以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、ここでは、「散乱光」には、ランダムな位相を有した回折構造が射出する発散性の光も含まれることとする。
図1は、本発明の一態様に係る物品を概略的に示す平面図である。
図1に示す物品100は、個人認証媒体であり、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
この物品100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
画像I1bは、後述する画像表示体が表示する立体画像である。
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
画像I1bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像I1bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像I1a及びI1bの少なくとも一方とを組み合わせると、物品100の改竄をより困難にすることができる。
次に、表紙2の構造について説明する。
図2は、図1に示す個人認証媒体の一部を拡大して示す平面図である。図3は、図1に示す物品の一部を更に拡大して示す平面図である。図4は、図3に示す物品のIV−IV線に沿った断面図である。なお、図2乃至図4に示す構造は、表紙2のうち画像I1bに対応した部分である。
表紙2は、図4に示すように、表紙本体21と画像表示体22とを含んでいる。
表紙本体21は、物品100の基材であって、典型的には紙片である。表紙本体21は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。表紙本体21は、物品100を閉じた状態において、折り丁1を挟み込むように二つ折りされている。
画像表示体22は、多層構造を有している層である。画像表示体22は、物品100を閉じた状態において折り丁1と向き合う表紙本体21の主面に貼り付けられている。
画像表示体22は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する画像表示層(図示せず)を含んでいる。この画像表示層が表示する画像は、典型的には画像I1aを含んでいる。
この画像表示層は、光の吸収を利用して画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部を表示する。この画像表示層は、画像I1a、I2及びI3の少なくとも一部に対応したパターン形状を有している。この画像表示層は、染料及び顔料の少なくとも一方と任意の樹脂とで構成することができる。このような画像表示層は、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することにより得ることができる。また、この画像表示層の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
この画像表示層は、パターニングされていなくてもよい。即ち、この画像表示層は、連続膜であってもよい。この場合、画像表示層は、例えば、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより得ることができる。
この画像表示層は、省略することができる。例えば、この画像表示層は、画像表示体22の構成要素とせずに、表紙本体21上に設けてもよい。
画像表示体22は、図4に示すように、画像表示層220a及び保護層227を更に含んでいる。
画像表示層220aは、散乱構造形成層223と反射層224と接着層225とを含んでいる。
散乱構造形成層223は、一方の主面に、特定の照明条件のもとで指向性を有している散乱光を射出可能とする構造(以下、散乱構造ともいう)を備えた透明層である。この散乱構造形成層223は、特定の照明条件のもとで上記の散乱光を互いに異なる方向に射出する第1及び第2部分を含んでいる。図3及び図4には、一例として、これら第1及び第2部分の各々が不規則的に配列した複数の溝からなり且つそれら溝の長さ方向が互いに異なっている場合を描いている。このような構成に起因した光学効果については、後で詳しく説明する。
散乱構造形成層223の材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタアクリレートなどの熱硬化性樹脂、これらの混合物、又はラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料を使用することができる。散乱構造形成層223は、光硬化性を有している樹脂を使用して形成してもよい。
反射層224は、散乱構造形成層223の上に形成されている。反射層224は、散乱構造形成層223の散乱構造が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224は省略することができるが、反射層224を設けると、回折構造が表示する画像の視認性が向上する。
反射層224としては、透明反射層又は不透明な金属反射層を使用することができる。反射層224は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。反射層224が樹脂を含んでいる場合、反射層224は、塗布又は印刷を利用して形成してもよい。
反射層224として透明反射層を使用すると、反射層224の背面側に絵柄及び文字等のパターンを配置した場合であっても、これを画像表示体22の前面側から視認することができる。他方、反射層224として不透明な金属反射層を使用すると、輝度が高く視認性に優れた画像の表示が可能となる。
透明反射層としては、例えば、散乱構造形成層223とは屈折率が異なる透明材料からなる層を使用することができる。透明材料からなる透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。この透明材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
或いは、透明反射層として、厚さが20nm未満の金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。
不透明な金属反射層としては、より厚いこと以外は透明反射層について上述したのと同様の金属層を使用することができる。不透明な金属反射層は、連続膜であってもよい。或いは、不透明な金属反射層は、パターニングされていてもよい。例えば、不透明な金属反射層の少なくとも一部をパターニングして、画像表示体22に、網点、万線、他の図形、又はそれらの組み合わせを表示させてもよい。このようなパターンは、例えば、画像表示体22又は物品100の真偽判定に利用することができる。
透明反射層又は不透明な反射層として、透明樹脂とこの中で分散した粒子とを含んだ層を使用してもよい。この粒子としては、例えば、単体金属及び合金などの金属材料からなる粒子、又は、透明金属酸化物及び透明樹脂などの透明誘電体からなる粒子を使用することができる。透明樹脂中には、粒子を分散させる代わりに、薄片を分散させてもよい。
接着層225は、反射層224と表紙本体21との間に介在している。接着層225は、例えば熱可塑性樹脂からなる。
接着層225の材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2乃至6)とから得られるポリビニル樹脂などのビニル樹脂、ゴム系材料、又は、これらの2種以上を含んだ混合物を使用することができる。
接着層225には、ワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩及びエステル、可塑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカからなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
接着層225は、画像表示体22の構成要素であってもよく、画像表示体22の構成要素でなくてもよい。また、接着層225は、省略することができる。
保護層227は、画像表示層220aを被覆している。保護層227は、光透過性を有しており、典型的には透明である。保護層227は、省略することができる。
保護層227は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子硬化樹脂などの樹脂からなる。転写箔を利用して画像表示体22を表紙本体21に貼り付ける場合は、柔軟性及び箔切れ性の観点で熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸エステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スリレンアクリレート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はそれらの混合物を使用することができる。箔切れ性や耐摩性を考慮して、この樹脂に、石油系ワックス及び植物系ワックスなどのワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸、その金属塩、エステル及びシリコーンオイルなどの滑材、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂及びポリアクリロニトリルなどの有機材料からなる有機フィラー、並びにシリカなどの無機材料からなる無機フィラーの1つ以上を添加してもよい。
画像表示体22は、図2に示すように、複数の画素PEを含んでいる。これら画素PEは、互いに交差するX及びY方向に配列している。即ち、これら画素PEは、X及びY方向に沿って互いに隣り合っている。これら画素PEは、互いに隣接していてもよく、互いから離間していてもよい。図2には、一例として、これら画素PEが、X及びY方向に沿って互いに隣接している場合を描いている。
なお、X及びY方向は、表紙本体21の主面に対して平行な方向である。X方向とY方向とが為す角度は任意である。ここでは、一例として、X及びY方向は直交していることとする。
画素PEは、典型的には、形状及び寸法が互いに等しい。画素PEは小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にそれら画素PEを互いから区別することはできない。例えば、画素PEの各々のX方向についての寸法は、約50μmである。
以下、画像表示体22が含んでいる画素PEの構成について詳しく説明する。
図5乃至図8は、図1に示す物品の他の一部を拡大して示す平面図である。図5乃至図8は、画像表示体22が含んでいる画素PEの例を示している。
画像表示体22が含んでいる複数の画素PEの各々は、図3及び図5乃至図8に示すように、第1サブ画素SPE1と第2サブ画素SPE2とを含んでいる。これら図には、一例として、これらサブ画素SPE1及びSPE2が、X方向に互いに隣接している場合を描いている。X方向に隣接した画素PE間の境界は、散乱構造形成層223について上述した第1及び第2部分の境界に対応している。
図3に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1は、特定の照明条件のもとで、指向性を有している散乱光を射出する複数の第1溝G1からなる。また、この画素PEでは、第2サブ画素SPE2は、上記の照明条件のもとで、指向性を有している散乱光を第1サブ画素SPE1とは異なる方向に射出する複数の第2溝G2からなる。
図5に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1を備えていない。他方、この画素PEでは、第2サブ画素SPE2は、複数の第2溝G2からなる。図6(a)乃至(c)に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1を備えていない。他方、これら画素PEでは、第2サブ画素SPE2は、複数の第2溝G2を部分的に備えている。即ち、これら画素PEでは、第2サブ画素SPE2は、複数の第2溝G2からなる領域と、複数の第2溝G2を備えていない他の領域とを含んでいる。
図7に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1からなる。他方、この画素PEでは、第2サブ画素SPE2は、複数の第2溝G2を備えていない。図8(a)乃至(c)に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1を部分的に備えている。即ち、これら画素PEでは、第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1からなる領域と、複数の第2溝G2を備えていない他の領域とを含んでいる。他方、これら画素PEでは、第2サブ画素SPE2は、複数の第2溝G2を備えていない。
図3及び図5乃至図8に例示したように、第1サブ画素SP1は、複数の第1溝G1からなるか、これら溝G1を部分的に備えているか、又は、これら溝G1を備えていない。また、第2サブ画素SP2は、複数の第2溝G2からなるか、これら溝G2を部分的に備えているか、又は、これら溝G2を備えていない。そして、画素PEの各々は、これら第1サブ画素SPE1と第2サブ画素SPE2との任意の組み合わせを含んでいる。
第1サブ画素SPE1は、特定の照明条件のもとで第1視差画像を表示する第1要素領域を構成している。この第1視差画像は、例えば、観察者の右眼に視認させるための画像である。
第2サブ画素SPE2は、特定の照明条件のもとで第2視差画像を表示する第2要素領域を構成している。この第2視差画像は、例えば、観察者の左眼に視認させるための画像である。
このように、画像表示体22は、特定の照明条件のもとで第1視差画像を表示する第1要素領域と、この照明条件のもとで第2視差画像を表示する第2要素領域とを含んでいる。それゆえ、この画像表示体22は、特定の照明条件のもとで立体画像を表示する。
観察者が立体画像を知覚する条件のもとで、第1及び第2要素領域の各々が射出する散乱光は、観察者の左右の眼を結ぶ直線に平行な第1面内で発散する散乱光である。この散乱光は、回折格子などから射出される非発散性の回折光と比較して、視認可能な観察範囲がより広い。それゆえ、この画像表示体22では、観察条件の変動による立体画像の視認性の変化が生じ難い。即ち、この画像表示体22は、画質が高い立体画像を表示する。
また、上述した通り、表紙本体21は、典型的には紙片である。即ち、図1に示す物品100では、典型的には、基材として紙を用いる。紙は、典型的には、粗面を有している。それゆえ、画像表示体22は、典型的には、基材の粗面上に貼り付けられている。
本発明者らは、回折格子などを用いた非発散性の回折光に基づいて立体画像を表示する画像表示体を粗面に貼り付けると、局所的な濃淡や色変化を生じ、立体画像の画質に悪影響を生じる場合があることを見出している。これに対し、画像表示体22は、散乱構造を備えているため、非発散性の回折光に基づいて立体画像を表示する画像表示体と比較して、粗面に貼り付けられることに起因した表示への悪影響を被り難い。従って、物品100は、基材の粗面の質感等を維持しつつ、画質の高い立体画像を表示することができる。
なお、ここで「粗面」とは、日本工業規格JIS B0601:2001(国際規格ISO 4287:1997)に準拠して測定された算術平均粗さRaが1乃至10μmの範囲内にある面を意味することとする。
紙などの粗面は、典型的には、大きな周期の凹凸構造、即ちうねりを有している。例えば、算術平均粗さRaが約2.0μmである紙の表面を調べたところ、このうねりの主成分は0.1乃至1.0mm程度の周期を有しており、その凹凸の深さは0.01乃至0.5mm程度であった。この深さは、例えば、非発散性の回折光に基づいて立体画像を表示する画像表示体に用いられる回折格子の高さ又は深さと比較してより大きい。従って、このような回折格子を用いた画像表示体は、粗面に貼り付けられることに起因した表示への悪影響を比較的被り易い。
第1及び第2要素領域の各々が射出する散乱光は、例えば、上記第1面内において2乃至7°の角度範囲で発散する散乱光である。
観察者の左右の眼を結ぶ線分の長さが65mmであり、画像表示体22の表示面と上記第1面との距離が500mmであるとする。この場合、観察者の左右の眼の視線が為す角度は、約7.4゜である。それゆえ、上記の角度範囲を7゜以下とすると、第1及び第2要素領域の各々が射出する散乱光は、左右の眼に同時に入射することはない。従って、こうすると、一方の眼によって視認させるべき視差画像が他方の眼によって視認させるべき視差画像のノイズとなるのを防止できる。即ち、こうすると、立体画像の画質を向上させることができる。
他方、観察者の左右の眼の各々の入射瞳径が5mmであり、画像表示体22の表示面と上記第1面との距離が500mmであるとする。この場合、左右の眼の各々の見込み角は0.6゜である。それゆえ、上記の角度範囲を2゜以上とすると、この見込み角の2倍以上の視域を確保することが可能となり、安定した画像表示を行うことができる。また、こうすると、視差画像の数を過度に多くする必要がなくなる。即ち、こうすると、画像表示体22の作製が容易となると共に、視差画像の解像度の低下に起因した画質の低下を抑制できる。
また、第1及び第2要素領域の各々が射出する散乱光は、観察者が立体画像を知覚する条件のもとで、観察者の左右の眼を結ぶ直線に垂直な第2面内で更に発散する散乱光であってもよい。この場合、上記第2面内で観察角度を変化させた場合であっても、幅広い範囲で立体画像が観察できる。即ち、この場合、観察条件の変動による立体画像の視認性の変化を更に生じ難くすることができる。
第1及び第2要素領域の各々が射出する散乱光が上記第2面内で更に発散する散乱光である場合、上記の第2面内における散乱光の角度範囲は、例えば、10゜以上とする。この角度範囲を10゜未満とすると、後述する計算機ホログラムなどを用いて回折光に基づいた散乱光を射出させる場合に、安定した白色表示を行うことが困難となる場合がある。
なお、「散乱光の角度範囲」は、以下のようにして定める。即ち、ある面内において、当該散乱光の最大強度の10%以上の強度を有した散乱光が射出される範囲を、上記の角度範囲とする。
第1及び第2要素領域の各々は、上述した通り、散乱構造としての複数の溝を備えている。観察者が立体画像を知覚する条件のもとで、観察者の左右の眼を結ぶ直線に垂直な面と表示面との交線に平行な方向を縦方向とする。この縦方向は、例えば、図2乃至図8におけるY方向に平行である。
このとき、第1及び第2要素領域の各々において、複数の溝の上記縦方向における空間周波数は、典型的には、ゼロより大きくする。こうすると、正反射光などの非散乱光が観察可能となる条件と、視差画像を表示する散乱光が観察可能となる条件とを互いに分離することができる。即ち、こうすると、散乱光に基づいた立体画像を観察する際に、非散乱光による悪影響を抑制することが可能となる。従って、こうすると、画像表示体22に、高品位な立体画像を表示させることが可能となる。
複数の溝の上記縦方向における空間周波数は、例えば、500mm-1以上とする。可視光の最短波長を400nmとすると、複数の溝が射出するこの波長の散乱光の射出方向とこの波長の正反射光の射出方向とが為す分離角は11.5゜である。従って、このような構成を採用すると、可視光波長の全域に亘って、上記の分離角を10゜以上とすることができる。それゆえ、こうすると、画像表示体22は、更に高品位な立体画像を表示する。
なお、ここで「散乱光の射出方向」とは、散乱光を構成する成分のうちその強度が最大であるものの射出方向を意味している。
第1及び第2要素領域の各々が備えている複数の溝の少なくとも一方は、例えば、計算機ホログラム(Computer Generated Hologram)の手法で設計してもよい。即ち、第1及び第2要素領域の各々は、計算機ホログラムとしての複数の溝を備えていてもよい。こうすると、これら第1及び第2要素領域の各々に、予め設定した所望の角度範囲に散乱光を射出させることができる。また、このような構成を採用すると、立体画像の表示に寄与しないか又は立体画像の表示に悪影響を与えるノイズ光の射出を抑制することができる。
計算機ホログラムとしては、例えば、キノフォーム(Kinoform)を用いる。こうすると、共役像の表示を抑制できるため、画像表示体22に、高品位な立体画像を表示させることができる。或いは、計算機ホログラムとして、バイナリ型計算機ホログラムを用いてもよい。この場合であっても、再生像と共役像とが同時に観察されないような設計とすることにより、画像表示体22に、高品位な立体画像を表示させることができる。
計算機ホログラムを用いた場合、光の回折により波長分散が生じる。以下、回折格子を例にして、微細周期構造による回折現象について説明する。
照明光の正反射角度をα、回折格子によって回折した1次回折光の射出角度をβ、光の波長をλ、回折格子のピッチ(空間周波数の逆数)をdとすると、下式が成り立つ。
λ=d{sin (α)−sin (β)}
即ち、白色光が特定の角度|α|でピッチがdである回折格子に入射すると、1次回折光は、波長λ毎に異なる射出角度βで射出する。
この回折格子に白色光を照明した場合、この回折格子を特定の観察方向から観察すると、可視波長の中の特定の波長が観察され、特定の色が認識できる。それゆえ、白色光を射出する光源と回折格子との位置を固定して、その観察角度を次第に変化させると、回折格子は、赤から青の範囲で虹色に変化して見える。
計算機ホログラムは、ランダムな位相を有した回折構造を有している。このような構成を採用すると、所望の角度範囲に、種々の波長λを有した回折光が混合されてなる光を射出させることができる。即ち、計算機ホログラムを用いると、例えば、特定の角度範囲に、白色光を射出させることが可能となる。
第1及び第2要素領域の各々が備えている複数の溝が計算機ホログラムである場合、この計算機ホログラムが射出する散乱光は、典型的には、上記第2面内で更に発散する散乱光である。この場合、上記第2面内における散乱光の角度範囲は、例えば、10゜以上とする。こうすると、安定した白色表示を行うことが可能となる。他方、上記第2面内における散乱光の角度範囲を9゜以下とすると、通常の室内光源下において、回折光に起因した色づきが観察されることがある。即ち、こうすると、白色表示に悪影響を生ずることがある。
上では、複数の画素PEの各々が2つのサブ画素SPE1及びSPE2からなる場合について説明したが、画素PEの各々に含まれるサブ画素の数は、3以上であってもよい。
図9は、図3に示す物品の一部の一変形例を示す平面図である。図9には、図3に示す画素の一変形例に係る画素PEを描いている。
図9に示す画素PEは、第1サブ画素SPE1と、第2サブ画素SPE2と、第3サブ画素SPE3と、第4サブ画素SPE4とを含んでいる。図9には、一例として、これらサブ画素SPE1乃至SPE4が、X方向に互いに隣接している場合を描いている。
これらサブ画素SPE1乃至SPE4の各々は、特定の照明条件のもとで、指向性を有している散乱光を互いに異なった方向に射出する散乱構造を備えている。サブ画素SPE1乃至SPE4のうちこの散乱構造を備えているものは、それぞれ、特定の照明条件のもとで第1乃至第4視差画像を表示する第1乃至第4要素領域を構成している。
ここで、画像表示体22の観察位置を、図9に示すX方向に沿って次第に変化させていった場合を考える。この場合、第1に、第4視差画像が観察者の左眼に視認されると共に第3視差画像が観察者の右眼に視認されることにより、立体画像が観察できる。第2に、第3視差画像が観察者の左眼に視認されると共に第2視差画像が観察者の右眼に視認されることにより、立体画像が観察できる。第3に、第2視差画像が観察者の左眼に視認されると共に第1視差画像が観察者の右眼に視認されることにより、立体画像が観察できる。このように、図9に例示した構成を採用した場合、画像表示体22は、より広い角度範囲で視認可能な立体画像を表示することができる。
これら第1乃至第4要素領域の各々は、典型的には、上記第1面内における角度範囲が部分的に重なり合うように、散乱光を射出する。こうすると、観察角度を連続的に変化させた場合に、左右の眼に、各視差画像を連続的に視認させることができる。即ち、こうすると、観察角度を連続的に変化させた場合に、立体画像が突然視認できなくなる可能性を抑制できる。従って、このような構成を採用すると、画像のチラつきが特に少ない立体画像を表示することが可能となる。
図10は、散乱光の強度分布の関係を概略的に示す図である。図10には、要素領域の各々から射出される散乱光の特定の面内における強度分布を概略的に描いている。図10には、一例として、第2要素領域が射出する散乱光の強度分布C2と、第1要素領域が射出する散乱光の強度分布C1とを描いている。
なお、これら強度分布を測定する「特定の面」は、観察者の左右の眼を結ぶ直線に平行な第1面のうち、画像表示体22の表示面に平行であり且つこの表示面からの距離が500mmの面であるとする。以下、この「特定の面」を「第3面」と呼ぶ。
強度分布C2及びC1の交点ISにおける各散乱光の強度は、典型的には、当該散乱光の最大強度の10%以上である。即ち、第1及び第2要素領域の各々は、典型的には、第3面内における角度範囲が部分的に重なり合うように、散乱光を射出する。また、強度分布C2及びC1の交点ISにおける各散乱光の強度は、典型的には、当該散乱光の最大強度の50%以下とする。この強度が過度に大きいと、各要素領域が射出する散乱光の角度範囲の重複が大きくなり、画像のぼけが生じることがある。即ち、こうすると、コントラストの低下による画質の低下を生じることがある。
なお、ここでは、画素PEの各々が4つのサブ画素SPE1乃至SPE4を含んでいる場合について説明したが、画素PEの各々が含んだサブ画素の数が3以上であれば、上述した効果を達成することができる。
図2乃至図9を参照しながら説明した画素PEでは、複数のサブ画素は、X方向に互いに隣り合っている。しかしながら、上述した通り、画素PEは小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にそれら画素PEを互いから区別することはできない。従って、画素PE内におけるサブ画素の配置は、任意である。例えば、これら複数のサブ画素は、Y方向に隣り合っていてもよい。
画素PEが備えている散乱構造には、種々の変形が可能である。
図11は、図3に示す物品の一部に採用可能な構造の例を示す断面図である。図12は、図3に示す物品の一部に採用可能な構造の他の例を示す平面図である。
図11の(a)及び(b)には、散乱構造形成層223と反射層224との積層構造を描いている。図11(b)に示す構造は、図11(a)に示す構造と比較して、複数の溝の深さ又は高さがより小さい。従って、図11(b)に示す構造は、図11(a)に示す構造と比較して、より暗い像の表示を可能とする。それゆえ、これら構造を組み合わせて用いることにより、階調表示を行うことができる。また、深さ又は高さが互いに異なった複数の溝の分布を解析することは、極めて困難である。それゆえ、こうすると、改竄又は偽造が特に困難な画像表示体22を形成することができる。
図12の(a)及び(b)には、サブ画素における複数の溝の分布の例を示している。図12(a)に示すサブ画素では、サブ画素に占める複数の溝の占有面積は100%である。他方、図12(b)に示すサブ画素では、サブ画素に占める複数の溝の占有面積は50%である。このように、サブ画素に占める複数の溝の占有面積を異ならせることにより、表示すべき画像の輝度を容易に調整することができる。また、これら構造を組み合わせて用いることにより、階調表示を行うことができる。加えて、この場合、複数の溝の占有面積の大きさの差異のみに基づいて、階調表示を行うことができる。即ち、この場合、階調表示が可能な画像表示体22を比較的簡便に作製することができる。
図13は、図3に示す物品の一部に採用可能な構造の他の例を示す平面図である。図14は、図13に示す構造をフーリエ変換して得られる像を示す平面図である。図13及び図14から分かるように、図13に示す複数の溝は、照明光を照射すると、図13に示すX方向に垂直な方向に、指向性を有している散乱光を射出することができる。従って、図13に示すような構造も、上記の散乱構造として採用することができる。
上では、散乱構造として複数の溝を用いる場合について説明したが、この散乱構造は、他の構成を有していてもよい。例えば、この散乱構造として、複数の筋を用いてもよい。或いは、散乱構造として、溝又は筋以外の複数の凹部又は凸部を用いてもよい。或いは、散乱構造として、複数の凹部又は凸部以外の構成を採用してもよい。
図15及び図16は、図3に示す物品の一部に採用可能な構造の他の例を示す斜視図である。
図15及び図16に示す構造は、複数の凸部を備えている。これら複数の凸部の各々は、一方向に延びた形状を有している。また、これら複数の凸部は、典型的には、長手方向が揃っている。従って、これら複数の凸部は、指向性を有している散乱光の射出を可能とする。
図15に示す構造は、基準面SF上に、直方体形状の複数の凸部P1を含んでいる。複数の凸部P1の長辺の長さは、例えば、その短辺の長さの1倍より大きく且つ5倍より小さい。これら複数の凸部P1の長辺は、X方向に平行である。即ち、これら複数の凸部P1は、X方向に異方性を有している。従って、これら複数の凸部P1は、特定の照明条件において、X方向に垂直な方向に、指向性を有している散乱光を射出することができる。
図16に示す構造は、基準面SF上に、楕円柱形状の複数の凸部P2を含んでいる。複数の凸部P2の長軸の長さは、例えば、その短軸の長さの1倍より大きく且つ5倍より小さい。これら複数の凸部P2の長軸は、X方向に平行である。即ち、これら複数の凸部P2は、X方向に異方性を有している。従って、これら複数の凸部P2は、特定の照明条件において、X方向に垂直な方向に、指向性を有している散乱光を射出することができる。
次に、図17乃至図19を参照しながら、物品100の製造方法を説明する。
図17は、図1に示す物品の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す平面図である。図18は、図17に示すブランク媒体の一部を拡大して示す断面図である。
図18に示すように、ブランク媒体200は、保護層227と散乱構造形成層223と反射層224とを含んでいる。これら層としては、例えば、先に図4を参照しながら説明したのと同様の構成を採用する。
図17に示すように、ブランク媒体200は、互いに交差するX及びY方向に配列した複数の画素PEを含んでいる。これら複数の画素PEの各々は、サブ画素SPE1及びSPE2を含んでいる。これらサブ画素SPE1及びSPE2の各々は、特定の照明条件のもとで、指向性を有している散乱光を互いに異なる方向に射出する。これら画素PE並びにサブ画素SPE1及びSPE2としては、例えば、先に図3を参照しながら説明したのと同様の構成を採用する。
物品100の製造においては、例えば、まず、複数の撮像装置を用いて、互いに異なった方向から、人物の顔を同時に撮影する。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。
次に、複数の第1サブ画素SPE1の一部に対して、レーザビームを照射する。これにより、複数の第1サブ画素SPE1の一部について、散乱構造の一部又は全部を変形又は破壊する。このようにして、複数の第1サブ画素SPE1の一部について、第1サブ画素SPE1が射出する散乱光の散乱効率をゼロとするか又は低減する。これにより、特定の照明条件のもとで第1視差画像を表示する第1要素領域を形成する。
加えて、複数の第2サブ画素SPE2の一部に対しても、レーザビームを照射する。これにより、複数の第2サブ画素SPE2の一部について、散乱構造の一部又は全部を変形又は破壊する。このようにして、複数の第2サブ画素SPE2の一部について、第2サブ画素SPE2が射出する散乱光の散乱効率をゼロとするか又は低減する。これにより、特定の照明条件のもとで第2視差画像を表示する第2要素領域を形成する。
次いで、得られた構造を、接着層225を介して、表紙本体21に貼り付ける。その後、必要な工程を適宜実施する。このようにして、物品100を得る。
この方法によると、オンデマンドで、複数の視差画像に基づいた立体画像を記録することができる。従って、この方法は、個別の像を少量ずつ記録する必要がある個人認証媒体等の用途において、特に有用である。また、散乱構造を変形又は破壊する部分の面積を複数のサブ画素間で互いに異ならせることにより、立体画像に階調を付与することもできる。こうすると、更に高品位な立体画像が得られる。
なお、上では、散乱光の散乱効率をゼロとするか又は低減する工程をレーザビームを用いて行う方法について説明したが、この工程は、レーザビーム以外のエネルギービームを用いて行ってもよい。例えば、この工程は、電子ビームなどの荷電粒子ビームを照射することによって行ってもよい。電子ビーム描画装置によると、レーザと比較して、より小さなビーム径を達成できる。従って、例えばサブ画素の寸法が小さい場合、電子ビーム照射を利用すると、レーザビームを利用した場合と比較して、より高い画質を達成できる。
散乱光の散乱効率をゼロとするか又は低減する工程は、他の方法によって行ってもよい。例えば、この工程は、サーマルヘッドなどの加熱及び/又は加圧手段を用いて散乱構造を変形又は破壊することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、散乱構造上に、散乱構造形成層223の材料を溶解可能な液を供給することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、散乱構造上に、散乱構造形成層223の材料と屈折率が同一であるか屈折率の差が小さい材料を供給することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、散乱構造上に、黒色インキなどの光吸収剤を供給することにより行ってもよい。
図19は、図1に示す物品の製造に使用可能な転写箔の一例を概略的に示す平面図である。
図19に示す転写箔201は、ブランク媒体としての転写材層220a’と、これを剥離可能に支持した支持体221とを含んでいる。
支持体221は、例えば樹脂フィルム又はシートである。支持体221は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの耐熱性に優れた材料からなる。支持体221の転写材層220a’を支持している主面には、例えばフッ素樹脂又はシリコーン樹脂を含んだ離型層が設けられていてもよい。
転写材層220a’は、保護層227と散乱構造形成層223と反射層224とを含んでいる。保護層227と散乱構造形成層223と反射層224は、支持体221上にこの順に形成されている。これら層としては、例えば、先に図4を参照しながら説明したのと同様の構成を採用する。転写材層220a’の全体又は一部は、画像表示層220aの製造に利用する。
物品100の製造においては、まず、例えば先に述べたのと同様にして、顔画像を得る。
次に、表紙本体21に対し、転写材層220a’の一部を、サーマルヘッドなどの加熱及び/又は加圧手段を用いて転写する。具体的には、表紙本体21のうち上記の第1視差画像を表示させるべき位置に、複数の第1サブ画素の一部を転写すると共に、表紙本体21のうち上記の第2視差画像を表示させるべき位置に、複数の第2サブ画素の一部を転写する。なお、この転写は、反射層224上に接着層225を形成した後に行ってもよい。
このようにして、表紙本体21上に、画像表示層220aを形成する。その後、必要な工程を適宜実施する。このようにして、物品100を得る。
この方法によると、オンデマンドで、複数の視差画像に基づいた立体画像を記録することができる。従って、この方法は、個別の像を少量ずつ記録する必要がある個人認証媒体等の用途において、特に有用である。また、表紙本体21上に転写する部分の面積を複数のサブ画素間で互いに異ならせることにより、立体画像に階調を付与することもできる。こうすると、更に高品位な立体画像が得られる。
なお、上では、複数の画素PEを含んだ画像表示体22について説明したが、画像表示体22は、このような構成を有していなくてもよい。即ち、画像表示体22は、特定の照明条件のもとで、指向性を有している散乱光を互いに異なる方向に射出して各々が視差画像を表示する複数の要素領域を含んでいればよい。従って、画像表示体22は、例えば、これら複数の要素領域に対応した構造を備えた原版を準備し、この原版を用いて散乱構造形成層223を形成することによって製造してもよい。
以上、パスポートとしての物品100を例示したが、物品100について上述した技術は、他の物品に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証及びIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。或いは、この技術は、紙幣及び商品券などの有価証券に適用することも可能である。
画像表示体22を貼り付ける基材の材質は、天然の紙及び合成紙などの紙でなくてもよい。例えば、画像表示体22を貼り付ける基材の材質は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(熱可塑性PET)、ポリ塩化ビニル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル樹脂及びポリスチレン樹脂などの合成樹脂、ガラス、陶器及び磁器などのセラミックス、又は、単体金属及び合金などの金属材料であってもよい。
上では、物品としてパスポートなどの個人認証媒体を例示したが、物品100について上述した技術は、個人認証媒体以外の物品に適用することも可能である。即ち、上述した技術は、個人認証以外の目的で利用してもよい。例えば、この技術は、パッケージ用途に用いてもよい。
図20は、本発明の他の態様に係る物品を概略的に示す斜視図である。図20に示す物品300は、商品のパッケージである。この物品300には、上述した構成に基づいて立体画像の表示を可能とする画像表示体22が貼り付けられている。従って、例えば、画像表示体22にロゴマーク及び商品名などを立体画像として表示させることにより、消費者の注意を強く喚起することが可能となる。また、画像表示体22を用いると、物品300が紙などの粗面を含んでいる場合であっても、これに画質の高い立体画像を表示させることができる。