JP5155775B2 - モータ端子装置 - Google Patents
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Description
図4は、インバータによるモータ駆動装置の従来例を示す図である。図4において、1はバッテリ、2はインバータ、3は配線、4はモータ、5はモータ端子ボックス、6は車速センサ、7はコントローラである。バッテリ1の出力がインバータ2に供給され、インバータ2の出力がモータ4に供給されるよう接続されている。また、コントローラ7はインバータ2へ制御信号を送り、その出力を制御する。
車速センサ6で検出された車速信号は、コントローラ7に送られる。コントローラ7には、車速信号以外の各種信号(例、アクセル信号)が入力される。コントローラ7は、電気自動車についての各種の制御を行うためのものであり、モータ4の駆動制御をするためにインバータ2へ制御信号を供給することも行っている。
インバータの出力端子側乃至インバータ・モータ間にフィルタ装置を付加し、インバータの出力電圧を平滑にすることにより、このサージ電圧やEMIノイズを抑制することも考えられる。しかしそうすると、今度は、付加したフィルタの端子でサージ電圧が発生し、フィルタ側からEMIノイズが発生する。また、サージ電圧を平滑させる程に十分にインバータ出力電圧を平滑すると、モータに印加される波形は応答が劣化した波形となり、モータのトルク制御が高速に行えなくなるという問題も生ずる。
第1の問題点は、モータ端子に印加される電圧がインバータの入力電圧の最大2倍まで跳ね上がり、サージがインバータ出力電圧の立ち上がり及び立ち下がりの時点で繰り返し発生することになるために、モータ4の絶縁が劣化するなどして、駆動システムの信頼性を低下させるという点である。
第3の問題点は、EMIノイズが含まれた電流がモータ巻線を流れることにより、ノイズ成分による磁界も発生し、これが制御に悪影響を及ぼすという点である。例えば、電気自動車の場合、走行用のモータ4には車速センサ6が付設されているが、それにEMIノイズ成分が拾われ、車速信号としてコントローラ7へ送られると、制御に誤動作を生じる恐れがある。
本発明は、以上のような問題点を解決することを課題とするものである。
なお、上記バイパスコンデンサの容量は、このモータ端子装置を適用しようとするモータのモータ端子間容量よりも大としておくのが望ましい。また、上記減衰抵抗の値は、第2導体を流れるEMIノイズ電流を消費する値にしておくのが望ましい。
なお、前記第1導体及び第2導体の形状は、入力端子側から出力端子側へ向かって直線形状のものとしてもよいし、入力端子側から出力端子側へ向かってU字状に曲げられた形状のものとしてもよい。
1.入力側にサージやEMIノイズを含んだ電圧が供給されても、出力側にはそれが除去ないしは低減された電圧を送出することが出来るので、モータにはサージやEMIノイズを殆ど含まない電圧を供給することが可能となる。
サージやEMIノイズが除去ないしは低減されると、ノイズの振動は殆どなくなるし、振幅が大(サージ)であった場合には振幅も減少される。
2.モータには振幅大の電圧が印加されることがないので、モータの絶縁劣化や絶縁破壊が防止される。
4.モータ巻線を流れる電流にEMIノイズが含まれないので、モータ巻線周囲にノイズ成分による磁界が発生することもなく、制御動作に悪影響を及ぼすことがない(例えば、モータに付設されている車速センサからの車速信号にEMIノイズ成分が含まれてしまうことがなく、それにより制御に誤動作が生ぜしめられることがない。)。
5.構造簡単で小型であるので、モータ端子ボックス内に設置することが出来、格別の設置スペースを必要としない。そのため、電気自動車の狭いエンジンルーム内に設置されている走行用モータに対しても、容易に適用することが出来る。
インバータからモータまでの配線が長い場合(例えば、15m以上の場合)、それらは、配線間に分布する浮遊容量に大きく影響されて発生しているものであることが既に究明されている。一方、配線が短い場合(例えば、5m以下の場合)における発生メカニズムについては、あまり研究されては来なかった。
即ち、この場合のEMIノイズ等は、配線抵抗,配線インダクタンス及びモータ端子間容量で構成される直列回路で生ぜしめられている直列共振現象により、大きく影響されているものであるという新しい知見を得るに至った。
一方、最近の自動車では、種々の動作をコンピュータにより制御するようにしているため、電装品が高密度に実装されている。このような環境下では、EMIノイズ等は他の制御に誤動作をもたらす原因となる恐れがある。そのため、短い配線でモータとインバータとが接続されている自動車の分野でも、EMIノイズ等を抑制することは、極めて有用なことである。
そこで本発明は、配線が短い場合においてモータのEMIノイズ等を除去ないしは低減すべく、前記したような新しい知見を基にしてなされたものである。
図3は、インバータによるモータ駆動装置に本発明を適用した場合の図である。符号は図4のものに対応しており、8はモータ端子装置である。
構成上、図4の従来のモータ駆動装置と比べて相違する点は、モータ4の入力側に本発明のモータ端子装置8を接続し、モータ入力端子U4 〜W4 と共にモータ端子ボックス5内に収容するようにした点である。
図3,図5のような接続構成とすることにより、インバータ2からの出力は先ずモータ端子装置8に入力され、そこからの出力がモータ4に入力される。モータ端子装置8は、後で詳しく述べるように、入力にEMIノイズ等が含まれていても(図3の波形B)、それを除去あるいは低減して出力するので(図3の波形C)、モータ4にはEMIノイズ等が入力されることがなくなる。
モータ端子装置8は、次のような機能を果たすための3つの導体を具えた3層構造とされている。即ち、第1導体10は電力を伝送するためのものであり(電力伝送層)、第2導体14は第1導体10に流れるEMIノイズ等の成分の電流をバイパスして流すためのものであり(バイパス層)、第3導体17はコモンモードグランドを形成するための3相に共通の導体である(コモングランド層)。
浮遊容量12は、第1導体10と第2導体14との間に分布して存在している浮遊容量を示している。バイパスコンデンサ13は、EMIノイズ等の成分の第2導体14へのバイパスを良好にするため、第1導体10の出力端子側と第2導体14の出力端子側との間に接続されたコンデンサである。
減衰抵抗15は、第2導体14の入力端子側と第3導体17との間に接続された抵抗で、第2導体14に流れ込んで来たバイパス電流を集め、熱損失という形で電力消費して減衰させるためのものである。
なお、バイパスコンデンサ13や減衰抵抗15の値は、上記のバイパス機能あるいは電力消費機能を果たすよう適宜決定されるが、どのような値にすればよいかについての一例を、後で説明する。
入力端子9にサージやEMIノイズが含まれた波形(波形B)の入力が供給されると、その波形で第1導体10を流れて出力端子18に向かおうとする。しかし、EMIノイズ等は高周波であり、第1導体10と第2導体14との間には浮遊容量12が分布しているので、EMIノイズ等の成分の電流は浮遊容量12を通って第2導体14に流れ込む。更に、第1導体10と第2導体14の出力側にはバイパスコンデンサ13が接続されているので、これを通ってEMIノイズ等の殆どが第2導体14に流れ込む(逆に言うならば、殆どがバイパスされてしまうようにバイパスコンデンサ13の値を定めておく)。
そのため、第1導体10を出力端子18へ向かって流れていた電流のEMIノイズ等の成分の殆どは、第2導体14へ吸収されてしまい、出力端子18に達した時点ではEMIノイズ等の成分を殆ど含まない波形(波形C)となっている。
放射EMIノイズは、伝導EMIノイズの電流が第1導体10を出力端子18に向かって流れるときにも生じ、第2導体14に流れ込んだ伝導EMIノイズの電流が、減衰抵抗15が接続されている入力側に向かって流れて来るときにも生じる。
その結果、第1導体10を流れている伝導EMIノイズ電流により生ぜしめられた磁界(放射EMIノイズ)は、第2導体14を流れる伝導EMIノイズにより生ぜしめられる磁界(放射EMIノイズ)により、丁度打ち消されることになる。つまり、放射EMIノイズは、モータ端子装置8内で消滅させられることになる。そのため、放射EMIノイズが近傍に存在するセンサ等に悪影響を及ぼすことがなく、制御に誤動作を生じさせたりすることがない。
入力は高周波で振動するサージやEMIノイズが含まれた波形であるが、これが本発明のモータ端子装置で抑制され、モータ端子装置から出力される段階では、サージやEMIノイズが殆ど除去ないしは低減された波形となっている。
このような波形の入力がモータ4に入力されれば、モータ4の制御がノイズに影響されることなく精度よくなされると共に、近傍に付設されている車速センサ6等にEMIノイズ等の影響を及ぼすことがない。そのため、制御信号が乱されることがなく、それに起因する誤動作を招くこともなくなる。
サージやEMIノイズ成分は高周波であるので、表皮効果のためにそれらの電流は導体の表面に集中して流れるわけであるが、直線型の第1導体10では、電流の流れる条件としては導体の幅方向のどの位置でもほぼ同じであるので、電流は矢印24で示すように、第1導体10の表面の幅全体にわたって一様に広がって流れて行く。
すると、伝導EMIノイズの電流により生ぜしめられる放射EMIノイズの抑制効果(伝導EMIノイズの電流が第1導体10,第2導体14を同じ大きさで互いに逆方向に流れることにより抑制される効果)は、向上する。なぜなら、広く拡散して流れるより集中して流れる方が、放射EMIノイズの打ち消し合いが良好に行われるからである。
その結果、放射EMIノイズの抑制効果を、直線型のものとU字型のものと比べた場合、U字型の方が格段に良好となる。
UV相モータ端子間容量23は、上記したように、モータ巻線及びその配設関係に影響されて異なるので、その値は個々のモータに特有のものとなる。
インバータからモータまでの配線が短い場合、モータ端子間に生ずるEMIノイズは、配線抵抗,配線インダクタンス及びモータ端子間容量で構成される直列回路で、直列共振現象が発生することにより生ぜしめられているということが判明したということは既に述べた。従って、バイパスコンデンサ13や減衰抵抗15の値を定めるには、モータ端子装置8を接続しない状態の回路で直列共振が生ずる場合の回路要素の値を、先ず解明する必要がある。
以下では、その解明の仕方およびバイパスコンデンサ13,減衰抵抗15の決め方の1例を説明する。
なお、回路要素の値を知りたいという場合、LRCメータを使用して測定することも考えられるが、1MHz以上の高周波における抵抗やインピーダンスを測定することは、既存のLRCメータでは不可能である。
図9は、モータ入力端子電圧の実測波形を示す図である。横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表している。Ed はインバータから供給されたステップ電圧の値であり、VP は実測波形のピーク電圧の値である。実測波形は、ピーク電圧VP から振幅を減じつつステップ電圧Ed を中心として上下に振動し、徐々にステップ電圧Ed に収斂して行くという波形となる。
この回路での減衰定数(ρ)の値をρ0 とし, 時定数をτとすると、図9のような実測波形から、公知の波形読み取り技術により、減衰定数ρ0 ,時定数τが求められる。即ち、減衰定数ρ0 は、VP /Ed の値に応じて割り出されるし、時定数τは、波形の立ち上がり時点t0 から所定の値まで減少して来た時点t1 までの時間を読み取ることにより求められる。
図10は、実測電圧波形の高速フーリエ変換解析(FFT解析,FFT…Fast Fourier Transform)の結果を示す図である。横軸は周波数を表し、縦軸は電圧を表している。この解析結果を見ると、図中の点Rで示す部分でピークが現れているが、このピークは直列共振のために生じていると判断される。従って、ピークが現れている周波数fr が、実測に供した回路(図8の回路)の直列共振周波数fr として求められる。
表皮効果を考慮した場合のUV相間線路インダクタンス28の値LUVは、次の(1)式で算出し得ることが知られている。但し、Aは配線の長さ、aは配線の半径である。
LUV=2×2A{log(2A/a)−1}×10-1 (1)
(4)UV相間線路抵抗27(RUV)の決定
UV相間線路抵抗27の値RUVは、次の(2)式で算出し得ることが知られている。LUV,τは既に求められているから、算出可能である。
RUV=2LUV/τ (2)
UV相モータ端子間容量23の値Ctuv を求める手法としては、2つの方法がある。第1の方法は減衰定数ρ(=ρ0 )を用いる方法であり、次の(3)式で算出し得ることが知られている。ρ,RUV,LUVは既に求められているから、算出可能である。
Ctuv =(2ρ/RUV)2 ×LUV (3)
第2の方法は直列共振周波数fr を用いる方法であり、次の(4)式で算出し得ることが知られている。fr ,LUVは既に求められているから、算出可能である。
Ctuv =(2πfr )2 ×LUV (4)
(6)バイパスコンデンサ13の容量Cb の決定
図11は、UV相間バイパス容量の定め方を説明する図である。符号は図8のものに対応し、8はモータ端子装置、29はUV相間バイパス容量(Cbuv )、I23はUV相モータ端子間容量23を流れる電流、I29はUV相間バイパス容量29を流れる電流である。EMIノイズを抑制するのに適切なUV相間バイパス容量29の値CbUV を求めるには、CbUV をいろいろな値に変えてシミュレーションしてみて、それらの結果を見て求める。
図11(2)の場合は電流I23がまだ相当大であるが、図11(3)の場合にはかなり低くされ、図11(4)の場合には相当抑制されている。これらシミュレーションの結果を見て、CbUV を適宜な値に定める。
これらは一例である。しかし、これらの例からも分かるように、モータ端子間容量を流れる電流が減少しているために、その分、第2導体へ流れるEMIノイズの電流が大きくなって、バイパス効果があらわれていることを示していると考えられる。また、この第2導体へ流れるEMIノイズの電流が大きくなっていることは、減衰抵抗によって処理しやすい状態になっているとも言える。
以上のことから、バイパスコンデンサの容量を決定するには、バイパスコンデンサ容量の値を、モータ端子間容量よりも大きな値とすることが望ましい。しかし、モータ端子間容量は、モータの特性によってモータ毎に変るため、シミュレーションしてモータ毎に適正な値とする必要がある。
図1でも説明したように、モータ端子装置8の減衰抵抗15は、振動成分であるEMIノイズ等の電流をここに集めて流し、熱として消費して減衰させるためのものである。モータ端子装置8をモータ4を含む実際の回路に使用した場合の減衰抵抗15の位置は、図2に示した通りである(符号15U ,15V )。この回路での減衰定数をρ1 とした場合、ρ1 は次の(5)式で表される。
ρ1 ={(RU +RV +2Rd )/4}×√{2Cb /(LU +LV )} (5)
但し、RU …U相線路抵抗19の値
RV …V相線路抵抗21の値
LU …U相線路インダクタンス20の値
LV …V相線路インダクタンス22の値
Claims (6)
- 一端が入力端子に連なり他端が出力端子に連なっているパワー伝送用の第1導体と、
該第1導体と第1絶縁層を挟んで対向配置された第2導体と、
前記第1導体の出力端子側と該第2導体の出力端子側との間に接続されるバイパスコンデンサと、
第2絶縁層により前記第2導体と絶縁されて配設され、コモンモードグランドを形成する第3導体と、
前記第2導体の入力端子側と該第3導体との間に接続される減衰抵抗と、
を具えた構成を有し、
インバータからの出力で駆動されるモータのモータ入力端子に前記出力端子が接続されて使用される
ことを特徴とするモータ端子装置。
- バイパスコンデンサの容量がモータ端子間容量よりも大とされていることを特徴とする請求項1記載のモータ端子装置。
- 減衰抵抗の値が第2導体を流れるEMIノイズ電流を消費する値にされていることを特徴とする請求項1記載のモータ端子装置。
- 3相モータの各相に対応させて設けた第1導体,第1絶縁層,第2導体,第2絶縁層,バイパスコンデンサおよび減衰抵抗と、3相に共通の第3導体とを具えた
ことを特徴とする請求項1,2または3記載のモータ端子装置。
- 第1導体及び第2導体が、入力端子側から出力端子側へ向かって直線形状とされていることを特徴とする請求項1,2,3または4記載のモータ端子装置。
- 第1導体及び第2導体が、入力端子側から出力端子側へ向かってU字状に曲げられた形状とされている
ことを特徴とする請求項1,2,3または4記載のモータ端子装置。
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