JP5164047B2 - アクチュエータ、アクチュエータの制御方法及びアクチュエータの制御プログラム - Google Patents
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Description
この先に提案した排出バルブを備えて、エアシリンダ内の圧力を制御すれば、アクチュエータとして、所望の動作状態が得られる。
PID制御は、エアシリンダの制御に限らず、各種制御状態を目標位置に近づける制御を行う際に、広く普及した制御方式である。
構成としては、流体圧源と第1及び第2のチャンバとの間に配置されて、第1及び第2のチャンバへの流体圧供給を無段階で調整する第1及び第2の制御バルブと、第1及び第2のチャンバ側から大気または低圧源側に向かう出方向に流体を流すことを許容する排出バルブとを備える。
そして、第1及び第2の制御バルブの少なくとも何れか一方の制御を行う制御手段として、第1の制御手段と第2の制御手段とを備える。
第1の制御装置は、ピストンの目標スライド位置と、ピストンの検出したスライド位置との偏差が小さくなるようにフィードバック制御を実行する。
第2の制御装置は、第1及び第2のチャンバへ共通に供給するバイアス圧力を、ピストンの目標スライド位置と、ピストンの検出したスライド位置との偏差が最小になるようにフィードバック制御を実行する。
本実施の形態においては、アクチュエータとして構成されたエアシリンダに適用したものである。
図1は、本実施の形態のエアシリンダとそのエアシリンダに圧縮空気を送る構成例を示したものである。
ピストン13には、ピストン棒14が取り付けてあり、本例の場合にはこのピストン棒14により何らかの駆動を行うものとする。ここでは、エアシリンダ10からのピストン棒14の突出長Dにより、その駆動状態が決まる。
まず、本発明の実施の形態の制御処理を説明する前に、図1に示した如き構成の復動型エアシリンダ10で、第1,第2の排出バルブ42,44を使用した一般的な制御処理について説明すると、第1,第2の排出バルブ42,44には、絞りが一定のもの、機械的に絞りを調整するもの、手動で排気量を調節するものの3種類がある。スピードコントローラとも称される手動で排気量を調節する排出バルブにはつまみが付いており、つまみを回転することで空気の流路を狭くしたり広くしたりする。流路を狭くすると、シリンダ10から排出される空気の流量は少なくなる。その結果、シリンダ内のピストン13が進む速度が遅くなる。空気の流出量とシリンダの速度のあいだには、下記の関係が成り立つ。
(1)式から、空気の流出量が大きくなれば、すなわちスピードコントローラの排気開度が大きくなれば、ピストンの移動速度が速くなることが分かる。
ここで、図1に示したシリンダにおいて、図中に示したように、Fは発生力、F1とF2は各チャンバ内での発生力、P1とP2は各チャンバ内での空気圧、Dは変位としたとき、以下の2つの式が成り立つ。
図1に示した第1,第2の制御バルブ41,43と第1,第2の排出バルブ42,44による構成では、高い圧力の空気を大量にエアシリンダへ流入させ、ピストンを高速に運動できるようにするため、空気の流入のみを自由とする第1,第2の制御バルブ41,43を備える。この供気用の第1,第2の制御バルブ41,43と排気用の第1,第2の排出バルブ42,44との組み合わせにより、共通バイアス圧力制御が可能な構成としてある。
エアシリンダの制御系としては、背景技術の欄で説明したPID制御の他に、そのPID制御の拡張であるI−PD制御(比例・微分先行型PID制御)などが知られている。I−PD制御は、次式のモデルにより表現される。
PID制御は、複雑な制御方式なしに外乱抑止と目標値追従が可能であり、実装が容易で、現場調整も容易であるため、産業界における機械装置の90%以上にPID制御が採用されている。
PID制御は、次式のモデルにより表現される。
以下、本実施の形態での制御状態に説明すると、2つのチャンバへの目標圧力PLとPRであるが、推進側および抵抗側の2つチャンバ11,12内の圧力差をP’とすると、2つチャンバに加えられる等しい圧力Pbias(バイアス圧力)も制御することができる。バイアス圧力は次式のように表現される。
このバイアス圧力制御も用いて、正確な位置制御と素早い応答性を実現するものである。
図2の構成例は、第1チャンバ11側を推進側とし、第2チャンバ12側を抵抗側とした場合の例、即ち図2でピストン13が右側に動かす場合の例である。ピストンの動く方向が逆の場合には、第1チャンバ11側への接続と第2チャンバ側への接続は、逆になる。
エアシリンダ10の各チャンバ11,12内の空気の圧力は、既に図1に示した第1,第2の制御バルブ41,43と第1,第2の排出バルブ42,44を備えて制御される。各チャンバ11,12内の空気の圧力は、第1,第2の制御バルブ41,43で制御されることになるが、その制御を行う制御手段として、バイアス圧力を付与する制御を行うバイアスコントローラ24(第1の制御手段)と、PID制御を行うPIDコントローラ23(第2の制御手段)とを設ける構成としてある。
そして、双方のコントローラ23,24で得られる圧力値を合計した圧力値となるように、第1チャンバ11側の第1の制御バルブ41からの流体圧供給量を制御する。
PIDコントローラ23は、PID制御を行うためのものであり、前述のPID制御の圧力算出式である(5)式に基いて、付与する圧力が決まる。
その構成としては、ターゲット値入力部51に、ターゲット生成部21からターゲット値(ピストンの目標位置)が得られ、検出値入力部52に、ピストン位置検出部22が検出したピストン位置の検出値が得られ、両値の差分が減算器54で検出される。
また、減算器54で検出された差分の値を、比例ゲイン乗算器57に供給して、比例ゲインKpを乗算する。
さらに、減算器54で検出された差分の値を、微分器58で微分し、その微分値を微分ゲイン乗算器59に供給して、微分ゲインKdを乗算する。
バイアスコントローラ24は、ターゲット値入力部61に、ターゲット生成部21からターゲット値(ピストンの目標位置)が得られ、検出値入力部62に、ピストン位置検出部22が検出したピストン位置の検出値が得られ、両値の差分が減算器70で検出される。
また、減算器70で検出された差分の値を、比例ゲイン乗算器64に供給して、比例ゲインKpを乗算する。
微分ゲイン乗算器66の出力と、比例ゲイン乗算器64の出力とは、それぞれ加算器67に供給する。
その加算器67の出力を、最大バイアス設定部68に供給して、ピストンに接続されたエアコンプレッサが供給可能な最大バイアス圧力以下に制限された圧力の制御値に調整し、その調整された制御値を、制御値出力部63から出力させる。
本実施の形態では、バイアス圧力については、PID制御とは異なり、積分ゲインを使用しなかった。これは、積分ゲインを使うとすぐにエアコンプレッサの供給圧力の限界を超える、積分値のリセットが必要、3種類のパラメータ調整が必要という問題があり、また積分ゲインを採用しても応答の顕著な改善が見られないからである。
本実施の形態では、固定バイアス設定部69で設定される基準バイアス圧力Pstandard=2気圧とした。基準バイアス圧力は、エアコンプレッサが供給可能な空気圧力の上限のなかで、なるべく大きなダイナミックレンジのバイアス圧力を利用できる値が望ましい。ただし、それほど厳密に設定する必要はない。
そこで、例えば、PIDコントローラ23内の制御ゲインは後者の手法により、バイアスコントローラ24内の制御ゲインは前者の手法により、2段階で決定する手法を適用する。その手法について、ステップ1〜4として以下に示す。
次に、制御バルブ、あるいは制御バルブと排出バルブの組み合わせの、物理的な特性を考える。前述の(8)式右辺において、発生力となる圧力の差分による力A1(P1+Pbias)―A2((P2+Pbias)が時間t=0の時に発生すると想定されている。しかし実際は、その圧力を制御している制御バルブの性能上、圧力応答に時間が掛かってしまう。すなわち、(8)式で想定しているように瞬時に目標に達しない。その時間の遅れは、ある測定結果では、例えば150ms程度かかってしまう。エアシリンダを高速に制御するためには、この時間遅延を考慮に入れる必要が出てくる。
そして、チャンバ内の圧力変化dPi/dtは次式のように表すことができる。
(9)式と(10)式を整理すると、次式を導くことができる。
そこで、(11)式における比例定数Kiを求めるため、バイアス圧力を1から4気圧まで変えた時の立ち上がり速度を測定したものが、図5である。ここで、2つのチャンバ内の圧力差(P′=P1−P2)はすべて0.5気圧としてある。図5の縦軸の立ち上がり速度とは、最終値の10%から90%までの圧力を、その変化に要した時間で割った値である。図5から得られた結果は、直線回帰式で近似して差し支えないため、(11)式は次式のように書き換えることが可能となる。
図6は、ピストン位置の目標値を5cmとした時の、本実施の形態によるPIDコントローラとバイアスコントローラを併用した場合のステップ応答の特性Daと、従来例に相当するPIDコントローラのみのステップ応答の特性Dbとを示す。
エアシリンダは、モータと比較した場合、構造が単純、保守が容易、小形軽量、大きな力を発生するなど多くの利点を持つ。しかし、空気という圧縮性を有する流体を使用するため、正確な速度制御や位置制御が容易ではない。また、負荷に影響されやすい、すなわち任意の位置においてピストンを動かしにくくする性能すなわち剛性を発揮することが困難であるなどの問題点を持っているが、本実施の形態の処理構成によりこれらの問題が解決されるエアシリンダが構成される。
本実施の形態における基本的な制御状態については、上述した第1の実施の形態で説明したように、PID制御とバイアス圧力制御との双方を行うようにしたものであり、その具体的な制御手法についても、各数式を説明した例と同じである。
そして、本実施の形態においては、エアシリンダ10内のピストンを駆動する際に、1組のPIDコントローラ23とバイアスコントローラ24とを制御手段として設けて制御する点は、図2の例と同様であるが、PIDコントローラ23とバイアスコントローラ24の出力は、推進側のチャンバ(図8の例では第1のチャンバ11側)の圧力の制御だけを行い、抵抗側のチャンバは、一定圧力とするようにしたものである。
この図8に示した構成としたことでも、良好な制御が可能となる。
本実施の形態における基本的な制御状態については、上述した第1の実施の形態で説明したように、PID制御とバイアス圧力制御との双方を行うようにしたものであり、その具体的な制御手法についても、各数式を説明した例と同じである。
そして、エアシリンダ10内のピストンを駆動する際に、上述した第1の実施の形態では、図2に示したように、推進側のチャンバ11だけを、PID制御とバイアス圧力制御との双方を行うようにして、抵抗側のチャンバ12については、一定のバイアス圧力に相当するものを与えるようにしたが、本実施の形態の場合には、図9に示すように、推進側および抵抗側の双方で、それぞれの最適なゲイン値に従い、PID制御とバイアス圧力制御を行う制御手段を設けたものである。
なお、ピストンの動く方向が逆になると、推進側のコントローラ33,34が抵抗側のコントローラとなり、抵抗側のコントローラ35,36が推進側のコントローラとなる。
本実施の形態における基本的な制御状態については、上述した第1の実施の形態で説明したように、PID制御とバイアス圧力制御との双方を行うようにしたものであり、その具体的な制御手法についても、各数式を説明した例と同じである。
そして、エアシリンダ10内のピストンを駆動する際に、上述した第1の実施の形態では、図2に示したように、推進側のチャンバ11と抵抗側のチャンバ12とで、バイアスコントローラを共通のものとしたが、本実施の形態の場合には、図10に示すように、推進側および抵抗側の双方で、それぞれ個別にバイアスコントローラ34,36を設ける構成の制御手段としたものである。
なお、ピストンの動く方向が逆になると、推進側のコントローラ33,34が抵抗側のコントローラとなり、抵抗側のコントローラ36が推進側のコントローラとなる。
Claims (10)
- シリンダ室にスライド自在に配置されて、前記シリンダ室を第1チャンバと第2チャンバとに仕切るピストンを備えて、前記第1及び第2チャンバ内の気体又は液体の流体に共通するバイアス圧力を変化させて、前記ピストンに生じる前記バイアス圧力による剛性を変化させつつ、前記第1及び第2チャンバ内の気体又は液体の流体の圧力を制御して、前記ピストンのスライド位置を制御するアクチュエータであり、
流体圧源と前記第1及び第2のチャンバとの間に配置されて、前記第1及び第2のチャンバへの流体圧供給を、無段階で調整する第1及び第2の制御バルブと、
前記第1及び第2のチャンバ側から大気または低圧源側に向かう出方向に前記流体を流すことを許容する第1及び第2の排出バルブとを備え、
前記第1及び第2の制御バルブの少なくとも何れか一方の制御を行う制御手段として、
前記ピストンの目標スライド位置と、前記ピストンの検出したスライド位置との偏差が小さくなるようにフィードバック制御を実行する第1の制御手段と、
前記第1及び第2のチャンバへ共通に供給するバイアス圧力を、前記ピストンの目標スライド位置と、前記ピストンの検出したスライド位置との偏差が最小になるようにフィードバック制御を実行する第2の制御手段とを備えるアクチュエータ。 - 前記第2の制御手段では、前記ピストンの目標スライド位置と、前記ピストンの検出したスライド位置との偏差が小さくなるように、微分先行型PD制御による制御手段を備えた請求項1に記載のアクチュエータ。
- 前記目標スライド位置が前記第1及び第2の制御手段に与えられたとき、
前記第1の制御手段では、オーバーシュートが現われる応答性の早いゲインを設定し、
前記第2の制御手段では、前記フィードバック制御を実行する際の比例ゲインを、初期値から徐々に増やして前記オーバーシュートを打ち消すと共に、前記フィードバック制御を実行する際の微分ゲインの増減で調整する請求項1または2に記載のアクチュエータ。 - 前記第2の制御手段で設定される前記微分ゲインの初期値は、前記第2の制御手段で設定される前記比例ゲインの初期値の約1/100とした請求項3に記載のアクチュエータ。
- 前記第1及び第2の制御バルブの何れか一方で、前記第1の制御手段による制御を行い、前記第1及び第2の制御バルブの両方で、前記第2の制御手段による制御を行う請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
- 前記第1及び第2の制御バルブの何れか一方で、前記第1の制御手段による制御と、前記第2の制御手段による制御とを行い、他方の制御バルブで、所定の圧力をチャンバ内に与える制御を行う請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
- 前記第1及び第2の制御バルブの何れか一方で、前記第1の制御手段による制御を行い、
前記第2の制御バルブの制御を実行する際には、それぞれ別々に設定した、前記フィードバック制御用のゲインを用いて制御を行う請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。 - 前記第1の制御手段と前記第2の制御手段を、前記第1の制御バルブ制御用と、前記第2の制御バルブ制御用にそれぞれ別々に設定した、前記フィードバック制御用のゲインを用いて制御を行う請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
- シリンダ室にスライド自在に配置されて、前記シリンダ室を第1チャンバと第2チャンバとに仕切るピストンを備えて、前記第1及び第2チャンバ内の気体又は液体の流体に共通するバイアス圧力を変化させて、前記ピストンに生じる前記バイアス圧力による剛性を変化させつつ、前記第1及び第2チャンバ内の気体又は液体の流体の圧力を制御して、前記ピストンのスライド位置を制御するアクチュエータの制御方法であり、
流体圧源と前記第1及び第2のチャンバとの間に配置されて、前記第1及び第2のチャンバへの流体圧供給を、無段階で調整する第1及び第2の制御バルブと、前記第1及び第2のチャンバ側から大気または低圧源側に向かう出方向に前記流体を流すことを許容する第1及び第2の排出バルブとを備えたアクチュエータの制御方法において、
前記第1及び第2の制御バルブの少なくとも何れか一方の制御として、
前記ピストンの目標スライド位置と、前記ピストンの検出したスライド位置との偏差が小さくなるようにフィードバック制御を実行する第1の制御処理と、
前記第1及び第2のチャンバへ共通に供給するバイアス圧力を、前記ピストンの目標スライド位置と、前記ピストンの検出したスライド位置との偏差が最小になるようにフィードバック制御を実行する第2の制御処理とを行うアクチュエータの制御方法。 - シリンダ室にスライド自在に配置されて、前記シリンダ室を第1チャンバと第2チャンバとに仕切るピストンを備えて、前記第1及び第2チャンバ内の気体又は液体の流体に共通するバイアス圧力を変化させて、前記ピストンに生じる前記バイアス圧力による剛性を変化させつつ、前記第1及び第2チャンバ内の気体又は液体の流体の圧力を制御して、前記ピストンのスライド位置を制御するアクチュエータの制御プログラムであり、
流体圧源と前記第1及び第2のチャンバとの間に配置されて、前記第1及び第2のチャンバへの流体圧供給を、無段階で調整する第1及び第2の制御バルブと、前記第1及び第2のチャンバ側から大気または低圧源側に向かう出方向に前記流体を流すことを許容する第1及び第2の排出バルブとを備えたアクチュエータの制御プログラムにおいて、
前記第1及び第2の制御バルブの少なくとも何れか一方の制御として、
前記ピストンの目標スライド位置と、前記ピストンの検出したスライド位置との偏差が小さくなるようにフィードバック制御を実行する第1の制御処理を行うステップと、
前記第1及び第2のチャンバへ共通に供給するバイアス圧力を、前記ピストンの目標スライド位置と、前記ピストンの検出したスライド位置との偏差が最小になるようにフィードバック制御を実行する第2の制御処理を行うステップとを備えるアクチュエータの制御プログラム。
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