JP5172549B2 - 複極式電解槽及びこれに用いられるスペーサ - Google Patents
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Description
従来、上記のような複極式電解槽として、特許文献1又は2に示されたものが提供されている。
この図に示す電解槽200は、液の導入管202を備えた止め板201Aと、排出管203を備えた止め板201Bとの間に、通液孔204を形成した電極205a、205b・・を配置し、更に、これらの電極205a、205b・・の間に、スペーサ206及びパッキング材207を配置したものである。
かかる電解処理層200は、電解処理される液が、導入管202から電解処理層の入口となる貫通孔204を通じてスペーサ206の内部に形成された処理層210に流入し、順次電極205a、205b・・の通液孔204を通りつつこれらの間を順次流れて、排出管203より排出される構成とされている。
この図に示す複極式電解槽300は、室枠上部301と、室枠下部302と、これら室枠上部301及び室枠下部302に収納される、端子303A及び303B、電極304、電極304を保持する一対のスペーサ305A、305B、液漏れ防止のOリング306とから概略構成されるものである。
電極304は、図11に示すように、溝306A、306Bが形成された一対のスペーサ305A、305Bに、その両側端部が溝306A、306Bに嵌合されるように形成されたものである。
この複極式電解槽300によると、室枠下部302の適所に設けられた被電解溶液の入口(不図示)から、被電解溶液が複極式電解槽300内に導入され、電極304、304間において電気分解され、電解生成物質が室枠上部301の適所に設けられた出口(不図示)から排出されるようになっている。
また、図10に示す特許文献2の発明は、室枠下部302の入口から被電解液を供給し、電極304の端部から電極304とスペーサ305A,305Bにより仕切られて形成された各電解室全体に液が充填されるようにするべく、電極304の底辺と室枠下部302の内側底面の間、及び、電極304上辺と室枠上部301の内側上面の間に隙間を設けている、すなわち、電極304の露出された端部が電解液の導入出部となっている。
ところが、電極板においては、孔の淵に電流が集中しやすくなるという性質上、図9、図10に示す電極板の隅や陵等の如く角張った箇所においては、電流密度が大きくなり、電極板全体に電気が均一に流れ難く、また電極の端部から電流が漏れやすくなって、電解処理の効率が低下しやすくなるという問題がある。
そこで、特許文献2の発明については、かかる問題に対応し、電極304の上辺と底辺の端部を被覆し漏電を防止しているが、逆にその結果、電極304の面積を縮小させることになり、やはり電流効率を低下させるという問題があった。特に、電極板の端部を被覆する際、被覆幅は、電極板の大きさに関係なく一定の幅が必要になるため、電極板面積が小さくなるほど、電極板面積に占める被覆幅の面積は大きくなり、電気分解に利用できる有効面積の割合が小さくなる。つまり小型の電解槽になるほど被覆は不利になるという問題があった。結局、電解槽を効率良く小型化するためには端部を被覆しない電極板を採用することが好ましい。
第1の発明は、通液した電解質水溶液を電気分解して電解生成物質を生成する複極式電解槽に用いられ、該複極式電解槽内部に、一方向に向けて並べて設けられた複数の電極板の間に配置される板状のスペーサであって、その厚み方向に貫通するよう電解室形成用の中空孔が形成されているとともに、この中空孔の内壁面に沿ってこの中空孔の厚み方向に凹み、前記電極板を嵌合可能な段部が形成され、前記電極板を嵌合させる段部から離間した下半部に板面間を貫通する電解質水溶液の導入孔が形成されるとともに、前記電極板を嵌合させる段部から離間した上半部に板面間を貫通する電解生成物質の導出孔が形成され、かつ、前記導入孔と前記中空孔との間に導入流路が形成されるとともに、前記導出孔と前記中空孔との間に導出流路が形成されていることを特徴とする。
第2の発明は、前記導入流路及び前記導出流路が、それぞれ前記スペーサの板面に形成された溝であることを特徴とする。
第3の発明は、前記導入流路及び前記導出流路が、前記導入孔と前記中空孔との間、前記導出孔と前記中空孔との間に、それぞれ複数形成されていること特徴とする。
第4の発明は、電極板と板状のスペーサとが交互に一方向に向け並べられてそれぞれ複数配置され、前記各電極間に形成された電解室に電解質水溶液を供給してこれを電気分解することにより電解生成物質を生成する複極式電解槽において、前記各スペーサには、厚み方向に貫通するよう中空孔が形成されているとともに、この中空孔の内壁面に沿ってこの中空孔の厚み方向に凹み、前記電極板を嵌合可能な段部が形成され、前記電極板を嵌合させる段部から離間した下半部に板面間を貫通する電解質水溶液の導入孔が形成されるとともに、前記電極板を嵌合させる段部から離間した上半部に板面間を貫通する電解生成物質の導出孔が形成され、かつ、前記導入孔と前記中空孔との間に導入流路が形成されるとともに、前記導出孔と前記中空孔との間に導出流路が形成されており、前記中空孔は、隣接するスペーサとの間に配置された一方及び他方の前記電極板により閉鎖されて電解室とされ、前記各スペーサの前記導入孔同士、及び前記導出孔同士が互いに連通するように構成されていることを特徴とする。
第5の発明は、前記導入流路及び前記導出流路が、それぞれ前記スペーサの板面に形成された溝とされ、その開放面が前記電極板及び/又は隣接するスペーサにより覆われて中空の流路とされていることを特徴とする。
第6の発明は、前記導入流路及び導出流路が、前記導入孔と前記中空孔との間、前記導出孔と中空孔との間に、それぞれ複数形成されていることを特徴とする。
第7の発明は、前記一方向の両端に位置する前記電極板に沿ってそれぞれ側板が設けられ、これら側板にそれぞれ前記電極の板面と略直交する方向の貫通孔を設けて、一方の側板の貫通孔を前記導出孔に連通させて電解質水溶液の供給孔とするとともに、他方の側板の貫通孔を前記導出孔と連通させて電解生成物質の取出孔としたことを特徴とする。
また、上記の効果と同時に、電極板に孔を設けないことによって、電気分解のための面積をより多く確保できることになり、電流効率をより高められるという効果が得られる。
またさらに、本発明の複極式電解槽のスペーサによると、電極板の端部を通液のための導入出部とすることがないため、電極板の周端部を露出させることがなくなり、電極板の端部への電気の偏りを回避し、かつ、漏電を防止して、電流効率を向上できるという効果が得られる。
これらの図に示すように、複極式電解槽1は、ケーシング2内に複数の電極板3、複数のスペーサ4を配して構成されたものである。
また、側板5Aの内面中央部には、電極板3を嵌合させるための段部13が形成されている。
各スペーサ4、4・・は、各電極板3、3・・間に位置するように、すなわち、各電極板3、3・・と交互に位置するように配置され、それぞれ板面を側板5A、5B間方向の一方向に向けて並べて配置されている。
これらの図に示すようにスペーサ4は、円形の板状体の中央部に、その板面間方向(厚み方向)に貫通する中空孔24が形成されたものである。中空孔24は、その輪郭が矩形(正方形)であり、前述した電極板3より各辺の寸法がやや小寸法となるように形成されたものである。
このスペーサ4の段部25内には、図3に示すように前述した電極板3が嵌合されるようになっている。
したがって、段部25は、中空孔24の各辺に沿う矩形の形状となっているが、この矩形形状の各辺外側の寸法は、電極板3の各辺より僅かに大きい寸法となっており、この段部25内に電極板3がしっくりと嵌合し、電極板3がスペーサ4の板面に沿う方向に徒に動かないようになっている。
また、段部25の前記厚み方向の深さは、電極板3の厚みと略同一寸法とされており、電極板3が嵌合されたときに、電極板3の板面とスペーサ4の板面とが面一状態となるようになっている。
なお、図4において、複数のスペーサ4、4・・のうち、側板5Bに一番近いスペーサ4の嵌合凸部26は側板5Bに形成された嵌合凹部32に嵌合されるようになっており、側板5Aに一番近いスペーサ4の嵌合凹部27には側板5Aに形成された嵌合凸部33が嵌合されるようになっている。
液面調整孔41も、上述した導入孔28、導出孔29と同様にスペーサ4の板面間方向に貫通する孔である。この液面調整孔41と中空孔24との間も板面4bに形成された調整流路42によって結ばれている。
すなわち、胴体6を中に挟んで側板5A、5Bが対向して配置され、胴体6の内部に電極板3とスペーサ4とが交互に配置され、図3に示すように側板5Aに一番近い電極板3に固定された電極棒21が側板5Aの電極棒挿入孔7に挿通され、側板5Bに一番近い電極板3に固定された電極棒21が側板5Bの電極棒挿入孔7に挿通され、各電極棒21の雄螺子部23にワッシャ43、スプリングワッシャ44を介在させた状態でナット45が緊締されることにより、側板5A、胴体6、側板5B、スペーサ4、4・・が強固に固定されている。
なお、側板5Aに一番近い電極板3は、側板5Aの段部13内に嵌合している。
また、各スペーサ4の中空孔24は、隣接する2枚の電極板3、3によって覆われることになるが、この内部が電解質水溶液を電気分解する電解室Cとなる。
また、各スペーサ4の導入流路30及び導出流路31は、それぞれ電極板3、隣接するスペーサ4によって当該スペーサ4の板面側が覆われるが、導入孔28と中空孔24内とを、及び導出孔29と中空孔24内とをそれぞれ連通する流体通路となる。
また、図4に示すように、各スペーサ4の調整流路42は、それぞれ電極板3、隣接するスペーサ4によって当該スペーサ4の板面側が覆われるが、液面調整孔41と中空孔24内とを連通する流体通路となり、各スペーサ4の中空孔24内が互いに連通する構造となる。
まず、供給孔8に電解質水溶液を供給する。電解質水溶液は、互いに連通する各スペーサ4の導入孔28内に流入し、各スペーサ4の導入流路30を通って電解室C内に流入する。電解室C内において電解質水溶液が所定の量に達したとき、陰陽各極とされた電極21、21間に通電すると、電解室C内において電解質水溶液が電気分解され、この電解室C内で気体と液体の混濁した状態の、若しくは、主として気体となった電解生成物質が生成される。電解生成物質は、電解室C内から各スペーサ4の導出流路31を通って導出孔29内に至り、各スペーサ4の導出孔29から取出孔9を経て取り出される。
また、電解室C内で生成された電解生成物質は、導出流路31を通って導出孔29に送り出されるが、この場合も導入流路31が3つの溝31a、31b、31cによって構成されているので、上記と同様に電解生成物質の通過がスムーズに行われる。
しかしながら、この複極式電解槽1においては、図4に示すように各電解室Cがスペーサ4に設けられた調整流路42、液面調整孔41によって互いに連通する構成とされている。したがって、各電解室Cの液面水位が変化しようとしても各電解室C間において電解質水溶液が流通し、常に各電解室C内における液面水位が均一に保たれやすくなる。
したがって、この点においても各電解室C内における電気分解の条件が均一化され、効率のよい電気分解がなされる。
また、上記の効果と同時に、電極板に孔を設けないことによって、電気分解のための面積をより多く確保できることになり、電流効率をより高められるという効果が得られる。
またさらに、本発明の複極式電解槽及びスペーサによると、電極板の端部を通液のための導入出部とすることがないため、電極板の周端部を露出させることがなくなり、電極板の端部への電気の偏りを回避し、かつ、漏電を防止して、電流効率を向上できるという効果が得られる。
この試験に供する装置の概略構成は、図7に示すように、水源51と、この水源51から水を流す主配管52と、主配管52に設けられた電磁弁53及び定流量弁54と、複極式電解槽1、55とが設けられている。塩酸容器56には塩酸Dが貯留されており、定量ポンプ57を介して塩酸Dが複極式電解槽1、55に注入される。複極式電解槽55の出口配管52aは、前記主配管52に合流し、主配管52の末端は出口58に至る。
ここで、実施例として、前記実施形態で示した貫通孔を有しない電極板3を備えた本願発明による複極式電解槽1(電極板3に孔なし。有効面積は、縦4.5cm×横4.5cm=20.25cm2。)を採用し、比較例として前記実施形態で示した複極式電解槽において、電極板3において電解液の導入孔と導出孔が形成された従来型の複極式電解槽55(電極板3の導入孔と導出孔の径は各々約0.35cmで、孔面積は各々0.096cm2。有効面積は、縦4.5cm×横4.5cm=20.25cm2から前記の孔面積0.096cm2×2を差し引いて、20.058cm2。)を採用した。
なお、電流効率とは、(i)測定された有効塩素濃度を(ii)理論上の有効塩素濃度で除して得られた値に100を掛けることで得られる。これは、電気分解に使われた全電流のうち何%が塩酸の生成に寄与しているかを表す数値である。ただし、前記(i)測定された有効塩素濃度は、官報第3378号(平成14年6月10日)「次亜塩素酸水の成分規格」に示された測定方法によって測定したものであり、また(ii)理論上の有効塩素濃度は、ファラデーの法則から理論的に算出したものである。この(ii)理論上の有効塩素濃度は、ファラデーの第一法則として「析出(電気分解)された物質の量は、流れた電気量に比例する。」、第二法則として「電気化学当量は化学当量と等しく、同じものである。」とあることに基づいて、次の計算式により算出する。
有効塩素濃度(ppm)=22×N×i/W
ここにNは複極式電解槽のセル構成(セル数)、iは電流値(アンペア)、Wは電解殺菌水の製造量(リットル/分)である。なお本実施例、比較例ではセル数は9セルであった。
またさらに、液面調整孔41は、上記実施形態においては中空孔24の左右両側辺の両側方であって、同両側辺の上下方向中央部の位置に形成させているがこれ限定されるものではなく、同両側方の上半部及び下半部にそれぞれ形成させることで、電解質水溶液の液面調整の均一化を調整することも可能である。また、上記実施形態において、調整流路42が、一の液面調整孔41に対して3つの溝42a〜42cを有しているが、液面調整孔41の位置又は個数及び電流効率等を考慮して、例えば調整流路42を1つの溝42aのみとするとか、2つの溝42b及び42cとする等、適宜増減させることも可能である。
3 電極板
4 スペーサ
4a、4b 板面
5A、5B 側板
8 供給孔
9 取出孔
24 中空孔
25 段部
26 嵌合凸部
27 嵌合凹部
28 導入孔
29 導出孔
30 導入流路
31 導出流路
C 電解室
Claims (7)
- 通液した電解質水溶液を電気分解して電解生成物質を生成する複極式電解槽に用いられ、該複極式電解槽内部に、一方向に向けて並べて設けられた複数の電極板の間に配置される板状のスペーサであって、
その厚み方向に貫通するよう電解室形成用の中空孔が形成されているとともに、この中空孔の内壁面に沿ってこの中空孔の厚み方向に凹み、前記電極板を嵌合可能な段部が形成され、
前記電極板を嵌合させる段部から離間した下半部に板面間を貫通する電解質水溶液の導入孔が形成されるとともに、前記電極板を嵌合させる段部から離間した上半部に板面間を貫通する電解生成物質の導出孔が形成され、かつ、
前記導入孔と前記中空孔との間に導入流路が形成されるとともに、前記導出孔と前記中空孔との間に導出流路が形成されていることを特徴とする複極式電解槽用スペーサ。 - 前記導入流路及び前記導出流路は、それぞれ前記スペーサの板面に形成された溝であることを特徴とする請求項1に記載の複極式電解槽用スペーサ。
- 前記導入流路及び前記導出流路は、前記導入孔と前記中空孔との間、前記導出孔と前記中空孔との間に、それぞれ複数形成されていること特徴とする請求項1又は2に記載の複極式電解槽用スペーサ。
- 電極板と板状のスペーサとが交互に一方向に向け並べられてそれぞれ複数配置され、前記各電極間に形成された電解室に電解質水溶液を供給してこれを電気分解することにより電解生成物質を生成する複極式電解槽において、
前記各スペーサには、厚み方向に貫通するよう中空孔が形成されているとともに、この中空孔の内壁面に沿ってこの中空孔の厚み方向に凹み、前記電極板を嵌合可能な段部が形成され、
前記電極板を嵌合させる段部から離間した下半部に板面間を貫通する電解質水溶液の導入孔が形成されるとともに、前記電極板を嵌合させる段部から離間した上半部に板面間を貫通する電解生成物質の導出孔が形成され、かつ、
前記導入孔と前記中空孔との間に導入流路が形成されるとともに、前記導出孔と前記中空孔との間に導出流路が形成されており、
前記中空孔は、隣接するスペーサとの間に配置された一方及び他方の前記電極板により閉鎖されて電解室とされ、
前記各スペーサの前記導入孔同士、及び前記導出孔同士が互いに連通するように構成されていることを特徴とする複極式電解槽。 - 前記導入流路及び前記導出流路は、それぞれ前記スペーサの板面に形成された溝とされ、その開放面が前記電極板及び/又は隣接するスペーサにより覆われて中空の流路とされていることを特徴とする請求項4に記載の複極式電解槽。
- 前記導入流路及び導出流路は、前記導入孔と前記中空孔との間、前記導出孔と中空孔との間に、それぞれ複数形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の複極式電解槽。
- 前記一方向の両端に位置する前記電極板に沿ってそれぞれ側板が設けられ、
これら側板にそれぞれ前記電極の板面と略直交する方向の貫通孔を設けて、
一方の側板の貫通孔を前記導出孔に連通させて電解質水溶液の供給孔とするとともに、
他方の側板の貫通孔を前記導出孔と連通させて電解生成物質の取出孔としたことを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の複極式電解槽。
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