JP5171669B2 - ダイナミックヘッドホン - Google Patents

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本発明は、ボイスコイルによって振動板が駆動されるダイナミックヘッドホンに関し、さらに詳しく言えば、落下衝撃等による振動板の過大振幅を押さえる技術に関するものである。
まず、図5により、ダイナミックヘッドホンの構成を概略的に説明する。ダイナミックヘッドホンは、振動板10,磁気回路部20およびユニットフレーム30を含む電気−音響変換器としてのヘッドホンユニット1を備える。
振動板10は、センタードーム11と、その周りに一体的に連設された弾性支持部としてのサブドーム12とを備え、センタードーム11とサブドーム12との境界部分の裏面側にはボイスコル13が取り付けられている。
磁気回路部20は、円盤状に形成された永久磁石21と、カップ状に形成されたヨーク22とを備える。永久磁石21は厚さ方向に着磁されヨーク22内に配置される。永久磁石21上にはポールピース23が設けられ、ポールピース23とヨーク22との間に磁気ギャップGが形成される。
ユニットフレーム30は円盤状に形成されていて、その中央部分で磁気回路部20を支持する。振動板10は、ボイスコル13が磁気ギャップG内で振動し得るように、サブドーム12の周縁がユニットフレーム30に対して気密的に支持される。
ユニットフレーム30の周囲にはバッフル板35が設けられ、バッフル板35の背面側(反振動板側)にはヘットホンハウジング41が取り付けられ、また、バッフル板35の放音面側(振動板側)の周囲にはイヤーパッド42が取り付けられる。
ヘットホンハウジング41により、ユニットフレーム30の背面側に所定容積の後部空気室A1が形成される。また、サブドーム12の周縁がユニットフレーム30に対して気密的に支持されることから、振動板10とユニットフレーム30との間にも後部空気室A2が形成される。以下の説明で、後部空気室A1を第1後部空気室、後部空気室A2を第2後部空気室と言うことがある。
ユニットフレーム30には、第1後部空気室A1と第2後部空気室A2とを連通する複数の開口部31が穿設され、その各々に音響抵抗材32が設けられる。
図示しない音声再生機器からボイスコイル13に音声信号を電流として通電することにより振動板10が振動して、ピーカとして動作することにより、ヘッドホンユニット1から音声が放音される。
その際、振動板10が磁気回路部20に当接したり、ボイスコイル13が磁気ギャップGから飛び出さないように、サブドーム12の弾性等が設計され、また、ヘッドホンユニット1が組み立てられる。
しかしながら、振動板10に過大な振幅が発生すると、図6に示すように振動板10が磁気回路部20に衝突したり、図7に示すようにボイスコイル13が磁気ギャップGから飛び出して元の位置に戻らなくなることがある。
振動板10の過大振幅は、ヘッドホンに落下衝撃等の衝撃が加えられたときや、イヤーパッド42が密閉された状態で頭部に押しつけられたときにしばしば発生する。
また、能動回路を搭載して外来音を低減するノイズキャンセル型のヘッドホンにおいては、ヘッドホンユニット1の近傍に音波検出用のマイクロホンが設けられるが、例えばヘッドホンの着脱時にマイクロホンに加わる圧力が変化すると、この圧力をキャンセルするため、上記能動回路から大きな信号がボイスコイル13に加えられることがあり、これによっても振動板10が過大に変位することがある。
そこで、特許文献1に記載の発明では、ヘッドホンユニット1に振動板10の変位を一定範囲内に制限する制限要素(ストッパ)を設けて、振動板10の過大変位(過大振幅)を押さえることが提案されている。
しかしながら、ボイスコイル13を含む振動系の質量は、通常、0.数g程度(直径40mmのユニットでは約0.13g)で、第1後部空気室A1の容積が例えば100cc程度であるとすると、機械インピーダンス(スチフネス)は1.14×10 [dyn/cm]程度と小さい。
したがって、落下衝撃等を受けたり、上記能動回路から大きな信号がボイスコイル13に加えられると、振動板10が容易に変位して上記制限要素に接触し、この接触が同じ個所で繰り返されると、振動板10やボイスコイル13に変形をきたすことになる。最悪の場合、変形した振動板10やボイスコイル13の一部分が磁気ギャップG内にかじり付いてしまうことがある。
特許第3268774号公報
したがって、本発明の課題は、ダイナミックヘッドホンにおいて、振動板に接触するストッパなどの制限要素を用いることなく、落下衝撃等による振動板の過大振幅(過大変位)を押さえることにある。
上記課題を解決するため、本発明は、ボイスコイルが取り付けられた振動板、上記ボイスコイルに対する磁気ギャップを有する磁気回路部および円盤状をなすユニットフレームを含み、上記磁気回路部が上記ユニットフレームの中央部分に配置されているとともに、上記ボイスコイルが上記磁気ギャップ内で振動し得るように上記振動板の周縁が上記ユニットフレームに気密的に支持されているヘッドホンユニットと、上記ユニットフレームの背面側を囲み上記ユニットフレームとの間で所定容積の第1後部空気室を形成するヘッドホンハウジングとを備え、上記ユニットフレームに、上記振動板と上記ユニットフレームとの間で形成される第2後部空気室と上記第1後部空気室とを連通する開口部が設けられているダイナミックヘッドホンにおいて、上記ユニットフレームの少なくともいずれか一方の面には、上記第1後部空気室と上記第2後部空気室との圧力差に応動して上記開口部を開閉する応動弁が設けられていることを特徴としている。
本発明の好ましい態様としては、上記応動弁は、上記ユニットフレームの背面側と振動板側の双方に設けられる。
また、本発明の好ましい態様としては、上記応動弁は、その一端側が所定の厚さを有するスペーサを介して上記ユニットフレームに取り付けられた樹脂フィルムからなる舌片状の弁体を有し、上記ユニットフレームの面との間で薄空気層抵抗(音響抵抗)を形成する。
また、本発明の好ましい態様としては、上記弁体は、少なくとも上記ボイスコイルへの通電による振動板の振動時における上記第1後部空気室と上記第2後部空気室との圧力差には応動しないスチフネスを有する。
また、本発明の好ましい態様としては、上記弁体は、厚さ0.1mmのPETフィルムからなる。
また、本発明の好ましい態様としては、上記第2後部空気室の容積が、2cc以下である。
また、本発明の好ましい態様としては、上記第1後部空気室の容積が、20cc以上である。
本発明によれば、ユニットフレームの少なくともいずれか一方の面に、第1後部空気室と第2後部空気室との圧力差に応動して、これら両後部空気室間を連通する開口部を開閉する応動弁を設けたことにより、例えば上記圧力差が落下衝撃等により所定値以上となった場合には、応動弁が閉じられて第2後部空気室が密閉されるため、振動板のそれ以上の変位が押さえられる。
例えば、応動弁がユニットフレームの背面側に設けられていれば、振動板のユニットフレームから離れる方向への過大変位が阻止され、応動弁がユニットフレームの振動板側に設けられていれば、振動板のユニットフレームに近づく方向への過大変位が阻止される。
応動弁がユニットフレームの背面側と振動板側の双方に設けられる態様によれば、振動板の両方向の過大変位が封じられる。
応動弁は、その一端側が所定の厚さを有するスペーサを介してユニットフレームに取り付けられた樹脂フィルムからなる舌片状の弁体を有し、ユニットフレームの面との間で薄空気層抵抗(音響抵抗)を形成する態様によれば、応動弁自体が音響抵抗材を兼ねることができる。したがって、別途に音響抵抗材を設ける必要がなくなる。
弁体が少なくとも上記ボイスコイルへの通電による振動板の振動時における第1後部空気室と第2後部空気室との圧力差には応動しないスチフネスを有する態様によれば、通常の使用時にスピーカとして正常に動作し、良好な音質を得ることができる。
第2後部空気室(振動板の後部空気室)の容積が2cc以下の場合、機械インピーダンス(スチフネス)は57×10 [dyn/cm]以上となり、100ccの場合と比べると、衝撃が加わったときの振幅を1/50にすることができる。
一例として、第2後部空気室がないとき(負荷がないとき)の振動板の弾性限界(最大振幅)が±2mmであるとして、第2後部空気室を2cc以下にした場合には、振動板の振幅が±0.04mm程度に押さえられる。また、振動板全体に高いスチフネスが作用するため、振動板の一部分に応力が集中することもない。
第1後部空気室(ユニットフレームの後部空気室)の容積が20cc以上であれば、弁体が開放されている通常のスピーカ動作時、弁体による薄空気層抵抗を介して第1後部空気室の低いスチフネスで振動板が動作するため、音質が劣化することがない。
本発明によるダイナミックヘッドホンの内部構造を示す断面図。 本発明の実施形態に適用される応動弁を示す拡大断面図。 本発明において、振動板のユニットフレームに近づく方向への過大振幅時における応動弁の動作状態を示す断面図。 本発明において、振動板のユニットフレームから離れる方向への過大振幅時における応動弁の動作状態を示す断面図。 従来例としてのダイナミックヘッドホンの内部構造を示す断面図。 上記従来例において、振動板がユニットフレームに近づく方向に過大変位した状態を示す断面図。 上記従来例において、振動板がユニットフレームから離れる方向に過大変位した状態を示す断面図。
次に、図1ないし図4を参照して、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。この実施形態の説明において、先の図4により説明した従来例と同一もしくは同一と見なされてよい構成要素には同じ参照符号を用いている。
まず、図1を参照して、本発明のダイナミックヘッドホンにおいても、上記従来例と同じく、振動板10,磁気回路部20およびユニットフレーム30を含む電気−音響変換器としてのヘッドホンユニット1を備える。
振動板10は、センタードーム11と、その周りに一体的に連設された弾性支持部としてのサブドーム12とを備え、センタードーム11とサブドーム12との境界部分の裏面側にはボイスコル13が取り付けられている。
磁気回路部20は、円盤状に形成された永久磁石21と、カップ状に形成されたヨーク22とを備える。永久磁石21は厚さ方向に着磁されヨーク22内に配置される。永久磁石21上にはポールピース23が設けられ、ポールピース23とヨーク22との間に磁気ギャップGが形成される。
ユニットフレーム30は円盤状に形成されていて、その中央部分で磁気回路部20を支持する。振動板10は、ボイスコル13が磁気ギャップG内で振動し得るように、サブドーム12の周縁がユニットフレーム30に対して気密的に支持される。
ユニットフレーム30の周囲にはバッフル板35が設けられ、バッフル板35の背面側(反振動板側)にはヘットホンハウジング41が被せられ、また、バッフル板35の放音面側(振動板側)の周囲にはイヤーパッド42が取り付けられる。
ヘットホンハウジング41により、ユニットフレーム30の背面側に所定容積の第1後部空気室(ユニットフレームの後部空気室)A1が形成される。また、サブドーム12の周縁がユニットフレーム30に対して気密的に支持されることから、振動板10とユニットフレーム30との間にも第2後部空気室(振動板の後部空気室)A2が形成される。
ユニットフレーム30には、第1後部空気室A1と第2後部空気室A2とを連通する複数の開口部31が穿設されるが、本発明では、落下衝撃等による振動板10の過大振幅(過大変位)を防止するため、開口部31に第1後部空気室A1と第2後部空気室A2との圧力差により開閉する応動弁50が設けられる。
図2を参照して、この実施形態における応動弁50は、その一端側が所定の厚さを有するスペーサ52を介してユニットフレーム30に取り付けられ、他端側が自由端とされた樹脂フィルム(もしくは樹脂シート、樹脂プレート)等からなる舌片状の弁体51を備える。
弁体51のスチフネスは、少なくともボイスコイル13への通電による振動板10の振動時における第1後部空気室A1と第2後部空気室A2との圧力差には応動しないスチフネスに設計される。
また、弁体51は、自然状態でユニットフレーム32の面とほぼ平行であり、ユニットフレーム32との間で所定の薄空気層抵抗(音響抵抗)を形成する。この薄空気層抵抗の抵抗値は、スペーサ52の厚さによって決められてよい。弁体51には、厚さ0.1mmのPETフィルムが好適である。
この実施形態では、各開口部31ごとに、振動板10側(第2後部空気室A2側)と、反振動板10側(第1後部空気室A1側)の両面に弁体51が配置されている。
次に、図3および図4により、応動弁50の弁体51の動作について説明するが、説明の便宜上、振動板10側の弁体を51a,反振動板10側の弁体を51bとし、また、第1後部空気室A1内の圧力をP1,第2後部空気室A2内の圧力P2とする。
まず、落下衝撃等により、図3に示すように、振動板10が磁気回路部20側に近づく方向に変位すると、第2後部空気室A2内の圧力P2が第1後部空気室A1内の圧力P1よりも高く(P2>P1)なるため、振動板10側の弁体51aが撓んで開口部31を閉じる。これにより、第2後部空気室A2内がほぼ密閉状態となるため、振動板10が動きにくくなり、振動板10の磁気回路部20に対する衝突が防止される。
これとは逆に、落下衝撃等により、図4に示すように、振動板10が磁気回路部20側から離れる方向に変位すると、第1後部空気室A1内の圧力P1が第2後部空気室A2内の圧力P2がよりも高く(P1>P2)なるため、反振動板10側の弁体51bが撓んで開口部31を閉じる。これにより、第2後部空気室A2内がほぼ密閉状態となるため、振動板10が動きにくくなり、ボイスコイル13の磁気ギャップGからの飛び出しが防止される。
このようにして、振動板10の過大変位が阻止されるのであるが、第2後部空気室A2(振動板10の後部空気室)の容積は2cc以下であることが好ましい。
すなわち、第2後部空気室A2の容積が2cc以下の場合、機械インピーダンス(スチフネス)は57×10 [dyn/cm]以上となり、100ccの場合と比べると、衝撃が加わったときの振動板10の振幅を1/50にすることができる。
一例として、第2後部空気室Aがないとき(負荷がないとき)の振動板10の弾性限界(最大振幅)が±2mmであるとして、第2後部空気室Aを2cc以下にした場合には、振動板10の振幅が±0.04mm程度に押さえられる。
また、振動板10全体に高いスチフネスが作用するため、振動板10の一部分に応力が集中することもない。なお、弁体51の開閉動作をより敏感にするには、弁体51による薄空気層抵抗の抵抗値を大きくすればよい。
ボイスコイル13への通電による振動板10の振動時(スピーカとしての動作時)には、弁体51が開放され、第1後部空気室A1(ユニットフレーム30の後部空気室)と第2後部空気室A2(振動板10の後部空気室)とが薄空気層抵抗を介して連通した状態で振動板10が振動する。
この場合、第1後部空気室A1の容積が20cc以上であれば、弁体51が開放されている通常のスピーカ動作時、弁体51による薄空気層抵抗を介して第1後部空気室A1の低いスチフネスで振動板10が動作するため、音質が劣化することがない。したがって、第1後部空気室A1の好ましい容積は20cc以上である。
上記実施形態では、各開口部31ごとに、振動板10側(第2後部空気室A2側)と、反振動板10側(第1後部空気室A1側)の両面に弁体51が配置されているが、別の態様として、例えば一つおきごとに開口部31の両面に弁体51を配置してもよいし、もしくは例えば奇数番目の開口部31については弁体51を振動板10側に配置し、偶数番目の開口部31については弁体51を反振動板10側に配置するようにしていもよい。
また、ボイスコイル13を含む振動系の設計にもよるが、弁体51を開口部31の両面ではなく、その片側、すなわち振動板10側のみ、もしくは反振動板10側のみに配置する態様も本発明に含まれる。
1 ヘッドホンユニット
10 振動板
11 センタードーム
12 サブドーム
13 ボイスコイル
20 磁気回路部
21 永久磁石
22 ヨーク
23 ポールピース
30 ユニットフレーム
31 開口部
35 バッフル板
41 ヘッドホンハウジング
42 イヤーパッド
50 応動弁
51 弁体
52 スペーサ
A1 第1後部空気室(ユニットフレームの後部空気室)
A2 第2後部空気室(振動板の後部空気室)
G 磁気ギャップ

Claims (7)

  1. ボイスコイルが取り付けられた振動板、上記ボイスコイルに対する磁気ギャップを有する磁気回路部および円盤状をなすユニットフレームを含み、上記磁気回路部が上記ユニットフレームの中央部分に配置されているとともに、上記ボイスコイルが上記磁気ギャップ内で振動し得るように上記振動板の周縁が上記ユニットフレームに気密的に支持されているヘッドホンユニットと、
    上記ユニットフレームの背面側を囲み上記ユニットフレームとの間で所定容積の第1後部空気室を形成するヘッドホンハウジングとを備え、
    上記ユニットフレームに、上記振動板と上記ユニットフレームとの間で形成される第2後部空気室と上記第1後部空気室とを連通する開口部が設けられているダイナミックヘッドホンにおいて、
    上記ユニットフレームの少なくともいずれか一方の面には、上記第1後部空気室と上記第2後部空気室との圧力差に応動して上記開口部を開閉する応動弁が設けられていることを特徴とするダイナミックヘッドホン。
  2. 上記応動弁は、上記ユニットフレームの背面側と振動板側の双方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のダイナミックヘッドホン。
  3. 上記応動弁は、その一端側が所定の厚さを有するスペーサを介して上記ユニットフレームに取り付けられた樹脂フィルムからなる舌片状の弁体を有し、上記ユニットフレームの面との間で薄空気層抵抗を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のダイナミックヘッドホン。
  4. 上記弁体は、少なくとも上記ボイスコイルへの通電による振動板の振動時における上記第1後部空気室と上記第2後部空気室との圧力差には応動しないスチフネスを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のダイナミックヘッドホン。
  5. 上記弁体は、厚さ0.1mmのPETフィルムからなることを特徴とする請求項4に記載のダイナミックヘッドホン。
  6. 上記第2後部空気室の容積が、2cc以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のダイナミックヘッドホン。
  7. 上記第1後部空気室の容積が、20cc以上であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のダイナミックヘッドホン。
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