JP5175436B2 - 乳化物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被覆油粒子、乳化物、及びそれらの製造方法に関し、詳しくは、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を用いて油分を乳化した水中油型乳化粒子の表面に無機微粒子が付着されてなる、油分を安定に内包した被覆油粒子、この被覆油粒子が水中に分散されてなる乳化物、及びそれらの製造方法に関する。
周知のように、薬効成分、化粧成分、殺菌成分、殺虫成分、香料成分等には油分が含まれているものが多数存在する。しかしながら、上記成分中に含まれる油分は、光、酸素、熱、圧力等から影響を受けやすく、経時安定性が良くないものが多い。また、油分の中には、苦味や独特な異臭を有するものが多数存在する。上記油分の経時安定性の不良や苦味や独特な異臭を有することは、目的とする用途における効果を保存中に低減させたり、商品価値を落としたりするという問題があった。
これに対して、従来、油分を被覆することが提案されており、特許文献1には、界面活性剤の存在下、水性溶液中に油溶性物質およびカルシウム成分を分散させ、得られた混合液を乾燥させることによって油溶性物質含有粉末を得る技術が開示されている。
特開2005−263948号公報
前記特許文献1の方法においては、油溶性物質をホモミキサーを用いて乳化しているが、このレベルの剪断力では油溶性物質の微粒化は数10μmレベルに留まり、更に、ホモミキサーではローターとステーターの間のクリアランスが広く、カルシウム粒子を1μmよりも小さく粉砕する力は無い。したがって、油溶性物質を含有した粒子の粒径は、必然的に数10μm以上と大きいものになってしまう。さらに、本技術では、加えて、粉末化させているので、粉体としての取り扱いやすさとしての粉立ちが起こらない点から考えても、数10μm以上になってしまう。このような大きな粒子では、生体内等の微小部分(例えば、皮膚、毛穴、歯周ポケット、歯牙の小窩裂溝など)への浸透性や隙間に入り込むことによる滞留性を発揮できない欠点がある。
これに対して、本発明者らは、本願発明に先立って、油粒子を水難溶性無機カルシウム塩の粒子で被覆した被覆油粒子及びその製造方法を提案している(特願2005−187210号)。
この先の出願では、油粒子の表面に平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子を付着させて平均粒径が5μm以下の被覆油粒子を得る方法を提案した。そして、更に油の中にアニオン性官能基を有する化合物を含有させることにより、水難溶性無機カルシウム塩微粒子が油粒子の表面のアニオン性官能基に吸引され強固に付着することも提案した。
前記本発明者らの先の出願によれば、アニオン性官能基を有する化合物を油分に含ませることで問題なく平均粒径が5μm以下の被覆油粒子を形成することができる。しかしながら、アニオン性官能基を有する化合物は食品や医薬品用途では使用ができなかったり、使用量に制限があったりして使いづらい。また、油粒子単独で用いて被覆油粒子も製造可能であるが、より小さい粒径の被覆油粒子を得ようとするなら、乳化剤を用いて油分を乳化した方が好ましいと考えられる。
本発明は、上記の問題点を解消しようとするものであり、詳しくは、目的とする用途に適切な乳化剤を用いることで、油粒子の微細化を図り、更に油分の水中油型乳化粒子を水難溶性無機カルシウム塩の平均粒径1μm以下の微粒子により強固に被覆した平均粒径5μm以下の微細な被覆油粒子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、ノニオン性界面活性剤のうちカルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を用いることにより上記課題が解決できることを見出した。
カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤は、炭酸カルシウムの分散安定性確保に寄与している。それは、例えば、特開2002−34510号公報に示されるようにショ糖脂肪酸エステルが炭酸カルシウムの分散安定性確保に寄与していることから確認できる。このようにノニオン性界面活性剤は、炭酸カルシウムの分散安定性確保に寄与しているため、水難溶性カルシウム塩の微粒子の単分散安定化に使われてしまい、油分の水中油型乳化粒子表面への微粒子の集積を困難にすることが容易に予想される。
しかしながら、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を油分の乳化剤として用いてみたところ、驚いたことに形成させた水中油型乳化粒子の表面に平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が強固に凝集付着して乳化粒子表面を被覆できることを知見するに至った。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明の被覆油粒子は、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を用いて油分を乳化した水中油型乳化粒子の表面に、平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなり、平均粒径が5μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の被覆油粒子乳化物は、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる一種のノニオン性界面活性剤を用いて油分を水中で乳化して得られた水中油型乳化物中の水中油型乳化粒子の表面に、平均粒径1nm〜1μmの水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなる平均粒径が10nm〜5μmの被覆油粒子が水中に分散されてなる被覆油粒子乳化物である。この被覆油粒子乳化物においては、後述のように、前記油分に対する前記ノニオン性界面活性剤の比率が1〜50重量%であり、前記水難溶性無機カルシウム塩と水中油型乳化粒子の重量比が30/10以上90/10未満であることが、好ましい。
また、本発明の被覆油粒子の製造方法は、水難溶性無機カルシウム塩を平均粒径1μm以下に微粒化して得られた水難溶性無機カルシウム塩の微粒子を、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を用いて油分を乳化した水中油型乳化粒子の表面に付着させることにより平均粒径が5μm以下の被覆油粒子を得ることを特徴とする。
本発明の被覆油粒子乳化物の製造方法は、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる一種のノニオン性界面活性剤を油分に対して1〜50重量%の比率で用いて油分を乳化して水中油型乳化物を得る乳化工程と、水難溶性無機カルシウム塩を水に分散させた後、上記水難溶性無機カルシウム塩を平均粒径1nm〜1μmの微粒子に粉砕して水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液を得る微粒化工程と、上記水中油型乳化物と上記水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液とを前記水難溶性無機カルシウム塩と水中油型乳化粒子の重量比が30/10以上90/10未満で混合することにより、上記水中油型乳化粒子を上記水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆する混合被覆工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の被覆油粒子は、油分をノニオン性界面活性剤により乳化した水中油型乳化粒子を水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した一種の油分封入ナノカプセルまたはマイクロカプセルであり、以下に示される効果が発揮される。
(1)本発明の被覆油粒子は、油分を安定に内包し、油分の経時安定性がよい。すなわち、油分を安定に内包し、油分が光、酸素、熱、圧力等から受ける影響を弱めることができる。また、本発明ではノニオン性界面活性剤により油分を乳化しているので、アニオン性官能基を有する化合物と反応する油分であっても安定に内包させることができる。
(2)本発明の被覆油粒子は、油分(薬効成分等)を大量に内包することができる。
(3)本発明の被覆油粒子は、それ自体の安定性もよい。本発明の被覆乳化粒子は、水難溶性無機カルシウム微粒子で被覆しているため壊れにくく、被覆厚が薄くても安定である。また、本発明の被覆油粒子を水に分散した乳化物として用いても安定である。
(4)本発明の被覆油粒子は、油分の味、匂い等をマスクすることができる。
(5)本発明の被覆油粒子は、徐放性を有する。詳しくは、本発明の被覆油粒子は、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が、乳化粒子表面に凝集して被膜を形成しているため、膜には微細孔が存在し、内包する油分の徐放が可能である。
(6)本発明の被覆油粒子は、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子を用いているため、生体に用いた場合でも、安全性が高い。
(7)本発明の被覆油粒子乳化物の製造方法は、被覆厚の制御が可能である。具体的には、油分の量と水難溶性無機カルシウム塩の微粒子の量を適宜調整することにより、最終的に得られる水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した被覆油粒子の被覆厚を制御することが可能である。
(8)また、本発明の被覆油粒子乳化物の製造方法によれば、被覆油粒子の粒径の制御が可能である。具体的には、水中油型乳化粒子の粒径を制御することにより、最終的に得られる水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆された被覆油粒子の平均粒径を、例えば、5μm以下に、制御することが可能である。
以下に、本発明をさらに詳しく説明する。
(被覆油粒子の構造説明)
本発明の被覆油粒子は、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を用いて油分を乳化した水中油型乳化粒子の表面に、平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなる平均粒径が5μm以下の被覆油粒子である。図1に、水中油型乳化粒子が水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆された被覆油粒子の概念図を示した。図1に示すように、水中油型乳化粒子2は油分2aとその表面に配向しているカルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤2bからなり、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子1で被覆され、本発明の被覆油粒子3となっている。
このような構造を有していることを確認する方法としては、本発明の被覆油粒子をガラス板で挟みこみ圧力をかけるという簡易な方法が可能である。この方法によると、粒子がつぶれて油分が浮き出してくるので、上記構造を確認することができる。また、水難溶性無機カルシウム塩は通常水よりも比重が重いため、この水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆された被覆油粒子の比重も水よりも重くなる。従って、被覆されていれば、経時で粒子が沈降していくことで確認できる。この沈降性は、遠心分離等の重力加速度をかけることによって短時間に確認することができる。
さらに正確には、本発明の被覆油粒子を凍結割断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することによっても確認することができる。
その他、水難溶性無機カルシウム塩として、酸やアルカリで溶解する水難溶性無機カルシウム塩を用いた場合には、その水難溶性無機カルシウム塩を酸やアルカリで溶解させれば、油分が浮き出てくるので、それを顕微鏡で観察することによっても確認することができる。
(成分の説明)
(水難溶性無機カルシウム塩)
本発明に用いる水難溶性無機カルシウム塩としては、油分と反応しない水難溶性無機カルシウム塩であれば特に限定されない。本発明に用いる水難溶性無機カルシウム塩としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、フッ化カルシウム、珪酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ化アパタイトなどが挙げられる。
(油分)
本発明における水中油型乳化粒子を構成する油分は、1種または2種以上の油分からなる。本発明に用いられる油分は、上記水難溶性無機カルシウム塩と反応しない油分であれば特に限定されない。本発明に用いられる油分としては、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、流動パラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、スチレンなどの炭化水素類、また、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素、またパルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルなどのエステル類、また、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール類、また、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸などの脂肪酸、また、サラダ油、オリーブ油、ゴマ油、ヒマシ油、大豆油、アマニ油、コーン油、パーム油、鯨ロウ、コレステロール、シリコーン油、ミネラルオイル、ラード、ミツロウ、綿実油、スクワラン、ラノリン、ワセリンなどの天然及び合成の油、油脂、ロウ類、また、ポリスチレン、ポリエチレンなどの高分子ポリマー、また、メントール、リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ムスコン、レモン香料などの香料、スクワラン、セラミド、コラーゲン、パンテノール、パントテン酸などの化粧成分、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、ビサボロール、チモールなどの殺菌成分、ビタミンA、ビタミンE、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ヒノキチオールなどの薬効・有効成分、クルクミン、カロチノイド系色素、クロロフィル系色素、青色1号、赤色3号などの色素、その他農薬、殺虫成分、抗菌、抗カビ成分等が挙げられる。
また、上記油分に該当しない油分であっても、上記油分に溶解して本発明の被覆乳化粒子とすることができる。
さらに、上記油分に溶解しない成分であっても、水難溶性無機カルシウム塩と反応しない成分であれば、油分の中に分散させて用いることもできる。このようにして用いることができるものとしては、例えば、アミノ酸や、タンパク質、酵素、核酸、糖類などが挙げられる。
このように、被覆したい物質が、油分そのものではなく、その他の成分であって、油分に溶解でも不溶でも、前述のように、水難溶性無機カルシウム塩と反応しない物質であれば、上記油分中に溶解もしくは分散させることによって包含させ、水難溶性無機カルシウム塩の微粒子によって被覆することができる。このような構成も本発明の被覆油粒子であり、多種多様な有効成分をナノサイズもしくはミクロンサイズに封入することが可能となる。
(カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤)
本発明における水中油型乳化粒子は、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を必須成分として含む。カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤とは、このノニオン性界面活性剤を用いて水難溶性無機カルシウム塩粒子を水に分散させると、長時間にわたって水難溶性無機カルシウム塩粒子の比重差による沈降を抑制させることができる性能を持つもののことである。
前記カルシウム粒子分散能は、次に示す方法で簡易的に測定することができる。
すなわち、水にノニオン性界面活性剤を溶解し、この溶液に炭酸カルシウムの粉体を超音波分散機等を用いて分散した後、その分散液を静置することにより、炭酸カルシウム粒子の沈降性を観察する。カルシウム粒子分散能の高いものにおいては、炭酸カルシウム粒子が沈降しにくいため、分散液は白濁状態を長時間に亘って維持するが、カルシウム粒子分散能の低いものでは、炭酸カルシウム粒子が容易に沈降し、上層から透明になっていく。この状況を観察あるいは光透過率を測定することによって判断することができる。
カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類が挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤の構造によっては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油も適している。
前記ノニオン性界面活性剤のより具体的な例としては、ショ糖ステアリン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルS−1570、S−1670)、ショ糖パルミチン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルP−1570、P−1670)、ショ糖ミリスチン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルM−1695)、ショ糖オレイン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルO−1570)、ショ糖ラウリン酸エステル(例えば、三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルL−1695)、モノミリスチン酸デカグリセリル(例えば、日光ケミカルズ製Decaglyn 1−M)、モノステアリン酸デカグリセリル(例えば、日光ケミカルズ製Decaglyn 1−S)、モノイソステアリン酸デカグリセリル(例えば、日光ケミカルズ製Decaglyn 1−IS)、ポリオキシエチレン(15)ラウリルエーテル(例えば、日本エマルジョン製EMALEX715)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(例えば、日光ケミカルズ製HCO−60)が挙げられる。
(被覆乳化粒子の調製方法)
本発明の被覆油粒子は、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を用いて油分を乳化した水中油型乳化粒子の表面に、平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子を付着させることで製造される。通常、この被覆油粒子は水を分散媒とした乳化物の形で提供される。
本発明の被覆油粒子の乳化物の製造方法は、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を用いて油分を乳化して水中油型乳化物を得る乳化工程と、水難溶性無機カルシウム塩を水に分散させた後、上記水難溶性無機カルシウム塩を平均粒径1μm以下の微粒子に粉砕して水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液を得る微粒化工程と、上記水中油型乳化物と上記水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液とを混合することにより、上記水中油型乳化粒子を上記水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆する混合被覆工程とを含むことを特徴とする。
以下、上記本発明の被覆油粒子乳化物の製造方法における各工程について説明する。
(乳化工程)
ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる一種のノニオン性界面活性剤を用いて油分を乳化して水中油型乳化物を得る乳化工程においては、上記油分は、上記ノニオン性界面活性剤によって水に乳化されて水中油型乳化物を形成させる。乳化に用いる装置としては、ホモジナイザー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー、ホモミックラインミル、マイルダー、クレアミックスなどの高速剪断型の乳化機、マイクロフルイダイザー、ゴーリン、アルティマイザー、ナノマイザーなどの高圧乳化機、超音波分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波乳化機などが挙げられる。
乳化工程で得られる水中油型乳化粒子の平均粒径は、10nm〜20μm程度であり、好ましくは10nm〜5μm、更に好ましくは50nm〜1μmの範囲である。最終的に得られる被覆油粒子が5μm以下であるのに対して、その被覆前段階の水中油型乳化粒子の大きさがそれよりも大きい範囲を含んでいる理由は、後に述べる混合被覆工程において、予め乳化工程にて調製した水中油型乳化粒子が更に微粒化される場合があるからである。
上記水中油型乳化物における油分は、水分に対して、好ましくは1/1000〜7/10、更に好ましくは1/200〜1/2、特に好ましくは1/100〜3/10の重量比とすることが望ましい。1/1000よりも小さい場合には、水難溶性無機カルシウム塩微粒子の分散液と混合した際、被覆油粒子を形成する速度が遅くなり、水難溶性無機カルシウム塩微粒子が単独で凝集し、油分を被覆する被覆油粒子の存在率が下がってしまうおそれがある。また、7/10よりも大きい場合には、製造過程において粘度が著しく上昇し、後述する水難溶性無機カルシウム塩微粒子の分散液と混合した際に無機微粒子による均一被覆が困難になったり、凝集固化が起こったりするおそれがある。
上記水中油型乳化物におけるカルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤の重量濃度は、油分に対して、好ましくは100重量%以下、更に好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。100重量%よりも大きい場合には、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤が、一部ミセルを形成し、このミセルの周りを水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が被覆する可能性が高くなり、油分を内包する被覆油粒子の存在率が下がってしまうおそれがある。この比率の下限値は、添加効果が得られない範囲を除外する値であるが、水中油型乳化粒子自体の物性によって若干の差が生じる。
(微粒化工程)
本発明に用いられる水難溶性無機カルシウム塩の微粒子の平均粒径は、1μm以下である。好ましくは1nm〜1μm、更に好ましくは5nm〜500nm、特に好ましくは10nm〜100nmの範囲である。粒径が小さくなれば、粒子の表面エネルギーが高くなり、粒子同士の凝集力が高くなるため、より水中油型乳化粒子表面を被覆しやすくなると考えられる。特に、平均粒径が100nm未満になると飛躍的に凝集力が高くなる。
水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液を得る微粒化工程においては、水難溶性無機カルシウム塩は、水に分散させた後、平均粒径1μm以下に微粒化される。その微粒化方法としては、平均粒径1μm以下に微粒化できれば、いかなる装置を用いて調製しても構わないが、例えば、慣用の微粒化装置を用いて粉砕することにより調製することができる。このような微粒化装置を具体的に挙げると、ビーズミルやボールミル、各種メディアレスミル、超音波分散機などを用いることができる。
本発明に用いることができる微粒化装置としては、例えば、ウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)、スターミル(アシザワ・ファインテック(株)製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)、ディスコプレックス(ホソカワアルピネ社製)、ACM−Aパルベライザ(ホソカワミクロン(株)製)、ナノカット((株)マツボー製)、CLEAR SS−5、クレアミックス(エムテクニック(株)製)、超音波分散機UH−600SR((株)エスエムテー製)、超音波ホモジナイザー(Dr.Hielscher社製)等が挙げられる。
上記水難溶性無機カルシウム塩の微粒子の水分散液中の水難溶性無機カルシウム塩微粒子の濃度は、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、特に好ましくは1〜10重量%の範囲である。0.1重量%よりも比率が小さい場合には、水難溶性無機カルシウム塩微粒子の濃度が小さいため、油粒子の被覆効率が低下するおそれがある。50重量%よりも大きい場合には、無機微粒子水分散液の粘度が上昇し、凝集固化が起こるおそれがあり、さらには製造効率の低下に繋がる可能性がある。
なお、乳化工程と微粒化工程はどちらを先に行なっても構わないし、別々の乳化装置および微粒化装置により同時進行的に処理しても良い。
(混合被覆工程)
上記水中油型乳化物と上記水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液とを混合することにより、上記水中油型乳化粒子を上記水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆する混合被覆工程においては、上記水中油型乳化物と水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液とを均一撹拌できる混合装置を用いることにより行なうことができる。
本発明に用いることができる混合装置としては、上述した乳化装置、微粒化装置に加えて、パドルミキサー、プロペラミキサーなどの撹拌装置が挙げられ、スターラーチップによる撹拌でも行うことができる。また、水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液を調製する装置を用い、水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液を調製したところに、別途、乳化装置を用いて調製した上記水中油型乳化物を添加して混合を行うことが好ましい。水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液を調製する装置で混合することにより、水中油型乳化粒子の更なる微粒化と水難溶性無機カルシウム塩の微粒化が行われ、細かくなった水中油型乳化粒子および水難溶性無機カルシウム塩微粒子が複合・被覆するため、より小さい被覆油粒子を得ることができる。更に、工程の簡略化が可能となる。
上記被覆油粒子における水難溶性無機カルシウム塩の微粒子による平均被覆厚は、内包油分を保持できる厚さであれば特に限定されないが、好ましくは10nm〜2μm、更に好ましくは20nm〜1μm、特に好ましくは50nm〜500nmの範囲である。これらの範囲設定は、特定条件下で内包油分を溶出可能とするためであり、被膜の物理的安定性を保つためでもある。本発明において上記水難溶性無機カルシウム塩の微粒子は1μm以下であり、表面活性が高い状態にあるため、微粒子同士の結合性が増しており、被膜厚が薄くても安定な被膜を形成することができる。そのため、水難溶性無機カルシウム塩に対する油分の重量比を大きくすることができる。また、この被膜には、細孔が存在するため、被覆された油分の徐放性に優れる。さらに、油分を放出したい場合は、被覆層を酸かアルカリにより溶解させることにより溶出させることが可能である。例えば、炭酸カルシウムの場合、酸を作用させれば、被覆層が溶解するので、油分の放出が自在となる。
被覆厚は、上記表面に付着している微粒子状の水難溶性無機カルシウム塩と上記水中油型乳化粒子との重量比を適宜調整することにより制御することができる。また、水中油型乳化粒子自体の粒径制御と、水難溶性無機カルシウム塩微粒子の被膜厚を調整することにより、最終的に得られる被覆油粒子の粒径を制御することが可能となる。
本発明の被覆油粒子の平均粒径は、5μm以下であり、好ましくは10nm〜5μm、より好ましくは50nm〜1μmの範囲である。この好適範囲の設定は、被覆油粒子の安定性を保つためである。粒径は小さい方が、生体内等の微小部分への浸透性がよく、また、その投与部分における滞留性も向上する。
上記被覆油粒子の表面に付着している微粒子状の水難溶性無機カルシウム塩と上記水中油型乳化粒子との重量比は、好ましくは10/10以上100/10未満、より好ましくは30/10以上90/10未満、特に好ましくは50/10以上80/10未満の範囲である。10/10未満の場合には、被覆厚が薄くなって、油粒子を水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で安定に被覆することが困難となるおそれがある。一方、100/10以上の場合には、得られる粒子の中には上記油粒子を内包しないものも存在する場合が生じ、被覆油粒子形成の均一性に欠けるおそれがある。さらに、非被覆油粒子同士が凝集して粗大な粒子が形成されてしまうというおそれもある。
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。以下に説明する実施例は、本発明を好適に説明する例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。
(カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤の確認)
以下にカルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤の確認方法について説明する。
100mLビーカーに水57.6重量部を計りとり、この水にノニオン性界面活性剤1.2重量部を35℃で溶解する。そこへ炭酸カルシウム粉体(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)1.2重量部を投入し、長さ30mm、直径8mmのスターラーピースで、回転数750rpmで2分間分散する。更に、この分散液をビーカーごと超音波洗浄機(柴田科学社製SU−6TH型)にかけ、超音波を10分照射して炭酸カルシウム粒子を微粒化する。再度、長さ30mm、直径8mmのスターラーピースで回転数750rpmで2分間攪拌した後、100mLのエプトン管に50mL目盛まで注入し、静置して炭酸カルシウム粒子の沈降性を評価する。ここでは、表1に示したN−1〜N−8までの8種類のノニオン性界面活性剤について評価した。
沈降性の評価は、経時2時間後における上層の白濁度により評価する。すなわち、その評価は、エプトン管の40mLの目盛の部分からスポイトでサンプリングした液を光路長10mm、光路幅10mmの石英セルに投入し、島津製作所製分光光度計UV−1200にて精製水を対照として波長500nmの光透過率を測定することによって判断した。このようにして表1に示したN−1〜N−8までの8種類の各ノニオン性界面活性剤を用いて沈降性を評価した。その結果を同じく表1に示す。
表1の結果において、2時間後の白濁度の評価としての光透過率の値が10%以下であるノニオン性界面活性剤が、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤である。
(被覆乳化粒子の調製)
前記表1の結果から本発明に使用可能なノニオン性界面活性剤は、サンプルのN−1〜N−4、N−7、およびN−8の6種類である。残りのN−5およびN−6は、本発明の基準を満たすことができない。以下の実施例1〜では、ノニオン性界面活性剤として前記ノニオン界面活性剤N−1〜N−3、N−7を用い、参考例1,2では、前記ノニオン界面活性剤N4,N8を用い、比較例1,2では、前記ノニオン性界面活性剤N−6およびN−5を用いた。
(実施例1〜、(参考例1,2)および(比較例1、2)
(被覆油粒子の調製手順(実施例、参考例および比較例に共通条件))
純水299.2gに、表2に示すように各実施例および比較例に用いる各ノニオン性界面活性剤4.8gを溶解し、ここに油分としてサラダ油(日清オイリオ製)16gを添加してホモジナイザー(IKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて乳化(10000rpm、5分)し、水中油型乳化物を調製した。
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)10.8gを純水529.2gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で50分間粉砕(ミル回転数4350rpm)を行ない、炭酸カルシウム微粒子水分散液を調製した。
炭酸カルシウム微粒子の平均粒径は、炭酸カルシウムとともに分散剤としてクエン酸三ナトリウム(純正化学(株)製)を炭酸カルシウムの重量に対して3倍量添加して上記と同条件にて粉砕を行い、得られた炭酸カルシウム微粒子の水分散液を、動的光散乱式粒度分析計マイクロトラックUPA−150(日機装(株)製)で測定したところ、30nmであった。
得られた炭酸カルシウム微粒子の水分散液を上記ビーズミルで粉砕を継続し、ビーズミルの原液タンクに上記で調製した水中油型乳化物を43.2g仕込み、混合させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕(ミル回転数4350rpm)し、混合被覆を行った。
その結果、サラダ油をノニオン性界面活性剤で乳化した水中油型乳化物を炭酸カルシウムの微粒子で被覆した被覆油粒子分散液を得た。
実施例、参考例および比較例におけるノニオン性界面活性剤の種類と被覆油粒子の形成性および被覆油粒子の性状を表2に示す。なお、被覆油粒子の形成性の評価は、以下の(a)から(c)に示す方法にて行った。また、被覆油粒子の性状は、以下の(d)から(e)に示す方法にて行った。
(評価方法)
(a)位相差顕微鏡による観察
位相差顕微鏡にて被覆油粒子分散液を観察すると、被覆がなされている場合は、5μmよりも粗大な乳化油滴は観察されないが、被覆が不十分な場合は、5μmよりも粗大な例えば10μm前後の乳化油滴が観察される。
(b)粒子の沈降性の観察
被覆油粒子分散液を静置しておくと、比重差により次第に被覆油粒子が沈降してくるが、被覆が不十分な場合には、上層に乳化物が残存することにより判断できる。
(c)被覆油粒子の油分内包性の確認
被覆油粒子をスライドグラス上に乗せてカバーグラスをかけ、カバーグラスに圧力をかけることで被覆油粒子がつぶれる。その状態を位相差顕微鏡にて観察すると、油滴が確認できることから、被覆油粒子が油分を内包していることが判断できる。
(d)被覆油粒子の平均粒径
被覆油粒子の平均粒径は、被覆油粒子分散液に2%四酸化オスミウム水溶液を添加した後、水分をエタノール、プロピレンオキサイド・エポキシ樹脂で順に置換し、ウルトラミクロトームを用いてスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、10個の被覆油粒子それぞれの粒径を測定し、算術平均により算出した。
(e)被覆油粒子の炭酸カルシウム微粒子による平均被覆厚
被覆油粒子の炭酸カルシウム微粒子による平均被覆厚は、上記(d)と同様に被覆油粒子断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、10個の被覆油粒子それぞれの被覆層を8ヶ所測定し、算術平均により算出した。
前記評価結果を表2に併記した。また、実施例1と比較例1の各位相差顕微鏡写真を図2と図3に示す。
表2の結果より、実施例1〜4、参考例1,2に示すノニオン性界面活性剤(N−1〜N−4、N−7、N−8)を用いて調製した被覆油粒子は、粗大な乳化油滴が存在せず、上層に乳化物の残存も無く、油分を内包していることが明らかとなった。
一方、比較例1、2に示すカルシウム粒子分散能が低いノニオン性界面活性剤(N−6、N−5)を用いて調製した場合は、粗大な乳化油滴が残ってしまい、水中油型乳化粒子表面の水難溶性無機カルシウム塩微粒子による被覆が不十分であることが明らかとなった。
更に、実施例1〜4、参考例1,2の被覆油粒子分散液を室温で1ヶ月間静置した後に、超音波分散機US−50((株)日本精機製作所製)を用いて28kHzで超音波照射を10分間行なったが、油分の分離は起こらず、油分は被覆油粒子中に安定に封入されていることが明らかとなった。
また、実施例1〜4、参考例1,2の上清をサンプリングして、油分であるサラダ油が含まれているかを1H−NMRを用いて測定したところ、サラダ油は検出されなかった。
(実施例5)
純水299.2gにノニオン性界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルS−1570)4.8gを溶解し、ここに油分としてトリクロサン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)28重量部と大豆油(日清オイリオグループ(株)製大豆油YM)72重量部の混合油分16gを添加してホモジナイザー(IKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて乳化(10000rpm,5分)し、水中油型乳化物を調製した。
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)10.8gを純水529.2gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で50分間粉砕(ミル回転数4350rpm)を行ない、炭酸カルシウム微粒子水分散液を調製した。
得られた炭酸カルシウム微粒子の水分散液を上記ビーズミルで粉砕を継続し、ビーズミルの原液タンクに上記で調製した水中油型乳化物を43.2g仕込み、混合させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕(ミル回転数4350rpm)し、混合被覆を行った。
得られた被覆油粒子の形成性を実施例1〜と同様にして評価したところ、位相差顕微鏡観察で粗大な乳化油滴の存在は確認されず、上層に乳化物の残存も無く、油分が内包されていることが確認された。
また、被覆油粒子の性状を実施例1〜にならって測定したところ、被覆油粒子の平均粒径は500nm、平均被覆厚は80nmであった。
本結果から、油分が2種類の成分の混合物であっても、被覆油粒子が形成されることが明らかとなった。
(実施例6)
純水299.2gにノニオン性界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルS−1670)4.8gを溶解し、ここに油分としてイソプロピルメチルフェノール(大阪化成(株)製)28重量部と大豆油(日清オイリオグループ(株)製大豆油YM)72重量部の混合油分16gを添加してホモジナイザー(IKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて乳化(10000rpm,5分)し、水中油型乳化物を調製した。
一方、リン酸カルシウム(白石カルシウム(株)製メカールP)10.8gを純水529.2gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で50分間粉砕(ミル回転数4350rpm)を行ない、リン酸カルシウム微粒子水分散液を調製した。なお、このリン酸カルシウムについて、別途、分散剤のクエン酸三ナトリウムを用いて粉砕後の平均粒径を測定したところ、35nmであった。
得られたリン酸カルシウム微粒子の水分散液を上記ビーズミルで粉砕を継続し、ビーズミルの原液タンクに上記で調製した水中油型乳化物を43.2g仕込み、混合させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕(ミル回転数4350rpm)し、混合被覆を行った。
得られた被覆油粒子の形成性を実施例1〜と同様にして評価したところ、位相差顕微鏡観察で粗大な乳化油滴の存在は確認されず、上層に乳化物の残存も無く、油分が内包されていることが確認された。
また、被覆油粒子の性状を実施例1〜と同様にして測定したところ、被覆油粒子の平均粒径は550nm、平均被覆厚は80nmであった。
本結果から、被覆に用いる水難溶性無機カルシウム塩がリン酸カルシウムの場合でも、被覆油粒子が形成されることが明らかとなった。
以上から、本発明の被覆油粒子は、カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤を用いて1種または2種以上の成分からなる油分を乳化して得られた水中油型乳化粒子表面を平均粒径1μm以下の水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した平均粒径5μm以下の安定な被覆油粒子であることが確認された。
(実施例7)
(苦味成分の含有)
純水299.2gにノニオン性界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ製リョートーシュガーエステルS−1670)4.8gを溶解し、ここに油分としてサラダ油(日清オイリオ製)90重量部に薬効成分のオキセサゼイン10重量部の混合油分16gを添加してホモジナイザー(IKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて乳化(10000rpm,5分)し、水中油型乳化物を調製した。
一方、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)10.8gを純水529.2gに分散させた。これをビーズミル(ウルトラアペックスミルUAM−015(寿工業(株)製))の原液タンクに仕込み、分散させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で50分間粉砕(ミル回転数4350rpm)を行ない、炭酸カルシウム微粒子水分散液を調製した。
得られた炭酸カルシウム微粒子の水分散液を上記ビーズミルで粉砕を継続し、ビーズミルの原液タンクに上記で調製した水中油型乳化物を43.2g仕込み、混合させながらミル内に供給して(流量10kg/hr)、ZrO2のφ0.1mmビーズを用いて23〜25℃で30分間粉砕(ミル回転数4350rpm)し、混合被覆を行った。
得られた被覆油粒子の形成性を実施例1〜と同様にして評価したところ、位相差顕微鏡観察で粗大な乳化油滴の存在は確認されず、上層に乳化物の残存も無く、油分が内包されていることが確認された。
(比較例3)
炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製ポアカル−N)6gを純水294gに、ホモジナイザー(IKA−WERKE製 ULTRA−TURRAX T25BASIC)を用いて分散(10000rpm,5分)し、炭酸カルシウム分散液を得た。この分散液に前記実施例9で調製した水中油型乳化物24gを添加し、更に上記ホモジナイザーで10000rpm、5分間攪拌して、水中油型乳化物と炭酸カルシウム粒子が複合した複合粒子分散液を調製した。
得られた複合粒子の状態を、位相差顕微鏡で観察したところ、10〜20μm程度の水中油型乳化物と数10μmの炭酸カルシウム粒子が凝集した複合粒子が存在しており、大きさは30〜100μmと大きかった。また、複合化されずに単独で存在している乳化粒子の存在も確認された。恐らく、次工程の乾燥段階を経なければ、すべての乳化粒子を取り込むことができないと思われた。
前記実施例と比較例3で用いた薬効成分のオキセサゼインは、そのままなめると麻酔作用があり、舌がしびれてしまう。そこで、実施例で得られた被覆油粒子と比較例3の複合粒子を分散液静置後の沈殿層から取り出して、なめてみたところ、実施例の被覆油粒子はしびれを感じず良好であったが、比較例3の複合粒子はしびれが感じられた。これは、実施例の被覆油粒子は、乳化油滴表面が炭酸カルシウム微粒子で緊密に包まれているが、比較例3の複合粒子は、乳化油滴と炭酸カルシウム粒子が凝集しているだけなので、表面にむき出しとなっている乳化油滴の部分があり、その部分からの薬効成分によりしびれを感じたものと思われる。
以上のように、本発明にかかる被覆油粒子は、油分として薬効成分、化粧成分、殺菌成分、食用油、香料、色素、その他農薬、殺虫成分、抗菌、抗カビ成分等を安定に水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した被覆油粒子である。そのため、本発明の被覆油粒子および該被覆油粒子を用いた被覆油粒子乳化物は、医薬品、食品、化粧品、歯磨きや洗口剤などの口腔用製品などへの用途に用いるのに好適である。
また、本発明の被覆油粒子および被覆油粒子乳化物は、特定条件下における被覆粒子の溶解等により、内包油分を放出する機能を持つ素材、または徐放性製剤として、パーソナルケア製品やドラッグデリバリーシステムにおける薬物キャリアへの応用が可能である。
水中油型乳化粒子を水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆した被覆油粒子の模式図である。 実施例1で得られた被覆油粒子分散液(被覆油粒子乳化物)を位相差顕微鏡で観察した写真を示す図である。 比較例1で得られた被覆油粒子分散液(被覆油粒子乳化物)を位相差顕微鏡で観察した写真を示す図である。
符号の説明
1 水難溶性無機カルシウム塩の微粒子
2 水中油型乳化粒子
2a 油分
2b カルシウム粒子分散能の高いノニオン性界面活性剤
3 被覆油粒子

Claims (3)

  1. ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる一種のノニオン性界面活性剤を用いて油分を水中で乳化して得られた水中油型乳化物中の水中油型乳化粒子の表面に、平均粒径1nm〜1μmの水難溶性無機カルシウム塩の微粒子が付着されてなる平均粒径が10nm〜5μmの被覆油粒子が水中に分散されてなる被覆油粒子乳化物であって、
    前記油分に対する前記ノニオン性界面活性剤の比率が1〜50重量%であり、
    前記水難溶性無機カルシウム塩と水中油型乳化粒子の重量比が30/10以上90/10未満である被覆油粒子乳化物。
  2. 前記ショ糖脂肪酸エステルが、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステルから選ばれる少なくとも一種であり、
    前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリルから選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の被覆油粒子乳化物。
  3. ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる一種のノニオン性界面活性剤を油分に対して1〜50重量%の比率で用いて油分を乳化して水中油型乳化物を得る乳化工程と、水難溶性無機カルシウム塩を水に分散させた後、上記水難溶性無機カルシウム塩を平均粒径1nm〜1μmの微粒子に粉砕して水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液を得る微粒化工程と、上記水中油型乳化物と上記水難溶性無機カルシウム塩微粒子水分散液とを前記水難溶性無機カルシウム塩と水中油型乳化粒子の重量比が30/10以上90/10未満で混合することにより上記水中油型乳化粒子を上記水難溶性無機カルシウム塩の微粒子で被覆する混合被覆工程とを含むことを特徴とする経日安定性に優れた被覆油粒子乳化物の製造方法。
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