JP5165202B2 - 回復系停留精巣モデル動物及び男性不妊症治療剤 - Google Patents

回復系停留精巣モデル動物及び男性不妊症治療剤 Download PDF

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本発明は、特発性乏精子症などの男性不妊症病態モデル動物として有用な回復系停留精巣モデル動物及びその作製方法、並びにそれを用いた男性不妊症治療剤のスクリーニング方法及びそれにより得られた男性不妊症治療剤に関する。
現代社会、特に先進国社会においては、少子化傾向が急速に進み深刻な社会問題となっている。少子化の原因には、社会情勢や経済的な側面もあるが、不妊症に起因するものも少なくない。国内の妊娠希望の婚姻カップル中の不妊症の割合は、7組に1組の割合との報告もある(非特許文献1:堤治、医学のあゆみ、204; 13: 905−906, 2003)。不妊症は、女性側、男性側、両者に原因が求められるが、男性側に起因よる割合が半数程度を占めていると言われ(非特許文献2:監修 吉田治、編集 松田公志、男性不妊症外来 第2版、1999)、その中で遺伝的要因等を除いた特発性乏精子症の割合は、68%と高く(非特許文献3:三浦一陽、平成9年度厚生省心身障害研究)、精子数の減少が問題となっている。そのために、造精機能を亢進させる適切な治療を行うことが求められている。しかしながら、精子数を増加させる治療薬は現在、国内および国外ともに開発されていない。その原因の一つとして、治療薬の候補化合物をスクリーニングするために、適当な男性不妊症病態モデル動物が利用できないことが挙げられる。
男性不妊症のモデル動物としては、ラット、マウスの精巣を腹腔内に固定する停留精巣モデル(非特許文献4:Ishida et al. Jap. J. Fert. Ster., 28(2), 166−171, 1983)により精子数が減少することが知られている。また、一度停留精巣を実施した後に、回復手術を行うことにより精巣重量の回復と妊よう性が一部回復することが知られている(非特許文献5:Jegou B et al., J. Reprod. Fert. 69: 137−145, 1983)。
しかしながら、既存の停留精巣モデルや精索静脈瘤モデルは、臨床の病態を一部反映しているとは言え、精巣への侵襲が強すぎるために、薬剤による精子数増加効果を評価する系としては使用できなかった。更に、これまでに報告されている停留精巣の回復モデルは、最も短い試験期間のものでも6ヶ月以上を要するものであり、短期間に多くの治療薬候補化合物をスクリーニングするための動物モデルとしては適当でなかった。
また、ビタミンDによる生殖能(Fertility ratio)に対する効果として、生殖能の低下したビタミンD欠乏ラットに、ビタミンD(コレカルシフェロール)や活性型ビタミンD3(1α,25−ジヒドロキシビタミンD3;以下、1α,25(OH)23)を投与することにより、生殖能が回復するとの報告がなされている(特許文献1:国際公開公報WO90/06121号、非特許文献6:Uhland AM et al., J. Nutr. 122: 1338−1344, 1992)。しかしながら本論文中では、そもそもビタミンD欠乏に対するビタミンD補充療法であるということ、また、この生殖能の回復はビタミンDの直接効果ではなく、ビタミンD欠乏による血中カルシウム低下作用に起因しているものであると議論されている。これとは別に、ビタミンDによる精子への影響については、血中カルシウム濃度が低下していないビタミンD欠乏ラットにビタミンDを投与することにより有意に精子数が増加したとの報告がある(非特許文献7:Sood S et al., Ann. Nutr. Metab. 39: 95−98, 1995)。しかしながら、血中カルシウム濃度が低下していないビタミンD欠乏ラットでの報告で述べられている精子数の増加は、ビタミンD欠乏ラット対照群の2千万/caudaから3千万/cauda程度への増加であり、正常ラットにおける精子数(2億/cauda)と比較した場合、造精機能亢進効果があるとは言い難く(増加率は正常値に対して5%)、かつ、用量依存性も認められていない。
国際公開公報WO90/06121号 堤治、医学のあゆみ、204; 13: 905−906, 2003 監修 吉田治、編集 松田公志、男性不妊症外来 第2版、1999 三浦一陽、平成9年度厚生省心身障害研究 Ishida et al. Jap. J. Fert. Ster., 28(2), 166−171, 1983 Jegou B et al., J. Reprod. Fert. 69: 137−145, 1983 Uhland AM et al., J. Nutr. 122: 1338−1344, 1992 Sood S et al., Ann. Nutr. Metab. 39: 95−98, 1995
本発明の課題は、特発性乏精子症などの男性不妊症病態モデル動物として有用な回復系停留精巣モデル動物を提供することにあり、容易に短期間で病態モデル動物を作成する方法を提供することにある。また、当該モデル動物を用いた男性不妊症治療剤のスクリーニング方法及びそれにより得られた男性不妊症治療剤を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、げっ歯類動物の精巣を、その中心点が、鼠径部と陰嚢先端との間の中心点よりも腹腔寄りになるように停留させてマイルドに侵襲した後、停留を解除し精巣を元の位置に戻すことにより、精子数が一旦ほぼ消失した状態からの回復速度を短期間(8週間程度)で評価可能であることを見出した。さらに、本モデルを用いて1α−ヒドロキシビタミンD3(アルファカルシドール)の薬効を検討した結果、造精機能亢進効果を有することを見出した。
すなわち、本発明は、次に記載のような精子数回復能を有する男性不妊症病態モデル動物の作成方法、その法により作成された男性不妊症病態モデル動物などを提供するものである。
(1)以下の工程;
1)げっ歯類動物の精巣を、その中心点が、鼠径部と陰嚢先端との間の中心点よりも腹腔寄りになるように停留させる工程、
2)前記停留を一定期間行うことにより当該動物の精子数を減少させる工程、
3)前記停留を解除し、精巣を元の位置に戻す工程、
を含む、精子数回復能を有する男性不妊症病態モデル動物の作成方法。
(2)げっ歯類動物が、ラットである上記(1)記載の方法。
(3)精巣の停留が、陰嚢を結紮することにより行われる上記(1)記載の方法。
(4)精巣の停留が、結束バンドを用いて陰嚢を結紮することにより行われる上記(1)記載の方法。
(5)結束バンドが、さらに陰嚢壁に固定されている上記(4)記載の方法。
(6)陰嚢壁への結束バンドの固定が、縫合糸によるものである上記(5)記載の方法。
(7)停留位置が、陰嚢と精巣導帯との接合位置から陰嚢先端側に3〜7mm離れた位置である上記(2)記載の方法。
(8)停留期間が3〜7日である上記(1)記載の方法。
(9)前記工程1及び3が開腹を伴わない手段によるものである上記(1)記載の方法。(10)前記工程3が、陰嚢壁への結束バンドの固定を解除することによるものである上記(5)又は(6)記載の方法。
(11)上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の方法により作成された、精子数回復能を有する男性不妊症病態モデル動物。
(12)上記(11)記載のモデル動物を用いて、男性不妊症治療剤をスクリーニングする方法。
(13)以下の工程;
a)被検物質投与群として、上記(11)記載のモデル動物に被検物質を投与して精子数の回復を確認する工程、
b)対照群として、上記(11)記載のモデル動物に被検物質を投与せずに精子数の回復を確認する工程、
c)被検物質投与群と対照群との精子数の回復の程度を比較する工程、
を含む、上記(12)記載の方法。
(14)更に、被検物質投与群と対照群との精子の運動能の程度を比較する工程を含む、上記(13)記載の方法。
(15)上記(12)乃至(14)のいずれかに記載のスクリーニング方法により同定された化合物。
(16)上記(15)記載の化合物を有効成分とする男性不妊症治療剤。
(17)化合物が1α−ヒドロキシビタミンD3である上記(16)記載の男性不妊症治療剤。
(18)血中の1α,25−ジヒドロキシビタミンD3欠乏に由来しない不妊症の治療剤である上記(16)又は(17)に記載の男性不妊症治療剤。
上述のとおり、本発明方法により、特発性乏精子症などの男性不妊症病態モデル動物として有用な回復系停留精巣モデル動物を容易にかつ短期間で作成することができる。当該モデル動物は、男性不妊症治療剤のスクリーニングなどに有用である。また、当該モデル動物により、1α−ヒドロキシビタミンD3の男性不妊症治療用途が確認された。これは1α−ヒドロキシビタミンD3の新規用途である。
本発明において、動物の種類はげっ歯類であれば特に限定されないが、通常、実験動物として用いられるモルモット、ラット、マウス等を用いることが好ましい。より好ましくはラットまたはマウスであり、特に好ましくはラットである。ラットの種類としては、例えば、Wistar、SD、Fisher等の系列を挙げることができ、好ましくはSD系ラットを用いることができる。なお、ラットを用いる場合、9週齢以上のラットを用いることが好ましい。
上記工程1について説明する。工程1において特定された精巣の停留位置は、精巣への侵襲を緩やかに進行させ且つ一定化するために最適な停留位置である。即ち、停留により精巣がより体の内部(または腹腔に近い部分)におかれることになるので、通常よりも高い温度環境に精巣がさらされることにより、精巣にダメージを与え精子数を減少させる。しかしながら、あまりに体の深部に停留させてしまうと精巣への侵襲が強くなるため、精子数の回復に要する期間(即ち評価期間)が長期化したり、精子数が全く回復しないような不反応性個体が生じやすくなる。一方、逆に通常状態に近くしてしまいすぎると精巣への侵襲が弱くなりすぎ、回復処置後すぐに精子数が回復して評価が困難になったり、精子数が有意に減少していない個体が生じたりする場合がある。従って、適度に精巣への侵襲が行われる位置を設定することが肝要である。位置決めは、例えば、精巣導帯からの長さや、陰嚢底部からの長さ、または割合等を基準にし、動物の種類に応じて、適宜最適化することができる。この位置(停留される精巣の腹腔側と反対の端部の位置)は、ラットでは、体重400〜500g程度(12週齢)のラットを基準として、例えば、精巣導帯と陰嚢との接合位置から陰嚢先端側に3〜7mm離れた位置である。この距離は、好ましくは4〜6mmであり、更に好ましくは5mm付近である。
精巣は、開腹を伴わない手段により陰嚢内に停留させることが好ましい。具体的には、皮膚および陰嚢を覆う皮膜を切開して袋状の陰嚢を露出させた後、陰嚢内にある精巣を腹腔側に押し上げた状態が保持されるように、陰嚢内に停留させる。陰嚢を露出させる方法は特に限定されず、通常の術式により、一般的には無菌的かつ麻酔下に行うことができる。本方法では、従来法のような開腹を伴う腹腔内固定を実施しないため、術部の癒着、炎症および出血などの侵襲が少なく、ほぼ非観血的にかつ、簡便に実施することが可能である。精巣を上記のように腹腔側に押上げた状態で停留させた後、手術部(皮膜、皮膚)を縫合する。
露出させた陰嚢内に精巣を停留させる方法は特に限定されないが、停留を解除し精巣を元の位置に戻す(以下、これを「回復処置」と称することもある)ことが容易で、且つ、精巣に対する物理的ダメージが少ない手段が好ましい。回復処置が容易な方法として、陰嚢を結紮する方法が挙げられる。このうち、結束バンドによる結紮する方法が、精巣に対する物理的ダメージが少ないため好ましい。糸により直接的に陰嚢を結紮する方法は、陰嚢内に血腫が生じたり、陰嚢壁が萎縮して精巣が元の位置へ下降しなくなってしまうため好ましくない。結束バンドを用いる場合にも、結紮後に精巣が結束バンドをすり抜けて下降せず、且つ、陰嚢に鬱血や血腫が生じない様に、結束バンドの結束径(結束時の短軸の直径)を最適化しておくことが望ましい。具体的には、ラットの場合、結束径/精巣短軸方向の直径の値が0.29〜0.45の範囲になるように、好ましくは結束径/精巣短軸方向の直径の値が0.33〜0.40の範囲になるように結紮することが好ましい。
更に、結束バンドを陰嚢外周の一定の位置(上記のように精巣を停留させる位置)で陰嚢壁に縫合糸で固定し、精巣の下降を阻止しておくことが好ましい。縫合糸による結束バンドの固定は、2ヶ所以上が好ましい。
上記工程2について説明する。工程1により達成された精巣の停留を一定期間行うことにより、当該動物の精子数を減少させることができる。但し、精巣の停留が長期になるほど精巣への侵襲が強くなるため、精子数の回復に要する期間(即ち評価期間)が長期化したり、精子数が全く回復しないような不反応性個体が生じやすくなる。一方、逆に精巣の停留が短すぎると精巣への侵襲が弱くなりすぎ、回復処置後すぐに精子数が回復して評価が困難になったり、精子数が有意に減少していない個体が生じたりする場合がある。従って、適度に精巣への侵襲が行われる期間を設定することが肝要である。具体的には、精巣の停留により精子数を正常値の20%以下にさせ(好ましくは一旦ほぼ消失させ)、且つ、停留を解除した後、2〜3ヶ月(好ましくは8〜10週間、特に好ましくは8週間)かけて徐々に精子数が正常値の25%以上までに回復する程度の負荷をかけることが望ましい。なお、精子の初期段階(精粗細胞)から最終的に精巣上体尾部(精子採取部位)に精子が到達する期間は2ヶ月以上かかるため、2ヶ月未満での評価は困難であると考えられる。ラットを用いる場合には、停留期間を7日間以内にすることが好ましく、さらに4〜6日程度に設定することがより好ましい。なお、手術侵襲のコントロールが不良な場合に、精子数が全く回復しないような不反応性個体が生じるが、このように完全に不反応な個体に関しては、除去することが適切である。このような不反応性の個体を除外する方法として、例えば、精巣サイズの超音波エコー像などを参考に、群分け時に除外することが可能である。
上記工程3について説明する。工程2の一定期間を経過した後、停留を解除し、精巣を元の位置に戻す(回復処置を行う)。この工程は、できるだけモデル動物への負荷を抑える方法、即ち前述の工程1の説明で述べたとおり開腹を伴わない手段によるものが好ましい。具体的には、結束バンドを用いた場合には、皮膚および陰嚢を覆う皮膜を切開した後、結束バンドを固定した縫合糸と結束バンドを切除することにより、容易に回復処置を実施することが可能である。なお、結束バンドを固定した縫合糸と結束バンドを切除した後は、手術部(皮膜、皮膚)を縫合する。
なお、本発明において「精子数回復能を有する」とは、精巣の停留により有意に減少した精子数が、徐々に回復する能力を有することをいう。具体的には、精巣の停留により精子数を正常値の20%以下にさせ(好ましくは一旦ほぼ消失させ)、且つ、停留を解除した後、2〜3ヶ月(好ましくは8〜10週間、特に好ましくは8週間)かけて徐々に精子数が正常値の25%以上までに回復することをいう。
上述のようにして、男性不妊症モデルを作成することができる。本発明の病態モデル動物の利用態様は特に限定されないが、例えば、特発性乏精子症などの男性不妊症の予防及び/又は治療のための医薬品のスクリーニングなどに好適に用いることができる。
具体的には、当該モデル動物を用い、被検物質投与群と対照群との精子数の回復の程度を比較することによりスクリーニングを行うことができる。この評価に加え、更に被検物質投与群と対照群との精子の運動能の程度を比較してもよい。
上述のスクリーニングにより、男性不妊症治療剤として有望な化合物を同定することができる。例えば、後述の実施例により、1α−ヒドロキシビタミンD3が特発性乏精子症などの男性不妊症の治療剤として有用であることが示されている。
1α−ヒドロキシビタミンD3は、製薬上許容しうる担体、賦型剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、香料、着色剤等を使用して、所望の剤型、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、散剤、注射剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、経皮吸収剤、坐剤等に製剤化して用いることができる。
1α−ヒドロキシビタミンD3を有効成分とする男性不妊症治療剤の投与量は、具体的な対象疾患、患者の状態、体型、体質、年齢、性別、また投与経路、剤型等により適宜選択することができる。例えば、成人に対し、経口投与で1日1回0.5〜4.0μgを使用することができる。
なお、1α−ヒドロキシビタミンD3は公知化合物であり、例えば骨粗鬆症治療剤等として中外製薬株式会社より「アルファロール」(商品名)として販売されている。
また、本発明において「血中の1α,25−ジヒドロキシビタミンD3欠乏に由来しない不妊症」とは、不妊症を発症している患者の血中1α,25(OH)23濃度が正常であることを意味する。ここで「正常である」とは、正常値の±50%の範囲内であることをいう。具体的には、正常値は、ヒトでは20〜70pg/mLと報告されているので(日本臨床53巻増刊号、712−715、1995)、10pg/mL(その下限値の50%)〜105pg/mL(その上限値の50%)の範囲内にあれば「正常である」と判断することができる。ラットでの正常値は、例えば1,25(OH)2D RIAキット「TFB」(IMMUNODIAGNOSTIC SYSTEMS LIMITED社製)で測定した場合は345±199pg/mLであるので、73pg/mL(その下限値の50%)〜816pg/mL(その上限値の50%)の範囲内にあれば「正常である」と判断することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)男性不妊症病態モデルラットの作成
SDラット雄11週齢(日本チャールスリバー社製)を購入し1週間順化した。この間、一般症状、精巣のサイズに異常のない個体を選択して実験に供した。ネンブタール(大日本製薬製)を腹腔内に0.6mL/kg投与して動物を麻酔し、陰嚢部周辺の毛刈りを行い、術部全体を消毒用アルコールで消毒後、陰嚢上部1/3辺りの表皮を2cm程度切開した。次に切開した部分の皮膜を切開して陰嚢を露出させ(図1及び2参照)、精巣を腹腔側に押し上げ、精巣導帯下5mmの位置にマジックでマーキングした。結束バンド(タイラップバインダー、TM−23M:長さ×幅×束線径(mm):92×2.4×(1.6−16)、遠藤科学製)を、図3に示されるように結束径(結束時の短軸の直径)4mmに設定し(図3の中及び下の結束バンドに示されているとおり、結束バンドの所定の位置から1.7cmの部分にマーキングして、この位置で結束した場合に、結束径が4mmとなる。)、この結束バンドを針付縫合糸(松田医科工業社製4−0号)を用いて陰嚢壁の2ヶ所(約10mmの間隔)で固定した。各動物の精巣の短軸方向の直径は全て1.0〜1.2cmの範囲であった。従って、結束径/精巣短軸方向の直径の値は0.33〜0.40の範囲であった。結束バンドを固定後、固定に不要なバンドを切除し、皮膜および皮膚を針付縫合糸(松田医科工業社製3−0号)で縫合した。なお、sham群は、陰嚢壁の露出操作まで実施後、皮膜および皮膚を縫合した。
なお、参考のために、図1及び図2を参照して上記手術について簡単に説明する。図1は本発明の男性不妊症病態モデルラットを作成する際における、結束バンドの固定方法を示した模式図であり、図2は本発明の男性不妊症病態モデルラットを作成する際に、陰嚢の皮膜を切開し、精巣を押上げる工程を説明する図である。図2A中のA部は、切開部を示す。図2Bは、陰嚢の皮膚を剥離して陰嚢を露出させた部分(B部)を示す。図2Bにおいて、陰嚢(肉色)の上には、白い皮膜がついている。実際の切開部は、2cm程度(図2A参照)である。陰嚢を露出後、陰嚢内の精巣を指で腹腔側に押し上げ、精巣導帯下5mmの位置の陰嚢部にマジックで印を付けて、この位置に結束バンドを留置して、精巣を停留させる。図2Cは参考図であり、陰嚢を切開して陰嚢壁(内側)を露出した部分(C部)を示す図である。精巣はこの内部に入っている。本件発明における精巣停留工程では、陰嚢は切開しない。
手術後5日目に、上記と同様にネンブタールによる麻酔、毛刈り、消毒、切開を行い、結紮した陰嚢部位を露出した。陰嚢壁に固定した結束バンドおよび縫合糸を切除し、精巣が陰嚢下部の元の位置に戻ったことを確認後、皮膜及び皮膚を縫合した。回復処理2週後から、Vehicle(中鎖脂肪酸、MCT)を1mL/kgの容量で、週5回の頻度で6週間経口投与した。回復処理8週後に、ジエチルエーテル麻酔下、腹大動脈より全採血後、精巣および精巣上体を摘出し、重量および精巣上体尾部より精液を採取して精子濃度を測定した。この結果、図4に示されるとおり66%以上(6匹中4匹)の確率で、正常群の56%程度まで精子数が回復することが観察された。本発明モデル動物では、上記のように精子数が全く回復しない様な不応性の個体(6匹中2匹)が生じたが、その原因として、手術侵襲のコントロールが不良であったことが推測され、精子数が全く回復しない個体に関しては、上記理由を基に除外して考えることは妥当であると判断した。
(実施例2)
SDラット雄11週齢(日本チャールスリバー社製)を購入し1週間順化した。この間、一般症状、精巣のサイズに異常のない個体を選択して実験に供した。実施例1と同様に結束バンドにより停留精巣を5日間実施後、結束バンドを除去し、精巣を元の位置に戻した。回復手術2週間後に、精巣が萎縮しすぎた個体を精巣の超音波エコー像を参考に除外した後、Vehicle群、1α−ヒドロキシビタミンD3(中外製薬株式会社製) 0.05μg/kg投与群(ALF0.05)、1α−ヒドロキシビタミンD3 0.1μg/kg投与群(ALF0.1)に群わけし、週5日の頻度で6週間経口投与した。また、sham群についても、同様の頻度でvehicleを投与した。回復手術8週後に、剖検を実施し、精巣上体尾部より精子を採取した。なお、停留精巣回復後の不反応性個体は、Vechicle群で7匹中4匹、1α−ヒドロキシビタミンD3投与群で10匹中5匹生じたが、精子数が全く回復しない個体として除外した。その結果、図5に示されるとおり1α−ヒドロキシビタミンD3を投与することにより、精子数が増加することが確認された。また、図6に示されるとおり、この精子数の増加は、精子運動能を伴ったものであることも確認された。
また、実験に使用した本発明モデル動物がビタミンD欠乏になっているかどうかを確認するために、Sham Ope群および停留精巣+回復Ope群の2群の動物において、剖検時に採取した血漿中の1α,25(OH)23濃度を1,25(OH)2D RIAキット「TFB」(IMMUNODIAGNOSTIC SYSTEMS LIMITED社製)を用いて測定した。その結果、図7に示されるとおり、作成された本発明モデル動物は、ビタミンD欠乏ではないことが確認された。
また、実験に使用した本発明モデル動物の血中カルシウム濃度が上昇しているかどうかを確認するために、Sham Ope群および停留精巣+回復Ope群の2群の動物において、富士ドライケムスライド(血中総カルシウム測定用、富士フィルム社製)を用いて測定した。その結果、図8に示されるとおり、作成された本発明モデル動物の血中カルシウム濃度は上昇していないことが確認された。
上述のとおり、本発明方法により、特発性乏精子症などの男性不妊症病態モデル動物として有用な回復系停留精巣モデル動物を容易にかつ短期間で作成することができる。当該モデル動物は、男性不妊症治療剤のスクリーニングなどに有用である。また、当該モデル動物により、1α−ヒドロキシビタミンD3の男性不妊症治療用途が確認された。これは1α−ヒドロキシビタミンD3の新規用途である。
本発明の男性不妊症病態モデルラットを作成する際の、結束バンドの固定方法を示した模式図である。 本発明の男性不妊症病態モデルラットを作成する際に、陰嚢の皮膜を切開し、精巣を押上げる工程を説明する図である。 結束バンドにおける結束径(結束時の短軸の直径)の具体例を図示したものである。 本発明モデル動物が精子数回復能を有することを示した図である。 1α−ヒドロキシビタミンD3投与により精子数の回復が促進されること示した図である。 1α−ヒドロキシビタミンD3投与による精子数の回復が、精子運動能を伴ったものであること示した図である。 本発明モデル動物は、ビタミンD欠乏ではないことを示した図である。 本発明モデル動物の血中カルシウム濃度は上昇していないこと示した図である。

Claims (14)

  1. 以下の工程;
    1)げっ歯類動物の精巣を、その中心点が、鼠径部と陰嚢先端との間の中心点よりも腹腔寄りになるように停留させる工程、
    2)前記停留を一定期間行うことにより当該動物の精子数を減少させる工程、
    3)前記停留を解除し、精巣を元の位置に戻す工程、
    を含む、精子数回復能を有する男性不妊症病態モデル動物の作成方法。
  2. げっ歯類動物が、ラットである請求項1記載の方法。
  3. 精巣の停留が、陰嚢を結紮することにより行われる請求項1記載の方法。
  4. 精巣の停留が、結束バンドを用いて陰嚢を結紮することにより行われる請求項1記載の方法。
  5. 結束バンドが、さらに陰嚢壁に固定されている請求項4記載の方法。
  6. 陰嚢壁への結束バンドの固定が、縫合糸によるものである請求項5記載の方法。
  7. 停留位置が、陰嚢と精巣導帯との接合位置から陰嚢先端側に3〜7mm離れた位置である請求項2記載の方法。
  8. 停留期間が3〜7日である請求項1記載の方法。
  9. 前記工程1及び3が開腹を伴わない手段によるものである請求項1記載の方法。
  10. 前記工程3が、陰嚢壁への結束バンドの固定を解除することによるものである請求項5又は6に記載の方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法により作成された、精子数回復能を有する
    男性不妊症病態モデル動物。
  12. 請求項11項記載のモデル動物を用いて、男性不妊症治療剤をスクリーニングする方法。
  13. 以下の工程;
    a)被検物質投与群として、請求項11項記載のモデル動物に被検物質を投与して精子数の回復を確認する工程、
    b)対照群として、請求項11項記載のモデル動物に被検物質を投与せずに精子数の回復を確認する工程、
    c)被検物質投与群と対照群との精子数の回復の程度を比較する工程、
    を含む、請求項12記載の方法。
  14. 更に、被検物質投与群と対照群との精子の運動能の程度を比較する工程を含む、請求項13記載の方法。
JP2006041543A 2006-02-17 2006-02-17 回復系停留精巣モデル動物及び男性不妊症治療剤 Expired - Fee Related JP5165202B2 (ja)

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