JP5160542B2 - 酸素拡散陰極を備えたクロロ−アルカリ電解槽 - Google Patents

酸素拡散陰極を備えたクロロ−アルカリ電解槽 Download PDF

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Description

発明の背景
基幹石油化学工業の最も重要な生成物のうちの2つである塩素および苛性ソーダは、水銀陰極、多孔質ダイヤフラムおよび陽イオン交換膜タイプ電解槽を使用する3つの技術による塩化ナトリウム溶液の電解によって得られる。後者の技術の成功は、スルホン酸イオン基を陽極側にそしてカルボン酸イオン基を陰極側に含むペルフルオロ化タイプの陽イオン交換膜の進歩によるものであり、デュポン/USAのNafion(登録商標)、旭硝子/日本のFlemion(登録商標)、および旭化成のAciplex(登録商標)のようにいくつかの製造業者によって商品化されている。
同じ方法は、少ないプラントにおいてではあるが、塩化カリウム電解に、そしてさらに少なく様々なアルカリ塩化物溶液(以下におけるブライン)に適用されている。一般に様々な考えがクロロ−アルカリ電解に実質的に適用可能であると分かっていても、簡略化のために、以後、塩素−苛性ソーダ電解を参照する。抵抗低下、電流効率および最大許容電流密度の点でさらにより効率的な陽イオン交換膜の開発には、同時に電解槽の機械的設計の進化が進んだ:現在、一般的な操作条件には2.9〜3.1Vの槽電圧、約95〜98%の電流効率、4000〜6000A/mの電流密度および少なくとも3年の膜寿命が含まれる。この枠組は約2300kWh/トンの塩素の平均消費に相当し、これは現在の電気エネルギーコストで大きな不利益となる。電流技術のさらに著しい改善は予測できないので、クロロ−アルカリ電解分野におけるいくつかのエンジニアリング会社は、生成物1トン当たりの電気エネルギー消費を著しく減じることかできる可能性のある革新的な代替法に関わってきた。第1の可能性は、副生成物として通常考えられる電解で発生される水素を利用し、電気エネルギーを生み出して電解槽へ戻し、約35%の全体エネルギーを節約する、クロロ−アルカリプラントの燃料電池スタック(stacks)との一体化でもたらされる。この種の一体化は、様々な燃料電池スタックの連続方式についておよび電解槽とのその関連性についての広い議論と共に、US6,423,203に開示されている。
第2の可能性は、酸素拡散陰極を従来の電解槽において一般的な水素発生陰極の代わりとして取り付けることによって得られる。本明細書において、電解槽という用語は、必要な生産能力を得るためにスタック状に組み立てられた多数の同等の基本槽を示す。以下では、簡略化のために、単一の基本槽を参照する。
酸素拡散陰極によって導入される技術的展開は下記のような2つの電解プロセス:
[伝統的なプロセス] 2NaCl+2HO→Cl+2NaOH+H
[酸素拡散陰極でのプロセス] 2NaCl+1/2O+HO→Cl+2NaOH
を特徴とする異なる全体反応によって導かれるプロセス減極から誘導したものに基づく。
2つの反応はエネルギーの観点ではかなり異なっており、減極のプロセスに特有な反応で必要とされるエネルギー量はかなり少なく、1.23ボルトの理論的節約となる。
実際には、抵抗低下および過電圧のような避けられないエネルギー消失のため、4000〜5000A/mの電流密度で達成できる槽電圧は1.9〜2.1ボルトである。
酸素拡散陰極の取り付けは、膜に直接接している陰極(「ゼロ−間隙」として本技術分野における当業者に知られている設計)または1〜3mmの間隙で膜から間隔を置いた陰極(「有限−間隙」として本技術分野における当業者に知られている設計)をそれぞれ有する、2つの基本設計に従って行われる。後者において、苛性ソーダの流れが間隙を上方に横切るによって苛性生成物と苛性供給材料との混合に由来する作業温度および濃度の効率的なコントロールが可能になる。別の態様では、外部から供給される苛性ソーダが通り抜けて下方へパーコレートする多孔質の平らな層が間隙へ挿入される。2つの態様の間で最も重要な相違は苛性ソーダによって生じる液圧ヘッドであり、苛性ソーダが上方へ供給される場合は最大となり、下方へパーコレートする場合は最低となる:酸素拡散陰極が圧力差に耐える能力に乏しいことを考慮すると、前者の場合、液圧ヘッドを破るために槽を特定量のオーバーレイド(overlaid)内部区画に細分する必要がある。そのような構造上の解決策はUS5,693,202に開示されており、パーコレート層を有する設計はWO03/042430に開示されている。
有限−間隙槽に必要な機械的設計は必然的に複雑であるが、ゼロ−間隙槽の場合、類似の設計は非常に単純になる:そのようなタイプの技術は例えばUS4,578,159に効果的に説明されている。しかしながら、後者の場合、槽の設計は実質的に単純化されているが、作業条件は逆にむしろ複雑である。これは、外部供給材料の不在下では、苛性ソーダ生成物の濃度は、水和Naイオン流の助けおよび塩化ナトリウムと苛性ソーダの2つの溶液間における自然拡散の助けによって膜を横切って輸送される水の量で決まるという事実による:通常の水の輸送速度では、生じた苛性ソーダの濃度は約35〜40%である。そのような濃度は商業的な膜と適合できず、カルボキシル基が次第に失われることにより性能が衰える。塩素生成物中の酸素濃度が有限−間隙槽におけるよりも著しく高いことも観察される。これらの問題を解消するために、US6,117,286は、供給酸素を湿らせることおよび/または陽極区画中のブラインを希釈することを提案している。酸素水分を苛性ソーダ生成物中に均一に再分配することは不可能であるので、2つの方策は完全に満足なものではなく、一方、ブラインの希釈は電流効率低下をもたらし、塩素中の酸素濃度レベルにはほとんどまたは全く影響がない。
1つの態様では、本発明は、従来技術の不都合を解消することができる酸素拡散陰極を有する電解槽、特に、供給酸素を湿らせることを必要としないまたは陰極区画に水を注入する別の形を必要としない、そして陽極区画のブラインを希釈することを必要としない電解槽に関する。
別の態様では、本発明は上記の不都合を解消する複数(例えば多数)の電解槽を含む電解槽に関する。
本発明の説明
本発明は、イオン交換膜で細分された(subdivided)基本槽からなり、膜と直接接した酸素拡散陰極および膜から有限の間隔を、好ましくは1mm以上の間隔を保っている塩素発生用触媒性被覆(coating)を含む陽極を有する。
1つの態様では、膜と接した陽極は、膜と接する面と反対の面にのみ塩素発生用触媒性被覆を有する。
膜と接する陽極の非活性化面はノッチを有すると有利であり、1つの態様では、ノッチは垂直方向に並んでいる。
あるいは、膜と接する陽極の非活性化面は多孔質親水性なおよび触媒に不活性なフィルムからなっていてもよい。
別の態様では、膜に面する陽極の面は触媒性被覆を有し、そして、任意に、不活性親水性多孔質層の介在によって、膜から有限の間隔を保っている。
本発明の槽では、膜は、陰極区画の圧力を陽極区画の圧力より高い値に設定することによって得られる圧力差の助けによって、陽極面の触媒作用のない面と接し続けうる。
あるいは、陽極構造の全ておよび膜が、プロセスブラインが占める間隙によって間隔を置いていてもよく、膜は、陽極区画の圧力を陰極区画の圧力より高い値に設定することによって得られる圧力差の助けによって、酸素拡散陰極と接し続ける。
1つの態様では、本発明の電解槽の酸素拡散陰極は、酸素還元用触媒を有する多孔質疎水性構造を有し、酸素還元用触媒をやはり有する多孔質導電親水性外層をさらに備えている。親水性外層は物理的に分離されていても、あるいは陰極に一体化されていてもよい。
図面の詳細な説明
図1は従来のクロロ−アルカリ基本電解槽の側面図であり、1は全体としての槽、2は槽を陰極区画3および陽極区画4に細分する膜、好ましくは、陽イオン交換ペルフルオロ化膜、5は酸素拡散陰極、6は塩素発生用触媒性被覆を有する陽極、7はブライン中に分散された塩素の気泡、8は陰極が膜と接し続けるための弾性支持体を示す。槽1は酸素または酸素含有ガスを供給するためのノズル9、排出酸素を排気するための10、苛性ソーダ生成物を取り出すための11、塩素および排出ブラインからなる混合物を放出するための13をさらに備えている。膜2は、陰極区画3の圧力Pを陽極区画4の圧力Pより高い値に設定することによって得られる圧力差の下で陽極6によってさらに支えられる。
図2は図1のBを詳しく拡大したものであり、例えば、表面が塩素発生用触媒性フィルム14で完全に被覆されたチタンエクスパンデッドシートからなる、従来の陽極の側面図を示す。
図2の陽極を備えた図1の槽に酸素または酸素含有ガスを陰極区画で、塩化ナトリウムブラインを陽極区画で供給すると、塩素が陽極区画で、そして苛性ソーダが陰極区画で生じる:特に、膜−陰極境界面で発生する苛性ソーダは陰極の多孔質構造を横切ってパーコレートし(percolate)、気相だけが本質的に占める陰極区画の底で取り出される。
陽極区画におけるブラインの濃度が180〜220g/lの一般的な範囲に維持されるならば、塩素中の酸素濃度は工業プラントで一般に観察される1.5〜2%の値よりもかなり高く、電流密度は94〜95%より低く、槽電圧は許容できない値に急速に上昇することに注意することになる。このマイナスの挙動は35%を大きく越える苛性ソーダ生成物の濃度に関連することがある:そのような高い濃度は陽極へ向かうかなりの逆移動およびカルボン酸の膜からの放出を引き起こし、正しい機能に必要な陽イオン性の導電性を次第に失う。膜陽極面で生じる苛性ソーダは陽極触媒性被覆と直接接触して、次の反応により直ちに酸素へ変換する:
4OH → O+2H
例えばUS6,117,286に開示されているような従来技術によると、上記の不都合は、陰極区画へ供給される酸素を湿らせることによっておよび陽極区画のブラインを150〜170g/lの濃度に希釈することによって解消しうる:これらの方策で、苛性ソーダ生成物の濃度は33〜35%に低下して、膜寿命は延び、塩素中の酸素含有率が下がる。それにもかかわらず電流効率は不満足なままであり、全体プロセスは、膜劣化の一因ともなる苛性ソーダの濃度の局部的な変化によりコントロールが難しい。
適切な試験作戦によって、発明者等は、上記の不都合は適切な酸素拡散陰極設計と結び付けた適した陽極構造を用いて解消できると判定した。
図3に示す本発明の第1の態様では、塩素発生用触媒性被覆14が、膜と接している面と反対側の面にのみ施されている陽極が示されている:触媒性被覆のない陽極面にはノッチ15、例えば、好ましくは垂直方向に並んだ、溝を有するのが有利であるかもしれない。この態様は、塩素中の酸素含有率を1.5%より下、最も好ましい場合は1%より下に導く。同時に、長時間の操作後でも、膜はカルボン酸の放出またはカルボン酸およびスルホン酸層剥離のような損傷を生じず、主要操作パラメーターを実質的に一定に保つ。膜の保存状態がすぐれているのは、従来の工業電解槽で一般に用いられるような陽極区画における180〜220g/lのブライン濃度でも、意外にも30〜34%で作り出される苛性ソーダの濃度によると思われる。特定の理論に結び付けたくはないが、実際に非常に興味のあるこの結果は、膜を横切る水のより高い拡散と共に進む、ブラインに近づきやすいまたはブラインと接した膜面のより高い分別(fraction)に関連するのではないかと思われる。従来技術では、陽極に直接接している面積に相当する膜面の敏感な分別は、接している陽極と膜面との中間に滲出する溶液のフィルムから初めに発生される塩素および酸素ガスによって遮られているのかもしれない。
同様なプラスの結果は、膜に面した面と反対側の面にのみ触媒性被覆を有し、槽中で直接任意に行われる適当な前処理により可溶性になる化合物を加えることによって多孔度を任意に調整することができる不活性、親水性そして非導電性の被覆16をさらに有することを特徴とする図4の陽極を備えた、図1の槽を用いることによって得られた。あるいは、少なくとも50マイクロメートルの最高ピーク高さ(R)で表される表面荒さを特徴とする親水性フィルムの形の被覆は特に有利であることを示す。適したフィルムは、適切な先駆体を含むペイントの公知の熱分解法によって、あるいは溶射またはプラズマ溶射のような熱溶射によって得られる、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化ニオブおよびこれらの混合物を含む。
同様な解決策は図5で説明する。ここで、本発明による陽極は、全面が任意に触媒化された陽極自体からなる、および不活性親水性材料のメッシュ、例えば触媒性被覆を有さずかつ膜との接触面が少ない(エクスパンデッドシートがこの目的で用いられるとき、例えば、高膨張ファクターが好ましい)チタンメッシュで形成された層17からなる複合構造を有する。
陽極の気泡が陽極−膜境界面に付着するのを妨げるために、親水性度の高い多孔質フィルムであるのが好ましい。
満足な結果は図6に示す態様で得られることが最終的に分かった:この場合、陽極6はブラインで満たされた間隙18によって膜から間隔を置いて配置されており、一方、陰極5は堅い支持体19に固定されている。この場合、膜2は、陽極区画の圧力Pを陰極区画の圧力Pよりも高い値に設定することにより得られる圧力差によって押される。そのような構造的解決策は、塩素中の酸素濃度および膜性能の長時間安定性での先の解決策と同じように適切であるが、膜が押される場合、ブラインおよび塩素が陰極区画に浸透可能となる欠点があり、その結果、構造材料の腐蝕、さらに塩化物および次亜塩素酸塩レベルの増加による苛性ソーダ生成物の商業的価値が下がるという問題が生じる。
図1および6の基本槽の酸素拡散陰極は、好ましくは触媒と、膜境界面での苛性ソーダ生成物の通過(親水性細孔)および酸素流の通過(疎水性細孔)両方を可能にするのに必要な予め決定された親水度対疎水度比を与えるようにする添加剤とを有する多孔質層からなる。この構造では、苛性ソーダ生成物は陰極後方の壁の方へ排出され、陰極区画の底へパーコレートする:苛性ソーダがいつか疎水性細孔にあふれる可能性を減じるために、US6,117,286には、膜と陰極との間に適切な多孔度の親水性層を挿入することが記載されており、その目的は、苛性ソーダ生成物のパーコレーションを可能にすることであり、陰極を横切るその通路を省略しなければ減少する。しかしながら、発明者等は、この種の陰極構造を備えた槽は膜の衰退がかなり速く、これは槽の運転停止頻度に比例することを観察した。これらの問題は、おそらく、長時間の運転停止後の始動段階で生じる電流密度の均一性の大きな不足に関連すると思われる。この状況を改善するために、US4,578,159に開示されているような従来一般に行われていることは、親水性層をあふれさせる明らかな目的で、陰極区画を苛性ソーダで満たすことそしてそれを始動直前に排出することである。本技術分野における当業者にとって、これらの充填および排出操作が工業プラントの日常手順として全く推薦できないことは明らかである。発明者等は、この問題は、親水性層が導電性でありまた酸素還元に対して触媒作用するときに完全に解消し、これが陰極の同じ触媒を同様な量で加えることによって得られることも観察した。別の態様では、触媒性親水性層は陰極に不可欠である。本発明の陰極構造は図7に示す。これは図1の細部Aを拡大したものであり、20は、弾性支持体22に固定された電流分配器21および導電性で触媒性の親水性層23によって膜2に対して押された陰極を示す。親水性層の適した多孔度によって、陰極区画の底へのパーコレーションによる苛性ソーダ生成物の排出が可能となる:従って、陰極は、触媒粒子への最適な酸素の移送が確実となるように実質的に疎水性である。
特定の理論に結び付けたくはないが、発明者等は、触媒が親水性層に存在することが、槽始動の重要な段階でも均一な電流分布を保つことを可能にし、ここで、親水性層は先の運転停止時で排出された苛性ソーダでまだ満たされていないと推定する。始動の間、苛性ソーダ生成物は親水性層の細孔を満たし、陰極区画の底部へパーコレートする。酸素拡散は実質的に妨げられるので、親水性層の触媒は苛性ソーダ生成物であふれさせ、機能(始動触媒)を停止する。この段階で、疎水性陰極に含まれる触媒(運転触媒)の介在によって電解を行うことが可能となる。従って、工業プラントの正常な操作と適合できない手順にたよることなく、始動の間、有害な電流密度不均一性(苛性ソーダ濃度の均一性の問題とされる不足および引火性混合物形成につながりうる水素発生の可能性を伴う)の防止を可能にするので、親水性層における触媒の存在は必須である。
実施例
次に示す活性試験では、旭硝子(日本)によって商品化されたFlemion(登録商標)893ペルフルオロ化陽イオン交換膜によってそれぞれチタンおよびニッケルで作られた陽極および陰極区画にそれぞれ細分された高さ100cm、幅10cmのクロロ−アルカリ槽を用いた。2つの区画の圧力は、膜が陽極構造に押し付けられるのを保つことができる水200mmの差を維持するように調整された。陽極は堅い支持体に溶接され、次のように形成された:
− 試験1: 被覆を固体シートの片側に付着させ、次に機械的拡張を行い、最後に平らにすることによって得た、膜に面している面と反対側の面にのみ施された、従来のチタン、イリジウムおよびルテニウム酸化物を含む塩素発生用触媒性被覆を有する、偏菱形メッシュ(4×8mm斜め模様)をもつ厚さ1mmのチタンエクスパンデッドシート。
− 試験2: 図3に示す態様による、垂直に並べた高さおよび幅5.5mmのノッチを加えた試験1におけるようなエクスパンデッドシート。
− 試験3: 図4に示す態様による、プラズマ溶射によって膜に面している面へ施された約500マイクロメートルの二酸化ジルコニウム(アルファ・アエサールGmbH(ドイツ))からなる高表面荒さの親水性不活性フィルムを加えた、試験1におけるようなエクスパンデッドシート。
− 試験4: 全面に施されたチタン、イリジウムおよびルテニウム酸化物を含む塩素発生用触媒性被覆を有する、偏菱形メッシュ(4×8mm斜め模様)をもつ厚さ1mmのチタンエクスパンデッドシート。陽極と膜との間に介在させた触媒性被覆をもたない追加の第2チタニウムエクスパンデッドシート。6および10mmの斜め模様の偏菱形メッシュを有する第2エクスパンデッドシートメッシュは、触媒化エクスパンデッドシートの面については膜との接触面が少ないという特徴を有していた。
− 試験5(比較): 従来の全面に施されたチタン、イリジウムおよびルテニウム酸化物を含む塩素発生用触媒性被覆を有する、偏菱形メッシュ(4×8mm斜め模様)をもつ厚さ1mmのチタンエクスパンデッドシート。
各槽では、陰極は、ポリテトラフルオロエチレン粒子と重量比1:1で混合した酸素還元に適した触媒粒子が施された層を有する、銀の細線(直径0.2mm)で作られた80メッシュネットからなっていた(シェブロン・ケミカル社(米国)製造のShawiningan Acetylene Black Carbon上の20重量%の銀−白金合金、銀添加総量は50g/mである);全体のアセンブリーは350℃で焼結されて約0.5mmの最終厚さとなる。このようにして得られた陰極の構造は水滴との接触角度測定で示されるように多孔質でかつ明らかな疎水性となる。始動の初期段階における酸素の触媒性還元および苛性ソーダ生成物のパーコレーションを可能にするのに適した多孔質導電性および親水性層は、陰極と膜との間に介在させた。この層は、ポリウレタンの連続気泡フォームから出発して得られ、ニッケルメッキされ、5マイクロメートルの銀層でさらに被覆され、平均細孔直径は約0.2mm、初期の厚さは2mmであり、メッシュには触媒粒子および酸化ジルコニウム粒子(アルファ・アエサールGmbH(ドイツ))の混合物が、40g/mの銀添加総量に対して1:1の重量比でプレスされ、その後の最終圧縮で厚さは約1mmの最終値に減じた。高い親水性を特徴とするそのような層は、有害な過圧を生じることなく、2000〜5000kA/mよりなる電流密度で生成される苛性ソーダのパーコレーションを可能にすることが観察された。同様な結果は上記触媒性親水性層を組み入れた陰極で得られることが証明された。
電流分配器は、柔軟な支持体に固定された偏菱形開口部(4×8mmの斜め模様)を有する厚さ1mmのニッケルエキスバンドシートからなり、追加の細かいメッシュニッケルエキスバンドシート(2×4mmの斜め模様)は陰極に面した面に溶接された。いずれのエキスバンドシートも厚さ約10マイクロメートルの銀被覆を有し、陰極−親水性層アセンブリーを陽極支持膜面によく適合させるために4つの部分に細分された。
全ての槽の陽極および陰極区画には、濃度が190〜210g/l内に保たれた塩化ナトリウムブラインおよび約10%過剰の乾燥純水酸素をそれぞれ供給した。温度および電流密度はそれぞれ86〜88℃および4000A/mに設定した。苛性ソーダ生成物は陰極区画の底から取り出された。
得られた結果は次表に集めた。
Figure 0005160542
試験1、2、3および4の後、全ての膜は十分に保護され、損傷がないことは目視検査で証明することができた。反対に、試験5の槽から取り出された膜は、膜のカルボン酸およびスルホン酸層の剥離を示す数ミリメートルサイズのいくつかのふくれが存在した。
上記の試験は、面した膜面から間隔を置いた塩素発生用触媒性フィルムを有する陽極面、および疎水性触媒化陰極および介在触媒化親水性層(単一アセンブリーに組み込まれていてもよい)を含む膜に接している陰極構造の状態で本発明に従って操作することによって、陽極区画の一般的なブライン濃度で操作してもおよび酸素湿潤または陰極構造の苛性ソーダでの予備湿潤をしなくとも長い膜寿命で、槽電圧、電流効率および塩素中の酸素含有率の点で時定数操作が可能であることを示している。
親水性の炭素布(硝酸中で3回沸騰させたZoltek PWB−3)を酸素還元用の介在触媒を含まない導電性層として用いた以外は、試験4を繰り返した。槽を乾燥布で開始したとき、不安定な時間が異常に長くなったことが観察され、広い範囲の電圧の振幅は後の段階で完全に回復できない性能の衰えを伴った。反対に、布を湿らせるために槽の陰極区画が苛性ソーダで予め満たされ、その後、排出されるとき、始動は非常にシンプルであり、試験1〜5のそれと完全に同等であった。
陽極区画の塩化ナトリウム溶液を160〜170g/lに希釈し、酸素供給材料を85℃で予備湿潤した以外は、試験5を繰り返した。これらの操作条件で、それとわかるほどより安定な機能が観察され、これはおそらく苛性ソーダ生成物濃度がより低いことに関連すると思われる。
それにもかかわらず、各始動前に陰極親水性層を湿らせることおよび/または塩化ナトリウム溶液を希釈することおよび/または酸素供給材料を湿らせることを必要とする工業プラントの操作が、結果としてほとんど実用的ではなく、操作する人に確実に歓迎されないことは、本技術分野における当業者に明らかである。
先の説明は本発明を限定するものではなく、本発明は、本発明の範囲から逸脱することなく様々な態様に従って実施しうるものであり、その範囲はもっぱら請求の範囲によって限定される。
明細書の説明および請求の範囲において、「含む」という用語またはその用語の変形は、他の添加物、成分、整数または工程を除外するものではない。文書、法令、材料、装置、製品等についての解説は本発明の状況を示す目的でのみ明細書に含めた。これらの要件のいずれかまたはいずれもが従来技術の基礎の一部であったり、あるいは本出願の各請求項の優先日前に本発明関連分野における一般的な知識であったということは、示唆または表示されていない。
従来のクロロ−アルカリ電解槽の側面図である。 従来の電解槽における陽極の側面図である。 本発明の第1の態様による電解槽の陽極の上面断面図である。 本発明の第2の態様による電解槽用の陽極の側面図である。 本発明の第3の態様による電解槽用の陽極の側面図である。 本発明の第4の態様によるクロロ−アルカリ電解槽の側面図である。 本発明による電解槽用の酸素拡散陰極である。
1 電解槽、2 膜、3 陰極区画、4 陽極区画、5 酸素拡散陰極、6 塩素発生用触媒性被覆を有する陽極、7 塩素の気泡、8、19、22 支持体、9 酸素または酸素含有ガス供給用ノズル、10 酸素排出口、 11 苛性ソーダ取り出し口、13 塩素およびブライン放出口、14 触媒性被覆、15 ノッチ、16 非導電性被覆、18 間隙、20 陰極

Claims (10)

  1. ペルフルオロ化陽イオン交換膜によって陰極区画および陽極区画に細分されたクロロ−アルカリ電解槽であって、
    陰極区画が、該膜と接した酸素拡散陰極並びに酸素を陰極区画へ供給し、酸素を陰極区画から取り出す手段を含み、アルカリ塩化物溶液が供給される陽極区画が、塩素発生用触媒性被覆を有する陽極を含み、塩素発生用触媒性被覆が、面している膜面から1mm以上3mm以下の間隔を保っており、前記陽極の第1面が前記膜と接し、前記塩素発生用触媒性被覆が、前記膜に面している面と反対側の陽極の第2面のみに施されていることを特徴とする槽。
  2. 前記膜と接する陽極の第1面が、垂直に配列したノッチを有することを特徴とする、請求項に記載の槽。
  3. 陽極が、前記膜と接する触媒的に不活性な多孔質親水性フィルムを含むことを特徴とする、請求項に記載の槽。
  4. 触媒的に不活性な多孔質親水性フィルムが、陽極とは物理的に異なることを特徴とする、請求項に記載の槽。
  5. 親水性フィルムが、50マイクロメートル以上の最高ピーク高さRで表される表面荒さを有することを特徴とする、請求項またはに記載の槽。
  6. 前記陰極区画の圧力が陽極区画の圧力よりも高いことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の槽。
  7. 酸素拡散陰極が第1導電性疎水性多孔質構造および第2導電性親水性多孔質構造を含み、第1疎水性構造および第2親水性構造が酸素還元用触媒を有し、第2親水性構造が膜と接していることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の槽。
  8. 前記第1疎水性構造および前記第2親水性構造が物理的に異なることを特徴とする、請求項に記載の槽。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の複数の槽を含むことを特徴とする、クロロ−アルカリプロセス用の電解槽。
  10. 請求項に記載の電解槽へ純粋なまたは混合物の形の酸素を陰極区画で、そしてアルカリ塩化物溶液を陽極区画で供給し、苛性生成物を31〜34重量%の濃度で得られるように電流を流すことを特徴とする、クロロ−アルカリ電解法。
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