以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、この発明の第1実施形態として、マイクロポンプの全体を示す断面図である。図2は、図1のマイクロポンプに組み込まれたバルブシートを上方向から見た図(A)と、下方向から見た図(B)である。
図1と図2に示すように、マイクロポンプ1は、主に、液体を収容する液タンク101と、液タンク101の下に配置される吸入吐出側ケース(IOプレート)200と、吸入吐出側ケース200の下に配置されるバルブシート300と、バルブシート300の下に配置される振動板側ケース400(バックプレート)と、バルブシート300と振動板側ケース400との間に挟まれる振動板130と、振動板130とバルブシート300とによって形成されるポンプ室110と、弁体として吸入側逆止弁500と、吐出側逆止弁700とを備える。
吸入側逆止弁500は、第1の弁部510と、第2の弁部520と、第1の弁部510と第2の弁部520とを連結するための連結部530とを含み、第1の弁部510を上側に、第2の弁部520を下側にして配置される。第1の弁部510の上面には、突出した脚部511が形成されている。第2の弁部520の下面には、突出した頂部521が形成されている。第1の弁部510と、連結部530と、第2の弁部520は、一体化して形成されている。
マイクロポンプ1の上部には、液タンク101が配置されており、液タンク101の内部には液体102が貯留される。液タンク101の下部と吸入吐出側ケース200の上部は吸入口103によって連結されている。
吸入吐出側ケース200には、第1の弁部510を配置するための第1の弁座として第1吸入側弁座210が形成されている。第1吸入側弁座210には、第1の弁部510の脚部511を受容するための受容部212と、受容部212を取り囲むようにして配置される複数の第1吸入口211が形成されている。
吸入吐出側ケース200の下に配置されるバルブシート300には、吸入側逆止弁500の第2の弁部520を配置するための第2の弁座として第2吸入側弁座310と、ポンプ室110の内部からポンプ室110の外部の吐出管202に液体を吐出するための吐出口321と、吐出口321を閉塞または開放可能に吐出側逆止弁700を配置するための吐出側弁座320が形成されている。
第2吸入側弁座310には、吸入側逆止弁500の連結部530を貫通させるための連結部挿入穴312が形成され、連結部挿入穴312を取り囲むようにして複数の第2吸入口311が形成されている。第2吸入口311は、第1吸入口211の下方に配置されている。第1吸入口211と第2吸入口311との間には、液体が一時的に貯められる中間部220が形成されている。吸入口103は、第1吸入口211と中間部220と第2吸入口311を含む。
吐出側弁座320には、吐出側逆止弁700の脚部702を受容するための凹部322と、凹部322を取り囲むようにして配置される複数の吐出口321が形成されている。
吐出側逆止弁700は、扁平な頭部701を上に向け、棒状の脚部702を下に向けて、脚部702がバルブシート300に取り付けられていることによって、ポンプ室110に組み込まれている。脚部702は、先端がほぼ平らであり、バルブシート300に形成された吐出側弁座320の凹部322に受容されて保持されている。吐出側逆止弁700の頭部701の頂部703は、吐出管202の壁部を形成する吸入吐出側ケース200の内壁に形成された突起201に接している。
吸入側逆止弁500の第2の弁部520を介して液体が吸入され、吐出側逆止弁700を介して液体が吐出されるまでの空間がポンプ室110である。第2の弁部520と吐出側逆止弁700はそれぞれ、バルブシート300に形成された第2吸入側弁座310と吐出側弁座320に取り付けられている。ポンプ室110の底面は振動板130によって形成されている。振動板130は、ポンプ室110の容積を変化させる。バルブシート300と振動板130は、それぞれ、ポンプ室110の上面側の壁と下面側の壁を形成している。振動板130の端部は、バルブシート300と振動板側ケース400との間に挿入されて固定されている。
圧電素子120の下部には、空間が設けられ、圧電素子120は上下に振動することができる。バルブシート300の上部には、吸入吐出側ケース200が取り付けられており、吸入吐出側ケース200の内部に吐出管202が形成されている。バルブシート300と吸入吐出側ケース200との間には8の字Oリング301が配置されて密閉され、バルブシート300と振動板側ケース400との間にはOリング302が配置されて密閉されている。Oリング302は、バルブシート300の下面に形成された凹部にはめ込まれている。吸入吐出側ケース200とバルブシート300、バルブシート300と振動板側ケース400は、それぞれ、ねじ等で互いに密接するようにして固定されている。
吸入側逆止弁500がマイクロポンプ1に組み込まれると、第1の弁部510の周辺部は、第1吸入側弁座210の下面213に密着する。第2の弁部520の頂部521は、振動板130に接する。振動板130は、第2の弁部520の頂部521を下方から押圧するようにして、第2の弁部520を固定している。第2の弁部520の周辺部は、第2吸入側弁座310の下面313に密着する。
液タンク101内の液体102は、吸入口103の第1吸入口211、中間部220、第2吸入口311を通ってポンプ室110に入る。吸入口103においては、液体102の流れの上流から、第1吸入口211、中間部220、第2吸入口311が順番に並んでいる。
圧電素子120に交流電圧を印加することによって、交流電圧の周波数に対応する周波数で圧電素子120が振動する。この圧電素子120の振動と連動して、圧電素子120に接着されている振動板130が振動し、ポンプ室110の容積を変化させる。振動板130が上下どちらにも変位していないときには、第1の弁部510が第1吸入口211を閉じ、第2の弁部520が第2吸入口311を閉じ、吐出側逆止弁700の頭部701が吐出口321を閉じている。
図3は、この発明の第1実施形態のマイクロポンプに用いられる突起(A)と、吐出側逆止弁(B)と、吐出側弁座の上面(C)を示す図である。
図3の(A)に示すように、吐出管202(図1)の壁部を形成する吸入吐出側ケース200(図1)の内壁に形成された突起201は、円柱状の部分と円錐台状の部分とを有し、円柱の下面と円錐台の上面を互いに接合した形状である。突起201の円錐台状の部分においては、円柱と接合している上面の径が相対的に大きく、下面の径が相対的に小さい。吐出側逆止弁700がマイクロポンプに組み込まれると、突起201の下面が吐出側逆止弁700の頂部703を押圧する。
図3の(B)に示すように、吐出側逆止弁700は、弁の軸を含む縦断面が、相対的に断面積が大きい頭部701と相対的に断面積が小さい脚部702を有し、開いた傘のような形状をしている。吐出側逆止弁700は、扁平な頭部701と棒状の脚部702を有し、頂部703を含む頭部701の上面は平らである。吐出側逆止弁700は、ゴム等の樹脂素材によって形成されている。
図3の(C)に示すように、吐出側弁座320には、吐出側逆止弁700の脚部702を受容するための凹部322と、凹部322を取り囲むようにして複数の吐出口321が形成されている。
図4は、この発明の第1実施形態のマイクロポンプに用いられる吐出側逆止弁と吐出側逆止弁の周辺の断面を示す断面図である。図4の(A)は、吐出側逆止弁が吐出側弁座に挿入される前の状態を示し、図4の(B)は、吐出側逆止弁が吐出側弁座に挿入されてバルブシートに組み込まれた状態を示す。
吐出側弁座320は、バルブシート300(図1)内に形成されており、吐出側逆止弁700の脚部702を受容するための凹部322を有する。吐出側弁座320の上面には、凹面323が形成されている。凹面323は、吐出側逆止弁700の脚部702を受容するための凹部322側で凹んだ球の内面のような傾斜に形成されている。
図4の(B)に示すように、吐出側逆止弁700の脚部702が吐出側弁座320の凹部322に上方から挿入されて、吐出側逆止弁700が吐出側弁座320に組み込まれる。また、吐出管202(図1)の内壁に形成された突起201が、吐出側逆止弁700の頭部701の中心を上方から押圧するようにして、吐出側逆止弁700を固定している。このようにすることにより、吐出側逆止弁700の頭部701が弾性変形し、頭部701においては、吐出側弁座320の上面に形成された凹面323に沿って、吐出管202の突起201側に凹面が形成され、吐出側弁座320側に脚部702を中心にして凸面が形成されて、頭部701の周辺部は、吐出側弁座320に密着する。
図5は、この発明の第1実施形態のマイクロポンプに用いられる吸入側逆止弁を、第2の弁部側から見たときの斜視図(A)と、連結部に垂直な方向から見たときの正面図(B)である。
図5の(A)と(B)に示すように、吸入側逆止弁500は、第1の弁部510と、第2の弁部520と、第1の弁部510と第2の弁部520とを連結するための連結部530とを含む。吸入側逆止弁500は、ゴム等の樹脂素材によって形成されている。
第1の弁部510と第2の弁部520は、扁平な円柱状に形成されている。連結部530は、棒状に形成されている。第1の弁部510の径と第2の弁部520の径は、連結部530の径よりも大きい。第1の弁部510には、連結部530が突出している面と反対側の面の中央に、第1の弁部510から突出した突起として脚部511が形成されている。脚部511の先端は、ほぼ平らに形成されている。第2の弁部520には、連結部530が突出している面と反対側の面の中央に、第2の弁部520から突出した突起として頂部521が形成されている。
第1の弁部510は、第1吸入口211(図1)に配置される。第2の弁部520は、第2吸入口311(図1)に配置される。連結部530は、連結部挿入穴312(図1)に挿入される。脚部511は、第1吸入側弁座210に形成されている受容部212(図1)に保持される。
この実施の形態では、例えば、吸入側逆止弁500の第1の弁部510と第2の弁部520と吐出側逆止弁700の直径は5.5mm、厚さは0.3〜0.5mmとする。圧電素子120としては、直径が17mm、厚さ0.4mmの圧電素子120を用い、この圧電素子120を、直径24mm、厚さ0.09mmの銅板等によって形成される振動板130に接着して、マイクロポンプ1に組み込む。マイクロポンプ1の長さは30mm、幅は30mm、高さは10mmとする。このようなマイクロポンプ1の液送量は、1〜200μL/秒程度の微小な液送量となる。
図6は、この発明の一つの実施の形態として、振動板を振動させてポンプ室の容積を変化させたときのマイクロポンプの動作を順に示す図である。
まず、図6(A)は、ポンプ室内に液体を吸入するときのマイクロポンプのポンプ室周辺を示す断面図である。
図6(A)に示すように、振動板130が下方向に変位すると、ポンプ室110の容積が大きくなる。ポンプ室110の容積が大きくなると、吸入側逆止弁500の第1の弁部510と第1吸入口211との間と、第2の弁部520と第2吸入口311との間に隙間ができて、液タンク101に溜められている液体102(図1)が、吸入口103、すなわち、第1吸入口211、中間部220、第2吸入口311を通ってポンプ室110内に流入する。このとき、吐出側逆止弁700の頭部701によって吐出口321はふさがれており、ポンプ室110内に流入した液体が吐出口321から流出することはない。
次に、図6(B)は、ポンプ室内に吸入した液体を外部に吐出するときのマイクロポンプのポンプ室周辺を示す断面図である。
図6(B)に示すように、振動板130が上方向に変位すると、ポンプ室110の容積が小さくなる。ポンプ室110の容積が小さくなると、第1の弁部510と第1吸入口211との間の隙間と、第2の弁部520と第2吸入口311との間の隙間がふさがれて、液タンク101からポンプ室110には液体が流入しない。一方、吐出側逆止弁700と吐出口321との間に隙間ができて、ポンプ室110内の液体が吐出口321から吐出管202に流出し、吐出端203を通って外部に吐出される。
マイクロポンプ1は、図1に示すように振動板130の変位がない状態と、図6(A)に示すようにポンプ室110の容積を大きくする方向に振動板130が変位している状態と、図6(B)に示すようにポンプ室110の容積を小さくする方向に振動板130が変位している状態と、を繰り返すことによって、液タンク101内の液体102をポンプ室110内に吸入し、外部に吐出する。
ここまでの例では、振動板130の変位が0の状態(図1)から、振動板130がポンプ室110の容積を大きくする方向に変位した状態(図6(A))に変化し、振動板130の変位が0の状態(図1)に戻り、続いて振動板130がポンプ室110の容積を小さくする方向に変位した状態(図6(B))に変化し、振動板130の変位が0の状態(図1)に戻るまでの一連の動作の場合、すなわち1サイクル動作の場合を示したが、振動板130の変位が0の状態(図1)から、振動板130がポンプ室110の容積を大きくする方向に変位した状態(図6(A))に変化し、振動板130の変位が0の状態(図1)に戻る動作、すなわち半サイクル動作でも、マイクロポンプ1による液体の吸入と吐出が可能である。この場合は、1サイクルの半分程度の吐出量となる。同様に振動板130の変位が0の状態(図1)から、振動板130がポンプ室110の容積を小さくする方向に変位した状態(図5(B))に変化し、振動板130の変位が0の状態(図1)に戻る動作、すなわち半サイクル動作でも、マイクロポンプ1による液体の吸入と吐出が可能であり、この場合も1サイクル動作の半分程度の吐出量となる。
図7は、この発明の実施の形態と比較するために、吸入側逆止弁を1つだけ備えるマイクロポンプにおいて、吸入口に気泡が流入するときの吸入側逆止弁の動作を順に示す図である。
図7の(A)に示すように、振動板がポンプ室の容積を大きくする方向に変位するときには、吸入側逆止弁910の頭部911と吸入口920の間に隙間ができて、ポンプ室の外部の液体が吸入口920を通ってポンプ室の内部に流入する。液体に気泡801が入っている場合には、気泡801は、液体とともにポンプ室に向かって流れるように力を受けて、吸入口920に入りかけるが、気泡801の周辺の液体の表面張力があるために、吸入口920を通過しにくい。気泡801は、吸入口920の上端付近に留まる。
図7の(B)に示すように、振動板がポンプ室の容積を小さくする方向に変位すると、吸入側逆止弁910と吸入口920との間の隙間がふさがれて、ポンプ室の内部には液体が流入しない。吸入口920に入りかけていた気泡801は、吸入側逆止弁910の頭部911が吸入口920を下方向から閉じることによって上向きに圧力を受けて、吸入口920から出て、吸入口920の上端に戻ってしまう。
振動板が振動すると、気泡801は、図7の(A)と図7の(B)の状態を繰り返す。このように、気泡801は、吸入口920の上端をふさいだままで、吸入口920からポンプ室の内部に入りにくい。
このように、気泡801が吸入口920の上端をふさいだままで、吸入口920を通過しない場合には、液体にかかる圧力を気泡801が吸収してしまうので、安定した液送ができない。
図8は、第1実施形態のマイクロポンプにおいて、吸入口に気泡が流入するときの吸入側逆止弁の動作を順に示す図である。
図8の(A)に示すように、中間部220に気泡801が入り込んでいるときに、振動板がポンプ室の容積を大きくする方向に変位すると、第1の弁部510と第1吸入口211の間に隙間ができ、第2の弁部520と第2吸入口311の間に隙間ができて、ポンプ室の外部の液体が第1吸入口211、中間部220、第2吸入口311を通ってポンプ室の内部に流入する。中間部220の気泡801は、液体とともにポンプ室に向かって流れるように力を受けて、第2吸入口311に入りかけるが、気泡801周辺の液体の表面張力があるために、第2吸入口311を通過しにくい。気泡801は、第2吸入口311の上端付近に留まる。
図8の(B)に示すように、振動板がポンプ室の容積を小さくする方向に変位すると、第2の弁部520が第2吸入口311を下方向から閉じるように上向きに圧力を受けて、第2吸入口311に入りかけていた気泡801は、上向きに、逆流方向に圧力を受ける。しかし、振動板の変位が第1の弁部510の動作に影響を与えるまでに少し時間差があり、第1吸入口211では、第1の弁部510が第1吸入口211を閉じるまでの間、小さな吸込み方向の力が働く。
中間部220においては、第2吸入口311の付近に働く上向きの、逆流方向の力と、第1吸入口211の付近に働く下向きの、吸入方向の力とが相殺されるとともに、第1の弁部510と第2の弁部520との間、すなわち、中間部220の圧力が高まる。中間部220の圧力が高まることによって、次に振動板が下向きに変位して、マイクロポンプが吸込み動作をするときに、比較的小さい圧力で吸込み動作を行なうことができる。このようにして、ロスのない動作を行なうことが可能となり、逆流する液体の量が軽減される。
また、振動板がポンプ室の容積を小さくする方向に変位するとき、第2吸入口311に入りかけていた気泡801は、第2の弁部520が第2吸入口311を下方向から閉じることによって上向きに、逆流方向に圧力を受ける。しかしながら、第1の弁部510が第1吸入口211を閉じるので、第2吸入口311から中間部220に戻ってしまうことができない。
図8の(C)に示すように、振動板が再びポンプ室の容積を大きくする方向に変位すると、ポンプ室の外部の液体が、第1吸入口211、中間部220、第2吸入口311を通ってポンプ室に流入する。第2吸入口311に入りかけている気泡801には、さらに下向きに力がかかり、第2吸入口311の内部をポンプ室の方に流される。
このように、第1の弁部510と、第1の弁部510の下流側に配置される第2の弁部520の2つの弁部を含む吸入側逆止弁500を吸入口103に備えることによって、第2吸入口311において気泡801を逆流させずにポンプ室に流入させることができる。
逆流動作は非常に微細であるが、マイクロポンプ1(図1)の液送量は非常に微量であるので、小さな動作がマイクロポンプの性能に大きな影響を与える。
マイクロポンプ1のように第1の弁部510と、第1の弁部510の下流側に配置される第2の弁部520の2つの弁部を含む吸入側逆止弁500を吸入口103に備えることにより、液体に気泡801が含まれていても、気泡801を液体とともに徐々に送り出すことができる。このようにして、確実に液送を行なうことができる。
図9は、この発明の実施の形態と比較するために、吸入側逆止弁を1つだけ備えるマイクロポンプにおいて、吸入口から気泡が流出するときの吸入側逆止弁の動作を順に示す図である。
図9の(A)に示すように、振動板がポンプ室の容積を大きくする方向に変位するときには、吸入口920に気泡801が入っている場合には、気泡801は、液体とともにポンプ室に向かって流れるように力を受けるが、気泡801周辺の液体の表面張力があるために、吸入口920から流出しにくい。気泡801は、吸入口920の下端と吸入側逆止弁910の頭部911との間に留まる。
図9の(B)に示すように、振動板がポンプ室の容積を小さくする方向に変位すると、吸入口920の下端部にあった気泡801は、吸入側逆止弁910の頭部911が吸入口920を下方向から閉じることによって上向きに圧力を受けて、吸入口920の下端から上方向に戻って、吸入口920の内部に戻ってしまう。
振動板が振動すると、気泡801は、図9の(A)と図9の(B)の状態を繰り返す。このように、気泡801は、吸入口920の内部をふさいだままで、吸入口920からポンプ室の内部に入りにくい。
このように、気泡801が吸入口920の内部に入っても、吸入口920をふさいだままで吸入口920から流出しない場合には、液体にかかる圧力を気泡801が吸収してしまうので、安定した液送ができない。
図10は、第1実施形態のマイクロポンプにおいて、吸入口から気泡が流出するときの吸入側逆止弁の動作を順に示す図である。
図10の(A)に示すように、第2吸入口311に気泡801が入り込んでいるときに、振動板がポンプ室の容積を大きくする方向に変位すると、第2吸入口311の気泡801は、液体とともにポンプ室に流出するように力を受けるが、気泡801周辺の液体の表面張力があるために、第2吸入口311から流出しにくい。
図10の(B)に示すように、振動板がポンプ室の容積を小さくする方向に変位して、変位が0になると、第1の弁部510が第1吸入口211をふさぎ、第2の弁部520が第2吸入口311をふさぐ。
第1の弁部510が第1吸入口211をふさぐと、中間部220と第2吸入口311の内部には圧力がかかり、第2吸入口311の内部に留まっている気泡801は、上方向に戻ることができない。そのため、第2の弁部520が第2吸入口311を閉じると、第2吸入口311の下端にあった気泡801は、一部がポンプ室の内部に送りだされる。
図7と図9に示すように、吸入側逆止弁910が1つだけ備えられているマイクロポンプでは、吸入口920の上端部や、吸入口920の下端部では、気泡801を形成する液体の表面張力によって、気泡801が吸入口920の外部から内部に流入しにくく、また、吸入口920の内部から外部に流出しにくい。振動板が振動することによって、気泡801に下方向の力が加わっても、すぐに逆向きの力が加わることになり、気泡801が上方向に押し戻される。このように、吸入口920の開口部付近では、逆流動作が生じる。そのため、気泡801が吸入口920の上端や、吸入口920の下端に停滞してしまう。気泡801が吸入口920に停滞したまま、次に新たな気泡801が吸入口920に停滞すると、気泡801が重なってより大きな気泡801になり、さらに液送されにくくなる。
マイクロポンプは、全体の大きさが小さく、特に、吸入口920や吐出口などは非常に小さい。このような小さい部分には、気泡801や、気泡801が含まれている液体を流通させることが非常に困難である。例えば、吸入口920が開放状態である場合には、液体に気泡801が含まれていると、気泡801の周辺の液体の表面張力により、吸入口920を気泡801が容易に通過しない。また、例えば、吸入口920にタンクなどが接続されている場合など、吸入口920が閉じられた空間になっている場合にも、液体に十分な圧力がかかっていなければ気泡801の周辺の液体の表面張力により、吸入口920を気泡801が容易に通過しない。液体に弱い圧力がかかっていても、気泡801が液体にかかっている圧力を吸収してしまい、スムーズな液送ができない。
このように、従来のマイクロポンプでは、液体に気泡801が含まれていると、気泡801の周辺の液体の表面張力や、液体にかけられている圧力を気泡801が吸収してしまうことにより、吸入口920を気泡801が容易に通過せず、安定した液送ができなくなってしまう。
一方、図8と図10に示すように、第1の弁部510と、第1の弁部510の下流側に配置される第2の弁部520の2つの弁部を含む吸入側逆止弁500を吸入口103に備えることによって、第2吸入口311からポンプ室に、気泡801を円滑に流出させることができる。
図11は、第1実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座の別の形状の上面図である。
図11の(A)に示すように、第2吸入側弁座310aには、連結部挿入穴312aを囲むように、図2に示す第2吸入側弁座310の第2吸入口311よりも大きい、3つのほぼ扇形の第2吸入口311aが形成されている。それぞれの第2吸入口311aの大きさは等しく、扇形の中心角はほぼ120°である。
また、図11の(B)に示すように、第2吸入側弁座310bにも、連結部挿入穴312bを囲むように、図2に示す第2吸入側弁座310の第2吸入口311よりも大きい、4つのほぼ扇形の第2吸入口311bが形成されている。それぞれの第2吸入口311aの大きさは等しく、扇形の中心角はほぼ90°である。
このように、第1実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座は、図11の(A)に示す第2吸入側弁座310a、または、図11の(B)に示す第2吸入側弁座310bのように、第2吸入口が大きく形成されていてもよい。また、第1吸入側弁座の第1吸入口も、図2に示す第2吸入口311よりも大きく形成されてもよい。
以上のように、マイクロポンプ1は、ポンプ室110と、外部からポンプ室110に液体102を吸入するための吸入口103と、ポンプ室110の容積を変化させるための振動板130と、吸入口103を閉塞または開放可能にするために配置される吸入側逆止弁500とを備え、吸入側逆止弁500は、吸入口103において上流側に配置される第1の弁部510と、吸入口103において下流側に配置される第2の弁部520と、第1の弁部510と第2の弁部520とを連結するための連結部530とを含む。
第1の弁部510と第2の弁部520の2つの弁部を含む吸入側逆止弁500が吸入口103に配置されることによって、第1の弁部510と第2の弁部520との間に気泡が入り込んだ場合に、気泡の大きさは、最大でも第1の弁部510と第2の弁部520との間の空間の大きさになる。そのため、気泡が圧縮されることで生じる、液体にかかる圧力のロスが低減されて、液送を円滑に行なうことができる。
また、第1の弁部510と第2の弁部520の2つの弁部を含む吸入側逆止弁500が配置されることによって、吸入口103において液体にかかる圧力を増大させて、確実に液送を行なうことができる。
また、吸入口103において逆流が発生することを防ぐことができる。
さらに、第1の弁部510と第2の弁部520とが連結部530で連結されていることによって、組立てや固定方法を複雑にすることなく、吸入口103に2つの弁部を備えることができる。第1の弁部510と第2の弁部520とを固定するために、第1の弁部510と第2の弁部520のそれぞれに脚部等が形成されていなくても、例えば、連結部530の位置を固定することによって、第1の弁部510と第2の弁部520の両方の位置を固定することができる。
このようにすることにより、液体中に気泡が含まれていても安定した液送を行うことが可能なマイクロポンプ1を提供することができる。
また、マイクロポンプ1においては、第1の弁部510と、第2の弁部520と、連結部530とは、一体に形成されている。
このようにすることにより、マイクロポンプ1の製造に必要な部品点数を減らすことができる。また、マイクロポンプ1の組立てが容易になる。さらに、吸入口103に2つの弁部を備える場合において、部品点数が増加することによるコストアップや組立てミスを避けることができる。
また、マイクロポンプ1は、第1の弁部510を保持するための第1吸入側弁座210と、第2の弁部520を保持するための第2吸入側弁座310とを備え、第2吸入側弁座310には、連結部530を貫通させるための連結部挿入穴312が形成されている。
このようにすることにより、連結部530を連結部挿入穴312に貫通させて吸入側逆止弁500を固定することができるので、第1の弁部510を第1吸入側弁座210に、第2の弁部520を第2吸入側弁座310に取り付けることが簡単になる。
(第2実施形態)
図12は、この発明の第2実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座の上面図(A)と、第2吸入側弁座を斜め下方向から見たときの斜視図(B)である。
図12に示すように、第2実施形態のマイクロポンプが第1実施形態のマイクロポンプと異なる点としては、第2実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座310cにおいては、3つの第2吸入口311cのうちの1つと、吸入側逆止弁の連結部を挿入して保持するための連結部挿入穴312cとが連通している。第2実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座310cのその他の構成は、第1実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座310a(図11の(A))と同様である。
図5に示す吸入側逆止弁500を第2実施形態のマイクロポンプに取り付けるときには、まず、脚部511を第1吸入側弁座210(図1)の受容部212(図1)にはめ込む。次に、第2の弁部520を折り畳んで、第2吸入側弁座310cの第2吸入口311cのうち、連結部挿入穴312cと連通している第2吸入口311cに上方向から入れる。第2の弁部520は薄く軟らかいので、折り畳むことができる。第2の弁部520を折り畳んだままで第2吸入口311cの下側まで押し出してから、第2の弁部520を開き、連結部530を連結部挿入穴312cにはめ込む。
このように、第2吸入口311cと連結部挿入穴312cが連通していることによって、図5に示す吸入側逆止弁500をマイクロポンプに取り付けやすくなる。
図13は、第2実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座の別の形状を示す上面図である。
図13に示すように、第2実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座310dにおいては、4つの第2吸入口311dのうちの1つと、吸入側逆止弁の連結部を挿入して保持するための連結部挿入穴312dとが連通している。第2実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座310dのその他の構成は、第1実施形態のマイクロポンプの第2吸入側弁座310b(図11の(B))と同様である。
図13に示す第2吸入側弁座310cを備えるマイクロポンプに、図5に示す吸入側逆止弁500を取り付けるときにも、まず、脚部511を第1吸入側弁座210(図1)の受容部212(図1)にはめ込む。次に、第2の弁部520を折り畳んで、第2吸入側弁座310dの第2吸入口311dのうち、連結部挿入穴312dと連通している第2吸入口311dに上方向から入れる。第2の弁部520を折り畳んだままで第2吸入口311dの下側まで押し出してから、第2の弁部520を開き、連結部530を連結部挿入穴312dにはめ込む。
このように、第2吸入口311dと連結部挿入穴312dが連通していることによって、図5に示す吸入側逆止弁500をマイクロポンプに取り付けやすくなる。
(第3実施形態)
図14は、この発明の第3実施形態のマイクロポンプが備える吸入側逆止弁の全体を示す正面図である。
図14に示すように、第3実施形態のマイクロポンプが第1実施形態のマイクロポンプと異なる点としては、吸入側逆止弁500aは、第1の弁部510aの径R1が、第2の弁部520aの径R2よりも小さく形成されている。したがって、第1の弁部510aの外周長は、第2の弁部520aの外周長よりも小さい。吸入側逆止弁500aのその他の構成は、第1実施形態の吸入側逆止弁500(図5)と同様である。第3実施形態のマイクロポンプにおいても、第1実施形態のマイクロポンプと同様に、吸入口103(図1)において、第1の弁部510aの下方に第2の弁部520aが配置される。
第1の弁部510aの外周長が第2の弁部520aの外周長よりも小さく形成されていることによって、第1の弁部510aと第2の弁部520aが同じ圧力を受けているとき、第1の弁部510aの厚み方向の変形量は、第2の弁部520aの厚み方向の変形量より小さい。
第3実施形態においては、吸入口において液体が上方向から下方向に向かって流通するので、第1の弁部510aと第2の弁部520aは、厚み方向が鉛直方向に沿うように並べて配置されている。このように、第1の弁部510aと第2の弁部520aは、厚み方向が鉛直方向に沿うように配置されると、振動板の変位だけでなく、自重によっても変形する。第1の弁部510aの外周長が第2の弁部520aの外周長よりも小さいことによって、第1の弁部510aの自重による変形量は、第2の弁部520aの自重による変形量よりも小さくなる。
図15は、第3実施形態のマイクロポンプにおいて、吸入口から気泡が流出するときの吸入側逆止弁の動作を順に示す図である。
図15の(A)に示すように、第2吸入口311に気泡801が入り込んでいるときに、振動板がポンプ室の容積を大きくする方向に変位すると、第1の弁部510aと第2の弁部520aは、それぞれの外周部が下方向に変位するように変形する。第1の弁部510aの厚み方向の変形量は、第2の弁部520aの厚み方向の変形量よりも小さい。第2吸入口311の気泡801は、液体とともにポンプ室に流出するように力を受けるが、気泡801周辺の液体の表面張力があるために、第2吸入口311から流出しにくい。
図15の(B)に示すように、振動板がポンプ室の容積を小さくする方向に変位して、変位が0になると、まず、変形量の小さい第1の弁部510aが、もとの形状、すなわち、振動板の変位がないときの形状に戻り、第1の弁部510aが第1吸入口211をふさぐ。このように、第1の弁部510aの方が第2の弁部520aよりも変形量が小さいので、復帰動作が速い。
第1の弁部510aが第1吸入口211をふさぐと、中間部220と第2吸入口311の内部には圧力がかかるので、第2吸入口311から第1吸入口211に向かう逆流動作が生じることなく、第2吸入口311の内部に留まっている気泡801は、上方向に戻らない。気泡801は、第2吸入口311の下端に留まる。
図15の(C)に示すように、振動板がポンプ室の容積を小さくする方向にさらに変位すると、第2の弁部520aももとの形状に戻り、第2吸入口311を第2の弁部520aが下方向からふさぐ。第1吸入口211は既に第1の弁部510aによってふさがれているので、第2吸入口311の気泡801には、下向きの圧力がかかっており、上方向に戻ることはできない。そのため、第2の弁部520aが第2吸入口311を閉じると、第2吸入口311の下端にあった気泡801は、一部がポンプ室の内部に送り出される。
このように、第1の弁部510aと、第1の弁部510aの下流側に配置される第2の弁部520aの2つの弁部を吸入口103に備え、第1の弁部510aが第2の弁部520aよりも変形量が小さいことによって、第2吸入口311からポンプ室に、気泡801を円滑に流出させることができる。
気泡の大きさが第2吸入口311よりも大きい場合にも、気泡の一部が第2吸入口311に吸い込まれた後、表面張力の影響で逆流現象によって押し戻されてしまい、ポンプ室に流入できないという問題を解消し、少しずつポンプ室の内部に送出することができる。
図16は、第3実施形態のマイクロポンプが備える吸入側逆止弁の別の形状を示す正面図である。
図16に示すように、吸入側逆止弁500bが図14に示す吸入側逆止弁500aと異なる点としては、第1の弁部510bの厚みT1が、第2の弁部520bの厚みT2よりも大きく形成されている。第1の弁部510bの厚みT1が第2の弁部520bの厚みT2よりも大きく形成されていることによって、第1の弁部510bと第2の弁部520bが同じ圧力を受けているとき、第1の弁部510bの厚み方向の変形量は、第2の弁部520bの厚み方向の変形量よりも小さい。吸入側逆止弁500bのその他の構成は、吸入側逆止弁500aと同様である。
吸入側逆止弁500bをマイクロポンプに取り付けると、吸入側逆止弁500aを用いる場合と同様に、上述のように、変形量の小さい第1の弁部510bが第2の弁部520bよりも先に第1吸入口211をふさぐ。このように、第1の弁部510bと、第1の弁部510bの下流側に配置される第2の弁部520bの2つの弁部を吸入口103に備え、第1の弁部510bの変形量が第2の弁部520bの変形量よりも小さいことによって、第1の弁部510bの復帰動作が第2の弁部520bよりも速くなり、第2吸入口311からポンプ室に、気泡801を円滑に流出させることができる。
なお、第3実施形態のマイクロポンプにおいても、図11に示すように、第2吸入口を比較的大きく形成して、気泡が入りやすくしておくことが好ましい。また、第1吸入口も、第2吸入口と同様に、図11に示すような形状に形成されて、第1の弁部510a,510bと第2の弁部520a,520bとの間に気泡が入りやすくしておくことがこのましい。
以上のように、第3実施形態のマイクロポンプにおいては、第1の弁部510aの外周長は、第2の弁部520aの外周長よりも小さい。
また、第3実施形態のマイクロポンプにおいては、第1の弁部510bの厚みT1は、第2の弁部520bの厚みT2よりも大きいことが好ましい。
このようにすることにより、第1の弁部510a,510bの外周部の厚み方向の変形量が、第2の弁部520a,520bの外周部の厚み方向の変形量よりも小さくなる。第1の弁部510a,510bの外周部の厚み方向の変形量が、第2の弁部520a,520bの外周部の厚み方向の変形量よりも小さくなることによって、第1の弁部510a,510bの復帰が第2の弁部520a,520bの復帰よりも速くなる。
第1の弁部510a,510bの復帰が第2の弁部520a,520bの復帰よりも速いので、吸入側逆止弁500a,500bが吸入口103を閉塞するときには、第2の弁部520a,520bが吸入口103の下流側の第2吸入口311を閉塞する前に、第1の弁部510a,510bが吸入口103の上流側の第1吸入口211を閉塞する。第1の弁部510a,510bが吸入口103の上流側の第1吸入口211を閉塞すると、第2の弁部520a,520bがまだ吸入口103の下流側の第2吸入口311を閉塞していなくても、第2の弁部520a,520b側から第1の弁部510a,510b側、すなわち、吸入口103の下流側の第2吸入口311から上流側の第1吸入口211に向かって液体が逆流することを防ぐことができる。液体に気泡801が含まれていても、気泡801が吸入口103の下流側の第2吸入口311から上流側の第1吸入口211に逆流することを防いで、吸入口103からポンプ室に流出させやすくなる。
このようにすることにより、液体中に気泡801が含まれていても液送を確実に行なうことができる。
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
1:マイクロポンプ、103:吸入口、130:振動板、211:第1吸入口、210:第1吸入側弁座、310,310a,310b,310c,310d:第2吸入側弁座、311,311a,311b,311c,311d:第2吸入口、312,312a,312b,312c,312d:連結部挿入穴、500,500a,500b:吸入側逆止弁、510,510a,510b:第1の弁部、520,520a,520b:第2の弁部。