JP5159452B2 - アクチュエータ - Google Patents

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Description

本発明は、ロボットハンドの指先の駆動などに応用される、振動を利用した直動型のアクチュエータに関するものである。
従来から振動子と圧電素子を用いたアクチュエータは超音波モータなど、いくつかの構成が知られている。特にアクチュエータによりロボットハンドの指先の動きを実現するためには、人間の筋肉に相当する直動機構を小型に実現する必要がある。
特許文献1には回転型の超音波モータの構造が開示されている。特公平4−72471号公報(特許文献1)に開示されているような回転型のモータで、ロボットハンドの指先の動きを実現しようとすると、ネジなどの回転直進変換機構が必要となり、小型化が非常に困難である。
その点、超音波振動を用いた直動型のアクチュエータ(リニアアクチュエータ)は小型な構造で、直進運動を実現することができるため、ロボットハンドの指先の制御には好適である。特に、圧電素子の振動を利用した細くて長い円筒型(筒状)のリニアアクチュエータは、ロボットの高スピード化、長ストローク化、高精度化に非常に有望であり、近年検討が進んでいる。
このような円筒型のリニアアクチュエータとしては次のようなものが知られている。
図14は、特開平10−210776号公報(特許文献2)に開示されている、回転直動一体型超音波モータ及びそれを内臓した電子機器であり、円筒形の固定子101とその内周面あるいは外周面に接触した円筒形の移動子102とを有する。固定子101は円筒形の圧電素子103と、その内周面あるいは外周面のどちらか一方に規則的に配列された複数の分極電極104と、他方に設けられた全面電極107を有し、固定子101に超音波振動を励起することで移動子102を駆動する。この場合、分極電極104のそれぞれに互いに位相がずれた複数の交流電圧を選択的に印加することにより、移動子102を回転方向と直動方向に任意に駆動する。
図15は、特開平5−49273号公報(特許文献3)に開示されている超音波リニアモータである。これは、進行方向に平行に振動する第1の圧電素子203aと、第1の圧電素子203aを貫通する軸201と、第1の圧電素子203aを挟んで、軸201を把持可能に配置され前記進行方向と垂直に振動する第2の圧電素子203b、203cとを有する。第1の圧電素子203aと軸201とは径方向に隙間が設けられ、第2の圧電素子203b、203cは軸201の外径に対し、収縮時には締め代、膨張時には隙間ができるように設定される。各圧電素子に印加する交流電圧の位相差を変化させることにより、駆動速度を変化させることができる。
特公平4−72471号公報 特開平10−210776号公報 特開平5−49273号公報
従来の振動アクチュエータは一般に、移動子か固定子のどちらかを振動体として振動させ、両者が接触する部分において、進行方向に摩擦による推進力(推力)を発生させるものである。
特許文献2に記載の回転直動一体型超音波モータでは、圧電素子に交流電圧を選択的に印加し圧電素子を振動させることによって、移動子を回転方向と直動方向に任意に駆動できるようにしていた。
また、特許文献3に記載の超音波リニアモータでは、第1の圧電素子に印加する交流電圧によって直動方向に駆動できるようにしていた。
しかしながら特許文献2、3に記載の超音波モータは、いずれも振動体が圧電素子そのものになっているため、以下のような未解決の課題がある。
(1)設計の自由度
振動体の振動を利用するアクチュエータを設計製作する際、振動体の形状、ならびに固有振動モードの形、周波数などは推力や動作速度に直接関与する重要な設計パラメータである。ところが、圧電素子は焼結体であり、金属のような機械的強度がなく、機械的な加工法も限られている。そのため、振動体を圧電素子で形成する特許文献2、3に記載の超音波モータでは、大きな推力や高速な動作を実現するための設計の自由度が狭くなってしまう。
(2)振動体の耐久性
振動を利用したアクチュエータでは高速な駆動を実現するために、振動体を非常に高速に振動させる必要がある。従ってアクチュエータの耐久性を考えた時、振動体の材料は繰り返し変形に強いものが要求され、振動体の構造はシンプルで壊れにくいことが好ましい。また、振動体の材料の発熱を考慮すると、内部減衰が小さい材料であることが必要である。
ところが、そのため振動体を圧電素子で形成する特許文献2、3に記載の超音波モータでは、振動体の外側と内側を電極で挟む複雑な構造物であるため、高周波数で大振幅で振動させると電極のはがれなどが発生し、高い耐久性を実現できない。また圧電素子は内部減衰が大きいため、高速で大振幅で振動させると発熱が大きくなってしまう。
(3)振動体の接触力
また、振動を利用したアクチュエータでは、駆動力である摩擦力を発生させるため、移動子と固定子間を密着させる接触力が必要である。この接触力は弱すぎると、摩擦力、すなわち駆動力が小さくなってしまうし、強すぎると振動体の振動を阻害するほか、耐久性も悪くなるので問題である。従って振動アクチュエータにとって、接触力をいつも一定に保つことが非常に重要である。円筒型のリニアアクチュエータの場合、この接触力は振動子と固定子である円管の嵌合精度によって補償することとなる。
振動子と円管の嵌合精度は、圧電素子そのものの発熱や雰囲気温度の変化により大きく変化する。そのため、振動体である圧電材料と、固定子または移動子の材料の熱膨張係数はできるだけ等しい材料とすることが好ましい。しかしながら通常円管は金属等で作られるため、振動子が圧電材料の場合、熱膨張係数に大きな差が生じてしまい、熱による影響が大きくなる。
(4)振動体の振動振幅および動作速度
一般に、圧電素子の変形比は10−5程度である。そのため、直径2mmの圧電素子を使用すると、2x10−5mm=20nmしか変形しない。通常圧電素子の表面粗さは20nmよりも大きくのほうがずっと大きいため、直径2mmといった小型の直動アクチュエータを実現することは困難である。
また、進行方向の動作速度は駆動周波数に振幅を乗じたものであり、振動振幅が小さいことは、動作速度が遅いことを意味する。直径2mmの圧電素子で円周方向の振幅20nmとし、進行方向成分をその1/10とすると、50kHzで駆動した場合の動作速度は、20nm×1/10×50kHz=0.1mm/sと非常に遅い。
高速に動かすためには振動体を大振幅で振動させればよいが、あまり振幅を大きくすると、接触部に隣接する隙間内の空気などの流体が圧縮されるため、その圧力によって振動体が浮上(超音波浮上)してしまう。その結果、接触領域の摩擦がなくなり、推力を得ることができない。つまり、大振幅で振動させると推力が落ちるという課題があった。
本発明は、上記従来技術が持っている未解決の課題に鑑みてなされたものであり、構造が簡単かつ小型であり、しかも安定した高速駆動が可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
本発明のアクチュエータは、円筒状の支持部材に沿って移動体を移動させるアクチュエータにおいて、前記移動体は、円筒状の圧電素子と、前記圧電素子の一方の端部の内周面に取り付けられた第1の電極と、前記圧電素子の他方の端部の内周面に取り付けられた第2の電極と、前記圧電素子を介して前記第1の電極に対向した面に一端が固定され、圧電素子を介して前記第2の電極に対向した面に他端が固定され、中間部が前記支持部材と接触して配置されている円筒状の振動体と、を有し、
前記第1の電極と前記振動体との間及び前記第2の電極と前記振動体との間に電圧をかけて前記圧電素子を振動させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とする。
電圧素子の振動を振動体によって増幅して、移動体の推進力を発生させているため、圧電素子自体を振動体とする構成に比べて、材料の選択や形状設計等に制約が少なく、耐久性も向上する。
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
図1に本発明の第1の実施の形態を示す。筒状部材1は固定子として機能する円筒状の筒状部材ある。振動体2は円筒状の部材であり、軸方向の中央部の直径は端部の直径よりも大きく、中央部が膨らんだ形状をなしている。この膨らんだ部分が筒状部材1と嵌合するように配置されている。振動体はステンレス等の金属や金属ガラスにより形成されている。圧電素子3は円筒状の部材であり、振動体2の両端部の内周と固定されている。振動体2の中央部と圧電素子3の間には隙間2aが形成されている。
圧電素子3の両端部の内周面には、それぞれ、第1の電極(分割電極)4aと第2の電極(分割電極)4bが取り付けられている。交流電源10aは、第1の電極4aと振動子2の間に振動電圧を印加し、交流電源10bは、第2の電極4bと振動子2の間に振動電圧を印加することで圧電素子3は振動する。すなわち振動子2は共通電極としての機能も兼ねている。圧電素子3の振動は振動体2により増幅され、振動体2と筒状部材1の接触部において発生する摩擦力の変化を推進力に変換ることで、振動体2及び電圧素子3からなる移動体が筒状部材1の軸方向に相対的に移動する。
図2は、振動体2の振動を推進力に変換する原理を説明する模式図である。図2は説明のために振動振幅を誇張して示している。図2(a)において、Vaは交流電源10aにより第1の電極4aと振動体2の間に加えられた正弦波状の振動電圧である。
図2(b)に示すように、第1の電極4aと振動体2の間に加えられた振動電圧Vaにより円筒状の圧電素子3は、矢印R1で示す直径方向に振動する。この振動は振動体2の第1の電極4a側の端部において、振動体2を直径方向に振動振幅を持つ振動モードで振動させる。
振動体2の第1の電極4a側の端部で発生した振動は、振動体2に沿って矢印R2で示した振動体2の軸方向に移動する進行波となる。この進行波の振幅は、振動体2と接触する筒状部材1との間の摩擦や振動体自体による内部減衰によって次第に小さくなり、振動体2の第2の電極4b側の端部に達する。
本実施の形態ではこの進行波を利用して、振動体2及び電圧素子3からなる移動体を筒状部材1の軸方向に相対的に移動させる。通常波頭が1つの方向に移動する波を進行波は、端部で反射した波と干渉することにより波頭が移動しない定在波となる。進行波が反射により定在波になるのを防止するには、加振側と反対側の端部で振動を吸収しなければならない。
そこで本実施形態では、図2の(a)に示すように、交流電源10bにより、第1の電極4bと振動体2の間に加えられた正弦波状の振動電圧Vbを印加している。振動電圧Vbは、振動電圧Vaと同じ周波数で異なる位相と振幅を有している。振動電圧Vbの位相と振幅を最適化することにより、前述の進行波は、振動体2の第2の電極4b側で完全に吸収することができる。すなわち、進行波が定在波に代わることなく維持される。
図2の(c)は、R2方向に移動する進行波により、振動体2及び電圧素子3からなる移動体が筒状部材1の軸方向に相対的に移動する原理を説明する模式図である。
振動体2には、矢印R2で示す方向に進む進行波が発生しており、筒状部材1に接している。進行波は振動体2が矢印R3で示す方向に楕円振動している。この楕円振動により、振動体2と接している筒状部材1は、進行波とは逆の矢印R4で示す方向に押される。このようにして、筒状部材1は振動体2に対して矢印R2の方向へ相対移動する。
この時、楕円振動の振幅が大きければ大きいほど、筒状部材1を押す力(推進力)は強く、移動速度も速くなるため、アクチュエータの特性としては好ましい。本実施の形態では、圧電素子3の振幅を振動体2を用いて増幅している。このときの振幅の増幅は、振動体2が持っている固有振動モードを利用している。すなわち振動モードの「節」の近傍を加振すると、共振により振動モードの「腹」の近傍で非常に大きな振幅が得られる。すなわち、振動電圧Va、Vbの周波数を、振動体2の固有振動数と一致させることにより、振動体2の振幅を共振を使って大きくすることができる。
尚、アクチュエータの移動方向を変えるには、進行波の進む向きを反対にすればよい。すなわち、第2の電極4bと振動体2の間に振動電圧Vaを印加し、第1の電極4aと振動体2の間に振動電圧Vbを印加すれば良い。
振動体2は両端部付近で滑らかなR形状の接続部2bを形成している。このR形状によって耐久性を大幅に改善することが可能である。この接続部2bは圧電素子3の加振力により強い応力がかかる部分であるので、特にこの部分を滑らかに接続することは重要である。このR形状により、応力が一箇所に集中することを防ぎ、振動体2の強度が向上する。その結果、耐久性が向上するとともに、より大きな振幅で振動させることが可能になり、より高速駆動できるアクチュエータを提供できる。
図3は振動体2の製造方法を説明する模式図である。
図3の(a)に示すように、円筒形の圧電素子3の両端に第1のキャップ11をかぶせる。このキャップ11は圧電素子3の外形に対して大きな内径をもつマスク部11aを有し、これがひさしとなって圧電素子3の両端部をマスクする。
次に図3の(b)に示すように、第1のキャップ11をかぶせた圧電素子3をスパッタ成膜装置に入れ、回転させながら犠牲層12を成膜する。この時、先ほどのマスク部11aがあるので、犠牲層12の厚さは端に向かってしだいに薄くなる。犠牲層12の材料としては酸にもアルカリにも溶けるアルミニウムなどの金属や、有機溶剤に溶かすことのできる高分子材料が考えられる。
次に、図3の(c)に示すように、第2のキャップ13を圧電素子3の両端にかぶせ、回転させながら振動体2を犠牲層12の上に成膜する。振動体2の材料としては、繰り返し応力に強い耐久性の高い材料が好ましい、例えばステンレス系の材料、あるいは金属ガラス系の材料が好適である。特に金属ガラスは、非晶質の金属原子からなるもので、通常金属と異なり、非晶質であるため高耐久性を発揮できる。すなわち、非晶質は硬度が高く、耐摩耗性を向上させることができる。また同様に筒状部材1を金属ガラスで製作すれば、耐摩耗性を向上させることができる。こうした結果、さらに耐久性の高いアクチュエータを実現することができる。
次に、図3の(d)に示すように、犠牲層12を溶かし、振動体2と圧電素子3との間に隙間2aを形成する。この時、犠牲層12をとかす溶剤等と犠牲層12を接触させるためには、レーザ等により複数の微細な穴が形成された振動体2を使用することができる。 振動体に穴をあけることにより、接触部に隣接する隙間内の空気が圧縮されてもその穴から逃げるため圧力が高まることはない。従って振動体が浮上することを防止できる。その結果、振動体を大振幅で振動させても推力が落ちない。
このようにして製造することで、振動体2の圧電素子3との接続部2bを滑らかなR形状とすることができる。
本実施の形態では、振動体が共通電極を兼ねる構造であるが、圧電素子の片側に導体の薄膜をつけて、それを共通電極とする構成でもよい。ただし、振動体が導体であれば、共通電極として用いる場合は一方の電極を省略することができるため、簡便な構造とすることができる。
また、振動体と圧電素子との隙間に、振動体の振動に影響しない十分に柔らかい軟質材を充填してもよい。このような軟質材として、硬度の低いシリコンゴムなどが好適である。このような軟質材を、前述の製作工程における犠牲層として用いることで、犠牲層を残す構成にすれば、犠牲層を除去する工程が必要ないため、製作が容易になり、コストダウンの効果がある。
なお、振動体2が振動すると支持部材である筒状部材1と部分的に接触、非接触を高速に繰り返すこが、空気の圧力によって振動体2と筒状部材1が接触しない事態が考えられる。これは超音波浮上と呼ばれている。前述の振動体2に形成された複数の微細な穴により、この超音波浮上を防止することができる。
(変形例1)
また、微細な穴が形成された振動体2を使用する替わりに、図4(a)に示すように、あらかじめ圧電素子3に穴3aをあけ、犠牲層12と同じ材料で埋めておいても良い。圧電素子に設けられた穴3aは、冷媒循環用のポンプ5に接続される流路に接続することで、隙間2aに冷媒を循環させる事ができる。圧電素子を大振幅で高速振動させると、発熱量が大きくなる。冷媒を圧電素子と振動体の間の隙間に導くことにより、この熱を取り除くことができる。その結果圧電素子と振動体の温度上昇を抑えることができる。
(変形例2)
また、振動体2の筒状部材1との接触部は、必ずしも平面である必要は無く、図4(b)に示すように、振動体2が波状形状部2cを有する波板になっていてもよい。波板形状の振動体2は、犠牲層12を成膜する際に、網状のマスクをかけることで容易に製造することができる。
振動体2の振動中に、振動体2と筒状部材1の間における空気の圧力によって、振動体2が浮上してしまう、いわゆる超音波浮上が発生する。しかし振動体2を波板とすることにより、接触部に隣接する隙間内の空気が圧縮されても波板の谷部から逃げるため圧力が高まることはない。従って振動体が浮上することを防止できる。その結果、振動体を大振幅で振動させても推力が落ちない。
(第2の実施の形態)
図5は本発明の第2の実施の形態を示す断面図である。前述の第1の実施の形態を示す図1では、筒状部材1の内周を振動体2及び電圧素子3からなる移動体が相対的に移動している。これに対して本実施の形態は、中実のパイプである筒状部材21の外周を円筒状の振動体22及び電圧素子23からなる移動体が相対的に移動する。
振動体22は円筒状の部材であり、軸方向の中央部の直径は端部の直径よりも小さく、中央部が凹んだ形状をなしている。この凹んだ部分が筒状部材21と嵌合するように配置されている。圧電素子23は円筒状の部材であり、振動体22の両端部の外周と固定されている。振動体22の中央部と圧電素子3の間には隙間22aが形成されている。
圧電素子23の両端部の外周面には、それぞれ、第1の電極(分割電極)24aと第2の電極(分割電極)24bが取り付けられている。交流電源20aは、第1の電極24aと振動子22の間に振動電圧Vaを印加し、交流電源20bは、第2の電極24bと振動子22の間に振動電圧Vbを印加することで圧電素子23は振動する。すなわち振動子22は共通電極としての機能も兼ねている。圧電素子23の振動は振動体2により増幅され、振動体22と筒状部材21の接触部において発生する摩擦力の変化を推進力に変換ることで、振動体22及び電圧素子23からなる移動体が筒状部材21の軸方向に相対的に移動する。
尚、本実施の形態の駆動方法は前述の第1の実施の形態と同様であり、ここでは省略する。尚本実施の形態の効果は、第1の実施の形態と同様である。
(第3の実施の形態)
図6は本発明の第3の実施の形態を示す断面図である。本実施の形態は、板状の支持部材である板状体31と、板状の振動体32及び板状の圧電素子33からなる移動体を用いている。振動体32の両端部を圧電素子33に固定し、振動部である中央部において隙間32aを形成する。
板状の振動体32は、両側の端部近傍で滑らかな接続部32bで圧電素子33に接続される。接続部32bのR形状によって耐久性を大幅に改善することが可能である。振動体32の中央部は板状体31に接触する。ここで、重力の方向を下向きとすると、振動体32は自重によって板状体31に押し付けられているため、浮き上がることなく、接触状態を保つことができる。
前述の第1の実施の形態と同様に、圧電素子33の両端には、第1の電極34a、第2の電極34bが取り付けられている。交流電源30aは、第1の電極34aと振動子32の間に振動電圧Vaを印加し、交流電源30bは、第2の電極34bと振動子32の間に振動電圧Vbを印加することで圧電素子33は振動する。振動電圧Va、Vbによって発生する圧電素子33の振動が振動体32に伝わり、振動体32に進行波を発生させ、これに接している板状体31に対して相対移動する。
本実施例によれば、支持部材を板状の部材で構成できるので、スパッタなどの成膜法を用いれば簡便に製作することができる。また、振動体と支持部材である板状体との接触状態を保つための押し付け力は、前述の重力だけではなく、ばねや磁石を利用してもよい。
(第4の実施の形態)
次に、図7乃至9を用いて本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施形態は、第1の実施の形態で利用した進行波に替えて、定在波を利用した直動型のアクチュエータの構成を説明する。図7乃至9において、図1と同じ部材は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図7において図1と異なるのは、第2の電極4bが存在せず、圧電素子3の内周面には電極4が形成されている。また交流電源20aの振動電圧V1と交流電源20bの振動電圧V2は加算回路6で合成され、第3の振動電圧V3として振動体2と電極4の間に印加される。すなわち、振動体2の両端に同じ第3の振動電圧V3が印加されている。
定在波である振動電圧V3により、振動体2及び電圧素子3からなる移動体が筒状部材1の軸方向に相対的に移動する原理を説明する。
交流電源20aにより、図8(a)に示すに第1の振動電圧V1を、振動体2と電極4の間に印加することにより、圧電素子3は直径方向に振動する。第1の振動電圧V1は振動体2の固有振動数に一致する周波数で断続的に振動する。この振動を振動体2に伝えると、振動体2が加振され、図9の(a)に示すように、直径方向に振動振幅を持つ振動モードで振動する定在波が発生する。この定在波は振動体2がもつ固有振動モードであり、決まった周波数で共振し、大きな振幅を得ることができる。この振動により、振動体2の外側に配置した筒状部材1と振動体2は接触、非接触を繰り返すこととなる。
交流電源20bにより、図8(b)に示すに第2の振動電圧V2を、振動体2と電極4の間に印加することにより、圧電素子3は直径方向だけではなく、図9(a)、(b)の矢印Ra、Rbで示すように軸方向にも変形する。圧電素子2は、矢印Ra方向に伸びる動作と、矢印Rb方向に縮む動作を繰り返すこととなる。
従って、第2振動電圧V2により圧電素子2が矢印Ra方向に伸びるときに、第1の振動電圧V1を印加すれば、振動体2と筒状部材1を接触させ、摩擦力により筒状部材1を矢印Raの方向に押す事ができる。また逆に、第2振動電圧V2により圧電素子2が矢印Rb方向に縮むときに、第1の振動電圧V1の加振電圧を下げ振動振幅を小さくすれば、振動体2と筒状部材1の摩擦力は非常に小さくなり、筒状部材1は固定されたままとなる。
従って、図8(c)に示した、第1の振動電圧V1と第2の振動電圧V2を合成した、第3の振動電圧V3を印加することで、図9の(a)、(b)に示す状態が繰り返される。これにより振動体2及び電圧素子3からなる移動体は、筒状部材1の軸方向に相対的に移動する。
尚、2つの振動電圧V1、V2で圧電素子3を振動させる方法は、前述の第3の振動電圧V3を使用する替わりに、振動電圧V1、V2を別々に印加しても良い。すなわち、図10に示すように、振動電圧V1、V2を電極4に別々印加ですればよい。
アクチュエータの移動方向を変えるには、圧電素子2が矢印Rb方向に縮むときに、第1の振動電圧V1を印加し、圧電素子2が矢印Ra方向に伸びるときに、第1の振動電圧V1の加振電圧を下げればよい。つまり2つの振動電圧の位相V1、V1を変えることで、移動方向を変えることができる。
(第5の実施の形態)
図11は本発明の第5の実施の形態を示す断面図である。本実施の形態において前述の第4の実施の形態と異なるのは、電極4を3つに分割している点のみである。図11に示すように、両側の端部に2つの電極(分割電極)44a、44bと、中央部に位置する電極(分割電極)44cからなっている。
振動電圧V1をそれぞれ電極4a、4bに、中央部の電極4cに振動電圧V2をかける。振動電圧V2によって圧電素子3は軸方向に伸縮し、同時に、両端部に振動電圧V1をかけることにより、振動体2が加振し定在波の波頭を筒状部材1に接触させる。これを繰り返すことにより、振動体2及び電圧素子3からなる移動体は、筒状部材1の軸方向に相対的に移動する。
(第6の実施の形態)
図12は本発明の第6の実施の形態を示す断面図である。本実施の形態において前述の第4の実施の形態と異なり、電極4を2つに分割している。図12に示すように、両側の端部に2つの電極(分割電極)54a、54bが設けられている。また振動体2と圧電素子3の間に共通電極7を配置している。
振動電圧V1を電極4bに、振動電圧V2を電極4aに印加する。振動電圧V2によって圧電素子3は軸方向に伸縮し、同時に、両端部に振動電圧V1をかけることにより、振動体2が加振し定在波の波頭を筒状部材1に接触させる。これを繰り返すことにより、振動体2及び電圧素子3からなる移動体は、筒状部材1の軸方向に相対的に移動する。
振動体2とは別体に第2の電極7を設けているため、電気抵抗の低い材料、例えば銅や金などで電極を構成できる。電極を流れる電流による発熱を抑えることができるので、温度上昇を抑える効果がある。
(第7の実施の形態)
図13は本発明の第7の実施の形態を示す断面図である。本実施の形態は、前述の第4の実施の形態の振動体2及び電圧素子3からなる移動体を、軸と垂直平面で半分に切断した形態となっている。駆動方法は第4の実施の形態と同じである。
第1の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図。 図1の装置に進行波を発生させた様子を説明する模式図。 図1の装置の製造方法を説明する模式図。 第1の実施の形態における第1、第2の変形例を示す断面図。 第2の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図。 第3の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図。 第4の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図。 図7の装置の駆動信号を説明する模式図。 図7の装置の駆動方法を説明する模式図。 第4の実施の形態のアクチュエータの変形例を示す断面図。 第5の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図。 第6の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図。 第7の実施の形態におけるアクチュエータを示す断面図。 従来例によるアクチュエータを示す模式図である。 従来例によるアクチュエータを示す模式図である。
符号の説明
1、21 筒状部材
2、32 振動体
3、33 圧電素子
4、4a、4b、4c 第1の電極
7 第2の電極
31 板状体

Claims (12)

  1. 円筒状の支持部材の内周に沿って移動体が支持部材の軸方向を移動するアクチュエータにおいて、
    前記移動体は、
    円筒状の圧電素子と、
    前記圧電素子の一方の端部の内周面に取り付けられた第1の電極と、
    前記圧電素子の他方の端部の内周面に取り付けられた第2の電極と、
    圧電素子を介して前記第1の電極に対向した面に一端が固定され、圧電素子を介して前記第2の電極に対向した面に他端が固定され、中間部が前記支持部材と接触して配置されている円筒状の振動体と、を有し、
    前記第1の電極と前記振動体との間及び前記第2の電極と前記振動体との間に電圧をかけて前記圧電素子を振動させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とするアクチュエータ。
  2. 円柱状の支持部材の外周に沿って移動体が支持部材の軸方向を移動するアクチュエータにおいて、
    前記移動体は、
    筒状の圧電素子と、
    前記圧電素子の一方の端部の外周面に取り付けられた第1の電極と、
    前記圧電素子の他方の端部の外周面に取り付けられた第2の電極と、
    圧電素子を介して前記第1の電極に対向した面に一端が固定され、圧電素子を介して前記第2の電極に対向した面に他端が固定され、中間部が前記支持部材と接触して配置されている円筒状の振動体と、を有し、
    前記第1の電極と前記振動体との間及び前記第2の電極と前記振動体との間に電圧をかけて前記圧電素子を振動させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とするアクチュエータ。
  3. 板状の支持部材の上面に沿って移動体が移動するアクチュエータにおいて、
    前記移動体は、
    板状の圧電素子と、
    前記圧電素子の一方の端部の上面に取り付けられた第1の電極と、
    前記圧電素子の他方の端部の上面に取り付けられた第2の電極と、
    圧電素子を介して前記第1の電極に対向した面に一端が固定され、圧電素子を介して前記第2の電極に対向した面に他端が固定され、中間部が前記支持部材と接触して配置されている振動体と、を有し、
    前記第1の電極と前記振動体との間及び前記第2の電極と前記振動体との間に電圧をかけて前記圧電素子を振動させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とするアクチュエータ。
  4. 振動する前記振動体の波頭と前記支持部材の接触部における摩擦によって、前記移動体を移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のアクチュエータ。
  5. 前記第1の電極と前記振動体との間及び前記第2の電極と前記振動体との間には、お互いの位相が異なり、周波数が同じ電圧を印加することで、前記振動体の前記振動部に進行波を発生させ、前記移動体を移動させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1つに記載のアクチュエータ。
  6. 前記圧電素子を前記支持部材の軸方向に伸縮させる第1の電圧に、前記振動体の固有振動数と同じ周波数をもつ第2の電圧を、前記第1の電圧が増加または減少する時間帯において断続的に加えることにより形成した合成波を、前記第1の電極と前記振動体との間及び前記第2の電極と前記振動体との間に交互に印加することで、前記振動体の前記振動部に断続的な定在波を発生させ、前記移動体を移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
  7. 前記振動部、あるいは前記支持部材は金属ガラスにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のアクチュエータ。
  8. 円筒状の支持部材の内周に沿って移動体が支持部材の軸方向を移動するアクチュエータにおいて、
    前記移動体は、円筒状の圧電素子と、
    前記圧電素子の一方の端部の内周面に取り付けられた第1の電極と、
    両端が前記圧電素子の外周面に固定され、中間部が前記支持部材と接触して配置されている円筒状の振動体と、を有し、
    前記第1の電極と前記振動体との間に定在波を発生させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とするアクチュエータ。
  9. 円筒状の支持部材の内周に沿って移動体が支持部材の軸方向を移動するアクチュエータにおいて、
    前記移動体は、円筒状の圧電素子と、
    前記圧電素子の一方の端部の内周面に取り付けられた第1の電極と、
    前記圧電素子の他方の端部の内周面に取り付けられた第2の電極と、
    前記圧電素子の中央部の内周面に取り付けられた第3の電極と、
    圧電素子を介して前記第1の電極に対向した面に一端が固定され、圧電素子を介して前記第2の電極に対向した面に他端が固定され、中間部が前記支持部材と接触して配置されている円筒状の振動体と、を有し、
    前記圧電素子を前記支持部材の軸方向に伸縮させる第1の電圧に、前記振動体の固有振動数と同じ周波数をもつ第2の電圧を、前記第1の電圧が増加または減少する時間帯において断続的に加えることにより形成した合成波を、前記第1の電極と前記振動体の間及び前記第2の電極と前記振動体の間と、前記第3の電極と前記振動体の間に交互に印加することで圧電素子を振動させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とするアクチュエータ。
  10. 円筒状の支持部材の内周に沿って移動体が支持部材の軸方向を移動するアクチュエータにおいて、
    前記移動体は、円筒状の圧電素子と、
    前記圧電素子の一方の端部の内周面に取り付けられた第1の電極と、
    圧電素子を介して前記第1の電極に対向した面に一端が固定され、他端が前記支持部材と接触して配置されている円筒状の振動体と、を有し、
    前記圧電素子を前記支持部材の軸方向に伸縮させる第1の電圧に、前記振動体の固有振動数と同じ周波数をもつ第2の電圧を、前記第1の電圧が増加または減少する時間帯において断続的に加えることにより形成した合成波を、前記第1の電極と前記振動体の間に印加することで圧電素子を振動させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とするアクチュエータ。
  11. 円筒状の支持部材の内周に沿って移動体が支持部材の軸方向を移動するアクチュエータにおいて、
    前記移動体の一方の端部と他方の端部は、中間部が前記支持部材の内周面と接触して配置されている円筒状の振動体により連結されており、
    前記一方の端部には、前記振動体の内周面に配置された圧電素子と、該圧電素子の内周面に取り付けられた第1の電極とが設けられており、
    前記他方の端部には、前記振動体の内周面に配置された圧電素子と、該圧電素子の内周面に取り付けられた第2の電極とが設けられており、
    前記第1の電極と前記振動体との間及び前記第2の電極と前記振動体との間に電圧をかけて前記圧電素子を振動させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とするアクチュエータ。
  12. 円柱状の支持部材の外周に沿って移動体が支持部材の軸方向を移動するアクチュエータにおいて、
    前記移動体の一方の端部と他方の端部は、中間部が前記支持部材の外周面と接触して配置されている円筒状の振動体により連結されており、
    前記一方の端部には、前記振動体の外周面に配置された圧電素子と、該圧電素子の外周面に取り付けられた第1の電極が設けられており、
    前記他方の端部には、前記振動体の外周面に配置された圧電素子と、該圧電素子の外周面に取り付けられた第2の電極が設けられており、
    前記第1の電極と前記振動体との間及び前記第2の電極と前記振動体との間に電圧をかけて前記圧電素子を振動させ、前記圧電素子の振動を前記振動体によって増幅させることで、前記移動体を移動させることを特徴とするアクチュエータ。
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