JP5176526B2 - 組立体のアンバランス修正方法 - Google Patents
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Description
本発明は、例えばエンジンアッシ等の、所定の回転軸線を有する回転部を含む組立体のアンバランス修正方法に関する。
従来、所定の回転軸線を有する回転部を含む組立体について、振動の低減や静粛性の向上等を目的として、アンバランスの測定および修正が行われている。回転部を含む組立体の一例として、エンジンアッシが挙げられる。エンジンアッシとは、エンジンの組立ラインにおいて、少なくとも主要な部分が組み立てられた組立完了状態のエンジンである。エンジンアッシについてのアンバランスの低減は、エンジンの運転時における車両1次振動を抑制する上で必須である。ここで、車両1次振動とは、車両においてエンジンのアンバランスに起因して発生する振動であって、クランク軸の1回転あたり1回発生する振動のことである。
エンジンアッシのアンバランスの測定および修正は、概略的には次のようにして行われる。すなわち、アンバランス測定装置において、エンジンアッシが、振動検出手段を有する振動架台上にセットされる。振動架台上のエンジンアッシは、そのクランク軸に連結されるモータ等の回転駆動装置により回転させられる。そして、アンバランスの測定および修正が行われるエンジンアッシの回転にともなう振動が、振動架台に設けられる振動検出手段により検出される。検出された振動の値が、予め求められている振動とアンバランスとの関係式等に基づいてアンバランスに換算され、エンジンアッシのアンバランスの測定が行われる。この測定されたアンバランスの値に基づき、エンジンアッシのアンバランスの修正が行われる。アンバランスの修正は、測定されたアンバランスが打ち消されるように、エンジンアッシの回転部における所定の部位(例えば、シリンダブロックから突出するクランク軸の端部に取り付けられるプーリの所定の部位)の重量が増加または減少させられることにより行われる。所定の部位についての重量の増減は、その所定の部位に対する切削・研削や錘(ウエイト)の取付け等により行われる。
このようにしてエンジンアッシについて行われるアンバランスの測定および修正は、エンジンアッシにおいて回転部を構成する個々の部品(クランク軸やこれに固定されるプーリやドライブプレート等、以下「単品」という。)についても行われる場合がある。つまり、エンジンアッシのアンバランスを低減させる手段としては、エンジンアッシの回転部を構成する単品についてのアンバランスを修正する方法がある。こうした単品についてのアンバランスの測定および修正は、従来、アンバランス量がゼロとなることが目的とされている。
しかし、仮に単品それぞれについてのアンバランスがゼロとされた状態でエンジンアッシが構成されたとしても、そのエンジンアッシにおいては、エンジンの機能特性に基づくアンバランスが発生することとなる。したがって、単品についてのアンバランスの測定および修正が行われても、組立状態であるエンジンアッシでのアンバランスの測定および修正は必要となる。
エンジンの機能特性に基づくアンバランスが考慮されたアンバランスの修正方法として、例えば特許文献1に開示されている技術がある。エンジンの機能特性に基づくアンバランスとしては、特許文献1にも記載されているように、例えば次のような構成に基づくアンバランスとなる。すなわち、エンジンにおいては、オルタネータやウォータポンプ等の補機類や、動弁機構を作動させるカム軸の回転に際して、クランク軸の回転が伝達される。クランク軸の回転は、クランク軸に設けられるプーリやスプロケットおよびこれらに巻回されるベルトやタイミングチェーンを介して前記のような補機類やカム軸に伝達される。このため、クランク軸には、ベルトやタイミングチェーンが巻回されることによる張力や負荷トルクが作用することとなる。こうしたクランク軸に作用する張力等が、エンジンの機能特性としてのアンバランスを生じさせる。
そして、このようなエンジンの機能特性に基づくアンバランスは、エンジンの種類によって一定の位相(方向)および量(大きさ)として発生することが、実験等により判明してきた。
特開2007−64010号公報
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、組立体としてのアンバランスの測定および修正を省略することが可能となり、作業効率の向上を図ることができるとともに、組立体についてその機能特性に基づくアンバランスを含むアンバランスを低減することができる組立体のアンバランス修正方法を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、所定の回転軸線を有する回転部と、該回転部に対して回転方向の位相についての位置決めがなされた状態で取り付けられることで前記回転部に含まれる回転体と、を有する組立体のアンバランス修正方法であって、前記回転体に対して、前記回転体の前記回転部に対する前記位置決めのための機構部分を前記回転方向の位相についての位置基準部に用い、予め求められた前記組立体の機能特性に基づくアンバランスを相殺することとなるアンバランスを付加する回転体アンバランス付加工程と、前記回転体が元々有するアンバランスの修正を行う回転体アンバランス修正工程と、を含むものである。
請求項2においては、請求項1に記載の組立体のアンバランス修正方法において、前記回転体に対するアンバランスの付加は、前記回転体に対して、該回転体の外縁部に重量減少部を形成する加工を施すことにより行うものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、組立体としてのアンバランスの測定および修正を省略することが可能となり、作業効率の向上を図ることができるとともに、組立体についてその機能特性に基づくアンバランスを含むアンバランスを低減することができる。
すなわち、本発明によれば、組立体としてのアンバランスの測定および修正を省略することが可能となり、作業効率の向上を図ることができるとともに、組立体についてその機能特性に基づくアンバランスを含むアンバランスを低減することができる。
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明は、組立体が有する機能特性に基づくアンバランスが一定の位相(方向)および量(大きさ)として発生することに着目し、組立体において回転部を構成する一つの部品である回転体についてのアンバランスの測定および修正に際して工夫を施すことにより、組立体のアンバランスの低減を図ろうとするものである。具体的には、組立体の回転部を構成する回転体のアンバランスの測定および修正に際して、回転体において、組立体の機能特性に基づくアンバランスを相殺するアンバランスを発生させる。これにより、回転体が組み付けられた状態での組立体におけるアンバランスの低減を図る。
本発明は、組立体が有する機能特性に基づくアンバランスが一定の位相(方向)および量(大きさ)として発生することに着目し、組立体において回転部を構成する一つの部品である回転体についてのアンバランスの測定および修正に際して工夫を施すことにより、組立体のアンバランスの低減を図ろうとするものである。具体的には、組立体の回転部を構成する回転体のアンバランスの測定および修正に際して、回転体において、組立体の機能特性に基づくアンバランスを相殺するアンバランスを発生させる。これにより、回転体が組み付けられた状態での組立体におけるアンバランスの低減を図る。
以下に説明する実施の形態においては、本発明に係る組立体を、自動車等の車両に搭載されるエンジンについてのエンジンアッシとする。また、本発明に係る組立体が有する回転体を、エンジンアッシのクランク軸に対して設けられるプーリ(フロントプーリ)とする。つまり、本実施形態は、本発明に係る組立体のアンバランス修正方法を、エンジンアッシのアンバランス修正方法として適用したものである。
すなわち、本実施形態のエンジンアッシのアンバランス修正方法は、エンジンの機能特性に基づくアンバランス(以下「機能特性アンバランス」という。)が、エンジンの種類によって一定の位相(方向)および量(大きさ)として発生することに着目したものである。そして、エンジンアッシにおいて回転部を構成するクランク軸に組み付けられるプーリに対して、このプーリがクランク軸に組み付けられた状態で機能特性アンバランスを相殺するアンバランス(以下「狙いアンバランス」という。)を予め発生させる。これにより、エンジンアッシのアンバランスの低減が図られる。
そこで、本実施形態に係るエンジンアッシのアンバランス修正方法は、回転体としてのプーリに狙いアンバランスを付加する工程である、回転体アンバランス付加工程としてのプーリアンバランス付加工程と、回転体としてのプーリが元々有するアンバランス(以下「イニシャルアンバランス」という。)の修正を行う工程である、回転体アンバランス修正工程としてのプーリアンバランス修正工程とを含む。
まず、プーリアンバランス付加工程について説明する。図1および図2に示すように、狙いアンバランスが付加される回転体としてのプーリ1は、円板状の部材である。
図3に示すように、プーリ1は、エンジンアッシ10が有するクランク軸11の一端部(前端部)に取り付けられる。本実施形態における組立体としてのエンジンアッシ10は、エンジンの組立ラインにおいて、少なくとも主要な部分が組み立てられた組立完了状態のエンジンである。エンジンアッシ10は、クランク軸11を有する。クランク軸11は、エンジン本体12を構成するシリンダブロックを貫通するとともに両端部がシリンダブロックから突出した状態で回転可能に支持される。そして、このクランク軸11の、シリンダブロックから突出する前端部(図3における右端部)に、プーリ1が取り付けられる。
エンジンアッシ10においては、クランク軸11の回転にともなって、このクランク軸11と一体的に回転する部分が、エンジンアッシ10に含まれる回転部となる。したがって、エンジンアッシ10における回転部は、クランク軸11の軸心線C1を回転軸線として回転する。つまり、エンジンアッシ10の回転部は、所定の回転軸線として、クランク軸11の軸心線C1を有する。
クランク軸11に取り付けられるプーリ1は、その中央部に、クランク軸11に対して軸支されるための軸支孔2を有する。つまり、プーリ1は、軸支孔2を介してクランク軸11に固定されることにより、クランク軸11に対して軸支される。
プーリ1は、クランク軸11に対して、同心配置された状態で軸支される。すなわち、円板状のプーリ1においては、図1に示すような平面視における外形形状である円周形状の中心点に対応する位置に、回転中心線C2が存在する(図2参照)。そして、プーリ1は、クランク軸11に軸支された状態で、回転中心線C2がクランク軸11の軸心線C1に一致した状態となる。このように、プーリ1は、クランク軸11に軸支された状態で、クランク軸11と一体的に同心回転する。
また、プーリ1は、クランク軸11に対して、回転方向の位相(以下「回転位相」という。)についての位置決めがなされた状態で取り付けられる。つまり、プーリ1は、エンジンアッシ10の回転部を構成するクランク軸11に対する回転位相についての相対的な関係が常に一定となるように、クランク軸11に対して相対回転不能に取り付けられる。言い換えると、クランク軸11における回転位相についての位置と、クランク軸11に取り付けられた状態のプーリ1における回転位相についての位置とは、常に一定の関係となる。したがって、クランク軸11における回転位相についての所定の位置(回転軸方向視で軸心線C1からの放射方向についての所定の方向)は、プーリ1の単品状態において、プーリ1がクランク軸11に取り付けられた状態で一致する回転位相についての位置(回転軸線方向視で回転中心線C2に対応する位置からの放射方向についての所定の方向)として再現可能となる。
本実施形態では、プーリ1は、クランク軸11に対して、キー(図示略)が用いられることにより、回転位相についての位置決めがなされる。したがって、プーリ1は、軸支孔2にキー溝3を有する。キー溝3は、軸支孔2を形成する内周面2aにおいて、回転中心線C2に沿う方向の溝状部分として形成される。また、クランク軸11の外周面にもプーリ1のキー溝3に対応するキー溝(図示略)が設けられる。そして、プーリ1とクランク軸11とのキー溝が回転位相について一致した状態に対してキーが嵌め込まれることにより、プーリ1のクランク軸11に対する回転位相についての位置決めがなされる。
このように、本実施形態では、プーリ1の内周面2aに設けられるキー溝3、クランク軸11の外周面に設けられるキー溝、およびこれらキー溝に嵌め込まれるキーが、プーリ1のクランク軸11に対する回転位相についての位置決めのための機構となる。したがって、本実施形態では、プーリ1は、クランク軸11に対する回転位相についての位置決めのための機構部分として、キー溝3を有することとなる。つまり、キー溝3が、プーリ1の、クランク軸11を含むエンジンアッシ10の回転部に対する回転位相についての位置基準部となる。
このようにしてエンジンアッシ10においてクランク軸11に取り付けられるプーリ1には、エンジンに組み付けられるラジエータファンや発電機等の補機類に動力を伝達するためのベルトが、他の補機用プーリ等とともに巻回される。
また、図3に示すように、エンジンアッシ10においては、クランク軸11の、シリンダブロックから突出する後端部(図3における左端部)に、ドライブプレート13が取り付けられる。ドライブプレート13は、エンジンの回転動力をトランスミッションに伝達するための板状の部材である。ドライブプレート13は、プーリ1と同様に、クランク軸11に対して回転位相についての位置決めがなされた状態で取り付けられ、クランク軸11と一体的に同心回転する。
以上のように、本実施形態のエンジンアッシ10は、所定の回転軸線(軸心線C1)を有する回転部と、回転部であるクランク軸11に対して回転位相についての位置決め(位相決め)がなされた状態で取り付けられることで回転部に含まれるプーリ1とを有する。
つまり、本実施形態においては、エンジンアッシ10が有する回転部は、クランク軸11ならびにこれに取り付けられるプーリ1およびドライブプレート13を含む構成であり、クランク軸11と一体的に回転する部分となる。そして、このような回転部を含むエンジンアッシ10においては、エンジンの機能特性に基づくアンバランスである機能特性アンバランスが存在する。
エンジンアッシ10において存在する機能特性アンバランスは、具体的には、例えば次のような構成に基づくアンバランスとなる。すなわち、エンジンアッシ10においては、オルタネータやウォータポンプ等の補機類や、動弁機構を作動させるカム軸の回転に際して、クランク軸11の回転が伝達される。クランク軸11の回転は、クランク軸に設けられるプーリ1やスプロケット(図示略)およびこれらに巻回されるベルトやタイミングチェーン(ともに図示略)を介して前記のような補機類やカム軸に伝達される。このため、クランク軸11には、ベルトやタイミングチェーンが巻回されることによる張力や負荷トルクが作用することとなる。こうしたクランク軸11に作用する張力等が、エンジンアッシ10の機能特性としてのアンバランスを生じさせる。
そして、このようなエンジンアッシ10において発生する機能特性アンバランスは、エンジンの種類によって一定の位相(方向)および量(大きさ)として発生する。
そこで、プーリアンバランス付加工程においては、プーリ1に対して、予め求められたエンジンアッシ10についての機能特性アンバランスを相殺することとなる狙いアンバランスが付加される。プーリ1に対する狙いアンバランスの付加に際しては、前述したようにプーリ1のクランク軸11に対する回転位相についての位置決め(位相決め)のための機構部分であるキー溝3が、回転位相についての位置基準部に用いられる。
エンジンアッシ10についての機能特性アンバランス(以下単に「機能特性アンバランス」ともいう。)は、公知の手法によって測定されるエンジンアッシ10のアンバランスが用いられることにより、予め求められる。
エンジンアッシ10のアンバランスは、例えば次のような装置構成および方法により測定される。図3に、エンジンアッシ10のアンバランスを測定するための装置構成(アンバランス測定装置)の一例を示す。
図3に示すように、本例に係るアンバランス測定装置は、エンジンアッシ10が載置支持される振動架台21と、振動架台21に設けられエンジンアッシ10に生じる振動を検出する振動検出手段としての振動ピックアップ22と、エンジンアッシ10のクランク軸11に連結されエンジンアッシ10を所定の回転数で回転させる回転駆動手段としてのモータ23とを備える。
振動架台21は、ベース(台座)24上の所定の高さ位置において、複数(図3では二箇所図示)の弾性支持部材としての振動バネ25により振動可能に支持される。振動バネ25は、振動架台21上のエンジンアッシ10が回転することで発生する振動を減衰させる。この振動架台21に対して、エンジンアッシ10が、複数(図3では二箇所図示)の支持部材26を介して載置支持される。支持部材26は、例えはシリンダ機構等により構成される。
振動ピックアップ22は、例えば加速度センサ等により構成される。振動ピックアップ22は、振動架台21において、振動架台21上に載置支持されるエンジンアッシ10の前後両端部付近に対応する位置にそれぞれ配設(内蔵)される。振動ピックアップ22は、エンジンアッシ10のアンバランス測定の際におけるエンジンアッシ10の両端部(フロント部およびリア部)の振動を、振動架台21を介して検出(ピックアップ)できるように構成される。
モータ23は、振動架台21上に載置支持されるエンジンアッシ10に対して、前後方向一側(本例では後側)から、クランク軸11に連結される。モータ23は、少なくとも一端側に突出する出力軸23aを有する。モータ23は、振動架台21上のエンジンアッシ10に対して、出力軸23aの回転軸線が、エンジンアッシ10の回転軸線(クランク軸11の軸心線C1)に一致するような位置姿勢で、図示せぬ支持手段によって支持される。そして、モータ23の出力軸23aが、振動架台21上のエンジンアッシ10のクランク軸11に対して、後側(ドライブプレート13側)から、連結部や減速機を介する等して連結される。かかる構成により、モータ23の回転駆動力によって、エンジンアッシ10(のクランク軸11)が、所定の回転数で回転させられる。
また、アンバランス測定装置においては、エンジンアッシ10のアンバランスの測定等を行うための演算制御部(図示略)が備えられる。演算制御部は、振動ピックアップ22によって検出される振動を用いて、エンジンアッシ10のアンバランスを測定する機能を有する。また、アンバランス測定装置においては、クランク軸11の回転数(回転速度)や位相等を検出するための手段(例えばロータリエンコーダ等)が適宜備えられる。
以上のような構成を備えるアンバランス測定装置により、機能特性アンバランスが生じる状態、つまりプーリ1に対するベルトの巻回等が施された状態のエンジンアッシ10についてのアンバランスの測定が行われる。ここで、アンバランスの測定対象となるエンジンアッシ10のクランク軸11に取り付けられるプーリ1としては、通常、本実施形態のアンバランス修正方法においてアンバランスの付加や修正の対象となるプーリ1とは異なる測定用の部品が用いられることとなる。つまり、機能特性アンバランスは、エンジンアッシ10により構成される、ある機種のエンジンについてのものである。このため、機能特性アンバランスが求められる際にアンバランスが測定されるエンジンアッシ10が有するプーリ1と、本実施形態のアンバランス修正方法においてアンバランスの付加や修正の対象となるプーリ1とは異なる概念である。
エンジンアッシ10のアンバランスの測定に際しては、振動架台21上にセットされた状態のエンジンアッシ10が、クランク軸11を介して連結されるモータ23により、所定の回転数で回転させられる。このエンジンアッシ10の回転にともなう振動が、振動架台21に設けられる振動ピックアップ22により検出される。そして、前述した演算制御部により、振動ピックアップ22により検出された振動の値が、予め求められているアンバランスと振動との関係式に基づいてアンバランスとして換算され、エンジンアッシ10のアンバランスが算出される。
すなわち、エンジンアッシ10のアンバランスは、その変化量が、エンジンアッシ10が回転することによる振動の変化量との関係から導かれる。つまり、エンジンアッシ10におけるアンバランスと振動との間には、所定の関係式が成り立つ。そこで、エンジンアッシ10のアンバランスの測定に際しては、予め前記関係式を導出するためのマスタリング(校正)が行われる。具体的には、ある一台のエンジンアッシ10が用いられ、このエンジンアッシ10について既知のアンバランスの変化量に対する振動の変化量が、振動ピックアップ22が用いられて測定されることにより、その装置(アンバランス測定装置)におけるエンジンアッシ10のアンバランスと振動との関係式が予め求められる。かかる関係式は、前述した演算制御部において予め設定され記憶される。
このようにして測定されるエンジンアッシ10のアンバランスは、エンジンアッシ10の回転部の偏心質量にはたらく慣性モーメントに対応するものであるため、一般的に、エンジンアッシ10のクランク軸11の軸心方向視での(軸心線C1に垂直な平面における)軸心線C1からのベクトル(アンバランスベクトル)により表される。つまり、エンジンアッシ10のアンバランスは、軸心線C1に垂直な平面において、軸心線C1に対応する点からの位相(方向)がアンバランスの方向に対応し、長さがアンバランスの量(大きさ)に対応するアンバランスベクトルにより定義される。
そして、本例に係るアンバランス測定装置においては、前述したように、振動ピックアップ22がエンジンアッシ10のフロント部およびリア部に対応する位置にそれぞれ設けられる(図3参照)。このため、フロント側に設けられる振動ピックアップ22f、およびリア側に設けられる振動ピックアップ22rそれぞれによって検出される振動に基づいて、エンジンアッシ10のアンバランスが測定される(アンバランスベクトルが導かれる)。つまり、本例に係るアンバランス測定装置においては、振動ピックアップ22fによる検出値に基づくエンジンアッシ10のフロント部におけるアンバランスと、振動ピックアップ22rによる検出値に基づくエンジンアッシ10のリア部におけるアンバランスとが測定される。
このように、アンバランス測定装置によって測定されるエンジンアッシ10についてのアンバランスが用いられることにより、エンジンアッシ10についての機能特性アンバランスが、予め求められる。機能特性アンバランスの求め方は、特に限定されるものではないが、例えば次のような方法により求められる。
すなわち、本実施形態においては、機能特性アンバランスを相殺することとなる狙いアンバランスが付加される回転体は、エンジンアッシ10においてフロント側に設けられるプーリ1である。したがって、エンジンアッシ10のフロント部についてのアンバランス、つまり本例に係るアンバランス測定装置においてフロント側に設けられる振動ピックアップ22fにより検出される振動に基づいて測定されるアンバランスが、機能特性アンバランスとして採用される。
また、機能特性アンバランスが求められるに際しては、本例に係るアンバランス測定装置により、複数台のエンジンアッシ10についてのアンバランスが測定され、これらのアンバランスについての平均値が採用されてもよい。これにより、エンジンアッシ10についての機能特性アンバランスの精度を高めることができる。なお、機能特性アンバランスが求められるに際しては、エンジンアッシ10のフロント側に設けられる振動ピックアップ22fにより検出される振動に基づいて測定されるアンバランス(エンジンアッシ10のフロント部のアンバランス)に加えて、エンジンアッシ10のリア側に設けられる振動ピックアップ22rにより検出される振動に基づいて測定されるアンバランス(エンジンアッシ10のリア部のアンバランス)が考慮されてもよい。
また、機能特性アンバランスとしては、エンジンアッシ10において機能特性アンバランスを生じさせるメカニズム、例えばプーリ1に巻回されるベルトによる張力や負荷トルクの大きさ等から理論的に導かれることで求められるものであってもよい。
以上のようにして、プーリアンバランス付加工程において用いられる機能特性アンバランスが、予め求められる。そして、プーリ1に対して、予め求められた機能特性アンバランスを相殺することとなる狙いアンバランスが付加される。
プーリ1に付加される狙いアンバランスは、プーリ1がエンジンアッシ10のクランク軸11に取り付けられ、プーリ1に対するベルトの巻回等が施されることで、機能特性アンバランスが生じる状態のエンジンアッシ10において、その機能特性アンバランスが相殺される(打ち消される)ような位相(方向)および量(大きさ)のアンバランスとなる。したがって、プーリ1に付加される狙いアンバランスは、機能特性アンバランスとは逆位相(逆方向)であって、同じ量(大きさ)のアンバランスとなる。
具体的には、図1に示すように、予め求められた機能特性アンバランスを表す機能特性アンバランスベクトルUBf(破線矢印参照)は、プーリ1において、回転中心線C2に対応する位置からのプーリ1の径方向に沿うベクトルとして表される。これは、前述したように、プーリ1がクランク軸11に軸支された状態において、回転中心線C2がクランク軸11の軸心線C1に一致した状態となることに基づく。
また、プーリ1における機能特性アンバランスベクトルUBfの位相(方向)は、プーリ1の単品状態(クランク軸11に取り付けられていない状態)において、プーリ1が有するキー溝3の位相(方向)を基準として把握される。
すなわち、本実施形態では、図1に示すように、プーリ1において、機能特性アンバランスベクトルUBfの位相(方向)が、キー溝3の位相(方向)、厳密には図1においてキー溝3におけるプーリ1の回転位相についての中央位置に対応する基準位相B1から、図1において時計方向(右回り方向)に角度αの位置である場合とする。かかる場合、エンジンアッシ10において、プーリ1がクランク軸11に取り付けられた状態での機能特性アンバランスベクトルの位相(方向)が、図1に示すような軸心方向視において、キー溝3を含むクランク軸11に対する位置決めのための機構部分の位置(基準位相B1に対応する位相)から時計方向に角度αの位置となる。
そして、図1に示すように、プーリ1における機能特性アンバランスに対する狙いアンバランスを表す狙いアンバランスベクトルUBt(実線矢印参照)は、プーリ1において、機能特性アンバランスベクトルUBfを相殺するようなベクトルとして表される。つまり、プーリ1において付加される狙いアンバランスを表す狙いアンバランスベクトルUBtは、機能特性アンバランスベクトルUBfと逆位相(逆方向、つまり位相差が180°)であって、同じ長さのベクトルとなる。このような狙いアンバランスベクトルUBtが生じるように、プーリ1に対して狙いアンバランスが付加される。
プーリ1に対する狙いアンバランスの付加は、プーリ1の重量が部分的に減少または増加させられることにより行われる。このため、図1に示すように、狙いアンバランスが付加されたプーリ1は、その重量が変化させられる部分としてアンバランス付加部5を有する。
本実施形態では、プーリ1に対する狙いアンバランスの付加は、プーリ1において所定の位相(方向)に対応する部分の重量が減少させられることにより行われる。具体的には、本実施形態におけるプーリ1に対する狙いアンバランスの付加は、プーリ1に対して、プーリ1の外周側からプーリ1の径方向に沿って回転中心線C2に対応する位置に向けて溝加工が施されることにより行われる。したがって、本実施形態では、図1に示すように、狙いアンバランスが付加されたプーリ1は、アンバランス付加部5として、溝加工部6を有する。
プーリ1に設けられる溝加工部6は、プーリ1の重量を部分的に減少させることにより、機能特性アンバランスを相殺する狙いアンバランスを付加するためのものである。このため、溝加工部6は、狙いアンバランスベクトルUBtの逆位相(逆方向)の部分(機能特性アンバランスベクトルUBfと同位相(同方向)の部分)に設けられることとなる。
プーリ1に対する狙いアンバランスの付加に際して設けられる溝加工部6の形状や大きさ等は、特に限定されるものではないが、狙いアンバランスの量(大きさ)に応じて調整される。本実施形態の場合、プーリ1に付加されるアンバランスの量(大きさ)の調整に際しては、例えば、図1および図2に示すように、溝加工部6についての、プーリ1の径方向の寸法D1、プーリ1の厚さ方向の寸法D2、および幅方向の寸法D3の少なくともいずれかの寸法の大きさの調整が行われることとなる。
以上のように、本実施形態におけるプーリアンバランス付加工程においては、プーリ1に対して、溝加工部6が設けられることにより、エンジンアッシ10についての機能特性アンバランスを相殺する狙いアンバランスが付加される。
次に、プーリアンバランス修正工程について説明する。プーリアンバランス修正工程においては、プーリ1が元々有するアンバランスであるイニシャルアンバランスの修正が行われる。
すなわち、プーリ1においては、エンジンアッシ10のクランク軸11に取り付けられてクランク軸11とともに回転する回転体として、回転中心線C2(軸心線C1)回りのアンバランス(慣性モーメントのアンバランス)が、イニシャルアンバランスとして存在する。
そこで、プーリアンバランス修正工程においては、プーリ1が有するイニシャルアンバランスが修正される。プーリ1が有するイニシャルアンバランスが修正されることにより、前述したプーリアンバランス付加工程において狙いアンバランスが付加された状態のプーリ1は、そのアンバランスとして、狙いアンバランスのみを有する状態となる。
プーリ1についてのイニシャルアンバランスの修正は、前述したようなプーリ1に対する狙いアンバランスの付加の場合と同様に、プーリ1の重量が部分的に減少または増加させられることにより行われる。つまり、プーリ1についてのイニシャルアンバランスの修正に際しては、プーリ1が有するイニシャルアンバランスが相殺されるように、プーリ1の重量が部分的に減少または増加させられる。
プーリアンバランス修正工程は、前述したプーリアンバランス付加工程との関係において、その順序は特に限定されない。つまり、プーリアンバランス修正工程は、プーリアンバランス付加工程に対して、前の工程であっても後の工程であってもよい。
したがって、プーリアンバランス修正工程が、プーリアンバランス付加工程に対して後の工程として行われる場合は、プーリアンバランス修正工程においてイニシャルアンバランスの修正対象となるプーリ1は、狙いアンバランスが付加された状態(溝加工部6が設けられた状態)のものとなる。かかる場合、プーリアンバランス修正工程においては、プーリ1のイニシャルアンバランスの修正に際して、プーリ1が狙いアンバランスを有する状態が目標の状態とされる。言い換えると、プーリアンバランス修正工程において、プーリ1について測定されたアンバランスに基づき、プーリ1のアンバランスがゼロの状態が目標とされるアンバランスの修正が行われる場合において、プーリ1に狙いアンバランスが存在する状態が目標(ゼロ点)となるように、アンバランスの測定値についての補正が施される。つまり、プーリ1に狙いアンバランスが存在する状態がアンバランス修正後の状態となるように、プーリ1についてのアンバランスの修正が行われる。
一方、プーリアンバランス修正工程が、プーリアンバランス付加工程に対して前の工程として行われる場合は、プーリアンバランス修正工程においてイニシャルアンバランスの修正対象となるプーリ1は、狙いアンバランスが付加されていない状態(溝加工部6が設けられていない状態)のものとなる。かかる場合、プーリアンバランス修正工程においては、プーリ1のイニシャルアンバランスの修正に際して、プーリ1が有するアンバランスがゼロとなる状態が目標の状態とされる。そして、このアンバランスがゼロの状態のプーリ1に対して、溝加工部6が設けられることにより、狙いアンバランスが付加されることとなる。
以上説明したプーリアンバランス付加工程とプーリアンバランス修正工程とを含む、本実施形態に係るエンジンアッシ10のアンバランス修正方法の一例について、図4および図5を加えて説明する。なお、本例では、プーリアンバランス付加工程の後に、プーリアンバランス修正工程が行われる場合について説明する。
まず、先に行われるプーリアンバランス付加工程において、プーリ1に対して、狙いアンバランスが付加される。すなわち、図4(a)に示すように、プーリ1に対して溝加工が施されることにより、アンバランス付加部5としての溝加工部6が設けられる。ここで、溝加工部6は、プーリ1に対して、切削工具等の加工具28により、プーリ1の外周面1a側からプーリ1の径方向に沿って回転中心線C2に対応する位置に向かう方向に穿設される。ただし、プーリ1に溝加工部6が設けられるための加工方法は特に限定されるものではない。本例では、プーリ1に対して外周面1a側から形成される溝加工部6は、外周面1aおよび円板状のプーリ1の一側(図2において下側)の板面1b側が開放された空間部分となる(図2参照)。
このように、狙いアンバランスが付加された状態のプーリ1においては、図4(a)に示すように、狙いアンバランスベクトルUBtで表される狙いアンバランスと、イニシャルアンバランスベクトルUBiで表されるイニシャルアンバランスとが存在することとなる。
次に、プーリアンバランス修正工程が行われる。プーリアンバランス修正工程においては、狙いアンバランスが付加された状態のプーリ(以下「アンバランス付加プーリ」ともいう。)1についてのアンバランスの測定および修正が行われる。
したがって、まず、アンバランス付加プーリ1についてのアンバランスの測定が行われる。アンバランス付加プーリ1においては、前記のとおり狙いアンバランスとイニシャルアンバランスとが存在する。このため、アンバランス付加プーリ1において実際に存在する正味のアンバランス(以下「正味アンバランス」という。)は、図4(b)に示すように、狙いアンバランスベクトルUBtとイニシャルアンバランスベクトルUBiとの合成ベクトル(以下「正味アンバランスベクトル」という)UBrにより表されることとなる。
アンバランス付加プーリ1についてのアンバランスの測定に際しては、図5に示すような装置構成(プーリアンバランス測定装置)が用いられる。なお、図5においては、プーリ1が有するキー溝3の図示を省略している。
図5に示すように、本実施形態に係るプーリアンバランス測定装置は、モータ31と、駆動軸32と、セットテーブル33とを備える。
モータ31は、プーリ1を所定の回転数で回転させる回転駆動手段として機能する。モータ31は、少なくとも一端側に突出する出力軸を有する。モータ31は、その回転駆動力により、駆動軸32を所定の回転数で回転させる。これにより、駆動軸32に支持固定されるプーリ1が、モータ31の回転駆動力によって所定の回転数で回転させられる。
駆動軸32は、プーリ1を支持するとともにモータ31を駆動源として回転する回転支持手段として機能する。駆動軸32は、モータ31の出力軸により、あるいはモータ31の出力軸に対して軸状の部材が連結されることにより構成される。つまり、駆動軸32は、モータ31の回転部に対して同心回転する軸状の部分となる。
駆動軸32は、プーリ1がクランク軸11に取り付けられる際に用いられる軸支孔2を介してプーリ1を支持する。したがって、駆動軸32は、プーリ1の軸支孔2の径(内径)と略同一の径(外径)を有し、駆動軸32の回転軸線とプーリ1における回転中心線C2とが一致する状態でプーリ1を支持する。
駆動軸32は、プーリ1を支持固定するための位置決め固定手段としてのチャック機構部32aを有する。チャック機構部32aは、駆動軸32に対するプーリ1の回転方向および軸方向の相対的な移動を規制する。つまり、チャック機構部32aは、駆動軸32に対してプーリ1を相対回転不能かつ軸方向への相対移動不能に支持する。チャック機構部32aは、プーリ1を駆動軸32に支持固定する機能を有するものであれば、その構成が特に限定されるものではない。チャック機構部32aは、例えば、プーリ1を内側からチャックする内径チャックを有するコレットチャックとして構成される。
セットテーブル33は、プーリ1が駆動軸32に対して支持される際に用いられる位置決め支持手段として機能する。セットテーブル33は、プーリ1の駆動軸32に対する支持固定に際して、プーリ1の支持およびプーリ1の駆動軸32に対する位置決め(位相決め)のために用いられる。セットテーブル33は、板状の部材により構成され、その一方(図5における上方)の板面側に、駆動軸32の軸方向に対して垂直な平面となる支持面33aを有する。
セットテーブル33は、その支持面33aが駆動軸32の周囲において上下方向(駆動軸32の軸方向)に移動可能となるように設けられる。すなわち、セットテーブル33は、駆動軸32を貫通させた状態とするための貫通孔33bを有する。そして、セットテーブル33は、貫通孔33bに駆動軸32を貫通させるとともに、支持面33aが駆動軸32の軸方向に対して垂直となる姿勢で、図示せぬ駆動手段等により上下方向に移動可能に設けられる。また、セットテーブル33は、駆動軸32の回転方向について位置決めされた状態(固定された状態)で設けられる。
セットテーブル33による、駆動軸32に対するプーリ1の回転方向の(回転位相についての)位置決め(位相決め)には、前述したプーリアンバランス付加工程においてプーリ1に形成された溝加工部6が用いられる。このため、セットテーブル33においては、支持面33aに、位相決めピン34が設けられている。
位相決めピン34は、セットテーブル33の支持面33a上に設けられる突起部分であり、この位相決めピン34に対して、支持面33aに支持されるプーリ1の溝加工部6が嵌合することとなる。したがって、位相決めピン34は、溝加工部6との関係において、次のような形状を有する。すなわち、セットテーブル33の支持面33aに対するプーリ1の支持(支持面33aに対するプーリ1の板面1bの接触)を妨げることなく、駆動軸32に対するプーリ1の回転方向の位置決めについて必要な程度の位置決め精度をもってプーリ1の溝加工部6に嵌合することができる形状である。
以上のような構成を備えるプーリアンバランス測定装置により、アンバランス付加プーリ1についてのアンバランスの測定が行われる。プーリ1のアンバランスの測定に際しては、まず、プーリ1がセットテーブル33にセットされることにより、プーリ1の駆動軸32に対する軸方向の位置決めおよび回転方向の位置決め(位相決め)が行われる。
すなわち、支持面33a上にセットされるプーリ1が駆動軸32のチャック機構部32aにより固定可能な位置となる高さ位置(以下「セット高さ位置」という。)に待機した状態のセットテーブル33に対して、プーリ1がセットされる。具体的には、プーリ1が、溝加工部6が位相決めピン34に嵌合可能な方向(溝加工部6が開放する板面1b側が下側となる方向)から、軸支孔2に対して駆動軸32を挿入させることで、プーリ1が支持面33aに対して支持される。ここで、位相決めピン34にプーリ1の溝加工部6が嵌合することにより、プーリ1の回転方向についての位置決め(位相決め)がなされる。なお、プーリ1がセットされた状態のセットテーブル33がセット高さ位置に移動することで、プーリ1の駆動軸32に対する位置決めが行われてもよい。
セットテーブル33により駆動軸32に対して位置決めされた状態のプーリ1は、チャック機構部32aにより、駆動軸32に対して支持固定される。プーリ1が駆動軸32に支持固定された後、セットテーブル33は、駆動軸32の回転にともなうプーリ1の回転を妨げない位置に移動(下降)する。
また、プーリアンバランス測定装置においては、駆動軸32の回転数(回転速度)や位相等を検出するための手段(例えばロータリエンコーダ等)が適宜備えられる。
そして、駆動軸32に対して支持固定された状態のプーリ1が、モータ31により所定の回転数で回転させられる。このプーリ1の回転にともなう振動が検出され、検出された振動の値がアンバランスとして換算され、プーリ1のアンバランスが算出される。検出された振動の値に基づくアンバランスの算出に際しては、前述したエンジンアッシ10についてのアンバランス測定装置の場合と同様に、プーリ1におけるアンバランスと振動との所定の関係式が用いられる。したがって、プーリアンバランス測定装置においては、図示は省略するが、プーリ1の回転にともなう振動を検出する振動検出手段としての振動ピックアップと、この振動ピックアップによって検出される振動を用いてプーリ1のアンバランスを測定する機能を有する演算制御部とが備えられる。
プーリアンバランス測定装置に備えられる振動ピックアップは、例えば加速度センサ等により構成され、その検出対象を、プーリ1の回転にともなう駆動軸32の振動とする。振動ピックアップは、プーリアンバランス測定装置において駆動軸32の振動を接触あるいは非接触で検出することができる位置に設けられる。振動ピックアップは、例えば、モータ31のケーシングの上面(駆動軸32が突出する側の面)31a等に対して設けられる。
以上のような構成を備えるプーリアンバランス測定装置により測定されるプーリ1についてのアンバランスとしては、前述したように、狙いアンバランスとイニシャルアンバランスとの合成である正味アンバランスとなる(図4(b)正味アンバランスベクトルUBr参照)。
そして、測定されたアンバランス(正味アンバランス)を有するプーリ1に対して、アンバランスの修正が施される。ここでは、プーリ1が有するアンバランスのうち、イニシャルアンバランスが修正される。つまり、プーリアンバランス修正工程においては、プーリ1のアンバランスの修正に際して、プーリ1が狙いアンバランスを有する状態が目標の状態とされる。このため、プーリ1のイニシャルアンバランスが修正されることで、プーリ1においては、狙いアンバランスが残った状態となる。
したがって、プーリ1のアンバランスの修正に際しては、プーリ1に対して、イニシャルアンバランスが相殺される(打ち消される)アンバランス(以下「修正アンバランス」という。)が付加される。修正アンバランスは、図4(c)に示すように、正味アンバランスベクトルUBrとの合成により狙いアンバランスベクトルUBtとなるアンバランスベクトル(以下「修正アンバランスベクトル」という。)UBmとして表される。かかる修正アンバランスの算出は、プーリアンバランス測定装置に備えられる演算制御部が用いられること等により行われる。
修正アンバランスが求められるに際しては、測定された正味アンバランスについての情報に加え、狙いアンバランスについての情報が必要となる。狙いアンバランスについての情報として、機能特性アンバランスを相殺することとなる狙いアンバランスについてのプーリ1における位相(方向)がある。つまり、プーリ1において、狙いアンバランスの位相(方向)というある特定の位相(方向)にアンバランスを発生させるに際しては、プーリアンバランス測定装置においてプーリ1の駆動軸32に対する位相(以下「プーリ1についての位相」という。)が管理される必要がある。言い換えると、プーリ1の駆動軸32に対する位相決めが行われない場合、プーリ1と駆動軸32との位相関係の把握ができず、プーリ1における狙いアンバランスの位相の把握、つまりは測定された正味アンバランスに基づく修正アンバランスの算出が不可能となる。
そこで、本実施形態のプーリアンバランス測定装置では、前述したように、プーリ1の溝加工部6とセットテーブル33の位相決めピン34とによりプーリ1の駆動軸32に対する位相決めが行われることから、プーリ1についての位相の管理が可能となる。プーリ1についての位相の管理に際しては、例えば、図4(b)に示すように、駆動軸32に対して位相決めされた状態のプーリ1において、駆動軸32に設けられる基準部(図示略)に対応する位相(基準線O1参照)が測定位相基準(0°)とされる。つまり、かかる測定位相基準が、修正アンバランスの算出を行う演算制御部等において設定される。
なお、プーリ1についての位相の管理に際しては、プーリ1におけるアンバランス付加部5としての溝加工部6の位相、つまり位相決めピン34の位相が測定位相基準として用いられてもよい。また、プーリ1についての位相の管理に際しては、プーリ1が有するキー溝3が用いられることも考えられる。しかし、プーリ1についての位相の管理にキー溝3が用いられることは、プーリアンバランス測定装置におけるアンバランスの測定精度確保の観点から好ましくない。すなわち、プーリ1についての位相の管理に際してキー溝3が用いられるとすると、駆動軸32に、キー溝3対応してプーリ1の位相決めを行うための機構部(例えばキー溝3に嵌合する凸部やキー溝3とともにキーが嵌合される凹部等)が設けられることとなる。かかる位相決めのための機構部は、振動が検出される駆動軸32にアンバランスを生じさせることとなり、プーリ1のアンバランスの測定精度を低下させる原因となり得る。
以上のように、本実施形態では、プーリ1の溝加工部6が用いられることにより、プーリ1についての位相の管理が行われる。これにより、プーリ1において、測定された正味アンバランスから修正アンバランスが求められ、特定の方向に狙いアンバランスを発生させることが可能となる。
そして、修正アンバランスに基づいて、プーリ1のアンバランスの修正、つまりイニシャルアンバランスの修正が行われる。すなわち、プーリ1に対して修正アンバランスが付加されるように、プーリ1の重量を部分的に減少または増加させるアンバランス修正部7が設けられる。
本実施形態では、アンバランス修正部7として、プーリ1において所定の位相(方向)に対応する部分の重量が減少させるための孔部が設けられる。具体的には、図4(c)に示すように、プーリ1に対して、アンバランス修正部7として、一つの修正孔8が設けられる。したがって、修正孔8は、修正アンバランスベクトルUBmの逆位相(逆方向、符号O2参照)の部分(イニシャルアンバランスベクトルUBiと同位相(同方向)の部分)に設けられることとなる。
なお、本実施形態では、プーリ1に対する修正アンバランスの付加のためのアンバランス修正部7として、一つの修正孔8が設けられているが、これに限定されるものではない。すなわち、アンバランス修正部7としてプーリ1に設けられる加工部は、複数設けられてもよい。また、アンバランス修正部7としての、プーリ1の重量減少のための加工部としては、修正孔8のような孔部に限らず、凹部や溝部などであってもよい。また、アンバランス修正部7としては、プーリ1の重量を増加させるものであってもよい。この場合、アンバランス修正部7は、例えば、修正アンバランスベクトルUBmの位相(方向)の部分に対して錘(ウエイト)の取付けが行われた部分となる。
以上のように、プーリアンバランス付加工程とプーリアンバランス修正工程とが行われることにより、プーリ1に対して狙いアンバランスを発生させることができ、狙いアンバランスを有するプーリ1が得られる。
すなわち、本実施形態のアンバランス修正方法においては、エンジンアッシ10に含まれる回転体として、キー溝3が用いられて設けられる、機能特性アンバランスを相殺することとなるアンバランス付加部5(溝加工部6)と、プーリ1が元々有するイニシャルアンバランスを相殺することとなるアンバランス修正部7(修正孔8)とを有するプーリ1が得られる。
そして、以上の工程によって得られた狙いアンバランスを有するプーリ1が、エンジンアッシ10のクランク軸11に対して取り付けられることとなる。
本実施形態のアンバランス修正方法によれば、エンジンの生産ライン等において、エンジンアッシ10としてのアンバランスの測定および修正を省略することが可能となり、作業効率の向上を図ることができるとともに、エンジンアッシ10についてその機能特性アンバランスを含むアンバランスを低減することができる。
なお、以上説明した実施形態においては、以下のような変更が可能である。
すなわち、本実施形態では、プーリ1に対する狙いアンバランスの付加は、一箇所の溝加工部6が設けられることによるプーリ1の重量の減少により行われているが、これに限定されるものではない。つまり、プーリ1に設けられるアンバランス付加部5としては、プーリ1に一または複数設けられる溝部や孔部や凹部などであってもよい。
また、プーリ1に対する狙いアンバランスの付加は、プーリ1の重量の増加により行われてもよい。この場合、プーリ1に対する錘の取付け等が考えられる。つまりこの場合、プーリ1が有することとなるアンバランス付加部5が、プーリ1に対して錘の取付けが行われた部分となる。
また、プーリ1が鋳造品である場合は、その鋳造時において、プーリ1の重量を減少させるための溝部等、あるいはプーリ1の重量を増加させるための肉厚部や凸部等の、アンバランス付加部5が設けられてもよい。
ただし、プーリ1に対する狙いアンバランスの付加は、プーリ1に対して、このプーリ1の外縁部に重量減少部が形成される加工が施されることにより行われることが、プーリ1に対するアンバランスの付加の容易さや、プーリ1の強度確保の観点から好ましい。
すなわち、プーリ1に対する狙いアンバランスの付加が、溝部や孔部や凹部等の重量減少部を形成する加工によって行われることで、プーリ1の鋳造時にアンバランス付加部5が設けられる場合と比べて、鋳造用の金型についての変更等が必要とされることなく、プーリ1に対して容易にアンバランスを付加することができる。
また、エンジンアッシ10についての機能特性アンバランスは、プーリ1が有するイニシャルアンバランスに対してそのアンバランス量(大きさ)が比較的大きくなる。このため、アンバランス付加部5がプーリ1の外縁部に設けられることで、プーリ1に対する加工量を少なくすることができ、プーリ1の強度低下を防止することができる。
なお、前述したようないずれのアンバランス付加部5であっても、アンバランス付加部5が、プーリ1に対するアンバランスの測定および修正に際してプーリ1についての位相の管理に用いられる場合(プーリアンバランス修正工程がプーリアンバランス付加工程に対して後の工程として行われる場合に対応)は、セットテーブル33に設けられることとなる、プーリ1の位相決めのための機構は、アンバランス付加部5の形状等に対応して構成される。例えば、プーリ1のアンバランス付加部5が、前述したようなプーリ1の鋳造時に設けられる肉厚部である場合は、この肉厚部が嵌合可能な凹部等が、プーリ1の位相決めのための機構として、セットテーブル33の支持面33aに設けられることとなる。
また、本実施形態では、アンバランスの付加や修正対象となる回転体が、エンジンアッシ10が有するプーリ(フロントプーリ)1であるが、これに限定されるものではない。アンバランスの付加や修正対象となる回転体としては、エンジンアッシ10において回転部を構成するクランク軸11に取り付けられるものであって、単品でアンバランスの測定および修正が行われるものであればよい。具体例としては、プーリ1と同様にクランク軸11に取り付けられるドライブプレート13や、エンジンアッシ10においてクランク軸11の回転角検出のために設けられるセンサプレート(例えばNEセンサプレート)等が挙げられる。
また、本発明は、上述した実施形態におけるエンジンアッシ10に限られることなく、所定の回転軸線を有する回転部と、この回転部に対して回転方向の位相についての位置決めがなされた状態で取り付けられることで回転部に含まれる回転体とを有する組立体であれば適用可能である。
1 プーリ1(回転体)
3 キー溝(位置決めのための機構部分)
5 アンバランス付加部
6 溝加工部
7 アンバランス修正部
8 修正孔
10 エンジンアッシ(組立体)
11 クランク軸
3 キー溝(位置決めのための機構部分)
5 アンバランス付加部
6 溝加工部
7 アンバランス修正部
8 修正孔
10 エンジンアッシ(組立体)
11 クランク軸
Claims (2)
- 所定の回転軸線を有する回転部と、該回転部に対して回転方向の位相についての位置決めがなされた状態で取り付けられることで前記回転部に含まれる回転体と、を有する組立体のアンバランス修正方法であって、
前記回転体に対して、前記回転体の前記回転部に対する前記位置決めのための機構部分を前記回転方向の位相についての位置基準部に用い、予め求められた前記組立体の機能特性に基づくアンバランスを相殺することとなるアンバランスを付加する回転体アンバランス付加工程と、
前記回転体が元々有するアンバランスの修正を行う回転体アンバランス修正工程と、
を含むことを特徴とする組立体のアンバランス修正方法。 - 前記回転体に対するアンバランスの付加は、前記回転体に対して、該回転体の外縁部に重量減少部を形成する加工を施すことにより行うことを特徴とする請求項1に記載の組立体のアンバランス修正方法。
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