JP5157115B2 - 回折格子から成る表示体およびそれを応用した印刷物 - Google Patents
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また、微細な凹凸によって光を散乱させ、これによる像表示を行う方法も知られている(特許文献1参照)。
また、光の散乱による像表示は、上述の回折格子とは異なり、白色で安定した像となる。これらと回折格子あるいはホログラムを組み合わせることにより、見え方のバリエーションは増えるが、効果は目視効果のみに留まる。したがって、真偽判定は、目視による観察結果に基づかざるを得ない。
一方、微小な文字などを電子線描画装置などにより形成し、セキュリティ用途の真偽検証パターンとして用いる方法もある。しかし、これらは顕微鏡などを用いて検証するためだけのものであり、目視時の視覚効果は特に無い。
本発明は、従来の技術における、前記の様な問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、視覚効果を高める上で有利であり、偽造防止効果が高く真偽判定も容易な表示体および印刷物を提供することにある。
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載の表示体において、前記各パターンセルが画素として表示する輝度に応じて選択的に配置されていることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項1記載の表示体において、前記複数のパターンセルは、前記単位要素が前記表意図形で構成された複数のパターンセルを含み、前記単位要素が前記表意図形で構成された各パターンセルの前記単位要素を同一とし、かつ、前記各パターンセルが画素として表示する輝度に応じて、該画素に対応する前記表意図形で構成されたパターンセルの前記単位要素の配置間隔を変化させていることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3に何れか1項記載の表示体において、前記単位要素が線状またはマトリクス状に複数配置されていることを特徴とする。
また、本発明の請求項5に係る印刷物は、請求項1乃至4に何れか1項記載の表示体を、印刷が施された基材の表面に配置したことを特徴とする。
また、本発明の表示体は、回折格子および2次元パターン共に凹凸によって構成されているため、凹凸の複製のみで両者の構成や位置関係、機能を維持したまま、精密に容易な製造を行うことが出来る。特に、同一面に形成される凹凸構造であることから、工程を増やすことなく、回折格子を形成する微細加工装置によって、回折格子と同等の細かさで2次元パターンを形成することができるため、簡便に極めて高精細なパターンを用いることができる。
更に、回折格子は、直線状や曲線状からなる凸部あるいは凹部を並列した集合体であり、2次元パターンも表意図形および/または機械によって読み取り可能な情報コードを凸部あるいは凹部として形成した複雑な微小図形であるため、これらを正確に真似することは極めて困難であり、偽造防止効果が高い。
また、複数のパターンセルは、1次元バーコードまたは2次元バーコードで構成された第1のパターンセルと、第1のパターンセルの1次元バーコードまたは2次元バーコードと類似しかつ該1次元バーコードまたは2次元バーコードと異なる1次元バーコードまたは2次元バーコードで構成された第2のパターンセルとを含んでいるため、通常観察時には判読すべき第1の2次元パターンがどの位置に存在するかを判断することが出来ないため、判読すべき第1の2次元パターンが含まれるパターンセルの位置を知っている者のみが正しい情報を読み取り、そうでない者は類似した第2のパターンセルから正しい情報を抽出することができなくなり、偽造防止効果を極めて高くできる。
一方、回折格子からの回折光を利用した光学的な複製方法によっても、本発明の表示体の2次元パターン部分は複製できないため、偽造を極めて困難とすることができる。
回折格子の機能は、入射した光に対して、特定方向に強い回折光を生じることである。
回折光のうち最も代表的な1次回折光の射出角度βは、回折格子の格子線に直交する面内において、下記式によって決定される。
d=λ/(sinα−sinβ) ・・・・・(1)
ただし、dは回折格子の格子間隔、λは入射光および回折光の波長(観察される色に対応)、αは0次回折光(照明光の透過光や正反射光)の射出角度である。すなわち、αは直接的に入射角度に対応している。
白色光を入射した場合には、1次回折光の角度は波長毎に異なることになるため、回折格子は分光作用を有し、観察位置によって虹色に変化して見えることになる。
典型的な条件として、格子面に対して垂直方向に回折光が射出する条件を採用すると、1次回折光の射出角度β=0度であり、このときの0次回折光の角度をαNとすると、上記(1)式は次のように簡略化される。
d=λ/sinαN ・・・・・(2)
すなわち、特定波長の回折光が垂直方向に射出される条件を満たすためには、格子間隔dと、回折格子面の法線に対する照明光の入射角度(αNに対応)の対応関係を(2)式のようにすればよい。
以上から、回折格子の条件を決定した場合、それに対応する照明光の条件について、格子の角度(格子線の方向)の変化は格子面の法線を回転軸として照明光の入射方向を変えることに対応し、格子間隔dの変化は回折格子面の法線に対する照明光の入射角度(αNに対応)を変えることに対応するといえる。このような回折格子と照明光の関係は垂直方向に限らず、条件を一般化しても(1)式の空間的成分を分けて考えることなどで、同様に対応関係を把握することができる。
加えて、回折格子セルにおいて、回折効率や回折格子を形成する面積を変えることによって、回折格子セルから射出される回折光の総量を変化させることができる。すなわち、画素である回折格子セル毎に回折光の総量を変化させることにより、観察時の画素毎の輝度を変化させることができる。
したがって、本発明の表示体において、回折格子の角度や格子間隔の異なる回折格子セルを用い、その回折効率や面積を変化させることによって、観察可能な方向、観察される像の色や輝度を自由に設定でき、フルカラー像の表示や立体像の表示などが可能となる。
本発明の表示体においては、回折格子セルに加えて、パターンセルを画素として用いている。パターンセルは、画素構造よりも小さい、単位要素から構成された任意の2次元パターンの凹凸であるため、一般的に回折格子のようなはっきりとした分光作用は現れない。視覚効果としては、光散乱に近い効果を呈することになり、2次元パターンを構成する単位要素やその配置によって、光散乱性は変化する。ここで特に、凹凸の密度を高くすると、各要素が光を散乱する効果に寄与するため、散乱光強度が増す(凹凸同士の平均的な配置間隔が小さくなることに伴い、散乱光の拡がり方も大きくなる傾向になる)。一方、凹凸の深さ(凸部の場合の高さを含む)を大きくすると、その要素が光を散乱する効果が大きくなり、散乱光強度が増す。
また、単位要素の大きさを小さくすることでも、局所的な凹凸の配置間隔が小さくなり、散乱光の拡がり方が大きくなる。一方、パターンセル内での単位要素の数を減らすと、マクロな凹凸の平均密度が小さくなるため、散乱光強度を低下させることができる。
したがって、以上の組み合わせにより、パターンセル毎に光散乱性を任意に設定することができる。加えて、散乱性が顕著になる方向は、2次元パターンを構成する単位要素がどのような微細形状を持っているかに依存し、例えば、微細形状が線状構造の場合は線の幅方向が構造がより小さいために大きく散乱し、線の長さ方向には散乱性が小さく、円構造の場合は、全ての方向に同様の散乱性が得られる。実際の2次元パターンはこれらの複合と考えることができ、したがって、散乱光分布を単位要素やその配置の設計によって任意に設定できる。
以上より、パターンセルの光散乱性を適切に設定することにより、観察時の画素毎に予め設定された方向からは予め設定された散乱輝度で表示された階調画像を観察することができる。本発明においては、回折格子セルとパターンセルとが表示体を構成しているため、回折と散乱の視覚効果の差異から、特有の像表示が行え、真偽判定にも役立つ。
更に、パターンセルをルーペや顕微鏡によって拡大観察するなどして、簡便に通常観察とは別の情報を得ることができる。もちろん、類似品が存在した場合の真正品との区別にも、判定者が2次元パターンを確認することにより、容易かつ確実に区別を行うことが可能である。2次元パターンの単位要素を機械によって読み取り可能なコードとすることにより、自動的な真偽判定も可能となる。また、単位要素を文字や記号、ロゴマークなどとすることにより、人間の認知・判断能力を活用して、瞬時に本発明の表示体に記録された情報を読み取ったり、真偽判定を行うことが可能である。したがって、例え、通常の目視観察では似たように見える偽造品ができたとしても、容易にかつ確実に真偽を判別することができる。
したがって、パターンセルを画素として、特定方向から観察した際に、予め決められた濃淡で表現された画像を確実にかつ簡便に表示することができる。
また、拡大観察時には、印刷されたマイクロ文字や細紋パターンなどと、本発明のパターンセルの単位要素を確認することにより、一層確実な真偽判定が行える。
特に、本発明のパターンセルの凹凸は回折格子と同等の微細さを容易に持たせられるため、目視観察(印刷および本発明の表示体全体)、ルーペなどによる簡易拡大観察(印刷および粗い構造の単位要素)、顕微鏡などによる高倍率拡大観察(細かい構造の単位要素)、というレベルの異なる検査を行うことができ、確実な真偽判定、高い偽造防止効果を実現できる。
図1は、本発明の表示体をカードに貼付して印刷物とした構成例を示す説明図である。
図2は、本発明の表示体の構成例を示す平面図である。
図3は、本発明の表示体をカードに貼付して印刷物とした構成例を示す断面図である。
図4は、本発明の表示体における単位要素の深さを変えた例を示す断面図である。
図5は、本発明の表示体における単位要素の深さを変えた別の例を示す断面図である。
回折格子セル10とパターンセル20によって図柄が表現された表示体1がカード90上に形成されている。
表示体1において回折格子セル10を構成する回折格子の角度や格子間隔を適切に設定することにより、各々の回折格子からの回折光によって様々な視覚効果を伴った表示が行える。
一方、パターンセル20は、表示体1上の回折格子セル10が設けられていない箇所に設けられ、例えば微小な文字パターンを凹凸として形成したものであり、顕微鏡で観察すればこれらの文字パターンが観察でき、肉眼で直視すれば、文字パターンの構成や配置等によって異なる散乱光が観察される。
したがって、回折格子セル10を構成する回折格子の角度や格子間隔を、表示すべき画素の輝度および/または色、すなわち、表示する画像の輝度および/または色に応じて設定し、かつ、パターンセル20を構成する2次元パターンの凹凸の深さ、凹凸の密度、2次元パターンの大小の少なくとも1つを、表示すべき画素の輝度、すなわち、表示する画像の輝度に応じて設定することにより、固有の視覚効果を発揮できる。
これにより、真偽判定時に視覚効果に基づく、迅速で確実な判定が行える。また、疑わしき物品に関しては、更に顕微鏡などで拡大してパターンセル20の構造を確認して更に正確な判定を行うことができる。
また、表示体1の偽造に対しては、全ての回折格子セル10とパターンセル20を正確に解析し、新たに精密に作成し直すことは困難を極め、高い偽造防止効果(特に偽造防止抑止力)を有する。
すなわち、印刷インキで表示された絵柄、回折格子セル10で表示された絵柄、パターンセル20で表示された絵柄という、光学特性の異なる3種類の要素から成る表示像が目視観察でき、一見して真正品の見分けがつくようになる。
また、拡大観察時には、印刷されたマイクロ文字や細紋パターンなどと、パターンセル20の単位要素との双方を確認することにより、一層確実な真偽判定が行える。
特に、本発明のパターンセルの凹凸は回折格子と同等の微細さを容易に持たせられるため、目視観察(印刷および本発明の表示体全体)、ルーペなどによる簡易拡大観察(印刷および粗い構造の単位要素)、顕微鏡などによる高倍率拡大観察(細かい構造の単位要素)、というレベルの異なる検査を行うことができ、確実な真偽判定、高い偽造防止効果を実現できる。
本発明での回折格子の典型的な格子間隔dは、およそ0.5〜2μm程度であり、典型的な格子の高さhは0.1〜1μm程度である。
パターンセル20も同様に凹凸によって構成されているため、特に製造工程を増やすことなく、回折格子と同時に量産複製を行うことができる。
もちろん、量産複製に用いる原版上に形成された回折格子セル10とパターンセル20の状態が量産複製品にも再現するため、原版上において、それぞれのセルの配置位置やセル内の構造を精密に形成しておくことにより、容易に精密な量産複製品を得ることができ、高い量産性と高い偽造防止効果とを両立することができる。
もちろん、パターンセル内の単位要素は、その大きさ以下が好ましく、特に10μm以下の大きさは、比較的高倍率の拡大をしないと構造が確認できないため、偽造防止効果が高い。光散乱性の面からも、パターンセル内における特定方向における凹凸の大きさを10μm以下、より望ましくは2μm以下にすると、当該方向における散乱の拡がり方を大きくでき、視認性を向上させることができる。
表示体1の構成は凹凸が形成された光透過性材料50と光反射性材料51から成る。
光透過性材料50としては、熱可塑性樹脂や紫外線硬化樹脂などが、凹凸の複製材料として好適である。
光反射性材料51としては、Al, Agなどの金属材料の他、光透過性材料50と屈折率の異なる誘電体材料など(凹凸面での反射率を上げる材料であれば透明でもよい)を用いることができる。
観察者80は、光源70からの照明光が表示体1によって回折・散乱された光を瞳に入射させることにより、本発明の表示体1の視覚効果を確認することができる。
ここでは、単位要素“A”を一定とし、その配置間隔を変えることにより、パターンセル20毎に散乱性を変化させている。
例えば、単位要素の配置間隔の小さいパターンセル21は、単位要素の配置間隔の大きいパターンセル22よりも散乱性が高い。
一方、これらのパターンセル21、22は単位要素が共通であることから、散乱指向性や散乱光の拡がり方はほぼ同一とすることができる。
したがって、これらのパターンセル21、22を表示体1において表示する画像の輝度に直接対応させることができ、簡便に高品位な階調画像表現が可能となる。このような視覚効果も真偽判定の際に役立ち、偽造防止効果を向上させる上で有利となる。
ここでは、単位要素“A”を複数配置したパターンセル21と、単位要素“B”を複数配置したパターンセル23と、単位要素として円と“OK”を組み合わせて配置したパターンセル24との3種類のパターンセルを用いている。
もちろん、これらのパターンセル21、23、24は顕微鏡などで拡大して確認可能なパターンであると共に、それぞれ異なる散乱性を有する。
したがって、これらのパターンセル21、23、24を表示体1上に適切に配置することで、固有の視覚効果を持った表示を行うことができ、偽造防止効果を更に向上させる上で有利となる。
パターンセル25は2次元バーコードであり、この拡大像を撮像することにより、容易に記録された情報を読み取ることができる。
一方、このパターンセル25も他のパターンセルと同様に目視観察時にはその内部構造に応じた散乱性を発揮するので、他のパターンセルと組み合わせて像の表示に寄与する。
したがって、目視効果にも寄与し、機械読み取り用のパターンセル25が全体の表示像のどの位置に配されているかを第3者には読み取られにくくすることができる。
更に、パターンセル25に似たパターンセル26を配置することにより、例え拡大して観察したとしても真の読み取り用パターンセル25を隠蔽する効果を高めることができる。
言い換えると、図8の表示体においては、パターンセルが2つ以上設けられ、前記パターンセルは、特定の単位要素からなる2次元パターンで構成された第1のパターンセル25と、前記特定の単位要素と類似しかつ前記特定の単位要素と異なる単位要素からなる2次元パターンで構成された第2のパターンセル26とを含んでいる。
これらにより、簡便にして正確な真偽判定を行うことを可能とし、極めて高い偽造防止効果も実現できる。
なお、パターンセルとして、上記の機械読み取り用パターンに代えて、文字列やロゴ、記号などを用いても機械読み取り用パターンを用いた場合と同様に、それら文字列やロゴ、記号を用いたパターンセルを真偽判定の基準として用いることができ、あるいは、それら文字列やロゴ、記号を用いたパターンセルと類似パターンを設けることで真の読み取り用パターンセルを隠蔽して偽造防止効果を得ることができる。
Claims (5)
- 凹凸によって構成された回折格子から成る回折格子セルが画像表現用の画素として複数設けられた表示体であって、
前記表示体上の前記回折格子セルが設けられていない箇所に、凹凸によって形成された同一または異なる2次元パターンにより構成されたパターンセルが画像表現用の画素として複数配置され、
前記2次元パターンは少なくとも1つ以上の単位要素で構成され、
前記単位要素は、文字、記号、ロゴマークなどのような何らかの意味を表す表意図形および/または機械によって読み取り可能な1次元バーコードまたは2次元バーコードで構成され、
前記複数のパターンセルは、前記1次元バーコードまたは2次元バーコードで構成された第1のパターンセルと、前記第1のパターンセルの1次元バーコードまたは2次元バーコードと類似しかつ該1次元バーコードまたは2次元バーコードと異なる1次元バーコードまたは2次元バーコードで構成された第2のパターンセルとを含み、
前記パターンセルが画素として表示する輝度に応じて、前記パターンセルの画素毎に、凹凸の深さを変化させることによって、前記パターンセルと前記回折格子セルとで画像が表現されている、
ことを特徴とする表示体。 - 前記各パターンセルが画素として表示する輝度に応じて選択的に配置されていることを特徴とする請求項1記載の表示体。
- 前記複数のパターンセルは、前記単位要素が前記表意図形で構成された複数のパターンセルを含み、
前記単位要素が前記表意図形で構成された各パターンセルの前記単位要素を同一とし、かつ、前記各パターンセルが画素として表示する輝度に応じて、該画素に対応する前記表意図形で構成されたパターンセルの前記単位要素の配置間隔を変化させていることを特徴とする請求項1記載の表示体。 - 前記単位要素が線状またはマトリクス状に複数配置されていることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の表示体。
- 請求項1乃至4に何れか1項記載の表示体を、印刷が施された基材の表面に配置したことを特徴とする印刷物。
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