JP5150892B2 - 硬組織の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硬組織の評価方法に関し、特に、硬組織の結晶の配向性を分析する硬組織の評価方法に関する。
従来、生体内硬組織、再生硬組織、疾患硬組織の評価方法としては、骨密度や骨体積、組織標本の観察による方法が知られている。これらは、主として軟X線(レントゲン)、DEXA法、CT法などを利用して、骨密度や骨体積の測定や組織標本の観察により評価を行なっていた。すなわち、骨や歯といった生体硬組織の健康度合いを調べるためには、骨密度(アパタイトの密度)や骨体積を用いる方法が一般的であった。
最近では、骨密度を測定する方法として、例えば、超音波を被検者に送波して、透過した受波信号から骨の内部の音速や減衰率を求め、これらを骨の症状の評価指標としたものが提案されており、さらに、超音波を被検者の踵骨に送波して、骨内部の透過伝播速度を求め、次いで、この求められた伝播速度から、所定の計算式によって骨内部の海綿骨の骨梁線密度(骨梁長さ比)から骨梁面積率を算出する方法が知られている。(特開平6−339478号)。
特開平6−339478号公報
しかしながら、上述の軟X線(レントゲン)を利用する方法や超音波を利用して骨密度を測定する方法では、依然として、硬組織の精密な評価を得ることができなかった。すなわち、これらの軟X線(レントゲン)を利用する方法においては、例えば、組織を再生した場合に、完全な組織再生や組織の力学機能の回復が起こっていない場合でも、本来の硬組織の性状であると判断されるおそれがあった。これは、例えば骨量だけを評価の基準とすると、骨量が本来の組織の骨量に達している場合であっても、強度等において組織の機能が十分に回復していない場合があるにもかかわらず、正常であると判断されてしまうからである。
また、従来の硬組織代替材料の利用においては、生体硬組織そのものが部位に応じた特別なヒドロキシアパタイト結晶子の配向性を持つことは全く考慮されていなかった。このため、配向性を持たない硬組織代替材料の開発が中心とされてきており、当該硬組織代替材料の評価においても配向性が考慮されていなかった。配向性を持たない硬組織代替材料は、強度、製品寿命等の面でバラツキが生じ、ときには、極めて脆い硬組織代替材料による再生不良等も生じていた。したがって、硬組織についてより精密な評価を行なう方法が望まれていた。
さらに、実際に硬組織を解析する場合には、低侵襲的な方法が望まれるが、硬組織を大きく取り出して解析する必要もあり、迅速に分析することが事実不可能であった。
そこで、本発明の目的は、硬組織についてより精密、かつ迅速な評価を行なうことを可能とする硬組織の評価方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、発明者らは、生体内に存在する本来の硬組織の構造に着目し、硬組織の評価について鋭意研究した結果、本発明の硬組織の評価方法を見出すに至った。
本発明の硬組織の評価方法は、硬組織(人の硬組織を除く)の評価方法において、硬組織が骨生検針により得られた骨切片であり、前記骨切片の面内異方性を分析することにより、(002)面の強度に基づきヒドロキシアパタイトの結晶の配向性の配向方位を決定し、前記配向方位の位置での配向度を、(002)回折ピークと(310)回折ピークの比を取ることで決定し、当該配向度を評価の指標とすることを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、前記配向方位が、前記硬組織における結晶の配向方位の中で最大値又は極大値を示す配向方位である。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、前記面内異方性の分析が、前記硬組織の骨切片の骨軸方向と平行な面、又は前記骨軸方向±90度の範囲内の面における面内異方性を分析することにより行うことを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、前記結晶の配向性を、X線回折法、SEM-EBSP(Scanning Electron
Microscope-Electron Backscattering Pattern)法による各結晶粒の電子後方散乱像の解析によるもの、TEM-DP(Transmission Electron
Microscope-Diffraction Pattern)法による電子線回折図形の解析によるものからなる群から選択される少なくとも1種により分析することを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、X線回折法による分析が、微小領域において行なわれることを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、X線回折法による結晶の回折強度又は回折積分強度を求めることにより分析すること特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、前記分析を、c軸方向の回折強度又は回折積分強度/a軸方向の回折強度又は回折積分強度、c軸方向の回折強度又は回折積分強度/(a軸及び/又はc軸以外の方向の回折強度又は回折積分強度)、c軸方向の回折強度又は回折積分強度/(a軸及び/又はc軸を含む様々な方向の回折強度又は回折積分強度)からなる群から選択される少なくとも1種の回折強度又は回折積分強度比を求めることにより行うことを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、さらに、骨量、組織標本の観察、組成分析、赤外線吸光(IR)分析、硬さ・破壊応力、又は弾性率の力学特性測定の評価を行なうことを特徴とする。
本発明の硬組織の評価方法によれば、硬組織の結晶の配向性を評価することにより、硬組織の力学機能の評価を行なうことも可能となり、ひいては、より精密
かつ迅速な硬組織の評価を行なうことができるという有利な効果を奏する。
また、本発明の硬組織の評価方法によれば、硬組織の再生過程や疾患形成の評価を行なうことができるので、硬組織疾患の治療や再生医歯学分野(特に、整形外科学、脳外科学、歯学)や基礎医学の分野への貢献が期待できる。
また、本発明の硬組織の評価方法によれば、採取した硬組織を破壊することなく評価を行なうことができるという有利な効果を奏する。
本発明によれば、これまでとは異なる骨質指標(配向性)を用いて、骨の健康度や、疾患の進行度合い、疾患位置等が低侵襲で同定できるようになる。また、本発明によれば、これまで経験に頼っていた手術時の骨きり部位等の決定も定量的に可能となる。さらに、正常な骨は部位に応じて特徴的な配向性を持つが、長管骨以外の骨に関しても、骨生検等の道具で試料を取り出すことで、低侵襲に配向性(骨質)の解析が可能となる。将来は,骨の健康診断にも利用できる可能性がある。
本発明の硬組織の評価方法において、評価の対象となる硬組織としては、特に限定されず、例えば、生体硬組織の他、人工骨に代表されるような骨補てん材料、骨置換材料などの硬組織代替材料などを挙げることができる。硬組織代替材料としては、アパタイトを代表とするセラミックス、アルミナ等の無機材料、ステンレス鋼、Co-Cr合金、チタン合金等の金属材料を挙げることができる。セラミックスは、さらに、生体活性セラミックス、生体不活性セラミックス等に分けることができる。生体セラミックスとしては、リン酸カルシウム系セラミックス、シリカ系ガラス及び結晶化ガラスなどが挙げられる。リン酸カルシウム系セラミックスとしては、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムが良く知られており、これらは、人工歯根、皮膚端子、金属コーティング材などに使われている。本発明は、これらの生体硬組織、硬組織代替材料の評価に適用することができる。以下では、硬組織として良く知られているヒドロキシアパタイトを中心に説明するが、本発明の硬組織の対象が、これに限定されることを意図するものではない。
本発明の硬組織の評価方法においては、上述のような硬組織における結晶の配向方位を決定し、当該配向方位の結晶の配向性を分析する。本発明者らは、生体内の硬組織における結晶は、特定方向に配向していることに着目し、本来の硬組織の配向性と同様の配向性を持つようになれば、よりもとの正常な硬組織の状態に戻すことが可能であると考え、本発明の評価法を確立するに至った。すなわち、本発明の硬組織の評価方法は、正常な硬組織における結晶の配向性を比較しつつ行うことも重要な点の一つである。
結晶の配向性の分析の方法は、特に限定されず、例えば、X線回折法、SEM-EBSP(Scanning Electron
Microscope-Electron Backscattering Pattern)法による各結晶粒の電子後方散乱像の解析によるもの、TEM-DP(Transmission Electron
Microscope-Diffraction Pattern)法による電子線回折図形の解析によるものからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。硬組織を非破壊的に測定可能であり、試料の作製、準備が容易であり、定量的に配向性を判断できるという観点から、好ましくは、X線回折法を挙げることができる。配向性を小さな部位からより確実に把握するという観点から、X線回折法による分析が、微小領域において行なわれることが好ましい。一般に、微小領域の範囲を特定するよりは、入射X線の径を定義した方が正確である。すなわち、X線と試料表面との角度はある程度変化するので、測定領域を厳密に艇具する事は難しい。一方、測定範囲(微小領域の範囲)は、入射X線径の約3〜5倍といわれている。そこで、入射X線径を用いて好ましい範囲を定めることができる。精度よく小さい部位の配向性を評価するという観点から、入射X線径は10μm〜1mmであり、好ましくは10μm〜100μmである。
結晶の配向方位としては、正常な硬組織と比較することができる程度に特定できれば、特に限定されるものではない。したがって、たとえば、X線回折法、SEM-EBSP法、TEM-DP法などにより配向性を調べた場合に、最大のピークのものを用いてもよく、2番目、3番目にピークのもの又はそれら以外のものを用いてもよい。これらは、硬組織の性状、骨量、病気の重篤度、長骨、短骨、扁平骨等の硬組織の種類、種々の部位などにより適宜変更修正を加えて、配向方位を特定して比較分析することができる。
したがって、配向方位について特に限定されるものではないが、正常な硬組織と比較して機能を発揮していることを判定するという観点から、配向方位としては、前記硬組織における結晶の配向度のうち最大値もしくは極大値の配向方位であることが好ましい。
また、好ましい実施態様において、前記硬組織が、骨切片である。骨切片としては、特に限定されるものではないが、骨生検針、ボーンソー、骨のみ、デューエル、鋭匙、切断機等の骨片採取可能な道具からなる群から選択される1種により得ることができる。骨生検針は、従来から広く硬組織の分析に用いられており、当該骨生検針を用いて採取された骨切片を本発明に組み込むことは、迅速かつ精密な評価を行う上で好ましい態様である。
なお、本発明においては、特に、測定する軸方向がはっきりしない場合に、評価方法の威力を発揮することができる。したがって、骨生検の場合のほか、測定する軸方向が不明確な骨切片であっても、本発明の評価方法を適用することにより、迅速かつ精密に硬組織の評価を実施することが可能である。
もっとも、より精密に解析を行うことが目的であれば、複数の上記配向方位を決定しそれぞれ比較分析することが望ましいが、手術など迅速性を求められる場合には、いずれか少なくとも1つの配向方位が特定できれば、当該配向方位を分析するのみで、硬組織の迅速な評価を行うことができるので、この点有利である。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、前記配向方位の決定を、前記硬組織の面内異方性を分析することにより行うことが可能である。これは、試料を回転等させて面内での配向性を連続的に計測することにより、迅速に配向方位を特定しようとするものである。
通常、特定軸、例えば、骨軸方向に平行に配向する度合いが高い。そこで、例えば、上記のように骨生検針を用いて骨切片を採取した場合には、骨軸が骨生検方向と垂直であることから、採取試料の取り出し軸方向を中心軸とした360度回転可能な冶具の上に設置し、X線回折法などにより、回折情報の連続的なプロファイルを解析することができる。検出器が2次元で、同時検出可能であれば、その解析時間は早まる。ただし、0次元、1次元でも解析時間は必要であるが解析は可能である。また、X線回折法を用いた場合について説明すると、入射X線に対して試料の回転軸を一致させるためには、回転冶具を移動可能なステージ上に固定し、軸合わせを行うことができる。その後180度の回転を行いつつ、最大の配向方位を決定し、その位置での配向度の精密測定を行い、疾患進行度合いを示すデータベース(配向性)と比較することで、疾患程度や、疾患部分を判定することも可能である。2次元PSPC(検出器)を用いると1時間以内での解析も可能となり、手術前の定量的な配向度解析が可能となる。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、前記面内異方性の分析が、前記硬組織の骨軸方向と平行な面、又は前記骨軸方向±90度の範囲内の面における面内異方性を分析することにより行う。まず面内についての配向性を分析することにより、迅速に配向方位を特定できるので、かかる観点から好ましい。また、骨の形状が不定形な場合(円柱状でない場合)には、軸を決めて、当該軸を回転させて、回転面内に配向性が高い方位を検出することができる。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、X線回折法による結晶の回折強度を求めることにより分析することができる。例えば、回折強度を、a軸、c軸及び/又はそれら以外の方位に対する配向性に基づき求めることができる。分析の条件としては、Bragg角度(回折条件を満足するための回折面に対する入射X線と回折X線とのなす角度をいう。)がa軸、c軸の配向性を判断できるように、X線の入射方向と試料表面との角度を設定し、さらに試料揺動を行なう等をあげることができる。
すなわち、正常な硬組織の結晶の回折強度と、再生硬組織等の結晶の回折強度とを比較することにより、再生硬組織や疾患硬組織の状態を評価することが可能となる。これは、本発明の評価方法においては、硬組織の結晶の配向性が、長骨、短骨、扁平骨等の骨の種類、種々の部位等により大きく異なることを利用したものである。
また、本発明の好ましい実施態様において、前記分析を、c軸/a軸、c軸/(a軸及び/又はc軸以外の方位)、c軸/(a軸、及び/又はc軸を含む様々な方位)からなる群から選択される少なくとも1種の回折強度又は回折積分強度比を求めることにより行う。すなわち、分子がc軸であれば、分母がどのようであってもよい。具体的に列記すれば、c軸/(a軸+c軸)、c軸/{a軸+(a軸及びc軸以外の他の方位)}、c軸/{c軸+(a軸及びc軸以外の他の方位)}、c軸/(a軸及び/又はc軸以外の他の方位)、c軸/(a軸、c軸、及びそれら以外の他の方位)、などを挙げることができる。硬組織の評価をより迅速に行いたい場合には、回折強度比を求めることなく、例えば、a軸、c軸及び/又はそれら以外の方位に対する配向性に基づき回折強度のみをもとめて評価を行ってもよい。X線回折法を用いた場合について、例示すると、(002)/(310)の回折強度比以外に、(002)/{(211)+(112)+(300)}をとる場合、さらに、(002)の回折のみを同じ場所で3次元的に測定し、マッピングする方法(この場合には、3次元全体の回折強度平均を1に規格化し、その最大強度や半値幅をとる)で配向方位を決定してもよい。特に、硬組織の迅速な評価を行う場合には、(002)の回折のみを行ってもよい。この場合には、極めて簡略されているにもかかわらず、概ね良好な評価を得ることができるからである。
回折強度と配向性の関係について補足説明すると、例えば、同条件で得られたX線プロファイルのうち、(310)と(002)面からの回折強度又は回折積分強度は、それぞれa軸、c軸の配向の強さを示すため、その比を取ることで、相対的な配向性が解析可能である。また、他の回折線の強度と比較することで、a軸、c軸及び/又はそれら以外の方向に対する配向性の評価も可能となる。これらの回折強度と配向性を利用して、硬組織代替材料の評価を行なうことができる。
X線回折法を生体硬組織、再生硬組織、疾患硬組織に適用することで、(1)ヒドロキシアパタイトなどの結晶子の配向性、(2)結晶構造の決定と構成結晶成分の同定、(3)結晶性の評価、(4)結晶子の3 次元的集合組織の評価を併せて行なうことができる。(1)に関しては、 上述のX線プロファイルから、特定の回折面の強度を測定し、その比を取ることで配向性を解析することにより行なう事ができる。(2)に関しては、 回折線の現れる角度(Bragg角)とそれぞれの強度を比較することにより、結晶構造の決定と構成結晶成分の同定を行なう事ができる。(3)に関しては、 各回折線の半価幅を測定することで結晶性の評価が可能である。半価幅は強度が半分となる位置の回折ピークの幅であり、角度の単位である。この幅が大きくなると結晶性が低いことを意味する。なお結晶性は結晶子の大きさと格子歪によって決定され、結晶子が小さく、格子歪が大きい場合に結晶性は低下する(半価幅は大きくなる)。(4)に関しては、 3次元的に評価したい試料方位とX線の入射角度を変化し、多方位から特定回折線の回折強度を測定することによって行うことができる。c軸の配向性を知りたい場合には、Bragg角(2シーター)が、Cu-Kα特性X線を入射X線に用いた場合、26°前後の回折線を用いればよい。
結晶の配向とは、通常、高分子固体を構成する単位組織(微結晶)が一定方向に配列することをいう。配向には、ポリエチレンフィルムに見られる面配向(例えば、c軸がフィルム面内にあって、それ以外には配向性がないもの。)、一軸配向(c軸が繊維方向に配向するもの。)、木綿、麻に見られるらせん配向(c軸が繊維配向と一定の傾きを持つもの。)、さらに二重配向(ある結晶面が繊維軸を含む一定の面に平行なもの。)などがある。したがって、正常な硬組織の配向性及び硬組織代替材料の配向性を調べて、両者を比較することにより硬組織の評価を行なうことができる。
例えば、硬組織の代表的な成分であるヒドロキシアパタイトの配向性を調べ、正常なものと再生中、疾患のものとを比較することにより、硬組織を評価することができる。
また、本発明の硬組織の評価方法において、さらに、骨量、組織標本の観察、組成分析、赤外線吸光(IR)分析、硬さ・破壊応力、弾性率等の力学特性測定等の評価を行なうことができる。骨量、組織標本の観察など従来の評価方法と、本発明の硬組織の評価方法と併用することによって、より高精度で、緻密な硬組織の評価を行なうことが可能となる。
ここで、本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
実施例1
実際のヒト大腿骨(献体)ならびにウシ大腿骨に対して、配向方位を決定し、硬組織の評価を実施した。
<(1)骨生検針による長管骨試料採取>
中空円筒状の骨生検針を、骨軸に対しほぼ垂直に刺し込み、円柱状の骨試料を採取する(図1)。ただし、この時点では、円柱状試料のどの方向(直径方向)が骨軸方向(=アパタイトc軸優先配向方向)かは判断できないため、以降の手順でまず骨軸方向を決定する。
<(2)円柱状骨試料の特殊冶具への固定>
試料を試料軸中心で回転(Φ2軸回転)させながらの反射型X線回折法(図2)によってアパタイトc軸優先配向方向を解析することにより、長軸方向を決定するが、そのためには、通常のΦ回転冶具(図3左図参照)ではなく、それと垂直なΦ2軸回転が可能な特殊冶具を用いる必要がある。そのため、通常冶具上に特殊冶具を設置し、その上に円柱状試料を固定する。この場合の冶具の位置関係と、光学系との関係を図3に示す。〔通常冶具の座標:x, y, z, Φ、特殊冶具の座標:x2, y2,
Φ2
<(3)特殊冶具内での骨試料回転中心の決定>
この時点では、Φ2軸回転中心に試料中心が一致していないため、特殊冶具上のx2,
y2軸にて試料をΦ2軸回転中心まで移動させる(図4)。
<(4)X線回折中心への移動>
さらに、この時点では、X線回折中心(ω軸回転中心)に試料中心が一致していないため、通常冶具上のx, z軸にて、(特殊冶具ごと)ω軸回転中心まで移動させる(図5左)。ただし、回折は試料のごく表面で生じるので、実際には試料表面を回折中心に一致させる(図5右)。
<(5)Φ2軸回転に対するX線回折プロファイルの測定>
最大配向方向を決定するため、Φ2軸回転を行いながら、(例えば)5度ステップで180度分のX線回折測定を(短時間で)行う。この際、c軸配向性を評価する指標として002回折に注目しているため、光学系を(002)面のBragg条件(入射角ω=13°, 2θ=26°、Cu-Kα線の場合)に固定する。得られた生データに対し、χ方向(あおり方向)に積分することで、各Φ2に対する2θプロファイルを得る。
<(6)最大配向方向の解析・決定>
得られたプロファイルのうち、注目した002回折について、Φ2に対する回折強度分布図(図6)を描き、最大強度点のΦ2座標を読み取り、最大配向方向(骨軸方向)を決定する。
例えば、入射特性X線をCu−Kαを用いると、2θ=26°付近に(002)のc軸からの回折が見られる。これを、Φ軸を回転しながら見ていくと、強度ピークが現れる。図6は、最大配向方位の解析法の一例を示す。図6の右図は、Φ2ごとの回折X線のカウントを示したもので、それをΦ2に対してプロットしたのが左図である。左図でこの場合Φ2が26°付近がピークであり、ここが骨長軸の最大配向方位と一致していることを示す。このピーク角度を設定した後、次の精密測定に移ることで、ここでのc軸の配向度を解析し、データベースとの比較を行なう。
<(7)最大配向方向でのX線プロファイルの精密解析(ω軸揺動)>
上記(6)で求めた最大配向方向のΦ2座標に固定し、配向度計算のための精密なX線プロファイル測定を行う(充分時間をかけて)。配向度計算には、002回折ピークと、強度規格化のために310回折ピークを用いるため、両回折が配向度計測方向に対して等価に生じるようにω軸揺動を行う。
本回折装置装着の2次元PSPCは、2θ方向への次元を有するため、対称回折以外の回折線を同時に検出することが可能である。例えば、光学系を002回折のBragg条件(ω=13°, 2θ=26°)に合わせて測定すると、図7のように310回折(Bragg条件:ω=20°, 2θ=40°)も同時に検出できる。ただしそのような回折を起こす(310)面は、試料面から約7°傾いた状態で存在する面である(図7)。同様に、光学系を310回折のBragg条件に合わせた場合に検出される002回折も、試料面から7°傾いた状態で存在する面である。このことから、入射角ωを13〜20度まで揺動させることで、002,
310回折ともに図8に示すような、試料面から(X線入射方向に対して)7°以内に存在する回折面からの情報を得ることが可能となる。つまり、両回折が配向度計測方向に対して等価に生じるように測定することができるのである。実際には、図8の左半分が002回折の、右半分が310回折の検出範囲である。
実際の精密測定の解析例の一例を示したのが、図10である。図10は、2次元PSPCでの解析例の一例を示す。2次元なので、リング状に現れる。2θに対してプロファイルをとると白線のようになる。リングの中心が0度であるため、プロファイルは左右逆転していることに注意。このようにして得られた2θプロファイルより、バックグラウンドを除去後、002, 310回折ピークの積分強度を算出し、それらの比をとることで、アパタイトc軸配向度とする。この回折積分強度比からこの場合強度比を13.6と決定できる。回折ピークの解析は最大強度を利用することも可能であるが、実施例では積分強度で解析を行なっている。本質的には、大きな違いはないが、結晶性が低い時(結晶子サイズが小さい時)には、より精密に解析できる。
<(8)配向度計算(あおり方向加算)>
本発明で使用した回折装置の2次元PSPCは、あおり方向(χ方向)への次元も有するため、試料面から入射X線に対してあおり方向に傾いた結晶面からの回折情報をも得ることが可能である。従って、上記X線入射方向に対しての傾きと同様の±7°分をχ積分することで、図9のように、002, 310面ともに試料面から±7°以内に存在する結晶面からの回折情報による2θプロファイルを得ることが可能となる。これは、通常の反射測定における試料面内回転(Φ軸回転)と(ほぼ)等価な解析が可能であることを意味する。(特殊冶具を装着していることによりΦ軸回転は不可能であるにも関わらず、同等の解析が可能)。実際には、図9の左半分が002回折の、右半分が310回折の検出範囲である。
<(9)判定基準との照合、(10)疾患部位・疾患程度の診断>
これまで蓄積してきた、長管骨(正常・疾患)骨軸方向に沿ったアパタイトc軸配向度データベース(正常骨組織や疾患骨組織)を基に設定された判定基準値と比較して、疾患骨であるか否か、またその程度を診断する。
<(11)手術手技の決定(骨切位置の決定etc)>
(例えば)大腿骨骨軸方向に沿ってどこまで疾患が進行しているのかを判断することにより、疾患部を取り残したり、正常部位まで余分に切除してしまうことのないよう、適切な骨切位置を決定することが可能となる。
以上のべたように、正常大腿骨の骨軸方向の配向性の解析に成功した。本発明によれば、1時間以内での解析が可能であったことから、手術中での配向性解析も可能である。また、骨軸さえわかっていれば、骨生検針以外の方法で、骨片を採取した場合においても、上記配向性の解析は可能となる。
本発明によれば、硬組織の評価を迅速に行うことができるので、硬組織疾患の治療や再生医歯学分野(特に、整形外科学、脳外科学、歯学)や基礎医学の分野への貢献が期待できる。
図1は、円柱状の骨試料を採取する様子を示す概念図である。 図2は、反射型X線回折法の一例を示す図である。 図3は、冶具の位置関係と、光学系との関係を示す図である。 図4は、骨試料回転中心の決定の一例を示す図である。 図5は、X線回折中心への移動の様子を示す図である。 図6は、最大配向方位の解析法の一例を示す図である。 図7は、回折の様子を示す図である。 図8は、ω揺動によるX線回折線の検出範囲を示す図である。 図9は、χ積分を行った場合の検出範囲を示す図である。 図10は、最大配向方位の精密解析の一例を示す図である。

Claims (8)

  1. 硬組織(人の硬組織を除く)の評価方法において、硬組織が骨生検針により得られた骨切片であり、前記骨切片の面内異方性を分析することにより、(002)面の強度に基づきヒドロキシアパタイトの結晶の配向性の配向方位を決定し、前記配向方位の位置での配向度を、(002)回折ピークと(310)回折ピークの比を取ることで決定し、当該配向度を評価の指標とすることを特徴とする硬組織の評価方法。
  2. 前記配向方位が、前記硬組織における結晶の配向方位の中で最大値もしくは極大値を示す配向方位である請求項1記載の方法。
  3. 前記面内異方性の分析が、前記硬組織の骨切片の骨軸方向と平行な面、又は前記骨軸方向±90度の範囲内の面における面内異方性を分析することにより行う請求項1記載の方法。
  4. 前記結晶の配向性を、X線回折法、SEM-EBSP(Scanning Electron Microscope-Electron Backscattering Pattern)法による各結晶粒の電子後方散乱像の解析によるもの、TEM-DP(Transmission Electron Microscope-Diffraction Pattern)法による電子線回折図形の解析によるものからなる群から選択される少なくとも1種により分析することを特徴とする請求項1〜3項のいずれか1項に記載の方法。
  5. X線回折法による分析が、微小領域において行なわれることを特徴とする請求項4記載の方法。
  6. X線回折法による結晶の回折強度又は回折積分強度を求めることにより分析すること特徴とする請求項1〜5項のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記分析を、c軸方向の回折強度又は回折積分強度/a軸方向の回折強度又は回折積分強度、c軸方向の回折強度又は回折積分強度/(a軸及び/又はc軸以外の方向の回折強度又は回折積分強度)、c軸方向の回折強度又は回折積分強度/(a軸及び/又はc軸を含む様々な方向の回折強度又は回折積分強度)からなる群から選択される少なくとも1種の回折強度又は回折積分強度比を求めることにより行う請求項6記載の方法。
  8. さらに、骨量、組織標本の観察、組成分析、赤外線吸光(IR)分析、硬さ・破壊応力、又は弾性率の力学特性測定の評価を行なう請求項1〜7項のいずれか1項に記載の方法。
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