例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図17および図18に示すように構成されている。図17に示すように、ケーシング50の内側には入力軸(中心軸)1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面)2a,2aと出力側ディスク3,3の内側面(凹面)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図18参照)が回転自在に挟持されている。
図17中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図17の右面)がローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
図18は、図17のA−A線に沿う断面図である。図18に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図18においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(図18の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図18の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工等により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図17の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は球状凹面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図18で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図18の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図18の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
このようなトロイダル型無段変速機においては、複数のパワーローラ11,11で動力を伝達している。そのため、それぞれのパワーローラ11,11が均等に動力を伝達すること、すなわち同期して動作することが非常に重要となる。パワーローラ11,11の同期が1つでも崩れると、入力された動力は、パワーローラ11,11間を循環し、出力される動力が小さくなってしまう。
出力される動力が小さくなるということは、システム全体の効率が低くなるため、このような状態になることを避けなければならない。この問題を避ける為に、ヨーク23A、23Bに凸部を設け、当該凸部をトラニオン15,15のヨーク23A、23Bに対向する端面に接触させ、この凸部の接触位置を支点とすることで、複数個のパワーローラ11,11を同期させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
上記例のヨーク23A(23B)においては、例えば、図19に示すように、枢軸14が支持される支持孔18の近傍で、ヨーク23B(23A)の端側にトラニオン15,15側に向かって突出する凸部(突条23C)が形成され、この突条23Cがトラニオン15,15の枢軸14,14が形成される端面に接触するようになっている。これにより上述のように複数個のパワーローラ11,11をより正確に同期させることが可能となる。なお、23Fは、一対の出力側ディスク3,3が配置される開口部である。
なお、ヨーク23A,23Bに、凸部等を形成する構成としては、上述のトラニオン15,15に接触させて複数のトラニオン15,15を同期させるものだけではなく、揺動するヨーク23A,23Bの支点となる凸部を形成するものが知られている(例えば、特許文献2,3参照)。また、凸部の形成に際しては、上述のようにヨーク23A,23Bに一体に凸部を形成する方法と、ヨーク23A,23Bに孔等の凹部を形成し、この凹部に凸部となる部材を取り付ける方法とがある。
また、ヨーク23A,23Bに枢軸14,14周りに傾転するトラニオン15,15の傾転範囲を規制するためのストッパとして凸部を設けたものが知られている(例えば、特許文献4,5参照)。この場合も、ヨーク23A,23Bに凸部を一体に形成する方法と、ヨーク23A,23Bに孔等の凹部を設け、凸部となる部材を凹部に取り付ける方法とがある。
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態について説明する。なお、この実施の形態のトロイダル型無段変速機の特徴は、ヨークとトラニオンとの構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、第1実施形態の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図17から図19と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1は本発明の実施の形態のトロイダル型無段変速機を示す要部断面図、図2は、前記トロイダル型無段変速機を示す要部斜視図、図3は図2の円部分の拡大図である。
図1から図3に示すように、この例においては、トラニオン15の支持板部16に代えて、支持梁部16aが設けられている。当該支持梁部16aの外輪28に対向する内側面が円筒状凸面16bとされている。円筒状凸面16bの円筒部分の中心軸の方向は、枢軸14,14の軸方向と平行となっている。
円筒状凸面16bの中心軸は、枢軸14,14の中心軸に対して入力側ディスク2および出力側ディスク3の径方向外側となっている。すなわち、円筒状凸面16bの中心軸は、中立位置のパワーローラ11,11の回転中心軸方向に沿って、枢軸14,14の中心軸よりパワーローラ11,11から離れる側に偏芯した状態となっている。
外輪28の支持梁部16aに対向する外側面側には、円筒状凸面16bの外径とほぼ同じ内径となる円筒状凹面28aが設けられ、当該円筒状凹面28aの内周面を円筒状凸面16bの外周面に当接した状態で、前記円筒状凸面16bの中心軸を回転中心としてパワーローラ11とともに外輪28を左右に揺動可能となっている。
これにより、パワーローラ11,11を入力軸1(ディスク2,3の回転中心軸)の軸方向に僅かに移動させて、各構成部材の弾性変形量の変化に対応させることが可能となる。
トラニオン15の一対の折れ曲がり壁部20,20の互いに対向する内側面には、それぞれ外輪28の外周面に当接する案内面20aが形成されており、パワーローラ11,11にトラクション力が作用した際に、どちらか一方の案内面20aに外輪28の外周面が当接して、トラクション力をパワーローラ11からトラニオン15に伝達するようになっている。
また、パワーローラ11,11は、前記変位軸23の先端部23bに対応する支持軸23cにラジアルニードル軸受11dを介して回転自在に支持されている。なお、支持軸23cは、外輪28に一体に形成されている。パワーローラ11,11は、支持軸23cに対してワッシャ11bと止め輪11cで抜け止めされている。
外輪28は、分離防止用ブラケット16cにより、支持梁部16aから離れないように押えられている。分離防止用ブラケット16cは、支持梁部16aの背面側を跨いだ状態に配置されて、両端部が、支持梁部16aから左右にはみ出した状態となる外輪28の背面の左右側部に固定されている。また、分離防止用ブラケット16cは、パワーローラ11の円筒状凸面16b周りの必要範囲内の回転を阻害しないようになっている。
ここで、パワーローラ11を円筒状凸面16bの軸心を中心に回転させると、上述のようにパワーローラ11は、入力軸1の軸方向にも移動することになり、上述の弾性変形による各部材の変位に対応可能となる。しかし、パワーローラ11が枢軸14周りに傾転した場合と似た動作で円筒状凸面16b周りに回転した場合に、変速比に影響を与える虞があるが、上述のように円筒状凸面16b周りのパワーローラ11の回転半径が枢軸14周りのパワーローラ11の回転半径より大きいので、変速比に与える影響は極めて僅かで、実際の変速に影響を与えないレベルか、容易に修正可能なレベルとなり、特に変速比に問題を生じるようなことがない。
このような円筒状凸面16bを有して、上述のようのパワーローラ11を円筒状凸面16b周りに回転させて入力軸1方向に変位させるトラニオン15の方が、パワーローラ11を入力軸1方向に変位させるために、変位軸23によりパワーローラ11を揺動させるものや、トラニオン15の内側面に対して左右にパワーローラ11を移動させるものより製造コストを低減できる。
円筒状凸面16bを有するトラニオン15では、上述の変位軸23を用いるもの等に比較して、パワーローラ11を入力軸1方向に変位させる際の揺動抵抗を小さくできるため、押圧装置12の押し付け力を効率的にトラクション接触点に伝達できる。その結果としてトラクション係数を大きく設定できる。すなわち、従来、トラニオンで必要だった限界トラクション係数と動作トラクション係数とのマージンを小さくできる。このことからトランスミッションの効率を向上させることができる。
この例のヨーク23Aは、ポスト64が挿入される係止孔19の部分において、ポスト64がピンで回転自在に接合されるようになっており、ヨーク23Aの入力軸1と直交する方向の中央で、厚さの中央となる位置に、入力軸1の軸方向に沿ってピンを挿通するためのピン孔23Dが形成されている。ピン孔23Dは、入力軸1の軸方向に並んで2つ形成される係止孔19,19に対して、それぞれ、その中心を通過するように貫通して形成されている。そして、このピン孔23Dに挿入されるピンを中心としてヨーク23Aが揺動するようになっている。なお、下側のヨーク23Bも同様の構成でピンを中心に揺動するようになっている。
トラニオン15の駆動ロッド29が設けられる枢軸14の反対側となる上側の枢軸14には、ラジアルニードル軸受30の上側となる位置、すなわち、上側のヨーク23Aの上側となる位置に、各トラニオン15,15の傾転角を同期させるためのワイヤが架け渡される周知のワイヤプーリ14aが設けられている。なお、従来、ワイヤプーリ14aを駆動ロッド29側に設ける場合が多いが、この例では、駆動ロッド29の反対側となる枢軸14にワイヤプーリ14aが設けられている。
このワイヤプーリ14aは、この例において、一対の枢軸14,14のうちの一方のヨーク23A(上側のヨーク23A)に支持される枢軸14が一方のヨーク23Aを貫通するとともに、一方のヨーク23Aに対してトラニオン15の反対側となる位置に当該枢軸14に固定される固定部材となっている。また、ワイヤプーリ14aは、止め輪14bにより枢軸14に取り付けられるとともに、例えば、スプライン構造やピンやキー等の周り止め構造を有して、枢軸14に取り付けられており、枢軸14と一体に回転するようになっている。
また、ワイヤプーリ14aのヨーク23Aに対向する側面、すなわち、トラニオン15側の側面には、後述の一対の凸部105,106のうちの上側の凸部105の先端面に当接する当接面14cが形成されている。当該当接面14cは、ワイヤプーリ14aの枢軸14の軸心を中心とする回転に対応して円弧状に形成されるとともに、当該当接面14cは、ワイヤプーリ14aのヨーク23Aに対向する側面より凹んだ状態の円弧状の凹部(切欠部)に形成されている。すなわち、当該凹部の底面となる部分がトラニオン15の枢軸14が形成される端面15bと対向する前記当接面14cとなる。凹部の範囲、すなわち、当接面14cの範囲は、トラニオン15,15の傾転範囲となっており、後述のように当接面14cを有する凹部によって、トラニオン15の傾転範囲が規制されるようになっている。
ここで、トラニオン15の端面15bとは、支持梁部16aの上下の端面であるとともに、折れ曲がり壁部20の基端部の外側面である。
当接面14cとトラニオン15の端面15bとは、互いに平行となっている。
上側のヨーク23Aには、枢軸14を支持する支持孔18に対してヨーク23Aの端部側となる方、すなわち、中央の係止孔19に対して反対となる側に上下に貫通する貫通孔101が形成されている。
ヨーク23Aには、ポスト64が挿入される係止孔19が入力軸1の軸方向に並んで形成され、2つの係止孔19の左右には、それぞれ枢軸14が挿入される支持孔18が形成されている。
また、各係止孔19と左右の支持孔18とは、入力軸1の軸方向に直交する方向に沿って並んで配置されるとともに、係止孔19と左右の支持孔18は、それらの中心が入力軸1と直交する方向に沿った一直線上に並んで配置されている。そして、前記貫通孔101も、前記一直線上に配置されている。また、各支持孔18毎に対応して形成される各貫通孔101のそれぞれの最も近い支持孔18からの距離は等しくされている。
当該貫通孔101は、ヨーク23Aの上下両側面に開口するもので、ヨーク23Aの厚さ方向に沿って形成されている。
この貫通孔101には、円柱状の凸部形成部材102が貫通した状態に挿入されている。当該凸部形成部材102は、ヨーク23Aの厚さより長く形成され、前記貫通孔101に凸部形成部材102を挿入した場合に、凸部形成部材102が貫通孔101から外側に突出した状態となる。また、凸部形成部材102の長さは、上述のトラニオン15の端面15bとワイヤプーリ14aの当接面14cとの間の距離とほぼ等しいものとなっている。より正確には、凸部形成部材102の長さは、上述のトラニオン15の端面15bとワイヤプーリ14aの当接面14cとの間の距離より僅かに短い長さとなっている。
凸部形成部材102の外径は、貫通孔101の内径より僅かに大きなものとなっており、凸部形成部材102は、貫通孔101に圧入されることになる。貫通孔101に圧入された凸部形成部材102は、その上端部がヨーク23Aの上側側面から上側に突出し、この凸部形成部材102の上側に突出する部分が上側の凸部105とされている。
また、貫通孔101に圧入された状態の凸部形成部材102の下端部は、ヨーク23Aの下側側面から下側に突出し、この凸部形成部材102の下側に突出する部分が下側の凸部106とされている。
すなわち、ヨーク23Aの貫通孔101に挿入された状態の凸部形成部材102の上下端部は、それぞれヨーク23Aの上下の両側面から突出して凸部105,106となっている。
凸部形成部材102の上側および下側への突出長さは、ほぼ同じとなっているが、これら突出長さは、揺動するヨーク23Aが揺動範囲内で斜めとなっても、ヨーク23Aにワイヤプーリ14aやトラニオン15が接触しないように設定されている。
そして、ヨーク23Aの上の凸部105がワイヤプーリ14aの当接面14cに略接触し、ヨーク23Aの下の凸部106がトラニオン15の端面15bに略接触することで、各トラニオン15が駆動装置32により枢軸14の軸方向に変位し、当該変位に対応してヨーク23Aが揺動した際に、当該ヨーク23Aに支持される4つのトラニオン15は、ヨーク23Aの凸部105,106により、ヨーク23Aに対して軸方向の移動が規制される。これにより、各トラニオン15は、同期して軸方向に移動し、これにより傾転することになり、各トラニオン15が同期して傾転することになる。また、傾転は、ワイヤプーリ14aに架け渡されたワイヤによっても同期させられる。
また、トラニオン15が傾転した際に、上側の凸部105が当接面14cに接触した状態で、当接面14cが枢軸14の中心軸を中心として回転移動することになり、この際に当接面14cが形成されている凹部も移動することになる。そして、凹部の左右端部は、段差となっており、トラニオン15が設定された傾転範囲を越えて回転しようとすると、凸部105が段差に当接して、トラニオン15の回転が規制され、トラニオン15は、設定された傾転範囲を越えて傾転することができないようになっている。したがって、凸部105と、当接面14cの左右端部の段差とがトラニオン15の傾転範囲を規制する規制部材となる。
なお、前記例では、ヨーク23A(23B)を揺動させる構造として、ヨーク23A(23B)をポスト64(68)に回転自在にピンで接合するものとしたが、図4および図5に示すようにヨーク23A(23B)の入力軸1の軸方向の中央となる位置に円弧状の突起23Eを設け、当該突起23Eをケーシング50に固定された部材に当接させて、当該突起23Eを揺動の支点としてもよい。なお、この際に突起23Eに当接する部材に突起23Eと同形状の凹部を形成するものとしてもよい。
この例においても、ヨーク23Aには、貫通孔101が形成されるとともに、貫通孔101に凸部形成部材102が圧入されることで、凸部105,106が形成されている。但し、この例では、貫通孔101および凸部形成部材102による凸部105,106の位置が、概略四角板状のヨーク23Aの概略対角線上に配置されている。これら貫通孔101等は各支持孔18に対しては、半径方向となる直線上に配置され、貫通孔101等が配置される当該半径方向が、ヨーク23Aの対角に設けられた支持孔18どうしで同じ方向となっている。
ここで、上記例および変形例において、ヨーク23Aの貫通孔101に圧入される凸部形成部材102は、ヨーク23Aに対する軸方向位置が設定された位置となるように位置決めされる必要がある。すなわち、凸部105,106の突出量が設定された突出量となっている必要がある。また、これにより、上側の複数の各凸部105の突出量が全て等しくなるとともに、下側の各凸部106の突出量が全て等しくなる。
このような凸部形成部材102の位置決めをこの例ではプレス装置で行うようになっている。図6に示すように、プレス機械でプレスすることで、凸部形成部材102の位置を合わせるようになっている。
プレス機械の上下動するスライダには、上金型111が取り付けられており、上金型111は、略全体が平面上に形成されるとともに、ヨーク23Aの貫通孔101および凸部形成部材102に対応する位置に所定の上下方向深さの凹み112,112が形成されている。これらの凹み112,112の深さが、例えば、ヨーク23Aの上側の凸部105の突出長さとなる。また、図示しないボルスタに固定される下金型は、平面上に形成されるとともに、貫通孔101および凸部形成部材102の位置に、凹みが形成されている。この凹みは、下側の凸部106の突出長さより深くなっていればよい。
凸部形成部材102の位置合わせに際しては、ヨーク23Aの貫通孔101には、凸部形成部材102の少なくとも下端部を圧入して仮止め状態とする。
この状態で、上金型111をその平面部分がヨーク23Aの上側側面に当接するまで下げることで、各凸部形成部材102は、凹部の深さに対応する位置までさらに貫通孔101に圧入され、全ての凸部形成部材102が一度のプレスにより、設定された突出量となるように貫通孔101に位置決め固定された状態となる。
このようなトロイダル型無段変速機においては、上側のヨーク23Aの上下の凸部105,106がそれぞれ固定部材としてのワイヤプーリ14aの当接面14cと、トラニオン15の上側の端面15bとに略接触した状態となっているので、1つのヨーク23Aに支持される複数のトラニオン15の軸方向変位を正確に同期させることが可能となる。
この際に、凸部105,106が上側のヨーク23Aにだけ形成され、下側のヨーク23Bには形成されていないので、下側のヨーク23Bの加工コストを低減することができる。これによりヨーク23Aに凸部を形成するものとしても、加工コストの低減を図ることができる。
また、固定部材としてのワイヤプーリ14aと上側の凸部105とが、トラニオン15の傾転範囲を規制する規制部材としても機能するので、別途トラニオン15の傾転範囲を規制する構造を設ける必要がなく、コストの低減を図ることができる。
また、2つの凸部105,106を形成するに際し、ヨーク23Aに貫通孔101を形成するとともに、当該貫通孔101に凸部形成部材102を圧入することで、2つの凸部105,106を設けているので、ヨーク23Aに凸部105、106を一体に形成する場合よりも加工コストを低減することができる。
すなわち、円柱状の貫通孔101は、凹部等と比較して容易に加工可能であり、例えば、この例の円柱状の凸部形成部材102も比較的容易に製造可能であり、これらを精度高く加工するものとしても、コストの増大を抑制することができる。また、凸部形成部材102として、規格品(既製品)を用いるものとしてもよく、さらにコストの低減を図ることができる。
また、凸部形成部材102の位置決めも上述のようなプレスによる方法を用いれば、一回のプレスでヨーク23Aに設けられる全ての凸部形成部材102を位置決めすることができ、極めて安価に正確な位置決めを行うことができる。
また、図7および図8に示すように凸部105,106をヨーク23Aに一体に形成するものとしてもよい。この場合に、凸部105,106を設けるための加工コストが上記例や変形例より高くなる虞があるが、それ以外の作用効果は、上記例と同様である。
また、固定部材としてのワイヤプーリ14aを下側の枢軸14に設け、凸部105,106を下側のヨーク23Bに設けるものとしてもよい。
また、凸部形成部材102として、円柱状の部材を用いたが、円柱以外の柱状の部材であってもよいし、球体を用いるものとしてもよい。また、ワイヤプーリ14aの当接面14cや、トラニオン15の端面15bに当接する凸部形成部材102の端面を球面等の湾曲した凸面としてもよい。
ここで、上述のようなトロイダル型無段変速機においては、ヨーク23A,23Bに対してトラニオン15の軸方向変位を規制するだけではなく、トラニオン15の軸方向変位の最大値をケーシング50に固定される部材等で規制することが好ましい。
すなわち、駆動装置32となる駆動ピストン33,33の駆動シリンダ31内における最大移動範囲よりも、トラニオン15の上側への移動範囲を規制する構造とすることで、例えば、駆動シリンダ31内に配置される駆動ピストン33,33は、駆動シリンダ31内部の上端位置に達することがなくなり、駆動ピストン33,33が駆動シリンダ31内部の天井面に当たった場合のための逃げ構造を駆動ピストン33,33に設ける必要がなくなる。
このようなトラニオン15の上方(駆動ロッド29側の枢軸14から反対側の枢軸14に向う側)への移動を規制する構造としては、例えば、図9に示す構造を用いることができる。
すなわち、ケーシング50の上側の枢軸14の端面と対向する部分にストッパ部材201をビス202により固定する。ストッパ部材201は、枢軸14が内部に挿入される円筒部203と当該円筒部をケーシング50の内面に取り付けるフランジ部204とを有し、当該円筒部203の中心軸と上側の枢軸14の中心軸とが略一致するようになっている。
また、円筒部203の内径は、枢軸14の外径より大きく、枢軸14の上端部が円筒部203内に挿入された状態となっている。そして、円筒部203内部には、枢軸14の端面14eと対向するとともに当該端面14eと平行な内側面205を有する。当該内側面205は、軸方向中立位置の枢軸14の端面14eとの間に間隔があけられている。
駆動装置32により最も上側までトラニオン15を枢軸14の軸方向上側に移動した場合に、トラニオン15が上死点に至る前に、枢軸14の端面14eがストッパ部材201の内側面205に当接してトラニオン15の枢軸14の軸方向に沿った移動が規制されることになる。
なお、規制位置は、上述の上側の枢軸14の端面14eとストッパ部材201の円筒部203の内側面205との間隔で決まることになり、ケーシング50の内面に固定されるストッパ部材201の円筒部203の内側面205部分の厚みにより規制位置が決まることになる。
上述の傾転範囲の規制を、上述の上側の凸部105と、ワイヤプーリ14aの当接面14cを有する凹部で行うのではなく、ストッパ部材201側で行うものとしてもよい。例えば、上側の枢軸14の上端部に1つの径方向に直交するとともに軸方向に平行な平面部206を備える切欠部207を形成し、ストッパ部材201の円筒部203に外周面から内周面に至るとともに円筒部203の径方向に沿ったネジ孔を形成し、当該ネジ孔にビス208を螺合するとともに、当該ビス208の先端部を円筒部203の内周側に突出させる。
また、円筒部203のビス208が突出する部分に枢軸14の上端部に設けられた切欠部207が配置され、枢軸14が回転するとビス208の円筒部203の内側に突出した先端部が切欠部207の平面部206に当接し、枢軸14の回転が規制されるようになっている。なお、平面部206は、枢軸14の中心より浅い位置に設けられている。
そして、ビス208の位置(円筒部203内への突出量)と、切欠部207の平面部206の位置とにより、トラニオン15の傾転範囲を設定することができる。
図10は、図9に示すトラニオン15の軸方向変位と傾転範囲を規制する構造の変形例を示すもので、トラニオン15の軸方向の変位を規制する構造は、図9に示す例と同様で、トラニオン15の傾転範囲を規制する構造が図9に示す例と異なるものとなっている。
図10に示す例では、円筒部203に周方向に沿って切欠部210を設けている。当該切欠部210は、円筒部203の中心軸から設定された角度範囲で設けられている。枢軸14には、径方向に沿った孔が設けられ、当該孔にストッパピン211が圧入等により固定されている。そして、ストッパピン211は、切欠部210内に配置され、切欠部210の範囲内で枢軸14の回転を許容するようになっており、切欠部210の端部で円筒部203にストッパピン211が当接することにより、枢軸14の回転が規制される。これによりトラニオン15の傾転範囲を規制することが可能となる。
図11に示す例では、傾転範囲の規制が図9あるいは図10に示す例と同様に行われるが、ストッパ部材201の円筒部203の中央部に枢軸14の軸方向に沿ってストッパ部材201を貫通するようにネジ孔221が形成され、当該ネジ孔221にビス222が螺合され、ビス222の先端部が円筒部203の内側面205から突出した状態となっている。なお、ビス222を螺合する動作は、ケーシング50に設けられた孔51から行われるようになっている。孔51の内側の開口は、ストッパ部材201により閉塞されている。また、孔51の外側の開口には、蓋部材209がビス止めされることにより閉塞されている。
これにより、枢軸14の端面14eがビス222に当接することでトラニオン15の枢軸14の軸方向上側への移動が規制されることになり、ビス222の内側面205からの突出量を変更することで、トラニオン15の上側への移動の移動範囲を設定および変更することが可能となっている。
なお、図9から図11に示す例では、パワーローラ11およびトラニオン15が従来の変位軸23を備える構造となっている。但し、変位軸23が外輪28と一体となっている。
また、図9から図11に示す例では、下側の枢軸14にワイヤプーリ14aが取り付けられているが、上側の枢軸14にワイヤプーリ14aを取り付けて上記例と同様とすることができる。また、ワイヤプーリ14aに代えて凸部105と接触する固定部材を上側の枢軸14に固定するものとしてもよい。
また、トラニオン15の枢軸14の軸方向上側への移動を規制する構造としては、図12から図14に示すものを用いることができる。
この例においては、上記図1〜図8に示す例と同様に、駆動ロッド29が設けられる枢軸14の反対側となる枢軸にワイヤプーリ14aが設けられている。
ヨーク23A,23Bにおいては、従来と同様にその四隅部分にそれぞれ枢軸14を支持する支持孔18が設けられており、上側のヨーク23Aの上側の四隅部分に枢軸14に固定されたワイヤプーリ14aが配置されることになる。
また、上側のヨーク23Aの上側には、球面ポスト64および下側の球面ポスト68を一体に接合した状態で、かつ、入力軸1が貫通する一体型ポスト65の上端部を支持するポスト固定用プレート301が配置されている。ポスト固定用プレート301は、2本の一体型ポスト65,65を支持するもので、四角枠状に形成されている。また、四角枠状のポスト固定用プレート301は、入力軸1の軸方向に沿う2辺と、入力軸1の軸方向と直交する方向に沿う2辺とを備え、入力軸に沿う2辺の中央部でそれぞれ一体型ポスト65が支持されている。
なお、ポスト固定用プレート301は、例えば、ケーシング50の天井面に固定される。
四角枠状のポスト固定用プレート301の各角部は、ワイヤプーリ14aと上下に重なる位置に配置される。さらに、ワイヤプーリ14aには、枢軸14の中心軸を中心とする円弧状の突出部14fが上に向かって突出し、この突出部14fは、ヨーク23Aの高さ位置と重なる高さ位置となっている。すなわち、ワイヤプーリ14aの一部は、ヨーク23Aと水平方向に重なる位置に配置されている。
ワイヤプーリ14aの上部は、概略円筒状に形成されており、前記突出部14fが設けられた部分と、それ以外の部分との境界部分は段差となっている。したがって、ワイヤプーリ14aの上部が、円弧状の高い突出部14fと、円に対して残りの円弧状の部分となる低い円弧状凹部14dとから構成されることになる。
そして、ワイヤプーリ14aの円弧状の突出部14fの凹面側にポスト固定用プレート301の角部が入り込んだ状態となっており、ポスト固定用プレート301の角部と、ワイヤプーリ14aの円弧状凹部14dとが上下に重なっているとともに、駆動装置32によるトラニオン15の上下動において、ポスト固定用プレート301の下面は、円弧状凹部14dの上面の上死点より下側にあり、トラニオン15が上方に移動した場合に、ワイヤプーリ14aの円弧状凹部14dの上面がポスト固定用プレート301の下面に当接し、トラニオン15の上方移動が規制されるようになっている。
また、円弧状の突出部14fの凹面側にポスト固定用プレート301の角部が入り込んだ状態なので、トラニオン15が傾転した場合に、突出部14fの両端部のいずれかがポスト固定用プレート301の角部の端面に当接することで、トラニオン15の傾転範囲が規制されるようになっている。
なお、ポスト固定用プレート301の角部は、入力軸1の軸方向に沿う辺と、入力軸1の直交方向に沿う辺とからなり、角の頂点部分が面取りされているが、さらに、面取りされた面と、入力軸1の直交方向に沿う辺との角部が面取りされた形状となっている。
そして、ワイヤプーリ14aの突出部14fの両端部が当接する部分は、ポスト固定用プレート301の入力軸1の軸方向に沿った辺と、前述の二重に面取りされた部分となっており、この二重に面取りされた部分と、入力軸1の軸方向に沿った辺とがなす角度を調整するとともに、円弧状の突出部14fの周方向の長さを調整することで、トラニオン15の傾転範囲を設定することができる。
このような構造により、トラニオン15の枢軸14の軸方向上側への規制と、トラニオン15の傾転範囲の規制が可能となるが、基本的に従来から有る部材を用いているので、コストの増大を防止することができる。なお、上述のようにワイヤプーリ14aは、駆動ロッド29がある下側の枢軸14側に設けることが一般的であるが、ポスト固定用プレート301と上側のヨーク23Aとの間のデットスペースとなっている部分にワイヤプーリ14aを配置しても、変速機のスペース効率を悪化させることがない。また、ヨーク23A,23Bにトラニオン15の傾転範囲を規制する部材を設ける必要がないので、ヨーク23A,23Bの加工コストの増大を防止することができる。
上述のような構造でも、トラニオン15の枢軸14の軸方向に沿った上方移動と、トラニオン15の傾転範囲を規制することができる。なお、上述の構造で、トラニオン15の枢軸14の軸方向上側への移動だけを規制し、トラニオン15の傾転範囲の規制は、図1から図3に示す上記例と同様の構成を用いてもよい。また、ヨーク23Aに対するトラニオン15の枢軸14の軸方向の移動の規制は、上記例の上下の凸部105,106を用いた構造が用いられる。
ここで、図12および図14に示すトロイダル無段変速機の要部は、1つのモジュール(サブアッセンブリ)として組み立てられ、さらに、他のサブアセンブリと組み合わせることにより、変速機が構成されるようになっている。
この図12および図14に示されるサブアッセンブリは、例えば、パワーローラ11を備えた4つのトラニオン15と、2本の一体型ポスト65と、互いに対向する2対のパワーローラ11の間に配置されるとともに、一体に回転可能とされた一対の出力側ディスク3,3とこれらの間の外周部に設けられた出力歯車4と、これらを上下から挟むように配置された一対のヨーク23A,23Bと、上側のヨーク23Aの上に配置されたワイヤプーリ14aおよびポスト固定用プレート301とからなっている。
これらを組み立てた状態では、トラニオン15の回転に大きな負荷がかかっておらず、上述の傾転範囲内で容易にトラニオン15が回ってしまう状態となっている。なお、変速機の組み立て時に、トラニオン15は、互いに同期した傾転角となっている必要があり、各トラニオンの傾転角が不規則にばらばらになっていない必要がある。
この例では、図15および図16に示すように、トラニオン15を所定の傾転角度で傾転を止めた状態に保持する治具401が用いられている。
上記ポスト固定用プレート301の2本の一体型ポスト65の上端部を固定する部分には、それぞれ円柱状の孔302,302が形成されて、上面側で開放された状態となっている。
上記治具401は、概略板状で、下側面の中央部に前記孔302に嵌合する円筒型突条402が形成されている。また、治具401は、上辺および下辺に沿った方向に長く、それに対して高さが低い台形状に形成されている。そして、左右の斜辺となる部分に、下側に突出する当該斜辺に沿った突条403,403が形成されている。
そして、前記治具401をポスト固定用プレート301の入力軸1に直交する辺に沿って配置するとともに、中央の円筒型突条402を孔302に嵌合させると、左右の突条403,403がポスト固定用プレート301の前記辺の両端部となる角部より外側に配置される。この際に、ワイヤプーリ14aの突出部14fの左右端部の位置を調整すると、当該左右端部の両方が突条403の外側となる側面に当接するようになっている。
突出部14fの両端部がそれぞれ1つの突条403に当接することで、ワイヤプーリ14aが所定の角度で回転を禁止された状態となり、トラニオン15も所定の角度で回転を禁止された状態となる。
このような治具401を、2つ取り付けることで、このサブアセンブリの4つのトラニオン15を互いに同期した状態の所定の角度で保持することができる。