JP2006343354A - 硬組織の評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 硬組織についてより精密な評価を行なうことを可能とする配向性の分析方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明の硬組織の配向性の分析方法は、Bragg角度がa軸、c軸の配向性を判断できるようにX線の入射方向と硬組織の試料表面との角度を設定し、かつ、前記c軸の配向性の場合に、前記角度を2θ=26°前後に設定するとともに、試料揺動を行う条件下で、X線で硬組織における結晶の配向性の評価を、前記a軸、c軸、及びそれ以外の方向に対する回折強度を比較することにより行うことを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明の硬組織の配向性の分析方法は、Bragg角度がa軸、c軸の配向性を判断できるようにX線の入射方向と硬組織の試料表面との角度を設定し、かつ、前記c軸の配向性の場合に、前記角度を2θ=26°前後に設定するとともに、試料揺動を行う条件下で、X線で硬組織における結晶の配向性の評価を、前記a軸、c軸、及びそれ以外の方向に対する回折強度を比較することにより行うことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、硬組織の評価方法に関し、特に、硬組織の結晶の配向性を分析する硬組織の評価方法に関する。
従来、生体内硬組織や再生硬組織の評価方法としては、骨量や組織標本の観察による方法が知られている。これらは、主として軟X線(レントゲン)を利用して、骨量の測定や組織標本の観察により評価を行なっていた。
また、従来においても、人工合成のヒドロキシアパタイトや生体骨そのものを利用した硬組織代替材料の開発が行なわれていた。
しかしながら、上述の軟X線(レントゲン)を利用する方法では、硬組織の精密な評価を得ることができなかった。すなわち、これらの軟X線(レントゲン)を利用する方法においては、例えば、組織を再生した場合に、完全な組織再生や組織の力学機能の回復が起こっていない場合でも、本来の硬組織の性状であると判断されるおそれがあった。これは、例えば骨量だけを評価の基準とすると、骨量が本来の組織の骨量に達している場合であっても、強度等において組織の機能が十分に回復していない場合もあるからである。
また、従来の硬組織代替材料の利用においては、生体硬組織そのものが部位に応じた特別なヒドロキシアパタイト結晶子の配向性を持つことは全く考慮されていなかった。このため、配向性を持たない硬組織代替材料の開発が中心とされてきており、当該硬組織代替材料の評価においても配向性が考慮されていなかった。
配向性を持たない硬組織代替材料は、強度、製品寿命等の面でバラツキが生じ、ときには、極めて脆い硬組織代替材料による再生不良等も生じていた。したがって、硬組織についてより精密な評価を行なう方法が望まれていた。しかし、このような評価方法はこれまで存在しない。
配向性を持たない硬組織代替材料は、強度、製品寿命等の面でバラツキが生じ、ときには、極めて脆い硬組織代替材料による再生不良等も生じていた。したがって、硬組織についてより精密な評価を行なう方法が望まれていた。しかし、このような評価方法はこれまで存在しない。
そこで、本発明は、硬組織についてより精密な評価を行なうことを可能とする硬組織の評価方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、発明者らは、生体内に存在する本来の硬組織の構造に着目し、硬組織の評価について鋭意研究した結果、本発明の硬組織の評価方法、評価装置、硬組織の配向性の分析方法を見出すに至った。
本発明の硬組織の配向性の分析方法は、Bragg角度がa軸、c軸の配向性を判断できるようにX線の入射方向と硬組織の試料表面との角度を設定し、かつ、前記c軸の配向性の場合に、前記角度を2θ=26°前後に設定するとともに、試料揺動を行う条件下で、X線で硬組織における結晶の配向性の評価を、前記a軸、c軸、及びそれ以外の方向に対する回折強度を比較することにより行うことを特徴とする。
また、本発明の硬組織の配向性の分析方法の好ましい実施態様において、X線回折法による分析が、微小領域において行なわれることを特徴とする。
また、本発明の硬組織の配向性の分析方法の好ましい実施態様において、配向性が、ヒドロキシアパタイトの配向性であることを特徴とする。
また、本発明の硬組織の配向性の分析方法の好ましい実施態様において、請求項1〜3項のいずれか1項に記載の配向性の分析方法を用いて、硬組織のデータとして収集することを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価装置は、請求項4記載の硬組織のデータ収集方法によって得られたデータと、正常な硬組織における結晶の配向性とを比較しつつ、硬組織を評価することを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価装置の好ましい実施態様において、さらに、組織標本の観察、骨量分析、組成分析、赤外線吸光(IR)、又は硬さ若しくは破壊応力の力学特性測定評価のいずれかの観察、分析又は評価を行うことを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法は、正常な硬組織における結晶の配向性と比較しつつ、Bragg角度がa軸、c軸の配向性を判断できるようにX線の入射方向と硬組織の試料表面との角度を設定し、かつ、前記c軸の配向性の場合に、前記角度を2θ=26°前後に設定するとともに、試料揺動を行う条件下で、X線で硬組織における結晶の配向性の評価を、前記a軸、c軸、及びそれ以外の方向に対する回折強度を比較することにより行ない、各回折線の半価幅を測定することにより結晶性の評価を行ない、さらに、組織標本の観察、骨量分析、組成分析、赤外線吸光(IR)分析、又は硬さ若しくは破壊応力の力学特性測定評価のいずれかの観察、分析又は評価により、硬組織の評価を行うことを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、X線回折法による分析が、微小領域において行なわれることを特徴とする。
また、本発明の硬組織の評価方法の好ましい実施態様において、配向性が、ヒドロキシアパタイトの配向性であることを特徴とする。
本発明の硬組織の評価方法によれば、硬組織の結晶の配向性を評価することにより、硬組織の力学機能の評価を行なうことも可能となり、ひいては、より精密な硬組織の評価を行なうことができるという有利な効果を奏する。
また、本発明の硬組織の評価方法によれば、硬組織の再生過程の評価を行なうことができるので、再生医歯学分野(特に、外科学、脳外科学、歯学)や基礎医学の分野への貢献が期待できる。
また、本発明の硬組織の評価方法によれば、硬組織を破壊することなく評価を行なうことができるという有利な効果を奏する。
本発明の硬組織の評価方法、硬組織の配向性の分析方法、及びこれを利用した硬組織の評価装置において、評価または分析の対象となる硬組織としては、特に限定されず、例えば、生体硬組織の他、人工骨に代表されるような骨補てん材料、骨置換材料などの硬組織代替材料などを挙げることができる。硬組織代替材料としては、アパタイトを代表とするセラミックス、アルミナ等の無機材料、ステンレス鋼、Co-Cr合金、チタン合金等の金属材料を挙げることができる。セラミックスは、さらに、生体活性セラミックス、生体不活性セラミックス等に分けることができる。生体セラミックスとしては、リン酸カルシウム系セラミックス、シリカ系ガラス及び結晶化ガラスなどが挙げられる。リン酸カルシウム系セラミックスとしては、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムが良く知られており、これらは、人工歯根、皮膚端子、金属コーティング材などに使われている。本発明は、これらの生体硬組織、硬組織代替材料の評価または分析に適用することができる。以下では、硬組織として良く知られているヒドロキシアパタイトを中心に説明するが、本発明の硬組織の対象が、これに限定されることを意図するものではない。
本発明の硬組織の評価方法または硬組織の配向性の分析方法においては、上述のような硬組織における結晶の配向性を分析する。本発明者らは、生体内の硬組織における結晶は、特定方向に配向していることに着目し、本来の硬組織の配向性と同様の配向性を持つようになれば、よりもとの正常な硬組織の状態に戻すことが可能であると考え、本発明の評価法、配向性の分析方法を確立するに至った。
結晶の配向性の分析の方法は、特に限定されず、例えば、X線回折法、SEM法、TEM法からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。硬組織を非破壊的に測定可能であり、試料の作製、準備が容易であり、定量的に配向性を判断できるという観点から、好ましくは、X線回折法を挙げることができる。配向性を小さな部位からより確実に把握するという観点から、X線回折法による分析が、微小領域において行なわれることが好ましい。一般に、微小領域の範囲を特定するよりは、入射X線の径を定義した方が正確である。すなわち、X線と試料表面との角度はある程度変化するので、測定領域を厳密に艇具する事は難しい。一方、測定範囲(微小領域の範囲)は、入射X線径の約3〜5倍といわれている。そこで、入射X線径を用いて好ましい範囲を定めることができる。精度よく小さい部位の配向性を評価するという観点から、入射X線径は10μm〜1mmであり、好ましくは10μm〜100μmである。このような配向性を分析するX線回折装置により得られたデータを収集して、正常な硬組織における結晶の配向性と比較して、硬組織を評価することができる装置を提供することができる。
また、本発明の硬組織の評価方法または配向性の分析方法の好ましい実施態様において、X線回折法による結晶の回折強度を求めることにより分析することができる。分析の条件としては、Bragg角度(回折条件を満足するための回折面と入射X線とのなす角度をいう。)がa軸、c軸の配向性を判断できるように、X線の入射方向と試料表面との角度を設定し、さらに試料揺動を行なう等をあげることができる。
すなわち、正常な硬組織の結晶の回折強度と、再生硬組織等の結晶の回折強度とを比較することにより、再生硬組織の状態を評価することが可能となる。これは、本発明の評価方法または配向性の分析方法においては、硬組織の結晶の配向性が、長骨、短骨、偏平骨等の骨の種類、種々の部位等により大きく異なることを利用したものである。
回折強度と配向性の関係について補足説明すると、例えば、同条件で得られたX線プロファイルのうち、(002)と(310)面からの回折強度は、それぞれa軸、c軸の配向の強さを示すため、その比を取ることで、相対的な配向性が解析可能である。また、他の回折線の強度と比較することで、a軸、c軸以外の方向に対する配向性の評価も可能となる。これらの回折強度と配向性を利用して、硬組織代替材料の評価を行なうことができる。すなわち、このような硬組織の配向性の分析方法により、硬組織のデータを収集することができる。
X線回折法を生体硬組織、再生組織に適用することで、(1)ヒドロキシアパタイトなどの結晶子の配向性、(2)結晶構造の決定と構成結晶成分の同定、(3)結晶性の評価、(4)結晶子の3 次元的集合組織の評価を併せて行なうことができる。(1)に関しては、 上述のX線プロファイルから、特定の回折面の強度を測定し、その比を取ることで配向性を解析することにより行なう事ができる。(2)に関しては、 回折線の現れる角度(Bragg角)とそれぞれの強度を比較することにより、結晶構造の決定と構成結晶成分の同定を行なう事ができる。(3)に関しては、 各回折線の半価幅を測定することで結晶性の評価が可能である。半価幅は強度が半分となる位置の回折ピークの幅であり、角度の単位である。この幅が大きくなると結晶性が低いことを意味する。なお結晶性は結晶子の大きさと格子歪によって決定され、結晶子が小さく、格子歪が大きい場合に結晶性は低下する(半価幅は大きくなる)。(4)に関しては、 3次元的に評価したい試料方位とX線の入射角度を変化し、多方位から特定回折線の回折強度を測定することによって行うことができる。c軸の配向性を知りたい場合には、Bragg角(2シーター)が26°前後の回折線を用いればよい。
結晶の配向とは、通常、高分子固体を構成する単位組織(微結晶)が一定方向に配列することをいう。配向には、ポリエチレンフィルムに見られる面配向(例えば、c軸がフィルム面内にあって、それ以外には配向性がないもの。)、一軸配向(c軸が繊維方向に配向するもの。)、木綿、麻に見られるらせん配向(c軸が繊維配向と一定の傾きを持つもの。)、さらに二重配向(ある結晶面が繊維軸を含む一定の面に平行なもの。)などがある。したがって、正常な硬組織の配向性及び硬組織代替材料の配向性を調べて、両者を比較することにより硬組織の評価を行なうことができる。
例えば、硬組織の代表的な成分であるヒドロキシアパタイトの配向性を調べ、正常なものと再生中のものとを比較することにより、硬組織を評価することができる。
また、本発明の硬組織の評価方法または評価装置において、さらに、骨量、組織標本の観察、組成分析、赤外線吸光(IR)、分析、硬さ・破壊応力等の力学特性測定等の評価を行なうことができる。骨量、組織標本の観察など従来の評価方法と、本発明の硬組織の評価方法と併用することによって、より高精度で、緻密な硬組織の評価を行なうことが可能となる評価装置を提供することができる。
ここで、本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
実施例1
まず、各部位における硬組織の配向性を調べた。硬組織として尺骨、頭蓋骨を用いた。
まず、各部位における硬組織の配向性を調べた。硬組織として尺骨、頭蓋骨を用いた。
図1は、家兎尺骨(長管骨)、家兎頭蓋骨における(ヒドロキシアパタイト(以下、HApという)結晶子のc軸配向性の強さをX線強度比として表している。尺骨では長手方向に沿った1軸配向性を頭蓋骨では骨面に沿った2軸配向性を示すことが、この図より理解される。よって、正常な硬組織における結晶の配向性を観察することにより、硬組織の評価を行なうことが可能なことが分かる。
また、本発明においては、極点図として3次元的に特定軸(この場合は、a軸もしくはc軸)の配向度合いや配向方向、配向中心を評価することもできる。この方法は、再生組織の再生過程の評価も提供可能である。
実施例2
次に、正常な硬組織と、人工的に形成した硬組織代替材料との配向性の評価を行なった。硬組織代替材料として、ヒドロキシアパタイトを用いた。
次に、正常な硬組織と、人工的に形成した硬組織代替材料との配向性の評価を行なった。硬組織代替材料として、ヒドロキシアパタイトを用いた。
図2は家兎尺骨に5mmの欠損を人工的に形成し、b-FGF含有のヒドロゲルにより成長因子を除法した際の組織再生部(正常部を含む)の微小領域X線回折測定結果である。再生を始めて4週間が経過している。再生部位では正常部とは配向度合いが明らかに異なっており、完全な組織再生と力学機能の回復が起こっているとは言い難い。この場合、軟X線では骨量の回復が認められるが、硬組織の完全な回復状態を把握して評価するには、硬組織の結晶の配向性の評価が必要であることが分かる。
Claims (9)
- Bragg角度がa軸、c軸の配向性を判断できるようにX線の入射方向と硬組織の試料表面との角度を設定し、かつ、前記c軸の配向性の場合に、前記角度を2θ=26°前後に設定するとともに、試料揺動を行う条件下で、X線で硬組織における結晶の配向性の評価を、前記a軸、c軸、及びそれ以外の方向に対する回折強度を比較することにより行うことを特徴とする硬組織の配向性の分析方法。
- X線回折法による分析が、微小領域において行なわれることを特徴とする請求項1項に記載の方法。
- 配向性が、ヒドロキシアパタイトの配向性である請求項1又は2項に記載の方法。
- 請求項1〜3項のいずれか1項に記載の配向性の分析方法を用いて、硬組織のデータとして収集することを特徴とする硬組織のデータ収集方法。
- 請求項4記載の硬組織のデータ収集方法によって得られたデータと、正常な硬組織における結晶の配向性とを比較しつつ、硬組織を評価することを特徴とする硬組織の評価装置。
- さらに、組織標本の観察、骨量分析、組成分析、赤外線吸光(IR)、又は硬さ若しくは破壊応力の力学特性測定評価のいずれかの観察、分析又は評価を行なう請求項5項に記載の装置。
- 正常な硬組織における結晶の配向性と比較しつつ、Bragg角度がa軸、c軸の配向性を判断できるようにX線の入射方向と硬組織の試料表面との角度を設定し、かつ、前記c軸の配向性の場合に、前記角度を2θ=26°前後に設定するとともに、試料揺動を行う条件下で、X線で硬組織における結晶の配向性の評価を、前記a軸、c軸、及びそれ以外の方向に対する回折強度を比較することにより行ない、各回折線の半価幅を測定することにより結晶性の評価を行ない、さらに、組織標本の観察、骨量分析、組成分析、赤外線吸光(IR)分析、又は硬さ若しくは破壊応力の力学特性測定評価のいずれかの観察、分析又は評価により、硬組織の評価を行うことを特徴とする硬組織の評価方法。
- X線回折法による分析が、微小領域において行なわれることを特徴とする請求項7項に記載の方法。
- 配向性が、ヒドロキシアパタイトの配向性である請求項7又は8項に記載の方法。
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JP2009025234A (ja) * | 2007-07-23 | 2009-02-05 | Rigaku Corp | 硬組織の評価方法 |
-
2006
- 2006-09-29 JP JP2006266769A patent/JP2006343354A/ja active Pending
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