以下、本発明に係るコンプレッサの一例であるエアコンプレッサについて、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係るエアコンプレッサの概略構成を示したブロック図である。エアコンプレッサ1は、タンク部2と、モータ部(モータ手段)3と、圧縮空気生成部(第1圧縮空気生成手段、第2圧縮空気生成手段)4と、制御回路部(回転駆動量制御手段)5とによって概略構成されている。
タンク部2は、圧縮空気を貯留するための貯留タンク8を有している。貯留タンク8には、圧縮空気生成部4により生成された一定圧力の圧縮空気が蓄えられており、通常3.5MPa〜4.3MPa程度の圧力に維持されている。
貯留タンク8には、複数の圧縮空気取出口9が設けられている。本実施の形態に係るエアコンプレッサ1には、高圧の圧縮空気を取り出すための高圧取出口9aと、常圧の圧縮空気を取り出すための常圧取出口9bとが設けられており、高圧取出口9aでは、減圧弁10aによって取り出される圧縮空気の圧力が1.5MPa〜2.50MPa程度に減圧され、常圧取出口9bでは、減圧弁10bによって取り出される圧縮空気の圧力が0.7MPa〜1.5MPa程度に減圧される。また、各取出口9a、9bには、減圧弁10a、10bにより減圧された圧縮空気を釘打機等の駆動工具に供給するために、エアホース(図示省略)を着脱することが可能となっている。
また、貯留タンク8には貯留タンク8内の圧力を検出するための圧力センサ(圧力状態検出手段)12が設けられている。圧力センサ12は、貯留タンク8内の圧力変化を内部の感圧素子によって電気信号に変換する機能を有しており、検出した電気信号は制御回路部5に伝達される。
モータ部3は、圧縮空気生成部4のピストンを往復運動させるための駆動力を発生させる役割を有している。モータ部3には、駆動力を発生させるためのステータ16とロータ17とが設けられている。ステータ16には、U相、V相、W相の巻線が形成されており、これらの巻線に対して電流を流すことによって回転磁界が形成される。ロータ17は、永久磁石によって構成されており、ステータ16の巻線を流れる電流によって形成される回転磁界により、ロータ17の回転が行われる。
圧縮空気生成部4は、ピストンおよびシリンダにより概略構成される空気圧縮機構部13を有しており、シリンダ内に設けられるピストンを往復運動させ、シリンダの吸気弁からシリンダ内に引き込まれた空気を圧縮することによって圧縮空気を生成する構造となっている。
一般的な圧縮空気生成部(本実施の形態に係る圧縮空気生成部4を含む)では、図2に示すように、ピストンおよびシリンダによって概略構成される空気圧縮機構部13が2つ設けられている。一方の空気圧縮機構部13をなす第1空気圧縮機構部(第1圧縮空気生成手段)13aは、シリンダ径が60mmでありストロークが25mmに規定された第1シリンダ14aおよび第1ピストン15aによって構成され、他方の空気圧縮機構部13をなす第2空気圧縮機構部(第2圧縮空気生成手段)13bは、シリンダ径が40mmでありストロークが10mmに規定された第2シリンダ14bおよび第2ピストン15bによって構成されている。
また、モータ部3は、図2に示すように圧縮空気生成部4に隣接して設けられており、モータ部3のロータ17が上述したように回転すると、モータ部3の回転軸19が回転される構造となっている。モータ部3の回転軸19は、回転軸用ベアリング20a、20bにより回転可能に支持されており、回転軸19には、第1ピストン15aの連接棒21aが軸受部(クランク用ベアリング)22aを介して連結され、また、第2ピストン15bの連接棒21bが軸受部(クランク用ベアリング)22bを介して連結されている。さらに、回転軸19の端部には、外気を導入するためのファン23が設置されている。
モータ部3の回転軸19が回転を開始すると、第1空気圧縮機構部13aの第1ピストン15aが、回転軸19の回転に伴って第1シリンダ14a内を進退動(ピストン運動)し、第1シリンダ14a内の空気の圧縮を行い、また、第2空気圧縮機構部13bの第2ピストン15bが、回転軸19の回転に伴って第2シリンダ14b内を進退動(ピストン運動)し、第2シリンダ14b内の空気の圧縮を行う。
ここで、第1空気圧縮機構部13aの第1シリンダ14aは、シリンダ径が60mm、ストロークが25mmに規定されているのに対して、第2空気圧縮機構部13bの第1ピストン15aは、シリンダ径が40mm、ストロークが10mmに規定されており、第1空気圧縮機構部13aにおいて圧縮される空気の圧力状態と、第2空気圧縮機構部13bにおいて圧縮される空気の圧縮状態は異なったものとなる。このため、エアコンプレッサ1の圧縮空気生成部4では、第1空気圧縮機構部13aにおいて空気を圧縮した後に、第1空気圧縮機構部13aにおいて圧縮された空気を、さらに第2空気圧縮機構部13bで高圧にする圧縮処理を行うことによって、効率的にタンク部2内の圧力制御を行うことが可能となっている。
なお、上述したように、第1シリンダ14aと第2シリンダ14bとは、シリンダ径およびストロークが異なっており、第1ピストン15aおよび第2ピストン15bのそれぞれに加えられるピストン荷重も異なった値となる。図3は、第1空気圧縮機構部13aと第2空気圧縮機構部13bとに関するピストン荷重の荷重値変化(荷重値変化状態)を、タンク部2内の圧力変化に応じて示した図である。
図3に示すように、貯留タンク8内の圧力値が低い場合(例えば、0MPa〜0.6MPa程度まで)には、第1空気圧縮機構部13aに対して積極的な荷重が加えられてタンク部2内の圧力が上昇するが、第1空気圧縮機構部13aに加えられる荷重は、第1空気圧縮機構部13aの能力により所定値(本実施の形態では、約160kgf程度)で頭打ち状態となる。
第1空気圧縮機構部13aの荷重が所定値に達した後には、第1空気圧縮機構部13aにおいて圧縮された空気を第2空気圧縮機構部13bで圧縮することにより、タンク部2内の圧力が高められることになる。このため、第2空気圧縮機構部13bに付加される荷重は、第1空気圧縮機構部13aに比べて緩やかに増加し、第1空気圧縮機構部13aの所定値(約160kgf)を超えて、タンク部2内の圧力上昇に比例して上昇することになる。
第2空気圧縮機構部13bにおいて圧縮された空気は、連結パイプ14(図1参照)を介してタンク部2の貯留タンク8へと供給される。
制御回路部5は、図4に示すように、マイクロプロセッサ(MPU:Micro Processing Unit)25と、コンバータ回路26と、インバータ回路27とによって概略構成されている。
コンバータ回路26は、整流回路28と昇圧回路29と平滑回路30とにより概略構成されており、このコンバータ回路26によっていわゆるPAM制御が実行される。ここで、PAM制御とは、コンバータ回路26によって出力電圧のパルスの高さを変化させることにより、モータ部3の回転数を制御する方法である。一方で、インバータ回路27では、いわゆるPWM制御が実行される。PWM制御とは、出力電圧のパルス幅を変化させてモータ部3の回転数を制御させる方法である。マイクロプロセッサ25は、エアコンプレッサ1の運転状態に応じて、コンバータ回路26によるPAM制御とインバータ回路27によるPWM制御とを好適に切り替えて制御を実行する。
コンバータ回路26の整流回路28および平滑回路30は、エアコンプレッサ1の駆動源となる交流電源31を整流・平滑することによって直流電圧に変換する役割を有している。昇圧回路29の内部には、スイッチング素子29aが設けられており、マイクロプロセッサ25の制御命令に応じて直流電圧の振幅制御を行う役割を有している。昇圧回路29は、マイクロプロセッサ25のPAM命令を受けた昇圧コントローラ32を介して制御されている。
インバータ回路27は、コンバータ回路26によって変換された直流電圧のパルスを一定周期で正負変換させるとともに、パルス幅を変換させることによって直流電圧を擬似的な正弦波を備える交流電圧に変換する役割を有している。このパルス幅を調整することによって、上述したようにモータ部3の回転数制御を行うことが可能となる。マイクロプロセッサ25は、インバータ回路27に対する出力値の調整を行うことによって、モータ部3の駆動量を制御する。
マイクロプロセッサ25は、コンバータ回路26およびインバータ回路27の駆動制御を行うことによって、タンク部2の圧縮空気の圧力を安定させるための制御手段である。マイクロプロセッサ25は、演算処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)、ワークメモリ等の一時記憶領域として利用されるRAM(Random Access Memory)、後述する制御処理プログラム等(図7に示す処理内容のプログラムなど)が記録されるROM(Read Only Memory)等の機能が、1チップのLSIにより実現されたものである。
マイクロプロセッサ25には、タンク部2の圧力センサ12において検出された圧力値情報が入力される。また、マイクロプロセッサ25は、制御情報(PAM命令、PWM命令)をコンバータ回路26およびインバータ回路27に対して出力することが可能な構成となっている。
コンバータ回路26およびインバータ回路27では、マイクロプロセッサ25によって出力された制御情報に基づいて、モータ部3の駆動制御を実行する。具体的に、マイクロプロセッサ25は、昇圧コントローラ32にPAM命令を出力することによって、昇圧コントローラ32を介して昇圧回路29のスイッチング素子29aを制御して、コンバータ回路26の駆動制御を行う。また、同様に、マイクロプロセッサ25は、インバータ回路27に対してPWM命令を出力することによってインバータ回路27の制御を行う。
次に、モータ部3の回転数に応じて求められるエアコンプレッサ1の駆動音の音圧変化について説明する。
図5は、モータ部3の回転数が1000rpm、1100rpm、1200rpm、1300rpm、1400rpm、1500rpm、1600rpm、1700rpmおよび1800rpmの場合におけるエアコンプレッサ1の駆動音の音圧と、通常モード用の回転数でモータ部3を駆動させた場合におけるエアコンプレッサ1の駆動音の音圧との変化を、タンク部2の圧力値に応じて示した図である。
なお、モータ部3における回転数が1800rpmに維持された状態は、エアコンプレッサ1の静音モードでの駆動状態に該当する。また、図5は、駆動電圧が100Vに設定・維持された状態であって、モータ部3のファン23側の位置で駆動音の音圧測定を行った場合のデータを示している。
図5に示すように、1000rpmから1800rpmまでのそれぞれの回転数でモータ部3を駆動させたときの方が、通常モードでモータ部3を駆動されるときに比べて、音圧が低減されている。また、タンク部2内の圧力値が1.5MPa程度に達するまでの間では、1000rpmから1800rpmまでの全ての回転数において、駆動音の音圧変化が緩やか(変化が少ない状態)になっている。
しかしながら、タンク部2内の圧力値が1.5MPaから2.5MPaまで増加するときにおいて、回転数が1600rpm〜1800rpmに設定された場合には、それまで(1.5MPa程度に達するまで)の駆動音の音圧増加傾向に比べて、急激に音圧が上昇している。そして、タンク部2内の圧力値が2.5MPaを超えた当たりから、回転数が1600rpm〜1800rpmに設定されたモータ部3では、音圧が維持又は僅かに低減される傾向を示している。
一方で、回転数が1500rpm以下に設定され場合には、図5に示すように、タンク部2内の圧力値に拘わらず(1.5MPaから2.5MPaまでの状況においても)緩やかに駆動音の音圧が増加する傾向が示されており、回転数が1600rpm以上に設定された場合のように駆動音の音圧が急激に上昇する状況には陥らない。
このため、従来の静音モード(モータ部3の回転数が約1800rpm)を用いても比較的駆動音が大きくなる傾向があった1.5MPa以上の圧力値の範囲において、急激な駆動音の上昇が発生しない回転数までモータ部3の回転を低減させることが、駆動音の音圧低減に対して効果的であるといえる。具体的には、図5に示したように、急激な駆動音の上昇が発生しない回転数であって、そのうちで最も高い回転数を示す1500rpmまで、モータ部3の回転数を低減させることによって、駆動音の音圧低減を図ることが可能になると判断することができる。
また、タンク部2内の圧力値が1.5MPaになるまでの間では、1000rpmから1700rpmまでの全ての回転数において、駆動音が、タンク部2内の圧力値に比例して緩やかに増加する傾向を示している。このような緩やかな増加を考慮すると、モータ部3の回転数を1500rpmよりも高い回転数に設定することにより、タンク部2内の圧力値が変動しても駆動音の音圧変動が生じにくくなり、聴覚上の駆動音変化を低減させることが可能となる。
図6は、モータ部3の回転数が1500rpm、1800rpm、1900rpm、2000rpm、2100rpmおよび2200rpmの場合におけるエアコンプレッサ1の駆動音の音圧の変化を、タンク部2の圧力値に応じて示した図である。なお、図6も図5と同様に、駆動電圧が100Vに設定・維持された状態であって、モータ部3のファン23側の位置で駆動音の音圧測定を行った場合のデータを示している。
図6より明らかなように、1800rpmから2200rpmまでの回転数が別々に設定されたモータ部3では、図5と同様に、タンク部2内の圧力値が1.5MPaから2.5MPaまで増加する状況において、それまで(1.5MPa程度以下の)の音圧の増加傾向に比べて、急激に音圧が上昇する傾向が示されている。なお、図6に示すように、回転数が1500rpmのモータ部3では、1800rpm以上のモータ部3に比べて、駆動音の音圧が比較的低減された状態を維持している。
一方で、タンク部2内の圧力値が1.5MPaに達するまでの間、1500rpm、1800rpm、1900rpmの回転数に設定される各モータ部3の音圧は、比較的近似した音圧値を示している。従って、タンク部2内の圧力値が1.5MPaに達するまでの間は、静音モードにおけるモータ部3の回転数1800rpmを1500rpm等に下げても、音圧の低減効果を積極的に得ることができず、反対に、1900rpmまで回転数を上昇させても、駆動音が著しく増大することがない。
特に、タンク部2内の圧力値が1.5MPaに達するまでの間のエアコンプレッサ1の駆動音の音圧は、タンク部2内の圧力値が2.5MPa以上の場合においてモータ部3の回転数を1500rpmに設定する場合のエアコンプレッサ1の駆動音の音圧と同程度に維持されることが好ましい。このように、タンク部2内の圧力値が1.5MPaに達するまでの間の駆動音の音圧と、タンク部2内の圧力値が2.5MPa以上の場合における駆動音の音圧と同程度に維持されることにより、モータ部の回転駆動量を低減させた前後における駆動音の音圧変化を、作業者などに意識させ難くすることができる。このため、音圧変化などにより作業者が駆動音を意識してしまうことを低減することができ、駆動音を聞いた作業者がうるさいと感じてしまうことを抑制することが可能となる。
これらの点を考慮し、また、タンク部2の性能維持・向上のことを考慮して、タンク部2内の圧力値が1.5MPaに達するまでの間のモータ部3の回転数を決定すると、回転数を1900rpmに設定することが好ましいと判断することができる。
このように、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1において、タンク部2の圧力値に応じて変化するエアコンプレッサ1の駆動音状態をモータ部3の回転数毎に求めると、タンク部2の内圧が約1.5MPaから約2.5MPaまで一時的に増大する傾向が存在する。この理由として、互いに対向するようにして水平に設置される第1空気圧縮機構部13aの圧縮運動と第2空気圧縮機構部13bの圧縮運動とが互いに影響を及ぼして振動等が発生することが原因と考えられる。
一般的なコンプレッサは、上述したような水平対向に配置された2気筒の空気圧縮機構部を備えている。この2つの空気圧縮機構部は、それぞれタンク部2内の圧力を効率的に低減させるために、一方の空気圧縮機構部において一定値まで外気の圧力を低減し、その後、他方の空気圧縮機構部において、一方の空気圧縮機構部により圧縮された空気をさらに圧縮することにより、タンク部2内の圧力を所望の圧力値に高めて維持することになる。
本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、初めに外気の圧縮を行う第1空気圧縮機構部13aの方が、第1空気圧縮機構部13aにより圧縮された空気をさらに圧縮処理する第2空気圧縮機構部13bよりもシリンダ径およびストローク量が大きく、第1空気圧縮機構部13aと第2空気圧縮機構部13bとはその圧縮性能(圧縮能力)が異なっている。この性能差を一例として示した図が、上述した図3である。
図3に示すように、タンク部2内の圧力を上昇させる場合において、第1空気圧縮機構部13aにおけるピストン荷重の荷重値変化と、第2空気圧縮機構部13bにおけるピストン荷重の荷重値変化とはそれぞれ異なっている。それぞれの空気圧縮機構部におけるピストン荷重の荷重値に着目すると、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1の第1空気圧縮機構部13aと第2空気圧縮機構部13bとでは、エアコンプレッサ1の起動直後に第1空気圧縮機構部13aのピストン荷重の荷重値が、第2空気圧縮機構部13bよりも急激に上昇し、タンク部2内の内圧が0.6MPaに達する頃に、荷重値が約160kgfに達して頭打ち状態(約160kgfを維持する状態)となる。
一方で、第2空気圧縮機構部13bに関しては、第1空気圧縮機構部13aの荷重値の上昇よりも緩やかにピストン荷重の荷重値が上昇する。本実施形態に係るエアコンプレッサ1の第2空気圧縮機構部13bは、タンク部2内の圧力上昇に応じて、ピストン荷重が上昇する傾向を示している。この第1空気圧縮機構部13aの荷重値上昇特性(荷重値変化状態)と、第2空気圧縮機構部13bの荷重値上昇特性との相違により、エアコンプレッサ1では、エアコンプレッサ1の起動時においては、第1空気圧縮機構部13aにおける圧縮処理を急速に実行し、ある程度、タンク部2内の内圧が上昇した状態において、圧縮処理の主体を第1空気圧縮機構部13aから第2空気圧縮機構部13bへと移行することにより、その後のタンク部2内の内圧上昇を円滑に行う構成となっている。
この第1空気圧縮機構部13aと第2空気圧縮機構部13bとのピストン荷重の変化において、それぞれの荷重値が一致するときのタンク部2の圧力値が、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、1.5MPaであり、この圧力値の前後の値(例えば、1.0MPa〜2.0MPa)が、モータ部3の音圧が上昇し始めるタンク部2内の圧力値の所定範囲に該当する。
これは、第1空気圧縮機構部13aと第2空気圧縮機構部13bとのピストン荷重の荷重値が一致する状態において、第1空気圧縮機構部13aのピストン運動と第2空気圧縮機構部13bのピストン運動とが影響しあって、モータ部3、第1空気圧縮機構部13aおよび第2空気圧縮機構部13bを支持するベアリングや支持部材などの隙間の影響が最大となり、振動などが大きくなるためであると判断できる。このため、このピストン運動による影響が生じうるタンク部2内の圧力値において、エアコンプレッサ1の駆動音が顕在化される傾向があると判断することができる。
従って、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、制御回路部5において、第1空気圧縮機構部13aのピストン荷重と第2空気圧縮機構部13bのピストン荷重とが一致するタンク部2内の内圧を予め求めて、このタンク部2の圧力値に基づいて、モータ部3の回転状態を変更させる制御を行うことにより、エアコンプレッサ1の駆動音の低減を図る処理を行う。
図7は、制御回路部5のマイクロプロセッサ25における処理を示したフローチャートである。マイクロプロセッサ25は、ROM等に記録される制御プログラムに従って、図7に示すフローチャートの処理を実行する。
マイクロプロセッサ25は、まず、モータ部3の回転数を1900rpmに設定し(ステップS.1)、設定された回転数でロータ17が回転されるように、モータ部3の駆動制御を行う(ステップS.2)。具体的に、マイクロプロセッサ25は、モータ部3におけるロータ17の回転が設定された回転数(例えば1900rpm)となるように、昇圧コントローラ32にPAM命令を出力し、インバータ回路27にPWM命令を出力して、モータ部3のロータ17の回転状態を1900rpmに制御する。
続いて、マイクロプロセッサ25は、圧力センサ12を介してタンク部2内の圧力値を取得する(ステップS.3)。そして、マイクロプロセッサ25は、タンク部2内の圧力値が1.5MPaより大きい値であるか否かを判断する(ステップS.4)。タンク部2内の圧力値が1.5MPaより大きい値でない場合(つまり、0Pa以上であって、1.5MPa以下である場合、ステップS.4においてNoの場合)、マイクロプロセッサ25は、モータ部3の回転数を1900rpmに維持して(ステップS.1)モータ部3の駆動制御を行い(ステップS.2)、再度、タンク部2内の圧力値を取得して(ステップS.3)、タンク部2内の圧力値が1.5MPaより大きい値であるか否かを判断する(ステップS.4)。
タンク部2内の圧力値が1.5MPaより大きい値である場合(ステップS.4においてYesの場合)、マイクロプロセッサ25は、タンク部2内の圧力値が2.5MPaより小さい値であるか否かを判断する(ステップS.5)。タンク部2内の圧力値が2.5MPaより小さい値でない場合(つまり、2.5MPa以上である場合、ステップS.5においてNoの場合)、マイクロプロセッサ25は、モータ部3の回転数を1500rpmに設定する(ステップS.6)。そして、マイクロプロセッサ25は、モータ部3の回転数が1500rpmになるように、モータ部3の駆動制御を行う(ステップS.2)。そして、マイクロプロセッサ25は、上述したように、タンク部2内の圧力値を取得して(ステップS.3)、タンク部2内の圧力値が1.5MPaより大きい値であるか否かの判断を繰り返し実行する(ステップS.4)。
一方で、タンク部2内の圧力値が2.5MPaより小さい値の場合(つまり、タンク部2内の圧力値が、1.5MPaより大きい値であり、かつ、2.5MPaより小さい値の場合、ステップS.5においてYesの場合)、マイクロプロセッサ25は、モータ部3の回転数をタンク部2内の圧力値に応じて設定する(ステップS.7)。
具体的に、マイクロプロセッサ25は、タンク部2内の圧力値が1.5MPaである場合には、モータ部3の回転数が1900rpmとなり、その後タンク部2内の圧力値が上昇するに従って線形的にモータ部3の回転数を低減させて、タンク部2内の圧力値が2.5MPaとなる場合に、モータ部3の回転数が1500rpmとなるように、モータ部3における回転数を設定する。つまり、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、モータ部3の回転数がタンク部2内の内圧に応じて線形的に低減される構成となっている。タンク部2内の圧力値に対応するモータ部3の回転数は、マイクロプロセッサ25のROM等に予めテーブルデータとして記憶されるものであってもよく、また、マイクロプロセッサ25がタンク部2内の圧力値に基づいて算出するものであってもよい。
また、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、タンク部2内の圧力値が1.5MPaである場合には、モータ部3の回転数を1900rpmに設定し、タンク部2内の圧力値が2.5MPaとなる場合には、モータ部3の回転数を1500rpmに設定することにより、モータ部3における回転数を線形的に決定する方法を採用するが、モータ部3の回転数を1500rpmに設定変更するタンク部2内の圧力値は、必ずしも2.5MPaに限定されるものでなく、2.0MPaであってもよく、2.25MPaであってもよい。このようなタンク部2内における圧力値は、第1空気圧縮機構部13aおよび第2空気圧縮機構部13bにおけるシリンダ径やストローク量により好適に変更することができる。
図8は、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1において、モータ部3の回転数が1500rpmに達するタンク部2内の圧力値を2.0MPaに設定する場合と、2.25MPaに設定する場合と、2.5MPaに設定する場合とを比較して駆動音の変化状態を示した図である。なお、図8は、タンク部2内に圧縮空気を充填する処理におけるモータ部3の音圧をファン23側で測定した値を示したグラフである。
本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、図8に示すように、タンク部2内の圧力値を2.5MPaに設定する場合が最も駆動音の音圧変化が小さくなるため、モータ部3の回転数を1500rpmに低減させる場合のタンク部2内の圧力値を2.5MPaに設定して、駆動音の変動低減を図っている。なお、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、タンク部2内の圧力値を2.5MPaに設定する場合が最も駆動音の音圧変化が小さくなったが、最も駆動音の音圧変化が小さくなるタンク部2内の圧力値が、常に2.5MPaとなるわけではないので、設定される圧力値は、2.5MPaには限定されない。
上述したようにして、マイクロプロセッサ25は、タンク部2内の圧力値に応じてモータ部3における回転数(ロータ17の回転数)を設定した(ステップS.7)後に、設定された回転数でモータ部3が回転駆動されるように、モータ部3の駆動制御を行う(ステップS.2)。以後、マイクロプロセッサ25は、上述した処理内容を繰り返し実行することにより、タンク部2内の圧力値に応じてモータ部3の回転数の設定を変更して、エアコンプレッサ1の駆動制御を行う。
図9は、エアコンプレッサ1の通常の運転モードと、従来から使用されている静音モードと、本実施の形態において提案した超静音モードとにおけるモータ部3の回転数を、タンク部2内の圧力値に応じて示したグラフであり、図10は、上述した3つのモードにおけるエアコンプレッサ1の駆動音の音圧を、タンク部2内の圧力値に応じて示したグラフである。
図9に示すように、エアコンプレッサ1における通常の運転モードでは、モータ部3の回転数がタンク部2内の圧力値に応じて変化しているが、この回転数変化は、マイクロプロセッサ25がタンク部2内の圧力値に応じて制御しているのではなく、交流電源31の電力値に応じてモータ部3の回転数を制御しているためであり、積極的にタンク部2内の圧力値に基づいた制御を行っているわけではない。通常の運転モードでは、エアコンプレッサ1の起動時にできるだけ早くタンク部2内の圧力値を高めることができるように、モータ部3の回転数を電力値の許容量を考慮して高めに設定する制御を行っている。このため、モータ部3の音圧を低減させるための配慮は積極的になされていない。
静音モードでは、エアコンプレッサ1の駆動音を低減することを第1の目標としているため、モータ部3の回転数をタンク部2内の圧力値に拘わらず常に1800rpmに設定して運転している。一方で、本実施の形態において提案した超静音モードでは、モータ部3の回転数を、1.5MPaまでは1900rpmに設定し、1.5MPa〜2.5MPaの間では、モータ部3の回転数を線形的に減少させ、2.5MPa以降においてモータ部3の回転数を1500rpmに設定して運転を行っている。
このように3つのそれぞれの運転モードにおいて、モータ部3の回転数を上述したように設定して運転を行う場合の駆動音を比較すると、図10に示すように、通常モードで駆動される場合の駆動音が最も高い値を示している。一方で、静音モードで駆動される場合の駆動音は、通常モードで駆動される場合に比べて音圧が低減されているが、タンク部2内の圧力が1.5MPaから2.5MPaになるまでの間で音圧が急激に上昇するため、タンク部2内の圧力値が1.5MPa以下の場合に発生する駆動音と、タンク部2内の圧力値が2.5MPa以上の場合に発生する駆動音との音圧差などにより、作業者がエアコンプレッサ1の騒音を意識してしまい、うるさいと感じてしまうおそれがあった。
しかしながら、超静音モードでは、図10に示すように、タンク部2内の圧力が1.5MPaから2.5MPaになるまでの間を含めて、音圧がほとんど一定のレベルに維持されているため、静音モードのような音圧差が生じにくい。そのため、作業者がエアコンプレッサ1の使用時に騒音を意識し難くなり、駆動音に伴う不快感を実際の音圧値以上に低減させることが可能となる。
また、従来の静音モードで駆動されるモータ部3の回転数は、1800rpmで一定に維持されるのに対し、超静音モードで駆動されるモータ部3の回転数は、タンク部2内の圧力が2.5MPaに達した以降に1500rpmへ低減されてしまうため、静音モードよりも性能が劣ってしまうようにも思われる。しかしながら、タンク部2内の圧力が1.5MPaに達するまでは、モータ部3の回転数が1900rpmに維持されるため、結果として、エアコンプレッサ1は、超静音モードで駆動する場合であっても、静音モードで駆動する場合と同等の性能を維持することが可能となる。
以上、本発明に係るコンプレッサを、図面を用いて説明したが、本発明に係るコンプレッサは、上述した実施の形態で示した構成には限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、マイクロプロセッサ25において、タンク部2内の圧力値が1.5MPaに達するまでは、モータ部3の回転数を1900rpmに維持し、タンク部2内の圧力値が1.5MPaから2.5MPaまでの間には、モータ部3の回転数を線形的に低減させ、タンク部2内の圧力値が2.5MPa以上になった後は、モータ部3の回転数を1500rpmに維持する制御を行う場合について説明したが、この設定例は一例であり、設定されるモータ部3の回転数およびタンク部2内の圧力値は、それぞれ、タンク部2の容量や、第1空気圧縮機構部13aおよび第2空気圧縮機構部13bのシリンダ荷重の変化特性に応じて、それぞれ適正に設定値を変更することが可能である。
また、本実施の形態に係るエアコンプレッサ1では、第1空気圧縮機構部13aにおけるピストン荷重の変化と第2空気圧縮機構部13bにおけるピストン荷重の変化とにより、互いの荷重値が一致して影響し得るタンク部2内の圧力値が1.5MPaであったため、上述したように1.5MPaを基準としてモータ部3の回転数を変更する制御を行ったが、第1空気圧縮機構部および第2空気圧縮機構部におけるピストン荷重の変化が本実施の形態に係るエアコンプレッサ1の第1空気圧縮機構部13aおよび第2空気圧縮機構部13bと異なる場合には、モータ部の回転数を変更する基準となるタンク部の圧力値を、本実施の形態と異なる値にすることも可能である。