JP5160117B2 - 着色ガラス - Google Patents
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Description
第1の着色ガラスは、ガラス自体がCo、Mn、V等の着色剤を含有しているものである。この場合には、ガラス自体が紫または茶色に着色され、反射光で見ると黒色に見える黒色ガラス(例えば、ドイツSchott社製結晶化ガラスCeran)となる。
第2の着色ガラスは、透明ガラスの裏面に金属ペーストを塗布して焼成し薄膜化したものである。この場合は、反射光が黒色になるガラスとなる。
また、少なくとも一方の表面に薄膜黒色膜を有する構造であるため、薄膜を有する表面を削れば他の透明・白色ガラスと一緒に再処理できるが、リサイクル工程が煩雑になったり、コストが高くなる等の問題がある。
この技術によれば着色ガラスが無色結晶化ガラスと分別することなくリサイクルすることができ、また、リサイクル工程が煩雑にならない。また、X線照射を行う場合には、表面から内部にかけて着色されるため、ガラス表面の凹凸による着色の濃淡が起こり難い。また、X線はホコリ等を容易に透過してガラスに直接的に作用して着色するため、色が抜ける欠点が殆どない。
そのため、着色濃度が高く、リサイクル性に優れた着色ガラスの開発が求められていた。
該着色ガラスは、調理器用ガラストッププレートであって、該調理器用ガラストッププレートにおける100℃以下の環境で使用される部分に上記着色部を有し、
上記ガラス基材は、Li 2 O−Al 2 O 3 −SiO 2 系からなるβ−石英固溶体又はβ−スポジューメンを主結晶とする結晶化ガラスよりなり、
上記着色部は、波長340〜1800nmの光を透過させた場合の日射透過率が30%以下であることを特徴とする着色ガラスにある(請求項1)。
ここで、上記日射透過率とは、日本工業規格「板ガラスの透過率・反射率・日射取得率試験方法(JIS R 3106)」に準じて求められる値である。
上記X線の照射によって着色を行うことにより、ムラを発生させることなく着色を行うことができる。また、X線の照射時間や出力を調整することによって、着色の濃淡を調整することができる。
そのため、X線の照射により、所望の着色度合いを実現することができる。結晶化ガラスは主結晶相としてβ−石英固溶体又はβ−スポジューメンが体積割合で70〜90%存在し、その他の10〜30%のマトリックス相として非晶質ガラスや他の結晶相が存在する。上記結晶化ガラスが、通常の非晶質ガラスよりも着色度合いを高くできる理由は必ずしも明確ではないが、結晶化工程で上記主結晶相とマトリックス相に分かれることにより、X線で着色される元素もしくは結晶がどちらかの相に元の素材ガラスよりも部分的に濃縮される状態になり、着色度合いを高くできると考えられる。
また、上記β−石英固溶体やβ−スポジューメンを主結晶とする結晶化ガラスは、低膨張であり、強度が安定している。そして、上記ガラス基材は、X線の照射により、上述の低膨張を保ち強度を損なうことなく、着色部分を有することができる。
そして、上記着色ガラスは、熱処理することにより消色することが可能である。そのため、透明・白色ガラスと分別することなく、また、リサイクル工程が煩雑になることなく、リサイクルをすることができる。
このように、本発明によれば、着色濃度が高く、リサイクル性に優れた着色ガラスを提供することができる。
上記X線としては、Rh(ロジウム)を線源とするX線を用いることが好ましい。例えば、30kV以上、20mA以上の出力で所定時間照射することにより着色部を形成できる。40kV以上、30mA以上の出力で照射することがより好ましい。
同じX線照射条件であっても、着色度合いは、ガラス基材の厚み、材質等により異なるが、X線の照射時間が長いほど、また、X線の出力が高いほど、濃い着色を施すことができる。
ここで、透明とは、測色色差計で測定された白色度wが30未満である場合をいう。また、半透明とは、測色色差計で測定された白色度Wが30以上70未満である場合をいう。
また、上記ガラス基材は、市販の結晶化ガラスを使用してもよい。
また、上記ガラス基材は、線熱膨張係数が−10〜80×10-7/K(at30〜500℃)であることが好ましい。
上記日射透過率が、30%を超える場合には、高い着色濃度を得ることができないという問題がある。より好ましくは、上記日射透過率は20%以下である。
熱処理は、着色ガラスの再溶融を行ってもよいし、着色ガラスを500℃以上で再加熱してもよい。500℃未満の場合には、十分消色しない可能性がある。
上記再加熱を行う場合には、加熱温度は500〜800℃であることが好ましく、500〜600℃であることがより好ましい。また、加熱時間は5〜120分程度加熱することが好ましく、15〜60分程度加熱することがより好ましい。この場合には、ガラスの形状を保ったまま消色することができる。
可視光領域はおよそ360〜830nmである。そのため、可視光領域である波長360〜830nmの光を透過させた場合の透過率を上記波長範囲全領域において40%以下とすることにより、特に着色濃度が高い着色ガラスを得ることができる。
また、波長360〜830nmの光を透過させた場合の透過率が上記波長範囲全領域において20%以下であることがより好ましい。
この場合には、素材ガラスに結晶核形成工程と結晶化工程の熱処理を行うことにより、β−石英固溶体、β−スポジューメンを主結晶とする低膨張の結晶化ガラスとすることができ、X線を照射した場合に高い着色濃度を得ることができる。
上記β−石英固溶体やβ−スポジューメンを主結晶とする低膨張結晶化ガラスは、特に調理器用ガラストッププレートの基板ガラスとして適している。
上記装飾層としては、具体的には、例えば、有機金属化合物の希釈溶液であるラスター彩からなる遮光層、ガラス組成物と無機顔料とからなる遮光層、パール調材料とシリコーンレジンあるいはシリカ質ゾルとからなるパール調層等が挙げられる。これらの層は単独で形成してもよいし、複数の層を積層してもよい。
本例は、本発明の着色ガラスにかかる実施例について説明する。
本例においては、透明又は半透明のガラス基材の少なくとも一部に、X線を照射することにより着色してなる着色部を有する着色ガラスを作製した。
上記ガラス基材のガラス素材として、厚み4mmのLi2O−Al2O3−SiO2系ガラス素材を用意した。
まず、上記ガラス素材に、結晶核形成工程と結晶化工程とを行うことにより結晶化ガラスを製造した。上記結晶核形成工程は、上記素材ガラスに800℃で1時間熱処理を行った。また、上記結晶化工程は、上記結晶核形成工程後に、950℃で1時間熱処理を行った。
得られた結晶化ガラスについて、日本分光株式会社製の紫外可視近赤外分光光度計V−570及び積分球装置ISN−470を使用することにより透過スペクトルの測定を行った。
上記試料E1の着色部は、青黒色を呈していた。上記試料E1の着色部について、上述の結晶化ガラスの透過スペクトルの測定と同様の方法で透過スペクトルの測定を行った。また、日本工業規格「板ガラスの透過率・反射率・日射取得率試験方法(JIS R 3106)」に準拠して、上記日射透過率を求め、着色濃度を評価した。
◎:日射透過率が20%未満の場合。
○:日射透過率が20%以上30%未満の場合。
×:日射透過率が30%以上の場合。
本例は、上記実施例1において作製した着色ガラス(試料E1)の着色部に、さらにRhを線源とするX線を50kV、50mAで60分間照射することにより、着色ガラス(試料E2)を作製した。
本例は、上記実施例2において作製した着色ガラス(試料E2)の着色部に、さらにRhを線源とするX線を50kV、50mAで60分間照射することにより、着色ガラス(試料E3)を作製した。
本例は、実施例1におけるX線照射条件を変更した例である。
本例では、Rhを線源とするX線を50kV、50mAで24分間照射することにより、着色ガラス(試料E4)を作製した。その他は実施例1と同様に行った。
また、上記試料E3の着色部は、日射透過率が8.41%(着色濃度の評価:◎)であり、また、波長360〜830nmの光を透過させた場合の透過率が上記波長範囲全領域において3.19%以下であり、非常に高い着色効果を得ることができた。
また、上記試料E4の着色部は、日射透過率が24.33%(着色濃度の評価:○)であり、また、波長360〜830nmの光を透過させた場合の透過率が上記波長範囲全領域において23.09%以下であり、着色効果を得ることができた。
実施例1〜実施例4より、X線の照射時間が長いほど、濃い着色を施すことができることが分かる。
本例は、実施例1におけるX線照射条件を変更した例である。
本例では、Rhを線源とするX線を50kV、40mAで60分間照射することにより、着色ガラス(試料E5)を作製した。その他は実施例1と同様に行った。
本例は、実施例1におけるX線照射条件を変更した例である。
本例では、Rhを線源とするX線を40kV、40mAで60分間照射することにより、着色ガラス(試料E6)を作製した。その他は実施例1と同様に行った。
本例は、実施例1におけるX線照射条件を変更した例である。
本例では、Rhを線源とするX線を40kV、30mAで60分間照射することにより、着色ガラス(試料E7)を作製した。その他は実施例1と同様に行った。
また、試料E6の着色部は、日射透過率が25.88%(着色濃度の評価:○)であり、また、波長360〜830nmの光を透過させた場合の透過率が上記波長範囲全領域において25.71%以下であり、着色効果を得ることができた。
実施例5〜実施例7より、X線照射の出力が大きいほど、濃い着色を施すことができることが分かる。
本例は、上記実施例1〜上記実施例3において作製された着色ガラス(試料E1、試料E2、及び試料E3)を、室温・明所で1ヶ月放置し、同様の方法で透過スペクトルを測定し、色の変化を評価した。
試料E1〜試料E3のいずれも、色の変化はほとんど見られず、透過スペクトルも放置前のものとほぼ同一であった(図示略)。
本例は、上記実施例1において作製した着色ガラス(試料E1)について、100℃から600℃の範囲で焼成温度を変えて、1時間加熱し消色試験を行った。
そして、波長600nmの光の透過率を測定した。結果を図4に示す。同図は、横軸を加熱温度(℃)とし、縦軸を透過率(%)とした。
図3より、本発明の着色ガラスは、熱処理することにより消色することが可能であることが分かる。
本例は、本発明の比較例として、実施例1の結晶化ガラスを、結晶化ガラスではない一般的な非晶質のソーダガラス(Na2O−CaO−SiO2系)、ホウケイ酸ガラス(Na2O−B2O3−SiO2系)、素材ガラス(Li2O−Al2O3−SiO2系)に変更して着色ガラス(試料C1、試料C2、試料C3)を作製した例である。
それ以外は実施例1と同様にして行った。
また、試料C2の着色部は、日射透過率が55.60%(着色濃度の評価:×)であり、また、波長360〜830nmの光を透過させた場合の上記波長範囲における最大透過率が75.61%であり、十分な着色効果を得ることができなかった。
これより、結晶化ガラスに着色を行う場合には、非結晶化ガラスに着色を行う場合に比べて透過率を低くすることができ、着色濃度の高い着色ガラスを得ることができることがわかる。
本例では、図6に示す調理器用ガラストッププレート1を作製した。図6(a)は、調理器用ガラストッププレートの上面図を示し、図6(b)は、図6(a)におけるA−A線矢視図を示す。
図6(b)に示すように、上記調理器用ガラストッププレート1は、着色部23を有する着色ガラス2における調理面21とは反対の面である裏側面22に、裏面装飾層8を形成している。上記裏面装飾層8は、上記裏側面22にパール調層4を積層し、該パール調層4上に遮光層6を積層し、更に該遮光層6上に耐熱樹脂層7を積層することにより形成してある。
上記黒窓表示部3は、着色ガラス2の着色部23が位置する部分であり、100℃以下の環境で使用される。
本例の調理器用ガラストッププレート1が実際に調理器に使用される場合には、上記調理加熱部5の下方には、誘導加熱コイル、電気ヒータ、ハロゲンヒータ等の加熱装置が設けられる。また、調理面側に機器の運転状態や警告ランプ等を表示するために、上記黒窓表示部3の下方には機器発光部が設けられる。
上記パール調層4用のペーストとして、パール調材料(シルバーパール メルク株式会社製イリオジン123)、シリコーンレジン、及び有機樹脂(セルロース系樹脂)からなるパール調材料成分13%のパール調絵具を用意した。
また、上記遮光層6用のペーストとして、黒色ラスター絵付け用材料を用意した。
また、上記耐熱樹脂層7用のペーストとして、シリコーンレジンと有機溶剤(キシレン)とからなるペーストを用意した。
まず、上記ガラス基板の裏側面22となる面の一部(黒窓表示部となる部分以外の部分)に、ステンレス250メッシュのスクリーンを使用して、上記パール調層4用のペーストを塗布し、820℃で焼成を行った。これにより、膜厚が15μmのパール調層4を形成した。
次に、上記遮光層6上に、テトロン200メッシュのスクリーンを使用して、上記耐熱樹脂層7用のペーストを塗布し、350℃で焼成を行った。これにより、膜厚が20μmの耐熱樹脂層7を形成し、裏面装飾層8を形成した。
これにより、X照射により着色された着色部23により構成される黒窓表示部3を有する調理器用ガラストッププレート1を作製した。
また、本例の調理器用ガラストッププレート1をリサイクルする場合には、裏面装飾層8が形成された上記裏側面22を削れば他の透明・白色ガラスと一緒に再処理することができる。
この場合には、鍋等の非加熱物との接触による調理面21の損傷を防止する効果がある。
また、絵付けガラス装飾層を設けた場合にリサイクルする際には調理面21も削ることで、他の透明・白色ガラスと一緒に再処理することができる。
Claims (2)
- 透明又は半透明のガラス基材の少なくとも一部に、X線を照射することにより着色してなる着色部を有する着色ガラスであって、
該着色ガラスは、調理器用ガラストッププレートであって、該調理器用ガラストッププレートにおける100℃以下の環境で使用される部分に上記着色部を有し、
上記ガラス基材は、Li 2 O−Al 2 O 3 −SiO 2 系からなるβ−石英固溶体又はβ−スポジューメンを主結晶とする結晶化ガラスよりなり、
上記着色部は、波長340〜1800nmの光を透過させた場合の日射透過率が30%以下であることを特徴とする着色ガラス。 - 請求項1において、上記着色部は、波長360〜830nmの光を透過させた場合の透過率が上記波長範囲全領域において40%以下であることを特徴とする着色ガラス。
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