本発明は、熱処理を含む半導体製造プロセスに関する。TPSプロセスチャンバは、主に、マルチウェハ又はバッチ処理用に構成される。そのようなプロセスチャンバは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、砒化ガリウム(GaAs)又は他の半導体材料を含む、種々のウェハを処理するために使用される。
本発明に従い、内蔵自己テスト(BIST)テーブルを用いて、熱処理システムを実時間でモニタすることができる。一の実施形態において、1又は2以上のプロセスパラメータが変更され、維持され、これらに対する応答が予知され測定され、動的推定誤差が計算されてBISTテーブルのBISTルールについて設定される作動限度もしくは警告限度または双方に対して比較される。このプロセスは、動的推定誤差がBISTテーブルの作動限度もしくは警告限度または双方の範囲内にあるかどうかに応じて、継続され、一時停止され、中止される。
本願の一の実施形態においては、熱処理システムにおける異常や誤差条件を特定し、不具合条件につながる可能性のあるドリフトおよび劣化を指摘するため、不具合条件の検出し、診断しおよび予知する方法が提供される。
他の又は更なる実施形態においては、本発明は、熱処理システムにおける異常および誤差条件またはいずれかを特定し、差し迫った不具合条件につながる可能性のあるドリフトや劣化を指摘する。システムでの製造処理中に「リアルタイムモード」で、または待機期間に周期的な自己テストを行う間に「メンテナンスモード」で熱処理システムを解析するデータを得ることができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明を説明する。図1は、本発明の実施形態に従う熱処理システムの等角投影図である。熱処理システム100は、クリーンルーム内に設置したときに熱処理システムの外壁を形成するハウジング101を備えてよい。ハウジング101の内部は、パーティション(バルクヘッド)105によってキャリア移送領域107とローディング領域109とに分けられる。キャリア移送領域では、キャリア102がキャリア移送領域107へ搬入出され、かつ、保管される。ローディング領域109では、キャリア102に収容されたプロセスの対象となるウェハ(図示せず)、たとえば半導体ウェハW、がボート103へ移送される。ボート103は、縦型熱プロセスチャンバ104内外にローディングされる。
図1に示すとおり、操作者または自動搬送ロボット(図示せず)がキャリア102を出し入れするため、ハウジング101の前部に入口106が設けられている。入口106には、入口106を開け閉めするために垂直移動が可能なドア(図示せず)が設けられている。キャリア移送領域107の入口106の近くにキャリア102を置くためのステージ108が設けられている。
図1に示すとおり、キャリア102の蓋(図示せず)を開け、キャリア102の半導体ウェハWの位置および枚数を検出するため、ステージ108の後部にセンサ機構910が設けられている。また、複数のキャリア102を保管するため、ステージ108の上方に棚状の保管部110があって良い。
半導体ウェハWを移送するためのキャリア102を置くテーブルとしての2つのキャリア置き場(移送ステージ)111が、垂直に離隔された位置に設けられている。したがって、一のキャリア102を一のキャリア置き場111において交換する間、他のキャリア置き場111において半導体ウェハWを他のキャリア102に移送することができるため、プロセスシステム100のスループットを上げることができる。
キャリア102をステージ108、保管部110およびキャリア置き場111へ又はから移送するため、キャリア移送領域107にキャリア移送機構112が配置されている。キャリア移送機構112は、キャリア移送領域107の側方に設けられる昇降機構112aにより垂直に移動可能な昇降アーム112bと、昇降アーム112bに搭載されキャリア102の底を支えてこれを水平に移送する移送アーム112cと、を備える。
たとえば、キャリア102は、13枚または15枚のウェハを収納でき、蓋(図示せず)により気密することができる密閉型であってよい。キャリア102は、縦方向に所定の間隔で水平状態に数段にわたって半導体ウェハWを収納し保持する可搬式のプラスチック製容器を含むことができる。一の実施形態では、ウェハWの直径は300mmであって良い。また、他のサイズのウェハを使用することもできる。蓋(図示せず)は、キャリア102の前部に形成されるウェハ入口に取り外し可能に取り付けられ、この蓋によりウェハ入口が気密に閉じられる。
フィルタ(図示せず)を通り抜けた清浄な常圧の空気が、キャリア移送領域107へ供給され、このため、キャリア移送領域107は清浄な常圧の空気により満たされる。また、清浄な常圧の空気を、ローディング領域109に対して提供してもよく、そうすると、ローディング領域109も大気圧の清浄な空気で満たされる。また、チッ素(N2)などの不活性ガスをローディング領域109へ供給して、ローディング領域109を不活性ガスで満たしても良い。
図1に示すとおり、パーティション105は、キャリア102を移送するため、2つの開口113を上下に有している。開口113は、キャリア置き場111と整列していてよい。各開口113には、開口113を開閉するための蓋(図示せず)が設けられている。開口113は、この開口113およびウェハ入口を通してキャリア102に半導体ウェハWを出し入れできるように、そのサイズがキャリア102のウェハ入口のサイズとほぼ等しくなるように形成されている。
また、半導体ウェハWの周縁に設けられたノッチ(切欠部)を整列させるため、キャリア置き場111の下方にキャリア置き場111の垂直中心線に沿って、ノッチ整列機構115が設けられている。すなわち、半導体ウェハWの結晶方位が整列される。ノッチ整列機構115は、ローディング領域107の横に開口を有する。ノッチ整列機構115は、キャリア置き場111のキャリア102から移送機構122により移送された半導体ウェハWのノッチを整列させるよう適応されている。
ノッチ整列機構は、垂直に離隔した位置に2つの装置を有し、各装置がウェハWのノッチを整列させることができる。したがって、一の装置が整列されたウェハWをボート103へ戻している間、他の装置が他のウェハWを整列させることができるため、熱処理システム100のスループットを上げることができる。複数のウェハ、たとえば3枚または5枚のウェハを一度に整列させるよう各装置を構成してよく、これにより、ウェハWの移送時間を十分に低減することができる。
熱処理チャンバ104は、ローディング領域109の後方上部に配置されている。熱処理チャンバ104は、その底に開口104aを有する。チャンバ104の下方に蓋117が設けられている。蓋117は、ボート103をチャンバ104へ搬入出し、チャンバ開口104a開閉するため、昇降機構(図示せず)により垂直に移動するよう適応されている。ボート103は、多数枚、たとえば100枚または150枚を縦方向に等しい間隔の保持ステージに保持することができ、蓋117に載置されるよう構成される。ボート103は、石英などで作製される。熱処理チャンバ104には、熱処理後に蓋117が外れてボート103からウェハが搬出される間にチャンバ開口104aを塞いでおくため、チャンバ開口104aにシャッタ118が設けられている。シャッタ118は、水平方向に回動し、チャンバ開口104aを開閉するよう構成されている。シャッタ118を回動させるため、シャッタ駆動機構118aが設けられている。
図1を更に参照すると、半導体ウェハWをボート103に移入出するため、ローディング領域109の横の領域にボート置き場(ボートステージ)119が配置されている。ボート置き場119は、第1の置き場119aと、第1の置き場119aおよび蓋117の間に配置される第2の置き場119bとを有する。ローディング領域109においてフィルタを用いて循環空気(清浄な常圧の空気または不活性ガス)を清浄するため、ボート置き場119の近傍にベントユニット(図示せず)が配置されている。
ボート置き場119と蓋117との間でボート103を搬送するため、ローディング領域109の下部であってキャリア置き場111と熱処理チャンバ104との間にボート搬送機構121が配置されている。詳細には、ボート搬送機構121は、第1の置き場119aまたは第2の置き場119bと降下した蓋117との間、および第1の置き場119aと第2の置き場119bとの間で、ボート103を搬送するために、配置されている。
キャリア置き場111のキャリア102とボート置き場119のキャリア102との間で半導体ウェハWを移送するため、ボート搬送機構121の上方に移送機構122が配置されている。より詳細には、キャリア置き場111のキャリア102とノッチ整列機構115との間、ノッチ整列機構115とボート置き場119の第1の置き場119aとの間、および、第1の置き場119aの熱処理後のボート103とキャリア置き場111の空のキャリア102との間、において半導体ウェハWが移送される。
図1に示すように、ボート搬送機構121は、ボート103を垂直に支持し、水平に動かす(拡張し、または収縮する)ことができるアーム123を有する。たとえば、ボート103は、アーム123と支持アーム(図示せず)を同調して回転することにより、アーム123の回転軸に対して放射状に(水平方向に直線的に)移動される。このため、ボート103の搬送領域を最少化することができ、熱処理システム100の幅および奥行きを短縮することができる。
ボート搬送機構121は、未処理ウェハWのボート103を第1の置き場119aから第2の置き場119bへ搬送する。そして、ボート搬送機構121は、処理済みウェハWのボート103を蓋117から第1の置き場119aへ搬送する。さらに、ボート搬送機構121は、未処理ウェハWのボート103を蓋117へ搬送する。このようにして、未処理ウェハWが、処理済みウェハWのボート103に由来するパーティクルやガスによって汚染されるのが防止される。
キャリア102が入口106を通ってステージ108に載置される際、センサ機構910がキャリア102の載置状態を検出する。キャリア102の蓋が開き、センサ機構910は、そのキャリア102内の半導体ウェハWの位置および枚数を検出する。そして、キャリア102の蓋が再び閉じ、そのキャリア102はキャリア移送機構112により保管部110へ搬送される。
保管部110に保管されるキャリア102は、適切な時期に、キャリア移送機構111により、キャリア置き場111へ搬送される。キャリア置き場111のキャリア102の蓋とパーティション105の開口113のドアとが開いた後、移送機構122により半導体ウェハWがキャリア102から取り出される。移送機構122は、半導体ウェハWを、ノッチ整列機構115を介して、ボート置き場119の第1の置き場119aに置かれた空のボート103へ次々に移送する。ウェハWが移送される間、ボート搬送機構121が降下し、移送機構122から待避する。このため、ボート搬送機構121と移送機構122との間の衝突が防止される。このようにして、半導体ウェハWを搬送する時間を短くすることができ、熱処理システム100のスループットを十分に上げることができる。
ウェハWの移送が完了した後、移送機構122は、ハウジング101の他方の横の領域において動作位置から保持位置へ横方向に動くことができる。
熱処理が完了した後、蓋117が降下し、ボート103と熱処理されたウェハWとが熱処理チャンバ104からローディング領域109に取り出される。ボート103が蓋117により取り出された直後に、シャッタ118が、チャンバの開口104aを閉じて気密に保つ。これにより、熱処理チャンバ104からのローディング領域109への熱移送が最小化され、ローディング領域109の機器類への熱移送が最小化される。
処理済みのウェハWを含むボート103が熱処理チャンバ104から搬出された後、ボート搬送機構121は、未処理ウェハWの他のボートを第1の置き場119aから第2の置き場119bへ搬送する。そして、ボート搬送機構121は、処理済みのウェハWを含むボート103を蓋117から第1の置き場119aへ搬送する。さらに、ボート搬送機構121は、未処理のウェハWのボート103を第2の置き場119bから蓋117へ搬送する。したがって、ボート103を動かす際に、ボート103の未処理の半導体ウェハWが、処理済みのウェハWのボート103に由来するパーティクルやガスにより汚染されるのが防止される。
未処理のウェハWのボート103が蓋117へ搬送された後、シャッタ118が開き、そのボート103と蓋117とが開口104aを通って熱処理チャンバ104へ導入される。そして、ボート103の未処理のウェハWを熱処理することができる。また、処理済みのウェハWのボート103は、第1の置き場119aへ搬送された後、そのボート103の処理済みウェハWが、移送機構122により、そのボート103からキャリア置き場111の空のキャリア102へ移送される。以下、上記のサイクルが繰り返される。
設定、構成、かつ/または動作情報をプロセスシステム100に保管することができ、これらを、操作者が、または工場システムなどの他のシステムにより、取得することができる。BISTテーブルを、規則に基づくものとしてよく、通常処理のために行われる動作および例外的な条件で行われる動作を特定するために使用して良い。BISTテーブルを定義し、維持するために、構成スクリーンを使用しても良い。作動限度、動作条件、これらに関連するBISTルールは、必要に応じて、保管し、更新して良い。BISTテーブルを生成し、定義し、指定し、維持するため、ドキュメンテーションやヘルプスクリーンを提供しても良い。
プロセスをいつ一時停止かつ/または停止させるか、さらに、一時停止かつ/または停止の間に何をさせるか、を決定するためにBISTテーブルを使用することもできる。また、プロセスをいつ変更するか、どのように変更するかを決定するためにBISTテーブルを使用しても良い。さらに、異なる動的/静的モデルをいつ選択するか、新しい作動限度をどのように生成するか、かつ/または、新しいBISTテーブルルールをどのように稼働させるか、を決定するためにBISTテーブルを使用しても構わない。一般に、BISTテーブルにより、そのシステムの動的状態に基づいてシステム動作を変更することができる。
一の実施形態において、熱処理システム100は、プロセッサ192およびメモリ194を含むシステムコントローラ190を備えてよい。メモリ194はプロセッサ192と結合してよく、プロセッサ192により実行される命令や情報を保管するために使用して良い。ただし、構成の異なるコントローラを使用しても良い。また、システムコントローラ190は、熱処理システム100をネットワーク接続を介して他のシステム(図示せず)と接合するために使用されるポート195を備えてよい。さらに、コントローラ190は、コントローラ190をシステムの他の要素と結合するための入力デバイスかつ/または出力デバイス(図示せず)を備えてもよい。
また、システムの他の要素が、プロセス中に実行される命令および情報を実行かつ/または保管するために、プロセッサかつ/またはメモリを有しても良い。たとえば、システムの種々のプロセッサにより命令が実行される間に、当座の変数や他の中間の情報を保管するために、メモリを使用して良い。1又は2以上のシステム要素が、データかつ/または命令をコンピュータ可読媒体から読み込む手段を備えてよい。さらに、1又は2以上のシステム要素が、データかつ/または命令をコンピュータ可読媒体に書き込む手段を備えてもよい。
メモリデバイスは、本発明の教示に従ってプログラムされるコンピュータで実行可能な命令を保持し、本明細書で説明するデータ構造、テーブル、記録、ルール、または他のデータを保管するため、少なくとも一つのコンピュータ可読媒体またはメモリを含んでよい。システムコントローラ190は、コンピュータ可読媒体からのデータを使用して、コンピュータで実行可能な命令を生成し、かつ/または、実行することができる。熱処理システム100は、メモリに含まれるコンピュータで実行可能な1又は2以上の命令の1又は2以上のシークエンスを実行するシステムコントローラ190に応答して、本発明の方法の一部またはすべてを実行することができる。そのような命令を、他のコンピュータや他のコンピュータ可読媒体から、またはネットワークを介して受け取ってもよい。
本発明を実行するための1又は複数のデバイスを駆動し、熱処理システム100がユーザと又は工場システムなどの他のシステムと相互に作用するため、コンピュータ可読媒体のいずれか又は組み合わせに保管した状態で、本発明は熱処理システム100を制御するソフトウェアを含む。そのようなソフトウェアは、これらに限定されないが、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、開発ツール、およびアプリケーションソフトウェアを含んでよい。そのようなコンピュータ可読媒体は、本発明を実行する際に実行されるプロセスのすべて又は一部を実行するため、本発明のコンピュータプログラムプロダクトを更に含んでよい。
また、熱処理システム100の要素の少なくとも一つは、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)かつ/またはデータベース部品(図示せず)であってよい。他の実施形態においては、GUI要素かつ/またはデータベース要素は必要でない。このシステムのユーザインターフェイスは、ウェッブで可能であってよく、また、システム状況や警告状況の表示を提供しても良い。たとえば、GUI要素(図示せず)は、熱処理システム100について、より効率の良い問題解決、診断、問題の報告のため、ユーザが、状況を観察したり、SPCチャートの生成や編集をしたり、警告データを観察したり、データ収集アプリケーションを構成したり、データ解析アプリケーションを構成したり、履歴データを調べたり、現在のデータを見直したり、電子メール警告を生成したり、多変数モデル実行したり、診断スクリーンを観察したり、BISTテーブルを見たり生成したり編集することができる使いやすいインターフェイスを提供する。
図2は、本発明の実施形態による半導体ウェハ処理システム200の一部を示す模式的な一部断面図である。図示の実施形態では、熱処理システム205、排気システム210、ガス供給システム160、およびコントローラ290が示されている。
熱処理システム205は、たとえば石英で形成されるアウタチューブ202bとインナチューブ202aを含む二重構造の縦型プロセスチャンバ(反応チューブ)202と、プロセスチャンバ202の底に配置される金属製の円筒状マニホールド221と、を備える。インナチューブ202aは、マニホールド221により支持されており、また、その上部は開放している。アウタチューブ202bは、マニホールド221の上端に気密に密閉される下端を有しており、また、その上部は閉じている。
プロセスチャンバ202には、複数のウェハW(たとえば、150枚)が、所定の間隔を隔てて棚状に水平に積み重なってウェハボート(ウェハホルダ)223に搭載される。ウェハボート223は、断熱シリンダ(断熱材)225を介して蓋224に支持されている。蓋224は、移動手段226に結合されている。
熱処理システム205は、また、プロセスチャンバ202の周りに配置される抵抗などの形式のヒータ203を備えることができる。ヒータ203は、5段のヒータ231〜235を備えてよい。ただし、構成が異なるヒータを使うことも可能である。各段のヒータ231〜235には、それぞれに関連した電源コントローラ236〜240によって、互いに独立に電力が供給される。各段のヒータ231〜235を使うことにより、プロセスチャンバ202の内部は5つのゾーンに分割される。
ガス供給システム260は、コントローラ290及び熱処理システム205へ結合するよう図示されている。マニホールド221は、インナチューブ202aへガスを供給するため、複数のガス供給パイプ241〜243を有する。プロセスガスが、マスフロコントローラ(MFC)などの流量調整器344、245、246を通して各ガス供給パイプ241、242、243へ供給される。また、マルチゾーンガス導入システムを使用してよく、かつ/または他のプロセスガスを使用しても良い。
排気パイプ227がマニホールド221へ接続され、インナチューブ202aとアウタチューブ202bとの間を通して排気が行われる。排気パイプ227は、排気システム210へ接続され、排気システムは真空ポンプ(図示せず)を含んでよい。プロセスチャンバ202内の圧力を調整するため、コンビネーションバルブ、バタフライバルブ、バルブ駆動器などを含む圧力調整器228が排気パイプ227に挿入されている。ただし、排気システム210には、異なる構成を使用しても良い。排気システム210かつ/または圧力調整器228は、コントローラ290とデータ交換を行うことができるモニタデバイス(図示せず)を含んでもよい。
熱処理システム205は、複数のセンサを含んでよい。図示した実施形態では、5つの内部温度センサ(熱電対)251〜255が、インナチューブ202aの内側に互いに垂直に整列して配置されている。内部温度センサ251〜255は、半導体ウェハWへの金属の汚染を防止するため、たとえば石英製のパイプで覆われている。内部温度センサ251〜255は、5つのゾーンに対応するよう配置されている。また、ゾーンの数を変え、内部温度センサの数および配置を変えてもよい。他の実施形態においては、温度測定のため、異なる技術を用いても良いし、かつ/または、他のタイプのセンサを用いてプロセスチャンバをモニタするようにしても良い。
複数の外部温度センサ(熱電対/温度計)261〜265が、アウタチューブ202bの外側に垂直方向に整列して配置される。外部温度センサ261〜265は5つのゾーンに対応して配置して良い。また、ゾーンの数を変え、外部温度センサの数および配置を変えても良い。
チャンバ内のウェハの温度、チャンバの温度、プロセスの化学反応、ガスの流量、プロセスチャンバ202内の圧力などのプロセスパラメータを制御するため、コントローラ290を使用して良い。コントローラ290は、内部温度センサ251〜255及び外部センサ261〜265からの出力信号を受信し、電源コントローラ236〜240、圧力調整器228、および流量調整器244〜246へ制御信号を出力する。
設定、構成、かつ/または動作情報をコントローラ290により保管することができ、これらを、操作者が、またはコントローラ190(図1)などの他のコントローラにより、取得することができる。また、通常処理のために行われる動作および例外的な条件で行われる動作を特定するため、コントローラ290は、BISTテーブルを使用しても良い。BISTテーブルを定義し、維持するために、構成スクリーンを使用しても良い。コントローラ290は、必要に応じて、BISTテーブルを保管し、更新して良い。コントローラ290は、BISTテーブルを生成し、定義し、指定し、維持するため、ドキュメンテーションやヘルプスクリーンを管理しても良い。
プロセスをいつ一時停止かつ/または停止させるか、一時停止かつ/または停止の間に何をさせるか、を決定するため、コントローラ290がBISTテーブルを使用することもできる。また、プロセスをいつ変更するか、どのように変更するかを決定するためにBISTテーブルを使用しても良い。
一の実施形態においては、コントローラ290は、プロセッサ292およびメモリ294を含んでよい。メモリ294をプロセッサ292へ結合してよく、プロセッサ292により実行される情報や命令を保管するために使用して良い。ただし、構成が異なるコントローラを使用しても良い。また、コントローラ290は、コントローラ290を他のコンピュータかつ/またはネットワーク(図示せず)と結合するのに使用することができるポート295を含んでよい。さらに、コントローラ290は、コントローラ290を熱処理システム205、排気システム210、およびガス供給システム260へ結合するため、入力デバイスかつ/または出力デバイス(図示せず)を含んでもよい。
コントローラ290は、コンピュータ可読媒体からデータかつ/または命令を読み込むための手段を有して良い。また、コントローラ290は、コンピュータ可読媒体へデータかつ/または命令を書き込む手段を有していても良い。
メモリ294は、本発明の教示に従ってプログラムされるコンピュータで実行可能な命令を保持し、ここに記載されるデータ構造、テーブル、記録、ルール、または他のデータを含む少なくとも一つのメモリまたはコンピュータ可読媒体を有していてよい。コントローラ290は、コンピュータ可読媒体またはメモリからのデータを使用して、コンピュータで実行可能な命令を生成かつ/または実行することができる。熱処理システム205、排気システム210、ガス供給システム290、コントローラ290は、メモリに含まれる1又は2以上のコンピュータで実行可能な命令の1又は2以上のシークエンスの実行に応答して本発明の方法の一部またはすべてを実行する。そのような命令は、他のコンピュータ、他のコンピュータ可読媒体、またネットワーク接続からコントローラにより受け取ることができる。
本発明を実行する1又は複数のデバイスを駆動し、1又は2以上のシステム部品がユーザと又は工場システムなどの他のシステムと相互に作用するため、コンピュータ可読媒体のいずれか又は組み合わせに保管した状態で、本発明は、熱処理システム205、排気システム210、ガス供給システム260、およびコントローラ290を制御するソフトウェアを含む。そのようなソフトウェアは、これらに限定されないが、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、開発ツール、およびアプリケーションソフトウェアを含んでよい。そのようなコンピュータ可読媒体は、本発明を実行する際に実行されるプロセスのすべて又は一部を実行するため(もし、流通する場合は)、本発明のコンピュータプログラムプロダクトを更に含んでよい。
コントローラ290は、GUI要素かつ/またはデータベース部品(図示せず)を備えてよい。他の実施形態においては、GUI要素かつ/またはデータベース要素は必要ではない。このシステムのユーザインターフェイスは、ウェッブで可能であってよく、また、システム状況や警告状況の表示を提供しても良い。たとえば、GUI要素(図示せず)は、熱処理システム100について、より効率の問題解決、診断、問題の報告のため、ユーザが、状況を観察したり、チャートの生成や編集をしたり、警告データを観察したり、データ収集アプリケーションを構成したり、データ解析アプリケーションを構成したり、履歴データを調べたり、現在のデータを見直したり、電子メール警告を生成したり、動的かつ/または静的モデルを見直し、編集し、実行したり、診断スクリーンを見たり、問題を効率よく解決し診断し報告するためにBISTテーブルを見たり生成したり編集したりすることができる使いやすいインターフェイスを提供する。
プロセス中、コントローラ290は、1又は2以上のプロセスパラメータを一の値から他の値へ変更する。垂直ウェハボート223、ウェハWの枚数、位置およびタイプ、熱処理チャンバ202のタイプ、並びに実行されるレシピに基づいた特別のシステム構成について、実時間の動的モデルを設定することができる。
プロセス中に熱処理チャンバについて、予知される動的圧力応答を生成するために実時間の動的圧力モデルを実行して良い。また、プロセス中に熱処理チャンバについて、測定動的圧力応答を生成することができ、予知される動的応答と測定される動的応答との間の差を用いて、動的推定誤差を決定することもできる。さらに、動的推定誤差をBISTテーブルの1又は2以上のBISTルールについて設定される作動限度と比較して良い。動的推定誤差が、BISTテーブルの1又は2以上のBISTルールについて設定される作動限度の範囲内にない場合は、プロセスを停止することができる。また、動的推定誤差が、BISTテーブルの1又は2以上のBISTルールについて設定される作動限度の範囲内にある場合は、プロセスを継続して良い。
動作中、各ゾーンのウェハWの温度が推定され、適合可能な方法を使用して、ウェハの補正温度がレシピで示される温度と等しくなるように各段のヒータ231〜235を制御する。温度上昇が完了したとき、適合可能な制御を使用して、各ゾーンの温度を維持する。モデルを使用して加熱装置を制御する技術は、「バッチタイプ熱処理装置および制御方法」という名称の米国特許第6,803,548号に開示されており、これをここに援用する。
内部温度センサ251〜255、外部温度センサ261〜265、電源コントローラ236〜240、圧力調整器228、もしくは流量調整器244〜246、またはこれらの組み合わせからのデータを使用して、コントローラ290は測定される静的かつ/または動的応答を生成することもできる。
図3は、本発明の実施形態に従う処理システムの簡略化ブロック図を示す。図示の実施形態では、システム310、コントローラ320、動的モデル330、および比較器340を備える処理システム300が示されている。また、作動変数(AV)が示されている。これらは、レシピにおいて固定設定点(SP)を有する変数か、または、レシピの設定点に基づいてコントローラ320により実時間で生成される変数である。たとえば、ヒータ電力、質量流量、および排気バルブ角度などである。
2つのタイプのプロセス変数(PV)が図示されている。これらは、作動変数(AV)の結果としての装置におけるプロセス条件である。プロセス変数(PV)の例には、チャンバ又はウェハの温度、チャンバ内の化学反応、ウェハでの反応物の濃度、およびウェハ上の膜厚などを含む。プロセス変数(PV)は、センサを用いて測定した測定プロセス変数(MPV)と、センサにより測定されない一般プロセス変数(GPV)と、に分類することができる。測定された変数には、コントローラ320を介して直接に制御され得るものもある。これらは、制御プロセス変数(CPV)である。
AV、MPV、およびSPは実時間変数である。定義上は、GPVは利用可能でなく(測定されない)、その結果は実行後の測定のみによって推定可能である。たとえば、バッチ処理チャンバにおいては、チャンバ圧力、質量流量およびこれらの設定点、バルブ角度、並びに各ゾーンにおけるチャンバ温度が実時間データである。
システムの動的性能は、複数の変数に依存するシステムパラメータの合成図である。たとえば、システムの熱応答は、能動要素、受動要素またはソフトウェア要素の関数であって良い。これらの要素の1又は2以上における偏差が誤差を招く。より良い検出および診断のため、「システムレベル」アプローチを使用しても良い。
レシピをシステムレベルで使用して良く、典型的なレシピが、制御プロセス変数(CPV)を含む測定プロセス変数(MPV)のための設定点を提供する。システムコントローラは、作動変数(AV)を制御して、CPVとSPとの間の誤差を低減することができる。ここで、その誤差はError=SP−CPVである。
一の実施形態では、BISTルールを使用して、システムかつ/またはシステム要素が、システム要素の動的モデルおよび実時間データから「設計どおり」に振る舞っているかどうかを決定する。動的モデルは、システムの「設計どおり」の応答を提供し、誤差条件を検出するために使用することができる。たとえば、誤差は、下記のようにモデル化された応答(IPV)と測定された応答(MPV)との間の差を用いて計算することができる。
Error=IPV−MPV
この誤差が予め設定した動作閾値より大きい場合は、警告が生成される。動作閾値をBISTテーブルの一部とすることができる。
図4は、本発明の実施形態に従う熱処理プロセスの1又は2以上の応答を特徴づける動的モデル404の実施形態を模式的に示す。図示の実施形態では、4つのノード又はモデル要素(M1,M2,M3およびM4)448,450,452,454が示されている。しかし、本発明の別の実施形態では、モデル要素の数が異なっていてよく、モデル要素が異なるアーキテクチャで配置されていて良い。
また、動的モデル404は、ヒータ電力、チャンバ圧力、ガスフロー、およびウェハ情報などの制御入力(U)462を受け取る。このモデルは、非測定変数などの外乱入力(D)をも受け取る。また、このモデルは、ウェハ温度などの規制出力(Z)458と、チャンバ温度などの測定出力(Y)460とを決定する。このモデル構造は、Z=M1U+M3DおよびY=M2U+M4Dで表すことができる。ただし、モデル構造に対して、異なる表現を用いても良い。
動的モデル404は、システムの「状態」を追跡し、実時間で入力462を出力458、460へ関連づける。たとえば、UおよびYは測定することができる。また、動的モデル404を用いることにより、DはY=M2U+M4Destを用いて推定することができ、ZはZest=M1U+M3Destを用いて推定することができる。
動的モデル404を生成する際、ウェハ位置、ウェハの曲率およびチャンバの作用がモデルへ組み入れられる。たとえば、動的モデル404は、熱移送、ガスフロー、反応力学、または、熱処理システムかつ/またはMLDシステムなどの処理システムから収集される実時間データで生成されるオン−ラインモデルに基づいた第1原理モデルを用いて生成することができる。
モデル開発中、第1原理モデルは、Matlabなどの適切なソフトウェアシミュレーションアプリケーションにおいて適切なマイクロプロセッサで数的に実行される。そのソフトウェアアプリケーションは、適切なコンピュータ又はマイクロプロセッサに存在し、物理的性能近似を実行するよう動作される。しかし、本発明では、他の数的方法も考慮される。
モデルに基づく線形または非線形の多変数制御方法を用いて加熱量をモデル化することができる。ここでは、制御されるシステムの数学的モデルがコントローラに含まれる。多変数コントローラは、線形象限ガウシアン(LQG)法、線形二次制御器(LQR)法、H無限大制御(H−inf)などの近代制御設計方法のいずれかに基づいてよい。加熱量モデルは、線形もしくは非線形のいずれか、またはSISOもしくはMIMOのいずれかであって良い。多変数制御法(たとえばMIMO)は、すべての入力と、それらが出力に与える効果とを考慮する。加熱量をモデリングする他の方法の幾つかを利用することができる。たとえば、動的モデルおよびデータ駆動モデルなどである。
図5は、本発明の実施形態に従う半導体処理システムの簡略化模式図である。一の実施形では、熱処理で使用されるプロセス装置は、プロセスチャンバと、プロセスチャンバ内に所望のガスフロー条件を生成するガスフローシステムとを含むことができる。図示の実施形態では、東京エレクトロン株式会社製TELFORMULA(登録商標)システムの簡略化模式図が示されている。このシステムは、種々のガス種を含み、大気圧プロセスおよび減圧プロセスの両方を実現できる多くの要素を含んでいる。
図示の実施形態では、ガス供給システムが示されており、これは、マスフローコントローラ(MFC)515、マスフローメータ(MFM)520、入力525,出力535、供給ライン555,およびインターロックバルブ510を含んでいる。また、異なる構成を用いても良い。
プロセスチャンバ550が示されており、これは、複数のウェハWを処理することができる。また、異なる構成を用いても良い。さらに、排気システム565が示されており、これは、圧力制御器516を含んでいる。さらにまた、異なる構成を用いても良い。
たとえば、半導体処理システムは、以下のものを含んでよい。
1)ガス供給システム:このシステムは、所望のプロセスガスラインに加えて、1又は2以上のチッ素(N2)ラインを含んでよい。たとえば、シランガスラインなどのガスラインは、以下を含んでいてよい。
a)シラン(SiH4)ライン:このラインは、i)逆止バルブHV3およびii)圧力テストポイントPT3を有する。
b)チッ素バイパスライン:このラインは、i)逆止バルブHV2およびii)圧力テストポイントPT2を有する。
c)マスフローメータ:MFM1
d)マスフローコントローラ:MFC5
e)分離バルブ:V8およびV9
f)チャンバ分離バルブ:HV7。
2)圧力制御システム:この圧力制御システムは、以下のものを1又は2以上含んでよい。
a)メインバルブ:MV、並びにスローバルブ:SVおよびSSV
b)自動圧力調整器:APC
c)真空ゲージ:VG5、約100Torr(1.33×104Pa)
d)真空ゲージ:VG2、約1000Torr(1.33×105Pa)。
3)プロセスチャンバ:プロセスチャンバは以下のものを1又は2以上含んでよい。
a)真空ゲージ:VG1(0〜10Torr(0〜1.33×103Pa))
b)ピラニゲージ:VG3。
4)温度制御システム:温度制御システムは、自己テストおよび診断の観点から、以下の要素を含んでよい。
a)内部熱電対(T/C)
b)外部熱電対(T/C)
c)ヒータエレメント
d)電源サブシステム
e)断熱材。
5)コントローラ:コントローラは、自己テストおよび診断の観点から、ソフトウェア、ハードウェア、かつ/またはファームウェア要素を含んでよい。
また、ガス供給システム、圧力制御システム、プロセスチャンバ、かつ/または温度制御止システムは、単一または複数のゾーンを含んでよい。
一の実施形態では、ガス供給システムの要素、排気システムの要素、チャンバの要素、温度制御の要素、ウェハ搬送の要素、かつ/またはシステムの他の要素に対して、BISTルールを生成して良い。
システム動作中、誤差条件が発生する場合がある。たとえば、誤差条件のタイプとしては、能動要素、受動要素またはソフトウェア要素が、要求される作業を実行しないなどの要素の不具合;能動要素、受動要素またはソフトウェア要素の性能が劣化したり、その劣化を修正しない場合に近い将来に発生する不具合などの要素の劣化;能動要素、受動要素またはソフトウェア要素が正しく構成されていないなどの構成上の誤差などがある。
熱処理システム(TPS)が低圧での半導体プロセスに使用される場合、不具合条件を検出し、診断し、予知するため、TPSとともに内蔵自己テスト(BIST)システムを使用して良い。
システムの要素を特徴づけるために使用する1又は2以上のパラメータは、時間とともにドリフトし、パラメータのドリフトは、表示のオフセット(またはバイアス)、ヒータの要素の抵抗や供給電力の変化、断熱の変化などとして明らかにされる。また、システムの要素を特徴づけるために使用される1又は2以上のパラメータは劣化する場合があり、パラメータの劣化は、熱電対の表示のドロップアウトやノイズとして明らかにされる。これらは、大抵、差し迫った不具合を意味する。
種々の実施形態において、ドリフトかつ/または劣化した条件を特定するために、システムの要素かつ/またはサブシステムの要素をテストしても良い。たとえば、以下のドリフト又は劣化した条件が、以下に示す熱処理サブシステムの要素のために、テストされる。
1)内部熱電対:a)オフセット(すなわち、温度表示のオフセット)、b)ノイズ、c)ドロップアウト
2)外部熱電対:a)オフセット(すなわち、温度表示のオフセット)、b)ノイズ、c)ドロップアウト
3)すべての熱電対(すなわち、1又は2以上の熱電対が類似の問題を同時に有している場合は、熱電対ボードなどのハードウェアの要素に問題があることの指標となり得る。)
4)ヒータゾーン(すなわち、抵抗および供給電力の変化)
5)電源サブシステム(すなわち、電力制御機能の劣化)
6)断熱(すなわち、断熱性能の変化)
一の実施形態においては、BISTの方法論は、熱システムの基準性能と、進行ベースで実時間に実行される自己テスト中に測定され得る測定性能との間の関係に基づいていてよい。たとえば、「基準性能」は、システムが良好な稼働条件にあるときの性能を意味して良い。
内部熱電対、外部熱電対、温度設定点、ヒータ電力、および他のプロセスパラメータのTPS実時間測定値、かつ/または内部熱電対、外部熱電対、温度設定点、ヒータ電力、および他のプロセスパラメータの保管された測定値からデータを調べることにより、性能を測定することができる。システムかつ/またはサブシステムがモデルベースコントローラを有する場合、測定データについての「推定される」値を得ることができ、これらの推定値をシステムの動的モデルを用いて計算することができ、「測定される」パラメータと「推定される」パラメータとの間の差を計算することができ、そして、その差は「推定誤差」として特定することができる。たとえば、東京エレクトロン株式会社の熱処理システムには、モデルベース温度コントローラ(EBTC)又はART(商標)制御を炉に含むことができるものが幾つかある。
モデルベースコントローラを有していない熱処理システムについては、第1の方法論を利用することができる。この第1の方法論は、モデルベースコントローラを導入したことがない半導体製造者が使用して良い。モデルベースコントローラを有する熱処理システムについては、第2の方法論を利用することができる。この第2の方法論は、モデルベースコントローラを有する熱処理システムを導入している半導体製造者が使用して良い。これらの方法論では、履歴データかつ/または実時間データを使用して、熱処理システムをモニタすることができる。
例示する第1の方法論は、以下のようにまとめることができる。モデルベースコントローラを有しない熱処理システムをモニタする際、測定される過渡熱応答を1又は2以上の基準過渡熱応答と比較し、かつ/または、測定される安定状態熱応答を1又は2以上の基準安定状態熱応答と比較する。
例示する第2の方法論は、以下のようにまとめることができる。モデルベースコントローラを有する熱処理システムをモニタする際、測定される過渡熱応答を1又は2以上の基準過渡熱応答と比較し、かつ/または、測定される安定状態熱応答を1又は2以上の基準安定状態熱応答と比較する。さらに、過渡条件中に、測定される過渡推定誤差を1又は2以上の基準過渡推定誤差とを比較し、かつ/または、安定状態条件中に、測定される安定状態推定誤差を1又は2以上の基準安定状態推定誤差と比較する。
基準過渡応答を測定される過渡応答と比較するとき、上昇特性および降下特性を比較することができる。これらの条件は、以下のように記載される。
abs(TM(t1)−Tb(t1))> 閾値
abs(TM(t2)−Tb(t2))> 閾値
ここで、TMは、時刻t1,t2などにおける測定される基準温度値であり、TBは、時刻t1,t2などにおける基準温度値である。
定常状態の応答を調べるとき、定常状態においては、印加される電力と内部熱電対および外部熱電対の値との間に決まった関係があると仮定することができる。内部熱電対が700℃の場合の第1の例を考える。この場合、定常状態にあるとき、外部熱電対とヒータ電力とは、対応した定常状態値にある。幾つかの例示のテストにおいては、基準の値は、外部熱電対とヒータ電力とについて、測定された値と比較される。
図6は、本発明の実施形態に従う、熱処理システムをモニタする方法のフロー図である。モニタ手順において、1又は2以上の自己テストプロセスを実施することができる。また、モニタ手順を生産プロセスかつ/または非生産プロセスにおいて実施しても良い。温度制御の要素、圧力制御の要素、ガス供給の要素、物理的センサかつ/または仮想センサを含む測定の要素、機械的な要素、演算の要素、もしくはソフトウェアの要素、またはこれらの組み合わせを含む熱処理システムについては、多くのプロセスモデルを生成することができる。この手順(プロセス600)は、ステップ605から開始する。
プロセスを実行する前、実行中、かつ/または実行後に、モデル、BISTルール、プロセス結果データ、および動作条件データをBISTテーブルに保管することができる。
ステップ610において、クエリを行って熱処理システムがモデルベースコントローラで動作するかどうかを決定する。熱処理システムがモデルベースコントローラを用いて動作する場合は、ステップ645へ分岐し、図6に示す手順に従う。熱処理システムが1又は2以上のモデルベースコントローラを使用しない場合は、ステップ615へ分岐し、図6に示す手順に従う。
まず、熱処理システムがモデルベースコントローラで動作しない場合を説明する。ステップ615においてクエリが行われ、温度差(DEL_T)がこのプロセスかつ/またはシステムについて設定された閾値(THRESH)よりも大きいかどうかが決定される。モニタ手順中の種々の時刻(たとえば、t1)に対して閾値を設定することができ、実時間クエリをモニタ手順中の種々の時刻に行ってよい。たとえば、閾値は、時刻とともに変化するプロセスの結果かつ/またはパラメータが最終値の70%、90%および99%に達したときの値として設定することができる。これらとは異なるパーセンテージ値を用いても良い。また、その差についての絶対値を使用しても良い場合もある。さらに、その差についての絶対値が必要でない場合もある。ステップ615において、温度差が閾値よりも大きい場合は、ステップ620へ分岐し、図6に示す手順に従う。温度差が閾値よりも大きくない場合は、ステップ625へ分岐し、図6に示す手順に従う。
ステップ620において、その差が閾値より大きい場合は、温度制御システムに潜在的な問題があることが判明する。たとえば、ヒータに問題が生じている可能性がある。
ステップ625において、その差が閾値以下の場合、クエリが行われ、内部温度センサ(内部熱電対)の測定値と外部温度センサ(外部熱電対)の測定値との差が、このプロセスかつ/またはシステムについて設定される閾値より大きいかどうかを決定する。モニタ手順中の種々の時刻(たとえば、t1)に対して閾値を設定することができ、モニタ手順中の種々の時刻に実時間クエリを行ってよい。たとえば、閾値は、時刻とともに変化するプロセスの結果かつ/またはパラメータが最終値の70%、90%および99%に達したときの値として設定することができる。これらとは異なるパーセンテージ値を用いても良い。また、その差についての絶対値を使用しても良い場合がある。さらに、その差についての絶対値が必要でない場合もある。内部温度センサの測定値と外部温度センサの測定値との差が閾値より大きい場合は、ステップ630へ分岐し、図6に示す手順に従う。内部温度センサの測定値と外部温度センサの測定値との差が閾値以下の場合は、ステップ625へ分岐し、図6に示す手順に従う。たとえば、温度センサは熱電対(T/C)であるが、他のタイプの温度センサを使用しても良い。
ステップ630において、その差が閾値より大きい場合、温度制御システムに潜在的な問題があることが判明する。たとえば、温度センサに問題が生じている可能性がある。
ステップ635において、その差が閾値以下の場合、クエリが行われ、基準測定値が、このプロセスかつ/またはシステムについて設定される閾値より大きいかどうかが決定される。たとえば、基準ヒータ電力を使用して良い。モニタ手順中の種々の時刻(たとえば、t1)に対して閾値を設定することができ、モニタ手順中の種々の時刻に実時間クエリを行ってよい。たとえば、閾値は、時刻とともに変化するプロセスの結果かつ/またはパラメータが最終値の70%、90%および99%に達したときの値として設定することができる。これらとは異なるパーセンテージ値を用いても良い。また、その差についての絶対値を使用しても良い場合がある。さらに、その差についての絶対値が必要でない場合もある。基準測定値が閾値より大きい場合、ステップ640へ分岐し、図6に示す手順に従う。基準測定値が閾値以下の場合、ステップ695へ分岐し、図6に示す手順に従う。
ステップ640において、測定値が閾値より大きい場合、温度制御システムに潜在的な問題があることが判明する。たとえば、ヒータかつ/または断熱に問題が生じている可能性がある。
ステップ695において、測定値が閾値以下の場合、プロセス600は終了する。
次に、熱処理システムがモデルベースコントローラで動作する場合について説明する。ステップ645において、推定誤差が計算される。一の実施形態では、モデルベースコントローラが使用されている場合、内部熱電対推定誤差(Inner T/C Estimation Error:ITEE)をモニタ変数として使用して良い。また、ITEE平均および分散を計算しても良い。また、他のパラメータをモニタ変数として仕様して良い。たとえば、あるシステムについてITEEの基準値を使用しても良い。上述のとおり、基準条件は、システムが良好な動作条件にあることが分かっている場合になされた測定値に適用される。したがって、自己テストの結果を用い、ITEEの平均や分散などのパラメータ、かつ/または過渡特性を閾値と比較して、システムにある問題を検出し、診断することができる。
表1は、検出および診断の方法論の一例のまとめを示す。他の例としては、ITEEは必要でなく、他のパラメータをモニタ変数として使用することができる。
プロセス600は、ステップ650において継続される。このステップ650で、クエリが行われ、推定誤差の平均かつ/または分散(VAR)が、このプロセスかつ/またはシステムについて設定される閾値より小さいかどうかが決定される。一の実施形態においては、モデルベースコントローラによって、内部熱電対推定誤差(ITEE)が計算され、ITEE平均値かつ/またはITEE分散が使用される。また、他の推定誤差を使用することもできる。モニタ手順中の種々の時刻に対して閾値を設定することができ、モニタ手順中の種々の時刻でクエリを実行して良い。推定誤差の平均かつ/または分散が閾値より小さい場合、ステップ665へ分岐し、図6に示す手順に従う。推定誤差の平均かつ/または分散が閾値以上の場合、ステップ660へ分岐し、図6に示す手順に従う。
ステップ655において、上記の平均および分散が閾値より小さい場合、システムが作動限度内で動作していることが確認される。
ステップ660において、上記の平均かつ/または分散が閾値以上である場合、推定誤差の平均かつ/または分散が閾値以上である回数が計数され、ステップ665へ進む。
ステップ665において、クエリが行われ、その回数が、このプロセスかつ/またはシステムについて設定される閾値より大きいかどうかが決定される。一の実施形態においては、閾値との偏差の回数は、ITEE平均、ITEE分散、および合計について別個の回数を含んでよい。モニタ手順中の種々の時刻に対して閾値を設定することができ、モニタ手順中の種々の時刻でクエリを実行して良い。上記の回数が閾値より大きい場合、ステップ670へ分岐し、図6に示す手順に従う。上記の回数が閾値以下の場合、ステップ675へ分岐し、図6に示す手順に従う。
ステップ670において、上記の回数が閾値より大きい場合、温度センサに不具合がないかチェックする。たとえば、内部熱電対かつ/または外部熱電対が劣化しているか、不具合している可能性がある。
ステップ675において、上記の回数が閾値以下である場合、または、温度センサがチェックされた後、誤差が計算される。この誤差は、ヒータゾーンの抵抗値などの温度制御システムのパラメータの変化かつ/またはヒータ電力入力値などの温度制御システム入力値と相互に関連付けることができる。誤差は実時間で計算することができる。また、システムの他の要素を調べ、かつ/または他の推定誤差を使用しても良い。誤差はモニタ手順中の種々の時刻(たとえば、t1)で計算してよく、誤差を出力値に相互に関連付けても良い。その後、ステップ680へ進む。
ステップ680において、クエリが行われ、誤差が、このプロセスかつ/またはシステムについて設定されるヒータ電力入力値に相互に関連付けられているかどうかが決定される。また、他のシステム要素を調べ、他の推定誤差を使用しても良い。モニタ手順中の種々の時刻に対して閾値を設定することができ、モニタ手順中の種々の時刻でクエリを実行して良い。
ステップ685において、誤差が、このプロセスかつ/またはシステムについて設定されるヒータ電力入力値に相互に関連付けられている場合、1又は2以上のヒータに不具合がないかチェックされる。また、システムの他の要素を調べ、他の推定誤差を使用しても良い。モニタ手順中の種々の時刻に対して閾値を設定することができ、モニタ手順中の種々の時刻でクエリを実行して良い。
ステップ690において、誤差が、このプロセスかつ/またはシステムについて設定されるヒータ電力入力値に相互に関連付けられていない場合、または、ヒータがチェックされた後、1又は2以上の温度センサ、たとえば内部熱電対、にオフセットがないか、チェックされる。また、システムの他の要素を調べても良い。ステップ690の後、ステップ615へ進み、図6に示す手順に従う。すなわち、上述のとおり、モデルベースによらない手順に従ってシステムが調べられる。
幾つかの実施形態においては、実時間推定の方法論を使用することができる。また、他の方法を使用しても良い。以下の一組の非線形差動方程式
[外2]
(以下、場合によりxドットと呼ぶ)および出力方程式yを用いて、半導体処理システムかつ/または1又は2以上のシステムの要素またはサブシステムの要素をモデル化することができる。
ここで、xは、温度、圧力および反応物の状態からなる状態ベクトルであり;ベクトルpは、熱容量、熱伝導率、および速度定数などのモデルパラメータからなり;ベクトルuは、ヒータ電力など、プロセスに適用される入力値からなり;wは、ゼロ平均を有する追加のホワイトノイズ、E(w)=0(E(・)は期待値オペレータを意味する)であり;vは、ゼロ平均を有する追加のホワイトノイズ、E(v)=0である。
初期状態x0、入力値u、およびパラメータpに対して、差動方程式を積分して状態の展開を計算することができる。
また、実時間のアプリケーションに対してモデルを線形化してもよい。線形化により、標準軌道に沿ったシステムの動力学を記述する一つの又は一組のモデルがもたらされる。これらの線形モデルは、各時間間隔の第i番目について、行列Ai、BiおよびCiによる状態空間形式で表される。したがって、非線形モデルは、一連の離散時間線形モデルに置き換えることができる。
ここで、kは時間インデックスである。初期状態(P
0)の共分散は、E{x
0x
0 T}=P
0であり、Tは転置パラメータである。
種々の例において、単一モデルを使用して良く、これらの場合、下付き文字iを省略することができるため、システムは以下の式により定義される。
実時間推定器を構築する便利な方法は、カルマンフィルタ行列L
iを使用することである。すなわち、
ここで、x
k+1やx
kなどの上のハット記号は、これらが推定された値であることを意味する。
これらの式を使用して、「エラーダイナミックス」Zを立証することができる。これは、実際の状態と推定された状態との差であり、以下の式で与えられる。
一例では、ベクトルe
kは、内部熱電対推定誤差(ITEE)を含んでよい。
これらの式から、以下のことが観測される。
1)zkは、ゼロ平均ノイズに単に駆動されるため、初期値z0からゼロとなる傾向にある。
2)動力学zkは、カルマンフィルタ設計の目的である(A−LC)により制御される。
3)出力値推定誤差ekもまたゼロとなる傾向がある。
幾つかの誤差条件を調べる場合、以下のことが仮定される。たとえば、測定値「y」は、各ゾーンにおける内部熱電対および外部熱電対を含み、入力値「u」は、各ゾーンで印加されるヒータ電力を含むと仮定することができる。また、他のパラメータを使用しても良い。
幾つかの実施形態において、ノイズ項「w」および「v」を省略してもよく、ノイズ項「w」および「v」を使用しても良い。
内部熱電対にオフセットがある場合、そのオフセットはベクトル「f」で示される。したがって、プラントのモデルは、以下のようになる。
たとえば、オフセットが第1の内部熱電対にあれば、ベクトル「f」は、以下のように書くことができる。
ここで、エラーダイナミックスは以下のとおりとなる。
これらの更新したエラーダイナミックスから、以下のとおり結論づけることができる。
1)ゼロとなる傾向より、むしろ、z
kは幾つかの非ゼロの定常状態値を達成する。
2)同様に、e
kもまた幾つかの非ゼロの定常状態値を達成する。
3)しかし、e
kは、入力値u
kに相互に関連付けられることはない。
この例においては、ヒータ電力サブシステムに不具合条件がある、特に、電力を印加する方法において倍数的に増加する誤差がある、と仮定している。ここで、倍数的に増加する要因を対角行列で表そう。そうすると、プラントのモデルは、以下のとおりとなる。
上記の行列において、各要素γ
iは、そのヒータゾーンに不具合がなければ、1である。
これらの定義により、エラーダイナミックスは、以下のとおりとなる。
これらの方程式から、再び、以下の結論が得られる。
4)ゼロとなる傾向より、むしろ、z
kは幾つかの非ゼロの定常状態値を達成する。
5)同様に、e
kもまた幾つかの非ゼロの定常状態値を達成する。
6)e
kは、入力値u
kに相互に関連付けられる。
また、定常状態チェックを行ってもよい。このシステムのダイナミックスモデルを再び考える(ただし、今は、ノイズ項を省略する)。そのモデルは、以下のとおりである。
ある定常状態では、xドットはゼロであり、その状態における定常状態値はx
sであり、定常状態入力値はu
sであり、および定常状態出力値はy
sである。リファレンスシステムについての入力値および出力値(たとえば、u
refおよびy
ref)の既知の定常状態値を用いて、あるシステムの定常状態値をモニタすることができ、リファレンスと比較することができる。特に、フィードバックコントローラがシステム出力値y
refを駆動する場合、u
sの値をチェックすることができる。すなわち、
この差が小さい場合、テスト下のシステム(System Under Test:SUT)は、リファレンスシステムと同様に作動する。そうでない場合、誤差条件の可能性が示される。
第1の例として、5つのゾーンを有する熱処理チャンバを考える。その熱処理チャンバにおいて、すべてのゾーンが600℃である場合、ヒータ電力が表2に示すとおりであると仮定する。
5つの温度ゾーンの温度がともに600℃である熱処理チャンバにおいて、ゾーン5でのヒータ電力が2600Wとなっている場合、ある種の誤差条件が示されていることは明らかである。その誤差条件は、ヒータゾーンにあるか、Oリングなどにある可能性があり、更なるテストを行って診断しなければならない。
一の実施形態では、動的応答チェックが行われる。本明細書で説明するように、誤差を検出する一の方法は、システムの動的応答をモニタし、これをレファレンスと比較することである。この目的のため、たとえば、動的実時間推定器を使用することができる。レファレンスシステムで作製される線形推定器を考える。ここでは、出力値の推定値が以下の式で与えられる。
SUTが出力値y
kを生成しているとき、これら2つが十分に近似しているかを決めるチェックを行う。すなわち、
多くのシミュレーションを行って、先に提示した理論に基づく多くのシミュレーションの結果が得られた。炉においては、4つのゾーンを有するバッチ炉について先に得たモデルデータを使用している。
幾つかのシミュレーションについて、ウェハ温度を始めに700℃に設定し、次いで750℃に変え、最後に700℃に戻すといった単純なステップ・アンド・ホールドレシピが使用されている。
図7は、バッチ炉の通常の応答を示す。具体的には、4つのゾーン(1〜4)のそれぞれについて、内部熱電対の指示値の変化と、ヒータ電力のパーセント変化とを示している。場合によっては、設定点がウェハ温度に適用されるとき、内部熱電対の指示値が設定点に至る必要は必ずしもない。
図8は、各ゾーン(1〜4)についての基準プロファイル推定誤差を示す。このデータから、各ゾーンの推定誤差は、プロセスノイズに関する約0.1℃の偏差を有するゼロ平均であることが分かる。
他のシミュレーションを行って、内部熱電対のオフセット誤差を調べた。このシミュレーションでは、1℃のオフセット誤差が内部熱電対へ導入され、各シミュレーションについて一つの誤差を使用した。この場合、プラントモデルは、以下のとおりとなる。
したがって、4つのシミュレーションを行ない、それぞれで上記のベクトルの一つを使用した。プロファイル推定誤差e
kは、以下の式で与えられる。
図9は、第2の内部熱電対(f2)において1℃のオフセットがある場合の各ゾーン(1〜4)のプロファイル推定誤差を示す。このシミュレーションでは、現実の炉プロセスで何が観察されるかが良く分かるように、プロセスノイズが導入されている。ここで、ノイズは、ゼロ平均ガウシアン変数である。
この曲線から以下のことが分かる。
1)ゾーン2についてのプロファイル推定誤差は、明確なノンゼロ平均を有する。
2)他のゾーンは、小さなノンゼロ平均を有する。
これらのシミュレーションから、プロファイル推定誤差を使用して、プロファイル熱電対測定値にオフセット誤差があるかどうかを決めることができることが分かる。
図10に、各ゾーン(1〜4)の1℃のオフセットについてのプロファイル推定誤差をまとめる。バーチャートは、ただ一つのオフセットが一度に使用される場合の4つのシミュレーションのそれぞれについて、プロファイル推定誤差の平均値の変化を示している。図10から以下のように結論づけることができる。
1)ゾーン2とゾーン3については、ゾーン1とゾーン4に比べて、プロファイル推定誤差により明確な変化がある。
2)誤差のパターンは、どのチャネルが関連しているかを決定するのに有益であり得る。
他のシミュレーションでは、ヒータ電力誤差を調べた。このシステムに印加されるヒータ電力において倍数的に増加する誤差がある場合、プロファイル推定誤差を調べることができる。この場合、モデルは以下のとおりである。
以下のシミュレーションでは、ヒータゾーン2について倍数的に増加する誤差の要因0.85を使用した。すなわち、
誤差方程式は、推定誤差がヒータ電力に相互に関連付けられることを示している。なぜなら、エラーダイナミックスが以下のとおりだからである。
図11は、ヒータゾーン2において倍数的に増加する誤差が0.85をある場合の各ゾーン(1〜4)におけるプロファイル推定誤差と、ヒータ電力のパーセント変化とを示す。図11のデータは、推定誤差がヒータ電力に相互に関連付けられていることを示す。ゾーン1とゾーン2についての推定誤差はヒータ電力に相互に関連付けられていることに留意されたい。これらはヒータ電力により大きな変化がある場合に増加する。そのような変化は、レシピの温度上昇及び温度降下の段階で生じる。
本発明の方法論を証明するため、4ゾーンシステムを用いてテストを行った。ただし、このシステムではモデルベースコントローラは使用していない。テスト中、定常状態および過渡応答特性に着目した。
実験には、第1の例としてチャンバ温度を約550℃から約600℃へ上げる場合、第2の例としてチャンバ温度を約600℃から約700℃へ上げる場合、第3の例としてチャンバ温度を約700℃から約800℃へ上げる場合のそれぞれのランプ・アンド・ホールドレシピが含まれる。
また、第1の例としてチャンバ温度を約800℃から約700℃へ下げる場合、第2の例としてチャンバ温度を約700℃から約600℃へ下げる場合、第3の例としてチャンバ温度を約600℃から約550℃へ下げる場合のそれぞれのランプ・アンド・ホールドレシピも含まれる。
さらに、実験には、各ゾーンのプロファイル温度を設定点の600℃から+/−10℃変化させる、ゾーン毎の摂動が含まれる。この実験は、本明細書で説明する種々の行列に対する炉の応答を特徴づけるために実施した。
種々の実施形態において、システムの熱応答の「基準署名」を形成するため、以下の行列を使用することができる。
1)各ゾーンについての温度上昇の際に設定点の70%、90%、および99%に達するのに要する時間。
2)各ゾーンについての温度降下スロープ。
3)600℃、700℃、および800℃の各々についての定常状態の外部熱電対温度。
4)600℃、700℃、および800℃の各々についての定常状態の電力。
図12は、カスケード制御で600℃まで温度を上げる様子を示す。図12の上のグラフは、設定点(5)と各ゾーン(1〜4)における内部熱電対のデータとを示している。図12の下のグラフは、各ゾーン(1〜4)におけるヒータ電力のパーセント変化を示している。
図13は、カスケード制御で800℃から700℃まで温度を下げる様子を示す。図13の上のグラフは、設定点(5)と各ゾーン(1〜4)における内部熱電対のデータとを示している。図13の下のグラフは、各ゾーン(1〜4)におけるヒータ電力のパーセント変化を示している。
基準モデルパラメータを生成する際、内部熱電対と外部熱電対との関係を調べることができる。図14は、各ゾーン(1〜4)における内部温度センサと外部温度センサとの関係を示す。具体的には、図14は、カスケード制御を使用している場合において炉の温度が600℃、700℃、および800℃のときの4つのゾーンの各々における内部熱電対と外部熱電対との差を示している。これらのチャートは、「基準」の差を示している。基準の差が設定されると、基準からの偏差を用いて動作条件の劣化を指摘することができる。
基準モデルパラメータを生成する際、ヒータ電力を調べることもできる。図15は、炉の温度が600℃、700℃、および800℃であって、カスケード制御を使用しているときの4つのゾーンの各々におけるヒータ電力を示している。図15は、ヒータ電力は炉の温度に強く関連していることを示している。特に、ゾーン1とゾーン4について明らかである。これらのチャートは、「基準」の差を示している。基準の差が設定されると、基準からの偏差を用いて動作条件の劣化を指摘することができる。
また、基準モデルパラメータを生成する際、ゾーン毎の感度を調べることができる。この感度とは、設定点のゾーン毎の変化に対する炉の温度応答に基づくものであって良い。炉がカスケード制御下にあるとき、セットポイントの変化は内部熱電対に対するものである。図16は、カスケード制御を使用している場合の4つのゾーン(1〜4)の各々における感度値を示す。
摂動に基づき、2つの感度行列が設定される。すなわち、
M1=外部熱電対 → 内部熱電対
M2=ヒータ電力 → 内部熱電対
下記の行列は、炉で収集された現実の実時間データログに基づいている。
また、この行列の「サイン」パターンは、きわめて有益でもある。サインパターン行列は、以下のとおりである。
したがって、サインパターンを使用して、内部熱電対のどこで偏差が生じたかを指摘することができる。同様に、ヒータ電力行列は、以下のとおりとなる。
再び、サインパターンを使用すれば、ヒータのどこで偏差が生じたかを指摘することができる。
図17は、ゾーン1の摂動の一例を示す。具体的には、図17は、炉がカスケード制御下にある場合に、温度設定点が+/−10℃変化したときの炉の応答を示している。図17の左側のチャートは、設定点と内部熱電対の表示値とを時間との関係で示している。右側のチャートは、各ゾーン(1〜4)についてのヒータ電力と時間との関係を示している。
モデルベースコントロールシステムにおいては、BIST方法論は、幾つもの異なるパラメータ行列に基づくものであって良い。一の実施形態では、内部熱電対と外部熱電対との差(Inner−Outer T/C Difference:IOTD)の行列と、電力レベル差(Power Level Difference:PLD)の行列と、内部熱電対推定誤差感度(Inner T/C Estimation Error sensitivity:ITEES)の行列とを使用することができる。また、他の行列を使用しても良い。
モデルベースコントローラを使用する5ゾーンシステムを使用して、他のデータを取得した。第1の組の実験中、標準システム条件を使用して、基準データを生成した。第2の組の実験中、5組のデータが収集された。すなわち、第1のランでは、ゾーン1の内部熱電対に対して5℃のオフセットを与え;第2のランでは、ゾーン2の内部熱電対に対して5℃のオフセットを与える、などを行ってデータを収集した。第3の組の実験中、追加の5セットのデータが収集された。すなわち、第1のランでは、ゾーン1のヒータ電力を90%まで減少させ;第2のランでは、ゾーン2のヒータ電力を90%まで減少させる、などを行ってデータを収集した。
BISTシステムは、これらの行列におけるパラメータを実時間で評価し追跡することができ、かつ、これらの測定されたパラメータを基準データと実時間で比較することができる。BISTシステムは、熱処理システムにおける劣化を検出するため、これらのパラメータのいかなる変化をも使用することができる。BISTシステムは、樹形図を用いて、何が変化の原因であるかを検出し、また、問題を「診断」することができる。
図18は、内部熱電対のオフセットにより、内部熱電対と外部熱電対との差がどのように変化するかを示すバーチャートである。5回のランの各々において、対応するゾーンにおいて、内部熱電対と外部熱電対との間の差に正の変化が生じている。変化のパターンは、どのゾーンがオフセットを有するかに依存している。たとえば、ゾーン1において内部熱電対に5℃のオフセットがあると、そのゾーンで、その内部熱電対と外部熱電対との間に10℃を超える変化が生じている。図18に示す内部熱電対のオフセットデータを使用して、内部熱電対と外部熱電対との間の差(IOTD)の行列を生成することができる。
図19は、内部熱電対のオフセットにより、ヒータ電力(ワット)がどのように変化するかを示すバーチャートである。5回のランの各々において、内部熱電対にオフセットがあると、対応するゾーンのヒータ電力が減少している。たとえば、ゾーン1の内部熱電対に5℃のオフセットがあると、ゾーン1のヒータ電力が約200ワット減少する。図19に示すヒータ電力のデータを使用して、電力レベル差(PDL)行列を生成することができる。
図20は、内部熱電対のオフセットにより、内部熱電対推定誤差(ITEE)がどのように変化するかを示すバーチャートである。5回のランの各々において、内部熱電対にオフセットがあると、対応するゾーンのITEEに負の変化が生じる。たとえば、ゾーン4の内部熱電対に5℃のオフセットがあると、ゾーン4におけるITEEに−0.5℃の変化が生じる。図20に示す内部熱電対のオフセットのデータを使用して、内部熱電対推定誤差感度(ITEES)行列を生成することができる。
図21は、ヒータ電力のスケーリングにより、内部熱電対と外部熱電対との間の差がどのように変化するかを示すバーチャートである。ゾーン4とゾーン5の組み合わせを除くと、内部熱電対と外部熱電対との間の差は小さく、したがって、電力スケーリングにおける変化は、内部熱電対と外部熱電対との間の差に影響しないと期待される。図21に示す内部熱電対のオフセットのデータを使用して、1又は2以上のIOTD行列を決定することができる。
図22は、ヒータ電力のスケーリングにより、ヒータ電力がどのように変化(パーセント)するかを示すバーチャートである。5回のランの各々において、対応するゾーンのヒータ電力が増加している。電力のパーセント変化は、電力スケーリングと一致している。たとえば、ゾーン2の電力をスケーリングすると、ゾーン2の電力が約10%変化する。図22に示すヒータ電力のデータを使用して、1又は2以上のPDL行列を決定することができる。
図23は、ヒータ電力のスケーリングにより、内部熱電対推定誤差(ITEE)がどのように変化するかを示すバーチャートである。電力量の変化(10%)は、ゾーン3のヒータに対して最大である。そのため、これに対応して、ITEEはゾーン3における電力スケーリングについて大きな変化がみられる。他のゾーンの電力スケーリングに伴うITEEの変化は比較的小さい。図23に示すITEEのデータを使用して、1又は2以上のITEES行列を決定することができる。
一般的に、ベアシリコンウェハは、かなり平坦で、厳しい仕様のもとで製造されている。しかし、複数の熱処理を経て複数の膜がウェハに堆積されると、ウェハが著しく湾曲する場合がある。ウェハの湾曲は、堆積プロセスを始めとするプロセス中に問題を発生させ、膜の均一性かつ/またはCD均一性に悪影響を与える。
BISTシステムを使用して、ウェハ誤差を検出し、過度の湾曲があるウェハを不合格とすることができる。「数学的モデル」において1又は2以上の測定デバイスからの実時間データを使用して、ウェハの湾曲を推定かつ/または補償することができる。また、そのモデルは、静的、動的、線形、または非線形であってよい。
種々の実施形態を提示して本発明を説明し、これらの実施形態を限りなく詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に限定することは、本願出願人の意図するところではない。追加の利点および変形は、当業者にとっては明白であろう。本発明はより広い態様にあり、したがって、本明細書に示され説明された具体的な詳細、代表的な装置や方法、または例示に限定されることはない。したがって、本発明の一般的な概念の範囲から逸脱しない限り、そのような詳細からの変更が可能である。
100 熱処理システム、101 ハウジング、102 キャリア、105 パーティション、107 キャリア移送領域、109 ローディング領域、103 ボート、104 プロセスチャンバ、107 キャリア移送領域、108 ステージ、109 ローディング領域、111 キャリア置き場、115 ノッチ整列機構、121 ボート搬送機構、122 移送機構、190 システムコントローラ、192 プロセッサ、194 メモリ、205 熱処理システム、202 プロセスチャンバ、202b アウタチューブ、202a インナチューブ、221 マニホールド、203 ウェハボート、210 排気システム、224 蓋、225 断熱シリンダ、231〜235 ヒータ、236〜240 電源コントローラ、260 ガス供給システム、290 コントローラ、227 排気パイプ、228 圧力調整器、W ウェハ。