JP5168449B2 - 赤外線遮蔽材料微粒子分散体および赤外線遮蔽体 - Google Patents
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しかし本発明者らの検討によると、可視光領域においては透明で、近赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物や複合タングステン酸化物微粒子を媒体に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体は、長期間にわたって紫外線を受けると、色調の変化、透過率の低下が起きることが判明した。このため、当該分散体を窓材等に用いる場合、色調が暗くなる傾向が見られる。この為、当該分散体を、太陽光を受ける屋外用途等へ用途拡大するのは困難であることが判明した。
ィルム状および薄膜状に形成した赤外線遮蔽体を提供することを目的とする。
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表記される複合タングステン酸化物微粒子と、リンを含有し、且つ、ホスホン酸基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、リン酸エステル基の内いずれか1種以上の基を含有する着色防止剤とが、媒体中に含有されていることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
前記タングステン酸化物微粒子、または/および、前記複合タングステン酸化物微粒子が、粒子直径1nm以上、800nm以下の微粒子であることを特徴とする第1の手段に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体分散体である。
前記タングステン酸化物微粒子、または/および、前記複合タングステン酸化物微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことを特徴とする第1または第2の手段のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶、正方晶または立方晶から選択される1種以上の結晶構造を含むことを特徴とする第1から第3の手段のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの内いずれか1種類以上の元素であり、且つ、六方晶の結晶構造を有することを特徴とする第1から第4の手段のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
前記媒体が、樹脂またはガラスであることを特徴とする第1から第5の手段のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
前記樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂の内いずれか1種類以上であることを特徴とする第1から第6の手段のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体である。
第1から第7の手段のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体を、板状、フィルム状または薄膜状に形成したものであることを特徴とする赤外線遮蔽体である。
本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散体および赤外線遮蔽体に用いられる、タングス
テン酸化物、複合タングステン酸化物について説明する。
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺にある電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような物質の粉末を光の波長より小さい微粒子とすると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られる。尚、本明細書において、透明性とは、可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高いという意味で用いている。
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物において、当該タングステンと酸素との組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、さらには、当該赤外線遮蔽材料をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999である。このz/yの値が、2.2以上であれば、当該赤外線遮蔽材料中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することが出来るとともに、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線遮蔽材料として適用できる。一方、このz/yの値が、2.999以下であれば必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線遮蔽材料となる。
まず、当該WO3へ、元素M(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素)を添加し、一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物とすることで、当該WO3中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となるため好ましい。
x/yの値は、0.001≦x/y≦1であることが好ましい。
x/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され目的とする赤
外線遮蔽効果を得ることが出来る。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該赤外線遮蔽材料中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
z/yの値は、2.2≦z/y≦3.0であることが好ましい。
これは、MxWyOzで表記される赤外線遮蔽材料においても、上述したWyOzで表記される赤外線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加えz/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
本発明で用いられる「着色防止剤」とは、連鎖開始阻害機能、連鎖禁止機能、過酸化物分解機能、の各機能のうち、いずれか1以上の機能を備えている化合物をいう。
ここで、連鎖開始阻害機能とは、有害な過酸化物ラジカルを発生させる触媒となる金属イオンを不活性化し、当該過酸化物ラジカルによる連鎖反応の開始を阻害する機能のこと
である。
次に、連鎖禁止機能とは、発生した過酸化物ラジカルを不活性化させ、過酸化物ラジカルの作用による新たな過酸化物ラジカル発生という連鎖反応を抑制する機能のことである。
さらに、過酸化物分解機能とは、過酸化物を不活性な化合物に分解し、過酸化物が分解してラジカル化する反応を阻害する機能のことである。
本発明に係る当該着色防止剤は、上記タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子中のタングステン原子を還元する有害な過酸化物ラジカルの発生や増加を、上述の機能により阻害するものである。
本発明において、(a)リン系着色防止剤、(b)アミド系着色防止剤、(c)アミン系着色防止剤、(d)ヒンダードアミン系着色防止剤(e)ヒンダードフェノール系着色防止剤、(f)硫黄系着色防止剤、のいずれの系統の着色防止剤も使用可能である。なかでも、(a)リン系着色防止剤が望ましく、特に、分子内にホスホン酸基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン基の内いずれか1種以上の基を含有するリン系着色防止剤が、紫外線照射時の着色抑制効果が高いため望ましい。
尚、上記の着色防止剤は、単独で用いても良いが、2種以上を組み合わせて用いても良い。使用する分散媒体によっては、主に連鎖開始阻害機能を有する着色防止剤と、主に連鎖禁止機能を有する着色防止剤と、主に過酸化物分解機能を有する着色防止剤とを、併用することで高い着色抑制効果を得られる場合がある。
(a)リン系着色防止剤
着色防止剤の第1の具体例は、リンを含有するリン系着色防止剤である。さらには、リンを含むリン系官能基を備えた化合物が好ましい。
ここで、リン系官能基には、3価のリンを含むものと、5価のリンを含むものとがあるが、本発明にいう「リン系官能基」には、いずれのものであっても良い。
次の(化1)の式で3価のリンを含むリン系官能基を備えたリン系着色防止剤、(化2)の式で5価のリンを含むリン系官能基を備えたリン系着色防止剤の一般式を示す。
一方、ホスフィン基等の3価のリンを含有するリン系官能基は、主として過酸化物分解機能(すなわち、P原子が自ら酸化することによって過酸化物を安定な化合物に分解する機能)を有していると考えられている。
これらのリン系官能基の中でも、ホスホン酸基を備えたホスホン酸系着色防止剤は、金属イオンを効率よく捕捉でき、耐加水分解性などの安定性に優れるので、着色防止剤として特に好適である。
樹脂、ポリスチレン−グラフト−ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリスチレン−グラフト−テトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。
着色防止剤の第2の具体例は、分子内にアミド結合(−CO−NH−)を有する化合物(以下、「アミド系着色防止剤」という場合がある。)からなる着色防止剤である。アミド系着色防止剤は、主として連鎖開始阻害機能(すなわち、アミド結合のO原子とN原子によって金属イオンがキレート的に捕捉される機能)を有していると考えられる。
尚、低分子型の化合物よりも高分子型の化合物が好ましい場合があること、および高分子型の化合物を用いる場合には、さらに架橋構造を導入しても良ことは、リン系着色防止剤のところで説明したことと同様である。
着色防止剤の第3の具体例は、分子内にベンゼン核と、当該ベンゼン核に結合するアミノ基(−NH2)またはイミノ結合(−NH−)を有する化合物(以下、「アミン系着色防止剤」という場合がある。)からなる着色防止剤である。
当該アミン系着色防止剤は、主として連鎖禁止機能(すなわち、ベンゼン核に結合したアミノ基またはイミノ結合がラジカルを捕捉することで、ラジカルによる連鎖反応を抑制する機能)を有していると考えられている。
尚、低分子型の化合物よりも高分子型の化合物が好ましい場合があること、および高分子型の化合物を用いる場合には、さらに架橋構造を導入しても良ことは、リン系着色防止剤のところで説明したことと同様である。
着色防止剤の第4の具体例は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン誘導体または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン誘導体(以下、「ヒンダードアミン系着色防止剤」という。)である。
ヒンダードアミン系着色防止剤は、主として連鎖禁止機能(すなわち、ラジカルを捕捉して、ラジカルによる連鎖反応を抑制する機能)を有していると考えられる。
タメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであり、より好ましくは、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−ブチル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)−エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]ヘネイコサン−21−オン、トリデシル・トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンがある。
尚、低分子型の化合物よりも高分子型の化合物が好ましい場合があること、および高分子型の化合物を用いる場合には、さらに架橋構造を導入しても良ことは、リン系着色防止剤のところで説明したことと同様である。
着色防止剤の第5の具体例は、フェノール性OH基のo−位に第三ブチル基等の大きな基が導入された化合物(以下、「ヒンダードフェノール系着色防止剤」という場合がある。)である。ヒンダードフェノール系着色防止剤は、上記ヒンダードアミン系着色防止剤と同様、主として連鎖禁止機能(すなわち、フェノール性OH基がラジカルを捕捉して、ラジカルによる連鎖反応を抑制する機能)を有していると考えられる。
尚、低分子型の化合物よりも高分子型の化合物が好ましい場合があること、および高分子型の化合物を用いる場合には、さらに架橋構造を導入しても良ことは、リン系着色防止剤のところで説明したことと同様である。
の作用が働いている可能性もあり、上記作用に限定されるわけではない。
着色防止剤の第6の具体例は、分子内に2価の硫黄を有する化合物(以下、「硫黄系着色防止剤」という場合がある。)である。硫黄系着色防止剤は、主として過酸化物分解機能(すなわち、S原子が自ら酸化することによって過酸化物を安定な化合物に分解する機能)を有していると考えられる。
低分子型の硫黄系着色防止剤の好適な例としては、ジラウリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC12H25)2)、ジステアリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC18H37)2)、ラウリルステアリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC18H37)(CH2CH2COOC12H25))、ジミリスチルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC14H29)2)、ジステアリルβ、β’−チオジブチレート(S(CH(CH3)CH2COOC18H39)2)、2−メルカプトベンゾイミダゾール(C6H4NHNCSH)、ジラウリルサルファイド(S(C12H25)2)等が挙げられる。
尚、低分子型の化合物よりも高分子型の化合物が好ましい場合があること、および高分子型の化合物を用いる場合には、さらに架橋構造を導入しても良ことは、リン系着色防止剤のところで説明したことと同様である。
まず、本実施の形態に係る上記タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子の紫外線による着色機構について説明する。
本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散体を構成する媒体樹脂に紫外線が照射された際、当該紫外線のエネルギーによって当該媒体樹脂の高分子鎖が切断され分解する過程の反応において有害なラジカルである、プロトン、重金属イオン、水素脱離ラジカル、過酸化ラジカル、ヒドロキシラジカル等の二次的な物質が次々に発生する。すると、今度は当該二次的な物質である有害ラジカルが当該媒体樹脂の高分子鎖を切断するので、高分子の劣化と有害ラジカルの発生とが連鎖的に進む。するとこれら連鎖的に発生した有害ラジカルの何れかが、当該タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子中のタングステン原子に還元的に作用し、新たに5価のタングステンを生成する。当該5価のタングステンは、濃青色を発色する。その為、赤外線遮蔽材料微粒子分散体中に、当該5価のタングステンが増加するに伴って着色濃度が高くなると推定される。
本発明に係るタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を適用した赤外線遮蔽材料微粒子分散体の製造方法としては、当該微粒子を適宜な媒体樹脂中に上記着色防止剤とともに分散し、所望の基材表面に形成する方法がある。この方法は、あらかじめ高温で焼成したタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を、基材樹脂中、または媒体樹脂によって基材表面に結着させることが可能である。この為、耐熱温度の低い基材材料への応用が可能であるとともに、形成の際に大型の装置を必要とせず安価であるという利点がある。
適宜な溶媒中へ、本発明に係るタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を分散させ、上述した着色防止剤を溶解させた後、ここへ媒体樹脂を添加して混合物とする。そして、当該混合物を所望の基材表面にコーティングし、溶媒を蒸発させ、所定の方法で媒体樹脂を硬化させれば、当該赤外線遮蔽材料微粒子と当該着色防止剤が媒体樹脂中に分散した薄膜の形成が可能となる。
また、適宜な媒体樹脂の選択により、本発明に係るタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子と、着色防止剤とを、溶媒を使用することなく直接媒体樹脂中に分散して混合物とすることも可能である。当該混合物は、基材表面に塗布後に、溶媒を蒸発させる必要が無く、環境的、工業的に好ましい。
具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。
また、媒体樹脂に代替して、金属アルコキシドをバインダーとして用いることも可能である。この場合、当該金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが好ましく用いられる。さらに、これら金属アルコキシドを用いたバインダーは、加水分解後に加熱することで酸化物膜を形成することが可能である。
また、本発明に係るタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子と、上述した着色防止剤とを用いる別の方法として、当該酸化物微粒子と当該着色防止剤とを基材中に分散させても良い。
まず、適宜な溶媒中へ、本発明に係るタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を分散させ、上述した着色防止剤を溶解させた後、ここへペレット状等のPET樹脂を添加して混合物とし分散溶媒を蒸発させる。次に、当該混合物をPET樹脂の溶融温度である300℃程度に加熱して、PET樹脂を溶融させた後、十分混合し冷却することで、本発明に係るタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子と着色防止剤とを分散したPET樹脂の製造が可能となる。
本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散体において、紫外線照射による着色変化の抑制効果の評価方法について説明する。
(1)本発明に係る着色防止剤を含有しない赤外線遮蔽材料微粒子分散体を調製する。そして、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散体へ所定量の紫外線を照射し、当該紫外線照射による色調変化に起因する可視光透過率の低下量を測定する。
(2)本発明に係る着色防止剤を含有する以外は、前記(1)と同様の赤外線遮蔽材料微粒子分散体を調製する。そして、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散体へ所定量の紫外線を照射し、当該照射による色調変化に起因する可視光透過率の低下量を測定する。
(3)前記(1)で得られた可視光透過率の低下量を100%と規格化したときの(2)で得られた可視光透過率の低下量を算定し、当該算定値から本発明に係る着色防止剤を含有する赤外線遮蔽材料微粒子分散体の耐紫外線変色抑制能を評価する。
この場合、本発明に係る着色防止剤を含有しない赤外線遮蔽材料微粒子分散体における
可視光透過率の変化量△は、70%−50%=20%である。一方、本発明に係る着色防止剤を含有する赤外線遮蔽材料微粒子分散体における可視光透過率の変化量△は70%−68%=2%である。
従って、本発明に係る着色防止剤を含有しない赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△を100%と規格化したとき、本発明に係る着色防止剤を含有する赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△は10%と算定される。
但し、上記所定量の紫外線とは、岩崎電気社製アイスーパーUVテスター(SUV−W131)を使用して、100mW/cm2の強度で紫外線を2時間連続照射したものである(このとき、ブラックパネル温度は60℃とした。)。
さらに、本発明者らの検討によれば、本発明に係る着色防止剤を含有する赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△が70%以下、さらに好ましくは60%以下であれば、本発明に係る着色防止剤の耐紫外線変色抑制能を十分に確認することが出来、実用上も太陽光線等に含まれる紫外線に起因する着色変化が抑制されている。
Cs0.33WO3粉末を8重量部と、トルエン84重量部と、分散剤8重量部とを混合し、分散処理を行い、平均分散粒子径80nmの分散液(A液)とした。このA液100重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)50重量部と、リン系着色防止剤であるレゾルシノール−ビス(ジフェニル−ホスフェート)[味の素(株)製、商品名:レオフォスRDP]16重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この成膜を80℃で60秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。さらにヘイズ値は0.5%であり、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜に紫外線を2時間照射した後、同様に光学特性を測定したところ、可視光透過率は68%、ヘイズ値は0.5%であった。紫外線照射による可視光透過率の低下量は2%と小さく、色調変化も少ないことがわかった。当該低下量と、後述する比較例1のデータとから赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△を算定したところ11.1%となり、十分な耐紫外線変色抑制能を有していることが判明した。
また、当該紫外線照射後も、ヘイズ値は変化しておらず、透明性を保持していることがわかった。
尚、2時間の紫外線照射は、岩崎電気社製アイスーパーUVテスター(SUV−W131)を使用し、100mW/cm2の強度で連続照射した(このとき、ブラックパネル温度は60℃とした。)。
上記A液100重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)50重量部と、リン系着色防止剤であるビスフェノールA−ビス(ジフェニル−ホスフェート)[味の素(株)製、商品名:レオフォスBAPP]16重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、ガラス基板上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この成膜を80℃で60秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。さらにヘイズ値は0.5%であり、透明性が極めて
高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜に紫外線を2時間照射し、同様に光学特性を測定したところ、可視光透過率は68%、ヘイズ値は0.5%であった。紫外線照射による可視光透過率の低下量は2%と小さく、実施例1と同様に算定した赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△は11.1%となり、十分な耐紫外線変色抑制能を有していることが判明した。また、ヘイズ値は変化しておらず、紫外線照射後も透明性を保持していることがわかった。
上記A液100重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)50重量部と、リン系着色防止剤であるSolutia社製リン酸エステル溶液[商品名:SPE−0570]8重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、ガラス基板(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この成膜を80℃で60秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。さらにヘイズ値は0.9%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜に紫外線を2時間照射し、同様に光学特性を測定したところ、可視光透過率は68.5%、ヘイズ値は0.9%であった。紫外線照射による可視光透過率の低下量は1.5%と小さく、実施例1と同様に算定した赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△は8.3%となり、十分な耐紫外線変色抑制能を有していることが判明した。また、ヘイズ値は変化しておらず、紫外線照射後も透明性を保持していることがわかった。
上記A液100重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)50重量部と、ヒンダードアミン系着色防止剤である4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン8重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、ガラス基板(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この成膜を80℃で60秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。さらにヘイズ値は1.6%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜に紫外線を2時間照射し、同様に光学特性を測定したところ、可視光透過率は60.7%、ヘイズ値は1.7%であった。紫外線照射による可視光透過率の低下量は9.3%と小さく、実施例1と同様に算定した赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△は51.6%となり、十分な耐紫外線変色抑制能を有していることが判明した。また、ヘイズ値の変化量も小さく、紫外線照射後も透明性を保持していることがわかった。
上記A液100重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)50重量部と、ヒンダードフェノール系着色防止剤である2,6−第三ブチル−p−クレゾール8重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、ガラス基板(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この成膜を80℃で60秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。さらにヘイズ値は1.4%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜に紫外線を2時間照射し、同様に光学特性を測定したところ、可視光透過率は59.5%、ヘイズ値は1.6%であった。紫外線照射による可視光透過率の低下量は10.5%と小さく、実施例1と同様に算定した赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△は58.3%となり、十分な耐紫外線変色抑制能を有していることが判明した。また、ヘイズ値の変化量も小さく、紫外線照射後も透明性を保持していることがわかった。
上記A液100重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)50重量部と、硫黄系着色防止剤であるジラウリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC12H25)2)16重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、ガラス基板(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この成膜を80℃で60秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は70%で可視光領域の光を十分透過している事が分かった。さらにヘイズ値は1.8%であり、透明性が高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。透過色調は、美しい青色となった。
この赤外線遮蔽膜に紫外線を2時間照射し、同様に光学特性を測定したところ、可視光透過率は62.8%、ヘイズ値は2.0%であった。紫外線照射による可視光透過率の低下量は7.2%と小さく、実施例1と同様に算定した赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率の変化量△は40.0%となり、十分な耐紫外線変色抑制能を有していることが判明した。また、ヘイズ値の変化量も小さく、紫外線照射後も透明性を保持していることがわかった。
上記A液100重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)50重量部とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散体液とした。この赤外線遮蔽材料微粒子分散体液を、ガラス基板(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この成膜を80℃で60秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は68%、ヘイズ値は0.4%であった。
この赤外線遮蔽膜に紫外線を2時間照射し、同様に光学特性を測定したところ、可視光透過率は50%、ヘイズ値は0.4%であった。紫外線照射による可視光透過率の低下量は18%と大きく、色調も変化していた。
2.元素M
Claims (8)
- 一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表記される複合タングステン酸化物微粒子と、リンを含有し、且つ、ホスホン酸基、リン酸基、ホスホン酸エステル基、リン酸エステル基の内いずれか1種以上の基を含有する着色防止剤とが、媒体中に含有されていることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
- 前記タングステン酸化物微粒子、または/および、前記複合タングステン酸化物微粒子が、粒子直径1nm以上、800nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体分散体。
- 前記タングステン酸化物微粒子、または/および、前記複合タングステン酸化物微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶、正方晶または立方晶から選択される1種以上の結晶構造を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
- 前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの内いずれか1種類以上の元素であり、且つ、六方晶の結晶構造を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
- 前記媒体が、樹脂またはガラスであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
- 前記樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂の内いずれか1種類以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体。
- 請求項1から7のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散体を、板状、フィルム状または薄膜状に形成したものであることを特徴とする赤外線遮蔽体。
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