JP5149659B2 - 液化ガス気化器 - Google Patents

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Description

本発明は、液化されたガス例えば液化天然ガス (LNG)、液体水素、液体酸素、液体窒素などを海水や真水などの加熱流体で気化させる気化器に関する。さらに詳述すると、本発明は、気化器の加熱流体の氷結を防止する技術に関する。
液化ガス気化器として一般的な従来のLNG気化器は、アルミニウム合金製のフィン付き伝熱管を垂直にカーテン状に多数設置し、その内部をLNGが上向きに流れ、外部を海水が伝熱管表面に沿って流れ落ちる構造である(特許文献1,2)。伝熱管下端に入る時点で約−160℃のLNGは、伝熱管内を上昇する間に伝熱管の外面に沿って流れ落ちる海水の温度によって気化され、伝熱管の上端を出る時点でほぼ気化している。
また、LNG焚きガスタービンコンバインドサイクル発電所においては、ガスタービンの燃料となるLNGの冷熱をガスタービンに供給される燃焼用空気の冷却に利用する熱サイクルを構成することが提案されている(特許文献3)。この場合、ガスタービン吸気冷却は体積流量一定で回転するガスタービン空気圧縮機の質量流量を吸気冷却によって増し、これに応じた燃料ガス流量増加によりタービン出力の増加を企図したものである。LNG気化器と吸気冷却器との間に冷却媒体としての水を循環させることにより、LNGを気化させる際に得た冷熱を利用して吸気冷却器を流れる燃焼用空気を冷却するものである。ここで、LNG気化器の伝熱管の周りを流れる水が一旦氷結すれば、LNG気化器としての機能が停止し、発電停止の事態を招くことから、LNG負荷に応じた冷却水流量が得られるように循環する水の量をフィードフォワード制御することにより、LNG気化器出口冷却水温度の安定性が確保されている。
また別のタイプの液化ガス気化器として、フィン付き伝熱管を垂直に設置し、その内部を液化ガスが流れ、外部を空気の自然対流で加熱する方式がある。例えば、LNGを燃料として使用するガスエンジン、ガスタービン等のガス燃焼機関を用いたシステムには空温式気化器が使用される。この空温式気化器の場合、ガス燃焼駆動機関から排出される高温の排ガスを熱交換することにより生成された高温空気をLNG気化器に供給することにより、該気化器の適所を昇温させるシステムが提案されている(特許文献4)。
特開平5−164496 特開平7−339459 特開平8−296797 特開2007−247474
しかしながら、例えば実用機では全長6〜8mのアルミニウム合金製のフィン付き伝熱管の外面に沿って海水を流す特許文献1及び2に示すような冷却水式気化器の場合には、海水温度が夏季では約25℃であるのに対し、冬季では約10℃と季節により大きく変動するため、冬季においては伝熱管下端部の約1m程度の範囲で海水が凍結することがある。このとき、アルミニウム合金製の伝熱管 (熱伝導率:約190W/mK)) に比べて氷 (熱伝導率:約2.2W/mK) は熱伝導率が低いため、LNGの気化性能が低下する。
また、特許文献1及び2に示す冷却水式気化器の場合には、海水の温度を利用してLNGを気化させるのであるが、LNGと海水の温度差を有効利用せずに、大量の冷熱が無駄に海洋中に投棄されることとなり、未利用エネルギーの有効利用の観点から好ましくないし、熱経済的にも不経済である。
さらに、特許文献3に示す冷却水式気化器は、LNG焚きガスタービンコンバインドサイクル発電所のようにLNG気化器とガスタービン発電設備とが隣接した設備においてLNGの大量の冷熱の利用を可能とするが、LNG気化器単独で使用される場合には適用できない問題がある。しかも、LNG負荷に応じた冷却水流量が得られるように循環する水の量をフィードフォワード制御する必要があり、これによってLNG気化器出口冷却水温度の安定性が確保されていることから、LNGの冷熱が十分に有効利用されるとは限らない。更には、LNGと海水の温度差を有効利用するものでもない。
また、特許文献4に示す空温式気化器の場合には、空気の自然対流による熱伝達係数(約40W/mK)は流れ落ちる海水のそれ(約4000W/mK)に比べてきわめて小さく、気化性能がきわめて低いことが欠点である。
そこで本発明は、海水や水などの液体を加熱媒体とする液化ガス気化器において、伝熱管下端部での水の凍結を防ぐことを目的とする。また、本発明は、液化ガスと加熱流体との温度差を電力に変換して有効利用する液化ガス気化器を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、本発明は、鉛直に設置した伝熱管の内部を下端から導入された液化ガスが上昇させられる一方、伝熱管の外部では伝熱管の外面に沿って加熱流体が流れ落ちる構造の気化器において、伝熱管は、外部に伝熱面が全面的に露出した伝熱管と、外面に熱電変換モジュールを備えた伝熱管とを直列に接続したものであり、かつ熱電変換モジュール付き伝熱管は、外形状が矩形断面であり、いずれかの面に熱電変換モジュールが備えられると共に、各熱電変換モジュールの周りに断熱材が充填されて凹凸の無い表面を形成しており、伝熱管の少なくとも下端寄りの一部または全体に熱電変換モジュール付き伝熱管を設置し、伝熱管の外部の加熱流体と内部の液化ガスとの温度差を利用して液化ガスの気化を行うと同時に熱電変換モジュールで発電を行うようにしている。
さらに、請求項記載の発明は、請求項記載の液化ガス気化器において、伝熱面が全面的に露出した伝熱管と熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部の周りに、伝熱管の外面に沿って流れ落ちる加熱流体が外側に飛散することを防ぐフローガイドを設けたものである。
さらに、請求項記載の発明は、請求項記載の液化ガス気化器において、伝熱面が全面的に露出した伝熱管と熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部に、両伝熱管の輪郭形状を段差無く連続的に繋ぐ流線形の遷移部を形成するものである。
請求項1記載の液化ガス気化器によれば、伝熱管の内部を流れる液化ガスと外部を流れる加熱流体との間の温度差が熱電変換モジュールに印加されるので、液化ガスの気化と同時に発電が可能である。そして、熱電変換モジュールの存在が氷結し易い伝熱管の下端付近での加熱流体が流れる表面の温度低下を防ぐため、氷結を防止できる。したがって、本発明の液化ガス気化器によれば、気化器の性能を損なうことなく発電が可能である。
しかも、本発明によれば、従来のフィン付き伝熱管即ち外部に伝熱面が全面的に露出した伝熱管の一部を熱電変換モジュール付き伝熱管と置換することで容易に実現できる。
また、本発明によれば、伝熱面が全面的に露出した円形の伝熱管の外面に沿って流れ落ちる加熱流体は、熱電変換モジュール付き伝熱管の周りに移行しても、加熱流体の流れの方向に変動を与えるような表面の凹凸がないため、熱電変換モジュールの表面に沿って流れることが可能となる。
さらに、請求項記載の液化ガス気化器によれば、伝熱面が全面的に露出した円形の伝熱管の外面に沿って流れ落ちる加熱流体が、外周形状が矩形の熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部における急激な形状変化のために外側に飛散しそうになるが、フローガイドが加熱流体の飛散を防ぐため、矩形形状の熱電変換モジュール付き伝熱管部分でも加熱流体が熱電変換モジュールの表面に沿って流れることが可能となる。したがって、矩形伝熱管部分に加熱流体が流れ落ちたときにも熱電変換モジュールの表面に沿って流れることが可能となる。
さらに、請求項記載の液化ガス気化器によれば、両伝熱管の輪郭形状を段差無く連続的に繋ぐ流線形の遷移部によって、伝熱面が全面的に露出した円形の伝熱管の外面に沿って流れ落ちる加熱流体が、流線形の遷移部に案内されて外側に飛散することなく外周形状が矩形の熱電変換モジュール付き伝熱管に導入され、加熱流体が熱電変換モジュールの表面に沿って流れることが可能となる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。なお以下の説明では簡略化のため、加熱流体(海水や水など)を代表して水のみを表記するが、これに限定されるものではなく、海水、温水、その他の液体および水蒸気と温水の二層流なども含むものとする。その温度は当該液化ガスよりも高ければよい。すなわち取水したままの海水、河川の水や水道水でもよいが、何らかの廃熱などによって前記流体を人為的に加熱したものでもよい。加熱流体の温度が高いほど、気化性能および発電性能は向上する。
図1から図7に本発明の液化ガス気化器をLNG(液化天然ガス)の気化器に適用した実施の一形態を示す。この液化ガス気化器は、鉛直に設置した伝熱管1の内部を下端から導入された液化ガス26が上昇させられる一方、伝熱管1の外部では伝熱管1の外面に沿って加熱流体27が流れ落ちる構造を成している。そして、伝熱管1の少なくとも下端寄り(符号5で示す領域)の一部または全体に熱電変換モジュール7を設置し、伝熱管1の外部の加熱流体27と内部の液化ガス26との温度差を利用して液化ガス26の気化を行うと同時に熱電変換モジュール7で発電を行うようにしている。ここで、熱電変換モジュール7は、場合によっては伝熱管1の全域即ち下端から上端までの全て面に設けても良いが、液化ガスの気化と発電との両立を考慮すると好ましいのは水の凍結の起こり易い伝熱管1の下端寄りの領域5に少なくとも設けることである。しかしながら、このことは直ちに熱電変換モジュール7を伝熱管1の下端から設置しなければならないことを意味するものではない。そして、伝熱管1の下端寄りの領域5では、その管軸方向の全域に熱電変換モジュール7を設けるようにしても良いが、場合によっては熱電変換モジュール7を設ける領域と熱電変換モジュール7を設けずに伝熱管1を直に露出させる領域とを設けるようにしても良いし、周方向の全域即ち4面の全て(あるいは周面)に熱電変換モジュール7を設けても、あるいは一部の面例えば相対向する2面ないし3面、場合によっては1面に設けるようにしても良い。また、熱電変換モジュール7は場合によっては伝熱管1の下端寄り領域5よりも上の中間領域などに設置されることもある。即ち、熱電変換モジュール7は伝熱管1の少なくとも下端寄り領域5の一部または全体に設置されることが好ましいが、これに特に限られるものではない。尚、実際の液化ガス気化器においては、多数の伝熱管が隙間を空けてカーテン状に配列され上下端のヘッダ2,3で連結されているが、本実施形態の説明では説明の便宜上1本のみを図示する。また、加熱流体27の供給方式としては、給水樋28をオーバーフローすることで伝熱管1の上端付近から外面に沿って流れ落ちる例を説明の便宜上挙げた。また、符号29は流れ落ちた海水である。
本実施形態において、伝熱管1は、外部に伝熱面が全面的に露出した伝熱管4と、外面に熱電変換モジュール7を備えた伝熱管5とを直列に接続したものである。より具体的には、伝熱性能促進のために管の外周面に放射状に伝熱フィン6を備える円形の一般的な伝熱管(本明細書では単にフィン付き伝熱管と呼ぶ。図2参照)4と、外周面に熱電変換モジュールを備えた矩形の伝熱管(本明細書では熱電変換モジュール付き伝熱管と呼ぶ。図3及び4参照)とを直列に接続したものであり、従来一般的なフィン付き伝熱管4の下端の一部を熱電変換モジュール付き伝熱管5に置き換えて直列に接続した構造を成す。このフィン付き伝熱管4と熱電変換モジュール付き伝熱管5とは、特定の材質に限られるものではないが、熱伝導性や耐腐食性などを考慮すればアルミニウム合金などの使用が好適であることから、その接続には例えばイナートガスアーク溶接(TIG溶接)などが用いられ、段差無く溶接される。例えば、図5に示すように、熱電変換モジュール付き伝熱管5の上端にフィン付き伝熱管4と同じ寸法の一部円管部5’を備え、該円管部5’とフィン付き伝熱管4の下端とを溶接する。尚、図中の符号13は溶接部分を示す。
熱電変換モジュール付き伝熱管5は、外形状が矩形断面であり、いずれかの面に熱電変換モジュール7が備えられると共に、各熱電変換モジュール7の周りに断熱材8が配置されて凹凸の無い表面を形成するように設けられている。各熱電変換モジュール7の間に断熱材8が充填されるように配置されることで表面に凹凸がなくなり、熱電変換モジュール7の表面に沿って水が剥離されることなく流れ落ちるようにすることができる。本実施形態の場合、図3及び4に示すように、輪郭形状が矩形の伝熱管5のうち、相対向する2面に熱電変換モジュール7を備え、残る2面には断熱材8が張り付けられて伝熱管5の内外の温度差を熱電変換モジュール7に主に与えて発電させるように設けられている。熱電変換モジュール7は伝熱管5に対しビス9で固定され両者が密着している。
また、熱電変換モジュール7と熱電変換モジュール7との間の軸方向(長手方向)の隙間にも、図4に示すように、熱の短絡を防ぐ断熱材8が設置されている。これにより、液化天然ガス26の冷熱が無駄に海水27に流出しないようにして、伝熱管5の内外の温度差を熱電変換モジュール7に効果的に与えるようにしている。また、この断熱材8は、断熱性能の他に、液化ガスの極低温に対する耐久性、海水などの加熱流体に対する耐食性および耐水性などが要求される。そこで、防水処理を施した木材、樹脂などの使用が好適である。さらに、断熱材8は、熱電変換モジュール7の表面との段差を無くし、水の剥離を防ぐ役割をもつと同時に熱電変換モジュール7のケーブルを収納する役割を有する。
なお、熱電変換モジュール付き伝熱管5の外形状は、平板形状の熱電変換モジュール7を密着して取り付けるために適したものとして選定されたものであって、熱電変換モジュール付き伝熱管5としての形状が当該矩形状に限定される必然性はない。例えば湾曲した板状の熱電変換モジュールを用いる場合には、これに適合した断面形状即ち円管状に形成することも可能である。
また、熱電変換モジュール7は水の侵入を防ぐため、接触する加熱流体27例えば海水などに対する耐食性を有する材料あるいは耐食コーティングを施して成るケースや樹脂などに密閉された構造であることが望ましい。このような熱電変換モジュール7としては、例えば、特開2006−49872に開示されているケース密封型の熱電変換モジュールで容易に実現される。この熱電変換モジュール7は、例えば図7に示すように、少なくとも一対の熱電半導体15を気密のケース20に密封し、加熱側電極部16と、冷熱側電極部17並びに各電極部16,17をそれぞれ覆って受熱部を構成する加熱板20a並びに冷却板19とを備え、加熱板20a並びに冷却板19を各々介して熱電半導体15の加熱側の受熱面と冷熱側の放熱面との間にかけられる温度差により発電するものである。この熱電変換モジュール7は、少なくとも加熱板20aと加熱側電極部16の間には、低摩擦係数の材質からなる熱伝導性を有するシート材あるいは熱伝導性のグリースなどの滑り材18が備えられ、滑り材18を介在させて加熱板20aと加熱側電極部16との間の熱的連結が図られている。冷熱側電極部17は電気絶縁性接着剤21で冷却板19に接着され、導電性接着剤22で半導体15に接着されている。また、加熱側電極部16は、電極層と電気絶縁層を有する傾斜機能材料(FGMコンプライアント・パッド)を用いることにより、滑り材18を介して加熱板20aと接触し、導電性接着剤22で半導体15に接着されているものもある。ただし熱電変換モジュールの構造としてはこれに限定されるものではない。なお、各熱電変換モジュールからは2本の電極が出ている。そして、気密のケース20は、熱伝導性に優れかつ耐食性にも優れる材料例えばアルミニウム合金などで構成され、剛性の高い冷却板19に対して溶接あるいは接着剤、ロウ付けで接合することにより一体化されている。また、ケース20には、例えばその側面部に電気絶縁体23を介して一対の導電部24が貫通するように設けられ、ケース内部の電極部とリード線25を介して接続されている。そして、この電極により各モジュールを互いに直列に接続することにより電気回路が構成される。勿論、電極と電線の接続部は水で濡れないように防水対策が必要である。また電線自体にも防水処理が必要である。尚、ケースに封入された熱電変換モジュールを用いる本実施形態では、電気的に絶縁された状態にあることから、前述の断熱材には特に電気絶縁性は要求されない。
本発明者等の解析によると、アルミニウム合金製のフィン付き伝熱管を垂直にカーテン状に多数設置し、その内部をLNG26が上向きに流れ、外部を海水27が伝熱管表面に沿って流れ落ちる構造の気化器(オープンラック型気化器と呼ばれることもある)の伝熱管では、冬季には、例えば6mのフィン付き伝熱管の下端部約1〜2mに着氷し、着氷最大厚さは約9mmになることがわかった。この着氷は気化能力を損なう原因となっている。そこで、実際に実用に供されている従来のLNG用気化器は、全長6〜8mのアルミニウム合金製のフィン付き伝熱管4が一般的であることから、その下端の一部例えば1〜2m程度を矩形断面の熱電変換モジュール付き伝熱管5に置き換えて直列に接続することが好ましい。この場合、伝熱管としての全長は変わらないが、勿論、伝熱管としての全長を変えても構わない。
フィン付き伝熱管4と熱電変換モジュール付き伝熱管5との接続部10の周りには、図5に示す用に、熱電変換モジュール付き伝熱管5の外面に沿って流れ落ちる加熱流体・海水27が外側に飛散することを防ぐフローガイド11が例えばステー12を介して備え付けられている。このフローガイド11は、本実施形態の場合、熱電変換モジュール付き伝熱管5の輪郭形状に合わせて矩形断面を成す角パイプが採用され、フィン付き伝熱管4と熱電変換モジュール付き伝熱管5との接続部10の周りを一定間隔を空けて覆うようにしている。フローガイド11と断熱材付き矩形伝熱管5の表面との隙間Sは例えば5mm程度が好ましく、この隙間Sが小さすぎると、矩形伝熱管上の熱電変換モジュール7に十分な水を流すことができなくなる。逆にこの隙間Sが広すぎると、熱電変換モジュール7に水を完全に付着させることが出来なくなる。さらに、フローガイド11の長さは長い方が整流効果は高く、短か過ぎると十分な整流が困難となる虞があり、200mm程度で十分と考えられる。そして、フローガイド11の材質としては加熱流体に対する耐食性、例えば海水との耐食性のある金属、または海水との耐食性のある材料をコーティングした材料などが適する。
また、伝熱管5の外面に沿って流れ落ちる加熱流体・海水27が外側に飛散することを防ぐ手段としては、図6に示すように、場合によってはフィン付き伝熱管4と熱電変換モジュール付き伝熱管5との輪郭形状を段差無く連続的に繋ぐ流線形の遷移部14を形成するようにしても良い。流線形の遷移部14は、熱伝導性・耐食性に優れる材質例えばアルミニウム合金などで形成することが好ましい。
上述のフローガイド11あるいは流線形遷移部14の存在は、フィン付き伝熱管4の外面に沿って流れ落ちる水の流れを外側に飛散させることなく、あるいは剥離することなく流れ落ちさせ、熱電変換モジュール付き伝熱管5の外面に沿って流れ落ちるように導く。これにより、フィン付き伝熱管4の外面に沿って勢いよく流れ落ちる加熱流体・海水27は、フィン付き伝熱管4と矩形断面の熱電変換モジュール付き伝熱管5との接続部10における急激な形状変化のために外側に飛散したり、あるいは外面から剥離することなく、熱電変換モジュール付き伝熱管5の外面に沿って流れ落ちるように案内され、熱電変換モジュール7の表面に沿って流れる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、矩形断面の伝熱管5の相対向する2面(カーテン状に配置されて隣接する伝熱管同士が対向する面を除く)に熱電変換モジュール7を配置した例を挙げて主に説明したが、これに特に限定されるものではなく、伝熱管1同士のピッチ(配置間隔)及び熱電変換モジュール7の厚さの関係で、隣接する伝熱管1の間に熱電変換モジュール7を設置するに十分なスペースが確保できれば、4つの面の全てに熱電変換モジュール7を配置するようにしても良い。また、加熱流体27としては、海水や真水などの単一の液体に限られず、海水、水、温水、その他の液体および水蒸気と温水の二層流なども含むものとする。その温度は当該液化ガスよりも高ければよい。すなわち取水したままの海水、河川の水や水道水でもよいが、何らかの廃熱などによって前記流体を人為的に加熱したものでもよい。加熱流体の温度が高いほど、気化性能および発電性能は向上する。
液化ガス気化器としての性能を確認するため、本発明にかかる液化ガス気化器の伝熱管と従来型伝熱管として一般的な全長6mのアルミニウム合金製のフィン付き伝熱管と対比した。具体的には、図1〜図4に示すような構造で、長さ5mのアルミニウム合金製のフィン付き伝熱管4と長さ1mのアルミニウム合金製の熱電変換モジュール付き伝熱管5とを直列に連結して、同じ長さのフィン付き伝熱管のみとした従来型伝熱管と氷結の有無と発電の有無について実験をした。
ここで、フィン付き伝熱管4は、外径35mm、内径23mm、肉厚6mmの円形を成し、付け根部分の厚み約4mm、高さ8mmのフィンを平行に10枚設けたものを使用した(特許第3439644号)。他方、熱電変換モジュール付き伝熱管5は、50mm角の矩形伝熱管(内径23mm)である。これには約50mm角の熱電変換モジュール7を26個設置(一面とその対向面に各13個設置)可能だが、本実験では片面に6個のみ設置し、残りの他の2面には断熱材8として防水処理を施した木材をビス止めにより張り付けた。また、上下の熱電変換モジュール7の間にも防水処理を施した木材8をビス止めにより張り付けた。これにより、断熱材8としての木片の間に熱電変換モジュールが面一となるように埋め込まれた構造とした。
さらに、熱電変換モジュール付き伝熱管5の上端にはフィン付き伝熱管4と同じ寸法の一部円管部5’を備え、フィン付き伝熱管4の下端と段差無く接合した。接合はイナートガスアーク溶接(TIG溶接)で行った。
フィン付き伝熱管4の下端に熱電変換モジュール付き伝熱管5を直列に接続しただけの伝熱管を対象とした実験装置を図8に示す。この装置に海水が室内に飛散しないように透明のパイプを被せてから海水を流れ落ちさせた状態を図9に示す。図9に示すように、フィン付き伝熱管4の外面に沿って流れ落ちてきた海水は、熱電変換モジュール付き伝熱管5との接続部10の段差に衝突して大きく飛散し、熱電変換モジュール7の表面から流れが剥離する状態が確認された。
そこで、図5に示すように、フィン付き伝熱管4と熱電変換モジュール付き伝熱管5との接続部10の周りには、フローガイド11を配置した。この実験装置を図10に示す。実験に用いたフローガイド11は、内部の水の動きを視認できるように透明な樹脂製角パイプを用いた。フローガイド11は、内寸80mm角、高さ200mmで、フローガイド11と熱電変換モジュール付き矩形伝熱管5との隙間を5mmとした。
以上の構成の1本の伝熱管に代表される液化ガス気化器を模擬した実験装置に対して、海水入口温度10℃、液化天然ガス入口温度−155℃、気化した天然ガスの出口温度0℃の冬季温度条件における気化性能と発電性能について確認した。ただし本実験では安全性の観点で、液化天然ガスの代わりに液体窒素を使用した。液体窒素は−196℃のため、その流量の調節により液化天然ガスの入り口温度−155℃を実現できる。また海水の代わりに水道水を使用した。ここで、液化天然ガスの供給量は1.5リットル/min、水の落下流量は1.5kg/sとした。また、室温は18℃であった。
この実験の結果、フローガイド11の設置により、フィン付き伝熱管の外面に沿って流れ落ちてきた水は、図11に示すように、矩形伝熱管5部分でも水が熱電変換モジュール7の表面に沿って流れることが確認された。また流線型遷移部14を設置した場合にも、フィン付き伝熱管の外面に沿って流れ落ちてきた水は、図13に示すように、矩形伝熱管5部分でも水が熱電変換モジュール7の表面に沿って流れることが確認された。
また、設置した6個の熱電変換モジュールの出力に基づき、本来設置可能な26個分の出力を推定すると、約60Wの発電が可能であることが判明した。したがって、このような伝熱管を例えば500本備えるLNG気化器の場合、30kW (=60W×500本) の発電が可能となる。
一方、本実験では、着氷は生じなかった。しかも、気化能力は従来型伝熱管の場合と同等であった。したがって、本発明の液化ガス気化器では、気化器の性能を損なうことなく発電が可能であることが証明された。
次に、図6に示すように、フィン付き伝熱管4と熱電変換モジュール付き伝熱管5との接続部10の周りに流線形の遷移部14を形成した。この実験装置を図12に示す。実験に用いた流線形の遷移部14は、フィン付き伝熱管4と熱電変換モジュール付き矩形伝熱管5との輪郭を連続的に繋ぐ円錐形状を成す。
同装置において、前述と同じ冬季温度条件における気化性能と発電性能について確認した。この実験の結果、流線形の遷移部14の設置により、フィン付き伝熱管4の外面に沿って流れ落ちてきた水は、図13に示すように、矩形伝熱管5部分でも水が熱電変換モジュール7の表面に沿って流れることが確認された。また、発電並びに着氷の有無についても、図10の実験装置と同じ結果が得られた。
また、フィン付き伝熱管4は図2に示すものに限られず、例えば図14に示すようなフィン形状の伝熱管を用いることも可能である。
本発明の液化気化器の伝熱管の構造の一実施形態を示す概略図である。 フィン付き伝熱管の軸直角断面図である。 熱電変換モジュール付き伝熱管の軸直角断面図である。 熱電変換モジュール付き伝熱管の軸断面図である。 フィン付き伝熱管と熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部の拡大図で、フローガイドを設置した状態を示す。 フィン付き伝熱管と熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部の拡大図で、流線形の遷移部を形成した状態を示す。 防水型の熱電変換モジュールの一例を示す縦断面図である。 本発明にかかる液化ガス気化器の性能を確認する実験装置を示す図で、フィン付き伝熱管と熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部の周りに何も設けない状態を示す。 図8の実験装置において、伝熱管の上端部から水を流した状況を示す。 本発明にかかる液化ガス気化器の性能を確認する実験装置を示す図で、フィン付き伝熱管と熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部の周りにフローガイドを設けた状態を示す。 図10の実験装置において、伝熱管の上端部から水を流した状況を示す。 本発明にかかる液化ガス気化器の性能を確認する実験装置を示す図で、フィン付き伝熱管と熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部の周りに流線形の遷移部を形成した状態を示す。 図12の実験装置において、伝熱管の上端部から水を流した状況を示す。 フィン付き伝熱管の他の実施例の軸直角断面図である。
符号の説明
1 伝熱管
4 フィン付き伝熱管
5 熱電変換モジュール付き伝熱管
7 熱電変換モジュール
8 断熱材
10 フィン付き伝熱管と熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部
11 フローガイド
14 流線形の遷移部
26 液化ガス(液化天然ガス)
27 加熱流体(海水)

Claims (3)

  1. 鉛直に設置した伝熱管の内部を下端から導入された液化ガスが上昇させられる一方、前記伝熱管の外部では前記伝熱管の外面に沿って加熱流体が流れ落ちる構造の気化器において、
    前記伝熱管は、外部に伝熱面が全面的に露出した伝熱管と、外面に熱電変換モジュールを備えた伝熱管とを直列に接続したものであり、
    かつ前記熱電変換モジュール付き伝熱管は、外形状が矩形断面であり、いずれかの面に熱電変換モジュールが備えられると共に、各熱電変換モジュールの周りに断熱材が充填されて凹凸の無い表面を形成しており、
    前記伝熱管の少なくとも下端寄りの一部または全体に前記熱電変換モジュール付き伝熱管を設置し、前記伝熱管の外部の前記加熱流体と内部の前記液化ガスとの温度差を利用して前記液化ガスの気化を行うと同時に前記熱電変換モジュールで発電を行う液化ガス気化器。
  2. 前記伝熱面が全面的に露出した伝熱管と前記熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部の周りに、前記伝熱管の外面に沿って流れ落ちる前記加熱流体が外側に飛散することを防ぐフローガイドを設けたものである請求項1記載の液化ガス気化器。
  3. 前記伝熱面が全面的に露出した伝熱管と前記熱電変換モジュール付き伝熱管との接続部に、両伝熱管の輪郭形状を段差無く連続的に繋ぐ流線形の遷移部を形成するものである請求項1記載の液化ガス気化器。
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