JP5150150B2 - 細胞培養用基質およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、細胞培養用基質およびその製造方法に関する。
近年、組織工学の分野において、細胞を培養する際の基質として生分解性材料が用いられている。細胞外マトリックスと同様に、生体適合性を有する足場として用いるためには、生分解性材料が細胞の接着および成長を促すことのできる適切な表面状態を有していることが望ましい。また、一般的に、合成材料に比べて、天然材料は、被移植体の組織に対して害となる影響が少ないために、細胞の基質として好ましく用いられている。
アルギン酸塩は、生体適合性を有し、かつ生分解性を有する天然材料の一つである。アルギン酸塩は、褐藻類由来の鎖状多糖類の一種であり、種々の割合で1,4結合したβ−D−マンヌロン酸残基およびα−L−グルロン酸残基から構成されている。アルギン酸塩は、多価金属イオンで架橋することにより、ゲル化するという特性を有している。
カルシウムで架橋したアルギン酸は、カプセル、創傷被覆材などとして広く用いられている。しかしながら、カルシウム架橋アルギン酸は、哺乳類の細胞との親和性が低く、細胞の基質として用いることができないことが報告されている(例えば、非特許文献1および2参照)。このため、カルシウム架橋アルギン酸を細胞の基質として用いるためには、カルシウム架橋アルギン酸をペプチドにより修飾するなど、細胞との接着性を向上させる必要があった(例えば、非特許文献2および3参照)。また、カルシウム架橋アルギン酸が、組成によっては、ラット骨髄間質細胞の基質として用いることができることが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。その一方で、ヒト骨髄間質細胞は、β−リン酸三カルシウム微粒子およびコラーゲンタイプIによる修飾なしではカルシウム架橋アルギン酸に接着することができず、増殖することができないことが報告されている(例えば、非特許文献5参照)。
細胞の基質としては、この他に、細胞外マトリックスを利用したゲル薄膜などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3081130号公報 Smetana K Jr, Cell biology of hydrogels, Biomaterials 14 (1993) 1046-1050. Rowley JA, Madlambayan G, Mooney DJ, Alginate hydrogels as synthetic extracellular matrix materials, Biomaterials 20 (1999) 45-53. Hashimoto T, Suzuki Y, Tanihara M, Kakimaru Y, Suzuki K, Development of alginate wound dressings linked with hybrid peptides derived from laminin and elastin, Biomaterials 25 (2004) 1407-1414. Wang L, Shelton RM, Cooper PR, Lawson M, Triffitt JT, Barralet JE, Evaluation of sodium alginate for bone marrow cell tissue engineering, Biomaterials 24 (2003) 3475-3481. Lawson MA, Barralet JE, Wang L, Shelton RM, Triffitt JT, Adhesion and growth of bone marrow stromal cells on modified alginate hydrogels, Tissue Eng. 10 (2004) 1480-1491.
本発明は、ヒトを含む哺乳類の細胞との良好な接着性を有し、ヒトを含む哺乳類の細胞の増殖を可能とする細胞培養用基質およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために検討を行った結果、鉄架橋アルギン酸が優れた細胞接着性を有するということを見出し、本発明を完成させるに到った。
すなわち、本発明は、鉄架橋アルギン酸ゲルを含む細胞培養用基質に関する。本発明において、鉄架橋アルギン酸ゲルは薄膜状であることが好ましく、膜状の鉄架橋アルギン酸ゲルの厚さは、1μm〜1mmであることが好ましい。
また、本発明は、薄膜状に乾燥させたアルギン酸のアルカリ金属塩に、鉄イオン水溶液を加える細胞培養用基質の製造方法に関する。
さらに、本発明は、前記細胞培養用基質を乾燥させて得られる細胞培養用乾燥基質、および前記細胞培養用基質を用いた複合培養上皮に関する。
本発明の細胞培養用基質は、生体適合性および生分解性を有する天然材料からなり、かつ細胞との接着性が良好な材料である。本発明の細胞培養用基質は、ヒトを含む哺乳類の細胞培養のために好ましく用いることができる。また、本発明の細胞培養用基質の製造方法は、薄膜状の細胞培養用基質の製造に適した方法である。
本発明の細胞培養用基質は、鉄架橋アルギン酸ゲルを含む。本発明において、アルギン酸に含まれるβ−D−マンヌロン酸残基およびα−L−グルロン酸残基の割合は特に限定されない。アルギン酸として、褐藻類からの抽出物や、市販品を用いることができる。本発明の細胞培養用基質は、少なくとも、イーグル最小必須培養液などの細胞培養液や水などを含浸させ、膨潤した状態、すなわちゲル化した状態の鉄架橋アルギン酸からなる。鉄架橋アルギン酸ゲルは薄膜状であることが好ましく、また、鉄架橋アルギン酸ゲル薄膜は、必要に応じ任意の担体などの上に積層されていてもよいが、後述する薄膜の利点を考慮すると、単層であることが好ましい。
本発明において、鉄架橋アルギン酸ゲルは、主として鉄架橋アルギン酸からなるゲルであるが、本発明の効果を損なわない範囲で任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、各種ビタミン、アミノ酸、塩類などの細胞用基質に用いられる公知の添加剤が挙げられる。また、鉄架橋アルギン酸ゲルは、本発明の効果を損なわない範囲でその一部に鉄以外の金属によって架橋された部分を有していてもよい。鉄以外の金属としては、例えば、カルシウム、バリウム、ストロンチウムなどが挙げられる。さらに、鉄架橋アルギン酸ゲルは、表面がペプチドなどにより修飾されていてもよい。
鉄架橋アルギン酸ゲルは、機械的特性にも優れていることから、その形状は特に限定されず、必要に応じいずれの形状とすることも可能である。例えば、薄膜状、スポンジ状、ゼリー状、粒子状などがある。培養した細胞の観察が容易であること、上皮細胞などを増殖させ移植に用いた場合に、フレキシブルであるために下層組織との接着性に優れること、分解や吸収による副産物が少ないことなどから、薄膜状であることが好ましい。また、鉄架橋アルギン酸はカルシウム架橋アルギン酸よりも酸性度が強いために、細胞培養に用いる際には、場合によってpHを調整することが望ましい。調整が容易であるという観点からも、鉄架橋アルギン酸ゲルは薄膜状であることが好ましい。薄膜の厚さは特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。好ましくは1μm〜1mmであり、より好ましくは5μm〜100μm、さらに好ましくは20μm〜30μmである。
本発明の細胞培養用基質は、例えば、アルギン酸のアルカリ金属塩に鉄イオンを加えることにより製造することができる。アルギン酸のアルカリ金属塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムを挙げることができる。好ましくは、アルギン酸ナトリウムである。また、鉄イオンとしては、鉄(II)イオン、鉄(III)イオンのいずれでもよいが、好ましくは鉄(III)イオンである。鉄イオンは、塩化鉄水溶液などの鉄イオン水溶液としてアルギン酸のアルカリ金属塩に加えることができる。
細胞培養用基質の製造方法として、具体的には次の方法がある。まず、細胞培養プレート、細胞培養ディッシュなどの容器に、アルギン酸のアルカリ金属塩水溶液を加え、次いで、鉄イオン水溶液を加えて撹拌した後、室温で静置し、アルギン酸と鉄とを反応させる(鉄架橋アルギン酸(アルギン酸鉄)を得る)。その後、得られた鉄架橋アルギン酸を洗浄し、アルギン酸と反応していない金属イオンを除去する。これにより、ゲル化したアルギン酸、すなわち、鉄架橋アルギン酸ゲルからなる細胞培養用基質が得られる。
あるいは、他の製造方法として、次の方法がある。まず、細胞培養プレート、細胞培養ディッシュなどの容器に、アルギン酸のアルカリ金属塩水溶液を加えた後、アルギン酸のアルカリ金属塩を乾燥させる。次いで、乾燥したアルギン酸のアルカリ金属塩に、鉄イオン水溶液を加え、室温で静置し、アルギン酸と鉄とを反応させる(鉄架橋アルギン酸を得る)。その後、得られた鉄架橋アルギン酸を洗浄し、アルギン酸と反応していない金属イオンを除去する。これにより、薄膜状のゲル化したアルギン酸、すなわち、鉄架橋アルギン酸ゲル薄膜からなる細胞培養用基質が得られる。
薄膜状の細胞培養用基質を得る場合には、鉄イオンを加える前に、アルギン酸のアルカリ金属塩を薄膜状に乾燥させることが好ましい。乾燥させることにより、薄く、厚さの均一なアルギン酸ゲル薄膜を得ることができる。乾燥させる際の温度は、通常20〜100℃であり、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜60℃であり、乾燥させる際の時間は、通常1分から48時間、好ましくは6時間から〜36時間、より好ましくは12時間〜24時間(一晩)である。
この場合、使用するアルギン酸のアルカリ金属塩水溶液の濃度は、1重量%以上2重量%未満であることが好ましい。1重量%未満であると、鉄架橋アルギン酸ゲルが十分な強度を保つことができない傾向があり、2重量%以上であると水溶液の粘度が高く、アルギン酸が溶解し難くなる傾向がある。また、鉄イオン水溶液の濃度は、好ましくは1mM〜2Mであり、より好ましくは10mM〜1M、さらに好ましくは250mM〜500mMである。
アルギン酸のアルカリ金属塩水溶液および鉄イオン水溶液は、例えば、上記の添加剤を含んでいてもよい。または、容器に直接、上記の添加剤を加えることもできる。
得られた細胞培養用基質を、さらに細胞培養液などに浸して静置または振とうしながら、安定化させてもよい。鉄架橋アルギン酸は酸性を示すために、この観点からも細胞培養に用いる前に安定化させることが好ましい。静置または振とうの条件は、4〜37℃、48〜72時間であり、好ましくは37℃、72時間である。
このようにして得られた鉄架橋アルギン酸ゲルを含む細胞培養用基質は、細胞の足場として使用することができる。本発明の細胞培養用基質は、乾燥させて保存することが可能であり、乾燥させた細胞培養用基質は、細胞培養液などを用いて膨潤させた後に、細胞培養に用いることができる。乾燥は、上述のアルギン酸のアルカリ金属塩を乾燥させる際の条件と同様に行えばよく、膨潤は、上述の採用培養用基質を安定化させる際の条件と同様に行えばよい。
一般に、細胞−細胞培養用基質間の相互作用またタンパク質−細胞培養用基質間の相互作用は、細胞培養用基質の表面特性によって影響を受ける。高い疎水性または高い親水性を示す表面は、細胞の成長には適さないということが知られている。例えば、熱応答性プラズマ重合N−イソプロピルアクリルアミドで被覆された表面の場合、細胞は、室温よりも37℃で表面に接着し易いことが報告されている(Cheng X, Wang Y, Hanein Y, Bohringer KF, Ratner BD, Novel cell patterning using microheater-controlled thermoresponsive plasma films, J. Biomed. Mater. Res A. 70 (2004) 159-168)。気泡法によって測定される熱応答性プラズマ重合N−イソプロピルアクリルアミドの接触角は、34°(20℃)〜40°(40℃)である(Cheng X, Canavan HE, Stein MJ, Hull JR, Kweskin SJ, Wagner MS, Somorijai GA, Castner DG, Ratner BD, Surface chemical and mechanical properties of plasma-polymerized N-isopropylacrylamide, Langmuir. 21 (2005) 7833-7841)。これらのことから、表面の疎水性と親水性のバランスが、細胞の接着性に影響を与えることがわかる。
また、細胞外タンパク質は、細胞接着などの細胞機能に極めて重要な役割を負っている。細胞が基質に付着する際、初期段階においては、基質表面に吸着したタンパク質の影響を受ける。例えば、真皮繊維芽細胞が組織培養用ポリスチレンの表面に接着する場合、細胞の伸展には血清中のタンパク質であるビトロネクチンが必要であることが報告されている(Steele JG, Johnson G, Underwood PA, Role of serum vitronectin and fibronectin in adhesion of fibroblasts following seeding onto tissue culture polystyrene, J. Biomed. Mater. Res. 26 (1992) 861-884)。
カルシウム架橋アルギン酸ゲルは、鉄架橋アルギン酸ゲルよりも親水性が高い。また、鉄架橋アルギン酸ゲルは、タンパク質を吸着させることができる表面状態を有している。実施例において示すとおり、細胞は、親水性のカルシウム架橋アルギン酸ゲル表面では伸展することができないが、鉄架橋アルギン酸ゲル表面では伸展することができる。また、鉄架橋アルギン酸ゲルは、カルシウム架橋アルギン酸ゲルに比べて多量のタンパク質(FBS由来)を吸着することができる。つまり、本発明の鉄架橋アルギン酸からなる細胞培養用基質は、従来のカルシウム架橋アルギン酸ゲルよりも、細胞の接着性に優れており、細胞を良好に伸展させることができる。
本発明の細胞培養用基質を用いて細胞を培養する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。増殖した細胞を回収する場合に、トリプシンを用いることも可能であるが、キレート剤を用いることが好ましい。キレート剤を用いることにより、損傷を与えることなく互いに接着した細胞を回収することができる。
キレート剤の例を挙げると、クエン酸塩(クエン酸三ナトリウム二水和物)、EDTAがある。好ましくは、クエン酸塩である。細胞を回収する際には、増殖した細胞が接着した細胞培養用基質を、キレート剤溶液中に浸漬すればよい。浸漬する際の温度は、好ましくは室温であり、浸漬する際の時間は、好ましくは数分である。
本発明の鉄架橋アルギン酸ゲルを含む細胞培養用基質は、表面修飾などを行うことなく細胞の足場として好ましく用いることができ、細胞を良好に接着し、伸展させ、増殖させることができる。また、細胞を剥離する際にキレート剤を用いることによって、互いに接着した細胞を、損傷なく得ることができる。
本発明の細胞培養用基質が薄膜状である場合には、柔軟性に優れるために、基質と下層組織との間の相互作用を良好に保つことができ、分解や吸収に起因する副産物の量を少なくすることが可能であるという理由から、上皮細胞および繊維芽細胞を増殖させそのまま移植に用いることができる。例えば、本発明の細胞培養用基質上にヒト表皮細胞およびヒト繊維芽細胞を培養し、移植用の複合培養皮膚を得ることができる。
これらの利点により、本発明の細胞培養用基質は、皮膚組織工学、生物医学的用途、臨床応用において使用することができる。
本発明を、以下の実施例によりさらに詳しく説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されるものではない。
なお、以下の実施例中、特に断りのない限り、薬品として試薬グレードの薬品を用いた。
[架橋アルギン酸塩フィルムの調製]
6−ウェル組織培養プレートの各ウェルに、セルロース製のシート(BEMCOT(登録商標)、小津産業株式会社)を切り出すことにより作製したフレーム(直径約30mmのリング)を置いた。次いで、1%(w/v)アルギン酸ナトリウム水溶液3mL(MVG(α−L−グルロン酸高含有)、FMC Biopolymer製)を各ウェルに加え、60℃で一晩乾燥させた。乾燥後、各ウェルに500mMのCaCl3mLまたは500mMのFeCl 3mLを加え、30分間、室温で放置し、アルギン酸を架橋した。得られたゲルフィルムを脱イオン水で洗浄し、アルギン酸と反応していないイオンを除いた。洗浄後、ゲルフィルムを10mlの脱イオン水に浸し、pHを測定したところ3.6であった。さらに、ゲルフィルムを70%(v/v)エタノールで殺菌した。殺菌後、ゲルフィルムをイーグル最小必須培養液(E−MEM、日水製薬株式会社)内で、37℃、5%CO雰囲気下、72時間保存し、安定させた。E−MEMは、24時間毎に交換した。72時間保存後、イーグル最小必須培溶液中のゲルフィルム周辺のpHは7.4であった。得られたゲルフィルムの厚さは、カルシウム架橋ゲルフィルムおよび鉄架橋ゲルフィルムともに30μmであった。図1に鉄架橋ゲルフィルムの写真を示す。
[表面特性評価]
(接触角)
ゲルフィルムの濡れ性を、気泡法により測定した。具体的には、脱イオン水中に沈めたサンプルと気泡との静的接触角を、FACE接触角メーター(Image processing type CA−X、協和界面科学株式会社)を用いて測定した(Cheng X, Canavan HE, Stein MJ, Hull JR, Kweskin SJ, Wagner MS, Somorijai GA, Castner DG, Ratner BD, Surface chemical and mechanical properties of plasma-polymerized N-isopropylacrylamide, Langmuir. 21 (2005) 7833-7841)。カルシウム架橋ゲルフィルムおよび鉄架橋ゲルフィルム(それぞれ合計3枚)について、それぞれ5回の測定を行った。
結果を図2に示す。図2は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムの接触角を示すグラフである。カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムの接触角(平均値±標準偏差)は20.4±0.8°、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムの接触角は29.4±1.5°であった。鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムは、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムより、高い疎水性を有していた。
(タンパク質吸着)
ゲルフィルムを6−ウェル組織培養プレート中で、E−MEM、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS、Tissue Culture Biologicals)含有E−MEM、または、FBSを用いて、37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後、ゲルフィルムを脱イオン水で洗浄し、プレートに移した。100mMクエン酸ナトリウム3mLを加え、室温で数分間、浸漬することにより、ゲルフィルムを溶解した。溶液を回収し、溶液に含まれているタンパク質を、10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)にて分離した。タンパク質を銀染色法(和光銀染色キット、和光純薬工業株式会社)により視覚化した。
結果を図3に示す。図3は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムに吸着したタンパク質を泳動させたSDS−PAGEの写真である。レーン1〜3は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムから回収したタンパク質の泳動結果であり、レーン4〜6は、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムから回収したタンパク質の泳動結果であり、レーン7は陽性コントロールである。また、レーン1および4は、E−MEMに浸漬した場合の結果であり、レーン2および5は、10%(v/v)FBS含有E−MEMに浸漬した場合の結果であり、レーン3および6は、FBSに浸漬した場合の結果である。10%(v/v)FBS含有E−MEMに浸漬した鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムからは、若干のタンパク質が検出された。また、FBSに浸漬した鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムからは、多量のタンパク質が検出された。これに対し、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムでは、タンパク質の吸着がほとんど見られなかった。
[細胞の接着及び増殖評価]
ゲルフィルムへの細胞の接着性および増殖評価には、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF、Cambrex Bio Science Walkersville,Inc、10〜20代継代)を用いた。まず、細胞を、10%(v/v)FBSを含有するE−MEM内で増殖させた。次いで、細胞を、6−ウェル組織培養プレート内のカルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上に、50,000cells/wellの密度で播種し、37℃、5%CO条件下で15日間培養した。10%(v/v)FBSを含有するE−MEMを、1または2日毎に取り替えた。細胞を、位相差顕微鏡を用いて観察し、また、細胞計数を、4時間、3日、6日、9日、12日、および15日後に実施した。ゲルフィルムに接着した細胞を計数するために、ゲルフィルムをプレートに移し、Ca2+およびMg2+非含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、0.25%(w/v)トリプシン(Becton Dickinson)および0.02%(w/v)エチレンジアミン四酢酸を含むPBSを用いた酵素処理(37℃、10分間)に続いて、10%(v/v)FBSを含むE−MEM中に再懸濁し、激しく撹拌することにより細胞をゲルフィルムから剥がした。細胞懸濁液に含まれる細胞数を、コールターカウンターを用いて測定した。カルシウム架橋ゲルフィルムおよび鉄架橋ゲルフィルム(それぞれ合計3枚)について、同様の評価を行った。
結果を図4及び5に示す。図4は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上で培養した繊維芽細胞の写真である。4時間後、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルム上には、細胞は伸展しなかった(図4a)。これに対し、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上には、4時間後に細胞が伸展し始めた(図4b)。24時間後には、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム表面に、細胞が明確に伸展し(図4c)、さらに3日後には、細胞が増殖し、細胞数が増えた(図4d)。
図5は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上で培養した繊維芽細胞の細胞数の経時変化を示すグラフである。細胞数を、細胞を播種してから4時間、3、6、9、12、および15日後に数えた。鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上の細胞数は、徐々に増加し、播種後0日から15日で、約20倍になった。カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムにおいては、培養時間が経過しても細胞が伸展することなく表面に付着するのみであった。
[細胞の回収量評価]
細胞を鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上、または組織培養プレート上にて、コンフルエントになるまで10%(v/v)FBSを含有するE−MEM中にて培養した。その後、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムを別のプレートに移し、PBSにて洗浄した後、50mMクエン酸三ナトリウム二水和物を3ml加え室温にて数分静置してフィルムを溶解した。溶解液に10%(v/v)FBSを含有するE−MEM7mlを加え撹拌し、懸濁液を得た後、この懸濁液の一部を採取しトリプシン処理して(細胞−細胞間接着を切断して)細胞数をカウントした。残りの懸濁液から遠心分離により細胞を回収し、細胞を10%(v/v)FBSを含有するE−MEMに再懸濁後、さらにもう一度遠心分離により細胞を回収し、適当な濃度になるよう10%(v/v)FBSを含有するE−MEMに再懸濁し、組織培養プレート上に播種した。一方、組織培養プレート上にて培養した細胞はトリプシン処理(37℃、10分)により回収し、遠心分離後、細胞数をカウントし、その後適当な濃度になるよう10%(v/v)FBSを含有するE−MEMに再懸濁し、組織培養プレート上に播種した。
結果を図6に示す。図6は、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上からクエン酸ナトリウム処理、または組織培養プレート上からトリプシン処理により回収した繊維芽細胞を示す写真である。鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムの溶解による回収では酵素による切断が行われない為、細胞−細胞間の接着が維持されたまま細胞を回収できた。これに対し、トリプシン処理の場合は、細胞−基質間および細胞−細胞間の接着が切断され、細胞がバラバラになって回収された。
[回収後の細胞増殖率評価]
同細胞数で組織培養プレート上に播種した、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上からクエン酸ナトリウム処理により回収した繊維芽細胞および組織培養プレート上からトリプシン処理により回収した繊維芽細胞を、24時間後に回収しカウントした。具体的には、組織培養プレートをPBSで洗浄し、トリプシン溶液を用いた酵素処理(37℃、10分間)により、細胞をプレートから剥がした。その後、10%(v/v)FBSを含むE−MEM中に再懸濁し、細胞懸濁液に含まれる細胞数を、コールターカウンターを用いて測定した。細胞播種数を100%としたときの相対値で評価した。
結果を図7に示す。図7は、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上からクエン酸ナトリウム処理または組織培養プレート上からトリプシン処理により回収した繊維芽細胞の回収後の増殖率を示すグラフである。クエン酸ナトリウム処理により回収した細胞では細胞数の減少は少なかったが、トリプシン処理により回収した細胞は酵素処理によるダメージの為、24時間後の細胞増殖率が低かった。
図1は、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム(直径約30mm・厚さ約30μm)の外観写真である。 図2は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムの接触角を示すグラフである。エラーバーは、標準偏差を示す。 図3は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルムに吸着したタンパク質を泳動させたSDS−PAGEの写真(レーン1,4:0%FBS、レーン2,5:10%FBS、レーン3,6:100%FBS、レーン7:FBS(コントロール))である。写真左側の数値は、分子量である。 図4は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上で培養した繊維芽細胞の写真((a)Ca膜・4時間、(b)Fe膜・4時間、(c)Fe膜・1日、(d)Fe膜・3日)である。 図5は、カルシウム架橋アルギン酸ゲルフィルムおよび鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上で培養した繊維芽細胞の細胞数の経時変化を示すグラフである。エラーバーは標準偏差を示す(n=3)。 図6は、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上からクエン酸ナトリウム処理または組織培養プレート上からトリプシン処理により回収した繊維芽細胞を示す写真(A.クエン酸ナトリウム処理、B.トリプシン処理(播種2日目))である。 図7は、鉄架橋アルギン酸ゲルフィルム上からクエン酸ナトリウム処理または組織培養プレート上からトリプシン処理により回収した繊維芽細胞の増殖率を示すグラフである。エラーバーは標準偏差を示す。

Claims (6)

  1. アルギン酸のアルカリ金属塩に鉄イオン水溶液を加え、薄膜状の鉄架橋アルギン酸ゲルを得る工程を有する、哺乳類の細胞培養用基質の製造方法
  2. 鉄架橋アルギン酸ゲルの厚さが1μm〜1mmである請求項記載の細胞培養用基質の製造方法
  3. アルギン酸のアルカリ金属塩が、薄膜状に乾燥させたアルギン酸のアルカリ金属塩である請求項1又は2記載の細胞培養用基質の製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の細胞培養用基質の製造方法により細胞培養用基質を得る工程、及び、前記細胞培養用基質を乾燥させる工程を有する、哺乳類の細胞培養用乾燥基質の製造方法
  5. 請求項1〜3いずれかに記載の細胞培養用基質の製造方法により得た細胞培養用基質上で哺乳類の細胞を培養する工程を有する、細胞が接着した細胞培養用基質の製造方法。
  6. 請求項1〜3いずれかに記載の細胞培養用基質の製造方法により得た細胞培養用基質上で哺乳類の細胞を培養する工程、及び、キレート剤を用いて前記細胞培養用基質を除去し、前記細胞を回収する工程を有する、細胞の製造方法。
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