以下、本発明の実施の形態による建設機械の給脂装置として油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図において、1は建設機械としての油圧ショベルを示し、この油圧ショベル1は、履帯を備えた下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に設けられた上部旋回体4とによって構成されている。また、上部旋回体4は、支持構造体をなす旋回フレーム5と、該旋回フレーム5の前部側に設けられたキャブ6と、このキャブ6の後側に位置して後述のグリスポンプ23等を収容した建屋カバー7と、キャブ6の側方に位置して旋回フレーム5の前部に設けられた作業装置8とを備えている。
ここで、キャブ6の内部には、作業者(オペレータ)が着座する運転席9が設けられると共に、該運転席9の前側には下部走行体2の走行操作を行うための左,右の走行用操作レバー10が立設されている。また、運転席9の左,右両側にはコンソール装置11がそれぞれ設けられると共に、これらのコンソール装置11には、旋回装置3による旋回操作や作業装置8の俯仰動操作を行うための左,右の作業用操作レバー12が設けられている。
また、キャブ6内には、各種の情報を表示するモニタ装置13が設けられている。このモニタ装置13は、例えば液晶ディスプレイ等によって構成され、後述のコントローラ35に接続されている。そして、モニタ装置13は、その表示内容によって手動給脂のタイミング等を作業者に報知する報知手段を構成している。
一方、作業装置8は、旋回フレーム5の前部に俯仰動可能にピン結合されたブーム14と、該ブーム14の先端側に俯仰動可能にピン結合されたアーム15と、該アーム15の先端側に回動可能にピン結合されたバケット16とによって構成されている。また、ブーム14、アーム15、バケット16にはブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19が設けられている。そして、作業者が作業用操作レバー12を傾転操作することによって、これらのシリンダ17〜19は伸長または縮小する。これにより、作業装置8は、上下方向に俯仰動し、土砂等の掘削作業を行うものである。
20は後述の自動給脂装置28を用いてグリスを自動的に供給する自動給脂部位で、該自動給脂部位20は、例えば作業装置8に設けられた軸受装置(ピン結合装置)によって構成されている。具体的には、自動給脂部位20は、例えば旋回フレーム5とブーム14との連結部分、ブーム14とアーム15との連結部分、ブームシリンダ17と旋回フレーム5、ブーム14との連結部分、アームシリンダ18とアーム15との連結部分等に配置されている。そして、軸受装置は、互いに連結する2つの部材のうち一方の部材に設けられたボスと他方の部材に設けられたブラケットとを連結ピンを用いてピン結合する構成となっている。このとき、軸受装置は、連結ピンを中心にボスとブラケットとが摺動変位するため、連結ピンとの潤滑性を維持するために潤滑油としてのグリスが給脂される給脂部位となっている。
21は後述のグリスガン33を用いて作業者がグリスを手動で供給する手動給脂部位で、該手動給脂部位21は、例えば作業装置8の先端側に設けられた軸受装置や旋回装置3によって構成されている。具体的には、手動給脂部位21は、例えば掘削作業中にグリス配管が土砂等に衝突して破損し易い部位として、アーム15とバケット16との連結部分等に配置されると共に、グリス配管の配置が難しい部位として、旋回装置3の旋回輪等に配置されている。なお、手動給脂部位21には、下部走行体2の履帯の張りを調整するアジャスターシリンダを含める構成としてもよい。
22は油圧ショベル1の自動給脂部位20および手動給脂部位21にグリスを給脂する給脂装置で、該給脂装置22は、後述するグリスポンプ23、自動給脂装置28、グリスガン33、選択弁34、コントローラ35等によって構成されている。
23はグリスを吐出する潤滑油ポンプとしてのグリスポンプで、該グリスポンプ23には駆動源として例えば電動モータ等からなるモータ24が接続されている。ここで、グリスポンプ23は、モータ24を回転駆動することによって、グリスタンク25内のグリスを吐出する。そして、モータ24は、コントローラ35に接続され、該コントローラ35からの運転指令信号によって駆動、停止が制御されている。具体的には、後述する給脂設定入力部38によって自動給脂モードまたは手動給脂モードが選択されたときに、モータ24は回転駆動する。一方、給脂設定入力部38によって給脂停止モードが選択されたときに、モータ24は停止する。
また、グリスポンプ23の吐出側には給脂配管26が接続されると共に、該給脂配管26の先端には後述の選択弁34が接続されている。そして、選択弁34の吐出側には、後述の自動給脂装置28に接続された自動給脂配管27Aと、グリスガン33に接続された手動給脂配管27Bとが接続されている。
28は自動給脂手段としての自動給脂装置で、該自動給脂装置28は、複数の分配弁29〜31によって構成されている。このとき、前段側の分配弁29は、基端側が自動給脂配管27Aを通じて選択弁34に接続されると共に、その先端側には後段側の分配弁30,31が並列に接続されている。また、分配弁30,31の先端側は、分配配管32を通じて各自動給脂部位20に接続されている。そして、自動給脂装置28は、グリスポンプ23から吐出されるグリスを分配弁29〜31を用いて分配し、各自動給脂部位20に対して自動的にグリスを供給する構成となっている。
また、分配弁29〜31は、例えば内部にフリーピストンを備え、該フリーピストンはグリスの供給に応じて往復運動する。これにより、分配弁29は、分配弁30,31に対して交互にグリスを供給すると共に、分配弁30,31は、複数の分配配管32に対して所定の順序に従って順番にグリスを供給する。
33は手動給脂手段としてのグリスガンで、該グリスガン33は、基端側が手動給脂配管27Bを通じて選択弁34に接続されている。そして、グリスガン33は、作業者が手に持って操作することによって、各手動給脂部位21に向けてグリスを供給する。これにより、作業者は、グリスガン33を用いて手動給脂部位21に対して手動で給脂を行うものである。
34は選択手段としての選択弁で、該選択弁34は給脂配管26の先端側に設けられ、自動給脂装置28とグリスガン33とに接続されている。そして、選択弁34は、手動レバーを用いて自動給脂位置(a)と手動給脂位置(b)とに切換え操作される。このとき、選択弁34が自動給脂位置(a)となったときには、自動給脂装置28が給脂配管26に接続される。一方、選択弁34が手動給脂位置(b)となったときには、グリスガン33が給脂配管26に接続される。これにより、選択弁34は、自動給脂装置28とグリスガン33とのうちいずれか一方を選択的にグリスポンプ23に接続する。なお、選択弁34は、手動給脂を行うとき以外は、常に自動給脂位置(a)に保持されるものである。
35はマイクロコンピュータ等によって構成されたコントローラで、該コントローラ35は、モータ24を用いてグリスポンプ23の駆動を制御すると共に、給脂の開始、停止を制御している。また、コントローラ35は、その入力側がキースイッチ37、給脂設定入力部38、分配弁作動検出器39に接続されると共に、その出力側がモニタ装置13に接続されている。
さらに、コントローラ35は、記憶部36を備えている。この記憶部36内には、後述する給脂時期判断処理のプログラムおよび給脂状態を判定するために閾値Ta,Tbが格納されている。このとき、閾値Taは、自動給脂が完了するのに必要な時間に設定されている。また、閾値Taは、前回の手動給脂から次回の手動給脂までの時間で、1回の手動給脂で油圧ショベル1が連続稼動できる時間にも対応している。一方、閾値Tbは、1回の手動給脂を通常の作業速度で実施した場合の平均的な時間に設定されている。
ここで、キースイッチ37は、例えばイグニッションキー等によって構成され、油圧ショベル1の起動、停止と一緒にコントローラ35の各種の処理を起動、停止する。また、給脂設定入力部38は、作業者の設定操作によって、自動給脂モード、手動給脂モードおよび給脂停止モードのいずれかのモードを選択し、この選択したモードに応じた信号を出力する。具体的には、自動給脂モードを選択したときには、給脂設定入力部38は、自動給脂スイッチ信号をオン状態に切換え、手動給脂スイッチ信号はオフ状態に切換える。一方、手動給脂モードを選択したときには、給脂設定入力部38は、自動給脂スイッチ信号をオフ状態に切換え、手動給脂スイッチ信号はオン状態に切換える。さらに、給脂停止モードを選択したときには、給脂設定入力部38は、自動給脂スイッチ信号および手動給脂スイッチ信号をいずれもオフ状態に切換える。
また、分配弁作動検出器39は、例えば前段側の分配弁29に設けられ、フリーピストンの位置を検出するリミットスイッチ等によって構成されている。そして、分配弁作動検出器39は、分配弁29にグリスが供給されているか否かを検出し、検出信号をコントローラ35に向けて出力する。
ここで、コントローラ35は、給脂設定入力部38からの信号に応じて、自動給脂モード、手動給脂モード、給脂停止モードのいずれかに切換わる。また、コントローラ35は、自動給脂モードの時間T1(自動給脂時間)として例えば自動給脂スイッチ信号がオン状態の時間を積算して計測する自動給脂時間計測手段としての自動給脂設定タイマ35Aを備えている。このとき、手動給脂モード、給脂停止モードでは、例えば姿勢を変更する動作以外では作業装置8等は停止し、掘削作業のように給脂部位20,21に負荷が作用するときには、自動給脂モードに設定されている。このため、自動給脂モードの時間T1は、手動給脂部位21に給脂しない状態で作業装置8、旋回装置3等を稼動している時間に対応している。
これに加えて、コントローラ35は、手動給脂モードの時間T2(手動給脂時間)として例えば手動給脂スイッチ信号がオン状態の時間を積算して計測する手動給脂時間計測手段としての手動給脂設定タイマ35Bを備えている。これらのタイマ35A,35Bは、後述の給脂時期判断処理とは別個独立して動作し、常に各給脂モードの時間T1,T2を計測している。
さらに、コントローラ35は、給脂時期判断装置として機能し、後述の給脂時期判断処理のプログラムを実行する。これにより、コントローラ35は、タイマ35A,35Bの計測時間に基づいて自動給脂または手動給脂の時期か否かを判定し、例えばモニタ装置13を用いて給脂時期の有無等を表示するものである。
本実施の形態による給脂装置22は、上述の如き構成を有するもので、次にコントローラ35による給脂時期判断処理について、図3ないし図6を参照しつつ説明する。なお、給脂時期判断処理のプログラムを起動したときには、タイマ35A,35Bの時間T1,T2は零(0)にリセットするものである。
まず、ステップ1では、キースイッチ37がオン状態(ON)か否かを判定する。そして、ステップ1で「NO」と判定したときには、キースイッチ37がオフ状態(OFF)となっているから、ステップ12に移行して処理を終了する。一方、ステップ1で「YES」と判定したときには、ステップ2に移行して自動給脂設定タイマ35Aが計測した自動給脂モードの時間T1を読込むと共に、手動給脂設定タイマ35Bが計測した手動給脂モードの時間T2を読込む。
次に、ステップ3では、ステップ2で読込んだタイマ35A,35Bの時間T1,T2を用いて、現在の給脂状態を判定する状態判定処理を行う。具体的には、自動給脂モードの時間T1が閾値Ta未満(T1<Ta)で、かつ手動給脂モードの時間T2が閾値Tb未満(T2<Tb)のときには、自動給脂、手動給脂のいずれも未完了な状態1であると判定する。また、自動給脂モードの時間T1が閾値Ta未満(T1<Ta)で、かつ手動給脂モードの時間T2が閾値Tb以上(T2≧Tb)のときには、自動給脂は未完了で手動給脂は完了した状態2であると判定する。一方、自動給脂モードの時間T1が閾値Ta以上(T1≧Ta)で、かつ手動給脂モードの時間T2が閾値Tb未満(T2<Tb)のときには、自動給脂は完了で手動給脂は未完了な状態3であると判定する。さらに、自動給脂モードの時間T1が閾値Ta以上(T1≧Ta)で、かつ手動給脂モードの時間T2が閾値Tb以上(T2≧Tb)のときには、自動給脂、手動給脂のいずれも完了した状態4であると判定する。
次に、ステップ4では、ステップ3の判定状態が状態1か否かを判定し、「YES」と判定したときには、ステップ5に移行して状態1に応じた処理を行う。具体的には、現状では自動給脂および手動給脂を直ぐに行う必要はないため、モニタ装置13には給脂の必要性に関する情報は表示せず、待機状態を保持する。ステップ5の処理が終了すると、ステップ1に移行する。
一方、ステップ4で「NO」と判定したときには、ステップ6に移って、ステップ3の判定状態が状態2か否かを判定する。そして、ステップ6で「YES」と判定したときには、ステップ7に移行して状態2に応じた処理を行う。具体的には、自動給脂は未完了で手動給脂は完了しているから、給脂設定入力部38が手動給脂モードに設定されているときには、手動給脂モードから自動給脂モードへの切換えを促すために、例えばモニタ装置13に「自動給脂の設定に切換えて下さい」というメッセージを表示する。一方、給脂設定入力部38が自動給脂モードに設定されているときには、自動給脂を継続させるために、例えばモニタ装置13に「このまま自動給脂を続けて下さい」というメッセージを表示する。そして、ステップ7の処理が終了すると、ステップ1に移行する。
また、ステップ6で「NO」と判定したときには、ステップ8に移って、ステップ3の判定状態が状態3か否かを判定する。そして、ステップ8で「YES」と判定したときには、ステップ9に移行して状態3に応じた処理を行う。具体的には、自動給脂は完了で手動給脂は未完了であるから、給脂設定入力部38が自動給脂モードに設定されているときには、自動給脂モードから手動給脂モードへの切換えを促すために、例えばモニタ装置13に「そろそろ手動給脂を行って下さい」というメッセージを表示する。一方、給脂設定入力部38が手動給脂モードに設定されているときには、手動給脂を継続させるために、例えばモニタ装置13に「このまま手動給脂を続けて下さい」というメッセージを表示する。そして、ステップ9の処理が終了すると、ステップ1に移行する。
また、ステップ8で「NO」と判定したときには、ステップ3の判定状態が状態4であると考えられる。このため、ステップ10に移行して状態4に応じた処理を行う。具体的には、自動給脂および手動給脂はいずれも完了しているから、給脂の必要性に関する情報をモニタ装置13から消去すると共に、タイマ35A,35Bの時間T1,T2を零(0)にリセットする。そして、ステップ10の処理が終了すると、ステップ1に移行する。
なお、ステップ7,9では、作業者に対する報知は、キャブ6内に設けたモニタ装置13に各種のメッセージを表示することによって行うものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、作業者に対する報知は、メッセージ表示に限らず、音声でのアナウンス、ブザー音、ランプ等でもよく、これらを組合わせたものでもよい。即ち、作業者に対する報知は、作業者に現状の給脂状態を伝えることができる各種の報知手段を使用することができる。
なお、給脂時期判断処理のプログラムを起動したときには、タイマ35A,35Bの時間T1,T2は零にリセットする構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧ショベル1を前回停止させたときまでの時間T1,T2を記憶部36に記憶しておき、給脂時期判断処理のプログラムを起動したときに、この記憶した時間T1,T2を読込む構成としてもよい。
本実施の形態による給脂装置22は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について図1ないし図6を参照しつつ説明する。
まず、キースイッチ37をオンすることによって、コントローラ35が始動し、該コントローラ35は給脂時期判断処理のプログラムを実行する。そして、作業者は、掘削作業等を行うときには、給脂設定入力部38を自動給脂モードに設定した状態で、操作レバー10,12を用いて作業装置8等を操作する。このとき、作業者は、手動レバーを用いて選択弁34を自動給脂位置(a)に切換える。これにより、グリスポンプ23は自動給脂装置28に接続されるから、給脂装置22は、自動給脂装置28を用いて自動給脂部位20には対してグリスを自動的に供給する。
また、給脂設定入力部38はオン状態の自動給脂スイッチ信号を出力するから、自動給脂設定タイマ35Aの時間T1は増加する。一方、手動給脂スイッチ信号はオフ状態となるから、手動給脂設定タイマ35Bの時間T2は増加せず、例えば初期状態(零)のままに保持される。
このとき、コントローラ35は、タイマ35A,35Bによって計測した時間T1,T2を読込み、この時間T1,T2に基づいて状態1〜4のうち現在の給脂状態に応じた状態を判定する。そして、掘削作業の開始直後は、時間T1は閾値Ta未満で、時間T2は閾値Tb未満となる。このため、コントローラ35は、自動給脂および手動給脂はいずれも未完了な状態1と判定し、モニタ装置13には特に何も表示しない。
しかし、自動給脂モードに設定した状態で掘削作業を継続すると、時間T1は閾値Ta以上となる。このとき、手動給脂が未完了な状態で自動給脂が完了したから、手動給脂部位21に対して次回の手動給脂を行った方がよいものと考えられる。このため、コントローラ35は、自動給脂が完了して状態1から状態3に遷移したものと判定し、モニタ装置13を用いて作業者に対して手動給脂を促すメッセージを表示する。
このメッセージに従って、作業者は、掘削作業を停止し、給脂設定入力部38を手動給脂モードに設定すると共に、手動レバーを用いて選択弁34を手動給脂位置(b)に切換える。これにより、グリスポンプ23はグリスガン33に接続されるから、作業者は、グリスガン33を操作して、手動給脂部位21に対して手動でグリスを供給する。
このとき、給脂設定入力部38はオン状態の手動給脂スイッチ信号を出力するから、手動給脂設定タイマ35Bの時間T2は増加する。一方、自動給脂スイッチ信号はオフ状態となるから、手動給脂設定タイマ35Aの時間T1は増加せずに、自動給脂モードから手動給脂モードに切換えたときの値を保持する。
そして、手動給脂を継続すると、時間T2は閾値Tb以上となる。これにより、手動給脂および自動給脂はいずれも完了したから、コントローラ35は、状態3から状態4に遷移したものと判定し、時間T1,T2をいずれも零にリセットして、状態1に遷移する。
また、手動給脂の完了後に更に手動給脂を継続していると、時間T2は再び閾値Tb以上となる。このとき、自動給脂が未完了な状態で手動給脂が完了したから、自動給脂モードに切換えた方がよいものと考えられる。このため、コントローラ35は、手動給脂が完了して状態1から状態2に遷移したものと判定し、モニタ装置13を用いて作業者に対して自動給脂を促すメッセージを表示する。
このメッセージに従って、作業者は、給脂設定入力部38を自動給脂モードに設定すると共に、手動レバーを用いて選択弁34を自動給脂位置(a)に切換える。これにより、グリスポンプ23は自動給脂装置28に接続されるから、給脂装置22は、再び自動給脂部位20に対して自動的にグリスを供給する。
かくして、本実施の形態によれば、選択弁34を用いて自動給脂装置28とグリスガン33のうちいずれか一方をグリスポンプ23に接続するから、自動給脂または手動給脂を選択的に行うことができる。また、コントローラ35は、自動給脂設定タイマ35Aによる時間T1と手動給脂設定タイマ35Bによる時間T2とに基づいて給脂時期か否かを判断する。
このとき、選択弁34によって自動給脂装置28とグリスガン33とが択一的に選択されるから、自動給脂モードではグリスガン33にはグリスが供給されず、手動給脂モードでは自動給脂装置28にはグリスが供給されない。このため、時間T1が前回の手動給脂を完了した後に自動給脂の完了を示す閾値Taを経過したか否かを判定することによって、次回の手動給脂を行う時期が近いか否かを判断することができる。
そこで、コントローラ35は、自動給脂時間としての時間T1に関して、前回の手動給脂が完了した後に自動給脂完了時間となる閾値Taが経過し、かつ手動給脂時間としての時間T2に関して、手動給脂完了時間となる閾値Tbが経過していないときには、手動給脂のタイミングに到達したものと判断する。このため、コントローラ35は、例えばモニタ装置13等を用いて作業者に対して手動給脂を行うように促すことができるから、作業者は手動給脂のタイミングを的確に把握することができ、手動給脂の失念を防止することができる。この結果、作業者の経験則等に頼ることなく、手動給脂部位21に手動給脂を行うことができ、手動給脂部位21の損傷を防いで、信頼性、耐久性を向上させることができる。
次に、図7ないし図10は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、コントローラは、自動給脂時間と手動給脂時間とを用いて、手動給脂の緊急度が高いか否かを判断する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
41は第2の実施の形態による給脂装置で、該給脂装置41は、グリスポンプ23、自動給脂装置28、グリスガン33、選択弁34、コントローラ42等によって構成されている。
42は第2の実施の形態による給脂時期判断装置としてのコントローラで、該コントローラ42は、第1の実施の形態によるコントローラ35とほぼ同様に構成され、その入力側がキースイッチ37、給脂設定入力部38、分配弁作動検出器39に接続されると共に、その出力側がモニタ装置13に接続されている。また、コントローラ42は、第1の実施の形態による自動給脂設定タイマ35Aおよび手動給脂設定タイマ35Bとほぼ同様な自動給脂設定タイマ42Aおよび手動給脂設定タイマ42Bを備えている。
但し、コントローラ42の記憶部43には、閾値Ta,Tbに加えて、前回の手動給脂から次回の手動給脂までの時間で、1回の手動給脂で油圧ショベル1が連続稼動できる最大値付近の時間に対応した閾値Tsも格納している。このとき、閾値Tsは、次回の手動給脂が必要な時期に到達したことを示す手動給脂必要時間に対応しており、閾値Taよりも大きな値(Ts>Ta)に設定されている。そして、コントローラ42は、図9に示す給脂時期判断処理のプログラムを実行し、タイマ42A,42Bの計測時間に基づいて自動給脂または手動給脂の時期か否かを判定し、例えばモニタ装置13を用いて給脂時期の有無に加えて、手動給脂の緊急度が高いことも表示する。
次に、第2の実施の形態のコントローラ42による給脂時期判断処理について、図7ないし図10を参照しつつ説明する。
第2の実施の形態による給脂時期判断処理でも、第1の実施の形態による給脂時期判断処理とほぼ同様にステップ1では、キースイッチ37がオン状態(ON)か否かを判定し、ステップ1で「NO」と判定したときには、ステップ12に移行して処理を終了する。一方、ステップ1で「YES」と判定したときには、ステップ2に移行して自動給脂設定タイマ42Aが計測した自動給脂モードの時間T1を読込むと共に、手動給脂設定タイマ42Bが計測した手動給脂モードの時間T2を読込む。
次に、ステップ21では、第1の実施の形態によるステップ3と同様に、タイマ42A,42Bの時間T1,T2を用いて、現在の給脂状態を判定する状態判定処理を行う。但し、第1の実施の形態で判定した状態1〜状態4に加えて、自動給脂モードの時間T1が閾値Ts以上(T1≧Ts)で、かつ手動給脂モードの時間T2が閾値Tb未満(T2<Tb)のときには、自動給脂が完了した後に次回の手動給脂が必要な時期に到達し、かつ手動給脂は未完了な状態5であると判定する。
次に、ステップ4〜ステップ9は第1の実施の状態と同様に、状態1〜状態3をそれぞれ判別し、各状態に応じた処理を行う。
一方、ステップ8で「NO」と判定したときには、ステップ22に移って、ステップ21の判定状態が状態5か否かを判定する。そして、ステップ22で「YES」と判定したときには、ステップ23に移行して状態5に応じた処理を行う。具体的には、自動給脂の完了後に所定の時間が経過しても手動給脂は未完了であるから、手動給脂の緊急度が高い状態であると考えられる。このため、給脂設定入力部38が自動給脂モードに設定されているときには、自動給脂モードから手動給脂モードへの早急な切換えを促すために、例えばモニタ装置13に「急ぎ手動給脂を行って下さい」というメッセージを表示する。一方、給脂設定入力部38が手動給脂モードに設定されているときには、手動給脂を継続させるために、例えばモニタ装置13に「このまま手動給脂を続けて下さい」というメッセージを表示する。そして、ステップ23の処理が終了すると、ステップ1に移行する。
また、ステップ22で「NO」と判定したときには、ステップ3の判定状態が状態4であると考えられる。このため、ステップ10に移行して状態4に応じた処理を行い、ステップ10の処理が終了すると、ステップ1に移行する。
かくして、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、コントローラ42は、自動給脂時間としての時間T1に関して、時間Tsが経過したか否かを判定する。これにより、時間T1が時間Tsを超えて、次回の手動給脂が必要な時期に到達したか否かを判断することができる。このため、コントローラ42は、自動給脂時間としての時間T1に関して時間Tsが経過し、かつ手動給脂時間としての時間T2に関して手動給脂完了時間となる閾値Tbが経過していないときには、手動給脂の緊急度が高いものと判断する。これにより、コントローラ42は、モニタ装置13を用いて作業者に対して手動給脂の緊急度が高いことを報知することができるから、作業者は、手動給脂の緊急度を把握することができ、速やかに手動給脂を行うことによって、給脂部位の摩耗等を防止することができる。
次に、図11は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、コントローラを用いて選択弁を自動的に切換えるのに加え、分配弁作動検出器およびグリスガン作動検出器を用いて自動給脂装置およびグリスガンの実際の給脂時間を計測する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
51は第3の実施の形態による給脂装置で、該給脂装置51は、グリスポンプ23、自動給脂装置28、グリスガン33、選択弁52、コントローラ53等によって構成されている。
52は第3の実施の形態による選択手段としての選択弁で、該選択弁52は、第1の実施の形態による選択弁34と同様に、給脂配管26の先端側に設けられ、自動給脂装置28とグリスガン33とに接続されている。但し、選択弁52は、後述のコントローラ53から出力される切換信号に応じて、自動給脂位置(a)と手動給脂位置(b)とに切換え操作される。このとき、選択弁52が自動給脂位置(a)となったときには、自動給脂装置28が給脂配管26に接続される。一方、選択弁52が手動給脂位置(b)となったときには、グリスガン33が給脂配管26に接続される。これにより、選択弁52は、自動給脂装置28とグリスガン33とのうちいずれか一方を選択的にグリスポンプ23に接続する。
53は第3の実施の形態による給脂時期判断装置としてのコントローラで、該コントローラ53は、第1の実施の形態によるコントローラ35とほぼ同様に構成されている。また、コントローラ53は、給脂設定入力部38からの信号に応じて、自動給脂モード、手動給脂モード、給脂停止モードのいずれかに切換わる。そして、給脂設定入力部38によって自動給脂モードが選択されたときには、コントローラ53は、選択弁52を自動給脂位置(a)に切換えて、自動給脂装置28をグリスポンプ23に接続する。一方、給脂設定入力部38によって手動給脂モードが選択されたときには、コントローラ53は、選択弁52を手動給脂位置(b)に切換えて、自動給脂装置28をグリスポンプ23に接続する。
ここで、コントローラ53は、自動給脂時間計測手段としての自動給脂設定タイマ53Aを備えると共に、手動給脂時間計測手段としての手動給脂設定タイマ53Bを備える。そして、自動給脂設定タイマ53Aは、自動給脂モードの時間ではなく、分配弁作動検出器39からの検出信号が出力されている時間を実際の自動給脂時間として積算して計測する。
一方、グリスガン33には、グリスガン33によるグリスの給脂動作を検出するグリスガン作動検出器54を取り付ける。これにより、手動給脂設定タイマ53Bは、手動給脂モードの時間ではなく、グリスガン作動検出器54からの検出信号が出力されている時間を実際の手動給脂時間として積算して計測する。
そして、コントローラ53は、記憶部55に格納された第1の実施の形態と同様の給脂時期判断処理のプログラム(図5参照)を実行する。これにより、コントローラ53は、タイマ53A,53Bの計測時間に基づいて自動給脂または手動給脂の時期か否かを判定し、例えばモニタ装置13を用いて給脂時期の有無等を表示する。
なお、コントローラ53は、自動給脂を実行しているときに、分配弁作動検出器39から分配弁29の作動を示す検出信号が出力されない場合には、エラー処理を行う構成としてもよい。即ち、このような場合には、例えばグリスタンク25内のグリスが不足した状態または自動給脂装置28、グリスポンプ23等に故障が生じた状態が考えられるため、モニタ装置13等にエラーメッセージを表示するものである。
かくして、第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、コントローラ53は、選択弁52を自動的に切換える構成としたから、別途に手動レバーの切換え操作を行うことなく、自動的にグリスポンプ23を自動給脂装置28またはグリスガン33に接続することができる。また、タイマ53A,53Bは自動給脂と手動給脂の実際の給脂時間を計測する構成とした。このため、実際の給脂時間に基づいて、正確な給脂時期を判定することができる。
次に、図12は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、コントローラは、手動給脂の緊急度が高いと判断したときに、緊急度の履歴として記憶部に記録する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
61は第4の実施の形態による給脂装置で、該給脂装置61は、グリスポンプ23、自動給脂装置28、グリスガン33、選択弁52、コントローラ62等によって構成されている。
62は第4の実施の形態による給脂時期判断装置としてのコントローラで、該コントローラ62は、第1の実施の形態による自動給脂設定タイマ35Aおよび手動給脂設定タイマ35Bとほぼ同様な自動給脂設定タイマ62Aおよび手動給脂設定タイマ62Bを備えている。また、コントローラ62は、第2の実施の形態によるコントローラ42とほぼ同様に構成され、図9に示す給脂時期判断処理のプログラムを実行する。これにより、コントローラ62は、タイマ62A,62Bの計測時間に基づいて自動給脂または手動給脂の時期か否かを判定し、例えばモニタ装置13を用いて給脂時期の有無に加えて、手動給脂の緊急度が高いことも表示する。
但し、コントローラ62の記憶部63には、給脂時期判断処理のプログラム、閾値Ta,Tb,Ts等に加えて、手動給脂の緊急度が高いと判定したときのメッセージ、日時等が履歴として記憶されている。このため、記憶部63は、緊急度の履歴を記憶する緊急度履歴記憶手段を構成している。そして、作業者が例えば履歴表示スイッチ(図示せず)を押すことによって、コントローラ62は、記憶部63に記憶された緊急度の履歴を読み出し、モニタ装置13に表示する。
かくして、第4の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、コントローラ62は、記憶部63に緊急度の履歴を記憶する構成としたから、メンテナンスを行うときに、この緊急度の履歴をモニタ装置13に表示することができる。ここで、例えばモニタ装置13に「そろそろ手動給脂を行って下さい」というメッセージが表示された時点、即ちコントローラ62によって手動給脂が促された時点で適切に手動給脂を行えば、手動給脂の緊急度が高くなることはない。このため、メンテナンス時に緊急度の履歴を表示することによって、作業者が手動給脂を適切に実施しているか否かを把握することができる。
なお、前記各実施の形態では、図5および図9中のステップ3,8,9,21が手動給脂時期判断手段の具体例を示し、図9中のステップ21〜23が緊急度判断手段の具体例を示している。
また、前記第3の実施の形態では、第1の実施の形態による給脂時期判断処理のプログラムを実行する構成としたが、第2,第4の実施の形態による給脂時期判断処理のプログラムや緊急度の履歴の記憶等を実行する構成としてもよい。
さらに、前記各実施の形態では、建設機械として装軌式の油圧ショベルを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。