JP5158776B2 - グリセロールからのd−グリセリン酸の製造方法 - Google Patents

グリセロールからのd−グリセリン酸の製造方法 Download PDF

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本発明は、D-グリセリン酸生産能を有するアセトバクター(Acetobacter)属またはグルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)属に属する微生物を、グリセロールを含む培地中で培養することにより、または当該微生物の微生物菌体もしくはその処理物をグリセロールに反応させる工程を含む、D-グリセリン酸の製造方法に関する。
近年高騰する石油資源だけに依存しない原料転換政策として、あるいは二酸化炭素削減といった地球温暖化問題に対応する技術的概念としてバイオリファイナリーが注目されている。バイオマスは再生可能なエネルギーの中でもカーボンニュートラルであることから、バイオエタノールやバイオディーゼルといったバイオ燃料の導入が世界的規模で進行している。バイオディーゼルは油脂類の主成分であるトリグリセリドをエステル交換反応により脂肪酸メチルエステルにして燃料とするが、本反応に伴って副生するグリセロールの有効利用法の開発がプロセス開発の鍵となっている。近年のバイオディーゼル使用量の急速な増加を考えると、グリセロール問題の解決は急務といえる。またオレオケミカル産業においても、石油代替・再生産可能資源である植物油脂を原料としたプロセスが導入されていることから、同様にグリセロールの有効活用が大きな問題となっている。
これまでに、生物的および化学的な触媒システムを用いてグリセロール(グリセリン)から有用物質を生産する試みが数多くなされており、グリセロールを原料とした化学触媒によるグリセリン酸の製造法に関しては、D,L-グリセリン酸またはその塩の製造方法(例えば特許文献1、2、3)が知られている。また、酸化能を有する微生物を用いて原料基質の酸化物を得る方法において、その原料としてグリセロールを用いることも知られていた(特許文献4)が、目的とする酸化物質は2-ケト-L-グロン酸、酢酸などであって、グリセリン酸を製造しようとするものではなかった。
D,L-グリセリン酸のうち、光学活性体のD-グリセリン酸は、L-セリン等のアミノ酸原料として(特許文献5)、または医薬品、農薬製造の中間体として(特許文献6)、さらには樹脂等への添加剤あるいはその原料(特許文献7)として用いられる産業上有用な化学物質である。
しかしながら、化学触媒による方法(特許文献1、2、3)ではD,L-グリセリン酸のラセミ体が生成され、D-グリセリン酸を得るためには、ラセミ体を化学的手段または微生物学的手段によってラセミ分割してD-グリセリン酸を得る(特許文献8)必要がある。従って、原料のグリセロール含有溶液から、D-グリセリン酸を直接的かつ選択的に製造する方法の開発は非常に重要である。
これまでにグリセロールを原料としてD-グリセリン酸を直接製造する方法として、グルコノバクター(Gluconobacter)属微生物を用いる方法が知られている(特許文献9)が、グリセロールを基質としてD-グリセリン酸を生産する能力が報告されている微生物は、このグルコノバクター属微生物の1例しかないため、それ以外の属に属する微生物の中から、グリセロールからD-グリセリン酸を生産可能な微生物の探索が望まれていた。かしながら、当文献では、グリセロールからD-グリセリン酸への酸化工程がどのような酵素が関与し、どのようなステップで行われるかについての検討がなされていないので、他にどのような微生物が同様な機能を有するかについての教示はなかった。また、当文献中に記載される培養条件は、微酸性条件(pH4〜7)であるが、バイオディーゼル燃料(BDF)製造等におけるエステル交換反応は、ほとんどがアルカリ触媒法により行われるため、副生成する廃グリセロール溶液(粗グリセロール)は、通常pH8〜11程度のアルカリ性である。粗グリセロールから中和工程なしにD-グリセリン酸を直接生産できるためには、グリセロール含有溶液がアルカリ条件(pH8〜11)のままでD-グリセリン酸が生産可能な微生物が望まれる。
また、エステル交換反応により副生した粗グリセロールなどの場合、一般に含有するグリセロール濃度が高いので、アルカリ性であることに加えて、できるだけ(例えば15%(v/v)以上)高濃度のグリセロール濃度でも生育でき、かつD−グリセリン酸高生産性の微生物であることは、さらに望まれる特性である。しかし、特許文献9に記載されるグルコノバクターを用いたD−グリセリン酸製造例では、培地中のグリセロール濃度はたかだか10重量%でしかなく、満足できるものではなかった。
特開平5-331100号公報 特表2004-529894号公報 特開昭60-226842号公報 特表2001-524811号公報 特開平3-91489号公報 特表2006-507268号公報 特開2004-67725号公報 特開平1-225486号公報 特公平7-51069号公報 J. Trcek, M. Teuber: FEMS Microbiol. Lett., 208, 69 (2002) J. Trcek: Syst. Appl. Microbiol., 28, 735 (2005)
そこで、本発明は、グルコノバクター(Gluconobacter)属以外の属に属する微生物の中から、グリセロールを基質としてD-グリセリン酸を生産可能な微生物を探索し、当該微生物を用いて、グリセロールを原料とするD-グリセリン酸の製造方法を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、本発明者等は、グリセロールから光学活性なD-グリセリン酸を生産可能な微生物を探索すべく鋭意検討した結果、アセトバクター属およびグルコンアセトバクター属に属する微生物が、D-グリセリン酸生産能を示すことを見出し、本願発明に至った。
その上、上記特許文献9によれば、D-グリセリン酸産生能を有するグルコノバクター属微生物によるD-グリセリン酸を産生するための培養条件は微酸性条件(pH4〜7)であるが、本発明で培養時のpH条件を確認した結果、むしろ初期状態の培養液pHをアルカリ条件下に設定する方がD−グリセリン酸の産生効率が高まることが判明した。アセトバクター属およびグルコンアセトバクター属は、グルコノバクター属細菌と同様、エタノールから酢酸への酸化能を有する酢酸菌であり、微生物自身の至適培養条件が中性から微酸性条件であることからみて、アルカリ条件下での高生産性は驚くべき結果であった。
なお、上記文献中のグルコノバクター属微生物の培養条件を再度検討してみると、グルコノバクター属微生物においても初発の培養液pHをアルカリ条件にするとD−グリセリン酸の産生が認められたため、本出願と同日付で、グリセロールを基質とするD−グリセリン酸産生能を有する酢酸菌を用いた、アルカリ条件下でのD−グリセリン酸製造方法については別出願を行っている。
また、従来知られていた培地中のグリセロール濃度はたかだか10%(v/v)でしかなかった(特許文献9)が、本発明の微生物(特にアセトバクター属微生物)を用いた場合では、初発培地のグリセロール濃度は、低濃度(10%(v/v)以下)よりもさらに高濃度の15%(v/v)での方がむしろ生産性が高まるという結果を得た。
なお、アセトバクター属およびグルコンアセトバクター属に属する微生物は、エタノールからの酢酸生産能に基づき、グルコノバクター属細菌と同じ酢酸菌として分類されているが、グルコノバクター属細菌のグリセロールを資化してD-グリセリン酸に変換する反応機構は全く解明されておらず,関与する酸化酵素の同定もなされていなかったため、エタノールから酢酸への酢酸菌としての酸化反応と、グリセロールからD-グリセリン酸への酸化反応とを結びつけて考えられてはいなかった。しかし、本発明により、グルコノバクター属細菌と共に典型的な酢酸菌であるアセトバクター属およびグルコンアセトバクター属に属する微生物においても、グリセロールからD−グリセリン酸への酸化能力が確認されたことから、共通する反応機構や共通酵素の存在の可能性も示唆され、今後の研究の待たれるところである。
さて、近年の分子生物学的手法を使った解析により、16S-23S rDNAスペーサー領域の塩基配列や、ピロロキノリンキノン(PQQ)依存性アルコール脱水素酵素サブユニットをコードする遺伝子の塩基配列における、属特異的な配列の存在が知られるようになり、これらを利用した酢酸菌各属の同定方法が開発されている(例えば非特許文献1、2)。
例えば、国立遺伝学研究所DDBJのデータベースより取得したアセトバクタートロピカリス(Acetobacter tropicalis)とグルコノバクターセリナス(Gluconobacter cerinus)の16S rRNA遺伝子(それぞれのアクセッション番号は、AB032354およびAB178401)の配列1409 bpを比較してみるとその相同性は94.7%であり、一般に保存性の高いrRNA配列の相同性としては非常に低い。また、グルコンアセトバクターハンセニ(Gluconacetobacter hansenii)とグルコノバクターセリナス(Gluconobacter cerinus)の16S rRNA遺伝子(それぞれのアクセッション番号は、X75620およびAB178401)の配列1409 bpを比較した結果も94.2%の相同性であり同様に非常に低い。これらの事実は、アセトバクター属およびグルコンアセトバクター属の微生物は、グルコノバクター属とは同じ酢酸菌と呼ばれ、エタノールから酢酸の生成能という機能的には類似した微生物ではあるが、分子系統解析によれば、進化の分岐した時期はかなり早い時期にさかのぼれるものであり、分類上もかなりの距離がある微生物群である。
本発明は、以上の知見を得て完成することができたものであり、具体的には以下の通りのものである。
〔1〕 グリセロールを基質とするD−グリセリン酸の製造方法であって、D-グリセリン酸生産能を有するアセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物を、グリセロール含有培地中で培養する工程を含むことを特徴とする、D-グリセリン酸の製造方法。
〔2〕 グリセロール含有培地の初発グリセロール濃度が15%(v/v)以上であることを特徴とする、前記〔1〕に記載のD-グリセリン酸の製造方法。
〔3〕 グリセロールを基質とするD−グリセリン酸の製造方法であって、D-グリセリン酸生産能を有するアセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物を培養し、得られた微生物菌体またはその処理物を、グリセロール含有溶液に対して反応させる工程を含むことを特徴とする、D-グリセリン酸の製造方法。
〔4〕 微生物の培養工程は微酸性から中性条件下で行い、グリセロール含有溶液との反応工程はアルカリ性条件下で行う、前記〔3〕に記載のD-グリセリン酸の製造方法。
本発明により、グルコノバクター属微生物以外の微生物である、アセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物を用いて、グリセロールから工業的利用価値のあるD-グリセリン酸を直接製造する方法を提供できた。両微生物は、アルカリ条件での培養条件で効率的にグリセロールをD-グリセリン酸に変換する能力を有しているので、アルカリ性の粗グリセロールを原料としたD-グリセリン酸製造の際に中和工程なしに利用できるメリットがある。しかも、特にアセトバクター属微生物の場合は、高濃度グリセロール含有溶液での生産性が高いため、より利用性が高い。また、当該微生物の微生物菌体もしくはその処理物をグリセロール含有溶液に反応させることでもD-グリセリン酸を製造することができる。
本発明に用いる微生物としては、アセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属し、グリセロールをD-グリセリン酸へと変換する能力を有している微生物であれば、いずれも用いることができる。具体的なアセトバクター属細菌の例としては、アセトバクターアセティ(Acetobacter aceti)NBRC14818株、アセトバクターシビノンジェンシス(Acetobacter cibinongensis)NBRC16605株、アセトバクターエスチュネンシス(Acetobacter estunensis)NBRC13751株、アセトバクターインドネシエンシス(Acetobacter indonesiensis)NBRC16471株、アセトバクターラバニエンシス(Acetobacter lovaniensis)NBRC13753株、アセトバクターオリエンタリス(Acetobacter orientalis)NBRC16606株、アセトバクターパスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)NBRC3188株、アセトバクターペルオキシダンス(Acetobacter peroxydans)NBRC13755株、アセトバクターシジギ(Acetobacter syzygii)NBRC16604株、アセトバクタートロピカリス(Acetobacter tropicalis)NBRC16470株、アセトバクター属細菌(Acetobacter sp.)NBRC3283株等が挙げられる。また、具体的なグルコンアセトバクター属細菌の例としては、グルコンアセトバクターユーロパス(Gluconacetobacter europaeus)NBRC3261株、グルコンアセトバクターハンセニ(Gluconacetobacter hansenii)NBRC14820株、グルコンアセトバクターリクファシエンス(Gluconacetobacter liquefaciens)NBRC12388株、グルコンアセトバクターオボディエンス(Gluconacetobacter oboediens)NBRC14822株、グルコンアセトバクターキシリナス(Gluconacetobacter xylinus)NBRC15273株、グルコンアセトバクター属細菌(Gluconacetobacter sp.)NBRC14815株等が挙げられる。
さらに、本発明に用いる微生物には、グリセロールからD-グリセリン酸を生産することができる限り、上記微生物の同じ属に属する程度の変異株であれば包含される。これは、自然突然変異によるものであってもよいし、紫外線照射や化学的変異原処理等、何らかの物理的または化学的処理を施すことによって塩基の付加、欠失、置換等を人工的に誘発したものであってもよい。
本発明で、「アルカリ性のグリセロール含有培地中で培養する」というとき、初発pHがアルカリ性(pH7<)であることを指す。本発明の微生物は培地中のグリセロールを利用してD-グリセリン酸を産生するため、培養中にpHは徐々に下がる傾向にある。初発pHをアルカリ性に調整しても、24時間以上培養を続けると通常培地のpHは徐々に中性から微酸性に変化する。培地の初発pHはpH4〜pH11でよいが、好ましくはpH7以上のアルカリ性、特にpH8〜pH10、最も好ましくはpH8〜9である。
これらの微生物を培養する培地中のグリセロール含有量(初発グリセロール含有量)は0.1%〜30%(v/v)の範囲で適宜設定することができる。例えば1〜20%(v/v)、好ましくは5〜15%(v/v)、より好ましくは15%(v/v)である。本発明においては、アルカリ性グリセロール含有溶液として、トリグリセリドのエステル交換反応により副生した廃グリセロール溶液などを用いることができるが、これら廃グリセロール溶液は一般にグリセロール濃度が高いので、15%(v/v)以上の高濃度グリセロール含有溶液でのD−グリセリン酸生産性が高い点はきわめて大きなメリットである。
培地のグリセロール以外の基本的組成は、当該技術分野に知られるものを任意に選択することができる。窒素源としては、酵母抽出液(酵母エキス、例えばDIFCO社製BactoTM Yeast Extractなど)、ポリペプトン、ペプトン、コーンスティープリカー等が利用でき、特に、酵母抽出液、ポリペプトンが好ましい。その際の酵母抽出液濃度は10〜25g/l、特に20±5 g/lが最適である。その他、必要に応じて、例えば Na2HPO4、KH2PO4、MgSO4・7H2O、CaCl2・2H2O、FeCl3・6H2O 等の無機塩類を添加する。また、使用菌株の増殖を促進し、グリセロールからD-グリセリン酸への変換を促進するような有機物および無機物を適宜添加することもできる。
培養条件は特に制限はないが、例えば25〜35℃、好ましくは30℃の温度で、好気条件のもと、振とう培養することができる。このような培養条件の下、使用菌株を1〜7日間培養すると、培地中にD-グリセリン酸が生成する。
また、微生物菌体またはその処理物とグリセロールを作用させることによりD-グリセリン酸を生成させる場合にも、微生物の培養には前述の培地組成および培養条件を用いることができるが、その場合にはアセトバクター属またはグルコンアセトバクター属微生物の至適培養pHであるpH5.4からpH6.3で培養することが好ましい。
本発明の微生物菌体としては、例えば菌体そのもの、または菌体を含有した培養液等が挙げられる。一方、菌体処理物としては、例えば超音波処理、凍結乾燥処理、乾燥処理、機械的破砕処理、界面活性剤処理、酵素処理した菌体等が挙げられる。これら反応により、水溶液中にD-グリセリン酸が生成する。
培養液中に生成蓄積されたD-グリセリン酸の単離、精製は当業者が任意の方法により行うことができるが、遠心分離等の方法により菌体を除去したあとの反応液を、例えば、イオン交換樹脂による分離方法、カルシウム・マグネシウムイオン等との金属塩とする分離方法、エステル体にしたのち蒸留する分離方法等により単離、精製することができる。
以下に、本発明について実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
なお下記実施例におけるグリセロールおよびD-グリセリン酸の定量は糖と有機酸を同時に分析するカラム(Shodex社製 SH1011)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて行った。
〔実施例1〕
各種微生物保存機関より入手したアセトバクター属に属する微生物菌株、およびグルコンアセトバクター属に属する微生物菌株を、グルコース0.5%、酵母エキス0.5%、ポリペプトン0.5%、MgSO4・7H2O 0.5%の組成を有する前培養培地(5 ml/試験管)に植菌し、30℃で48時間往復振とう培養を行った。次いで、表1に示す組成で初発グリセロール濃度が10%(v/v)もしくは5%(v/v)の培地30 mL(pH 7)が入った300 mL容三角フラスコに上記培養液を1.5 mLずつ植菌した。培養は、温度30℃、振とう200rpmで行った。
Figure 0005158776
前述した方法による本培養開始後、4日後の培養液を遠心分離して菌体を除去し、上清中のD-グリセリン酸量を定量したところ、生成量には個体差があるものの、試験したアセトバクター属、およびグルコンアセトバクター属の全ての菌株でD-グリセリン酸能が認められた(表2)。
Figure 0005158776
〔実施例2〕
アセトバクタートロピカリス NBRC16470株およびグルコンアセトバクターハンセニ NBRC14820株について実施例1と同じ前培養を行い、次いで表3に示す組成の、高濃度グリセロール含有培地を用いてpH7に調整し、実施例1と同様に本培養を行った。本培養開始4日後に生成したD-グリセリン酸量を定量したところ、下記の表4の通りであった。この結果より、アセトバクタートロピカリス NBRC16470株の場合は、より高濃度のグリセロール存在下で、D-グリセリン酸産生量が向上することが明らかとなった。
Figure 0005158776
Figure 0005158776
〔実施例3〕
アセトバクタートロピカリス NBRC16470株について実施例1と同じ前培養を行い、次いで表5に示す組成のうち、窒素源(0.5 g/l)としてポリペプトン(日本製薬製)、ぺプトン(DIFCO社製BactoTM Pepton)、酵母エキス(DIFCO社製BactoTM Yeast Extract)、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウムをそれぞれ0.5 g/l入れた培地を用いて、実施例1と同様に本培養を行った。本培養開始4日後に生成したD−グリセリン酸量を定量したところ、下記の表6の通りであり、窒素源としては、特に酵母抽出液、ポリペプトンが優れていることがわかった。
Figure 0005158776
Figure 0005158776
〔実施例4〕
アセトバクタートロピカリス NBRC16470株について実施例1と同じ前培養を行い、次いで表7に示す組成のうち、酵母エキス濃度を5〜40 g/lとした培地を用いて、実施例1と同様に本培養を行った。本培養開始4日後に生成したD−グリセリン酸量を定量したところ、下記の表8の通りであり、酵母抽出液濃度は10〜25g/l、特に20±5 g/lが好ましいことがわかった。
Figure 0005158776
Figure 0005158776
〔実施例5〕
アセトバクタートロピカリス NBRC16470株、およびグルコンアセトバクターハンセニ NBRC14820株について実施例1と同じ前培養を行い、次いで表9に示す組成の培地をpH7〜9に調整した培地を用いて、実施例1と同様に本培養を行った。本培養開始4日後に生成したD−グリセリン酸量を定量したところ、下記の表10の通りであった。このようにいずれの菌株も、培地の初発pHをpH8,9といったアルカリ側に調整しても、15%(v/v)という高濃度グリセロール含有培地であるにもかかわらず、D−グリセリン酸能を有しており、特にアセトバクタートロピカリス NBRC16470株は、アルカリ側でD−グリセリン酸の生産量は増加した。また反応液を遠心分離後、強陰イオン交換樹脂、ダウエックス1-X8 (Cl型)(ダウケミカル社製)を用いてD−グリセリン酸を溶出後、光学分割用カラム、キラルパックMA(+)(ダイセル化学工業製)を用いてHPLC分析した。その結果、D−グリセリン酸標品(シグマ社)とピークの保持時間が完全に一致した。
Figure 0005158776
Figure 0005158776
〔実施例6〕
アセトバクタートロピカリス NBRC16470株について実施例1と同じ前培養を行った。次いで、表8に示す組成の培地(ただし酵母抽出液濃度は20g/L,pH8.2)500 mlが入った1 L容ミニジャーに上記培養液を25mlずつ植菌した。培養は、温度30℃、通気量0.8 vvm、攪拌500 rpmで行った。生成したD−グリセリン酸量を定量したところ、下記の図1の通りであり、4日間の反応で25.1 g/lであった。このように、初発pHをアルカリ性に調整しても、24時間以上培養を続けると通常培地のpHは徐々に中性から微酸性に変化する傾向があることがわかった。
アセトバクター属細菌のグリセロール培地での初発pH8.2からのpH変化とD−グリセリン酸生産量の変化

Claims (4)

  1. グリセロールを基質とするD−グリセリン酸の製造方法であって、D-グリセリン酸生産能を有するアセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物を、グリセロール含有培地中で培養する工程を含むことを特徴とする、D-グリセリン酸の製造方法。
  2. グリセロール含有培地の初発グリセロール濃度が15%(v/v)以上であることを特徴とする、請求項1に記載のD-グリセリン酸の製造方法。
  3. グリセロールを基質とするD−グリセリン酸の製造方法であって、D-グリセリン酸生産能を有するアセトバクター属またはグルコンアセトバクター属に属する微生物を培養し、得られた微生物菌体またはその処理物を、グリセロール含有溶液に対して反応させる工程を含むことを特徴とする、D-グリセリン酸の製造方法。
  4. 微生物の培養工程は微酸性から中性条件下で行い、グリセロール含有溶液との反応工程はアルカリ性条件下で行うことを特徴とする、請求項3に記載のD-グリセリン酸の製造方法。
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