JP5148804B2 - 癌の治療に特に有用な免疫擬装の方法及び薬学的組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、免疫系の擬装によって対象細胞、特に癌細胞を特異的且つ最も効率的に破壊する、免疫療法における新規な概念に関する。なお、本明細書では、括弧内のアラビア数字により種々の先行文献を引用するが、これら先行文献の書誌的事項の詳細については、本明細書の末尾に記載された先行文献リストを参照されたい。
癌患者における腫瘍の進行が免疫系によって抑えられるという有力な証拠が存在する。この結論は、腫瘍の進行に付随して、免疫抑制因子の分泌及び/又はMHCクラスI抗原提示機能のダウンレギュレーションが起こることが多い(1〜5)との観察に基づくものである。腫瘍は、見かけ上有効な免疫応答から逃れるための巧緻な戦略を有しているはずであると推論される。重要なことは、腫瘍特異的免疫応答を個体中に検出することができるということである(6〜8)。
抗腫瘍免疫応答の効率が明確に低下すると、疾患に打ち勝つことができなくなることが基礎となって、現在の免疫療法という考え方が打ち立てられた。計画的なワクチン接種や他の免疫療法的手法により抗腫瘍免疫応答を増強することによって、免疫を利用した治療法によって得られるはずの利点を強化することができると思われる(6、9〜11)。
適応免疫応答のMHCクラスI拘束性CD8細胞傷害性T細胞(CTL)エフェクターアーム(effector arm)は、腫瘍を異物として認識し、腫瘍の破壊をもたらす一連の現象を開始するのに最も優れた機能を発揮する(12、13)。したがって、癌免疫療法における最も魅力的なアプローチは、抗腫瘍応答のCTLアームを増強することによって、腫瘍がCTLを回避する機序を克服するように設計されたワクチン接種戦略に中心が置かれる(9〜11)。
腫瘍細胞が免疫攻撃を逃れる逃避機序のうち最もよく研究された機序の1つが、CTLによって認識される抗原であるMHCクラスI分子のダウンレギュレーションによるものである(1〜5、14)。
クラスI提示経路中の突然変異は、1つ又は2つの突然変異現象(両方の対立遺伝子を失活させる2つの突然変異、又はドミナントネガティブなインヒビターを産生する1つの突然変異)によって起こり得るので、CTLによる排除を腫瘍が回避する最も簡単な方法のはずである(1〜3)。
MHCクラスI発現のダウンレギュレーションはヒト腫瘍において頻繁に観察され、転移性の病変部において特に顕著である(3、14〜17)。これは間接的な証拠ではあるが、癌患者における腫瘍の進行の制御にCTLが役割を示している極めて有力な証拠である。MHCクラスI発現は、外科的に取り出された腫瘍試料において免疫組織化学的方法を用いて主に解析されてきた(14〜15)。全てのMHC分子を含む又は特定の対立遺伝子に限定された、MHCの部分的な減少又は完全な消失が報告されている(14〜15)。MHCの消失はいくつかの病変部で観察される場合があるが、同一患者の全ての病変部で観察されるわけではない。MHCクラスI発現のダウンレギュレーションは、β2−ミクログロブリン(β2−m)、抗原提示関連トランスポーター(TAP)タンパク質又はプロテオソームLMP−2及びLMP−7タンパク質中の突然変異に起因する(2、18〜21)。CTLによって媒介される排除を腫瘍が回避する機序としてMHCクラスI発現の消失を示唆する別の証拠は、メラノーマ患者の長期的な研究からも得られている。初回の手術中に取り出された腫瘍細胞は、4つの別個のHLAクラスI対立遺伝子に拘束される9個の異なる抗原をこの患者から樹立されたCTLクローンに提示した(1)。この患者は5年間発症せずにいたが、後に転移が認められた。転移性病変部から樹立された細胞系が、メラノーマ抗原を提示することが以前には認められていた4つの対立遺伝子すべてを失っていたことは注目に値する。
したがって、クラスIMHC分子のダウンレギュレーションは、癌免疫療法及び抗癌ワクチンの適用に制約を与える重大な問題である。したがって、上記制限のない新規な免疫療法的手法、すなわち癌細胞によるMHCクラスI分子の発現レベルに無関係な免疫療法的手法に対して一般に認識された要望があり、そのような手法を持つことは極めて有利なはずである。
発明の概要
適応免疫応答のMHCクラスI拘束性CD8細胞傷害性T細胞(CTL)エフェクターアームは、腫瘍細胞を異物として認識し、腫瘍を破壊に至らしめる一連の現象を開始するのに最も優れた機能を発揮する。しかし、腫瘍は、免疫エフェクター機構を回避するための巧妙な戦略を構築しており、その中で最もよく研究されているのが、CTLによって認識される抗原であるMHCクラスI分子のダウンレギュレーションである。
これを克服し、新しい免疫療法のための手法を開発するために、また、本発明を実施するために、癌特異的組換え抗体断片に、又は腫瘍細胞が発現する受容体に結合するリガンドに一本鎖MHCを融合することによって、腫瘍細胞に特異的にターゲッティングされる組換え分子が構築された。本発明の分子の一例として、抗IL−2受容体αサブユニット特異的ヒト化抗体、抗Tac(aTac)の可変ドメインに一本鎖HLA−A2分子を遺伝子融合した。B2M−aTac(dsFv)と称するこの構築体は大腸菌で発現され、HLA−A2拘束性抗原ペプチドの存在下におけるインビトロでのリフォールディングによって機能性分子が生成された。フローサイトメトリー試験によって、ターゲッティング抗体断片の特異性に完全に依存する様式で、抗原陽性HLA−A2陰性のヒト腫瘍細胞をHLA−A2ペプチド複合体で修飾できることが明らかになった。最も重要なことは、B2M−aTac(dsFv)を媒介にして標的腫瘍細胞を被覆することによって、HLA−A2拘束性メラノーマgp100ペプチド特異的CTLにより媒介される効率的で特異的な溶解を腫瘍細胞が受けやすくなったことである。これらの結果は、MHC−ペプチド複合体を抗体で誘導して、腫瘍細胞の上に腫瘍抗原特異的にターゲッティングすることによって、腫瘍細胞に感受性を与え、CTLによる死滅を増強することができるという考え方を実証するものである。この新規な手法によって、天然同族MHCリガンドの抗体ターゲティング及びCTLに基づく細胞傷害性機序を基にした新しい免疫療法戦略を開発する道が開かれる。
このようにして、本発明を実施に移している間に、標的腫瘍細胞によるクラスIMHC発現の程度に無関係に、腫瘍細胞表面のクラスIMHC−ペプチド複合体を新たに誘導し直す新規戦略が開発された。この目的のために、本発明の一実施態様では、免疫系の2本のアームを融合させて使用した。1本のアームは、ターゲティング部分であり、腫瘍に対する抗体、あるいは放射性同位体、毒素又は癌細胞に対する薬物を標的に誘導するために長年用いられてきた分化抗原に対する抗体の腫瘍特異的組換え断片を備えている(22、23)。第2のエフェクターアームは、HLA−A2重鎖の3つの細胞外ドメインに結合したヒトβ2−ミクログロブリンで構成される単鎖MHC分子(scMHC)である(24、25、国際公開第01/72768号)。2つの分子を結合して単一の組換え遺伝子にし、その遺伝子を発現させる。前記新規分子は、大腸菌の中で効率良く発現され、例えば、HLA−A2拘束性ペプチドの存在下インビトロでの再折り畳みによって生成される。この手法は、本明細書に示すように、標的腫瘍細胞のMHC発現レベルにかかわらず、標的細胞腫瘍を細胞傷害性T細胞によって溶解し易くし、したがって、CTLによって媒介される抗腫瘍免疫を増強する新しい手法として使用することができる。この新規な手法は、天然同族MHCリガンド及びCTLに基づく細胞傷害性機序を利用して腫瘍細胞を選択的に死滅させ排除することが可能な新しいクラスの組換え治療薬の開発をもたらすものである。
本発明の一側面によれば、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと該可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインに連結(link)されているターゲッティングドメインとを備えた免疫分子が、提供される。
このように、本発明の別の側面によれば、免疫分子をコードする核酸構築体であって、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、ターゲッティングドメインをコードする第二のポリヌクレオチドとを備え、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと前記抗体ターゲッティングドメインが、必要に応じてその間に介在されるペプチドリンカーを介して、翻訳時に融合されるように、前記第一のポリヌクレオチドと前記第二のポリヌクレオチドが選択され且つ連結されている、核酸構築体が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、免疫分子をコードする核酸構築体であって、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、抗体ターゲッティングドメインの軽鎖又は重鎖のうち一方の可変領域をコードする第二のポリヌクレオチドとを備え、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと前記抗体ターゲッティングドメインの軽鎖及び重鎖のうち一方の可変領域が、必要に応じてその間に介在されるペプチドリンカーを介して、翻訳時に融合されるように、前記第一のポリヌクレオチドと前記第二のポリヌクレオチドが選択され且つ連結されており、且つ前記抗体ターゲッティングドメインの前記軽鎖及び重鎖のうち前記一方とは別の鎖をコードする第三のポリヌクレオチドを備える、核酸構築体が提供される。
本発明のさらなる側面によれば、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、抗体ターゲッティングドメインの軽鎖又は重鎖のうち一方の可変領域をコードする第二のポリヌクレオチドとを備える第一の核酸構築体であって、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと前記抗体ターゲッティングドメインの軽鎖及び重鎖のうち一方の可変領域が、必要に応じてその間に介在されるペプチドリンカーを介して、翻訳時に融合されるように、前記第一のポリヌクレオチドと前記第二のポリヌクレオチドが選択され且つ連結されている第一の核酸構築体と、前記抗体ターゲッティングドメインの前記軽鎖と重鎖のうちの前記一方とは別の鎖をコードする第三のポリヌクレオチドを備える第二の核酸構築体とを備える、核酸構築体系が提供される。
本発明のさらなる側面によれば、抗原(例えば、受容体)を提示する患者中の細胞を選択的に死滅させる方法であって、MHC拘束性ペプチドと複合体を形成した可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと、該可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインに連結されたターゲッティングドメインであり前記抗原に選択的に結合させるためのターゲッティングドメインとを備えた免疫分子を前記患者に投与することにより、前記MHC拘束性ペプチドと複合体を形成した前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインが前記細胞に対するCTL媒介性免疫応答を開始させて、前記細胞をインビボで選択的に死滅させることを備えた方法が提供される。
以下に記載されている本発明の好ましい実施態様のさらなる特徴によれば、前記ターゲッティングドメインは、抗体ターゲッティングドメインである。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記ターゲッティングドメインは、リガンドターゲッティングドメインである。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記リガンドターゲッティングドメインが、PDGF、EGF、KGF、TGFα、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6、VEGF及びその誘導体、並びにTNFからなる群から選択される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと前記抗体ターゲッティングドメインは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、前記エフェクタードメインに連結された抗体の軽鎖の可変領域を備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体の軽鎖の可変領域と前記エフェクタードメインは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、前記抗体の軽鎖の可変領域に連結された抗体の重鎖の可変領域をさらに備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体の重鎖の可変領域と前記抗体の軽鎖の可変領域は、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体の重鎖の可変領域は、ペプチドリンカーを介して、前記抗体の軽鎖の可変領域に連結される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、抗体の重鎖の可変領域は、少なくとも1つのS−S結合を介して、抗体の軽鎖の可変領域に連結される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、前記エフェクタードメインに連結された抗体の重鎖の可変領域を備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体の重鎖の可変領域と前記エフェクタードメインは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、抗体の重鎖の可変領域に連結された抗体の軽鎖の可変領域をさらに備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、抗体の軽鎖の可変領域と抗体の重鎖の可変領域は、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、抗体の軽鎖の可変領域は、ペプチドリンカーを介して、抗体の重鎖の可変領域に連結される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、抗体の軽鎖の可変領域は、少なくとも1つのS−S結合を介して、抗体の重鎖の可変領域に連結される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、腫瘍関連抗原に結合することが可能である。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、腫瘍特異抗原に結合することが可能である。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインは、機能的ヒトβ−2ミクログロブリンと、該ミクログロブリンに連結された機能的MHCクラスI重鎖とを備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記機能的ヒトMHCクラスI重鎖がドメインα1−3を備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記機能的ヒトβ−2ミクログロブリンと前記機能的ヒトMHCクラスI重鎖は、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインは、MHC拘束性ペプチドをさらに備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記MHC拘束性ペプチドは、前記機能的ヒトβ−2ミクログロブリンに連結されている。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記MHC拘束性ペプチドと前記機能的ヒトβ−2ミクログロブリンは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記MHC拘束性ペプチドは、前記機能的ヒトMHCクラスI重鎖と複合体を形成している。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記MHC拘束性ペプチドは、共通の病原体に由来する。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記MHC拘束性ペプチドは、活性なワクチン接種法が存在する病原体に由来する。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記MHC拘束性ペプチドは、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原に由来する。
以下に記載されている本発明の好ましい実施態様のさらなる特徴によれば、本発明に記載されている核酸構築体は何れも、コーディングポリヌクレオチドに作用可能に連結された少なくとも1つのシス作用制御配列をその中にさらに備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記シス作用制御配列は、細菌中で機能的である。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記シス作用制御配列は、酵母中で機能的である。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記シス作用制御配列は、動物細胞中で機能的である。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記シス作用制御配列は、植物細胞中で機能的である。
本発明のさらに別の側面によれば、本明細書に記載されている何れかの核酸構築体又は核酸構築体系を備えた形質転換細胞が提供される。
以下に記載されている本発明の好ましい実施態様のさらなる特徴によれば、前記細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞、及び原虫細胞からなる群から選択される真核細胞である。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記細胞は、細菌細胞である。
本発明のさらなる側面によれば、本明細書に記載されている免疫分子を30重量%超含む細菌由来の封入体の単離された調製物が提供される。
本発明のさらなる側面によれば、免疫分子の製造方法であって、機能的ヒトβ−2ミクログロブリンと該ミクログロブリンに連結された機能的ヒトMHCクラスI重鎖とを含む可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインに連結されているターゲッティングドメインとを備えた免疫分子を、細菌中で発現させることと、前記免疫分子を単離することと、を備えた方法が提供される。
以下に記載されている本発明の好ましい実施態様のさらなる特徴によれば、免疫分子は、機能的ヒトβ−2ミクログロブリンに連結されたMHC拘束性ペプチドをさらに備え、前記方法は、前記免疫分子をリフォールディングすることによって、MHCクラスI−MHC拘束性ペプチド複合体を生成させることをさらに備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記免疫分子の単離は、サイズ排除クロマトグラフィを介して行われる。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、MHC拘束性ペプチドは、前記細菌中で免疫分子と同時発現される。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、細菌中での前記免疫分子の発現は、前記免疫分子が前記細菌中で封入体を形成するように行われる。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記MHC拘束性ペプチドと前記分子が前記細菌中で封入体を共同形成(co−form)する。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記免疫分子の単離は、前記封入体を変性させて封入体からタンパク質分子を放出させる工程と、前記タンパク質分子を再生させる工程とをさらに備える。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記タンパク質分子の再生は、MHC拘束性ペプチドの存在下で行われる。
前記好ましい実施態様のさらに別の特徴によれば、前記MHC拘束性ペプチドは、細菌中で同時発現される。
本発明は、癌を治療する新規手段を提供することによって、現在公知の構成の欠点を上手く解決することを目的とする。
添付図面を参照しながら、本発明について説明するが、これらの説明は例示にすぎない。ここでは、図面が詳しく具体的に参照されているが、図示されている項目は例として示されているのであって、本発明の好ましい実施態様を例示的に説明するためのものにすぎず、本発明の原理と概念的な側面について、最も有用で且つ理解が容易であると思われる説明を与えるために提示されていることを強調しておく。この点に関し、本発明の基本的な理解に必要とされる限度を超えて、本発明の構造的な細部を詳細に示すことは意図されていない。当業者は、以下の説明を図面と合わせ読むことによって、本発明の複数の形態を実際にどのように実施することができるかについて明らかとなるであろう。
好ましい実施態様の説明
本発明は、(1)新規免疫分子、(2)該免疫分子を調製する方法、(3)該免疫分子をコードする核酸構築体、及び(4)細胞、特に癌細胞を選択的に死滅させるために該免疫分子を用いる方法の発明である。
本発明の原理と操作は、図面及び添付の説明を参照することによって、よりよく理解されるであろう。
本発明の少なくとも1つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明の適用が、以下の説明に記載され又は実施例に例示された具体的内容に限定されるものではないことを理解しなければならない。本発明には、他の実施態様も存在し得るし、本発明は、様々な態様で実施又は実行することができる。また、本明細書で用いた語法及び用語は、説明を目的とするものであり、限定を意図したものとみなしてはならないことを理解すべきである。
腫瘍の進行に付随して、免疫抑制因子の分泌及び/又はMHCクラスI抗原提示機能のダウンレギュレーションが起こることが多い(1〜5、14、15)。腫瘍は、明らかに有効な免疫応答を逃れる巧緻な戦略を有するはずであると推論される。抗腫瘍免疫応答を刺激することができるワクチンの開発に向けて大きな進歩がなされるには、あるタイプの腫瘍に付随するタンパク質抗原を同定し、HLAクラスI及びクラスII拘束性結合モチーフに関して腫瘍抗原のエピトープマッピングを行うことが必要であり、現在、様々なワクチン接種計画において用いられている(6、9、11〜13)。CTLによる認識と殺傷のための特異的なシグナルを与えるには、適切なペプチドを提示するMHCクラスI分子が必要である。しかしながら、腫瘍の本質的な逃避メカニズムは、HLAプロフィールの喪失、ダウンレギュレーション、又は改変であって、これによって、仮に細胞が適切な腫瘍抗原を発現していても、標的細胞はCTLによる溶解に反応しなくなることがある。ヒトの腫瘍では、HLAの喪失は50%にも及んでいる可能性があり、タンパク質レベルの低下によって、腫瘍細胞が生存し易くなるかもしれないと考えられる(14、15)。
本発明は、この問題を回避するための新規アプローチを提供する。本発明を実施しようとする際に、クラスIMHC−ペプチド複合体を腫瘍細胞上に腫瘍特異的にターゲッティングすることが、適切なHLA−A2拘束性CTLによる溶解に対する感受性を、HLA−A2陰性細胞に与えるための有効且つ効率的な戦略であることが示された。CTLを腫瘍細胞に改めて誘導し直すというこの新しい戦略では、腫瘍マーカー(抗原、例えば、受容体)を発現しており、形質転換された表現型(成長因子受容体、分化抗原等)を一般に伴う悪性細胞上に、比較的高度の特異性をもって局在することができる組換え抗体断片又はリガンドを活用している。本発明を実施する際に用いられた腫瘍ターゲッティング組換え抗体断片は、抗原結合を保持するために必要な抗体の最小機能モジュールであるFv可変ドメインから構成されていた。前記組換え抗体断片のサイズが小さく腫瘍透過性が向上しているので、これによって、組換え抗体断片は、本明細書に記載されている分子を作製するための臨床応用において有用であるのみならず、組換えFvイムノトキシン又は組換え抗体サイトカイン融合体(37、38)等の他の抗体融合タンパク質を作製するための臨床応用においても極めて有用なものとなる。
前記抗体ターゲッティング断片又はターゲッティングリガンドは、HLA−A2拘束性ペプチドの周囲に効率的且つ機能的にフォールディングすることができる一本鎖HLA分子に融合される。このアプローチは、他の主要なHLA対立遺伝子や前記組換え抗体断片によって決定される多くのタイプの腫瘍特異性に拡張することが可能であり、これにより、抗腫瘍活性を増大及び増強するために使用し得る免疫治療剤の新規ファミリーが与えられる。癌治療用モノクローナル抗体の利用であると同時に、このアプローチは、抗腫瘍抗体と細胞媒介性免疫療法との結合と考えることもできる。
既に、組換え抗体を使用して、一方の抗体アームが腫瘍特異的抗原に対して誘導されており、他方のアームがエフェクター細胞関連分子(CTLの場合CD3、NK細胞の場合CD16)に対して誘導されている二重特異性抗体という古典的なアプローチを用いたT細胞の再誘導が行われている(39)。
腫瘍細胞に結合するリガンドは、様々なトキシンを腫瘍細胞にターゲッティングするためにも既に使用されている。例えば、EGF、TGFα、IL−2、及びIL−3に関して参考文献50−52を参照されたい。
本発明のアプローチの主要な利点は、均一な形態で大量に製造することができる組換え分子を用いることである。重要なことは、(任意の抗体dsFV断片を用いて作製される)約65kDaというB2M−dsFV分子のサイズは、一方では腫瘍への良好な侵入性に必要とされる要件に関して最適であり、他方では比較的長い半減期と安定性に関して最適であるということである(40)。抗体−クラスI MHCテトラマーの作製を記載する最近の研究が公表され、この研究では、Fab−ストレプトアビジン−MHCテトラマーコンジュゲートを用いると、腫瘍標的細胞がCTLによって効率的に死滅することが観察された(41)。本明細書に記載されている組換え抗体断片−単量体scMHC融合物と比較した場合の、このアプローチの限界は、これらの分子のサイズが約400kDaと大きいこと、可溶性MHCテトラマーはT細胞活性化それ自体を誘導することができるのに対して、単量体MHC分子は、局所濃度が比較的高くなければ、活性化を誘導することができないことである(42−44)。
通常形質転換過程に関与している腫瘍細胞上の標的(最も古典的な例は本明細書で使用したIL−2Rのような成長因子受容体である)を使用しながら、このターゲッティングアプローチを用いることによって、固有のMHC発現がダウンレギュレートした腫瘍細胞をコーティングすると、CTLによる細胞の死滅が強化される。標的とされる受容体は癌細胞の中心的な生存機能に直接関与しているので、このアプローチを用いると、前記受容体をダウンレギュレートしている回避変異体は増殖に関して有利でなくなる可能性があるという考えも、この事実から支持される。
本明細書に記載した抗体アプローチの別の利点は、所望のペプチド特異性の周囲にこれらの新規因子をデザインできること、すなわち、任意の適切なMHC拘束性ペプチドの周囲にB2M−Fv分子のリフォールディングが行われ得ることである。本明細書に記載されている実施例では、メラノーマ分化抗原gp100に由来するT細胞エピトープを認識するHLA−A2拘束性腫瘍特異的CTLを用いた。しかしながら、腫瘍細胞を死滅させるために誘導し直される抗原反応性CTLの種類は、健康な状態と病気の状態での免疫機構に関する最近の知識に基づいて、他の抗原性ペプチドによって規定され得る。例えば、患者の中に腫瘍特異的CTL反応が同定されれば、これらが標的とするのに効率的であり得ることが示唆されるかもしれない。しかしながら、これらの腫瘍特異的CTLは極めて低い頻度で存在するにすぎないことが多いか、あるいは、高い頻度で存在する場合でも、機能を有していないか、アネルギー性でないことがあるので、常に最適であるとは限らないことが、最近の研究によって実証されている(7)。このため、優れた記憶応答を引き出すこともできる、一般的且つ極めて免疫原性の高いT細胞エピトープ(ウイルス又は細菌毒素に由来するものなど)に対して誘導された循環リンパ球から、より活性が高く有望なCTL源を動員することができる(45、46)。インフルエンザ、EBV、CMVエピトープ(ペプチド)に対して誘導されたCTL前駆体が、健康な個体のみならず癌患者の血液循環の中にも高い頻度で保持されており、これらのCTLが一般に活性を有し、記憶表現型であることが示されている(45、46)。このため、これらのCTLは、このようなウイルス由来のエピトープとともに付与される、作製したB2M−Fv分子の使用を通じて、腫瘍細胞に誘導し直す選択肢となるだろう。最適な因子は、ペプチドをβ−2ミクログロブリンのN末端に接続する柔軟なリンカーを用いて、抗原性ペプチドが複合体にも共有結合されているB2M−Fv分子である。安定化ペプチドが共有結合によって接続されており、MHCのペプチド結合溝を容易に離脱することができないので、この構築体では、インビボにおけるscMHC複合体の最適な安定性が確保されるであろう。このタイプの一本鎖ペプチド−MHC分子は、様々な機能的研究及び構造的研究のために、マウス及びヒトの系において以前に作製されている(47、48)。さらに、HLA結合溝への親和性が増加するように、「係留残基(anchoring residue)」の箇所が修飾を受けている抗原性ペプチド誘導体を使用することも選択できる。
ターゲッティング成分として使用すべきFv断片の種類にも幾つかの選択肢が存在する。本発明を実施する際に用いられたdsFvタイプの断片の他に、ペプチドリンカーを介して抗体VHドメインとVLドメインが接続されている一本鎖Fv断片(scFV)を使用することができる。このような場合には、B2M−Fv分子は1つのプラスミドによってコードされており、これにより、単一ドメインのB2M分子の混入が回避される。
本発明者ら以外の者によって裏付けられている本発明の重要な別の側面は、標的腫瘍細胞の自己アクセサリー分子が存在し、このようなCTLによる死滅において役割を果たしているかどうかが明らかでなくても、膜貫通固着を行わずに腫瘍細胞の表面上に抗原性MHC−ペプチド複合体をコーティングすれば、特異的なCTLによる効率的な溶解を十分誘導できるという事実である。この観察は、ある特定のT細胞エピトープ(ペプチド)を提示するコートされたMHC−ペプチド複合体が、細胞の表面上に提示されるこのような複合体の天然密度を大幅に超過して、局所的に高濃度で標的細胞上に形成されるという事実から得られている。IL−2Rαサブユニットの場合には、細胞上に存在することが予測される1つの特定のペプチドを含有する複合体が極めて少ないのに比して、細胞当り数百乃至数千の部位が標的細胞上に存在しているので、アクセサリー分子の関与がなくても、有効且つ効率的に死滅させるのに十分であろう。これには、クラスI MHC発現のダウンレギュレーションが逃避機構として考慮されていない。アクセサリー分子がなくても、MHCテトラマーによってCTLの活性化が単一細胞レベルで起こり得るという最近の観察(Cohen、Denkberg、Reiter、投稿中)も含む、MHCテトラマーが単独でT細胞の活性化を誘導することができるという知見(44)を通じて、この可能性を支持する裏付けがさらに見出されている。
結論的には、本明細書に記した結果は、癌特異抗原又は癌特異的リガンドで誘導されるscMHC−ペプチド複合体のターゲッティングを介して腫瘍細胞を死滅させるために、活性なCTLを動員する本発明のアプローチの有用性を明確に実証している。これらの結果は、腫瘍細胞に再度誘導し直される天然の細胞免疫応答を基礎とした新規免疫療法のアプローチの開発に未知を開くものである。
本発明のある側面によれば、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと、該可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインに連結されているターゲッティングドメイン(抗体ターゲッティングドメイン又はリガンドターゲッティングドメインの何れか)とを備える免疫分子が提供される。好ましくは、該免疫分子は、100kDa以下の分子量を有する。前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと前記ターゲッティングドメインは、好ましくは(必要に応じて、翻訳時にされその間に介在されるペプチドによって)翻訳時に融合される。しかしながら、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインとターゲッティングドメインを共有結合させる別の方法も以下に記載されている。
図6には、(i)−(xiv)として表されている、本発明の好ましい免疫分子が幾つか示されている。全ての分子は、機能的ヒトMHCクラスI重鎖(好ましくはドメインα1−3を備える)に連結された機能的ヒトβ−2ミクログロブリンを含んだ一本鎖の可溶性MHCを備えている。前記機能的ヒトβ−2ミクログロブリンと前記機能的ヒトMHCクラスI重鎖は、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合されることが好ましい。しかしながら、以下にさらに詳述されているように、前記機能的ヒトβ−2ミクログロブリンと前記機能的ヒトMHCクラスI重鎖は、これ以外の様式で、互いに共有結合させることも可能である。
本明細書で使用する「機能的(functional)」という用語は、一本鎖MHCクラスI複合体のβ−2ミクログロブリンと重鎖ポリペプチドに関して用いるときには、機能的な一本鎖MHCクラスI複合体の集合に寄与することができる(すなわち、複合体を形成したときに、特異的なMHC拘束性抗原性ペプチドを結合し、CTLに提示することができる)、夫々の任意の部分を指す。
本明細書において、「翻訳時に融合される(translationally fused)」という用語と「インフレーム(in frame)」という用語は互換的に使用され、結合されたポリヌクレオチドのコード配列の全長にまたがる単一の連続したオープンリーディングフレームを形成するように共有結合されているポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドを指す。このようなポリヌクレオチドは、直接共有結合することができるし、あるいは、好ましくは、リンカーペプチドをコードするスペーサー又はリンカー領域を介して間接的に共有結合することもできる。
分子(i)−(vi)と(xiii)は、共有結合されたMHC拘束性ペプチドをさらに備えている。MHC拘束性ペプチドは、機能的ヒトβ−2ミクログロブリンに連結されることが好ましい。MHC拘束性ペプチドと機能的ヒトβ−2ミクログロブリンは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)翻訳時に融合されることが好ましい。しかしながら、以下でさらに詳述されているように、MHC拘束性ペプチドと機能的ヒトβ−2ミクログロブリンは、これ以外の様式で、互いに共有結合させることもできる。
分子(vii)−(xii)及び(xiv)は、共有結合していないMHC拘束性ペプチドをさらに備えている。但し、何れの場合にも、以下でさらに記載されているように、リフォールディングした時に、機能的ヒトMHCクラスI重鎖と複合体を形成するように、MHC拘束性ペプチドが選択される。
前記MHC拘束性ペプチドは、インフルエンザ、肝炎等の一般的な病原体から得られたものであることが好ましい。MHC拘束性ペプチドが得られる病原体は、以下のように、幾つかの基準に従って選択される。(i)好ましくは、集団の大部分が、ワクチン接種の感染を介して、病原体又はその抗原に曝されたこと、(ii)免疫応答を強化できるようにするために、前記病原体に対して活性なワクチン接種を利用できること、(3)前記病原体に対して長期記憶を有する比較的高力価のCTLが感染患者又はワクチン接種患者中に保持されること。
あるいは、前記MHCペプチドは、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原から得られる。腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原から得られるMHC拘束性ペプチドは、効率的なCTL応答を引き出すために使用できることが示された。この目的のためには、例えば、WO 00/06723号(参考文献として本明細書に援用される)を参照されたい。
ターゲッティングドメインは、抗体ターゲッティングドメイン(分子(i)−(xii))又はリガンドターゲッティングドメイン(分子(xiii)と(xiv))であり得る。
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、抗体ターゲッティングドメインは、エフェクタードメインに結合された抗体の軽鎖の可変領域を備える(図6の分子(i)と(vii)を参照)。好ましくは、前記抗体の軽鎖の可変領域と前記エフェクタードメインとは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)、翻訳時に融合される。しかしながら、抗体の軽鎖の可変領域とエフェクタードメインを共有結合するための他の方法が、以下に記載されている。
別の好ましい実施態様によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、抗体の軽鎖の可変領域に連結された抗体の重鎖の可変領域をさらに備える(図6の分子(iii)−(vi)及び(ix)−(xii)を参照)。好ましくは、前記抗体の重鎖の可変領域と前記抗体の軽鎖の可変領域とは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーによって)、翻訳時に融合される(図6の分子(vi)と(x)を参照)。しかしながら、抗体の重鎖の可変領域と抗体の軽鎖の可変領域とを共有結合するための他の方法が、本明細書に開示されている。
例えば、抗体の重鎖の可変領域は、少なくとも1つのS−S結合を介して、抗体の軽鎖の可変領域に連結して、dsFV成分を与えることができる(例えば、図6の分子(v)及び(xi)参照)。
本発明の別の好ましい実施態様によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、エフェクタードメインに連結された抗体の重鎖の可変領域を備える(図6の分子(ii)と(viii)を参照)。好ましくは、前記抗体の重鎖の可変領域と前記エフェクタードメインとは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーを用いて)、翻訳時に融合される(図6の分子(iii)と(ix)参照)。しかしながら、抗体の重鎖の可変領域とエフェクタードメインを共有結合するための他の方法が、以下に記載されている。
別の好ましい実施態様によれば、前記抗体ターゲッティングドメインは、抗体の重鎖の可変領域に連結された抗体の軽鎖の可変領域をさらに備える(図6の分子(iii)、(vi)、(ix)、及び(xii)を参照)。好ましくは、前記抗体の軽鎖の可変領域と前記の重鎖の可変領域とは、(必要に応じて、翻訳時にその間に介在して融合されるペプチドリンカーを用いて)、翻訳時に融合される(図6の分子(iii)と(ix)参照)。しかしながら、抗体の軽鎖の可変領域と抗体の重鎖の可変領域を共有結合するための他の方法が、以下に開示されている。
例えば、抗体の軽鎖の可変領域は、少なくとも1つのS−S結合を介して、抗体の重鎖の可変領域に連結して、dsFV成分を与えることができる(例えば、図6の分子(vi)及び(xii)参照)。
本発明の前記分子中の抗体ターゲッティングドメインは、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原に結合できるように選択される。この点、現在では、様々な充実性腫瘍と非充実性腫瘍に関連する数百の腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原が同定されており、さらに、その多くに対してモノクローナル抗体が開発されたことが理解されるであろう。換言すれば、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原に特異的に結合する多くの抗体のアミノ酸配列とヌクレオチド配列は既に公知であるか、このような抗体を産生するハイブリドーマの分析によって容易に決定することができる。
図6に記載されている分子は、単一のポリペプチド[例えば、分子(i)−(iv)及び(xiii)]、2つのポリペプチド[分子(v)、(vi)、(vi)−(x)、及び(xiv)]、又は3つのポリペプチド[分子(xi)と(xii)]から構成されている。
本明細書において、ペプチドという用語とポリペプチドという用語は、互換的に使用される。前記ポリペプチドの各々は、本分野において公知である任意の方法を用いて合成することができる。このように、本発明の免疫分子又はその一部は、固相タンパク質合成を含む幾つかの方法によって調製することができるが、本発明の好ましい実施態様では、前記分子の少なくとも主要な部分(例えば、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメイン(MHC拘束性ペプチドあり又はなし)及び抗体ターゲッティングドメイン(scFVとして又はdsFVのアームとして))は、それぞれの核酸構築体又は複数の核酸構築体を翻訳することによって作製される。
従って、翻訳を通じて、図6の分子を合成するためには、1つ乃至3つのオープンリーディングフレームが必要とされる。これらのオープンリーディングフレームは、1つ、2つ、又は3つの核酸分子上に存在することができる。このため、例えば、単一の核酸構築体が、1つ、2つ、又は3つのオープンリーディングフレームを全て担持することができる。1乃至3つのオープンリーディングフレームの発現を調節するために、1乃至3つのシス作用性制御配列を使用することができる。例えば、単一のシス作用性制御配列は、シストロン様の様式で、1つ、2つ、又は3つのオープンリーディングフレームの発現を調節することができる。あるいは、3つのオープンリーディングフレームの発現を調節するために、3つの独立したシス作用性制御配列を使用することもできる。これ以外の組み合わせも想定される。
MHC拘束性ペプチドが、前記分子の残りの部分に共有結合されていない場合(図6の分子(vii)−(xii)を参照)には、10アミノ酸未満の短いペプチドの場合に一般的であるように、固相技術によって調製することが好ましい。
オープンリーディングフレームとシス作用性制御配列は、1乃至3つの核酸分子によって担持され得る。例えば、各オープンリーディングフレームとそのシス作用性制御配列は、異なる核酸分子によって担持されるか、あるいは、全てのオープンリーディングフレームとそれに付随するシス作用性制御配列が単一の核酸分子によって担持される。これ以外の組み合わせも想定される。
ポリペプチドの発現は、形質転換/トランスフェクションベクターとして(例えば、プラスミド、ファージ、ファジミド、又はウイルス)の役目を果す任意の核酸分子を用いて、単一の細胞又は複数の細胞を形質転換/トランスフェクション及び/又は同時形質転換/同時トランスフェクションすることによって実施することができる。
このように、本発明の別の側面によれば、免疫分子をコードする核酸構築体が提供される。本発明の本側面に係る構築体は、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、ターゲッティングドメインをコードする第二のポリヌクレオチド(抗体ターゲッティングドメイン又はリガンドターゲッティングドメインの何れか)とを備える。前記第一のポリヌクレオチドと前記第二のポリヌクレオチドは、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと前記ターゲッティングドメインが、(必要に応じて、その間に介在されるペプチドリンカーを介して)翻訳時に融合されるように、選択され且つ連結される。
本発明のさらに別の側面によれば、免疫分子をコードする核酸構築体が提供される。本発明の本側面に係る構築体は、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、抗体ターゲッティングドメインの軽鎖又は重鎖のうち一方の可変領域をコードする第二のポリヌクレオチドとを備える。前記第一のポリヌクレオチドと前記第二のポリヌクレオチドは、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと前記抗体ターゲッティングドメインの軽鎖及び重鎖のうち一方の可変領域とが、(必要に応じて、その間に介在されるペプチドリンカーを介して)翻訳時に融合されるように選択され、互いに連結される。本発明の本側面に係る構築体は、前記抗体ターゲッティングドメインの軽鎖及重鎖のうちの前記一方とは別の鎖をコードする第三のポリヌクレオチドをさらに備える。前記第三のポリヌクレオチドは、別個のポリペプチドをコードして、dsFVを生成させるように、又は翻訳時に前記第二の核酸に融合されるポリペプチドをコードして、scFVを生成させるように選択することができる。
本発明のさらなる側面によれば、核酸構築体系が提供される。該構築体系は、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインをコードする第一のポリヌクレオチドと、抗体ターゲッティングドメインの軽鎖又は重鎖のうち一方の可変領域をコードする第二のポリヌクレオチドとを備える第一の核酸構築体を備える。前記第一のポリヌクレオチドと前記第二のポリヌクレオチドは、前記可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと前記抗体ターゲッティングドメインの軽鎖及び重鎖のうち一方の可変領域とが、(必要に応じて、その間に介在されるペプチドリンカーを介して)翻訳時に融合されるように選択され、互いに連結される。前記構築体系は、前記抗体ターゲッティングドメインの軽鎖及重鎖のうち前記一方とは別の鎖をコードする第三のポリヌクレオチドを備える第二の核酸構築体をさらに備える。これらの構築体は、同一の細胞又は異なる細胞中に同時導入してもよい。第一のケースでは、前記構築体系を構成する前記構築体を同時に混合することができるのに対して、第二のケースでは、前記構築体系を構成する前記構築体は別個の容器中で混合されない状態に保たれる。
いついかなる場合に使用するときでも、リンカーペプチドによって接続されるポリペプチドが、その発現後に単独に且つ生来的にフォールディングして、機能的一本s(sc)ヒトMHCクラスI複合体、ターゲッティングscFv、又はリガンド及び/又はヒトMHCクラスI−MHC拘束性抗原複合体の形成を促進するように、前記リンカーペプチドは、本質的に柔軟なアミノ酸配列から選択される。
本明細書に記載されている核酸構築体は何れも、その中のコーディングポリヌクレオチドに作用可能に連結された少なくとも1つのシス作用性制御配列を備えている。好ましくは、該シス作用性制御配列は、細菌中で機能的である。
あるいは、前記シス作用性制御配列は、酵母中で機能的である。あるいは、前記シス作用性制御配列は、動物細胞中で機能的である。あるいは、前記シス作用性制御配列は、植物細胞中で機能的である。
前記シス作用性制御配列は、プロモーター配列と付加的な転写又は翻訳エンハンサー配列とを有することができ、これらは全て、宿主細胞中に導入したときに、ポリヌクレオチドの発現を促進させる役割を果す。プロモーターの具体例が、様々な真核発現系及び原核発現系に関して以下に記載されており、その後の実施例の部にも記載されている。
1以上のオープンリーディングフレームを有する単一の転写物の転写を誘導するためには、核酸構築体中に単一のシス作用性制御配列を使用し得ることが理解されるであろう。後者の場合には、内部に位置する核酸配列を翻訳させるために、配列内リボソーム進入部位(IRES)を用いることができる。
本発明の別の側面によれば、本明細書に記載されている核酸構築体又は核酸構築体系の何れかを1以上備えた形質転換細胞が提供される。本発明の本側面に係る該細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞、及び原虫細胞からなる群から選択される真核細胞であり得るし、あるいは細菌細胞でもあり得る。
単一細胞中で独立のポリペプチドを同時発現させることを選択する場合には常に、前記独立のポリペプチドの発現レベルが最適化され、最終産物が最大の割合で得られるように、用いる前記一又は複数の構築体を設定しなければならない。
好ましくは、本発明の前記核酸構築体が使用するプロモーター(シス作用性制御配列の一例である)は、宿主細胞の形質転換後に、前記ポリペプチドに関して高レベルの発現が達成されるように、強力な構成的プロモーターである。
高コピー数の核酸構築体で宿主細胞を形質転換することによって、又は得られた転写物を安定化させて、このような転写物の分解若しくは「代謝回転」を減少させるシス作用性配列を用いることによって、高レベルの発現を得ることができることも理解されるであろう。
本明細書において使用する「形質転換細胞(transformed cell)」という用語は、安定的に又は一過性に、宿主細胞を遺伝的に改変するために、外来核酸配列をその中に導入された細胞を意味する。形質転換細胞は、本分野において周知の様々な方法を用いて、天然又は人工の条件下で得ることができる。その中の幾つかは、宿主細胞の具体例を挙げながら、本明細書中において以下に記載されている。
形質転換される宿主細胞は、例えば、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞、及び原虫細胞等の真核細胞であり得、あるいは、細菌細胞であり得る。
真核宿主細胞の発現に使用するときには、本発明の前記核酸構築体はシャトルベクター(大腸菌に伝播することもできるし(この場合、前記構築体は、適切な選択可能なマーカーと複製起点を備えている)、真核宿主細胞中での発現にも適合的であるベクター)であり得る。本発明の核酸構築体は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルス、又は人工染色体であり得る。
本発明のさらに別の好ましい実施態様によれば、前記宿主細胞は、例えば、哺乳類細胞培養物の哺乳類細胞である。適切な哺乳類発現系には、pcDNA3、pcDNA3.1(+/−)、pZeoSV2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1(Invitrogenから入手可能)、pCI(Promegaから入手可能)、pBK−RSV及びpBK−CMV(Stratageneから入手可能)、pTRES(Clontechから入手可能)並びにそれらの誘導物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明の核酸配列を発現させるために、昆虫細胞培養物を使用することもできる。適切な昆虫発現系には、Invitrogen(maxBacTM)、Clontech(BacPakTM)、又はGibco(Bac-to-BacTM)等の多数の業者から市販されているバキュロウイルス発現系とその誘導物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
本発明の核酸配列の発現は、植物細胞中で行うこともできる。本明細書において使用される「植物細胞」という用語は、植物プロトプラスト、植物組織培養の細胞、植物由来組織の細胞、又は植物全体(whole plant)の細胞
核酸構築体を植物細胞中に導入する方法には、様々な方法が存在する。このような方法は、核酸構築体又はその一部の植物細胞のゲノム中への安定的な組込みに、又は核酸構築体の一過性発現(この場合には、これらの配列は、植物細胞のゲノム中に安定に組み込まれない)に依拠している。
植物細胞ゲノムの中に、本発明の核酸構築体内に含まれるもの等の外来核酸配列を安定に組み込ませるには、以下の2つの原理的な方法が存在する。
(i) Agrobacteriumを介した遺伝子導入:Klee et al.(1987) Annu.Rev.Plant Physiol.38:467-486; Klee and Rogers in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Vol. 6, Molecular Biology of Plant Nuclear Genes, eds. Schell, J., and Vasil, L. K., Academic Publishers, San Diego, Calif.(1989) p.2-25; Gatenby, in Plant Biotechnology,eds.Kung,S. and Arntzen,C.J., Butterworth Publishers, Boston, Mass.(1989) p.93-112。(ii)DNAの直接取り込み:Paszkowski et al., in Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Vol. 6, Molecular Biology of Plant Nuclear Genes eds.
Schell, J., and Vasil, L. K., Academic Publishers, San Diego, Calif. (1989) p.52-68; including methods for direct uptake of DNA into protoplasts, Toriyama, K. et al.(1988) Bio/Technology 6:1072-1074. DNA uptake induced by brief electric shock of plant cells:Zhang et al.Plant Cell Rep. (1988) 7: 379-384.Fromm et al. Nature(1986) 319:791-793. DNA injection into plant cells or tissues by particle bombardment, Klein et al. Bio/Technolog (1988)6: 559- 563; McCabe et al. Bio/Technology (1988) 6: 923-926; Sanford, Physiol. Plant. (1990) 79: 206-209; by the use of micropipette systems: Neuhaus et al. Theor. Appl. Genet. (1987) 75: 30-36; Neuhaus and Spangenberg, Physiol.Plant. (1990) 79: 213-217; or by the direct incubation of DNA with germinating pollen, DeWet et al. in Experimental Manipulation of Ovule Tissue, eds. Chapman, G. P. and Mantell, S. H. and Daniels, W. Longman, London, (1985) p.197-209; and Ohta, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1986) 83:715-719。
Agrobacterium系には、植物ゲノムDNA中に組み込まれる所定のDNAセグメントを含有するプラスミドベクターの使用が含まれる。植物組織を植え付ける方法は、植物の種(species)及びAgrobacterium送達系に応じて変わる。広く用いられている手法は、リーフディスク法であり、例えば、Horshらの「Plant Molecular Biology Manual A5、Kluwer Academic Publishers,Dordrecht(1988)、p.1-9」を参照されたい。補充的な手法では、Agrobacterium送達系を真空浸透(vacuum infiltration)と組み合わせて使用する。Agrobacterium系は、安定に形質転換された双子葉植物の作製に特に適している。
DNAを植物細胞中に直接導入する方法には、様々な方法が存在する。電気穿孔では、プロトプラストを強い電場に短時間暴露させる。マイクロインジェクションでは、極めて小さなマイクロピペットを用いて、DNAを機械的に直接細胞の中に注入する。微粒子衝撃法(microparticle bombardment)では、硫酸マグネシウム結晶、タングステン粒子、又は金粒子等の微小発射体上にDNAを吸着させ、微小発射体を細胞又は植物組織中へ物理的に加速させる。DNAの直接導入は、植物細胞を一過性に形質転換させるためにも使用できる。
何れの場合にも、前記第一及び第二の核酸配列を植物細胞が発現するために使用することができる適切な植物プロモーターには、CaMV 35Sプロモーター、ユビキチンプロモーター、及び構成的又は組織特異的な様式で前記核酸配列を発現することができるその他の強力なプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。
植物ウイルスは、形質転換ベクターとして使用することもできる。植物細胞宿主の形質転換に有用であることが示されているウイルスには、CaV、TMV、及びBVが含まれる。
植物ウイルスを用いた植物の形質転換は、米国特許第4,855,237号(BGV)、EP-A 67,553(TMV)、日本国公開広報63-14693(TMV)、EPA 194,809 (BV)、EPA 278,667(BV)、及びGluzman, Y. et al., Communications in Molecular Biology: Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, pp. 172-189 (1988). Pseudovirus particles for use in expressing foreign DNA in many hosts, including plants, is described in WO 87/06261に記載されている。
植物中に非ウイルス性外来核酸配列を導入し発現するための植物RNAウイルスの構築は、上記の参考文献の他、Dawson、W.O. et al.,Virology(1989)172:285-292; Takamatsu et al.EMBO J.(1987)6:307-311; French et al. Science(1986)231:1294-1297; 及びTakamatsu et al.FEBS Letters(1990)269:73-76に示されている。
ウイルスがDNAウイルスである場合には、ウイルス自体に対して前記構築体を作ることができる。あるいは、上記核酸配列を有する所望のウイルスベクターの構築を容易にするために、まず、細菌プラスミド中にウイルスをクローニングすることもできる。次いで、ウイルスをプラスミドから切り出すことができる。ウイルスがDNAウイルスである場合には、ウイルスDNAに細菌の複製起点を接着させた後に、細菌に複製させることもできる。このDNAの転写と翻訳によって、ウイルスDNAをキャプシドに封入するコートタンパク質が産生されるであろう。
ウイルスがRNAウイルスである場合には、ウイルスは一般的にはcDNAとしてクローニングされ、プラスミド中に挿入される。次いで、全ての構築体を作るために、このプラスミドを使用する。次いで、前記プラスミドのウイルス配列を転写し、ウイルス遺伝子を翻訳することによって、ウイルスRNAをキャプシドに封入するコートタンパク質を産生させることによって、RNAウイルスが得られる。
本発明の前記構築体中に含まれるもののような、非ウイルス性外来核酸配列を植物中に導入し発現させるための植物RNAウイルスの構築は、上記参考文献の他に、米国特許第5,316,931号にも示されている。
酵母細胞も、本発明によって、宿主細胞として使用することができる。本発明の核酸配列を酵母の中で発現させるのに適した酵母発現ベクターの例は、本分野において数多く知られており、市販されている。このようなベクターは、本分野で周知の化学的な形質転換法又は電気穿孔による形質転換法によって、酵母宿主細胞中に導入されるのが一般的である。市販の系には、例えば、pYESTM(Invitrogen)又はYEXTM(Clontech)発現系が含まれる。
上述したもののような真核発現系の中で発現させるときには、前記核酸構築体は、前記第一及び第二の核酸配列から産生されるポリペプチドが付随のシグナルペプチドによって分泌経路中に誘導されるように、シグナルペプチドをコードする配列を含んでいることが好ましいことが理解されるであろう。例えば、哺乳類、昆虫、及び酵母宿主細胞中では、発現されたポリペプチドが増殖培地に分泌され得るのに対して、植物発現系では、ポリペプチドは、アポプラスト中に分泌させるか、又は細胞内小器官中に誘導され得る。
現時点で最も好ましい本発明の実施態様によれば、前記宿主細胞は、例えば、大腸菌等の細菌細胞である。細菌宿主には、例えば、化学的な形質転換(例えば、CaCl)又は電気穿孔を含む本分野で周知の形質転換方法によって、核酸配列を形質転換することができる。
本分野では、本発明の核酸配列を発現するために利用することができる細菌発現系の例が多数知られている。市販の細菌発現系には、pETTM発現系(Novagen)、pSETM発現系(Invitrogen)、又はpGEXTM発現系(Amersham)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
以下の実施例の部にさらに記載されているように、発現されたペプチドは、発現されたポリペプチドを即座に回収及び精製するのに適した実質的に純粋な封入体を形成するので、細菌による発現は特に有利である。
このように、本発明のさらに別の側面によれば、細菌由来の封入体の調製物であって、本発明の組換えポリペプチド又はポリペプチドの混合物の30重量%超、好ましくは50重量%超、より好ましくは75重量%超、最も好ましくは90%超を封入体が占める調製物が提供される。このような封入体の単離と封入体からのポリペプチドの精製は、以下の実施例の部に詳述されている。
以下の実施例の部に示されているように、ポリペプチドを細菌により発現させると、純粋で機能的な免疫分子を大量に得ることができる。
本発明のさらなる側面によれば、本発明の免疫分子を製造する方法が提供される。本発明の本側面に係る方法では、細菌中で本明細書に記載されたポリペプチドを発現するために記載した任意の核酸構築物が使用される。
発現に引き続き、以下に記載されているようにポリペプチドを単離し、精製する。
以下の実施例の部にさらに記載されているように、発現されるポリペプチドは、本分野で周知の分画技術によって容易に単離され、例えば、変性再生工程によって容易に精製される実質的に純粋な封入体を形成する。
好ましくは、本発明のポリペプチドは、本発明の他のポリペプチドに連結されるか、本発明の他のポリペプチドと同時発現又は混合され、一本鎖MHCクラスIポリペプチドを結合することができるMHC拘束性ペプチドの存在下で再生され、リフォールディングされる。実施例の部にさらに記載されているように、サイズ排除クロマトグラフィによってさらに精製することができる実質的に純粋なMHCクラスI抗原性ペプチド複合体が、これによって得られる。
リフォールディングに使用されるMHC拘束性ペプチドは、細菌中で可溶性ヒトMHCクラスIポリペプチドとともに(独立のペプチドとして)同時発現させることができるし、あるいは可溶性ヒトMHCクラスIポリペプチドに融合することができることが理解されるであろう。このような場合には、発現されるポリペプチドとペプチドが、MHCクラスI抗原性ペプチド複合体を形成するために単離し、用いることができる封入体を共同形成する。
本発明のさらなる側面によれば、抗原(例えば、受容体)を提示している患者中の細胞を選択的に死滅させる方法が提供される。本発明の本側面に係る前記方法は、MHC拘束性ペプチドと複合体を形成した可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインと、該可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインに連結されているターゲッティングドメイン(抗体ターゲッティングドメイン又はリガンドターゲッティングドメインの何れか)とを備える免疫分子を患者に投与することを備える。ターゲッティングドメインは、抗原に選択的に結合する役割を果し、それによって、MHC拘束性ペプチドと複合体を形成した可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインは細胞に対するCTL媒介性免疫応答を開始させて、インビボで細胞を選択的に死滅させる。死滅させるべき細胞は、癌細胞であり得る。この場合には、当該癌細胞の特徴となる腫瘍関連抗原に結合するように、前記ターゲッティングドメインは選択されるであろう。
以下の部には、本明細書に記載されている本発明の様々な側面の各々に対して、具体例と代替例が記載されている。類似しているが、僅かに異なる方法で本発明を実施することが可能なので、これらの実施例及び代替例は、いかなる意味においても限定を意図したものと解釈してはならない。但し、これらの実施例によって、本発明の様々な代替例と実施態様をどのように実施するかについて、当業者に教示を与える。
抗体:
本発明を記述するために使用する「抗体」という用語及び「抗体ターゲティングドメイン」という句は、抗原に対して特異的に高い親和性で結合可能である完全な分子並びにFab、F(ab')、Fv、scFvなどのその機能性断片を含む。これらの機能性抗体断片は以下のように定義される。すなわち、(i)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片であり、抗体全体を酵素パパインで消化して完全な軽鎖及び1本の重鎖の一部を形成することによって産生される;(ii)Fab'は、抗体全体をペプシンで処理し、還元して完全な軽鎖及び重鎖の一部を形成することによって得られる抗体分子断片である;抗体分子1つにつき2つのFab'断片が得られる;(iii)F(ab')は、抗体全体を酵素ペプシンで処理しその後還元せずに得られる抗体断片である;F(ab')は、2つのジスルフィド結合によって一緒に保持される2つのFab'断片の二量体である;(iv)Fvは、2本鎖として発現される軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む遺伝子改変断片として定義される;及び(c)scFvすなわち「単鎖抗体」(「SCA」)は、適切なポリペプチドリンカーによって連結された遺伝子融合単鎖分子として軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む遺伝子改変分子である。
これらの断片を作製する方法は、当分野で既知である。(例えば、Harlow及びLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1988(参照により本明細書に援用する)を参照されたい。)
本発明による抗体断片は、抗体のタンパク質加水分解、又は断片をコードするDNAの大腸菌又は哺乳動物細胞中での発現(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養又は他のタンパク質発現系)によって調製することができる。
抗体断片は、従来法による抗体全体のペプシン又はパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、ペプシンにより抗体を酵素切断してF(ab')で示される5S断片を形成することによって生成させることができる。この断片は、チオール還元剤及び場合によっては、ジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基に対するブロック基を用いてさらに切断して、3.5S Fab'一価断片を生成させることができる。あるいは、ペプシンを用いた酵素切断によって2つの一価のFab'断片と1つのFc断片を直接生成させる。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,036,945号及び同4,331,647号及びそれらに含まれる参考文献に記載されており、これらの特許を参照によりそれら全体を本明細書に援用する。また、Porter、R.R.、Biochem.J.、73:119〜126、1959を参照されたい。完全抗体によって認識される抗原に断片が結合する限り、一価の軽−重鎖断片を形成する重鎖の分離、断片のさらなる切断、他の酵素技術、化学技術又は遺伝子技術などの抗体を切断する他の方法も使用することができる。
Fv断片には、V鎖とV鎖の会合が含まれる。この会合は、Inbar等、Proc.Nat'l Acad.Sci.USA 69:2659〜62、1972に記載されるように非共有結合性であってもよい。あるいは、これらの可変鎖は、分子間ジスルフィド結合又はグルタルアルデヒドなどの化学物質による架橋によって連結することができる。Fv断片は、ペプチドリンカーによって連結されたV鎖とV鎖を含むことが好ましい。これらの単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって連結されたVとVの各ドメインをコードする各DNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。この構造遺伝子は、発現ベクターに挿入され、続いて大腸菌などの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞によって、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを用いて単一のポリペプチド鎖が合成される。sFvsを産生する方法は、例えば、Whitlow及びFilpula、Methods、2:97〜105、1991; Bird等、Science 242:423〜426、1988; Pack等、Bio/Technology 11:1271〜77、1993; 及びLadner等、米国特許第4,946,778号に記載されており、参照によりその全体を本明細書に援用する。
抗体断片の別の形は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、対象とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応により抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって調製される。例えば、Larrick及びFry、Methods、2:106〜10、1991を参照されたい。
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む免疫グロブリンのキメラ分子、免疫グロブリン鎖又は(抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab')又は他の抗原結合サブ配列などの)それらの断片である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギなどの非ヒト種のCDRからの残基(ドナー抗体)で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基で置換する。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含むこともできる。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、かつFR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つ、通常は2つの可変領域の実質的にすべてを含む。
ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常はヒト免疫グロブリンのそれも含むことが最適である(Jones等、Nature、321:522〜525(1986); Riechmann等、Nature、332:323〜329(1988); 及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992))。
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトであるソースからヒト化抗体に導入された1つ又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば移入残基(import residue)と称され、一般に移入可変領域から得られる。ヒト化は、Winter及びその共同研究者の方法(Jones等、Nature、321:522〜525(1986); Riechmann等、Nature 332:323〜327(1988); Verhoeyen等、Science、239:1534〜1536(1988))に従って、げっ歯類のCDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することによって基本的に実施することができる。したがって、このようなヒト化抗体は、完全なヒト可変領域よりも実質的に少ない可変領域が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際、ヒト化抗体は、一般に、いくつかのCDR残基及びおそらくいくつかのFR残基がげっ歯類の抗体中の類似した部位からの残基で置換されたヒト抗体である。
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom及びWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991); Marks等、J.Mol.Biol.、222:581(1991))を含めて、当分野で既知の様々な技術を用いて産生することもできる。Cole等及びBoerner等の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole等、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、p.77(1985)及びBoerner等、J.Immunol.、147(1):86〜95(1991))。同様に、ヒトは、トランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作製することができる。努力すれば、遺伝子再配列、構築及び抗体レパートリーを含めてすべての点でヒトに見られるのと極めて類似したヒト抗体が産生される。この手法は、例えば、米国特許第5,545,807号; 同5,545,806号; 同5,569,825号; 同5,625,126号; 同5,633,425号; 同5,661,016号及び以下の科学雑誌:Marks等、Bio/Technology 10、779〜783(1992); Lonberg等、Nature 368 856〜859(1994); Morrison、Nature 368 812〜13(1994); Fishwild等、Nature Biotechnology 14、845〜51(1996); Neuberger、Nature Biotechnology 14、826(1996); Lonberg及びHuszar、Intern.Rev.Immunol.13 65〜93(1995)に記載されている。
抗体のCDRが同定されれば、従来の遺伝子操作技術を用いて、本明細書に記載する抗体の任意の形態又は断片をコードする発現可能なポリヌクレオチドを案出することができることを理解されたい。
リガンド
下表に、様々な腫瘍細胞によって選択的に発現される受容体の一例、それらのリガンド、及びリガンドに関する配列情報であって本発明による構築体及び免疫分子の構築に使用可能である配列情報を示す。
Figure 0005148804
ヒト主要組織適合複合体(MHC)クラスI:
主要組織適合複合体(MHC)は、一群の連結された遺伝子座によってコードされる抗原の複合体であり、マウスにおいてはH−2、ヒトにおいてはHLAと総称される。MHC抗原の2つの主要なクラスであるクラスI及びクラスIIは、各々組織タイプ及び移植片適合性を決定するのに一定の役割を果す1セットの細胞表面糖タンパク質を含む。移植反応において、細胞傷害性T細胞(CTL)は外来のクラスI糖タンパク質に対して主に反応し、一方、ヘルパーT細胞は外来のクラスII糖タンパク質に対して主に反応する。
主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子は、ほぼすべての細胞の表面で発現される。これらの分子は、内因的に合成されたタンパク質に主に由来するペプチドを、αβ T細胞受容体との相互作用を介してCD8+ T細胞に提示する機能を果す。クラスIMHC分子は、12kDa軽鎖β−2ミクログロブリンと非共有結合的に会合する46kDa重鎖で構成されるヘテロダイマーである。ヒトにおいては、例えば、HLA−A2、HLA−A1、HLA−A3、HLA−A24、HLA−A28、HLA−A31、HLA−A33、HLA−A34、HLA−B7、HLA−B45、HLA−Cw8などいくつかのMHCハプロタイプがあり、それらの配列は、kabbatデータベース、http://immuno.bme.nwu.edu/、(参照により本明細書に援用する)に見出すことができる。
クラスIMHC分子に結合するペプチド;MHC拘束性抗原:
一般に8〜10アミノ酸長であるクラスI、MHC拘束性ペプチド(本明細書では、MHC拘束性抗原、HLA拘束性ペプチド、HLA拘束性抗原と区別せずに呼称する)は、MHC分子中の対応する結合ポケットと相互作用する2つ又は3つのアンカー残基を介して、重鎖α1−α2の溝(groove)に結合する。β−2ミクログロブリン鎖は、MHCクラスIの細胞内輸送、ペプチド結合及びコンホメーションの安定性に重要な役割を果す。ほとんどのクラスI分子の場合、MHCクラスI重鎖、(自己又は抗原性)ペプチド及びβ−2ミクログロブリンからなるヘテロダイマーの形成は、生合成の成熟及び細胞表面発現のために必要とされる。
クラスIMHC分子へのペプチド結合に関して実施される研究によって、潜在的に免疫原性であり、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)からの特異的応答を誘発する可能性があるウイルス、腫瘍及び自己抗原由来のペプチドを提示する機能を果す特異的MHCモチーフを定義することが可能になる。
本明細書で使用する「ペプチド」という用語は、未変性のペプチド(分解生成物又は人工的に合成されるペプチド)を指し、さらにペプチドアナログであるペプトイド及びセミペプトイド(semipeptoid)など、例えば、改変によってペプチドが、体内にある間により安定になり得る、あるいはより免疫原性になり得るペプチド擬態を指す。このような改変には、環化、N末端修飾、C末端修飾、CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−0、CH−CH、S=C−NH、CH=CH又はCF=CHを含めてただしこれらだけに限定されないペプチド結合修飾、骨格改変、残基修飾などがあるが、これらだけに限定されない。ペプチド擬態化合物を調製する方法は当分野で周知であり、Quantitative Drug Design、C.A.Ramsden Gd.、17.2章、F.Choplin Pergamon Press(1992)に詳述されており、本明細書にその全体が記載された如く参照により援用する。この点に関するさらなる詳細を以下に示す。
本明細書及び以下の特許請求の範囲において使用する「アミノ酸」という用語は、20個の天然アミノ酸を含むと理解される。これらのアミノ酸は、例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリン及びホスホトレオニン;及び2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシン及びオルニチンを含めた、ただしこれらだけに限定されない他の変わったアミノ酸を含めて、翻訳後にインビボで改変されることが多い。また、「アミノ酸」という用語は、D−アミノ酸及びL−アミノ酸の両方を含む。本発明により使用可能なアミノ酸候補のさらなる詳細及びMHC−I HLA−A2によって認識可能であるペプチド抗原に有用な非天然アミノ酸の例を以下に示す。
蓄積された実験データに基づいて、今では、タンパク質のペプチドのうちどれがMHCクラスIに結合するかを予測することが可能である。HLA−A2 MHCクラスIは、これまで他のHLAハプロタイプよりも特徴が明らかにされているが、それでも予測的及び/又は散発的なデータが他のハプロタイプすべてで利用可能である。
HLA−A2結合ペプチドに関し、9量体ペプチドにおいて以下の位置(P1〜P9)を想定する:
P1−P2−P3−P4−P5−P6−P7−P8−P9
P2及びP2位は、MHC分子への結合に関与する主要残基であるアンカー残基を含む。アミノ酸残基結合位(engaging position)P2及びP9は、親水性の脂肪族非帯電天然アミノ(例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Gln、Thr、Ser、Cys、好ましくはVal及びLeu)又は非天然親水性脂肪族非帯電アミノ酸(例えば、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、α−アミノ酪酸)である。P1位及びP3位も、MHC分子への結合に関与又は助けとなるアミノ酸残基を含むことが知られているが、これらの位置は天然又は非天然の任意のアミノ酸を含むことができる。その他の位置には、一般には結合に関与しないアミノ酸残基が結合し、どちらかと言えばこれらのアミノ酸は免疫細胞に対して提示されるものである。MHC分子へのペプチドの結合に関する詳細は、さらに、Parker,K.C.、Bednarek,M.A.、Coligan,J.E.、Scheme for ranking potential HLA-A2 binding peptides based on independent binding of individual peptide side-chains.J Immunol.152、163〜175、1994に見出すことができ、特に表Vを参照されたい。したがって、HLA−A2.1結合ペプチドの評価は、ワールドワイドウェブインターフェースのhttp://www.bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind/index.htmlからアクセスできるHLA Peptide Binding Predictionsソフトウエアを用いて実施することができる。このソフトウエアは、蓄積データに基づいており、分析タンパク質中のあらゆるペプチド候補についてMHC HLA−A2.1に結合可能かどうかをペプチド中のあらゆるアミノ酸の寄与に従い評価する。理論結合スコアは、HLA−A2.1−ペプチド複合体の半減期の計算値である。
P2及びP9の親水性脂肪族天然アミノ酸は、合成アミノ酸、好ましくはNleu、Nval及び/又はα−アミノ酪酸で置換することができる。P9は、一般式−HN(CHCOOH(式中、n=3〜5)の脂肪族アミノ酸、並びに
Figure 0005148804
(式中Rは、例えば、1つ以上の任意のn炭素に位置するメチル、エチル又はプロピルである)など、ただしこれらだけに限定されないそれらの分枝誘導体でも置換することができる。
アミノ末端残基(P1位)は、HN(CHCOOH(式中、n=2〜4)、HN−C(NH)−NH(CHCOOH(式中、n=2〜3)など、ただしこれらだけに限定されない正に帯電した脂肪族カルボン酸、並びにヒドロキシリジン、N−メチルリジン又はオルニチン(Orn)で置換することができる。また、アミノ末端残基は、HN−(C)−CH−COOH、p−アミノフェニルアラニン、HN−F(NH)−NH−(C)−CH−COOH、p−グアニジノフェニルアラニン又はピリジノアラニン(Pal)など、ただしこれらだけに限定されない拡張された芳香族残基(enlarged aromatic residue)で置換することができる。これら後者の残基は、MHC−1 N末端結合ポケットにおいてチロシン残基のOH部分と水素結合を形成することができ、同時に芳香族−芳香族相互作用を形成することができる。
位置P4〜P8におけるアミノ酸残基の誘導体化は、これらの残基がSer、Tyr、Lys、Cys又はOrnのようにOH、SH又はNHなどの側鎖を有する場合、アルキル、アリール、アルカノイル又はアロイルによることができる。また、これらの位置のOH基も、リン酸化及び/又はグリコシレーションによって誘導体化することができる。これらの誘導体化は、いくつかの例でT細胞受容体に結合するのを促進することが示されている。
P10位に第2のアンカーアミノ酸が存在する、より長鎖の誘導体は、P9にほとんどのLアミノ酸を含むことができる。いくつかの例では、C末端の酸が第2のアンカー残基として働くより短鎖の誘導体も適用可能である。
環式アミノ酸誘導体は、P4位〜P8位に、好ましくはP6位及びP7位に結合することができる。環化は、アミド結合の形成、例えば、鎖(−CO−NH又は−NH−CO結合)の様々な位置にGlu、Asp、Lys、Orn、ジアミノ酪酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dap)を導入することによって得ることができる。式H−N((CH−COOH)−C(R)H−COOH又はH−N((CH−COOH)−C(R)H−NH(式中、n=1〜4、Rはアミノ酸の任意の天然又は非天然側鎖)の改変されたアミノ酸を組み込むことによって、骨格と骨格で環化することもできる。
2つのCys残基を組み込むことによってS−S結合を形成して環化することも可能である。さらに、例えば、Cys又はホモCysの組み込み及びその遊離SH基と、例えば、ブロモアセチル化Lys、Orn、Dab又はDapとの反応により可能になる式−(−CH−)−S−CH−C−(式中、n=1又は2)の相互作用結合の形成によって、側鎖と側鎖で環化することもできる。
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)は、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)、(式中、Rは任意のアルキル、例えば、メチルである)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは炭素原子上に天然に存在する「正常な」側鎖である)で置換することができる。
これらの改変は、ペプチド鎖に沿う任意の結合で起こすことができ、いくつか(2〜3)の結合でも同時に起こすこともできる。必ずしもすべての場合に必要ではないが、好ましくは、これらの改変はアンカーアミノ酸を除外すべきである。
天然芳香族アミノ酸Trp、Tyr及びPheは、TIC、ナフチレルアニン(naphthylelanine)(Nol)、Pheの環−メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体又はo−メチル−Tyrなどの合成非天然酸を置換することができる。
腫瘍MHC拘束性抗原:
以下の表に引用した参考文献から、腫瘍関連抗原(TAA)に由来するヒトMHCクラスI、腫瘍MHC拘束性ペプチド又は様々な癌に関連するタンパク質マーカーの例が提供される。腫瘍関連抗原(TAA)に由来する別の腫瘍MHC拘束性ペプチドは、http://www.bmi-heidelberg.com/syfpeithi/に見出すことができる。
Figure 0005148804
ウイルスMHC拘束性抗原
以下の表に引用した参考文献から、ウイルス抗原に由来するヒトMHCクラスI、ウイルスMHC拘束性抗原の例が提供される。
Figure 0005148804
自己免疫MHC拘束性抗原:
ウェブサイトhttp://www.bmi-heidelberg.com/syfpeithi/には、自己免疫抗原に由来するヒトMHCクラスI、自己免疫MHC拘束性ペプチドの例が提供されている。
可溶性MHCクラスI分子
可溶性であり多量に産生することができる組換えMHCクラスI及びクラスII複合体をコードする各配列は、例えば、参考文献23、24、41〜53、さらに米国特許出願第09/534,966号及び(国際公開第01/72768号として公開されている)PCT/IL01/00260号に記載されており、これらすべてを参照により本明細書に援用する。可溶性MHCクラスI分子は、例えば、HLA−A2、HLA−A1、HLA−A3、HLA−A24、HLA−A28、HLA−A31、HLA−A33、HLA−A34、HLA−B7、HLA−B45及びHLA−Cw8などのMHCハプロタイプのいずれに対しても、例えばPCT/IL01/00260号の教示に従って利用可能であり又は産生することができる。それらの配列は既知であり、http://immuno.bme.nwu.edu/にあるkabbatデータベースに見出すことができる(このサイトの内容を参照により本明細書に援用する)。このような可溶性MHCクラスI分子は、以下にさらに詳細に記述するように、適切なMHC拘束性抗原を担うことができ、ヒト主要組織適合複合体(MHC)クラスIを発現する細胞を有する非ヒト哺乳動物のワクチン接種に使用することができる。
化学的接合体:
ペプチド又はポリペプチドを含む様々なタイプの分子を接合(conjugate)又は融合(連結(couple))させる多数の方法が当分野で既知である。これらの方法は、本発明に従い、可溶性ヒトMHCクラスIエフェクタードメインを抗体ターゲティングドメインと、場合によってはMHC拘束性抗原と連結するために使用することができる。
2つの分離しているペプチドを、当業者に既知の任意の結合方法を用いて結合又は融合することができる。(N−スクシンイミジル3−(2ピリジルジチオ)プロピオネートとも称する)3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸Nヒドロキシスクシンイミドエステル(「SDPD」)(Sigma、Cat.No.P−3415)、グルタルアルデヒド結合操作又はカルボジイミド結合操作を用いて、1つのペプチドを別のペプチドに結合することができる。
SPDP接合
当業者に既知のあらゆるSPDP接合方法を使用することができる。例えば、例示的な一実施態様では、以下に記載するように、Cumber等の方法(1985、Methods of Enzymology 112:207〜224)の変形方法を使用する。
ペプチド(1.7mg/mL)を10倍過剰のSPDP(エタノール中50mM)と混合し、抗体を25倍過剰の20mMナトリウムリン酸希釈SPDP、0.10M NaCl pH7.2と混合し、反応物(reactions)の各々を、例えば、3時間室温でインキュベートする。次いで、反応物をPBSで透析する。
このペプチドを、例えば、50mM DTTを用いて1時間室温で還元する。還元したペプチドを、G−25カラム(最高5%試料/カラム体積)上で50mM KHPO pH6.5と平衡にして脱塩する。還元したペプチドを、SPDP抗体とモル比1:10抗体:ペプチドで結合させ、4℃で終夜インキュベートしてペプチド−抗体複合物を形成する。
グルタルアルデヒド接合:
ペプチドと他のペプチドの接合は、グルタルアルデヒドを用いて当業者に既知の方法によって実施することができる。例えば、例示的な一実施態様では、下記G.T.Hermansonによる結合方法(1996、「Antibody Modification and Conjugation、in Bioconjugate Techniques、Academic Press、San Diego)を使用する。
ペプチド(1.1mg/mL)を0.1Mリン酸希釈0.05%グルタルアルデヒド、0.15M NaCl pH6.8と10倍過剰で混合し、2時間室温で反応させる。0.01Mリジンを添加して余分な部位をブロックすることができる。反応後、PBS(10%v/v試料/カラム体積)で平衡にしたG−25カラムを用いて過剰のグルタルアルデヒドを除去する。
カルボジイミド接合:
ペプチドと他のペプチドの結合は、カルボジイミドなどの脱水剤を用いて当業者に既知の方法によって実施することができる。カルボジイミドを4−ジメチルアミノピリジンの存在下で使用することが最も好ましい。当業者には周知のとおり、カルボジイミド結合を用いて、ペプチドのカルボキシル基と1ペプチドのヒドロキシル基(エステル結合を形成する結果となる)又は1ペプチドのアミノ基(アミド結合を形成する結果となる)又は1ペプチドのスルフヒドリル基(チオエステル結合を形成する結果となる)の共有結合を形成することができる。
同様に、カルボジイミドカップリングを用いて、一方のペプチドの炭素基ともう一方のペプチドのヒドロキシル、アミノ又はスルフヒドリル基との類似の共有結合を形成することができる。一般に、J.March、Advanced Organic Chemistry:Reaction's,Mechanism,and Structure、pp.349〜50及び372〜74(第3版)、1985を参照されたい。限定的でない例示として、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミドを用いた共有結合によりペプチドを他と結合させる。一般に、B.Neises等(1978、Angew Chem.、Int.Ed.Engl.17:522; A.Hassner等(1978、Tetrahedron Lett.4475); E.P.Boden等(1986、J.Org.Chem.50:2394)及びL.J.Mathias(1979、Synthesis 561)による結合方法を参照されたい。
本発明のさらなる目的、利点及び新規な特徴は、限定することを意図したものではない以下の実施例を考察することによって当業者に明らかになるはずである。また、様々な実施態様の各々及び上述した本発明の側面及び下記特許請求の範囲で請求する本発明の側面は、以下の実施例によって実験的に裏付けられるものである。
以下、上記記載と共に本発明を非限定的に説明する以下の実施例に言及する。
一般に、本明細書で使用する用語及び本発明で利用する実験操作には、分子、生化学、微生物学及び組換えDNA技術が含まれる。このような技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、以下を参照されたい。「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrook等、(1989); 「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994); Ausubel等、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1989); Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley&Sons、New York(1988); Watson等、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、New York; Birren等(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1998); 米国特許第4,666,828号; 同4,683,202号; 同4,801,531号; 同5,192,659号及び同5,272,057号に開示されている方法; 「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻、Cellis,J.E.編(1994); 「Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique」、Freshney、Wiley-Liss、N.Y.(1994)、第3版; 「Current Protocols in Immunology」I〜III巻、Coligan J.E.編(1994); Stites等(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton&Lange、Norwalk、CT(1994); Mishell and Shiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、New York(1980);利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学文献に広範に記載されており、例えば、以下を参照されたい。米国特許第3,791,932号; 同3,839,153号; 同3,850,752号; 同3,850,578号; 同3,853,987号; 同3,867,517号; 同3,879,262号; 同3,901,654号; 同3,935,074号; 同3,984,533号; 同3,996,345号; 同4,034,074号; 同4,098,876号; 同4,879,219号; 同5,011,771号及び同5,281,521号; 「Oligonucleotide Synthesis」、Gait、M.J.編(1984); 「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1985); 「Transcription and Translation」Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1984); 「Animal Cell Culture」Freshney、R.I.編(1986); 「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press、(1986); 「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.、(1984)及び「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press; 「PCR Protocols:A Guide To Methods and Applications」、Academic Press、San Diego、CA(1990); Marshak等、「Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらすべてを本明細書にその全体が記載された如く参照により援用する。他の一般的な参考文献を本明細書を通して提供する。そこに記載されている操作は、当分野で周知と考えられ、読者の便宜を図るものである。そこに含まれる情報すべてを、参照により本明細書に援用する。
材料及び実験方法
ペプチド:ペプチドを、標準フルオレニルメトキシカルボニル化学によって合成し、逆相HPLCにより>95%に精製した。使用した腫瘍関連HLA−A2拘束性ペプチドは、G9−209−2M(IMDQVPFSV、配列番号8)及びG9−280−9V(YLEPGPVTV、配列番号9)であり、どちらもメラノーマ分化抗原gp100に由来する一般的な免疫優性エピトープである(32〜34)。これらのペプチドは、MHCアンカーの(G9−209−2Mの場合)2位及び(G9−280−9Vの場合)9位がHLA−A2に対する結合親和性を改善するように改変されている(27)。HTLV−1由来のペプチド(LLFGYPVYV、配列番号:10)をコントロールとして使用した。
細胞系:A431、ATAC4(類表皮癌)、HUT102W及びCRII−2(白血病、ATL)の各細胞を、RPMI+10%FCS中に維持した。ATAC4細胞は、IL−2受容体αサブユニット(p55、Tac、CD25)を安定に形質移入したヒト類表皮癌A431細胞である(53)。この形質移入された細胞を、G418 500μg/mLを含有する増殖培地(Gibco−BRL)に維持した。
プラスミドの構築:ヒトβ2−ミクログロブリンをHLA−A2遺伝子の3つの細胞外ドメインと連結することによってscMHC分子を既報(24、25、国際公開第01/72768号)のように構築した。抗Tac MAbのVL(cys)及びVH(cys)可変領域遺伝子を先に構築して、保存フレームワーク残基において操作された鎖間ジスルフィド結合によって2つの可変領域が共に保持され安定化された抗Tac dsFv分子を形成した(29、30)。scMHC−aTacVL分子を構築するために、15残基長の柔軟なリンカー(Gly−Ser)(配列番号:3)を用いて、scMHC分子のC末端を抗Tac VLのN末端に連結した。両方の分子のPCR増幅されたcDNAを、scMHCの3'末端がVL遺伝子の5’末端に連結される2段階のPCRオーバーラップエクステンション反応に使用した。第1のステップにおいて、scMHC遺伝子の5’末端にNdeI制限部位を導入し3’末端にリンカーの2/3を導入するオリゴヌクレオチドscMHC−5:5'GGAAGCGTTGGCGCATATGATCCAGCGTACTCC−3’(配列番号11)及びscMHC−3:5'−TCCTGAACCTCCGCCACCGGACCCTCCTCCGCCCTCCCATCTCAGGGT−3'(配列番号12)を用いて、どちらの遺伝子にもリンカー配列の2/3及びクローニング部位を導入した。オリゴヌクレオチドVL−Tac−5:5'−TCCGGTGGCGGAGGTTCAGGAGGCGGTGGATCGCAAATTGTTCTCACC−3'(配列番号:13)及びVL−Tac−3:5'−GCAGTAAGGAATTCATTAGAGCTCCAGCTTGGT−3’(配列番号:14)を用いて抗Tac VL遺伝子をPCR増幅して、VL遺伝子の5’末端にリンカーの2/3を導入し、3'末端にEcoRIクローニング部位を導入した。第2の構築ステップにおいて、2つのPCR生成物を1:1(各50ng)で組み合わせて、scMHC−aTacVL構築体の構築用プライマーscMHC−5及びVL−Tac−3を用いたPCRオーバーラップエクステンション反応を行った。続いて、pETベースの発現ベクターPULI7(49)にNdeI及びEcoRI制限部位を用いてPCR生成物をサブクローニングした。抗Tac dsFv断片を作製するための抗Tac VH遺伝子を既報(29)のようにpULI7にサブクローニングした。
B2M−aTac(dsFv)ペプチド複合体の発現、リフォールディング及び精製:B2M−aTac(dsFv)の各成分;scMHC−aTacVL及びaTac VHは、別々のBL21(λDE3)細胞(Novagen、Madison、WI)中で発現された。IPTGで誘導すると、多量の不溶性組換えタンパク質が細胞内封入体中に蓄積した。既報(29、49)のように、誘導されたBL21細胞から各成分の封入体を単離し精製した。手短に述べると、リゾチーム0.2mg/mLで細胞を破壊し、次いで2.5%TRITON X−100及び0.5M NaClを添加した。遠心分離(13,000RPM、4℃で60分)によって封入体沈殿物を回収し、20mM EDTAを含有する50mM Tris緩衝液、pH7.4で3回洗浄した。単離し精製した封入体中の各組換えタンパク質成分が発現するかどうかを、図2bに示すようにSDS−PAGE上で試料を分析して決定した。単離し精製した封入体を6MグアニジンHCl、pH7.4に溶解し、次いで65mM DTEを用いて還元した。溶解し還元し、モル比1:2で混合したscMHC−aTacVLとaTacVHの各封入体を、5〜10モル過剰のHLA−A2拘束性ペプチドの存在下で0.1M Tris、0.5Mアルギニン、0.09mM酸化型グルタチオン、pH10.0を含有するレドックス混合緩衝液系に1:100で希釈することによってリフォールディングした。リフォールディングにおける最終タンパク質濃度は50μg/mLであった。リフォールディング後、100mM尿素、20mM Tris、pH7.4でタンパク質を透析し、次いでイオン交換クロマトグラフィによりQセファロースカラム(内径7.5mM×長さ60cm、Pharmacia)上で塩(NaCl)勾配(0〜0.4M)をかけて可溶性scMHC−aTac(dsFv)−ペプチド複合体を精製した。次いで、scMHC−aTac(dsFv)を含有するピーク画分を、サイズ排除クロマトグラフィ(TSK3000)にかけてさらに精製し、緩衝液をPBSに交換した。
ELISA:イムノプレート(Falcon)を精製p55抗原10μg/mLで被覆した(4℃で終夜)。2%脱脂乳を含有するPBSでプレートをブロックし、次いで様々な濃度のB2M−aTac(dsFv)−ペプチドと共にインキュベートした(室温で90分)。抗HLAのコンホメーションに依存する抗体W6/32を用いて結合を検出した(60分、室温、10μg/mL)。抗マウスIgG−パーオキシダーゼを用いて反応を進めた。ウサギ抗Tac抗体をポジティブコントロールとして使用し、その後抗ウサギパーオキシダーゼを使用した。
フローサイトメトリー:細胞を、洗浄されたB2M−aTac(dsFv)−ペプチド複合体と共にインキュベートし(300μl中4℃で60分、25μg/mL)、さらに抗HLA−A2 MAb BB7.2と共にインキュベートした(4℃で60分、μg/mL)。抗マウスFITCを用いて検出した。ヒト抗Tac(10μg/mL)をポジティブコントロールとして用いてp55抗原の発現の有無を確認し、次いで抗ヒトFITC標識抗体と共にインキュベートした。続いて、細胞を洗浄し、Beckman FACScaliberフローサイトメーターを用いて分析した。
CTLクローン及び刺激:メラノーマgp100に由来するペプチドに特異的なCTLクローンは、Dr.Steven Rosenberg及びDr.Mark Dudley、Surgery Branch、National Cancer Institute、NIHから提供された。これらのCTLクローンは、ペプチド免疫処置を受けた患者から採取したPBMCのバルク培養物をクローニングすることによって作製したものであった(26)。CTLクローンを、照射を受けたメラノーマFM3D細胞(抗原のソースとして)及びEBVで形質転換されたJY細胞(抗原提示細胞としてのB−リンパ芽球)と共にインキュベートすることによって増殖させた。刺激混合物は、OKT3抗体(30ng/mL)及び50IU/mLのIL−2及びIL−4も含んでいた。
細胞毒性アッセイ:96ウェルプレート(2〜5×10細胞/ウェル)を用いてRMPI+10FCS中で標的細胞を培養した。細胞を洗浄し、メチオニン及び無血清培地と共に4時間インキュベートし、続いて560000Bq/mL(15μCi/mL)の35S−メチオニン(NEN)と共にインキュベートした(終夜)。B2M−aTac(dsFv)−ペプチド複合体と共に3時間インキュベート(37℃、10〜20μg/mL)した後、エフェクターCTL細胞を示された標的:エフェクター比で添加し、37℃で8〜12時間インキュベートした。インキュベート後、培養上清試料50μl中の標的細胞から放出される35S−メチオニンを測定した。すべてのアッセイを3回繰り返して実施した。特異的溶解パーセントを以下のように、すなわち、[(実験による放出−自然放出)/(最大放出−自然放出)]×100として計算した。自然放出を、エフェクター細胞の非存在下において標的細胞から放出される35S−メチオニンとして測定し、最大放出を、0.1M NaOHで溶解した標的細胞から放出される35S−メチオニンとして測定した。
実験結果
B2M−抗Tac(dsFv)の設計:最近、ヒトβ−2ミクログロブリン遺伝子が15アミノ酸長の柔軟なリンカーを介してHLA−A2重鎖遺伝子(aa 1−275)の3つの細胞外ドメイン(α1、α2及びα3)に連結された可溶性単鎖MHC(scMHC)をコードする構築体が作製された(24、25及び国際公開第01/72768号、これらを参照により本明細書に援用する)。これらのscMHC分子は、大腸菌中で細胞内封入体として発現し、HLA−A2拘束性腫瘍関連又はウイルスペプチドの存在下インビトロでリフォールディングすると、正確に折り畳まれた機能性scMHC−ペプチド複合体及び四量体を形成した(24、25、国際公開第01/72768号)。
これらのscMHC−ペプチド複合体は、それらの生化学的及び生物物理学的諸特性並びにそれらの生物活性によって詳細に特徴付けられており、機能性を有することが見出された(24、25、国際公開第01/72768号)。最も重要なことに、これらの複合体は腫瘍特異的CTL系及びクローンに結合することができそれらを染色することができる。図1a〜hに示したのは、scMHC四量体の形のこれらscMHC−ペプチド複合体とメラノーマ分化抗原gp100エピトープG9−209M及びG9−280Vに特異的なCTLとの構築及び活性である(26)。これらのペプチドは、HLA−A2に対する結合親和性を改善するように、MHCアンカーの2位(G9−209Mの場合)及び9位(G9−280Vの場合)が改変されている(27)。CD8CTLクローン(図1a及び1d)R6C12及びR1E2は、それぞれG9−209M及びG9−280V含有scMHC四量体によって、強く(80〜95%)かつ特異的に染色される(図1b及び1e)。特異性のコントロールとして、G9−209Mに特異的なR6C12及びG9−280Vに特異的なR1E2の各CTLは、それぞれG9−280V及びG9−209M各scHLA−A2四量体によって染色されない(図1c及び1f)。これらのCTLは、野生型未変性エピトープG9−209及びG9−280とも類似した強度で反応した(データ示さず)。
標的とする細胞へ抗体を使用してscMHC分子を送るB2M−aTac(dsFv)分子を生成するために、HLA−A2遺伝子のC末端においてFv断片を(Tac、p55、IL−2R αサブユニットとしても知られる)ヒト化抗CD25のモノクローナル抗体抗Tacの軽鎖可変領域(VL)遺伝子に融合した(28)(図2a)。重鎖可変領域(VH)は他のプラスミドによってコードされて、Fvの構造的に保存されたフレームワーク残基間で操作された鎖間ジスルフィド結合によってVH及びVL各ドメインが共に保持され安定化されたジスルフィド安定化Fv抗体断片(dsFv)を形成する(図2a、2e及び2f)(29、30)。シスチン残基が置かれた位置は、コンピュータベースの分子モデリングによって同定された;それらはVH及びVLの各フレームワーク中に位置するので、さらなる構造情報を必要とせずにすべてのFvを安定化する一般的方法としてこの位置を使用することができる。過去数年間に多数のdsFvが構築され、それらは詳細に特徴付けられ、極めて安定であることが判明しており、結合親和性が他の形の組換え抗体と同等であり多くの場合それらよりも改善されてさえいる(30、31)。
B2M−抗Tac(dsFv)の構築、発現及び精製:B2M−aTac(dsFv)分子を作製するために、2つのT7プロモーターベース発現プラスミドを構築した(上記材料及び実験方法の項も参照されたい);抗Tac VLドメインに融合されたscMHC分子(B2M−aTacVL)は、1つのプラスミドによってコードされており、抗Tac VHドメインは第2のプラスミドによってコードされている。両方のプラスミドにおいて、VL及びVHドメインは保存フレームワーク残基の代わりに操作されてdsFv断片を形成するシステインを含む(30)。scMHC構築体中でβ2−ミクログロブリンとHLA−A2遺伝子を連結するために使用するリンカーと同一である[(gly−ser)、(配列番号3)]の柔軟な15アミノ酸長リンカーによりHLA−A2とVL遺伝子が連結されるオーバーラップエクステンションPCR反応によって、B2M−aTacVL用の発現プラスミドを生成させた(24、25、国際公開第01/72768号)。抗Tac VHドメイン用発現プラスミドの構築についてはすでに記述されている(29)。2つのプラスミドは、大腸菌BL21細胞中で別々に発現する。IPTGで誘導すると、多量の組換えタンパク質が細胞内封入体中に蓄積した。単離し精製した封入体のSDS−PAGE分析から、サイズの正確な組換えタンパク質が、封入体タンパク質全体の80〜90%を占めることが示された(図2b)。各成分の封入体を別々に単離し、溶解し、還元し、メラノーマ分化抗原gp100T細胞エピトープG9−209M及びG9−280Vに由来するHLA−A2拘束性ペプチドの存在下、レドックス混合添加剤及び凝集防止添加剤を含有する再生緩衝液中でリフォールディングさせた(32〜34、27)。溶解し還元した成分B2M−aTacVL及び抗TacVHを、100倍モル過剰のHLA−A2拘束性ペプチドの存在下、1:2のモル比で混合した。このリフォールディング手順を用いて前もって生成させたscMHC−ペプチド複合体及び抗体Fv融合タンパク質は、正確に折り畳まれており、機能性を有することが判明した(24、25、30)。B2M−aTac(dsFv)/ペプチド分子(複合体)を、イオン交換クロマトグラフィによりQセファロースカラムを用いてリフォールディング溶液から精製した。図2cに示すように、MonoQカラムから溶出するピーク画分の非還元SDS−PAGE分析によって、約67kDaの正確な分子量を有する単量体B2M−aTac(dsFv)分子の存在が明らかになった。これらの画分は、VHと対を形成していないB2M−aTacVL単一ドメイン分子も含んでいた。先に他のdsFv融合タンパク質でも示したように、VL融合フォールディングは極めて効率的であり、生成物は溶解性が高いので、これらの単一ドメインB2M分子をB2M−dsFv分子から分離することは困難である。しかし、単一ドメインB2M分子によるコンタミネーションは、可溶性B2M−aTac(dsFv)分子のその後の分析を妨害しなかった。dsFv断片が正確に形成されたことを確認するために、B2M−dsFv分子をその成分に分離する還元SDS−PAGE分析を実施した。図示したのは(図2d)、還元後のB2M−aTacVL及びVHドメインを含むB2M−aTac(dsFv)の分子形である。いずれの場合も、他のサイズ分離技術を使用してB2M−aTac(dsFv)分子を精製し均質にすることができる。
B2M−aTac(dsFv)がその標的抗原であるIL−2受容体(p55)のαサブユニットに結合し得るかどうかを、まずELISAによって精製p55を用いて試験した。p55で被覆したウェルに対する精製B2M−aTac(dsFv)の結合の有無をモニターするために、正しく折り畳まれペプチドを含むときのみのHLA分子を認識するモノクローナル抗体w6/32を用いた。図2eに示すように、B2M−aTac(dsFv)は用量に依存してp55に結合し、dsFv部分が標的抗原に結合できること及びコンホメーション特異的抗HLA抗体によってscMHCが認識されることから示されるように、この分子の2つの機能性ドメインであるscMHCエフェクタードメインと抗体dsFvターゲティングドメインが正確に折り畳まれることが示唆される。
B2M−aTac(dsFv)の標的細胞への結合:B2M−aTac(dsFv)分子が腫瘍細胞上のHLA−A2−ペプチド複合体を覆い標的にすることができるかどうかを試験するために、HLA−A2陰性の腫瘍細胞に対するその結合性をフローサイトメトリーによって試験した。まず、p55遺伝子を安定に形質移入したA431ヒト類表皮癌細胞(ATAC4細胞)(35)を使用し、形質移入された親細胞と形質移入されていない親細胞の染色を試験した。これらの細胞に対するB2M−aTac(dsFv)の結合の有無を抗HLA−A2 MAb BB7.2及びFITC標識二次抗体を用いてモニターした。p55標的抗原の発現を、dsFv断片が由来する抗Tacモノクローナル抗体全体を用いて検出した。図3aに示すように、A431細胞はp55を発現しないが、p55を形質移入したATAC4細胞は抗原を高いレベルで発現する(図3b)。どちらの細胞系もHLA−A2陽性ではなかった(図3c及び3d)。これらの細胞に対するB2M−aTac(dsFv)の結合性を試験すると、ATAC4細胞はB2M−aTac(dsFv)と共にプレインキュベートされたときのみ抗HLA−A2染色が陽性になるが(図3d)、A431細胞はB2M−aTac(dsFv)と共にプレインキュベートされたとき陰性であることが図3c及び3dから示された。
次に、図3eに示すように、p55抗原を発現するがHLA−A2発現を欠く(図3f)白血病細胞に対するB2M−aTac(dsFv)の結合性を試験した。図2fに示すように、p55を発現するATL白血病HUT102W細胞は、B2M−aTac(dsFv)と共にプレインキュベートすると陽性の抗HLA−A2染色を示した。白血病(ATL)p55陽性、HLA−A2陰性CRII−2細胞をB2M−aTac(dsFv)分子と共にプレインキュベートすると類似した結果が観察された(データ示さず)。これらの結果から、B2M−aTac(dsFv)が、細胞表面上に未変性の形で示されるその抗原に結合できることが実証される。最も重要なことは、B2M−aTac(dsFv)を用いて、腫瘍ターゲティング抗体断片の特異性に完全に依存するようにHLA−A2陰性細胞を被覆して、それらをHLA−A2陽性細胞にできることである。
B2M−aTac(dsFv)によって媒介されるCTL溶解感受性の誘導:CTLによって媒介される死滅に対するHLA−A2陰性細胞の感受性をB2M−aTac(dsFv)が増強できるかどうかを試験するために、まず放射標識標的細胞をB2M−aTac(dsFv)と共にインキュベートし、次いでHLA−A2拘束性メラノーマgp100ペプチド特異的CTLの存在下、35S−メチオニン放出アッセイで試験した。図4aに示すように、B2M−aTac(dsFv)は、CTLによって媒介されるp55陽性HLA−A2陰性ATAC4細胞の効率的な溶解を誘導したのに対し、同じB2M−aTac(dsFv)分子は、抗原を発現しないA431細胞の溶解になんら効果を及ぼさず誘導もしなかった。A431及びATAC4細胞のみが、CTLによって媒介される溶解を示さなかった(図4a)。dsFvターゲティング部分に融合されていないscMHCのみ又は抗Tac抗体と共にATAC4細胞をインキュベーションしても、CTLで媒介される溶解に検出可能な増強はもたらされなかった(データ示さず)。B2M−aTac(dsFv)と共にプレインキュベートした(A431細胞ではなく)ATAC4細胞をG9−209Mペプチド特異的CTLが死滅させる能力は、高レベルのHLA−A2及びgp100メラノーマ分化抗原を発現するメラノーマFM3D細胞をこれらのCTLが溶解する効率と同等であり、多くの実験ではそれ以上であった(36)(図4b)。B2M−aTac(dsFv)分子のリフォールディングにおいて使用されるHLA−A2拘束性抗原ペプチドに対する、B2M−aTac(dsFv)によって媒介されるCTL死滅の特異性を示すために、gp100主要T細胞エピトープG9−209M及びG9−280Vに対して特異的な2つのCTLクローンを使用した。図4cに示すように、G9−209Mペプチドと同じメラノーマ分化抗原由来のG9−280VエピトープでもHTLV−1 HLA−A2拘束性T細胞エピトープTAXの周りにリフォールディングされたB2M−aTac(dsFv)でもなく、G9−209Mペプチドと共にリフォールディングされたB2M−aTac(dsFv)と共にプレインキュベートしたときのみ、p55陽性HLA−A2陰性ATAC4細胞は、G9−209Mペプチド特異的CTLクローンR6C12によって溶解された。同様に、G9−209MペプチドでもTAXペプチドでもなくG9−280Vエピトープと共にリフォールディングされたB2M−aTac(dsFv)と共にプレインキュベートしたときのみ、G9−280V特異的CTLクローンR1E2によってATAC4細胞が死滅した(図4d)。次いで、B2M−aTac(dsFv)によって媒介される、HLA−A2陰性白血病細胞HUT102W及びCRII−2を発現するp55のCTL溶解を試験した。図4eに示すように、HUT102W及びCRII−2は、G9−209Mペプチド及びG9−280V gp100ペプチドそれぞれに特異的なHLA−A2拘束性CTLクローンR6C12及びR1E2による溶解に対して感受性が低かった。しかし、これらのp55陽性HLA−A2陰性標的細胞をB2M−aTac(dsFv)分子と共にプレインキュベートすると、CTLによって媒介される溶解が有意に増強されることが、B2M−aTac(dsFv)複合物中に存在するgp100ペプチドに特異的に認められた(図4e)。B2M−aTac(dsFv)で被覆されたHUT102W細胞は、G9−209Mペプチド特異的R6C12 CTLクローン及びG9−280Vペプチド特異的R1E2 CTLクローンによって効率的に死滅し、CRII−2細胞はR1E2 CTLクローンによって溶解された。p55を発現しないコントロールの非メラノーマHLA−A2陽性及び陰性標的細胞は、B2M−aTac(dsFv)分子で被覆されていると否とにかかわらず、メラノーマ特異的CTLクローンによる溶解に対して検出可能な感受性を示さなかった(データ示さず)。これらの結果は、腫瘍細胞上にあるMHCペプチド複合体の抗体誘導腫瘍抗原特異的ターゲティングに対して、B2M−aTac(dsFv)構築体を効率的に使用して、関連するCTLによる溶解に対する腫瘍細胞の感受性を高め、したがって、抗腫瘍免疫応答を増強できるという考え方をインビトロで明確に実証するものである。
B2M−aTac(dsFv)のインビボでの活性:
始めにヒト腫瘍モデルにおけるB2M−aTac(dsFv)のインビボでの活性を評価するために、G9−209M gp100に由来するペプチドに特異的なR6C12 CTLがATAC4細胞に混合されたウインタイプ(win−type)のアッセイを、B2M−aTac(dsFv)分子の存在下又は非存在下で実施した。ヌードマウスにこの混合物を皮下注射し、次いで、ヒト異種移植片を形成させた。図5に示すように、ATAC4細胞によって、皮下注射後10〜12日でヌードマウスに異種移植片が生成した。
ATAC4とR6C12 CTLの混合物は、腫瘍成長に有意な効果を及ぼさなかった。しかし、IL−2受容体を発現するATAC4細胞をB2M−aTac(dsFv)及びR6C12 CTLと混合すると、腫瘍成長が完全に抑制されることが認められ、B2M−aTac(dsFv)によって誘導されCTLによって媒介されるATAC4標的細胞がインビボで効率的に死滅することが示された。インビトロでの結果(図4a〜e)から、インビボでのアッセイに使用したB2M−aTac(dsFv)の量及びエフェクター/標的比によってATAC4標的細胞の最大溶解(95〜100%死滅)がもたらされることが確認された。B2M−aTac(dsFv)の存在下又は非存在下でR6C12 CTLと混合したIL−2受容体陰性A431親細胞では腫瘍が効率的に生成し、腫瘍成長に対する効果は認められなかった(示さず)。
明確にするために別々の実施態様の文章中に記載した本発明の特定の特徴は、組み合わせて単一の実施態様として提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施態様の文章中に記載した本発明の様々な特徴を、別々に又は任意の適切なサブコンビネーションとして提供することもできる。
本発明をその具体的な実施態様に即して記載したが、多数の代替態様、改変態様及び変形態様が当業者に明らかであることは言うまでもない。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広範な範囲内にあるこのような代替態様、改変態様及び変形態様はすべて包含されるものである。本明細書に記載した出版物、特許及び出願特許はすべて、それぞれ個別の出版物、特許及び出願特許が具体的かつ個別に示され参照により本明細書に援用されるのと同じ程度に、参照によりそれらの全体を本明細書に援用する。また、本願において参考文献を引用し確認することは、このような参考文献が本発明の従来技術として有用であることを認知するものと解釈すべきではない。
参照文献
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インビトロでリフォールディングしたscHLA−A2複合体のCTLへの結合を示している。メラノーマ分化抗原gp100特異的なCTLクローンR6C12とR1E2を、R6C12 CTLによって認識されるG9−209MエピトープとR1E2 CTLによって認識されるG9−280Vペプチドとを含有するインビトロでリフォールディングした精製scHLA−A2テトラマーと反応させた。CTLは、FITC−抗CD(図1aと1d)、PE標識scHLA−A2/G9−209Mテトラマー(図1bと1f)、scHLA−A2/G9−280Vテトラマー(図1cと1e)で染色した。R6C12とR1E2 CTLは、それぞれ、特異的なG9−209M及びG9−280Vテトラマーによって染色されたが、対照テトラマーによっては染色されなかった。 図1gは、図1a−fに記載した実験で用いたscHLA−A2を模式的に示した図である。図1hは、図1gに模式的に示したscHLA−A2の核酸配列(配列番号1)とアミノ酸配列(配列番号2)を表す図である。 図2A−2Dは、B2M−aTac(dsFv)の設計、発現、精製、及び生化学的な性質の決定を表す図である。B2M−aTac(dsFv)構築体は、一本鎖MHCを抗体の可変Fv断片に融合させることによって作製した。一本鎖HLA−A2遺伝子では、ヒトα−2mは、柔軟な15アミノ酸長のリンカー[(Gly−Ser)、すなわち、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号3)、GGCGGAGGAGGGTCCGGTGGCGGAGGTTCAGGAGGCGGTGGATCG(配列番号15)によってコードされる]を介して、HLA−A2の3つの細胞外ドメインに融合された。scHLA遺伝子を抗体Fv断片に接続するのにも、同一のペプチドリンカーを用いた。抗体のVL可変ドメインは、VH可変ドメインを別個に発現させながら、scHLA−A2遺伝子のC末端に融合させた。2つのプラスミドを別個の培養物中で発現させ、可溶化した還元封入体を合わせると、ジスルフィドによって安定化されたFv断片(dsFv)(Fv可変ドメインが、保存されたフレームワーク残基間に作り出された鎖間ジスルフィド結合によって安定化されている)が形成された。 図2Bは、B2M−aTac(dsFv)の成分、すなわちB2M−aTacVLとaTacVHを発現するように誘導された細菌培養物から得られた封入体のSDS−PAGE2を示している。 図2Cは、Q−セファロースカラムでイオン交換精製を行った後のB2M−aTac(dsFv)の非還元ゲルと還元ゲル上でのSDS−PAGE分析を示している。 図2Dは、リフォールディングしたB2M−aTac(dsFv)/G9−209Mの標的抗原p55への結合を表している。結合の検出は、コンフォメーション特異的なMAb w6/32を用いて行った。 図2Eは、図2aにおいてB2M−aTac(dsFv)の一部として模式的に示したB2M−aTacVLの核酸配列(配列番号4、リンカー配列は、大文字でない文字で示されている)とアミノ酸配列(配列番号5)を表している。 図2Fは、B2M−aTac(dsFv)として図2aで模式的に示したTacVHの核酸配列(配列番号6)とアミノ酸配列(配列番号7)を表している。 図3a−fは、HLA−A2陰性の腫瘍標的細胞へのB2M−aTac(dsFv)の結合を表している。抗原陽性HLA−A2陰性の細胞へのB2M−aTac(dsFv)の結合のフローサイトメトリー分析。図3aは、抗Tac MAb(赤)のA431への結合を示している。図3bは、抗Tac MAbのTac(p55)のトランスフェクトA431(ATAC4)細胞(赤)への結合を示している。図3cは、B2M−aTac(dsFv)とともにインキュベートした(赤)又はインキュベートしなかった(青)A431細胞への抗HLA−A2 MAb BB7.2の結合を示している。図3dは、B2M−aTac(dsFv)とともにプレインキュベートした(赤)又はインキュベートしなかった(青)p55トランスフェクトATAC4細胞へのMAb BB7.2の結合を示している。図3eは、白血病性HUT102Wへの抗Tac MAb(赤)の結合を示している。図3fは、B2M−aTac(dsFv)とともにプレインキュベートした(赤)又はインキュベートしなかった(青)HUT102W細胞へのMAb BB7.2の結合を示している。 図4a−eは、B2M−aTac(dsFv)によって、HLA−A2陰性腫瘍細胞のCTL媒介性の溶解が強化されることを示している。B2M−aTac(dsFv)−ペプチド複合体でコートされた標的細胞又はコートされていない標的細胞を、メラノーマ反応性gp100−ペプチド特異的CTLとともに、35メチオニン放出アッセイにおいてインキュベートした。図4aは、A431及びp55トランスフェクトATAC4 HLA−A2細胞をB2M−aTac(dsFv)/G9−209M複合体とともにプレインキュベートした後、又はプレインキュベートせずに、G9−209M−特異的CTLであるR6C12とともにインキュベートした。対照は、培地のみとインキュベートした細胞であった。図4bは、A431及びp55トランスフェクトATAC4 HLA−A2細胞をB2M−aTac(dsFv)/G9−209M複合体とともにプレインキュベートした後、G9−209M−特異的CTLであるR6C12 CTLとともにインキュベートした。FM3DはHLA−A2、gp100メラノーマ細胞である。図4cは、HLA−A2拘束性ペプチドG9−209M、G9−280V、及びTAXによってリフォールディングされたB2M−aTac(dsFv)とともに、p55トランスフェクトATAC4細胞をプレインキュベートした後、図4cでは、G9−209M特異的CTLクローンR6C12とともに、図4dでは、G9−280V特異的CTLクローンR1E2とともにインキュベートした。図4dは、HLA−A2拘束性ペプチドG9−209M、G9−280V、及びTAXによってリフォールディングされたB2M−aTac(dsFv)とともに、p55トランスフェクトATAC4細胞をプレインキュベートした後、図4cでは、G9−209M特異的CTLクローンR6C12とともに、図4dでは、G9−280V特異的CTLクローンR1E2とともにインキュベートした。図4eは、HUT102W及びCRII−2 HLA−A2白血病性細胞を、適切なペプチドを含有するB2M−aTac(dsFv)複合体とともにプレインキュベートした後(w)、又はプレインキュベートせずに(w/o)、表記のように、G9−209M特異的なR6C12 CTL又はG9−280V特異的なR1E2 CTLとともにインキュベートした。 図5は、B2M−aTac(dsFv)を用いたインビボwinアッセイの結果を示すグラフである。200μl中、B2M−aTac(dsFv)(20−50μg/mL)の存在下又は不存在下で、ATAC4細胞(1×10)をR6C12 CTL(1×10)(E:T 10:1)と混合した。該混合物をヌードマウスに皮下注射し、腫瘍の出現を観察した。ATAC4細胞単独を対照として用いた。 図6は、本発明の好ましい免疫分子の模式図である。箱の間をつなぐ線は、箱の中の成分間の共有結合(例えば、翻訳による融合)を表している。

Claims (5)

  1. 以下の連続的セグメント中に存在するアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドであって:前記セグメントは、当該ポリペプチドのアミノ末端で始まって、(i)ヒトβ−2ミクログロブリン、(ii)第一のペプチドリンカー、(iii)ヒトMHCクラスI分子のHLA−A2鎖、(iv)腫瘍特異的抗体ターゲッティングドメインであり、ここでのセグメント(iii)および(iv)に対応するアミノ酸配列は第二のペプチドリンカーによって相互に結合されており、またセグメント(i)〜(iii)の各々のカルボキシ末端は、それぞれセグメント(ii)〜(iv)のアミノ末端に結合されているポリペプチド
  2. 請求項1に記載のポリペプチドであって、前記セグメント(iv)の抗体ターゲッティングドメインは機能的な抗体断片を含んでなるポリペプチド
  3. 請求項2に記載のポリペプチドであって、前記機能的抗体断片が重鎖可変領域および軽鎖可変領域の会合を含んでなるポリペプチド
  4. 請求項3に記載のポリペプチドであって、前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域は分子間ジスルフィド結合によって相互に結合されるポリペプチド
  5. 請求項1に記載のポリペプチドであって、前記腫瘍特異的抗体ターゲッティングドメイン(iv)は、腫瘍関連抗原もしくは腫瘍特異的抗原に結合できるように選択されるポリペプチド。
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