JP5168575B2 - ボールジョイントの製造方法 - Google Patents
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Description
ボールジョイントの組付けでは、球頭部および樹脂シートをハウジング内に嵌め入れた後、ハウジングの一端部を小径になるようにかしめ変形させるかしめ工程が行われる。このかしめ工程により、ボールスタッドおよび樹脂シートのハウジングからの抜止めが達成されるとともに、ボールジョイント内に予圧が付与される(特許文献1参照)。
揺動トルクのばらつきをなくすため、通例、かしめ工程の終了直後に、樹脂シートをなじみ変形させるためのならし工程が実施される。このならし工程では、ボールスタッドをスタッド軸の軸線まわりに回転させる。ボールスタッドの球頭部が回転すると、これに伴って球頭部が樹脂シートと摺動する。これによって、樹脂シートは球頭部の回転に従ってなじみ変形するようになる。
この方法によれば、かしめ工程後において、ハウジングを当該ハウジングの中心軸線まわりに回転させると同時に、ボールスタッドを球頭部の中心を支点として揺動させる。このハウジングの回転およびボールスタッドの揺動により、球頭部は互いに交差する2軸まわりに回転し、この球頭部の回転に伴って樹脂シートがなじみ変形する。球頭部が2軸まわりに回転するので、球頭部の樹脂シートに対する摺動軌跡が変化する。このため、球頭部の形状が、樹脂シートのなじみ変形後の形状に転写されない。これにより、球頭部の真球度によらずに、良好な揺動トルクを得ることができる。
これらのボールジョイントは、ステアリング装置のタイロッドの端部に設けられるタイロッドエンド用のボールジョイントであることが好ましい。タイロッドエンド用ボールジョイントでは、タイロッドの左右の動きに伴って、ボールスタッドがハウジングに対して揺動することが多い。この場合、ボールジョイントに実際の使用状況に近い動作を行わせることにより、樹脂シートをなじみ変形させることができる。これにより、ボールジョイントが、より一層良好な揺動トルクを得ることができる。
この方法によれば、高温雰囲気下で回転工程および揺動工程が行われるので、樹脂シートのなじみ変形が促進される。
高温雰囲気の好適温度は、樹脂シートの種類に応じて異なっている。樹脂シートがPOM(ポリアセタール)である場合は、高温雰囲気の温度は、40℃〜80℃程度であることが望ましい。
図1は、本発明の一実施形態にかかる製造方法によって製造されたボールジョイント(インナーボールジョイント)12が搭載されたステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。ステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2と、転舵輪(図示せず)を転舵する転舵機構としてのラックアンドピニオン機構3とを備えている。
ラックアンドピニオン機構3は、ピニオン軸6およびラック軸7を備えている。ピニオン軸6は、中間軸5に連結された軸部8と、この軸部8の先端に連結されたピニオン9とを含む。ステアリングホイール2の回転は、ステアリングシャフト4および中間軸5を介してピニオン軸6に伝達される。
ラック軸7は筒状のラックハウジング11に挿通されている。ラック軸7の両端部は、それぞれラックハウジング11から突出している。ラック軸7の各端部(いわゆるラックエンド)には、インナーボールジョイント12を介して、タイロッド14の一端が連結されている。また、タイロッド14の他端(いわゆるタイロッドエンド)には、アウターボールジョイント(タイロッドエンド用ボールジョイント)13が設けられている。このアウターボールジョイント13は、ナックルアーム41(図2参照)を介して転舵輪に連結されている。
インナーボールジョイント12は、ラック軸7の端部に連結されるハウジング16と、このハウジング16内に収容されたカップ状の樹脂シート17と、ハウジング16および樹脂シート17によって揺動可能に支持されたボールスタッド18とを備えている。ハウジング16の底部には、ラック軸7の端部に連結される連結部20が設けられている。
樹脂シート17は、たとえば、ポリアセタール(POM)を用いて形成されている。ハウジング16内に収容された状態で、球頭部23の外表面およびハウジング16の内面に沿う形状に変形している。樹脂シート17と球頭部23との間には、グリース等の潤滑剤が充填されている。
スタッド軸24は、ハウジング16から突出している。このスタッド軸24と、このスタッド軸24に連結されるアウターボールジョイント13に連結されたロッド25とによって、タイロッド14が構成されている。
また、雄ねじ部26にはロックナット28が螺合されている。ボールスタッド18およびロッド25は、ロックナット28によって互いに固定されている。また、雌ねじ孔27に対する雄ねじ部26のねじ込み量は、スタッド軸24を回転させ調節し、ロックナット28によって固定されている。雌ねじ孔27に対する雄ねじ部26のねじ込み量を調節することにより、転舵輪のトーイン角を調節することができる。
一方、アウターボールジョイント13は、カップ状のハウジング29と、このハウジング29内に収容された樹脂シート30と、ハウジング29および樹脂シート30によって揺動可能に支持されたボールスタッド31とを備えている。
ハウジング29の開放側端部、すなわち、円筒32の他端部(図2で示す上端部)には、その内面が半径方向内方に突出した突出部38が形成されている。そのため、円筒32の他端部(図2では上端部)は、円筒32の他の部分に比べてその内径が小径にされている。突出部38の内面は、球頭部39の外表面に沿う球面状に形成されている。
ボールスタッド31は、鋼等の金属製の部材であり、球面状の外表面を有する球頭部39と、この球頭部39から突出するスタッド軸40とが一体的に形成されている。球頭部39は、樹脂シート30に覆われた状態でハウジング29に収容されている。樹脂シート30と球頭部39との間には、グリース等の潤滑剤が充填されている。スタッド軸40は、ハウジング32から突出している。
ハウジング29およびボールスタッド31には、筒状のカバー42が取り付けられている。カバー42の一端は、ハウジング29の開放側端部に外嵌されて、この開放側端部に固定されている。また、カバー42の他端は、ボールスタッド31のスタッド軸40に外嵌されて、このスタッド軸40に固定されている。ハウジング29の開放側端部およびスタッド軸40の一部は、カバー42によって覆われている。このカバー42によって、水や埃などの異物が、アウターボールジョイント13内に進入することが防止されている。
嵌入工程では、一端部16aに開口部44を有する有底円筒状のハウジング16(の製造中間体)内に樹脂シート17および球頭部23が、この順で嵌め入れられる。
図4は、ならし装置45の模式的な断面図である。図5は、図4の矢印Aから見た図である。
このならし装置45を用いたならし工程について説明する。
ならし工程の前に、バルブ51が開かれて処理室47内に高温雰囲気が流入する。バルブ51の開放は、処理室47内の雰囲気が予め定める温度(たとえば40〜80℃)に到達するまで続行される。
次に、第1モータ54が回転駆動されて、ハウジング保持具52が予め定める一方向に向けて回転し、これに伴って、ハウジング16が回転軸線C1まわりに回転する。このハウジング16の回転速度は、100〜1000rpmである。
図6は、この発明の他の実施形態にかかるインナーボールジョイント12の製造方法におけるならし工程を説明するための図である。この図6に示すならし工程が、図1〜図5に示す実施形態のならし工程と相違する点は、ボールスタッド18をスタッド軸24の軸線(回転軸線C3)まわりに回転させるとともに、ハウジング16を球頭部23の中心を支点として、回動軸線C4まわりに回動させたことである。この回動軸線C4は、球頭部23の中心を通過する軸線であり、回転軸線C3と直交している。すなわち、ハウジング16の回動により、ボールスタッド18は、球頭部23の中心を支点として、水平面と直交する所定の面内を揺動するようになる。このハウジング16の回動(揺動)およびボールスタッド18の回転により、球頭部23は互いに直交する2軸まわりに回転し、この球頭部23の回転に伴って樹脂シート17がなじみ変形する。
前述の実施形態では、処理室47を高温雰囲気で充満させることにより、高温雰囲気下でならし工程を行ったが、インナーボールジョイント12の周囲にコイル等の熱源を配置して、この熱源によりインナーボールジョイント12の周囲の雰囲気(処理室47内の雰囲気)を高温にすることもできる。
さらにまた、本発明は、アウターボールジョイント13の製造方法にも適用することができる。
Claims (3)
- 球頭部およびこの球頭部から突出するスタッド軸を備えるボールスタッドと、前記球頭部の外表面を覆うための樹脂シートとが挿入された有底筒状のハウジングを、かしめ変形させるかしめ工程を含むボールジョイントの製造方法であって、
前記かしめ工程後に、前記ハウジングを当該ハウジングの中心軸線まわりに回転させる回転工程と、
前記回転工程と並行して実行されて、前記ボールスタッドを前記球頭部の中心を支点として揺動させる揺動工程とを含む、ボールジョイントの製造方法。 - 球頭部およびこの球頭部から突出するスタッド軸を備えるボールスタッドと、前記球頭部の外表面を覆うための樹脂シートとが挿入された有底筒状のハウジングを、かしめ変形させるかしめ工程を含むボールジョイントの製造方法であって、
前記かしめ工程後に、前記ボールスタッドを当該ボールスタッドの前記スタッド軸の軸線まわりに回転させる回転工程と、
前記回転工程と並行して実行されて、前記ハウジングを前記球頭部の中心まわりに回動させて、前記ボールスタッドを前記ハウジングに対して相対的に、前記球頭部の中心を支点として揺動させる揺動工程とを含む、ボールジョイントの製造方法。 - 前記回転工程および前記揺動工程は、高温雰囲気中において実行される、請求項1または請求項2に記載のボールジョイントの製造方法。
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