JP5164656B2 - センサ及びバイオセンサ - Google Patents
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Description
ところで、センサでは、気体試料中や液体試料中における検出対象物質の濃度が未知である場合が多いため、広範な検出濃度範囲を有することが望まれている。
また、例えば、電気化学センサにおいて、作用電極を覆う半透膜の層数を増加させることによって、高濃度の検体を検出可能となるように構成した電気化学センサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、例えば、少なくともトランスデューサ、機能性膜及び制限透過膜の順に設けられた化学センサにおいて、制限透過膜における機能性膜と対向する側の面に形成された凹凸形状を適宜設定することによって、検出可能な検出対象物質の濃度領域を設定できる化学センサが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、特許文献3記載の発明では、目的とする検出対象物質の濃度に合わせて、制限透過膜の凹凸形状を設定するようになっているが、目的とする検出対象物質の濃度が未知である場合、凹凸形状がそれぞれ異なる複数の制限透過膜を用意しなければならないという問題がある。
センサにおいて、
所定の基板と、少なくとも検出対象物質が透過する透過膜と、前記基板と前記透過膜との間に形成された電解液及び触媒を含む検出層と、を有し、前記検出対象物質と前記検出層に含まれる触媒との反応に伴う所定の変化を検出するためのセンサ部を複数備え、
前記複数のセンサ部のうちの少なくとも一のセンサ部における前記基板と前記透過膜との間の距離は、他のセンサ部における前記基板と前記透過膜との間の距離と異なることを特徴とする。
請求項1に記載のセンサにおいて、
前記センサ部は、前記基板に設けられたスペーサを備え、
前記スペーサは、前記透過膜を支持することを特徴とする。
請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
前記基板は、電極を備え、
電気化学的計測法によって前記検出対象物質を検出することを特徴とする。
請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
光学的計測法によって前記検出対象物質を検出することを特徴とする。
バイオセンサにおいて、
請求項1〜4の何れか一項に記載のセンサはバイオセンサであり、
前記検出層は、前記透過膜を透過した前記検出対象物質と選択的に反応するレセプタを含有し、
前記センサ部における前記基板と前記透過膜との間の距離は、センサ部毎にそれぞれ異なることを特徴とする。
ここで、線形の検出域を有する濃度領域は、基板と透過膜との間の距離に依存するため、センサは、線形の検出域を有する濃度領域が異なるセンサ部を複数備えていることになる。したがって、基板と透過膜との間の距離が異なるセンサ部を複数備えるという簡易な構成で、センサ全体では、広範な検出濃度範囲を有することができるとともに、検出対象物質の濃度が未知であっても、センサが備える複数のセンサ部のうちの適切なセンサ部(適切な濃度領域で線形の検出域を有するセンサ部)で当該検出対象物質を検出することができる。
本実施の形態では、センサ(バイオセンサ)として酵素センサを例示して説明することとする。
まず、第1の実施の形態における酵素センサ1について説明する。
図1は、酵素センサ1の要部を模式的に示す図である。図2は、酵素センサ1の平面斜視図である。図3は、図2のIII−III線における断面を模式的に示す図である。図4は、酵素センサ1が備えるセンサ部10の分解図である。
ここで、酵素センサ1における検出層L1側を下側、供給層L2側を上側とする。
まず、酵素センサ1の構成について説明する。
酵素センサ1は、例えば、図1に示すように、所定の基板110と、基板110の上方に配置された透過膜400と、基板110と透過膜400との間に形成され、透過膜400を透過した検出対象物質Tと選択的に反応するレセプタとしての酵素300を含有する検出層L1と、基板110の上面に配置されたスペーサ200と、を有するセンサ部10を複数備えて構成される。
基板110と透過膜400との間に形成された検出層L1は、例えば、電解液等の液体で満たされており、透過膜400の上側の供給層L2には、例えば、検出対象物質Tを含有する気体試料や液体試料が供給されるようになっている。
ここで、酵素センサ1が備える各センサ部10における基板110(基板110が備える電極140)と透過膜400との間の距離dは、それぞれ異なるものとなるように設定されている。すなわち、酵素センサ1は、厚み(上下方向の長さ)がそれぞれ異なる複数の検出層L1を有している。
スペーサ200は、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを一定に保つためのものである。したがって、酵素センサ1が備える各センサ部10が有するスペーサ200の厚みは、それぞれ異なるものとなっている。
スペーサ200を構成する材料としては、スペーサ200によって基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを一定に保つことができるのであれば任意であり、例えば、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂やその他の合成樹脂、シリコン等のセラミックス、金属及び金属表面をコーティングしたもの、ガラスなどを用いることができる。
供給層L2に供給された検出対象物質Tは、透過膜400を透過して検出層L1に移行し、そして、検出層L1に含有された酵素300と反応するようになっている。したがって、透過膜400は、少なくとも検出対象物質Tが透過する膜であれば任意であり、検出対象物質Tの種類によって適宜変更可能である。
特に、供給層L2に気体試料を供給して、酵素センサ1で、当該気体試料に含有される検出対象物質Tを検出する場合には、検出層L1中の電解液等の液体の蒸発を防止する等の観点から、透過膜200としては、検出対象物質T(検出対象ガス)は透過するが、電解液等の液体は透過しないガス透過膜が好ましい。
支持部材500は、酵素センサ1の使用中に透過膜400が変形しないよう、透過膜400を支持するためのものである。したがって、支持部材500によって、より確実に基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを一定に保つことができることになる。
支持部材500の材質は、支持部材500によって透過膜400を変形しないように支持することができるのであれば任意であり、具体的には、例えば、ステンレスメッシュ等のメッシュ体などが挙げられる。
ここで、支持部材500は、透過膜400を変形しないように支持することができるのであれば、透過膜400の下面に配置されていても良いし、透過膜400を挟むように透過膜400の上面及び下面に配置されていても良い。
カバー部材600は、カバー部材600によってスペーサ200,200、透過膜400及び支持部材500を電極基板部100に押さえつけた状態で、電極基板部100に固定されるようになっている。
カバー部材600の材質は、カバー部材600と電極基板部100とによってスペーサ200,200、透過膜400及び支持部材500を挟んで固定できるのであれば任意であり、具体的には、例えば、ガラスエポキシ製の板体等の板状部材などが挙げられる。
酵素300が固定された担体310を分析部120内に配置するだけで、酵素300を検出層L1に含有させることができる。したがって、担体310によって、酵素300を検出層L1に含有させる操作が簡易になる。
担体310の材質は、担体310によって酵素300を固定(保持)することができるのであれば任意であり、具体的には、例えば、親水性テフロン膜、ナイロン膜やその他の材質(例えば、セルロース混合エステル、ポリビニリデンジフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタートなど)からなる親水性膜、多孔質アルミナ等の多孔体、ナイロンメッシュ等のメッシュ体、カーボンナノチューブ等の繊維状集合体などが挙げられる。
ここで、酵素300が固定された担体310の厚みは、スペーサ200によって基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを一定に保つ等の観点から、スペーサ200の厚みと同等又はそれ以下であるのが好ましい。また、担体310は、酵素センサ1の使用中に、透過膜400が変形するのを防止して、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを一定に保つためのスペーサの役割も担っている。
なお、酵素300が固定された担体310は、少なくとも分析部120内における作用電極(電極140)の上面に配置されていてれば良い。
具体的には、酵素300は、例えば、酸化還元酵素や、加水分解酵素、転移酵素、異性化酵素などの酵素(酵素タンパク質)である。
また、酵素300は、例えば、生来の酵素分子であっても、活性部位を含む酵素の断片であっても良い。当該酵素分子又は当該活性部位を含む酵素の断片は、例えば、動植物や微生物から抽出したものであっても、所望によりそれを切断したものであっても、遺伝子工学的に又は化学的に合成したものであっても良い。
具体的には、検出層L1に含有される酵素300は、例えば、1種類の酵素であっても、分子量及び/又はサイズ(径)が略同一の2種類以上の酵素であっても、分子量及び/又はサイズが異なる2種類以上の酵素であっても良い。また、検出層L1に含有される酵素300が2種類以上である場合、酵素300は、例えば、同種の検出対象物質T(基質)に作用する2種類以上の酵素であっても、異種の検出対象物質Tに作用する2種類以上の酵素であっても、同種及び/又は異種の検出対象物質Tに作用する2種類以上の酵素であっても良い。
ここで、特に、検出層L1に含有された酵素300が2種類以上であって、その2種類以上の酵素が異種の検出対象物質Tに作用する場合、例えば、検出電位を変える、或いは、分析部120内に電極を複数配置する等により、酵素センサ1は、その異種の検出対象物質T(2種類以上の検出対象物質T)を同時に検出することができる。
次に、酵素センサ1の製造方法について説明する。
まず、電極基板部100を作成する。
具体的には、例えば、公知のフォトリソグラフィー法とリフトオフ又はエッチング法とによって、基板110上に、作用電極(電極140)、対電極150及び参照電極160の三極構造のパターンを複数個作成する。
より具体的には、例えば、基板110上にスピンコーター等を用いてフォトレジストを適量塗布する。次いで、紫外露光装置にて数秒間露光し、作用電極(電極140)、対電極150及び参照電極160の三極構造のフォトマスクパターンを転写する。次いで、ポストベーク処理を行い、その後、現像液にて現像を行って、フォトレジストのパターンを形成する。次いで、スパッタ法によって、例えば、膜厚が数百nm程度の金属薄膜を成膜し、その後、リフトオフ法によって、レジストを剥がして三極電極を形成する。
また、成膜される金属薄膜としては、例えば、金、白金、銅等の貴金属を挙げることができる。
なお、作用電極(電極140)、対電極150及び参照電極160の三極構造のパターンの作成は、上記のフォトリソプロセスでの作成に限定されるものではなく、例えば、スクリーン印刷の手法を用いて簡易的に行っても良い。また、金属薄膜の成膜法は、スパッタ法に限定されるものではなく、例えば、蒸着法を用いても良い。
次に、酵素300が固定された担体310(酵素固定化担体)を作成する。
具体的には、例えば、担体310を複数個用意し、各担体310の上に、酵素300が溶解する酵素溶液をそれぞれ同量ずつピペットやディスペンサーなどで滴下する。これにより、各担体310のそれぞれに、同量の酵素300が物理的に固定化される。
なお、酵素300が固定された担体310は、固定化後に乾燥処理を行うことが好ましい。
具体的には、電子伝達体としては、例えば、フェリシアン化カリウム、フェロセン、フェロセン誘導体、ベンゾキノン、キノン誘導体、オスミウム錯体等が用いられる。
例えば、酵素300と検出対象物質Tとの反応が、不安的中間体を経由する反応等、酵素300のアミノ酸側鎖の触媒作用では容易に進まない反応の場合には、適当な構造を有し、酵素反応の発現に関与する低分子量の有機化合物である補酵素を使用することが多い。特に、酵素300として、補酵素依存型酵素を用いた場合、検出層L1の補酵素を導入することによって、酵素反応を効率よく行わせることができる。
補酵素は、酵素300(補酵素依存型酵素)の種類に応じて、適宜選択することができる。具体的には、補酵素としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、補酵素I、補酵素II、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、リポ酸、補酵素Q等の1種又は2種以上の組み合わせが挙げられる。なかでも、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)等のNAD系の補酵素が用いられる。
次に、酵素センサ1を作成する。
ここで、スペーサ200は、粘着性を持つテープ等であっても良いし、接着剤等によって基板110上に接着固定されても良い。
以上のようにして、酵素センサ1を製造する。なお、酵素センサ1の製造方法は、上記製造方法に限定されるものではない。
まず、酵素センサ1を作成した。本実施例では、ホルムアルデヒドガスを検出するための酵素センサ1を作成した。酵素300としては、補酵素(NAD+)依存型酵素であるホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ホルムアルデヒド脱水素酵素)を用いた。
まず、基板110上に、作用電極(電極140)、対電極150及び参照電極150の三極構造のパターンを5個作成した。
具体的には、略矩形状に形成されたガラスエポキシ製の基板110(厚さ0.8mm、松下電工製)を、ホットプレートを用いて95℃にて90秒間プレベークした。その後、スピンコーターを用いてネガ型レジストを100μL塗布し、紫外露光装置を用いて作用電極(電極140)、対電極150及び参照電極160の三極構造のフォトマスクパターンを転写した。次いで、120℃で60秒間ポストベークして、その後、現像液にて70秒間現像し、蒸留水で洗浄した。次いで、スパッタ法によって、膜厚が800nmの金属薄膜(白金薄膜)を成膜して、その後、リフトオフ法によって、基板110をアセトンに浸して超音波で30分間洗浄し、レジストを剥がして白金電極を形成した。白金層の成膜条件は、真空度を10−5Pa、基板温度を60℃、アルゴンガスの流量を40sccmとした。
具体的には、スパッタ法によって、分析部120に対応する領域の周囲に、膜厚が500nmのSiO薄膜を形成することによって、分析部120の周囲に疎水性絶縁膜130を作成した。その後、参照電極160のパターンに、銀/塩化銀インクを塗布して、120度で焼結し、銀/塩化銀電極である参照電極160を作成した。
まず、酵素溶液を作成した。
具体的には、0.5Uのホルムアルデヒド脱水素酵素、0.25μmolのNAD+、10μmolのナフサキノンを、1000μLのリン酸緩衝液(pH7.5)へ溶解して、酵素溶液を作成した。
具体的には、担体310として、略矩形状に形成された、厚みがそれぞれ異なる5種類の親水性テフロン膜(孔径:0.1μm、厚み:50μm、100μm、200μm、500μm、1000μm、日本ミリポア製)を1枚ずつ用意し、前記作成した酵素溶液を各々20μLずつマイクロピペットで採取して、これらの親水性テフロン膜のそれぞれに滴下した。その後、室温(25℃)で3時間自然乾燥させて、厚みがそれぞれ異なる5種類の酵素固定化膜を作成した。
まず、スペーサ200を設置した。
具体的には、スペーサ200として、略L字状に形成された、厚みがそれぞれ異なる5種類の粘着性を持つ疎水性テフロンテープ(厚み:50μm、100μm、200μm、500μm、1000μm、日東電工製)を2枚ずつ用意し、これらの疎水性テフロンテープのそれぞれを、分析部120を露出するように配置して、疎水性絶縁膜130上に接着固定した。
より具体的には、例えば、上記形成された5個の分析部120のそれぞれを「分析部a」、「分析部b」、「分析部c」、「分析部d」、「分析部e」と呼ぶとすると、厚み50μmの疎水性テフロンテープを、「分析部a」を囲うように配置して疎水性絶縁膜130上に接着固定し、厚み100μmの疎水性テフロンテープを、「分析部b」を囲うように配置して疎水性絶縁膜130上に接着固定し、厚み200μmの疎水性テフロンテープを、「分析部c」を囲うように配置して疎水性絶縁膜130上に接着固定し、厚み500μmの疎水性テフロンテープを、「分析部d」を囲うように配置して疎水性絶縁膜130上に接着固定し、厚み1000μmの疎水性テフロンテープを、「分析部e」を囲うように配置して疎水性絶縁膜130上に接着固定した。
具体的には、前記作成した酵素固定化膜のそれぞれを、疎水性テフロンテープの厚みに対応付けて、各分析部120内における作用電極(電極140)、対電極150及び参照電極160の上面に配置した。
より具体的には、例えば、厚み50μmの疎水性テフロンテープに囲まれた「分析部a」内に、厚み50μmの親水性テフロン膜から成る酵素固定化膜を配置し、厚み100μmの疎水性テフロンテープに囲まれた「分析部b」内に、厚み100μmの親水性テフロン膜から成る酵素固定化膜を配置し、厚み200μmの疎水性テフロンテープに囲まれた「分析部c」内に、厚み200μmの親水性テフロン膜から成る酵素固定化膜を配置し、厚み500μmの疎水性テフロンテープに囲まれた「分析部d」内に、厚み500μmの親水性テフロン膜から成る酵素固定化膜を配置し、厚み1000μmの疎水性テフロンテープに囲まれた「分析部e」内に、厚み1000μmの親水性テフロン膜から成る酵素固定化膜を配置した。
具体的には、透過膜400として、略矩形状に形成されたガス透過膜(厚み:100μm、ゴアテックス製)を5枚用意して、それぞれで各分析部120を覆った。次に、支持部材500として、略矩形状に形成されたステンレスメッシュ(目開き100μm、セミテック製)を5枚用意して、それぞれで各透過膜400を覆った。次に、カバー部材500として、略矩形状に形成された、開口部(供給口610)を有するガラスエポキシ製の板体を5枚用意して、それぞれを、開口部が分析部140に対応するように各支持部材500の上面に配置して、疎水性絶縁膜130上に固定した。
次に、酵素センサ1を評価した。
測定装置Mは、例えば、図8に示すように、標準空気生成器M1と、ホルムアルデヒド貯蔵部M2と、ガス生成器M3と、センサチャンバーM4と、ポテンショスタットM5と、信号処理部M6と、コンピュータM7と、等を備えて構成される。
具体的には、酵素センサ1が備える各センサ部10が有する酵素固定化膜(酵素固定化膜における、透過膜400からはみ出る部分(図6参照))のそれぞれに、30μLのリン酸緩衝液(pH7.5)を電解液として滴下し、親水性テフロン膜から成る酵素固定化膜の端から毛細管現象により電解液を吸引させることによって、電解液を検出層L1内に浸入させ、酵素、補酵素及び電子伝達体を含んだ電解液で検出層L1内を満たすようにした。
図9においては、横軸にホルムアルデヒドガス濃度、縦軸に応答電流(平衡状態の値)を示し、菱形(◇)プロットでスペーサ200及び酵素固定化膜(スペーサの役割を担う担体310から成る酵素固定化膜)の厚みが50μmのセンサ部10の結果を示し、四角(□)プロットでスペーサ200及び酵素固定化膜の厚みが100μmのセンサ部10の結果を示し、三角(△)プロットでスペーサ200及び酵素固定化膜の厚みが200μmのセンサ部10の結果を示し、丸(○)プロットでスペーサ200及び酵素固定化膜の厚みが500μmのセンサ部10の結果を示し、逆三角(▽)プロットでスペーサ200及び酵素固定化膜の厚みが1000μmのセンサ部10の結果を示した。
また、スペーサ200及び酵素固定化膜の厚みが100μmのセンサ部10は、1ppb〜900ppbの濃度領域で良好な線形性を保っており、900ppbを超える濃度領域では飽和している。
また、スペーサ200及び酵素固定化膜の厚みが200μmのセンサ部10は、10ppb〜3000ppbの濃度領域で良好な線形性を保っており、3000ppbを超える濃度領域では飽和している。
また、スペーサ200及び酵素固定化膜の厚みが500μmのセンサ部10は、100ppb〜10000ppbの濃度領域で良好な線形性を保っており、10000ppbを超える濃度領域では飽和している。
また、スペーサ200及び酵素固定化膜の厚みが1000μmのセンサ部10は、100ppb〜100000ppbの濃度領域で良好な線形性を保っている。
ここで、供給層L2に供給されたホルムアルデヒドガス中のホルムアルデヒドは、ガス透過膜400を透過して供給層L2から検出層L1に移行して電解液に溶け込み、酵素300と反応する。そして、最終的に、電子伝達体が電極140上で酸化される。すなわち、検出層L1中での拡散は、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dに依存するため、センサ部10の感度は、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dによって変化すると考えられる。
ここで、線形の検出域を有する濃度領域は、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dに依存するため、酵素センサ1は、線形の検出域を有する濃度領域が異なるセンサ部10を複数備えていることになる。したがって、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dが異なるセンサ部10を複数備えるという簡易な構成で、酵素センサ1全体では、広範な検出濃度範囲を有することができるとともに、検出対象物質Tの濃度が未知であっても、酵素センサ1が備える複数のセンサ部10のうちの適切なセンサ部10(適切な濃度領域で線形の検出域を有するセンサ部10)でその検出対象物質Tを検出することができる。
したがって、スペーサ200及び酵素固定化膜によって、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを一定に保つことができるため、検出対象物質Tの検出を安定して行うことができる。
次に、第2の実施の形態における酵素センサ1Aについて説明する。
図10は、酵素センサ1Aの要部を模式的に示す図である。図11は、酵素センサ1Aの平面斜視図である。図12は、図11のXII−XII線における断面を模式的に示す図である。図13は、酵素センサ1Aの分解図である。
まず、酵素センサ1Aの構成について説明する。
なお、第2の実施の形態の酵素センサ1Aは、センサ部10Aを1つ備えて構成されており、そのセンサ部10Aにおける基板110(基板110が備える電極140)と透過膜400との間の距離dが可変である点が、第1の実施の形態の酵素センサ1と異なる。したがって、異なる箇所のみについて説明し、その他の共通する部分は同一符号を付して説明する。
基板110と透過膜400との間に形成された検出層L1は、例えば、電解液等の液体で満たされており、透過膜400の上側の供給層L2には、例えば、検出対象物質Tを含有する気体試料や液体試料が供給されるようになっている。
ここで、酵素センサ1Aが備えるセンサ部10Aにおける基板110(基板110が備える電極140)と透過膜400との間の距離dは、変えることができるようになっている。
ここで、液貯め部1110A及び載置部1140Aの深さは、例えば、電極基板部100(基板110)の厚みと略同一となるよう設定されている。
ここで、センサ部10Aが備える電極基板部100は、例えば、第1の実施の形態において作成された、複数の電極基板部100が連なる電極基板部群から1つ分を切り出したものである。
スペーサ200Aの材質は、スペーサ200Aによって酵素センサ1A内に注入された電解液等の液体を酵素センサ1Aの外側に漏らすことなく、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを変えることができるのであれば任意であり、具体的には、例えば、シリコンゴムシート等の弾性部材などが挙げられる。
まず、酵素センサ1Aを作成した。本実施例では、ホルムアルデヒドガスを検出するための酵素センサ1を作成した。酵素300としては、補酵素(NAD+)依存型酵素であるホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ホルムアルデヒド脱水素酵素)を用いた。
第1の実施の形態の実施例において作成された、5個の電極基板部100が連なる電極基板部群から1個の電極基板部100を切り出すことによって、電極基板部100を作成した。
まず、ケース体1000Aを作成した。
具体的には、下側ケース体1100Aや上側ケース体1200Aを、旋盤やフライス盤などを用いて、絶縁体であるピーク材を加工することによって作成した。
液貯め部1110A及び載置部1140Aの深さは、電極基板部100の厚み(0.8mm)と略同一となるように設定した。
なお、ケース体1000Aの材質は、絶縁性であればピーク材に制限されるものではなく、具体的には、例えば、セラミックス、ガラス、プラスチック、テフロンなどであっても良い。
具体的には、前記作成した電極基板部100を、分析部120が液貯め部1110A内に配置されるとともに、パッド170が酵素センサ1Aの外側に配置されるように、前記作成した下側ケース体1100Aの載置部1140Aに載置して、下側ケース体1100Aに固定した。
なお、下側ケース体1100Aに対する電極基板部100の固定方法は、テフロンテープ等のテープ部材を用いてシール及び固定する方法であっても良いし、接着剤等を用いて固定する方法であっても良い。
具体的には、例えば、図14に示すように、精密型ZステージN1上に、電極基板部100が装着された下側ケース体1100Aを、ネジ等(図示省略)を用いて固定した。
具体的には、スペーサ200Aとして、略リング形状に形成された、孔部220Aを有するシリコンゴムシート(厚み:500μm)を1枚用意し、そのシリコンゴムシートを、孔部220Aが下側ケース体1100Aの凹部1150Aに対応するように配置した。
具体的には、透過膜400として、略円形状に形成されたガス透過膜(ゴアテックス製)を1枚用意するとともに、支持部材500として、略円形状に形成されたステンレスメッシュを1枚用意し、そのガス透過膜とステンレスメッシュで、スペーサ200Aの開口部210Aを覆った。
ここで、ガス透過膜の強度を向上させるために、ガス透過膜とステンレスメッシュとを重ね合わせて、ガス透過膜及びステンレスメッシュにおける、電極基板部100の分析部120に対応する部分以外の部分を接着し、ガス透過膜とステンレスメッシュとを一体化した。そして、このガス透過膜とステンレスメッシュとを一体化したもので、スペーサ200Aの開口部210Aを覆った。
具体的には、前記作成した上側ケース体1200Aを、孔部1220Aが下側ケース体1100Aの凹部1150Aに対応するように配置し、連結部材1300Aで下側ケース体1100Aに連結させた。そして、例えば、図14に示すように、ホルダーN2で、上側ケース体1200Aの位置を固定した。
次に、酵素センサ1Aを評価した。
測定装置Nは、例えば、図15に示すように、標準空気生成器M1と、ホルムアルデヒド貯蔵部M2と、ガス生成器M3と、精密型ZステージN1と、ホルダーN2と、ポテンショスタットM5と、信号処理部M6と、コンピュータM7と、等を備えて構成される。
酵素センサ1Aの下側ケース体1100Aが精密型ZステージN1に固定されているとともに、上側ケース体1200Aの位置がホルダーN2に固定されており、また、連結部材1300Aで下側ケース体1100Aと上側ケース体1200Aとを連結した状態で、上側ケース体1200Aに対する下側ケース体1100Aの位置を変えることができるようになっているため、精密型ZステージN1により下側ケース体1100Aを上下方向に移動させることによって、スペーサ200Aを変形させてスペーサ200Aの厚みを変えて、センサ部10Aにおける基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを変えることができるようになっている。
具体的には、1.0Uのホルムアルデヒド脱水素酵素、0.5μmolのNAD+、20μmolのナフサキノンを、2000μLのリン酸緩衝液(pH7.5)へ溶解して、酵素溶液を作成した。その酵素溶液を、スペーサ200Aの厚みが500μmとなるように調整された酵素センサ1A内に、シリンジを用いて注入口1120Aから注入し、排出口1130Aから漏れ出すまで注入し続けることによって、酵素溶液で検出層L1を満たした。このとき、約1000μLの酵素溶液が酵素センサ1A内に注入された。
その後、酵素溶液が入ったシリンジを注入口1120Aに接続したままの状態で、排出口1130Aをシリコンシール等でキャップした。
図16においては、横軸にスペーサ200Aの厚み、縦軸に応答電流(平衡状態の値)を示した。
図16によれば、スペーサ200Aの厚みが小さくなるにつれて(すなわち、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dが小さくなるにつれて)、応答電流が増加することが分かった。
ここで、供給層L2に供給されたホルムアルデヒドガス中のホルムアルデヒドは、ガス透過膜400を透過して供給層L2から検出層L1に移行して電解液に溶け込み、酵素300と反応する。そして、最終的に、電子伝達体が電極140上で酸化される。すなわち、検出層L1中での拡散は、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dに依存するため、センサ部10Aの感度は、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dによって変化すると考えられる。
図17においては、横軸にホルムアルデヒドガス濃度、縦軸に応答電流(平衡状態の値)を示し、菱形(◇)プロットでスペーサ200Aの厚みを50μmに調整した場合の結果を示し、四角(□)プロットでスペーサ200Aの厚みを100μmに調整した場合の結果を示し、三角(△)プロットでスペーサ200Aの厚みを200μmに調整した場合の結果を示し、丸(○)プロットでスペーサの厚み500μmに調整した場合の結果を示した。
また、スペーサ200Aの厚みを約100μmに調整した場合は、10ppb〜300ppbの濃度領域で良好な線形性を保っており、300ppbを超える濃度領域では飽和している。
また、スペーサ200Aの厚みを約200μmに調整した場合は、10ppb〜1000ppbの濃度領域で良好な線形性を保っており、1000ppbを超える濃度領域では飽和している。
また、スペーサ200Aの厚みを約500μmに調整した場合は、100ppb〜10000ppbの濃度領域で良好な線形性を保っており、100000ppbを超える濃度領域では飽和している。
具体的には、電極140を備える基板110と、少なくとも検出対象物質Tが透過する透過膜400と、基板110と透過膜400との間に形成され、透過膜400を透過した検出対象物質Tと選択的に反応するレセプタとしての酵素300を含有する検出層L1と、を有するセンサ部10Aを備え、センサ部10Aにおける基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dは、可変となっている。
ここで、線形の検出域を有する濃度領域は、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離に依存するため、酵素センサ1Aは、センサ部10Aにおける基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを変えることによって、線形の検出域を有する濃度領域を可変とすることができる。したがって、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dを変えるという簡易な構成で、酵素センサ1A全体では、広範な検出濃度範囲を有することができるとともに、検出対象物質Tの濃度が未知であっても、基板110(電極140)と透過膜400との間の距離dの可変範囲のうちの適切な距離d(適切な濃度領域で線形の検出域を有する距離d)でその検出対象物質Tを検出することができる。
第1の実施の形態では、透過膜400を透過して供給層L2から検出層L1に移行してきた検出対象物質Tを、電気化学的計測法によって検出するようにしたが、例えば、図18及び図19に示す酵素センサ1Bのように、透過膜400を透過して供給層L2から検出層L1に移行してきた検出対象物質Tを、光学的計測法によって検出するようにしても良い。
なお、変形例1の酵素センサ1Bは、基板110及び透過膜400の材質と、基板110に電極140等を備えていない点と、が第1の実施の形態の酵素センサ1と異なる。
また、変形例1の酵素センサ1Bにおいては、検出層L1に含有される酵素は、基板110上に直接固定されているのが好ましい。
酵素センサ1Bによる光学的計測法としては、例えば、生成物の吸光度の変化を見る方法、酵素標識したものの吸光度の変化を見る方法、表面に金属をコーティングしてSPR(表面プラズモン共鳴)を利用する方法、生成物として蛍光物質を生成させてその蛍光測定を行なう方法等が挙げられる。
第2の実施の形態では、透過膜400を透過して供給層L2から検出層L1に移行してきた検出対象物質Tを、電気化学的計測法によって検出するようにしたが、例えば、図20及び図21に示す酵素センサ1Cのように、透過膜400を透過して供給層L2から検出層L1に移行してきた検出対象物質Tを、光学的計測法によって検出するようにしても良い。
なお、変形例2の酵素センサ1Cは、基板110及び透過膜400の材質と、基板110に電極140等を備えていない点と、が第2の実施の形態の酵素センサ1Aと異なる。
また、変形例2の酵素センサ1Cにおいては、検出層L1に含有される酵素は、基板110上に直接固定されているのが好ましい。
酵素センサ1Cによる光学的計測法としては、例えば、生成物の吸光度の変化を見る方法、酵素標識したものの吸光度の変化を見る方法、表面に金属をコーティングしてSPR(表面プラズモン共鳴)を利用する方法、生成物として蛍光物質を生成させてその蛍光測定を行なう方法等が挙げられる。
なお、基板110の下面側から光学的計測を行う場合(すなわち、例えば、基板110の下面側からレーザ等の光源を用いて光を照射して計測を行う等の場合)、基板110を、少なくとも所望の波長を有する光が透過するガラス等の透明基板で作成し、下側ケース体1100A(少なくとも液貯め部1110Aの底面)、或いは、下側ケース体1100A(少なくとも液貯め部1110Aの底面)、透過膜400及び支持部材500を、少なくとも所望の波長を有する光が透過する透明材料で形成する必要がある。
第2の実施の形態において、酵素300が溶解する酵素溶液を検出層L1内に直接導入することによって、酵素300を検出層L1に含有させるようにしたが、酵素300を検出層L1に含有させる方法としてはこれに限定されるものではなく、電極140上に直接固定する方法であっても良いし、酵素300が固定された担体310を検出層L1内に配置する方法であっても良い。
また、第1の実施の形態や第2の実施の形態において、酵素300を担体310や電極140上に固定する場合、グルタルアルデヒドや光架橋性樹脂などの架橋剤を用いて、固定しても良い。
変形例2においても同様である。
変形例1においても同様である。
変形例1及び変形例2においても同様である。
具体的には、例えば、これらの電極は、市販の電解セル、測定セル等で使用する大きな電極であっても良いし、ディスク電極、回転リングディスク電極、ファイバー電極等であっても良いし、例えば、フォトリソグラフィー等の公知の微細加工技術により作成した微小電極(円盤電極、円筒電極、帯状電極、配列帯状電極、配列円盤電極、リング電極、球状電極、櫛型電極、ペア電極等)であっても良い。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、3極式電極を用いたが、2極式電極を使用してもよい。
変形例1及び変形例2においても同様である。
変形例1においても同様である。
具体的には、例えば、検出層L1に金属触媒を含有させたセンサであっても良い。
検出層L1に金属触媒を含有させたセンサとしては、例えば、電極140上に、金や白金などの金属触媒を担持させた電解質型センサ(定電位電解式センサ)等が挙げられる。定電位電解式センサとは、一定の電位に保たれた作用電極(電極140)上でガスを電気分解し、そのときに発生する電流をガス濃度として検知するセンサである。
変形例1及び変形例2においても同様である。
10,10A,10B,10C センサ部
110 基板
140 電極
200 スペーサ
300 酵素(レセプタ)
310 担体(スペーサ)
400 透過膜
L1 検出層
T 検出対象物質
Claims (5)
- 所定の基板と、少なくとも検出対象物質が透過する透過膜と、前記基板と前記透過膜との間に形成された電解液及び触媒を含む検出層と、を有し、前記検出対象物質と前記検出層に含まれる触媒との反応に伴う所定の変化を検出するためのセンサ部を複数備え、
前記複数のセンサ部のうちの少なくとも一のセンサ部における前記基板と前記透過膜との間の距離は、他のセンサ部における前記基板と前記透過膜との間の距離と異なることを特徴とするセンサ。 - 請求項1に記載のセンサにおいて、
前記センサ部は、前記基板に設けられたスペーサを備え、
前記スペーサは、前記透過膜を支持することを特徴とするセンサ。 - 請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
前記基板は、電極を備え、
電気化学的計測法によって前記検出対象物質を検出することを特徴とするセンサ。 - 請求項1又は2に記載のセンサにおいて、
光学的計測法によって前記検出対象物質を検出することを特徴とするセンサ。 - 請求項1〜4の何れか一項に記載のセンサはバイオセンサであり、
前記検出層は、前記透過膜を透過した前記検出対象物質と選択的に反応するレセプタを含有し、
前記センサ部における前記基板と前記透過膜との間の距離は、センサ部毎にそれぞれ異なることを特徴とするバイオセンサ。
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