しかしながら、上記特許文献1に記載の従来の駐車車両の退出阻止装置においては、駐車車両の底部の形状と駐車した位置に依っては、駐車車両の底部の凸部と軸受部の周辺構造物が極めて接近した位置関係になった場合などに、車両検知センサの送信コイルから送信された磁束が駐車車両の底部の凸部と軸受部の周辺構造物を経由してしまうため、適切に受信コイルに到達せず、その結果、車両を検知できない場合があるといった問題があった。
また、上記特許文献2に記載の発明においては、高価な磁気センサーを3軸方向の検知に用い、さらにそのセンサーを2セット連接して配置するため、センサー素子の材料費が嵩んでしまい、設備コストが高騰するという問題があった。
ところで昨今のMR素子、MI素子やフラックスゲートなどの磁気検知素子は、センサー素子の小型化と性能向上により、従来では周波数応答特性に問題があって実現できなかった微弱な磁気レベルの高周波磁気成分の検知も可能になっており、今後の産業上の有効活用が期待されてきている。
上記従来の構成を図面と共に更に詳しく説明すると、図13は従来のフラップ式駐車装置100の構成を説明した斜視図であって、図13において、フラップ式駐車場の駐車エリアPAの幅を示す枠線LX上には、フラップ板101を駆動する駆動部110が位置し、車両の進入時にフラップ板101にタイヤが乗り上げ易くするためのスロープ部102と、その反対側にはフラップ板101がそれぞれ平行に駐車エリアPAの長手方向中央付近に位置していて、フラップ板101の先端部には、端部軸受け構造部103が樹脂製のカバー部104の内部に位置する状態で配置されている。さらにその最端部のカバー部104の内部には、送信コイル105と受信コイル106よりなる符号100Xで全体的に示した車両検知装置が配置されている。車両検知装置100Xにはベース板107上にお互いに一定角度向き合う方向に傾斜するように、上記の送信コイル105と受信コイル106が固定されており、送信コイル105及び受信コイル106は図示しない配線によってスロープ部102の内部を通って駆動部110に接続され、駆動部110の中にやはり図示しない制御回路が搭載されている。
送信コイル105及び受信コイル106を用いた車両検知装置100Xの原理については周知の技術であり、基本的には送信コイル105と受信コイル106とベース板107間で磁気ループを形成し、その周辺に駐車車両CR等の磁性体が位置した場合に、磁気ループの状態が変化することで受信コイル106の磁束の状態の変化を検出するものであるが、ベース板107の役割としては磁束の漏洩を防止して検出距離を増加する目的に加えて、駐車エリアPAの地面内部にあるかもしれない構造物、配線、鉄筋などにより車両検出性能が左右されることを防止する目的もある。また、特に寒冷地においてロードヒーティング用のヒートパイプやヒータは、磁気式の車両検知装置を安定的に動作させる上では、確実にその影響を排除する必要がある。その様な目的で使用されるベース板107は軟磁性体が好適であり、鉄、ケイ素鉄、パーマロイ等の比透磁率が高い材料が用いられている。
次に、図14の記載に基づいて上記従来の車両検知装置100Xの動作を説明する。
図14(1)には、駐車車両CRが無い場合の車両検知装置100Xの状態を示し、送信コイル105から送信された磁力線MCをモデル的に示しており、この状態での磁力線MCは受信コイル106の近傍では低レベルであり、受信コイル106で磁気検知がされていない状態である。また、送信コイル105と受信コイル106の間には前述した端部軸受け構造部103があるが、図面上奥側に位置しており、送信コイル105と受信コイル106の中心位置を結ぶ面上からは隔たっているため、通常はこの端部軸受け構造部103の影響は無い。
図14(2)は駐車車両が有る場合の車両検知装置100Xの状態を示し、送信コイル105から送信された磁力線MCをモデル的に示している。磁力線MCは車両底部CXの磁性体により磁気ループを形成するために、受信コイル106にも到達することになり、受信コイル106で磁気の検知がなされている。この図の様に平坦な車両底部CXであれば、このモデル的な磁束の状態となって確実に車両検知が可能であるが、実際の駐車車両は平坦な底部を有しているとは限らず、車両によって複雑な形状をしていることは容易に想像がつくが、基本的にはいくら凹凸があったとしても、その表面を磁束が通過してベース板107の範囲内でループが形成されることになるため、車両が無い状態との差異は、受信コイル106で確実に検知が可能であるとされている。
図14(3)の(イ)と(ロ)は、車両の底部に突起CZが路面に向けて出っ張っている状態を示した正面図と側面図であって、図示の状態であっても、確実に車両が検知されている状態を示す。
図14(4)の(イ)と(ロ)は、車両の底部に突起CZが駐車エリアPAの路面PXに向けて出っ張っている状態を示した正面図と側面図であって、その突起CZの近傍に端部軸受け構造部103が位置している状態を示す。この様な位置関係にあると、送信コイル105から送信された磁力線MCは車両底部CXの突起CZに引き寄せられた後、端部軸受け構造部103を通ってベース板107に戻るといった磁気ループを形成することがある。この場合、当初図14(1)で示した状態での受信コイル106上の磁気検出状態と同等な検出状態となってしまい、駐車車両が有るのに無いという車両検知出力のままで、要するに車両検知ミスを引き起こすことがある。
これを回避するためには、送信コイル105と受信コイル106の中心を結ぶ面に対して、端部軸受け構造部103が車両底部CXの凹凸によって影響されないよう距離を遠くに隔たて構成すればよいが、そうすると車両検知装置100Xの横幅が大きくなってしまい、装置がコストアップしてしまうという問題点もある。
車両検知装置100Xを単独でフラップ装置100の端部軸受け構造部103から離して取り付けてもよいが、配線を埋設する必要があり、取り付け部も単独で設けることになると、取り付け用のナットなどが磁気ループに影響する不具合も別途考慮しなければならない。
従って本発明の技術的課題は、駐車車両の底部の形状によっては、車両検知装置の送信コイルから送信された磁力線が適切に受信コイルに到達せず、車両検知できない場合があるといった問題を解消し、安定した車両検知性能を確保できると共に、比較的安価にて提供できる車両検知装置と、この車両検知装置を用いたフラップ式駐車装置および車両検知システムを提供することである。
(1) 上記の技術的課題を解決するために、本発明の請求項1に係る車両検知装置は、駐車エリアに進入した駐車車両を検知する車両検知装置であって、上記駐車エリア内に、送信コイルと、互いに直交し、且つ、近接する3つの検知軸を有する磁気検知素子とを、一定距離を隔てた状態で配置すると共に、上記送信コイルを一定周波数の交流で発振することによって、上記3つの検知軸を有する磁気検知素子において検知された磁気信号の上記一定周波数成分のみを抽出して、上記3つの検知軸毎に抽出された一定周波数成分を合成したベクトルの大きさ、及び、ベクトルの方向の変化によって、上記駐車エリア内における駐車車両の有無を判定するしている。
(2) また、本発明の請求項2に係る車両検知装置は、前記送信コイルと前記磁気検知素子とから成る車両検知装置を複数連接して使用する場合に、前記一定周波数の交流発振周波数が、隣接する駐車エリアの車両検知装置間において、異なる周波数に設定されていることを特徴としている。
(3) また、本発明の請求項3に係る車両検知装置は、前記3つの検知軸を有する前記磁気検知素子が、1軸の検知軸を3ケ、若しくは、2軸の検知軸を含めて複数の検知軸を用いて構成されていることを特徴としている。
(4) また、本発明の請求項4に係るフラップ式駐車装置は、駐車車両の料金精算以前の退出を阻止するために、駐車エリアに設けたフラップ装置がフラップ板を駐車車両の底部側で起立回動させるか、若しくは、起立回動させたフラップ板を駐車車両の底部に当接させるように構成したフラップ式駐車装置であって、上記駐車エリア内に、送信コイルと、互いに直交し、且つ、近接する3つの検知軸を有する磁気検知素子とを、一定距離を隔てた状態で配置すると共に、上記送信コイルを一定周波数の交流で発振することによって、上記3つの検知軸を有する磁気検知素子において検知された磁気信号の上記一定周波数成分のみを抽出して、上記3つの検知軸毎に抽出された一定周波数成分を合成したベクトルの大きさ、及び、ベクトルの方向の変化によって、上記駐車エリア内における駐車車両の有無を判定するように構成した車両検知装置を、上記フラップ装置に隣接、若しくは、内蔵して設け、上記フラップ板の起動による上記車両検知装置の出力変化を予め記憶させて、上記フラップ板の起動による信号の変化をノイズとして除去することを特徴としている。
(5) 更に、本発明の請求項5に係る車両検知システムは、複数の駐車エリアに進入する駐車車両を検知する車両検知システムであって、送信コイルを上記複数の駐車エリアの近傍に配置し、上記複数の駐車エリアの各々の略中央部分には、互いに直交し、且つ、近接する3つの検知軸を有する磁気検知素子を用いて構成した車両検知装置を、各駐車エリアに単独で配置するか、若しくは二組を各駐車エリアの車両進入方向に対して距離を隔てて配置すると共に、上記各送信コイルを一定周波数の交流で発振することによって、上記各駐車エリアに設置した車両検知装置の3つの検知軸を有する磁気検知素子が検知した磁気信号の一定周波数成分のみを抽出して、上記3つの検知軸毎に抽出された一定周波数成分を合成したベクトルの大きさ、及び、ベクトルの方向の変化によって、各駐車エリアにおける車両の有無を判定するか、又は、上記二組の磁気検知素子間での上記ベクトルの大きさ、及び、ベクトルの方向の変化の差分によって、車両の有無を判定することを特徴としている。
次に、上記各手段の作用に付いて説明すると、上記(1)で述べた請求項1に係る車両検知装置によれば、駐車車両の底部の形状と駐車した位置に依って、駐車車両の底部の凸部と周辺構造物が極めて接近した位置関係になった場合などでも、送信コイルから送信された磁束の大きさと方向の変化を監視することで、確実に車両検知が可能となる。
上記(2)で述べた請求項2に係る車両検知装置によれば、隣接する駐車エリアの車両有無や送信コイルからの磁束の影響を排除でき、複数の駐車エリアが密接した駐車場においても、確実に車両検知が可能となる。
上記(3)で述べた請求項3に係る車両検知装置によれば、受信コイルを複数配置して構成するよりも小型化が可能であり、車両検知装置を送信コイルと合体させてコンパクトに収納可能であり、スペース効率が良く車両検知装置として汎用性のある構成となる。
上記(4)で述べた請求項4に係るフラップ式駐車装置によれば、フラップ装置の近傍若しくは内蔵してフラップ板の動作によって磁気検知状態が変化する場合であっても、確実に車両の有無を検知でき、フラップ装置がコンパクトに構成できる。
上記(5)で述べた請求項5に係る車両検知システムによれば、一つの送信コイルに対して複数の駐車エリア毎の車両検知装置の組み合わせで車両検知が可能な車両検知システムが構成可能であり、物理的に大きな送信コイルを駐車エリアの外部に配置し、小型の車両検知素子で構成された車両検知装置を駐車エリアに配置することで、既存の駐車場に車両検知装置の埋設などの工事を行わずとも駐車エリア毎の車両検知が可能となり、汎用性の高い車両検知システムを実現することができる。
以上述べた次第で、本発明によれば、駐車車両の底部の形状によっては、車両検知装置の送信コイルから送信された磁力線が適切に受信部に到達せずに車両検知できない場合があるとといった問題を解消して、安定した車両検知性能を確保できる車両検知装置が安価に実現できると共に、この車両検知装置を用いることによって、安定した車両検知性能を備えたフラップ式駐車装置と車両検知システムを、比較的低コストにて実現することができる。
以下に、本発明に係るフラップ式駐車場に用いる車両検知装置の実施例を図面と共に詳細に説明するが、ここで説明する実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に最良と思われる数々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に請求範囲において本発明を限定する記載がない限りはこれらの態様に限定されるものではない。
図1は本発明の実施例の車両検知装置を含むフラップ式駐車装置の実施例を示すものであって、図1(1)は平面図、図1(2)は側面図、図1(3)は背面図を示す。これ等の図面において、駐車エリアPAは駐車場敷地内に所定の大きさで区画分けされていることを白線ペイント等のラインLXで示され、駐車エリアPAの車両進入方向奥側には車止めPVが設置され、駐車エリアPAの車両進入方向のほぼ中央には、符号10にて全体的に示したフラップ式駐車装置が設置され、図の様に後進で駐車エリアPAに進入して駐車した駐車車両CRの前後のタイヤCS、CTの間に、フラップ式駐車装置10のフラップ板11が位置する様に配置されている。
また、図1においてフラップ式駐車装置10のフラップ板11の端部には、図示しない端部軸受け構造部が構成されているが、それに隣接してフラップ式駐車装置10の最先端部には、符号20にて示した車両検知装置が連接されている。車両検知装置20は駐車エリアPAの幅方向でほぼ中央に位置しており、駐車車両CRの底部CXを検知する様になっている。更に図中、30は上記フラップ式駐車装置10の根端部に取り付けた駆動部であって、内部には上記のフラップ板11を倒せ状態から起立状態に回動作動する作動機構(図示省略)が収められている。
図1において例示した駐車車両CRは例えばオフロード仕様の4輪駆動車であり、駐車車両CRの底部CXには複雑な機構が配置されているが、特徴的なものとしてセンターデフCZがあり、これは前後のタイヤCS、CTの回転数を制御するためのデフであるが、構造的に車両底部CXのほぼ中央で、路面方向にかなり突出した形状をしていることが多い。この様に車両底部CXに著しく突出した構造物がある場合であっても、車両検知装置20は正常に車両CRの有無を検出する必要がある。
図2(1)は、本発明に係る車両検知装置が実施されたフラップ式駐車装置10の実施例を示した外観図であって、図面に示すように、フラップ式駐車装置10が設置される駐車エリアPAの幅を示すラインLX上には、フラップ板11を駆動する駆動部30が位置し、車両の進入時にフラップ板11にタイヤが乗り上げ易くするためのスロープ板12と、その反対側にはフラップ板11がそれぞれ平行に駐車エリアPAの長手方向中央付近に位置すると共に、フラップ板11の一方の端部に突設した支持軸11Aを支持する端部軸受構造部13が、樹脂製のカバー部20Pの内部に配置されている。さらにその最端部のカバー部20Pの内部には、送信コイル22と受信手段としての磁気検知素子23よりなる車両検知装置20が配置されている。車両検知装置20には、ベース板21上にカバー部20Pの内側方向に傾斜した送信コイル22と磁気検知素子23が固定されており、送信コイル22及び磁気検知素子23は図示しない配線によってスロープ板12の内部を通って駆動部30に接続され、その中にやはり図示しない制御回路が搭載されている。
一般的な送信コイル及び受信手段を用いた車両検知装置の原理については周知の技術であり、基本的には送信コイルと受信手段とベース板21間で磁気ループを形成し、その周辺に駐車車両CR等の磁性体が位置した場合に、磁気ループの状態が変化することで受信手段の磁束の状態の変化を検知するものであるが、ベース板21の役割としては磁束の漏洩を防止して検知距離を増加する目的に加えて、駐車エリアPAの地面内部にあるかもしれない構造物、配線、鉄筋などにより車両検知性能が左右されることを防止する目的もある。また、特に寒冷地においてロードヒーティング用のヒートパイプやヒータは磁気式の車両検知装置20を安定的に動作させる上では、確実にその影響を排除する必要がある。その様な目的で使用されるベース板21は軟磁性体が好適であり、鉄、ケイ素鉄、パーマロイ等の比透磁率が高い材料が用いられている。
また、本発明では特に、前述した図14に示す従来の受信コイル106に変えて、上述した図2(1)および要部の拡大図である図2(2)に示すように、プリント基板23P上に前記送信コイル22から一定距離を隔てた位置に、互いに直交する3つの検知軸23X,23Y,23Zを有する受信手段としての磁気検知素子23が近接して実装されて、ベース板21上に配置されている。上記の送信コイル22は一定周波数の交流で発振し、上記3つの検知軸23X,23Y,23Zを有する磁気検知素子23において検知された磁気信号の前記一定周波数成分のみを抽出し、前記3つの検知軸23X,23Y,23Z毎に抽出された一定周波数成分を合成したベクトルの大きさおよびベクトルの方向の変化によって、駐車車両CRの有無を判定する構成となっている。(請求項1の特徴)
まず図4(1)の(イ)と(ロ)は、駐車車両CRが無い状態を示した正面図と側面図で、プリント基板23P上の磁気検知素子23の近傍では、磁力線MCの検知状態が低レベルであるが、ある程度の磁束密度とある方向に向いた磁束が存在している。図4(2)のイ)と(ロ)は、駐車車両CRが有る状態を示した正面図と側面図で、駐車車両CRが車両検知装置20の上方に位置した場合、送信コイル22から送信された磁力線MCは車両底部CXの磁性体により(ロ)の如く磁気ループを形成するために、磁気検知素子23近傍にも到達することになり、磁気検知素子23で磁気の検知量が増加されている。この図の様に平坦な車両底部CXであれば、磁力線MCはこのモデル的な磁束の状態となって確実に車両検知が可能であるが、実際の駐車車両CRは平坦な底部を有しているとは限らず、車両によって複雑な形状をしていることは容易に想像がつくが、基本的にはいくら凹凸があったとしても、その表面を磁束が通過してベース板21の範囲内でループが形成されることになるため、駐車車両CRが無い状態との差異は、磁気検知素子23で確実に検知が可能である。
図4(3)の(イ)と(ロ)は、駐車車両CRの底部CXに突起CZが駐車エリアPXの路面に向けて出っ張っている状態を示した正面図と側面図であって、その突起CZの近傍に前述した端部軸受け構造部13が位置している状態を示す。この様な位置関係にあると、送信コイル22から送信された磁力線MCは車両底部CXの突起CZに引き寄せられた後、端部軸受け構造部13を通ってベース板21に戻るといった磁気ループを形成することがある。この場合、図4(1)の(ロ)で示した状態での磁気検知素子23上の磁気検出状態と同等な磁束密度のままの場合もあるが、当初の磁束の方向とは異なる方向に磁束が傾いたことを検出することで、駐車車両CRが有るのに無いといった車両検知ミスを防止することが出来る。
これは、従来は受信コイル1ヶにて磁力線が受信コイル近傍を通過するために発生する起電力で車両の検知有無を判断していたものとは異なり、3つの方向の検知軸23X,23Y,23Zを有する磁気検知素子23で各々の磁気検知信号を演算することにより、磁気検知素子23上に発生する磁力線MCの磁束密度と磁束の方向を得ることが出来るためである。
図5は本発明の実施例に係る車両検知装置20の構成を説明したブロック図を示し、実施例の車両検知装置20では基本的には数kHzの発振周波数で送信コイル22から交流磁束を送信し、前記3つの検知軸23X,23Y,23Zから成る磁気検知素子23の夫々に、受信回路44、増幅回路45、バンドパスフイルタ46、検出部47、A/Dコンバータ48の構成を有しているが、図5では簡略化のために磁気検知素子23のXYZ各軸23X,23Y,23Zをまとめて示している。なお、図6は本発明の他の実施例に係る車両検知装置20の構成を説明したブロック図であるが、その詳細な構成は後述する。
図5において、符号20で全体的に示したのは本発明に係る車両検知装置であって、当該車両検知装置20の制御部の中心を構成するCPU41、このCPU41に接続したバス41Sには、各種のプログラム手段を実現するソフトウエアーを格納したROM42と、各種データを格納するRAM42と、上述したA/D コンバータ48及びI/Oインターフェース51が接続されている。
更に、上記のA/Dコンバータ48には、仮に駐車エリアPAの長手方向に磁界検知感度を持つX軸磁気検知軸23Xと、地面に対して垂直な方向に磁界検知感度を持つZ軸磁気検知軸23Zと、更には、駐車エリアPAの幅方向に磁界検知感度を持つY軸磁気検知軸23Y(これ等各検知軸はいずれも図示省略)と、方向を定義した3つの磁気検知軸23X,23Y,23Zを夫々具備した磁気検知素子部、即ち、図5では右端のXYZ磁気検知素子23が、受信回路44、増幅回路45、バンドパスフィルタ46、検出部47等を介して接続され、更に上記のI/Oインターフェース51には、上記の送信コイル22の発振回路50が接続されており、さらに複数の磁気検知装置20…間での同期動作にも利用可能な様に、外部装置との通信回路も搭載されている。
更に前記RAM43には、上記各磁気検知軸23X,23Y,23Zにて検知される各磁気信号を、夫々A/Dコンバータ48を通してデジタル変換した信号の段階で、それらを合成することで、駐車エリアPA内で車両検知装置20が配置された座標上でいかなる方向に信号が発生し、且つ、その信号の大きさがどれくらいあるのかを演算し、信号の大きさが所定のしきい値を超えていれば、車両有りと判定する車両有無判定手段を備え、且つ、信号の大きさが所定しきい値に満たない場合でも、その信号の方向が当初の駐車車両CRが無い状態に比較して所定のしきい値以上の変化角度を有していた場合に、車両有りと判定する車両有無判定手段や、上記当初の駐車車両CRが無い状態の状態を初期値として設定する初期値設定手段等を実現するためのソフトウエアー(プログラム)が格納されている。
上述した本発明の実施例において、送信コイル22はベース板21に対して垂直状態から20°程度傾斜させ、その傾斜姿勢が維持できるように図示しない保持部材によって送信コイル22をベース板21に対して固定しているが、上記XYZの各磁気検知素子23は前述の通り駐車エリアPAを想定してそれにXYZ軸23X,23Y,23Zが沿う様に配置され、プリント基板23P上では整然とXYZ方向に配置され、特に傾斜させる必要はない。
この手段によれば、駐車車両CRの底部CXの形状と駐車した位置に依って、駐車車両CRの底部CXの凸部CZと周辺構造物が極めて接近した位置関係になった場合などで、車両検知装置20の送信コイル22から出力された磁束が駐車車両CRの底部CXの凸部CZから他の構造物を経由した場合でも、XYZの3軸23X,23Y,23Zを有する磁気検知素子23においては、微弱な磁束(磁気力線)の量と方向が検知できることで、確実に駐車車両CRの有無の検知が可能となる。
なお、図4においてベース板21を含む車両検知装置20の全体は、樹脂製のカバー室21Pで覆われ、カバー室21P内部の空間の送信コイル22および磁気検知素子23周辺に樹脂充填材で充填することで、強度ならびに防水性を確保することが出来る。その場合、充填樹脂はエポキシ樹脂や、一般的なグルーガンで使われているエチレン塩化ビニールや酢酸塩アセテート樹脂などが望ましい。
次に、図3は前記図2に示したフラップ式駐車装置10が設置された駐車場の平面レイアウト図を示す。図3において、車両検知装置20はフラップ式駐車装置10の軸受構造部13に隣接して、一体的にカバー部20P内に収納されており、フラップ式駐車装置10と車両検知装置20が一体化されたユニット構造となっている。このユニットを配置した図3でわかるとおり、車両検知装置20は駐車エリアPAのほぼ中央に位置するように設置される。
この際に、駐車エリアA、B、C(PA…)において、前記図5の発振回路50で生成される送信コイル22の発振周波数は、個々の車両検知装置20内のRAM43上の設定値で可変することが可能となっており、各駐車エリア毎に異なる周波数で発振する様にし、隣接する駐車エリアPA…での信号の干渉を防止することが可能となっている。(請求項2の特徴)
具体的には、予め好適な発振周波数を2つ以上設定で保存しておき、駐車エリアPA毎にその設定を選択すればよく、例えば、駐車エリアAでは第1の周波数、駐車エリアBでは第2の周波数、駐車エリアCでは第1の周波数、といった様に、隣接する駐車エリアPA…でのみ周波数を異なるようにしてもよい。もちろん、好適な発振周波数は3種類でも4種類でも設定可能であるが、送信コイル22での出力が1つ駐車エリアPAを隔てた距離においても検知可能な程度でなければ、最低2種類の周波数でよい。
若しくは、複数の車両検知装置20…間をネットワークで接続し、複数の車両検知装置20…間で同期をとり、時分割で各駐車エリアPA…毎に駐車車両CRの有無を判定する手法なども有効であり、本発明の応用例として実現可能な手段である。
また、図2の車両検知装置20内部のプリント基板23P上に実装された磁気検知素子23は、図2(2)の拡大図では3軸の検知軸23X,23Y,23Zを有する夫々が同一の磁気検知素子23を、それぞれ異なる方向に向けて実装した状態を示したが、実際の磁気検知素子23はプリント基板23Pに実装が容易な様に、パッケージされた素子で供給されることが多く、その際に使い勝手から鑑みて2軸センサーと1軸センサーという形態での供給が多い。この2軸センサーをXY軸方向の磁気検知素子23として用い、1軸センサーをZ軸方向の磁気検知素子23として用いるのが一般的である。もちろん、2軸センサーを2種類用いて、そのなかの3軸分のみを使用してもよく、この様な小型パッケージされて基板実装しやすい素子としては、磁気抵抗素子:MR素子や磁気インピーダンス素子:MI素子等があり、これらの素子ではかなり微弱な磁気まで検知できるため、本発明の実施の形態に使用するには最適なものである。(請求項3の特徴)
図8〜図11は本発明の実施例の車両検知装置20の信号処理を説明する図である。図8(1)は車両が無い状態での磁気検知素子23の3軸各軸23X,23Y,23Zの出力を示す。XYZとも幅をもった信号に見えるが拡大すると一定周波数のサイン波の振幅が幅を持った太い線で示されており、全体的に大きくうねっている様子がわかる。この様に全体がうねるのは、周辺環境によって磁気検知素子23にDC成分が検知されるからであり、代表的なものには地磁気がある。図8(1)の状態では、駐車車両CRが無いために周辺の環境のノイズを受けながらも、各軸23X,23Y,23Z出力の高周波成分の振幅は一定に保たれている。
図8(2)はこの状態で駐車車両CRが駐車エリアPAに入場してきて停車し、そのまま駐車状態を維持している状態を示す。各軸23X,23Y,23Zとも駐車車両CRの入場にともなって高周波成分の振幅が変化しだしており、駐車状態になった時点で、高周波成分の振幅は安定する。なお、通常の受信コイルを用いた車両検知装置ではこの3軸のうちの1軸だけを検知することしか出来ず、通常一番効果の表れ易いZ軸周辺で受信コイルの検知方向を調整する様になっている。また3軸出力の違いを精査すると、図8(2)のX軸23Xの出力では、駐車車両CRなしの状態よりも高周波成分の振幅が若干減少している様に見受けられるが、この様な挙動は特別なものではない。
図9は図5のブロック図の検出部47の出力を示し、(1)は駐車車CR両無しの状態で図8(1)の処理結果を示し、(2)は駐車車両CR有りの状態で図8(2)の処理結果を示す。(1)で駐車車両CRが無い状態では高周波成分の振幅の変化が無かったため、検出部47の各軸出力は一定値となっている。(2)では駐車車両CRの入場にともなって、振幅が変化したことで、検出部47の各軸出力も変化しだし、駐車状態にともなって安定するが、振幅が変化したために検出部47の出力も各軸23X,23Y,23Zとも当初よりも変化している。
図10は図5のブロック図ではA/Dコンバータ48を通してCPU41で演算した結果を示し、(1)は合成出力としては変化無く、ベクトルのX−Y角度、ベクトルのXY−Z角度とも変化が無い。(2)では合成出力として「合成出力の変化」で示した様な変化があり、この変化値が予め設定したしきい値よりも大きい場合には、車両有りと判定する様にプログラムされている。この判定は通常の受信コイル1つで送信コイルからの磁束を検知する手法と類似であり、単に合成した最大の出力の検知が可能となっただけである。
図11には、同様の検知状態であるが、図4(3)に示した様な特殊なケースの場合を示す。図11(1)の場合、各軸23X,23Y,23Zの検知出力は駐車車両CR無しに比べて個々に若干の変化はしているが、大きく変化しているものはない。これを前述の様に信号処理を行ない、CPU41で演算した結果を(2)に示す。合成出力は駐車車両CR無しに比べてマイナス方向に変化し、この変化量も予め設定したしきい値よりも小さい場合、通常であれば車両有りの検知は不可能である。ところがベクトルのX−Y角度とベクトルのXY−Z角度によれば、特にX−Y角度が大きく変化していることがわかる。これは微弱なレベルながらも送信コイルの周辺の車両の構造物によって磁束の状態が変化したことを示している。本発明ではこのベクトル方向の変化角度を予め設定した角度以上の変化であった場合に、車両ありと判定する様にプログラムされている。
図12には、本発明の実施例の車両検知フローを示す。この例は図5のA/Dコンバータ48以降でCPU41で演算して判定するフローとして示しており、まずステップS1ではXYZ各軸23X,23Y,23Zでの初期値は別途設置されてメモリーに保存されている。これをX0、Y0、Z0とし、次のステップS2でXYZ各軸23X,23Y,23Zの出力を読み込み(すでにバンドパスフィルタ46、検出部47を通してDCレベルで検出された出力)、次のステップS3で初期値との差を演算し、次のステップS4ではベクトルの大きさVを演算し、次のステップS5ではベクトル方向1演算でαの角度、次のステップS6ではさらにベクトル方向2演算でβの角度を演算する。その後、これらの出力値と演算値より、まず、ステップS7で各軸23X,23Y,23Zの変化量のみでしきい値を以上の場合には駐車車両CR有りとし、NOの場合は次のステップS8でベクトルの大きさで判定し、NOの場合には次のステップS9でベクトル方向1の角度で判定し、NOの場合には次のステップS10でベクトル方向2の角度で判定する。これらは予めしきい値を設定して記憶させておき、NOの場合はステップS11に進んで駐車車両CR無しと判定し、その値に比較して演算値が大きかった場合(YESの場合)にはステップS12で駐車車両CR有りと判定する様にプログラムされている。
他の実施例として、前述の車両判定プログラムを応用することによって、フラップ式駐車装置から不正に退場する駐車車両CRを即座に検知することが出来る。すなわち、フラップ板11が上昇して、且つ、駐車車両CRが無い状態の各軸23X,23Y,23Zの出力から演算した合成出力やベクトル角度を予めRAM43に保存しておく。当然、駐車車両CRが無く、フラップ板11が下降した状態も別途保存されている。駐車車両CRがフラップ式駐車装置10の上部に停車し、車両検知装置20が駐車車両CR有りと判定した場合、フラップ板11が上昇する様になっているが、フラップ板11は駐車車両CRの底部CXに当接した状態で停止する。従来は、この変化に伴って受信コイルにおける信号の変化が無い様、フラップ板11と車両検知装置20の特に受信コイルとは距離を隔てて設置されており、フラップ式駐車装置10に車両検知装置20を内蔵したとしても、フラップ板11から離れて配置したために全体が大きくなってしまうという問題があった。
そこで本発明においては、予めフラップ板11のの下降・上昇とその過程における変化も数段階に分けて合成値変化量とベクトル角度変化として、RAM43に保存できるように構成されている。(請求項4の特徴) これは前述の図12のフローにおいて単純にしきい値と比較するだけでなく、ベクトルの大きさによっては角度のしきい値を変化させるなどの手法も適宜可能であり、この特徴を利用して請求項4に示したフラップ板11の動作の状態を検出し、その影響を考慮することが可能となる。
さらに本発明を応用して、前記図7に示す実施例の様に複数の駐車エリアPA…の車両検知装置20…として、3軸23X,23Y,23Zの磁気検知素子23で構成した車両検知装置20を各駐車エリアPA…のほぼ中央部に配置し、駐車エリアPAの外に送信コイル22を配置し、複数の駐車エリアPA…に対して1つの送信コイル22からの磁束を受信して車両車両CRの有無を判断することが可能である。(請求項5の特徴)
この発明においては、比較的小型化が困難で省電力化が困難な送信コイル22を駐車エリアPAの外に設け、小型で省電力化の可能な磁気検知素子23を駐車エリアPA内に設置することで、駐車エリアPA内の車両検知装置20を小型で薄型に製作可能となり、また、駐車エリアPA内に大きな突起物が必要なくなるため、駐車エリアPA内での躓きの事故などの解消に役立つ。また、省電力化によって電池駆動が可能となり、さらに信号伝達を無線モジュールと合体させて無線で行えば、膨大な数の駐車エリアPA毎に配線を引き回す必要がなくなり、非常に設置コストが安くなる。さらに送信コイル22には無線の中継装置(図示省略)を隣接して配置することで、配線が必要な装置が集約され、さらに設置コストの低減に役立つ利点を備えている。
前記図6にはこの実施例として、コイル部は有していない磁気検知装置20のブロック図が示されている。この場合、無線通信回路53が設けられ、さらに図示しないが全体的に電池駆動によって動作する様になっている。なお、図6において前記図5に示されている部材と同じ部材は、図5に記載の符号と同じ符号を付してその説明を省略する。
以上の様に構成した本発明の実施例であるが、磁気検知素子としてはMR素子やMI素子でなくとも、フラックスゲートや、単に受信コイルを複数配置することでも可能であり、従来の1つの受信コイルだけでの検知に比較して、格段に検知性能が向上する利点を備えている。
さらに、前記図7で示した複数の駐車エリアPA毎に磁気検知素子23を配置した技術の応用として、各駐車エリアに二組の磁気検出素子23を各駐車エリアの車両進入方向に対して距離を隔てて配置し、駐車エリア外の送信コイル22からの磁束を検出し、その際に二組の磁気検知素子間での上記ベクトルの大きさ、及び、ベクトルの方向の変化の差分によって、車両の有無を判定することも可能である。この手段によれば、車両の進入によって変化する磁束の検知状態の差分は、隣接する駐車エリアに出入りする車両の影響をあまり受けずに済み、周辺の磁気ノイズに対してもロバストな車両検知システムが実現可能である。