JP5163819B2 - 沈殿槽 - Google Patents

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本発明は、原水を沈降分離処理するための沈殿槽(沈降分離装置)に係り、特に槽体の中央部に原水供給部が設けられ、この原水供給部から下向きないし横向きに原水が槽体内に流出するよう構成された沈殿槽に関する。
沈殿槽として、槽体の中央部のフィードウェルから該槽体内に原水を下向きに流出させ、該槽体上部の溢流部から清澄水を流出させるよう構成したものが周知である(特開平10−43508)。また、このフィードウェルの下端に対峙して水平にプレートを設け、フィードウェルからの流出水の流れ方向を横方向(放射方向)に変更するよう構成することが公知である(特開2005−66533号)。
第3図(a)、(b)は、このようにフィードウェルの下端に対峙して水平なプレートを設けた沈殿槽の一例を示す断面図であり、(a)は槽体内の水温と同程度又はそれよりも低温の原水をフィードウェルに供給した状態を示し、(b)は槽体内の水温よりも高温の原水をフィードウェルに供給した状態を示している。
この従来例に係る沈殿槽10にあっては、槽体11の中央部にフィードウェル12が設置されている。このフィードウェル12は上下両端が開放した円筒状であり、その上端部は槽体11内の水面位よりも上方に突出している。
このフィードウェル12の下端に対峙して、フィードウェル12からの原水の流れ方向を横方向(放射方向)とするためのプレート13が設けられている。このプレート13は水平円板状であり、フィードウェル12の下部に対し連結部材(図示略)を介して連結されている。
このプレート13の中央部には、後述のレーキシャフト21が貫通した開口が設けられている。この開口の内周とレーキシャフト21との間は、ラバーシール(図示略)によって封じられている。
槽体11の底面11aは中央に向って下り勾配となっており、その中央部には、沈降した固形分を集めて排出するためのピット状の排出部14が設けられている。
槽体11の内周壁面の上部に沿って溢流部としてのトラフ(溢流堰)15が設けられている。
槽体底面11aに沿ってレーキ板23を回転させて沈降物(以下、廃泥ということがある。)を排出部14に集めるためのレーキ装置が設けられている。このレーキ装置は、前記フィードウェル12の軸心部分を通って上下方向に延設されたレーキシャフト21と、該レーキシャフト21の下部から放射方向に延設されたレーキアーム22と、該アーム22に取り付けられたレーキ板23と、レーキシャフト21の上端が連なったモータ等の駆動装置20とを有する。
特開平10−43508号公報 特開2005−66533号公報
第3図の沈殿槽10のフィードウェル12に、槽体内の水温と同程度又はそれよりも温度が低い原水を供給した場合は、原水の密度が槽体内の水よりも大きいため、第3図(a)に示すように、フィードウェル12から放射方向に流出した原水が槽体11の底面11aに沈降した廃泥の界面に沿って放射方向に広がり、次いで槽体11の内周壁面に沿って上昇し、その後、槽体11の中央側に戻るという循環流を形成する。この間にSS(懸濁物質)が沈降することにより、水質の良好な処理水がトラフ15に溢出する。なお、原水は槽体11内の水よりもSS濃度が高いために、水温が同程度であっても槽体11内の水よりも密度が高い。
しかしながら、槽体11内の水温よりも温度が高く、密度(比重)が小さい原水をフィードウェル12に供給した場合は、第3図(b)の通り、フィードウェル12から放射方向に流出した原水が水面に向って浮上して放射方向に流れ、トラフ15に到り、その後、槽体11の槽壁に沿って下降し、次いで槽体11の底部の汚泥界面に沿って槽体中央側に戻るという循環流を形成する。このような流れの場合、フィードウェル12から流出した原水がそのまま上昇して放射方向に流れ、SSを多く含んだ状態でトラフ15に到達するため、SSがトラフ15に溢出し、処理水の水質が低下する。
本発明は、このような問題点を解決し、溢流部からの処理水の水質が良好なものとなる沈殿槽を提供することを目的とする。
本発明の沈殿槽は、槽体と、該槽体の中央部に設けられた原水供給部と、該槽体の壁面の上部に設けられた溢流部とを有し、該原水供給部は、原水を下向きに流出させるフィードウェルと、該フィードウェルの下端に対峙して設けられており、該フィードウェルからの原水の流水方向を横方向とするためのプレート(13)を備えている沈殿槽において、該原水供給部と溢流部との間に、板面を上下方向としたプレートよりなり、槽体内を周回するアッパーバッフルが設けられており、該アッパーバッフルの上端が槽体内の水面付近又はそれよりも上位に位置しており、該アッパーバッフルの下端と槽体の底面との間に通水間隙があいている沈殿槽であって、該アッパーバッフルの下端は前記プレート(13)よりも下位に位置しており、前記槽体の中央から放射方向に延在するレーキアームと、該レーキアームに取り付けられたレーキ板とを備えた回転式レーキが設けられており、前記アッパーバッフルの下端からレーキアーム上端までの垂直距離は、該槽体の平均水深の5〜30%であり、前記プレート(13)の外周から前記アッパーバッフルまでの水平距離が、槽体の半径の60〜80%であることを特徴とするものである。
本発明の沈殿槽にあっては、原水供給部と溢流部との間にアッパーバッフルを設けている。原水供給部から槽体内の水温よりも温度が高く、密度(比重)が小さい原水(例えば生物処理水)が流出した場合、この原水は槽体内の水面側に上昇しつつ放射方向へ流れ、アッパーバッフルに当って下向きに流れ、次いで汚泥界面に沿って槽体中央側に戻るように流れる。アッパーバッフルの内側領域にこのような循環流が形成されることにより、原水供給部から流出した原水が短絡的に溢流部に到達することが防止される。これにより、SSが十分に沈降分離されるようになり、処理水の水質が向上する。
実施の形態に係る沈殿槽の構成図である。 図1の沈殿槽の断面図である。 従来例に係る沈殿槽の断面図である。 別の実施の形態に係る沈殿槽の構成図である。
以下、本発明の好ましい形態について説明する。第4図(a)は実施の形態に係る沈殿槽の平面図、第4図(b),(c)はその縦断面図である。なお、第4図(b)は高温原水供給時の槽体内の流れ状況を示しており、第4図(c)は槽体11内の水温と同程度以下の温度の原水を供給したときの槽体内の流れ状況を示している。
この実施の形態に係る沈殿槽10Aは、平面視形状が方形である。この沈殿槽10Aにおいても、第3図の沈殿槽10と同様に、槽体11の中央部にフィードウェル12が設置されている。このフィードウェル12は上下両端が開放した円筒状であり、その上端部は槽体11内の水面位よりも上方に突出している。
第3図と同じく、このフィードウェル12の下端に対峙して、フィードウェル12からの原水の流れ方向を横方向(放射方向)とするためのプレート13が設けられている。このプレート13は水平円板状であり、フィードウェル12の下部に対し連結部材を介して連結されている。このプレート13の中央部には、レーキシャフト21が貫通した開口が設けられている。この開口の内周とレーキシャフト21との間は、ラバーシールによって封じられている。
槽体11の底面11aの中央部には、ピット状の排出部14が設けられている。槽体11の内周壁面の上部に沿って溢流部としてのトラフ(溢流堰)15が設けられている。
槽体底部のレーキ装置は、フィードウェル12の軸心部分を通って上下方向に延設されたレーキシャフト21と、該レーキシャフト21の下部から放射方向に延設されたレーキアーム22と、該アーム22に取り付けられたレーキ板23と、レーキシャフト21の上端が連なったモータ等の駆動装置20とを有する。
以上の構成は、前記第3図の構成と同一である。
第4図(a)の通り、各アーム22はシャフト21から放射4方向に延在している。レーキ板23は、レーキが回転したときに、槽体底面11a上の堆積物を槽体底面11aの中央側へ移動させるように各アーム22の長手方向と斜交方向に配設されている。
この実施の形態では、フィードウェル12と槽体11の壁面との間にアッパーバッフル30が設けられている。この実施の形態では、アッパーバッフル30は板面を上下方向(この実施の形態では鉛直方向)としたプレートよりなり、槽体11の壁面から所定距離だけ離隔して該壁面に沿って延在している。アッパーバッフル30は槽体11の全周にわたって延在している。アッパーバッフル30の上端は槽体11内の水面よりも上方に突出している。アッパーバッフル30の下端はレーキアーム22より所定距離上方に位置しており、アッパーバッフル30の下側には、アッパーバッフル30の内側の水がアッパーバッフルの外側へ通過するスペース(通水間隙)があいている。
このように構成された沈殿槽10Aのフィードウェル12に、槽体11内の水温よりも高温の原水を供給し、原水をフィードウェル12とプレート13との間から放射方向に流出させた場合、この原水は温度が高く比重が小さいことにより、第4図(b)の通り、槽体11内を上昇しつつ放射方向に流れ、やがてアッパーバッフル30に当たり、アッパーバッフル30に沿って下向きに流れ、次いで槽体11の底部に至って流れ方向を求心方向(槽体11の中央部に向かう方向)に変える循環流を形成する。
この循環の途中で一部の水がアッパーバッフル30の下側を通ってアッパーバッフル30と槽体11の内周壁との間に流出し、その後、トラフ15へ流出して処理水(清澄水)となる。
この処理水は、槽体内に十分な時間滞留してその間にSSが沈降分離されたものであり、処理水の水質が良好である。
この沈殿槽10Aのフィードウェル12内に槽体内の水温と同程度又はそれよりも低温度の原水が供給された場合の作動を第4図(c)に示す。
この場合、原水は、槽体内の水よりも密度(比重)が大きいために、フィードウェル12から放射方向に流出した後、槽体底面11aの沈降廃泥の界面(上面)に沿って放射方向に流れ、アッパーバッフル30の下側を通ってそのままアッパーバッフル30と槽体11の内周壁との間に流出し、その結果として、SSの沈降分離が必ずしも十分でないままトラフ15へ流出し、処理水水質が低下するおそれがある。
このような槽内水よりも高密度の原水流入時の処理水水質低下を防止するようにしたのが第1図及び第2図に示す実施の形態に係る沈殿槽10Bである。
この沈殿槽10Bは、フィードウェル12とアッパーバッフル30との間の槽体内の下部にロワーバッフル40を設けたものである。このロワーバッフル40は、板面を上下方向(この実施の形態では鉛直)とした板材よりなり、フィードウェル12を取り巻いている。
この実施の形態では、ロワーバッフル40は円筒形であり、フィードウェル12と同軸状に配置されている。このロワーバッフル40はレーキアーム22の上側に取り付けられ、レーキと一体となって回転するよう構成されている。ただし、支持ブラケットを用いてフィードウェル12、アッパーバッフル30又は槽体11に支持させてもよい。
この沈殿槽10Bのその他の構成は、第4図の沈殿槽10Aと同一であり、同一符号は同一部分を示している。
このようにロワーバッフル40を設けた沈殿槽10Bにあっては、フィードウェル12に温度が槽体11内の水温と同等以下の原水を供給した場合、この原水は、第1図(b)の通り、放射方向に流出して槽体底面11a上の汚泥界面に沿ってさらに放射方向に流れた後、ロワーバッフル40に当って流れ方向を上向きとし、次いでアッパーバッフル30に当って該アッパーバッフル30の内面に沿って上昇し、水面付近に至ってフィードウェル12に向かう方向(槽体11の求心方向)に流れ、槽体11の中央部で下降するという循環流を形成する。この循環している水の一部がアッパーバッフル30の下側を通過してアッパーバッフル30と槽体11の内周壁との間に流れ込み、その後、トラフ15へ流出して処理水となる。この処理水は、アッパーバッフル30よりも内側で循環し、その間にSSが十分に沈降分離したものであるため、水質が良好である。
また、この第1図〜第2図の沈殿槽10Bにあっては、ロワーバッフル40が槽体11内の下部にのみ比較的低い高さにて配置されているため、槽体11内の水温よりも高温度で低密度の原水をフィードウェル12に供給した場合でも、前記第4図(b)に示したものと同様の循環流がアッパーバッフル30の内側領域に形成され、良好な水質の処理水が得られる。
上記の実施の形態では、槽体11、アッパーバッフル30は平面視形状が方形であるが、円形、楕円形、多角形などであってもよい。槽体11とアッパーバッフル30とは形状が異なってもよい。例えば、槽体11が方形であり、アッパーバッフル30が円形であってもよい。
上記実施の形態のロワーバッフル40は、円形であるところから、フィードウェル12からの水平距離が周方向において均等であり、ロワーバッフル40の作用が周方向において均等である。また、レーキと共に回転しても槽体内の循環水流に旋回方向の影響を与えることが少ない。ただし、ロワーバッフルを方形や多角形としてもよい。この場合、ロワーバッフルをレーキと共に回転させてもよい。レーキと共に回転させることにより、フィードウェル12からロワーバッフルまでの水平距離が周方向において均等化されるようになる。
ロワーバッフルをフィードウェル12やアッパーバッフル30に支持させる固定式とする場合、ロワーバッフルは平面視形状が円形、方形、多角形などのいずれであってもよい。ただし、フィードウェル12からの距離が周方向において均等であるところから、固定式の場合も円環形のロワーバッフルとすることが好ましい。
次に、アッパーバッフル30及びロワーバッフル40の位置、高さの好適な範囲について第2図を参照して説明する。なお、上記実施の形態ではアッパーバッフル30及び槽体11は方形であるため、フィードウェル12及びロワーバッフル40とそれらとの距離については、最短距離と最長距離との平均値をいうものとする。例えば、一辺の長さがaの正方形の槽体11の半径Rは、正方形の重心から一頂点までの距離(20.5/2)・aと重心から一辺までの距離a/2との平均値{(20.5+1)/4}・aによって算出される。
また、槽体底面11aからの高さについては、槽体底面11aのレベルの平均値(平均水深Wとなる箇所のレベル)からの高さをいうものとする。
ロワーバッフル40の下端は、レーキアーム22の上面と略同等(例えば、レーキアーム22の上面から−10cm〜+10cmの範囲)に位置することが好ましい。
この理由は次の(1),(2)の通りである。
(1) 槽体11の底面11aに沈降し、該底面11aに沿って排出部14へ向う廃泥の流れを妨げない。
(2) 原水中のSS濃度は、濃縮汚泥よりも濃度が低く、処理水よりも濃度が高い。このため、槽内水と同程度の温度以下の原水は濃縮汚泥界面を滑るように流れることになる。レーキアーム22はレーキ板23のすぐ上に位置することが多いため、レーキアーム22の高さに合せてロワーバッフル40を設置することにより、この原水の流れを効果的に上向きに変更することができる。
ロワーバッフル40の上端の高さは、原水供給部の下端としてのプレート13の高さHよりも低いことが好ましい。ロワーバッフル40の上端とプレート13の高低差hは、プレート13からレーキアーム22の上端までの垂直距離Hの10〜50%であることが好ましい。ここで、レーキアーム22の上端とは、レーキアーム22が回転した際の軌跡において最も高い位置を指す。
この円形のプレート13の外周からロワーバッフル40までの水平距離Lは、プレート13の外周からアッパーバッフル30までの水平距離(L+L)の50〜90%、特に60〜80%程度が好ましい。プレート13の外周からアッパーバッフル30までの水平距離(L+L)は、槽体11の半径Rの60〜80%、特に65〜75%程度が好ましい。
アッパーバッフル30の下端はロワーバッフル40の上端と同レベル又はそれよりも下位に位置することが好ましい。アッパーバッフル30の下端とロワーバッフル40の上端との高低差hは、ロワーバッフル40の垂直長さの0〜80%、特に10〜50%程度が好ましい。
アッパーバッフル30の下端からのレーキアーム22の上端までの垂直距離Hは、平均水深Wの5〜30%、特に10〜20%程度が好ましい。
アッパーバッフル30の上端は、槽体11内の水面よりも突出していることが好ましいが、水面と同一レベルであってもよい。
アッパーバッフル30は、全体が鉛直であってもよいが、アッパーバッフル30の下部が下端側ほど槽体中央側となるように傾斜していてもよい。また、アッパーバッフル30の上部が、上端側ほど槽体中央側となるように傾斜していてもよい。
アッパーバッフル30と槽体11の内周壁との水平距離Lは、槽体11の半径Rの20〜40%、特に25〜35%程度が好ましい。
上記実施の形態では、フィードウェル12の下端に対面させてプレート13を設け、原水をフィードウェル12の下端から放射方向(横方向)に流出させているが、プレート13を陣笠状とし、原水を斜め下方に流出させてもよい。また、プレート13を省略し、原水を下方に流出させてもよい。
10,10A,10B 沈殿槽
11 槽体
11a 槽体底面
12 フィードウェル
13 プレート
14 排出部
15 トラフ(溢流部)
22 レーキアーム
23 レーキ板
30 アッパーバッフル
40 ロワーバッフル

Claims (2)

  1. 槽体と、該槽体の中央部に設けられた原水供給部と、該槽体の壁面の上部に設けられた溢流部とを有し、
    該原水供給部は、原水を下向きに流出させるフィードウェルと、該フィードウェルの下端に対峙して設けられており、該フィードウェルからの原水の流水方向を横方向とするためのプレート(13)を備えている沈殿槽において、
    該原水供給部と溢流部との間に、板面を上下方向としたプレートよりなり、槽体内を周回するアッパーバッフルが設けられており、
    該アッパーバッフルの上端が槽体内の水面付近又はそれよりも上位に位置しており、
    該アッパーバッフルの下端と槽体の底面との間に通水間隙があいている沈殿槽であって、
    該アッパーバッフルの下端は前記プレート(13)よりも下位に位置しており、
    前記槽体の中央から放射方向に延在するレーキアームと、該レーキアームに取り付けられたレーキ板とを備えた回転式レーキが設けられており、
    前記アッパーバッフルの下端からレーキアーム上端までの垂直距離は、該槽体の平均水深の5〜30%であり、
    前記プレート(13)の外周から前記アッパーバッフルまでの水平距離が、槽体の半径の60〜80%であることを特徴とする沈殿槽。
  2. 請求項1において、前記アッパーバッフルと前記槽体の内周壁との水平距離は、槽体の半径の20〜35%であることを特徴とする沈殿槽。
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