方向を前記二等辺三角形の底辺の垂直二等分線と平行方向、もしくは直角方向とするものとしてもよい。
さらに本発明の分光装置は、前記いずれかの分光素子を用い、前記孔部が、前記金属板の上面および下面に対し垂直に貫通することを特徴とするものとすることができる。
さらに本発明の分光装置は、前記いずれかの分光素子を用い、前記入射光が分光した分光分布の局在位置となる前記分光素子の下面に受光素子を配置することによって、前記分光分布を電気信号に変換することを特徴とするものである。
加えて、本発明の分光装置は前記受光素子を複数持ち、前記分光分布の複数の局在位置に合わせて、前記受光素子を配置したものとすることができる。
また、本発明の分光装置は前記分光素子と単数または複数の受光素子の組み合わせからなる分光装置を複数配列し、二次元分光装置としてもよい。
本発明の分光方法は、水平断面が互いに平行でない少なくとも一対の対向面を有する多角形の、上方に開口した、内側面が鏡状の反射面となっている穴部もしくは孔部を有する金属板を用意し、前記開口から前記穴部もしくは孔部に偏光された入射光を入射させ、前記反射面において反射することによる干渉によって、穴部もしくは孔部の内部に定在波を生じさせて、入射光を複数の波長帯に分光することを特徴とするものである。
本発明による分光素子は、水平断面が互いに平行でない少なくとも一対の対向面を有する多角形の、上方に開口した穴部もしくは孔部を有する金属板からなり、穴部もしくは孔部の内側面が鏡状の反射面となっており、この開口から入射する偏光を反射面において反射することによる干渉によって、内部に定在波を生じさせて、入射光を複数の波長帯に分光することができるものであるから、極めて簡単な構造でありながら、従来の分光素子と同様の分光効果を得ることができる。
さらにこの分光素子と受光素子は半導体プロセスで製作できるために、小型であり、高精度な分光装置を実現することが可能である。
また、分光像を撮像する撮像素子に対し、レンズやプリズムからなる光学系を必要としないため、部品配置上及び光学設計上必要なスペースを小さくすることができ、このため分光装置のサイズを非常に小さいものとすることができる。またプリズムやレンズおよび撮像素子などの部品を用いないので、これらを筐体を介して位置合わせする必要がなく、これらのための調整に時間を要することがないし、位置合わせ精度も向上されることができる。
以下、添付図面に従って本発明の分光素子、分光装置および分光方法の好ましい実施の形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は本発明の分光素子10の構成の一例である。図1(a)は分光素子の上面図であり、入射光の入射面から見た分光素子10の形状を示す。分光素子10は厚さの均一な金属板に上面すなわち入射面から下面すなわち射出面に貫通する垂直の孔部20を有する構造体である。図1ではあたかもひとつの分光素子が独立しているかのように描かれているが、隣接する他の分光素子とは金属板を共有とする構造をとるのが製造上あるいは使用上望ましい。従って図1の外形部分は仮想的なものであると考えることができる。図1(b)は図1(a)のA−A’面の断面を示す図である。分光素子10の構造体を構成する金属板はその孔部20の内壁で入射光を反射させるが、その反射面11、12は、本実施例では入射面16および射出面18と垂直に交わる。図1(c)は図1(a)のB−B’面の断面を示す図であり、図1(b)と同じく反射面13、14は入射面16および射出面18と垂直に交わる。
図2で表す本発明の分光素子の概念図に示すように、分光素子10の入射面16からの入射光と、図示しない、入射光の反射面における反射光が射出面に到達して干渉することによって発生する定在波により分光が行われる。射出面18における定在波が分光強度分布となる。
図3(a)および図3(b)は、本発明の分光素子の孔部形状の定義を示したものである。図3(a)に示す、本発明の分光素子の孔部20形状は、分光素子に対する入射光の入射面もしくは射出面から見た形状が、孔部20を構成する辺のうち、3辺、すなわち辺22、辺26および辺28の延長線である延長線23,延長線27,延長線29が囲む図形が、図3(b)に示す頂角Hが狭角である二等辺三角形30を形成する。すなわち、三角形を構成する。図3(a)の孔部形状は、二等辺三角形30の頂部を底辺28と並行に切断した台形形状となっている。これは分光結果を得ようとする波長帯に依存し、分光結果を得ようとする波長帯のうち、波長の短い帯域が不要であれば二等辺三角形の頂部は省略することが出来る。逆により波長の短い帯域までの分光を行おうとすると、二等辺三角形に近い形状となり、最終的には二等辺三角形となる。
本発明の分光素子は、分光素子の内壁の反射面で入射光を反射させ、反射光および入射光による定在波により分光が行われるので、反射面での反射時の光エネルギー損失が大きい場合、分光素子の構造体内壁における反射の際に入射光のエネルギーが失われてしまい、射出面において明瞭な強度分布を得ることが困難となる。そのため、金属板には反射時のエネルギー損失が少ない材料を選定する必要がある。例えば、銀は優れた反射率を持つ金属として知られおり、これを用いても良い。他に金や銅、鏡の素材である、金、銅および銅と錫の合金やアルミニウムなどを用いることが出来る。これらに精密に穴を開ける技術は、半導体製作技術である異方性エッチングなどを用いることにより可能である。また、パルスレーザーやファイバレーザー等を用いた超精密加工でも製作することが可能である。半導体制作技術を利用することで、高精度な分光素子を安定して作ることが可能である。
また孔部の内壁が反射面であることから、孔部およびその周辺の構造体そのものは後述する受光素子と同じ材料であるシリコンなどの半導体基板を用い、内壁のみに前記金、銀、銅および銅と錫の合金の薄膜もしくは板を用いても良い。半導体基板は、やはり半導体製作技術で穴開け加工を行うことが可能である。反射面を構成する前記金、銀、銅および銅と錫の合金の薄膜を、半導体基板に開けた孔部内壁に形成するためには、スパッタリング、蒸着、メッキなどの方法を用いることができる。このような構造を採用した場合には同じ半導体基板で作成することが出来る受光素子との一体構造も実現可能である。
本発明の分光素子を使用してY方向偏光した入射光の分光結果を図4に示す。図4左の座標系は図1の分光素子の座標系に対応している。縦軸に分光素子の上面から見たX方向、横軸に分光素子の上面から見たY方向をとった座標系で、波長 440nm(a)から波長690nm(f)までの6波長において、どのように分光されるかを示した。なお入射光はY方向に偏光した光を用いた。図4の(a)から(f)までの各グラフでより白く表示されているところが、その波長の光が定在波として強く存在するピークであることを示す。このピーク位置は波長ごとに異なり、分光素子として機能していることがわかる。
図5に、図4で示した本発明の分光素子を使用してY方向偏光した入射光の分光結果を、分光素子のX方向中心軸上で、Y軸にY方向の座標(距離)、X軸にスペクトル強度をとり示した。Y座標はスペクトル強度の最大値で規格化してあるために、相対値となっている。図4ではわかりにくかった、波長ごとの定在波が強く存在する位置が明確にわかる。例えば、440nm の波長においてはY座標250nm付近、2000nm付近、4200nm付近の3個所にスペクトル強度のピークがある。また、Y座標2500nm付近から4500nm付近を注目すると、590nmの波長ピークがY座標2700nm付近に存在し、Y座標が増えるに従ってより短い波長のピークが存在していることがわかる。
なお、波長640nm、690nmのふたつの波長では明瞭な波長のピークを見ることができない。これは図4(e),(f)で明らかなように、この2つの波長では分光素子のX方向中心軸上から離れたところにピークを持つためである。
図6に図5で示した本発明の分光素子を使用してY方向偏光した入射光の分光のスペクトル強度のピーク位置波長依存性を示す。X軸は入射光の波長を、Y軸はスペクトル強度のピーク位置を示す。スペクトル強度のピーク位置の0は、図3(a)に示す分光素子孔部の底辺28の位置である。
各波長のスペクトル強度のピークは、大きくふたつのグループに分けることができる。Y軸方向の0に近い第1グループは、波長440nmから540nmまでは、波長が長くなるのに従ってほぼ直線的に強度のピーク位置が0に近づく。しかし、波長590nmから690nmまでは逆に波長が長くなるのに従って、ほぼ直線的に強度のピーク位置が0から遠ざかる。もうひとつの第2グループは、波長440nmから640nmまでは、波長が長くなるのに従ってほぼ直線的に強度のピーク位置が0に近づく。しかし、波長640nmから690nmまでは逆に波長が長くなるのに従って、強度のピーク位置が0から遠ざかる。
これら強度のピーク位置が、一様に波長が長くなるのに従ってほぼ直線的に強度のピーク位置が0に近づかないのは、有限の大きさの孔部で共振させているためである。図3(a)の孔部20の底辺28部分にあたる反射面が共振に影響を与える。底辺28が無限に遠ければ強度のピーク位置は、波長が長くなるのに従ってほぼ直線的に強度のピーク位置が0に近づく。
<第1の実施形態の第1変形例>
本発明の分光素子を使用してX方向偏光した入射光の分光結果を図7に示す。図7左の座標系は図1の分光素子の座標系に対応している。波長 440nm(a)から波長690nm(f)までの6波長において、どのように分光されるかを示した。図7の(a)から(f)までの各グラフでより白く表示されているところが、その波長の光が定在波として強く存在するピークであることを示す。このピーク位置は波長ごとに異なり、分光素子として機能していることがわかる。図4に示したY方向偏光の結果と異なり、X軸に平行な線状のピークとなっている。
図8に、図4で示した本発明の分光素子を使用してX方向偏光した入射光の分光結果を、分光素子のX方向中心軸上で、Y軸にY方向の座標(距離)、X軸にスペクトル強度をとり示した。Y座標はスペクトル強度の最大値で規格化してあるために、相対値となっている。波長ごとの定在波が強く存在する位置が単独で明確になっているのは、波長440nmのY座標2800nmおよびY座標3800nm付近である。例えば波長490nmから590nmという波長帯として考えると、Y座標3400nm付近にピークを持つと考えられ、これらの特性を使用して本分光素子での分光が可能である。
<第1の実施形態の第2変形例>
図9(a)および図9(b)は、本発明の分光素子の孔部形状を変形した例である。図9(a)および(b)は基本的に変わらないため、ここでは図9(b)について主に説明する。本発明の分光素子の孔部92形状は、分光素子に対する入射光の入射面もしくは射出面から見た形状が、孔部92を構成する辺のうち、3辺、すなわち辺22、辺26および辺28の延長線である延長線23,延長線27,延長線29が囲む図形が、図9(b)に示す頂角Hが狭角である二等辺三角形30を形成する。すなわち、三角形を構成する。図9(b)の孔部形状92は、二等辺三角形30の頂部を底辺28と並行に切断した台形形状となっている。第1の実施形態と異なるのは、孔部形状92の角を丸めてあることである。
図9(a)ではRa=0.1μmで角を丸めており、図9(b)ではRb=0.5μmで角を丸めている。図1の孔部形状は、理想的な形状でありこのような形状に加工できると最高の性能を発揮できる。しかし、現実的な加工精度を考えた時には角を丸めた形状の方が、安価に製造することが可能である。
本実施例の分光素子を使用してY方向偏光した入射光の分光結果を図10の(a)から(h)に示す。図示しないが、図10の座標系は図9の分光素子の座標系と同じである。波長 380nm(a)および(e)から波長680nm(d)および(h)までの100nmおきの4波長において、各波長の入射光がどのように分光されるかを示した。図10の(a)から(h)までの各グラフでより白く表示されているところが、その波長の光が定在波として強く存在することを示す。この定在波が強く存在するピーク位置およびその分布は、細部で異なる部分があるものの、角を半径0.1μmで丸めた孔部形状の分光結果である図10(a)から(d)と、角を半径0.5μmで丸めた孔部形状の分光結果である図10(e)から(h)はほぼ同じ結果となり、どちらも同様に分光素子として機能していることがわかる。
<第2の実施形態>
図11は本発明の分光素子10の第2実施形態である。図11(a)は上面図であり、分光素子10は厚さの均一な金属板に上面すなわち入射面から下面すなわち射出面に貫通するテーパ状の孔部21を有する構造体である。図1に示した第1の実施形態の分光素子と異なるのは、分光素子10の孔部21の形状のうち、分光素子10に対する入射光の入射面形状1101と射出面形状1102が、相似形となっていることである。このため、入射面形状1101と射出面形状1102を結ぶ反射面は、入射面および反射面に対し垂直以外の角度を持って交わる。
図11(b)は、図11(a)のB−B’面の断面を示す図である。分光素子10の構造体を構成する金属板はその孔部21の内壁で入射光を反射させるが、その反射面1103は、本実施例では入射面1104および射出面1105と垂直以外の角度を持って交わる。図11(c)は図11(a)のC−C’面の断面を示す図であり、図11(b)と同じく反射面1103は入射面1104および射出面1105と垂直以外の角度を持って交わる。
本発明の分光素子10の第2実施形態を使用し、Y方向偏光した入射光の分光結果を図12に示す。図12左の座標系は図11の分光素子の座標系に対応しているが、X軸の正方向が180度異なるので注意を要する(ここは図面の上下を入れ替え、合わせても良い)。(a)が波長440nmを分光した結果、(b)が波長540nmを分光した結果、(c)が波長640nmを分光した結果となる。光の見え方としては(a)が青、(b)が緑、(c)が赤である。(a)と(b)を比較するとピーク位置の差は少ないものの、Y方向で106nmから110nmに移動していることがわかる。また、(b)と(c)を比較すると、さらにピーク位置がY方向112nmに移動していることがわかるほか、2番目および3番目のピークが145nm、および170nm付近に表れている。これらの結果から、本実施形態の素子も分光素子として機能していることがわかる。
<第3の実施形態>
本発明の分光素子10を用い、分光装置1300を構成した例を図13に示す。分光素子10はここまで述べてきた分光素子である。分光素子そのものの実施形態としてはどの形態も用いることが出来る。分光素子への入射光(図では一例として白色光)を孔部20で分光し、分光分布の局在位置となる分光素子の下面に受光素子(1302から1314)を配置することによって、前記分光分布を電気信号に変換することができる分光装置を実現している。
受光素子(1302から1312)は半導体(たとえばシリコン)基板1301上に構成さる。半導体基板1301上の受光素子は、一般的な半導体基板上の受光素子とその製造方法を用いることが出来る。
個別の受光素子(1302から1312)は、各受光素子が受光する波長は一定の波長になるために、個々の受光素子において、波長に対する受光感度を変えることが出来るのであれば、受光波長に受光感度を合わせることでより効率的な分光装置を構成することが可能である。例えば受光素子1302は青の波長を受光するので、青の感度を上げた受光分光特性を持つ受光素子とすることで、弱い入射光でも確実な分光結果が得られる分光装置となる。
また個別の受光素子(1302から1312)が同じ受光分光特性を持つ構造とすると、従来の撮像素子の製作過程と同じ製作過程で製作することが可能となり、撮像素子の大量生産工程を用いて生産できることから安価に分光装置を実現できる。
本分光装置に組み合わせる撮像素子の構成を図14に示す。図14に示す撮像素子は、撮像素子の形式としてはCMOS型撮像素子であるが、CMOS型撮像素子だけでなくCCD型撮像素子およびその他の形式の撮像素子でも使用可能である。
個々の受光素子1410は、光を電荷に変えるためのフォトダイオード1402、フォトダイオードに蓄積された電荷を、露光開始前にリセットライン1405からの信号でリセットするリセットトランジスタ1404、フォトダイオード1402の信号を増幅するアンプ1406、および増幅された信号を読み出し選択信号ライン1409の信号によって読み出しライン1421に読み出す、読み出しトランジスタ1408から構成される。各行の読み出し選択信号ラインは垂直シフトレジスタ1460に接続されていて、本実施例では、一行を同時に出力することが可能となっている。各読み出し選択ラインは必要に応じて垂直シフトレジスタ1460により選択される。
個々の受光素子から読み出された受光信号は、読み出しライン1421から1431を通じて読み出される。各ラインには水平選択トランジスタ1441から1451が接続されていて、水平シフトレジスタ1470からの選択に応じて接続をONにすることで、信号を出力ライン1480に出力し、最終的には出力端子1482から出力される。もちろん、素子の構成は選択が自由であり、本発明はこの構成に限定されるものではない。
図13に示す受光素子1302から1314に相当する受光素子が、図14では受光素子1420から1430,あるいは受光素子1440から1450である。必要とする分光分解能に合わせて受光素子を配置することにより、分光装置を構成することができる。受光素子を一定間隔に配置すると、図5に示した本発明の分光素子を使用したY方向偏光入射光の分光スペクトル強度からも判るように、ほぼ波長等間隔な分光結果が得られるため、既存の撮像素子や各種フォトセンサアレイを流用することも可能であるという利点がある。
分光素子と受光素子を接続するためには、以下のような方法がある。まず、シリコン基板上などに受光素子を半導体作製行程によって作製する。表面が平滑であればそのままでよいが、平滑でない場合はシリカガラス等を積層し表面を平滑化する。その後、平滑化された受光素子の表面に金属皮膜をプラズマCVDあるいは蒸着等で積層し、最後にエッチング等で孔部を形成する。あるいは、シリカガラスをさらに積層した後にエッチング等で孔部を形成し、形成された孔部の反射面に金属被膜を蒸着、CVDあるいは無電解メッキ等により形成する。これらの作製方法は半導体行程によって実施することが可能であり、受光素子に対して精度よく分光素子を位置決めできる利点がある。
<第4の実施形態>
図15に本発明の分光装置を二次元方向に複数配列して構成した二次元分光装置を示す。本発明の分光素子1510をXY方向に連続して複数配置し、二次元の分光装置1500としたものである。ひとつの分光装置では測定できない、複数の光源の分光や光源分光分布を測定することが可能になる。前述しているように半導体製造工程を用いれば分光素子を複数おなじ分光装置上に高精度に製作することが可能であり、精度の高い二次元分光測定装置が実現できる。信号出力は、通常の撮像素子と同様に読み出せばよく、出力を一つにすることも、必要に応じて分光装置ごとに出力することも可能である。さらには、分光結果が二次元に得られることから通常の撮像素子としての利用も可能になる。撮像素子として使用する場合は、定在波による分光であるために入射光の損失が少なく高感度の撮像素子を実現可能である。
<第5の実施形態>
図16は本発明の分光素子10の別の実施形態である。図16は孔部の上面図であり、分光素子10は厚さの均一な金属板に上面すなわち入射面から下面すなわち射出面に貫通する台形状の孔部20を有する構造体である。孔部20の形状のうち、図示しない深さ方向には6.27μmの厚みを持つ。本実施例の分光素子を使用してY方向偏光した入射光の分光結果を図17の(a)から(e)に示す。図17の配置の関係で、図16と図17で座標が回転していることに注意されたい。(a) 波長 390nm、(b) 波長490nm、(c) 波長590nm、(d)波長 690nm、および(e)波長790nmの100nm間隔の5波長において、各波長の入射光がどのように分光されるかを、深さ方向Z=0μmからZ=6.3μmの8箇所の断面で示した。図17中の各分光結果において、グラフでより白く表示されているところが、その波長の光が定在波として強く存在することを示す。
図17を見るとわかるように、定在波が強く存在するピーク位置およびその分布は、Z方向に深くなっていくほどに中央部に存在するようになる。Z=0μmでは、孔部20のY方向側面(台形の斜辺)に平行した定在波が存在するが、強く存在する部分は見られない。定在波は(a)〜(e)を比較すると、波長が長くなるにつれ、定在波の波数(図中の筋)が減少する傾向がある。図17(e)波長790nmではZ=2.7μm以上の深さで中央に強いピークが見られ、(d)波長690nmではZ=3.6μm以上、(c)波長590nmおよび(b)波長490nmではZ=4.5μm以上、(a)波長390nmではZ=5.4μm以上の深さで中央に強いピークが見られる。図17に示す全波長について、孔部20の中央部において分光を得たい場合はZ=5.4μm以上の深さが適していることがわかる。
<第6の実施形態>
図18は本発明の分光素子の孔部20の形状のバリエーションを表形式で示したものである。図中、大きく左右にY方向の長さ12.8μmと6.4μmに別れ、さらにそれぞれに左辺のX方向の長さが6.4μm、4.8μm、3.2μmの3種類がある。また、ここまで示した6種類の形状に対して、右辺/左辺の割合を0%(すなわち二等辺三角形となる)から75%まで25%おきに試作した。これらの孔部形状においても分光素子として機能することを確認した。
本発明の分光素子の構成例 本発明の分光素子の概念図 本発明の分光素子の孔部形状定義図 本発明の分光素子を使用してY方向偏光入射光の波長別分光結果 本発明の分光素子を使用したY方向偏光入射光の分光スペクトル強度 本発明の分光素子を使用したY方向偏光入射光の分光スペクトル強度のピーク位置波長依存性 本発明の分光素子を使用してX方向偏光入射光の波長別分光結果 本発明の分光素子を使用したX方向偏光入射光の分光スペクトル強度(以後未編集) 本発明の分光素子の孔部形状の変形例 孔部形状の変形例の分光素子を使用してY方向偏光した入射光の分光結果 本発明の分光素子の第2実施形態 第2実施形態を使用し、Y方向偏光した入射光の分光結果 本発明の分光素子を用い、分光装置を構成した例 分光装置に組み合わせる撮像素子の構成 本発明の分光装置を二次元方向に複数配列して構成した二次元分光装置 本発明の分光素子の第5実施形態 本発明の分光素子を使用したY方向偏光入射光のZ方向に対する分光スペクトル強度 本発明の分光素子の第6実施形態
符号の説明
10 分光素子
11 反射面
20 孔部
90 孔部形状の変形例1
92 孔部形状の変形例2
1300 分光装置
1301 半導体基板
1420 受光素子
1500 二次元分光装置
1510 分光装置(二次元分光装置の構成用途としての)

Claims (12)

  1. 上方に開口した穴部もしくは孔部であって、水平断面が互いに平行でない少なくとも一対の対向面を有する多角形の穴部もしくは孔部を有する金属板からなり、
    前記穴部もしくは孔部の内側面が鏡状の反射面となっており、
    前記開口から前記穴部もしくは孔部に入射する偏光された入射光を、前記反射面において反射することによる干渉によって、前記穴部もしくは孔部の内部に定在波を生じさせて、前記入射光を複数の波長帯に分光することを特徴とする分光素子。
  2. 前記穴部もしくは孔部の底部において、水平方向に異なる位置に異なる波長帯の分光成分を集光させることを特徴とする請求項1記載の分光素子
  3. 前記穴部もしくは孔部の水平断面の形状が、二等辺三角形であることを特徴とする請求項1または2記載の分光素子。
  4. 前記穴部もしくは孔部の水平断面の形状が、等脚台形であることを特徴とする請求項1または2記載の分光素子。
  5. 厚さの均一な金属板の上面から下面に貫通する孔部を有し、
    前記孔部の、前記金属板の前記上面および前記下面に平行な横断面の形状は、前記横断面を構成する辺のうち、最長の辺から長い順に3辺を選んだときに、3辺の延長線が頂角を狭角とする二等辺三角形を形成すると共に、
    前記孔部の内側面のうち、少なくとも前記二等辺三角形の等辺に接する内側面が鏡状の反射面となっていて、
    前記金属板の上面から前記孔部に入射する偏光された入射光が、
    前記孔部の前記反射面において前記入射光が反射されることによる干渉によって複数の波長帯に分光することを特徴とする分光素子。
  6. 前記分光素子の上部に偏光素子を設け、前記偏光素子の偏光方向を前記二等辺三角形の底辺の垂直二等分線と平行方向とすることを特徴とする請求項5に記載の分光素子。
  7. 前記分光素子の上部に偏光素子を設け、前記偏光素子の偏光方向を前記二等辺三角形の底辺の垂直二等分線と直角方向とすることを特徴とする請求項5に記載の分光素子。
  8. 前記孔部が、前記金属板の上面および下面に対し垂直に貫通することを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の分光素子。
  9. 請求項5から8のいずれかに記載の分光素子と、前記入射光が分光した分光分布の局在位置となる前記分光素子の下面に配置された受光素子とからなり、該受光素子により前記分光分布を電気信号に変換することを特徴とする分光装置。
  10. 前記分光分布の複数の局在位置に合わせて、前記受光素子を複数配置したことを特徴とする請求項9記載の分光装置。
  11. 請求項9または10のいずれかに記載の分光装置を、二次元方向に複数配列したことを特徴とする二次元分光装置。
  12. 水平断面が互いに平行でない少なくとも一対の対向面を有する多角形の、上方に開口した、内側面が鏡状の反射面となっている穴部もしくは孔部を有する金属板を用意し、
    前記開口から前記穴部もしくは孔部に偏光された入射光を入射させ、前記反射面において反射することによる干渉によって、前記穴部もしくは孔部の内部に定在波を生じさせて、前記入射光を複数の波長帯に分光することを特徴とする分光方法。
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