JP5179333B2 - 測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の測定レンジの中から切り替えられた現在の測定レンジで入力信号についてのパラメータを測定する測定装置に関するものである。
この種の測定装置では、一般的には、下記特許文献1において出願人が従来技術として開示した測定装置のように、入力信号電圧(具体的には、このディジタル変換データ)を予め規定された上限および下限の各しきい値(しきい値データ)と比較して、入力信号電圧が上限しきい値(測定レンジのフルスケール値をFSとしたときに、1×FS)を超えたときには上位の測定レンジに切り替え、他方、入力信号電圧が下限しきい値(0.4×FS)以下となった場合には下位の測定レンジに切り替えることで、測定レンジの切り替えが行われている。
特許第3110097号公報(第2頁、第4図)
ところが、上記の測定装置には、以下の改善すべき課題がある。すなわち、この種の測定装置では、通常、上記公報に開示された測定装置のように、測定レンジの切り替えが最適化されるように、実験等に基づいて、各測定レンジの測定範囲の上限を規定する上限しきい値については例えばフルスケールと同じか若干大きい値に、また測定範囲の下限を規定する下限しきい値については例えばフルスケールの1/2近傍の値にそれぞれ固定的に決定されている。このため、この種の測定装置には、入力信号の電圧が上限しきい値を超えたり、下限しきい値を下回ったりする事態が頻繁に発生した場合には、この事態の発生に連動して測定レンジの切り替えも頻繁に発生する結果、測定値が読み取り難くなるという改善すべき課題が存在している。この場合、各測定レンジの測定範囲を拡大して、つまり測定範囲の上限を規定する上限しきい値をより高い値に固定したり、測定範囲の下限を規定する下限しきい値をより低い値に固定したりすることにより、測定レンジの測定範囲からの入力信号の電圧の逸脱の頻度を低下させて、測定レンジの切り替えの回数を減少させる構成とすることも可能である。しかしながら、この構成には、測定確度が確保できないという課題が発生する。
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、測定値の読み取り易さと測定確度の確保とを選択し得る測定装置を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、複数の測定レンジの中から切り替えられた現在の測定レンジで入力信号についてのパラメータを測定する測定部と、当該測定されたパラメータに基づいて前記測定レンジの切り替えを制御する制御部とを備えた測定装置であって、前記各測定レンジの測定範囲を規定する上限しきい値および下限しきい値が記憶された記憶部を備え、前記制御部は、前記現在の測定レンジで測定された前記パラメータが当該現在の測定レンジにおける前記上限しきい値を超えているときには上位の前記測定レンジに切り替えると共に、当該現在の測定レンジにおける前記下限しきい値を下回っているときには下位の前記測定レンジに切り替えるレンジ切替処理を実行し、かつ所定の条件を満たしたと判別したときに、前記記憶部に記憶されている前記各測定レンジの前記上限しきい値を上昇させるしきい値上昇処理および前記下限しきい値を低下させるしきい値低下処理の少なくとも一方を実行する。
請求項2記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記制御部は、前記所定の条件を満たしたときに、前記しきい値低下処理および前記しきい値上昇処理の双方を実行する。
請求項3記載の測定装置は、請求項1または2記載の測定装置において、前記制御部は、前記レンジ切替処理の実行によって発生する前記測定レンジの切り替えの単位時間当たりの回数が基準値以上となったときに前記所定の条件が満たされたと判別する。
請求項1記載の測定装置では、制御部が、現在の測定レンジで測定されたパラメータが現在の測定レンジにおける上限しきい値を超えているときには上位の測定レンジに切り替え、かつ現在の測定レンジにおける下限しきい値を下回っているときには下位の測定レンジに切り替えるレンジ切替処理を実行すると共に、所定の条件を満たしたときに、測定レンジの上限しきい値を上昇させるしきい値上昇処理および下限しきい値を低下させるしきい値低下処理の少なくとも一方を実行する。したがって、この測定装置によれば、測定レンジが頻繁に切り替えられることに起因して表示されるパラメータが読み取り難いときには、上限しきい値および下限しきい値で規定される測定レンジの測定範囲を拡大することができ、これによって測定レンジの頻繁な切り替えを回避して、測定されるパラメータを読み取り易くすることができる。また、この測定装置によれば、所定の条件を満たさないときには、元の測定レンジにおいて、パラメータについて確度の高い測定を行うことができる。
また、請求項2記載の測定装置によれば、所定の条件を満たしたときに、制御部がしきい値低下処理およびしきい値上昇処理の双方を実行して、上限しきい値を上昇させると共に下限しきい値を低下させることにより、測定レンジの測定範囲の上限側および下限側の双方を拡大することができるため、測定レンジの頻繁な切り替えをより確実に回避して、測定されるパラメータを一層読み取り易くすることができる。
また、請求項3記載の測定装置では、レンジ切替処理の実行によって発生する測定レンジの切り替えの単位時間当たりの回数が基準値以上となったときに、制御部が所定の条件が満たされたと判別して、測定レンジの測定範囲の上限側および下限側の少なくとも一方を自動的に拡大させる。したがって、この測定装置によれば、測定レンジの頻繁な切り替えの発生に起因して、測定されたパラメータの読み取りが困難になる前に、測定レンジの測定範囲の上限側および下限側の少なくとも一方を自動的に拡大することができ、これによって測定レンジの頻繁な切り替えの発生を回避できる結果、パラメータを常に読み取り易くすることができる。
以下、本発明に係る測定装置の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、測定装置1の構成について、添付図面を参照して説明する。なお、本例では、入力信号S1のパラメータとして、入力信号S1の電圧(具体的には電圧実効値)を測定する測定装置(電圧測定装置)を例に挙げて説明する。
図1に示す測定装置1は、レンジ切替部2、A/D変換部3、演算制御部4、記憶部5、操作部6および表示部7を備え、入力信号S1の電圧実効値Veを測定して表示可能に構成されている。
レンジ切替部2は、一例として、不図示の演算増幅器、演算増幅器に接続された入力抵抗および帰還抵抗、並びに入力抵抗および帰還抵抗のうちの少なくとも一方の抵抗値を切り替えることによって演算増幅器の増幅率をステップ状に変化させる複数のスイッチを備えて構成されている。また、レンジ切替部2は、A/D変換部3および演算制御部4と共に本発明における測定部を構成する。このレンジ切替部2では、スイッチのオン・オフ状態の組み合わせによって取り得る演算増幅器の増幅率の段数(切替数)が、測定レンジの段数となっている。レンジ切替部2は、演算制御部4から出力される制御信号Scによって増幅率、つまり測定レンジが設定される。本例では、一例として、レンジ切替部2の測定レンジは、「15ボルト」、「30ボルト」および「60ボルト」の3段となっている。したがって、測定レンジ(「15ボルト」、「30ボルト」および「60ボルト」)での各増幅率α1,α2,α3(特に区別しないときには、「増幅率α」)は、「15ボルト」レンジでの増幅率α1を基準としたときに、順次、1/2倍ずつ減少するように(α2=α1/2,α3=α2/2)規定されている。以上の構成により、レンジ切替部2は、入力信号S1を入力すると共に、設定されてる測定レンジに対応する増幅率で増幅して、増幅信号S2として出力する。また、本例では、測定レンジを、「15ボルト」レンジから「30ボルト」レンジに、また「30ボルト」レンジから「60ボルト」レンジに切り替えることを「レンジアップ」といい、逆の場合を「レンジダウン」というものとする。
A/D変換部3は、増幅信号S2を入力すると共に、所定のサンプリング周期でディジタルデータD1に変換して出力する。演算制御部4は、CPUで構成されて本発明における制御部としても機能し、初期設定処理、入力信号S1の電圧実効値Veを算出する実効値算出処理、算出された電圧実効値Veと測定レンジについての上限しきい値および下限しきい値とを比較して測定レンジを切り替えるレンジ切替処理、レンジ切替処理で使用する上限しきい値および下限しきい値を切り替えるしきい値切替処理を実行する。
記憶部5は、ROMやRAMなどで構成されて、上記の各処理における演算制御部4の動作を規定するプログラム、上限しきい値および下限しきい値、測定装置1が有する全測定レンジを示すレンジ情報、全測定レンジでの増幅率α、並びに測定レンジの初期値が予め記憶されている。本例では一例として、記憶部5には、各測定レンジ(「15ボルト」、「30ボルト」および「60ボルト」)のフルスケール値、つまり数値「15」、「30」および「60」がレンジ情報FSとして記憶され、かつ各測定レンジでの増幅率α1,α2,α3がレンジ情報FSに対応して記憶されている。また、記憶部5には、測定レンジの初期値FSiとして全てのレンジ情報FSのうちの1つ(一例として「30」)が記憶されている。
また、記憶部5には、測定レンジを切り替えるための上限しきい値および下限しきい値として、各測定レンジのフルスケール値(レンジ情報FS(「15」、「30」および「60」)に乗算して具体的な上限しきい値および下限しきい値を算出するための係数Pが4種類記憶されている。具体的には、レンジアップのための2種類の上限しきい値VH1,VH2(以下、区別しないときには、「上限しきい値VH」ともいう)を算出するための係数として、例えば、係数P1(=1.05),P2(=1.1)が記憶されると共に、レンジダウンのための2種類の下限しきい値VL1,VL2(以下、区別しないときには、「下限しきい値VL」ともいう)を算出するための係数として、例えば、係数P3(=0.5),P4(=0.1)が記憶されている。したがって、各係数P1〜P4に基づいて算出される各上限しきい値VH1,VH2および各下限しきい値VL1,VL2は、図2に示すように、VH2>VH1>(FS)>VL1>VL2という関係となる。また、上限しきい値VH1は下限しきい値VL1と組み合わされて、測定確度を必要とする場合に使用され、上限しきい値VH2は下限しきい値VH2と組み合わされて、後述するように、表示部7に表示される測定値(電圧実効値Ve)を読み取り易くする場合に使用される。また、記憶部5には、現在の測定レンジを示す現在レンジ情報FSp、および現在の上限しきい値および下限しきい値VH,VLが更新記憶される。
操作部6は、上記した上限しきい値および下限しきい値の2つの組のうちの1組を選択するための選択スイッチ(不図示)を少なくとも備え、選択スイッチに対する操作によって選択された上限しきい値および下限しきい値の1つの組を示す選択信号Ssを演算制御部4に出力する。表示部7は、ディスプレイ装置で構成されて、演算制御部4の制御に従って測定値(電圧実効値Ve)を表示する。
次に、入力信号S1の電圧実効値Veを測定する測定装置1の動作について、図面を参照して説明する。なお、操作部6の選択スイッチは、最初は、上限しきい値VH1および下限しきい値VL1の組を示す状態になっているものとする。
まず、測定装置1では、電源投入時において、演算制御部4が、初期設定処理を実行する。この初期設定処理では、演算制御部4は、操作部6から出力されている選択信号Ssで示されている上限しきい値および下限しきい値の組を特定する。本例では、操作部6は初期状態において上限しきい値VH1および下限しきい値VL1の組を示す選択信号Ssを出力しているため、演算制御部4は、この上限しきい値VH1および下限しきい値VL1の組を使用するしきい値の組として特定する。
次いで、演算制御部4は、特定した上限しきい値VH1および下限しきい値VL1の組についての係数P1,P3、および測定レンジの初期値FSiを読み出すと共に、これらに基づいて、初期値FSiで示される測定レンジでの測定範囲を規定する上限しきい値および下限しきい値(本例の初期設定処理では、上限しきい値VH1および下限しきい値VL1)の具体的な値を算出して、現状の測定範囲についての上限しきい値VHおよび下限しきい値VLとして記憶部5に記憶させる。本例では、係数P1,P3、および測定レンジの初期値FSiは、それぞれ数値「1.05」,「0.5」,「30」であるため、演算制御部4により、上限しきい値VH1は31.5(=1.05×30)、および下限しきい値VL1は15(=0.5×30)と算出され、これらが上限しきい値VH(=31.5)および下限しきい値VL(=15)として記憶部5に記憶される。また、演算制御部4は、測定レンジの初期値FSiを現在の測定レンジを示す現在レンジ情報FSpとして記憶部5に記憶させる。また、演算制御部4は、制御信号Scをレンジ切替部2に対して出力することにより、レンジ切替部2の測定レンジを初期値FSi「30」で示される「30ボルト」に設定する。これにより、初期設定処理が完了する。
電源の投入状態において、レンジ切替部2およびA/D変換部3はそれぞれ作動状態にあるため、この状態において入力信号S1が入力されると、レンジ切替部2が、設定された測定レンジ「30ボルト」での増幅率でこの入力信号S1を増幅して、増幅信号S2として出力する動作を開始し、A/D変換部3がこの増幅信号S2をディジタルデータD1に変換して出力する動作を開始する。また、演算制御部4は、実効値算出処理を実行する。この実効値算出処理では、演算制御部4は、A/D変換部3から出力されるディジタルデータD1、現在の測定レンジを示す現在レンジ情報FSp、および記憶部5から読み出したこの測定レンジでの増幅率αに基づいて電圧実効値Veを算出して、算出した電圧実効値Veを表示部7に表示させる。演算制御部4は、この実効値算出処理をA/D変換部3のサンプリング周期に同期して実行する。これにより、表示部7には、時間と共に変化する電圧実効値Veが表示される。
また、演算制御部4は、実効値算出処理の実行の都度(つまり、電圧実効値Veの算出の都度)、レンジ切替処理を実行する。このレンジ切替処理では、演算制御部4は、算出した電圧実効値Veと、記憶部5に記憶されている現在の上限しきい値VHおよび下限しきい値VL(現状の測定範囲の上限および下限を規定するしきい値)とを比較して、測定レンジの切り替えの要否を判別する。具体的には、演算制御部4は、電圧実効値Veが上限しきい値VH以下で、かつ下限しきい値VL以上のとき(測定範囲内のとき)には、測定レンジの切り替えが不要であると判別する。一方、演算制御部4は、電圧実効値Veが上限しきい値VHを超えている(測定範囲を超えている)ときには、一つ上位の測定レンジへの切り替えが必要であると判別し、電圧実効値Veが下限しきい値VLを下回っている(測定範囲を下回っている)ときには、一つ下位の測定レンジへの切り替えが必要であると判別する。
この判別の結果、測定レンジへの切り替えが不要であるとき、例えば、図2において破線で示すように、電圧実効値Veが現状の測定レンジの測定範囲A1内(上限しきい値VH(=VH1)以下で、かつ下限しきい値VL(=VL1)以上)であるときには、演算制御部4は、記憶部5に記憶されている現状の測定レンジについての各情報(測定範囲を示す上限しきい値VHおよび下限しきい値VL、および現在レンジ情報FSp)を更新せずに維持する。
一方、一つ上位の測定レンジへの切り替えが必要であるとき、例えば、図2において実線で示すように電圧実効値Veが変化している場合において、電圧実効値Veが増加しつつ各しきい値VH,VLを横切るとき(四角印を付した状態のとき)には、演算制御部4は、記憶部5に記憶されている現在レンジ情報FSpとレンジ情報FSとに基づいて、現在レンジ情報FSpで示される測定レンジよりも一つ上位の測定レンジを決定し、この測定レンジでの測定範囲を規定する上限しきい値および下限しきい値を算出して上限しきい値VHおよび下限しきい値VLとして記憶部5に更新記憶させる。例えば、現在の測定レンジが「30ボルト」であるときには、演算制御部4は、一つ上位の測定レンジ「60ボルト」に決定し、また選択信号Ssによって上限しきい値VH1および下限しきい値VL1が選択されている状態のため、係数P1(1.05),P3(0.5)、および「60ボルト」レンジのレンジ情報FS(60)に基づいて、上限しきい値VH1を63(=1.05×60)と、下限しきい値VL1を30(=0.5×60)と算出する。また、演算制御部4は、この算出した上限しきい値VH1(63)および下限しきい値VL1(30)を、それぞれ上限しきい値VHおよび下限しきい値VLとして記憶部5に更新記憶させる。また、演算制御部4は、「60ボルト」レンジのレンジ情報FS(60)を現在の測定レンジを示す現在レンジ情報FSpとして記憶部5に更新記憶させる。また、演算制御部4は、制御信号Scをレンジ切替部2に対して出力することにより、レンジ切替部2の測定レンジを「60ボルト」に設定する。これにより、上位の測定レンジへのレンジ切替処理が完了する。
他方、一つ下位の測定レンジへの切り替えが必要であるとき、例えば、図2において実線で示すように電圧実効値Veが変化している場合において、電圧実効値Veが減少しつつ各しきい値VH,VLを横切るとき(丸印を付した状態のとき)には、演算制御部4は、記憶部5に記憶されている現在レンジ情報FSpとレンジ情報FSとに基づいて、現在レンジ情報FSpで示される測定レンジよりも一つ下位の測定レンジを決定し、この測定レンジでの測定範囲を規定する上限しきい値および下限しきい値を算出して上限しきい値VHおよび下限しきい値VLとして記憶部5に更新記憶させる。例えば、現在の測定レンジが「30ボルト」であるときには、演算制御部4は、一つ下位の測定レンジ「15ボルト」に決定し、また選択信号Ssによって上限しきい値VH1および下限しきい値VL1が選択されている状態のため、係数P1(1.05),P3(0.5)、および「15ボルト」レンジのレンジ情報FS(15)に基づいて、上限しきい値VH1を15.75(=1.05×15)と、下限しきい値VL1を7.5(=0.5×15)と算出する。また、演算制御部4は、この算出した上限しきい値VH1(15.75)および下限しきい値VL1(7.5)を、それぞれ上限しきい値VHおよび下限しきい値VLとして記憶部5に更新記憶させる。また、演算制御部4は、「15ボルト」レンジのレンジ情報FS(15)を現在の測定レンジを示す現在レンジ情報FSpとして記憶部5に更新記憶させる。また、演算制御部4は、制御信号Scをレンジ切替部2に対して出力することにより、レンジ切替部2の測定レンジを「15ボルト」に設定する。これにより、下位の測定レンジへのレンジ切替処理が完了する。
なお、一つ上位の測定レンジへの切り替えや一つ下位の測定レンジへの切り替えが必要であると判別した場合であっても、該当する上位の測定レンジや下位の測定レンジが存在しないときには、上記した測定レンジへの切り替えが不要であると判別したときと同様にして、演算制御部4は、記憶部5に記憶されている現状の測定レンジについての各情報(測定範囲を示す上限しきい値VHおよび下限しきい値VL、および現在レンジ情報FSp)を更新せずに維持する。
このようにして、演算制御部4が、実効値算出処理と共にレンジ切替処理を実行するため、図2において破線で示すように、電圧実効値Veの変動が現在の測定レンジの測定範囲A1内に収まっている入力信号S1については、測定レンジが切り替わることなく、高い測定確度でその電圧実効値Veが測定される。一方、図2において実線で示すように、電圧実効値Veの変動が現在の測定レンジの測定範囲A1を頻繁に超えたり、頻繁に下回ったりする入力信号S1については、演算制御部4によって測定レンジの切り替えがその都度実行されて、常に最適な測定レンジにおいてその電圧実効値Veが測定される。このため、各上限しきい値VH1,VL1を上限しきい値VH,VLとして使用する構成では、入力信号S1について、確度のよい電圧実効値Veの測定が可能となる。その一方で、測定レンジの切り替えが頻繁に行われる場合には、表示される電圧実効値Veを読み取り難くなることもある。
この測定装置1において、表示される電圧実効値Veを読み取り易くしたい場合には、操作部6の選択スイッチを操作して、他の上限しきい値および下限しきい値の組(上限しきい値VH2,下限しきい値VL2)を示す選択信号Ssを操作部6から演算制御部4に出力させる。演算制御部4は、上限しきい値VH2および下限しきい値VL2の組が選択されたことを示す選択信号Ssを入力したときに、本発明における所定の条件が満たされたと判別して、しきい値切替処理を実行する。
このしきい値切替処理では、演算制御部4は、操作部6から出力されている選択信号Ssで示されている上限しきい値および下限しきい値の組を特定する。この場合、選択信号Ssで示されるしきい値の組が、上限しきい値VH1および下限しきい値VL1の組から上限しきい値VH2および下限しきい値VL2の組に変更されるため、演算制御部4は、この上限しきい値VH2および下限しきい値VL2の組を使用するしきい値の組として特定する。次いで、演算制御部4は、特定した上限しきい値VH2および下限しきい値VL2の組についての係数P2,P4、および現在レンジ情報FSpを読み出し、これらに基づいて、現在レンジ情報FSpで示される現在の測定レンジでの測定範囲A1を規定する上限しきい値VHを上昇させるしきい値上昇処理を実行すると共に、下限しきい値VLを低下させるしきい値低下処理を実行して、新たな測定範囲A2を規定する(図2参照)。また、これらの各処理で算出された上限しきい値VH2および下限しきい値VL2を、上限しきい値VHおよび下限しきい値VLとして記憶部5に更新記憶させる。
具体的には、例えば現在レンジ情報FSpが「30」であるときには、本例では、上限しきい値VH2および下限しきい値VL2に対応する係数P2,P4はそれぞれ数値「1.1」,「0.1」であるため、演算制御部4により、上限しきい値VH2は33(=1.1×30)、および下限しきい値VL2は3(=0.1×30)と算出され、これらが上限しきい値VH(=33)および下限しきい値VL(=3)として記憶部5に記憶される。これにより、しきい値切替処理が完了する。これにより、図2に示すように、上限しきい値VHが、上限しきい値VH1(=31.5)から上限しきい値VH2(=33)に上昇させられ(引き上げられ)、下限しきい値VHが、下限しきい値VL1(=15)から下限しきい値VL2(=3)に低下させられて、拡大された新たな測定範囲A2が規定される。このため、測定範囲A1のときと比較して、入力信号S1について算出(測定)された電圧実効値Veが測定範囲A2を超えたり、下回ったりする事態を大幅に低減できる結果、演算制御部4による測定レンジの切り替えが大幅に減少する。したがって、最適な測定レンジへの切り替えが実施されないため、電圧実効値Veの測定確度が若干低下するものの、頻繁な測定レンジの切り替えに起因した電圧実効値Veの読み取り難くさについては大幅に改善される。
なお、さらに操作部6の選択スイッチが操作されて、上限しきい値VH1および下限しきい値VL1の組が選択されたときには、演算制御部4は、これらのしきい値に対応する係数P1,P3、および現在レンジ情報FSpに基づいて、上限しきい値VHおよび下限しきい値VLを算出し直す。この場合、測定レンジの測定範囲は、図2に示すように上限しきい値VH1および下限しきい値VL1で規定される測定範囲A1に狭められる。これにより、測定装置1は、再度、常に最適な測定レンジにおいて入力信号S1の電圧実効値Veが測定される構成(測定レンジの切り替えが最適化された構成)となり、確度のよい電圧実効値Veの測定を実行する。
このように、この測定装置1では、演算制御部4が、現在の測定レンジで測定された電圧実効値Veが現在の測定レンジにおける上限しきい値VHを超えているときには一つ上位の測定レンジに切り替え、かつ現在の測定レンジにおける下限しきい値VLを下回っているときには一つ下位の測定レンジに切り替えるレンジ切替処理を実行すると共に、所定の条件(上記の例では、上限しきい値VH2および下限しきい値VL2の組が選択されたことを示す選択信号Ssを入力したとき)に、測定レンジの上限しきい値VHを上昇させるしきい値上昇処理および下限しきい値VLを低下させるしきい値低下処理を実行する。したがって、この測定装置1によれば、測定レンジが頻繁に切り替えられることに起因して表示部7に表示される電圧実効値Veが読み取り難いときには、操作部6から所定の条件を満たすような選択信号Ssを出力することにより、上限しきい値VHおよび下限しきい値VLで規定される測定レンジの測定範囲を測定範囲A1から測定範囲A2に拡大することができ、これによって測定レンジの頻繁な切り替えを回避できるため、電圧実効値Veを読み取り易くすることができる。
また、この測定装置1によれば、演算制御部4が上限しきい値VH1および下限しきい値VL1の組が選択されたことを示す選択信号Ssを入力したときに測定レンジの上限しきい値VHおよび下限しきい値VLを元の値に戻して測定範囲をA1に狭める処理を実行するため、必要に応じて選択信号Ssで示される上限しきい値VH1および下限しきい値VL1の組を切り替えることにより、測定される電圧実効値Veの確度の確保と、電圧実効値Veを読み取り易さとを選択することができる。
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、操作部6から所定の条件を満たすような選択信号Ssが出力されたときに、演算制御部4が、しきい値低下処理およびしきい値上昇処理の双方を実行して、上限しきい値VHを上昇させると共に、下限しきい値VLを低下させることにより、測定レンジの測定範囲の上限側および下限側の双方を拡大して、測定レンジの頻繁な切り替えを確実に回避して、測定されるパラメータを確実に読み取り易くすることができるという、より好ましい構成としたが、しきい値低下処理およびしきい値上昇処理のいずれか一方のみを実行する構成とすることもできる。この構成においても、測定レンジの測定範囲を拡大できるため、測定レンジの頻繁な切り替えを軽減でき、電圧実効値Veを読み取り易くすることができる。
また、しきい値低下処理およびしきい値上昇処理の少なくとも一方を実行するための所定の条件として、選択スイッチを備えた操作部6を設けると共に、この選択スイッチに対する操作によって出力される選択信号Ssの示すしきい値の組が所定の組(上限しきい値VH2および下限しきい値VL2の組)であることを条件としているが、演算制御部4が、単位時間当たりの測定レンジの切り替え回数を計測して、この回数が予め決められた基準値以上となったときに、所定の条件が満たされたとして、しきい値低下処理およびしきい値上昇処理の少なくとも一方を実行する構成とすることもできる。この構成によれば、測定レンジの頻繁な切り替えの発生に起因して、電圧実効値Veの読み取りが困難になる前に、測定レンジの測定範囲の上限側および下限側の少なくとも一方が自動的に拡大されるため、測定レンジの頻繁な切り替えの発生を回避して、電圧実効値Veを常に読み取り易くすることができる。
また、各測定レンジに共通の係数Pと、各測定レンジのフルスケール値を示すレンジ情報FSとに基づいて、各しきい値VH1,VH2,VL1,VL2を算出する構成について上記したが、各しきい値VH1,VH2,VL1,VL2を測定レンジ毎に予め規定して記憶部5に記憶させておき、この各しきい値VH1,VH2,VL1,VL2を使用する構成を採用することもできる。また、測定レンジの測定範囲の上限および下限を規定するしきい値として、それぞれ2種類のしきい値(VH1,VH2と、VL1,VL2)を規定することにより、測定範囲の上限および下限を2段階に切り替える構成について上記したが、測定範囲の上限および下限を規定するしきい値として3種類以上のしきい値を備え、3段階以上に切り替える構成とすることもできる。
また、例えば、本発明におけるパラメータとしての入力信号S1の電圧実効値Veを測定する測定装置(電圧測定装置)1に適用した例について上記したが、測定レンジの自動切り替え(オートレンジ切り替え)機能を備えて、抵抗、電流、電力および温度等の各種のパラメータを測定可能な抵抗測定装置、電流測定装置、電力計、マルチメータなどの各種の測定装置に適用することができる。
測定装置1の構成を示すブロック図である。 測定レンジのフルスケール値(レンジ情報FS)、各しきい値VH1,VH2,VL1,VL2、および電圧実効値Veとの関係を説明するための説明図である。
符号の説明
1 測定装置
2 レンジ切替部
3 A/D変換部
4 演算制御部
5 記憶部
Ve 電圧実効値
VH,VH1,VH2 上限しきい値
VL,VL1,VL2 下限しきい値

Claims (3)

  1. 複数の測定レンジの中から切り替えられた現在の測定レンジで入力信号についてのパラメータを測定する測定部と、当該測定されたパラメータに基づいて前記測定レンジの切り替えを制御する制御部とを備えた測定装置であって、
    前記各測定レンジの測定範囲を規定する上限しきい値および下限しきい値が記憶された記憶部を備え、
    前記制御部は、前記現在の測定レンジで測定された前記パラメータが当該現在の測定レンジにおける前記上限しきい値を超えているときには上位の前記測定レンジに切り替えると共に、当該現在の測定レンジにおける前記下限しきい値を下回っているときには下位の前記測定レンジに切り替えるレンジ切替処理を実行し、かつ所定の条件を満たしたと判別したときに、前記記憶部に記憶されている前記各測定レンジの前記上限しきい値を上昇させるしきい値上昇処理および前記下限しきい値を低下させるしきい値低下処理の少なくとも一方を実行する測定装置。
  2. 前記制御部は、前記所定の条件を満たしたときに、前記しきい値低下処理および前記しきい値上昇処理の双方を実行する請求項1記載の測定装置。
  3. 前記制御部は、前記レンジ切替処理の実行によって発生する前記測定レンジの切り替えの単位時間当たりの回数が基準値以上となったときに前記所定の条件が満たされたと判別する請求項1または2記載の測定装置。
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