以下、図面を参照して、この発明にかかる被検体内導入装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。この被検体内導入装置1は、被検体の内部に導入され、予め貯蔵室内に貯蔵した薬液を被検体内の所望部位に注射するためのものである。図1に示すように、被検体内導入装置1は、患者等の被検体が飲み込み易い大きさのカプセル型の筐体2を有する。被検体内導入装置1は、かかる筐体2の内部に、薬液を貯蔵する貯蔵室3を形成するバルーン4と、薬液を被検体内の所望部位に注射するための注射針5と、貯蔵室3に連通する第1管路と注射針5側に連通する第2管路とを形成するチューブ10および管路形成部11とを有する。また、被検体内導入装置1は、かかる第1管路と第2管路との連通状態を調整する連通調整機構12と、薬液の吐出圧力を用いて注射針5を筐体2の外部に突き出す弾性膜6と、連通調整機構12の駆動状態を制御する制御回路13と、制御回路に対して駆動電力を供給する電源部14とを有する。
貯蔵室3は、被検体内の所望部位に注射する薬液を予め貯蔵するためのものである。具体的には、この実施の形態1において、貯蔵室3はバルーン4の内表面と管路形成部11の表面によって覆われた領域に形成され、かかる領域に薬液が貯蔵される。バルーン4は、貯蔵室3の外壁の大部分を形成し、ゴム等の弾性部材を用いて実現される。バルーン4は、所定量の薬液が注入されることによって伸張し、このように伸張した状態すなわち貯蔵室3を膨張させた状態を維持しつつ薬液を貯蔵する。また、バルーン4は、後述する連通調整機構12の作用と弾性膜6の作用とによって貯蔵室3と注射針5とが連通した場合、その収縮作用に伴って貯蔵室2の容積を減少させて薬液を加圧し、注射針5を介して薬液を吐出する。すなわち、バルーン4は、薬液を吐出するために貯蔵室3の容積を縮小して薬液を加圧する薬液加圧手段として機能する。
注射針5は、薬液の吐出に関する所定の駆動源を用いて筐体2から突出し、貯蔵室3に貯蔵した薬液を被検体内の所望部位に注射するためのものである。注射針5は、被検体に穿刺する先端側(尖形をなす側)と基端側近傍の側部とを連通する管路5aを内部に形成し、筐体2に出し入れ自在に設けられる。具体的には、注射針5は、弾性膜6に保持された状態で基端側を針収納部7に収納され、弾性膜6の伸張作用によって筐体2の外部に突出し、弾性膜6の収縮作用によって筐体2内に収納される。この場合、注射針5は、筐体2に設けたガイド2bに沿って摺動し、筐体2の開口部2aを介して出し入れされる。
弾性膜6は、ゴムまたはシリコーン樹脂等の弾性部材であり、薬液の吐出圧力によって注射針5を突き出し、または突き出た注射針5を弾性力によって筐体2内に収納するためのものである。具体的には、弾性膜6は、注射針5に貫かれた態様で、ほぼ中央近傍に注射針5を保持し、膜保持部8に周縁が保持される。この場合、弾性膜6は、注射針5と膜保持部8とに挟まれる領域が自由であり、かかる領域に薬液の吐出圧力(薬液の吐出に関する物理力の一例)を受けることによって伸張できる。
このような弾性膜6およびバルーン4と後述するチューブ10および管路形成部11とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室3の容積を縮小して貯蔵室3内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液の吐出圧力)を用いて注射針5を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室3内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針5を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
針収納部7は、注射針5の基端側を収納するためのものである。また、膜保持部8は、上述したように弾性膜6を保持するためのものである。具体的には、膜保持部8は、開口部2a近傍の筐体2の内壁に設けられ、注射針5を保持する弾性膜6の周縁を保持する。針収納部7は、弾性膜6の周縁を膜保持部8に押し付ける態様で筐体2の内側に固設される。この場合、弾性膜6と針収納部7とによって囲まれる領域には、注射針5を介して外部に吐出する薬液を一時的に貯める空間9が形成される。
また、かかる態様で針収納部7および膜保持部8が弾性膜6の周縁部分を固定することによって、弾性膜6は、空間9に吐出された薬液が注射針5およびチューブ10以外たとえばバルーン4または膜保持部8等が配置された筐体2内の領域に漏出することを防止する。
チューブ10および管路形成部11は、上述した第1管路および第2管路を形成するためのものである。具体的には、管路形成部11は、管路11a,11bが内部に形成され、管路11bと空間9とを連通する態様でチューブ10が取り付けられる。この場合、管路11aは、バルーン4の内部すなわち貯蔵室3に連通し、管路11bおよびチューブ10は、貯蔵室3に対して注射針5側である空間9に連通する。すなわち、管路11aは、上述した第1管路を形成し、管路11bおよびチューブ10は、上述した第2管路を形成する。このようなチューブ10および管路形成部11は、連通調整機構12の作用によって管路11a,11bが連通した場合、貯蔵室3内の薬液を空間9に流通する。
なお、かかる管路11a,11bは、筐体2の長手方向に沿って互いに平行に形成されることが望ましい。このように管路11a,11bを形成することによって、管路形成部11の規模を可能な限り小さくでき、被検体内導入装置1の小型化を促進できる。
連通調整機構12は、制御回路13の制御に基づいて管路11a,11bの連通状態を調整するためのものである。連通調整機構12は、かかる調整動作を行うことによって、バルーン4の収縮動作すなわち貯蔵室3の容積を縮小して薬液を加圧し、薬液を吐出する吐出動作の開始および停止を制御する機能を有する。具体的には、連通調整機構12は、管路形成部11を挿通したシート保持部12aと、シート保持部12a上に露出する管路形成部11の端部を覆うようにシート保持部12aに配置されたシート部材12bと、シート部材12bの周縁部分をシート保持部12aに対して密着した状態で固定する固定部材12cとを有する。また、連通調整機構12は、シート部材12bに対して所定の押圧力を印加する押圧部材12dと、押圧部材12dが印加する押圧力を生成するバネ12fと、バネ12fを保持するバネ基板12gと、シート部材12bに対する押圧部材12dの位置を変化させる形状記憶部材12eとを有する。
シート保持部12aは、シート部材12bを保持するための板状部材である。具体的には、シート保持部12aは、たとえば筐体2の内壁に固定され、管路形成部11に貫通された態様で管路形成部11を保持するとともに、かかる管路形成部11の端部が露出する領域を覆う態様でシート部材12bを保持する。なお、シート保持部12aまたはバネ基板12gには、バルーン4等が配置された空間と押圧部材12d等が配置された空間と制御回路13等が配置された空間とを互いに遮断しないように通気口(図示せず)を形成することが望ましい。このことは、バルーン4を配置した筐体2内の空間においてバルーン4の収縮動作に伴って負圧が生じることを抑制し、バルーン4の収縮動作が阻害されることを防止できる。
シート部材12bは、上述した第1管路と第2管路との連通状態すなわち管路11a,11bの連通状態を物理的に制御するためのものである。具体的には、シート部材12bは、たとえばシリコンシート等の水密かつ柔軟な材料によって形成され、シート保持部12a上に露出する管路形成部11の端部を覆うようにシート保持部12aに配置されるとともに、固定部材12cによって周縁部分がシート保持部12aに対して密着した状態で固定される。また、シート部材12bは、押圧部材12dによって所定の押圧力が印加された場合、管路形成部11の端部に密着した状態に維持され、これによって管路11a,11bの開口部を塞ぎ、管路11a,11bの連通状態を遮断する。一方、シート部材12bは、押圧部材12dによる押圧力が低下した場合、管路11aから吐出する薬液の吐出圧力によって管路形成部11の端部から離れ、これによって管路11a,11bを連通する。
固定部材12cは、シート部材12bの周縁部分をシート保持部12aに対して固定するためのものである。具体的には、固定部材12cは、シート部材12bの周縁部分に対してシート保持部12a側に押圧力を印加することによってシート部材12bの周縁部分とシート保持部12aとを密着固定する。かかる態様で固定部材12cがシート部材12bを固定することによって、シート部材12bの中心部分すなわち管路形成部11の端部近傍は、押圧部材12dの押圧力に応じて形状を自由に変形させる。これと同時に、このように配置されたシート部材12bは、管路11a,11b間を流通する薬液が管路11a,11b以外たとえば押圧部材12dまたは制御回路7等が配置された筐体2内の領域に漏出することを防止する。
バネ12fは、押圧部材12dがシート部材12bに対して印加する押圧力を生成するためのものである。具体的には、バネ12fは、一端がバネ基板12gに対して固定されるとともに他端が押圧部材12dに対して固定され、かつバネ長が自然長に比して短い状態に維持されている。このように配置されたバネ12fは、押圧部材12dに対し、シート部材12bが位置する方向に弾性力(弾発力)を付勢するように機能する。
形状記憶部材12eは、シート部材12bに対する押圧部材12dの位置を変化させるためのものである。具体的には、形状記憶部材12eは、棒状またはコイル状(たとえばSMAコイル)の構造を有し、所定の形状記憶特性を有するとともに所定の電気抵抗値を有する形状記憶合金によって形成される。かかる形状記憶部材12eは、一端がバネ基板12gに対して固定されるとともに他端が押圧部材12dに対して固定され、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件では押圧部材12dがシート部材12bに当接するに充分な長さを有する。一方、形状記憶部材12eは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に比して充分高い温度条件の下ではその形状を変化させ、シート部材12bに対して押圧部材12dが離隔するように作用する。
制御回路13は、形状記憶部材12eに対する電流供給の有無によって形状記憶部材12eの形状変化を制御し、かかる形状変化の制御を通じて貯蔵室3内の薬液の吐出開始および吐出停止を制御するように機能する。具体的には、制御回路13は、被検体の内部に導入された被検体内導入装置1が被検体内の所望部位たとえば患部に到達した場合に形状記憶部材12eに対して電流を供給するように機能する。かかる電流が形状記憶部材12eを流れることによって、形状記憶部材12eにジュール熱が発生し、このジュール熱に起因して形状記憶部材12eが所定の温度以上に上昇する。かかる温度上昇によって、形状記憶部材12eの形状は、上述したように変化する。この場合、貯蔵室3内の薬液は、管路11a,11bとチューブ10と空間9注射針5の管路5aとを介して被検体内の所望部位に吐出(注射)される。一方、制御回路13は、形状記憶部材12eに対する電流供給を停止することによって形状記憶部材12eを所定温度未満(たとえば被検体内の温度と同程度)に低下させる。かかる温度低下によって、形状記憶部材12eは、押圧部材12dをシート部材12bに押圧するように形状を変化する。この場合、バルーン4は、貯蔵室3の容積を縮小する動作を停止して薬液の吐出動作を停止する。
なお、制御回路13による電流供給のタイミングを規定する構成としては、たとえばタイマー機構を備えることとしてもよいし、無線受信機構を内蔵するとともに外部より制御信号を供給することとしてもよい。
つぎに、被検体内導入装置1の動作について説明する。図2は、弾性膜6に薬液の吐出圧力を印加して注射針5を筐体2から突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図2を参照しつつ注射針5の突き出し動作および薬液の吐出動作について説明する。
まず、制御回路13は、形状記憶部材12eに対して所定の電流を供給し、形状記憶部材12eにジュール熱を発生させて形状記憶部材12eの温度を上昇させる。形状記憶部材12eは、所定温度以上に温度上昇がなされた場合に形状を変化させる。具体的には、形状記憶部材12eは、棒状に形成されるとともに高温時に長手方向長さが収縮するように予め形状記憶がなされており、ジュール熱によって所定の温度以上に温度上昇した場合、その長手方向長さが短くなるように形状を変化する。形状記憶部材12eの一端に対して固定された押圧部材12dは、このように形状記憶部材12eの長手方向長さが収縮することによって、図2に示すようにシート部材12bから離れる方向に移動する。これによって、シート部材12bに対する押圧力は、減少または無(すなわち零)になる。
このようにシート部材12bに対する押圧力が減少することによって、シート部材12bと管路形成部11の端部との密着状態が解消される。この場合、管路11a,11bは連通状態に変化し、このことをトリガーとして、バルーン4は、その収縮作用によって貯蔵室3の容積を縮小する収縮動作を開始するとともに貯蔵室3内の薬液を加圧する。かかるバルーン4の収縮動作によって加圧された薬液は、図2に示すように、上述した第1管路および第2管路を形成する管路11a,11bとチューブ10とを介して注射針5側すなわち空間9に吐出される。
かかるバルーン4は、管路11a,11bが連通状態である限り収縮動作を継続し、空間9に薬液を順次吐出するとともに、弾性膜6に対して薬液の吐出圧力を印加する。この場合、空間9内の薬液の貯留量は、このバルーン4による収縮動作に伴って増加し、この貯留量の増加に伴って、弾性膜6に印加する薬液の吐出圧力が増加する。弾性膜6は、このように印加される薬液の吐出圧力を用いて徐々に伸張し、かかる伸張に伴って注射針5を筐体2から突き出す方向に摺動させる。これと同時に、弾性膜6は、その伸張した形状を収縮する(すなわち元の形状に戻そうとする)弾性力を生成する。弾性膜6は、この弾性力以上の吐出圧力が印加されることによって伸張し続ける。この薬液の吐出圧力が所定の閾値以上に増加した場合、弾性膜6は、筐体2から注射針5を突き出すとともに、注射針5の管路5aと空間9とを連通させる。
このように弾性膜6が注射針5を突き出すことによって、管路11a,11bとチューブ10と空間9と管路5aとが互いに連通状態になり、バルーン4は、管路11a,11bとチューブ10と空間9と管路5aとを介して薬液を注射針5の先端から吐出できる。すなわち、かかるバルーン4、弾性膜6、チューブ10、および管路形成部11は、薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出圧力を用いて注射針5を筐体2から突き出す薬液吐出手段を構成する。また、上述した連通調整機構12および制御回路13は、かかる薬液吐出手段による薬液の吐出動作を開始する制御を行う吐出制御手段を構成する。
その後、バルーン4は、所望量の薬液を吐出し終えるとともに収縮動作を徐々に停止し、弾性膜6に印加する薬液の吐出圧力を徐々に低下させる。そして、この薬液の吐出圧力が弾性力未満に低下した場合、かかる伸張した弾性膜6は、その弾性力によって収縮するとともに注射針5を筐体2内に向けて摺動し、この薬液の吐出圧力が上述した閾値未満に低下した場合、注射針5の尖形の先端までを筐体2内に収納する。これと同時に、針収納部7は、注射針5の基端部近傍を収納して空間9と管路5aとの連通状態を遮断する。すなわち、かかるバルーン4は、所望量以上の薬液を吐出し終えた場合に収縮動作を完了し、かかる弾性膜6は、所望量以上の薬液が吐出された場合に弾性力によって注射針5を筐体2内に収納する。
一方、かかる吐出制御手段を構成する連通調整機構12および制御回路13は、上述した管路11a,11bの連通状態を遮断する動作を行って、バルーン4の収縮動作による薬液の吐出動作を停止する制御を行うことができる。具体的には、制御回路13は、形状記憶部材12eに対する電流供給を停止し、形状記憶部材12eを所定温度未満に温度低下させる。かかる制御回路13の制御によって、形状記憶部材12eは、押圧部材12dをシート部材12bに当接可能な形状に復帰する。この場合、押圧部材12dは、バネ12fによって生成される押圧力を用いてシート部材12bと管路形成部11の端部とを密着状態にし、管路11a,11bの連通状態を遮断する。
このように管路11a,11bの連通状態を遮断することによって、バルーン4は、その収縮動作を停止して薬液の吐出動作を中断する。この場合、バルーン4は、所望量以上の薬液を吐出し終えていなければ、その収縮動作を再開できる程度の弾性力(収縮力)を有している。弾性膜6に印加される薬液の吐出圧力は、この吐出動作の中断に伴って、上述した閾値以下に低下する。これによって、弾性膜6は、上述した所望量以上の薬液を吐出し終えた場合とほぼ同様に、筐体2内に注射針5を収納する。
その後、制御回路13が上述したように形状記憶部材12eに対する電流供給を再開すれば、管路11a,11bは再度連通状態になり、バルーン4は、その収縮動作を開始して薬液の吐出動作を再開する。このように連通調整機構12および制御回路13が薬液の吐出動作を停止する制御と再開する制御とを繰り返すことによって、バルーン4は、所望量以上の薬液を吐出し終えるまで、その収縮動作を間欠的に繰り返すことができる。すなわち、かかるバルーン4、弾性膜6、チューブ10、および管路形成部11を用いて構成される薬液吐出手段は、上述した薬液の吐出圧力による注射針5の突き出し動作と薬液の吐出動作とを間欠的に繰り返すことができる。
つぎに、薬液の吐出圧力を用いて注射針5を突き出して被検体内の所望部位に薬液を注射し終えるまでの被検体内導入装置1の一連の動作について具体的に説明する。図3は、弾性膜6に印加される薬液の吐出圧力の変化を模式的に例示する模式図である。図4は、薬液の吐出動作を開始してから注射針5の突き出し動作を開始するまでの状態変化を模式的に示す断面模式図である。図5は、注射針5の突き出し動作を開始してから薬液を所望部位に注射するまでの状態変化を模式的に示す断面模式図である。図6は、薬液を所望部位に注射してから注射針5を筐体2内に収納するまでの状態変化を模式的に示す断面模式図である。以下、図3〜6を参照しつつ被検体内の所望部位に薬液を注射し終えるまでの被検体内導入装置1の一連の動作について説明する。
被検体内導入装置1が、被検体の内部に導入され、被検体内の所望部位たとえば患部100に到達した場合、制御回路13は、上述したように形状記憶部材12eに対して所定の電流を供給し、形状記憶部材12eの形状変化を制御する。かかる制御回路13の制御によって、押圧部材12dは、シート部材12bから離れてシート部材12bと管路形成部11の端部との密着状態を解消する。これに伴い、バルーン4は、上述したように、貯蔵室3の容積を縮小する収縮動作を開始するとともに、管路11a,11bとチューブ10とを介して空間9に薬液を吐出する。かかるバルーン4は、空間9内に薬液を順次吐出するとともに、弾性膜6に対して薬液の吐出圧力を印加する。
この場合、被検体内導入装置1は、図4に示すように、バルーン4の収縮動作を開始する前の状態であって空間9に薬液が吐出されていない状態(初期状態)から、空間9内に薬液を吐出して弾性膜6に薬液の吐出圧力を印加し始めた状態(局注準備状態)に状態変化する。この局注準備状態において、弾性膜6は、この薬液の吐出圧力を用いて伸張するとともに、筐体2から突出する直前まで注射針5を摺動する。この突出する直前の状態では、注射針5の基端部近傍の開口は針収納部7の内部に位置し、これによって空間9と管路5aとの連通状態が遮断される。
ここで、弾性膜6に印加される薬液の吐出圧力Pは、図3に示すように、バルーン4による収縮動作が実行される時間tの経過に伴って変化する。たとえば、吐出圧力Pは、上述した局注準備状態において所定の閾値Pthまで上昇する。なお、この閾値Pthは、弾性膜6が注射針5を筐体2から突き出すために必要な吐出圧力である。すなわち、弾性膜6は、この閾値Pth以上の吐出圧力Pが印加された場合に注射針5を筐体2から突き出すことができる。
その後、バルーン4は、上述した収縮動作を継続することによって薬液を空間9内にさらに吐出し、吐出圧力Pをさらに増加させる。弾性膜6は、かかるバルーン4の収縮動作によって閾値Pth以上の吐出圧力Pが印加された場合、さらに伸張して注射針5を筐体2から突き出すとともに、空間9と管路5aとを連通させる。この場合、被検体内導入装置1は、図5に示すように、上述した局注準備状態から注射針5を患部100に突き刺して薬液を患部100に注射する状態(局注状態)に状態変化する。具体的には、この局注状態において、注射針5は、弾性膜6の伸張作用によってガイド2bを摺動し、筐体2から突出するとともに患部100に突き刺さる。これと同時に、バルーン4は、その収縮動作を継続し、管路5aを介して薬液を患部100に注射する。このように収縮動作を継続することによって、バルーン4は、患部100に対して所望量の薬液を注射する。かかる局注状態において、吐出圧力Pは、図3に示すように、所望量の薬液が患部100に注射されるまで増加し、閾値Pth以上の状態を維持する。
所望量の薬液が患部100に注射された場合、バルーン4は、かかる収縮動作の継続に伴って、その弾性力(すなわち収縮力)を徐々に低下させる。吐出圧力Pは、図3に示すように、所望量の薬液が注射された時期を境に閾値Pthまで徐々に低下する。バルーン4は、所望量以上の薬液を吐出し終えるとともに、その収縮力をほぼ失って薬液の吐出動作を徐々に停止する。
注射針5を突き出すために伸張した弾性膜6は、かかる吐出圧力Pの低下に伴い、その弾性力を用いて収縮し、筐体2内に収納する方向に注射針5を摺動させる。その後、吐出圧力Pは、図3に示すように、バルーン4の収縮力の低下に伴って閾値Pth未満に低下する。この場合、被検体内導入装置1は、図6に示すように、上述した局注状態から局注完了状態に状態変化する。この局注完了状態において、弾性膜6は、吐出圧力Pに比して高い弾性力を有するようになり、かかる弾性力を用い、注射針5を患部100から抜いて筐体2内に尖形の先端まで収納する。このように収納された注射針5は、ガイド2bに沿って摺動し、その基端部近傍の開口を針収納部7の内部に入れる。これによって、空間9と管路5aとの連通状態は遮断され、バルーン4は薬液の吐出動作を完了する。このようにして、被検体内導入装置1は、被検体内の所望部位に薬液を注射し終えるまでの一連の動作を達成する。
以上、説明したように、この発明の実施の形態1では、伸縮自在な弾性膜のほぼ中央を貫通する態様で注射針を設け、この弾性膜の伸縮作用によって注射針が摺動するようにし、このように注射針を保持した弾性膜に対して薬液の吐出圧力を印加した場合、かかる弾性膜がこの薬液の吐出圧力を用いて伸張するとともに注射針を筐体から突き出すように構成した。このため、かかる注射針の突き出し動作を実行するために新たな駆動電力を消費する必要がなく、注射針の突き出し動作を省電力化して実行できる被検体内導入装置を実現することができる。
また、このように注射針を保持した弾性膜は、その伸張作用に伴って弾性力(収縮力)を生成し、印加される薬液の吐出圧力がこの弾性力未満に低下した場合に、この弾性力を用いて注射針を筐体内に収納するように構成している。このため、かかる注射針の収納動作を実行するために新たな駆動電力を消費する必要がなく、注射針の収納動作を省電力化して実行できる被検体内導入装置を実現することができる。
さらに、かかる構成を採用することによって、注射針の突き出し動作を実行する新たな駆動機構を設ける必要がなく、被検体内の所望部位に薬液を注射するための駆動機構を単純化でき、装置規模を小さくした被検体内導入装置を簡易に実現できる。
また、注射針の収納動作を実行する新たな駆動機構を設ける必要がなく、被検体内の所望部位に薬液を注射し終えた後の注射針を収納するための駆動機構を単純化でき、装置規模を小さくした被検体内導入装置を簡易に実現できる。このように注射針を筐体内に収納できる被検体内導入装置は、注射針によって被検体内の他の部位が傷つくことを防止できる。
さらに、伸張自在なバルーンを用いて薬液の貯蔵室を形成し、このバルーンの収縮力を用いて貯蔵室の容積を縮小して薬液を加圧し、かかるバルーンの収縮作用によって薬液の吐出動作を実行している。このため、この薬液の吐出動作を実行するために新たな駆動電力を消費する必要がなく、この発明にかかる被検体内導入装置の省電力化を促進できる。
このような構成を採用した被検体内導入装置は、装置規模の小型化を実現するとともに、被検体内の所望部位に薬液を注射する局注機能を備えることができ、注射針を突き出して薬液を被検体内の所望部位に注射し、その後、この注射針を収納するまでの局注動作をより少ない消費電力によって実行することができる。
(実施の形態1の変形例1)
つぎに、この発明の実施の形態1である被検体内導入装置1の変形例1について説明する。上述した実施の形態1では、バルーンの収縮作用によって薬液の吐出動作を行っていたが、この実施の形態1の変形例1では、薬液の貯蔵室の容積を縮小して薬液を加圧するピストン機構を備え、このピストン機構の駆動によって薬液の吐出動作を行うようにしている。
図7は、この発明の実施の形態1の変形例1である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図7に示すように、この被検体内導入装置20は、上述した実施の形態1である被検体内導入装置1のバルーン4に代えてピストン21とバネ22とバネ基板23とを設け、管路形成部11に代えて管路形成部24を設けている。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
貯蔵室25は、上述した実施の形態1の貯蔵室3と同様に、予め薬液を貯蔵するためのものである。具体的には、貯蔵室25は、シート保持部12aとピストン21と筐体2の一部(すなわちシート保持部12aとピストン21との間に位置する部分)とによって囲まれた領域に形成される。
ピストン21は、筐体2の内壁に沿って摺動して貯蔵室25の容積を縮小するためのものである。具体的には、ピストン21は、上述した連通調整機構12の作用と弾性膜6の作用とによって貯蔵室25と注射針5とが連通した場合、バネ22による弾発力を用い、貯蔵室25の容積を縮小する方向に摺動して貯蔵室25内の薬液を加圧し、注射針5を介して薬液を吐出する。すなわち、ピストン21は、薬液を吐出するために貯蔵室25の容積を縮小して薬液を加圧する薬液加圧手段として機能する。
バネ22は、ピストン21が貯蔵室25の容積を縮小する方向に摺動するための駆動力を生成するためのものである。具体的には、バネ22は、一端がバネ基板23に対して固定されるとともに他端がピストン21に対して固定され、かつバネ長が自然長に比して短い状態に維持されている。このように配置されたバネ22は、ピストン21に対し、貯蔵室25の容積が縮小する方向に弾性力(弾発力)を付勢するように機能する。バネ22は、この弾発力をピストン21の駆動力として生成する。
このように貯蔵室25の容積を縮小するピストン21と、ピストン21の駆動力を生成するバネ22と、バネ22を保持するバネ基板23と、ピストン21が摺動する筐体2の一部分(ピストン21およびシート保持部12aの間に位置する筐体2の一部分)とは、薬液の貯蔵室の容積を縮小して薬液を加圧し、薬液の吐出動作を行うピストン機構を構成する。この場合、かかる筐体2の一部分は、このピストン機構におけるシリンダーとして機能する。
ここで、このように構成されるピストン機構およびチューブ10と後述する管路形成部24とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室25の容積を縮小して貯蔵室25内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液の吐出圧力)を用いて注射針5を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室25内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針5を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
管路形成部24および上述したチューブ10は、貯蔵室25に連通する第1管路と、貯蔵室25に対して注射針5側である空間9に連通する第2管路とを形成するためのものである。具体的には、管路形成部24は、管路24a,24bが内部に形成され、管路24bと空間9とを連通する態様でチューブ10が取り付けられる。この場合、管路24aは、貯蔵室25に連通する第1管路を形成し、管路24bおよびチューブ10は、空間9に連通する第2管路を形成する。また、管路形成部24は、図7に示すように、シート保持部12aとピストン21とバネ基板23とを貫通する態様で設けられる。この場合、管路形成部24の一端(管路24aが形成された側)は、上述した管路形成部11の場合と同様に、シート保持部12a上に露出し、連通調整機構12と制御回路13とによって管路24a,24bの連通状態が調整される。
このような構成を採用した被検体内導入装置20は、上述した実施の形態1である被検体内導入装置1と同様の機能を有することができる。たとえば、被検体内導入装置20は、上述した被検体内導入装置1と同様に薬液の吐出圧力によって注射針5を突き出すことができる。かかる被検体内導入装置20は、上述した被検体内導入装置1と同様の作用効果を享受できる。
(実施の形態1の変形例2)
つぎに、この発明の実施の形態1である被検体内導入装置1の変形例2について説明する。上述した実施の形態1では、連通調整機構12の作用によって薬液の吐出動作を開始または停止していたが、この実施の形態1の変形例2では、制御回路13の制御によって薬液の貯蔵室の容積を縮小して薬液を加圧するピストン機構を備え、このピストン機構の駆動によって薬液の吐出動作を行うようにしている。
図8は、この発明の実施の形態1の変形例2である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図8に示すように、この被検体内導入装置30は、上述した実施の形態1の変形例1である被検体内導入装置20の連通調整機構12に代えてピストン21の摺動開始または摺動停止を制御するための形状記憶部材31a,31bを設けている。また、被検体内導入装置30は、かかる形状記憶部材31a,31bおよびバネ22の各一端を保持するようにバネ基板23が設けられ、かかる形状記憶部材31a,31bおよびバネ22の各他端を保持するようにピストン21が設けられる。なお、被検体内導入装置30は、上述した管路形成部11を備えていない。その他の構成は実施の形態1の変形例1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
貯蔵室33は、上述した実施の形態1の貯蔵室3と同様に、予め薬液を貯蔵するためのものである。具体的には、貯蔵室33は、ピストン21とチューブ保持部32と筐体2の一部(すなわちピストン21とチューブ保持部32との間に位置する部分)とによって囲まれた領域に形成される。
この被検体内導入装置30に設けたピストン21は、筐体2の内壁に沿って摺動して貯蔵室33の容積を縮小する。具体的には、このピストン21は、形状記憶部材31aの作用と弾性膜6の作用とによって貯蔵室33と注射針5とが連通した場合、バネ22による弾発力を用い、貯蔵室33の容積を縮小する方向に摺動して貯蔵室33内の薬液を加圧し、注射針5を介して薬液を吐出する。
この被検体内導入装置30に設けたバネ22は、ピストン21が貯蔵室33の容積を縮小する方向に摺動するための駆動力(弾発力)を生成するためのものである。また、形状記憶部材31a,31bは、貯蔵室33へのピストン21の摺動開始または摺動停止を制御するためのものである。かかるバネ22および形状記憶部材31a,31bは、各一端がバネ基板23に対して固定されるとともに各他端がピストン21に対して固定される。この場合、バネ22は、そのバネ長が自然長に比して短い状態に維持され、ピストン21に対し、貯蔵室33の容積が縮小する方向に弾性力(弾発力)を付勢するように機能する。
また、形状記憶部材31a,31bは、棒状またはコイル状(たとえばSMAコイル)の構造を有し、所定の形状記憶特性を有するとともに所定の電気抵抗値を有する形状記憶合金によって形成される。この場合、形状記憶部材31a,31bは、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件ではバネ22による弾発力を打ち消すことができる長さを有し、ピストン21の摺動を停止するように作用する。一方、形状記憶部材31a,31bは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に比して充分高い温度条件の下ではバネ22による弾発力をピストン21に対して付勢するに充分な長さを有する形状に変化し、貯蔵室33へのピストン21の摺動を開始するように作用する。
チューブ保持部32は、図8に示すように、ピストン21に対向する態様で筐体2の内壁のうちのたとえば針収納部7の近傍に固設され、その開口部にチューブ10を挿通して保持する。このようにチューブ保持部32に保持されたチューブ10は、貯蔵室33と空間9と連通する。
ここで、被検体内導入装置30のピストン機構は、上述したピストン21とバネ22と形状記憶部材31a,31bとチューブ保持部32と筐体2の一部分とを用いて実現される。このようなピストン機構とチューブ10とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室33の容積を縮小して貯蔵室33内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液の吐出圧力)を用いて注射針5を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室33内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針5を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
被検体内導入装置30に設けた制御回路13は、形状記憶部材31a,31bに所定の電流を供給することによってジュール熱を発生させ、形状記憶部材31a,31bを所定温度以上に温度上昇させる。これによって、制御回路13は、上述したように形状記憶部材31a,31bの形状を変化してピストン21の摺動を開始する制御を行う。かかる摺動開始する制御によって、制御回路13は、ピストン21による薬液の吐出動作を開始することができる。一方、制御回路13は、形状記憶部材31a,31bに対する電流供給を停止することによって、形状記憶部材31a,31bを所定温度未満に温度低下させる。これによって、制御回路13は、形状記憶部材31a,31bの形状を復帰させてピストン21の摺動を停止する制御を行う。かかる摺動停止する制御によって、制御回路13は、ピストン21による薬液の吐出動作を停止(中断)することができる。
このような構成を採用した被検体内導入装置30は、上述した実施の形態1である被検体内導入装置1と同様の機能を有することができる。また、被検体内導入装置30は、上述した管路形成部11および連通調整機構12を用いずに薬液の吐出動作の開始および停止を制御でき、かかる薬液の吐出動作機構(具体的にはピストン機構)とその制御機構とを単純化できる。したがって、被検体内導入装置20は、上述した被検体内導入装置1と同様の作用効果を享受できるとともに、装置規模の小型化をさらに促進できるという効果を奏する。
(実施の形態2)
つぎに、この発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、注射針5を保持した弾性膜6に薬液の吐出圧力を印加して注射針5を突き出していたが、この実施の形態2では、シリンダー状のガイド内に注射針を設け、この注射針の後端部に薬液の吐出圧力を印加して注射針を押し出すように構成している。
図9は、この発明の実施の形態2である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図9に示すように、この被検体内導入装置40は、上述した実施の形態1の被検体内導入装置1のガイド2bに代えてシリンダー状のガイド42が設けられ、ガイド42の内部に、注射針5に代えて注射針41が設けられる。また、注射針41には、弾性膜6に代えてバネ43が設けられる。一方、被検体内導入装置40は、上述した針収納部7および膜保持部8が設けられず、管路11bとガイド42の後端側とを連通するようにチューブ10が設けられる。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
注射針41は、薬液の吐出に関する所定の駆動源を用いて筐体2から突出し、上述した注射針5と同様に被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針41は、被検体に穿刺する先端側と後端側とを連通する管路41aが内部に形成され、後端側に鍔状の基端部41bが形成される。かかる注射針41は、シリンダー状のガイド42の内部空間に摺動自在に配置される。この場合、基端部41bとガイド42の内壁とは、互いに係合し、図9に示すように、基端部41bがガイド42の内壁を摺動する。すなわち、かかる基端部41bは、シリンダー状のガイド42の内壁を摺動するピストンとして機能する。このような基端部41bが形成された注射針41は、後端面に薬液の吐出圧力が印加された場合、この薬液の吐出圧力によってガイド42に沿って摺動して突出するとともに、管路41aを介して薬液を先端から吐出する。
ガイド42は、注射針41の摺動方向を規制するとともに、薬液の吐出圧力を用いて注射針41を筐体から突き出すためのものである。具体的には、ガイド42は、上述したようにシリンダー状の構造を有し、筐体2の所定位置たとえば先端近傍に設けられる。また、ガイド42は、先端側(注射針の出入り口側)に、注射針41を挿通可能な開口が形成された枠状のバネ基板42aが設けられ、後端側に、オーリング44を介してチューブ10が取り付けられる。かかるガイド42は、このオーリング44によって筐体2の内部に対して水密が確保される。
また、ガイド42には、注射針41の基端部41bとバネ基板42aとの間の領域にバネ43が配置される。バネ43は、筐体2から突出した注射針41を筐体2内に収納するためのものである。具体的には、バネ43は、一端がバネ基板42aに対して固定されるとともに他端が基端部41bに対して固定され、注射針41を筐体2内に収納した場合にバネ長が自然長になるように配置される。かかるバネ43は、注射針41が突出する方向に摺動するとともに、注射針41を筐体2内に戻そうとする弾性力(弾発力)を生成する。
このようなガイド42とバルーン4とチューブ10と管路形成部11とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室3の容積を縮小して貯蔵室3内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液の吐出圧力)を用いて注射針41を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室3内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針41を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
つぎに、被検体内導入装置40の動作について説明する。図10は、注射針41の後端面に薬液に吐出圧力を印加して注射針41を筐体2から突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図10を参照しつつ注射針41の突き出し動作および薬液の吐出動作について説明する。
まず、制御回路13は、上述したように連通調整機構12の駆動制御を行い、シート部材12bと管路形成部11の端部との密着状態を解消する。かかる連通調整機構12の作用によって、管路11a,11bは連通状態になり、バルーン4は、上述したように収縮動作を開始して薬液の吐出動作を実行する。この場合、貯蔵室3内の薬液は、管路11a,11bとチューブ10とを介してガイド42の内部、具体的には注射針41の後端面に吐出され、さらに管路41aを介して注射針41の先端から吐出される。
ここで、バルーン4は、このように薬液をガイド42の内部に吐出することによって、注射針41の後端面に薬液の吐出圧力を印加し、これと同時に、管路41aを介して注射針41の先端から薬液を吐出する。かかる薬液の吐出圧力は、バルーン4が収縮動作を継続するに伴い、たとえば図3に例示した場合とほぼ同様に変化(増加または減少)する。この薬液の吐出圧力が上述したバネ43の弾性力以上である場合、注射針41は、かかる薬液の吐出圧力によって後端面が押されるとともにガイド42を摺動し、筐体2から突出する。このように薬液の吐出圧力を用いて注射針41を突き出すとともに薬液を吐出することによって、被検体内導入装置40は、被検体内の所望部位に注射針41を穿刺して薬液をこの所望部位に注射することができる。
一方、バルーン4は、上述したように、所望量以上の薬液を吐出し終えるとともに収縮動作を停止し、または管路11a,11bの連通状態が遮断されるとともに収縮動作を停止し、注射針41の後端面に印加する薬液の吐出圧力を徐々に低下させる。ここで、バネ43は、上述した注射針41の突き出し動作に伴って弾性力を生成する。かかるバネ43は、この薬液の吐出圧力が弾性力未満に低下した場合、この弾性力によって注射針41を筐体2内に向けて摺動させ、たとえば被検体内の所望部位に穿刺した注射針41を筐体2内に収納する。
このような構成を採用した被検体内導入装置40は、上述した実施の形態1である被検体内導入装置1とほぼ同様の機能を有し、たとえば薬液の吐出圧力を用いて注射針41を突き出すことができ、また、バネ43の弾性力を用いて注射針41を筐体2内に収納できる。さらに、被検体内導入装置40は、シリンダー状のガイド42内に吐出した薬液の吐出圧力を注射針41の後端面に印加して注射針41を突き出し、かかるガイド42の内部に配置したバネ43の弾性力を用いて注射針41を筐体2内に収納しているので、上述した弾性膜6が伸張するための空間を筐体2内に形成する必要がない。このため、筐体2の内部のさらなる省スペース化を図ることができ、被検体内導入装置40は、上述した被検体内導入装置1と同様の作用効果を享受できるとともに、装置規模の小型化をさらに促進できるという効果を奏する。
(実施の形態2の変形例1)
つぎに、この発明の実施の形態2である被検体内導入装置40の変形例1について説明する。上述した実施の形態2では、シリンダー状のガイド42の内部を注射針41が摺動するように構成していたが、この実施の形態2の変形例1では、注射針41の後端に伸縮自在な蛇腹チューブを設け、注射針41の突出または収納に対応してこの蛇腹チューブを伸張または収縮するように構成している。
図11は、この発明の実施の形態2の変形例1である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図11に示すように、この被検体内導入装置50は、上述した実施の形態2の被検体内導入装置40のガイド42に代えてガイド52が設けられる。また、被検体内導入装置50は、注射針41の基端部41bに、チューブ10と管路41aとを連通する蛇腹チューブ51が設けられる。その他の構成は実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
蛇腹チューブ51は、注射針41の突き出し動作および収納動作を阻害せずに注射針41の後端面および管路41aに薬液を吐出するためのものである。具体的には、蛇腹チューブ51は、蛇腹構造を有する伸縮自在なチューブであり、図11に示すように、一端が基端部41bに接続されるとともに他端がチューブ10に取り付けられる。このように配置された蛇腹チューブ51は、チューブ10を介して管路11bと注射針41の管路41aとを連通するとともに、注射針41の摺動に対応して伸張または収縮する。この場合、蛇腹チューブ51は、この伸張作用または収縮作用によって、注射針41の突き出し動作および収納動作を阻害せずに管路11bと管路41aとの連通状態を維持する。なお、蛇腹チューブ51は、管路形成部11に直接取り付けてもよい。この場合、蛇腹チューブ51は、チューブ10を介さずに管路11bと注射針41の管路41aとを連通する。
ガイド52は、注射針41の出し入れ方向を規制するためのものである。具体的には、ガイド52は、ほぼ凹型の構造を有し、注射針41を出し入れするための開口部が底面に形成されている。また、ガイド52は、図11に示すように、筐体2における注射針41の出入り口に設けられ、バネ43の一端が取り付けられる。このように配置されたガイド52は、注射針41の出し入れ方向を規制し、かかる規制によって、注射針41は、円滑に出し入れできる。
このような蛇腹チューブ51とガイド52とバルーン4とチューブ10と管路形成部11とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室3の容積を縮小して貯蔵室3内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液の吐出圧力)を用いて注射針41を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室3内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針41を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
つぎに、被検体内導入装置50の動作について説明する。図12は、注射針41の後端面に薬液に吐出圧力を印加して注射針を筐体2から突き出した別の状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図12を参照しつつ、蛇腹チューブ51の伸縮作用に伴う注射針41の突き出し動作および薬液の吐出動作について説明する。
バルーン4は、上述した実施の形態2の場合と同様に、連通調整機構12の作用に基づいて収縮動作を開始して薬液の吐出動作を実行し、管路11a,11bとチューブ10とを介して蛇腹チューブ51内に薬液を吐出する。この薬液が注射針41の後端面に到達した場合、バルーン4は、この薬液の吐出圧力を注射針41の後端面に印加するとともに、管路41aを介して注射針41の先端から薬液を吐出する。
ここで、かかる薬液の吐出圧力は、上述した実施の形態2の場合と同様に変化(増加または減少)する。この薬液の吐出圧力がバネ43の弾性力以上である場合、注射針41は、かかる薬液の吐出圧力によって後端面が押されるとともにガイド52の開口部を介して突出する。これと同時に、蛇腹チューブ51は、図12に示すように伸張し、この注射針41の突き出し動作を阻害せずに管路11bと管路41aとの連通状態を維持する。このように薬液の吐出圧力を用いて注射針41を突き出すとともに薬液を吐出することによって、被検体内導入装置50は、被検体内の所望部位に注射針41を穿刺して薬液をこの所望部位に注射することができる。
一方、バルーン4は、上述した実施の形態2の場合と同様に薬液の吐出圧力を徐々に低下させる。したがって、バネ43は、この薬液の吐出圧力が弾性力未満に低下した場合、この弾性力によって、たとえば被検体内の所望部位に穿刺した注射針41を筐体2内に収納する。これと同時に、蛇腹チューブ51は、かかる注射針41の収納動作に対応して収縮し、この注射針41の突き出し動作を阻害せずに管路11bと管路41aとの連通状態を維持する。
このような構成を採用した被検体内導入装置50は、上述した実施の形態2である被検体内導入装置40とほぼ同様の機能を有する。また、被検体内導入装置50は、注射針41の突き出し動作または収納動作に対応して蛇腹チューブ51を自在に伸張または収縮するように構成している。このため、注射針41の出し入れのための駆動機構を単純化でき、筐体2の内部のさらなる省スペース化を図ることができる。かかる被検体内導入装置50は、上述した被検体内導入装置40と同様の作用効果を享受できるとともに、装置規模の小型化をさらに促進できるという効果を奏する。
(実施の形態2の変形例2)
つぎに、この発明の実施の形態2である被検体内導入装置40の変形例2について説明する。上述した実施の形態2では、バルーンの収縮作用によって薬液の吐出動作を行っていたが、この実施の形態2の変形例2では、上述した実施の形態1の変形例1と同様のピストン機構を設け、このピストン機構の駆動によって薬液の吐出動作を行うようにしている。
図13は、この発明の実施の形態2の変形例2である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図13に示すように、この被検体内導入装置60は、上述した実施の形態2である被検体内導入装置40のバルーン4に代えてピストン21とバネ22とバネ基板23とを設け、管路形成部11に代えて管路形成部24を設けている。その他の構成は実施の形態2と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
かかるピストン21と、バネ22と、バネ基板23と、ピストン21が摺動する筐体2の一部分(ピストン21およびシート保持部12aの間に位置する筐体2の一部分)とは、上述した実施の形態1の変形例1である被検体内導入装置20と同様のピストン機構を構成する。すなわち、バネ22は、一端がバネ基板23に対して固定されるとともに他端がピストン21に固定され、上述したようにピストン21の駆動力(弾発力)を生成する。ピストン21は、このバネ22による弾発力を用いて摺動し、これによって貯蔵室25の容積を縮小して薬液を加圧する。かかるピストン機構は、このようなピストン21およびバネ22の各作用に基づいて薬液の吐出動作を行う。かかる吐出動作によって、貯蔵室25内の薬液は、管路24a,11bおよびチューブ10を介してガイド42の内部に吐出される。
このようなピストン機構とガイド42とチューブ10と管路形成部24とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室25の容積を縮小して貯蔵室25内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液の吐出圧力)を用いて注射針41を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室25内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針41を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
このような構成を採用した被検体内導入装置60は、上述した実施の形態2である被検体内導入装置40とほぼ同様の機能を有することができ、この被検体内導入装置40と同様の作用効果を享受することができる。このことは、上述した実施の形態2の変形例1である被検体内導入装置50についても同様である。すなわち、この被検体内導入装置50のバルーン4に代えて上述した被検体内導入装置20と同様のピストン機構を設けた場合であっても、バルーン4を備えた場合と同様の作用効果を享受する。
(実施の形態3)
つぎに、この発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1では、薬液の吐出圧力を用いて注射針を突き出していたが、この実施の形態3では、薬液を吐出するために薬液を加圧する加圧力(たとえばバルーン4の収縮力)を用いて注射針を突き出している。
図14は、この発明の実施の形態3である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図14に示すように、この被検体内導入装置70は、上述した実施の形態1である被検体内導入装置1の注射針5に代えて注射針71が設けられ、ガイド2bに代えてガイド74が設けられる。また、被検体内導入装置70は、上述した弾性膜6、針収納部7、および膜保持部8が設けられず、注射針71を収納するためのバネ75,76と、バルーン4の収縮動作に連動して注射針71を突き出すための連結部材77,78と、連結部材77,78の各経路を規制するためのガイド部材79a〜79fとを備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
注射針71は、薬液の吐出に関する所定の駆動源を用いて筐体2から突出し、上述した注射針5と同様に被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針71は、被検体に穿刺する先端側と後端側とを連通する管路71aが内部に形成され、後端側に鍔状の基端部71bが形成される。注射針71は、管路71aの内部にチューブ10が摺動自在に挿入される。このチューブ10は、管路11bと注射針71の管路71aとを連通する。また、注射針71は、基端部71bにカッター72,73が設けられる。
カッター72,73は、連結部材77,78をそれぞれ切断するためのものである。具体的には、カッター72,73は、注射針71の摺動とともに移動する移動線上に連結部材77,78がそれぞれ位置するように、基端部71bにそれぞれ設けられる。かかるカッター72,73は、筐体2から突出した注射針71の長さ(突き出し長)が所定の長さになる位置に注射針71が摺動した場合、連結部材77,78をそれぞれ切断するように機能する。
ガイド74は、注射針71の摺動方向を規制するためのものである。具体的には、ガイド74は、筒状構造を有し、注射針71の基端部71bに対向する鍔部が形成される。かかるガイド74は、筐体2における注射針71の出入り口に設けられ、注射針71の摺動方向を規制することによって、注射針71の出し入れを円滑にする。
バネ75,76は、筐体2から突き出した注射針71を筐体2の内部に収納するためのものである。具体的には、バネ75,76は、それぞれ一端がガイド74に対して固定されるとともに他端が基端部71bに対して固定される。この場合、バネ75,76は、注射針71の管路71aを中心にして互いにほぼ対称になるように配置される。バネ75,76の各バネ長は、注射針71が筐体2内に収納された状態の場合にほぼ自然長である。したがって、バネ75,76は、突出する方向に注射針71が摺動するとともに収縮し、この収縮動作に伴って弾性力(弾発力)を生成する。バネ75,76は、突出した注射針71を筐体2の内部に収納する方向に、かかる弾性力を付勢する。
連結部材77,78は、バルーン4の収縮動作(すなわち薬液の吐出動作)に連動して注射針71の突き出し動作を行うためのものである。具体的には、連結部材77,78は、それぞれ一端が注射針71の基端部71bに接続されるとともに他端がバルーン4の外周部分に接続され、このようにしてバルーン4と注射針71とを連結する。より具体的には、図14に示すように、連結部材77は、基端部71bからガイド74の鍔部を通過し、ガイド部材79a〜79cを順次経由してバルーン4の外周部分に到達する。また、連結部材78は、基端部71bからガイド74の鍔部を通過し、ガイド部材79d〜79fを順次経由してバルーン4の外周部分に到達する。この場合、連結部材77,78は、互いにほぼ反対に位置するように配置される。
なお、連結部材77,78は、上述したバネ75,76の近傍(たとえばバネの長手方向の中心軸近傍)を通るように配置されることが望ましい。これによって、基端部71b上にバネ75,76と連結部材77,78とをそれぞれ密に接続でき、注射針71の小型化すなわち筐体2の小型化を図ることができる。
ガイド部材79a〜79fは、連結部材77,78の経路を規制するためのものである。具体的には、ガイド部材79a〜79fは、平滑な表面形状の柱状部材または滑車等を用いて実現され、バルーン4の収縮動作によって引っ張られる方向が注射針71を突き出す方向に変わるように、筐体2内にそれぞれ配置される。このようにガイド部材79a〜79fを配置することによって、連結部材77,78は、バルーン4の収縮力(すなわち薬液に対する加圧力)を注射針71の突き出し動作の駆動力として注射針71に伝達できる。なお、筐体2の内部には必要数量のガイド部材が配置されればよく、その配置数量は特に6つに限定されない。
このような連結部材77,78とバルーン4とチューブ10と管路形成部11とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室3の容積を縮小して貯蔵室3内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液に印加する加圧力)を用いて注射針71を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室3内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針71を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
つぎに、被検体内導入装置70の動作について説明する。図15は、バルーン4の収縮力によって注射針71を筐体2から突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図15を参照しつつ注射針71の突き出し動作および薬液の吐出動作について説明する。
バルーン4は、上述した実施の形態1,2の場合と同様に、連通調整機構12の作用に基づいて収縮動作を開始して薬液の吐出動作を実行し、管路11a,11b、チューブ10、および注射針71の管路71aを介して注射針71の先端から薬液を吐出する。これと同時に、バルーン4は、かかる薬液の吐出動作を実行するための駆動力すなわち自身の収縮力を用いて連結部材77,78を引き動かす。この場合、連結部材77,78は、かかるバルーン4の収縮力を注射針71の突き出し動作の駆動力として注射針71に伝達する。したがって、バルーン4は、連結部材77,78を介して突き出し方向に注射針71を引き動かし、注射針71を筐体2から突き出すことができる。かかる注射針71は、たとえば被検体内の所望部位を穿刺し、この所望部位に薬液を注射する。
ここで、上述したバルーン4の収縮力は、貯蔵室3の容積を縮小して薬液を加圧するための加圧力(薬液の吐出に関する物理力の一例)であり、かつ注射針71の突き出し動作の駆動力である。すなわち、バルーン4は、自身の収縮力を用いて薬液の吐出動作と注射針71の突き出し動作とを同時に行う。したがって、注射針71は、新たな駆動電力を消費せずに、かかるバルーン4の収縮力を用いて筐体2から突出することができる。
つぎに、突出した注射針71を筐体2の内部に収納する収納動作について説明する。図16は、連結部材77,78を切断して注射針71を筐体2内に収納する状態を模式的に例示する模式図である。以下、図16を参照しつつ注射針71の収納動作について説明する。
バルーン4は、上述したように、薬液の吐出動作の駆動力たる自身の収縮力を用いて注射針71の突き出し動作を行う。この場合、注射針71は、かかるバルーン4の収縮作用によって筐体2から突出し、かかるバルーン4の収縮量に対応してその突き出し長を伸ばす。この注射針71の突き出し動作に伴い、バネ75,76は、収縮して弾性力を生成する。なお、かかるバネ75,76の弾性力は、バルーン4と注射針71とが連結部材77,78を介して連結状態である場合、バルーン4の収縮力以下である。したがって、バネ75,76は、かかる連結状態において、注射針71の突き出し動作を阻害しない。
その後、バルーン4が所望量の薬液を吐出し終えた場合、注射針71は、その突き出し長が所定の長さ(たとえば突き出し動作における最大の長さ)になる位置まで突出する。かかる突出状態において、カッター72,73は、注射針71とともに移動し、図16に示すように、連結部材77,78をそれぞれ押圧する位置に到達する。カッター72,73は、このように連結部材77,78をそれぞれ押圧することによって、連結部材77,78をそれぞれ切断する。これによって、上述した連結状態が解消され、注射針71は、バルーン4の収縮力に対して自由な状態になる。この場合、バネ75,76は、生成した弾性力以上のバルーン4の収縮力が印加されなくなるので、かかる弾性力によって伸張(自然長に復帰)するとともに、突出していた注射針71を筐体2の内部に戻す。すなわち、注射針71は、このようにバネ75,76の弾性力を用いて筐体2の内部に収納される。
このような構成を採用した被検体内導入装置70は、注射針71の突き出し動作に対して駆動電力を新たに消費せずに、バルーン4の収縮力すなわち加圧力を用いて薬液の吐出動作と注射針71の突き出し動作とをともに行うことができる。この場合、かかる被検体内導入装置70は、薬液の吐出圧力の低下によらず注射針71の突出状態を維持でき、これによって、所望量の薬液を被検体内の所望部位に確実に注射でき、かつ筐体2内に薬液が無駄に残ることを抑制できる。また、かかる被検体内導入装置70は、注射針71の収納動作に対して駆動電力を新たに消費せずに、バネ75,76の弾性力を用いて注射針71を筐体2内に収納できる。
したがって、かかる被検体内導入装置70は、上述した被検体内導入装置1と同様の作用効果を享受できるとともに、被検体内の所望部位に所望量の薬液を確実に注射でき、かつ薬液が筐体内に無駄に残ることを抑制できるという効果を奏する。
(実施の形態4)
つぎに、この発明の実施の形態4について説明する。上述した実施の形態3では、バルーン4の収縮力を用いて注射針71の突き出し動作を行っていたが、この実施の形態4では、薬液を加圧するピストンに注射針を取り付け、かかるピストンの加圧力を用いて注射針の突き出し動作を行うようにしている。
図17は、この発明の実施の形態4である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。この被検体内導入装置80は、上述した実施の形態3である被検体内導入装置70の薬液吐出機構(すなわちバルーン4の収縮力を用いて薬液の吐出動作と注射針71の突き出し動作とを連動して行うための機構)に代えて、薬液の吐出動作を行うためのピストン駆動に連動して注射針を突き出す薬液吐出機構を備えるようにしている。
すなわち図17に示すように、被検体内導入装置80は、筐体2の内部に、薬液を予め貯蔵するための貯蔵室87と、貯蔵室87の容積を縮小して薬液を加圧するピストン81と、ピストン81の駆動力を生成するバネ88と、ピストン81の摺動に連動して突出する注射針82と、注射針82の摺動方向を規制するためのガイド83とを有する。また、被検体内導入装置80は、上述した連通調整機構12に代えて連通調整機構85が設けられ、連通調整機構85の駆動を制御する制御回路13と、制御回路13に駆動電力を供給する電源部14とを有する。かかる制御回路13は、上述した連通調整機構12の場合と同様に連通調整機構85の駆動を制御する。
連通調整機構85は、上述した連通調整機構12と同様に薬液の吐出動作の開始または停止を制御する機能を有する。具体的には、連通調整機構85は、上述した連通調整機構12のシート保持部12aに代えて、管路86a,86bが形成されたシート保持部85aを有する。また、連通調整機構85は、管路86a,86bを覆うようにシート保持部85aに配置されたシート部材12bと、シート部材12bの周縁部分をシート保持部85aに対して密着した状態で固定する固定部材12cと、管路86a,86bを覆うシート部材12bに対して所定の押圧力を印加する押圧部材12dと、押圧部材12dが印加する押圧力を生成するバネ12fと、バネ12fを保持するバネ基板12gと、シート部材12bに対する押圧部材12dの位置を変化させる形状記憶部材12eとを有する。
シート保持部85aは、シート部材12を保持するとともに、貯蔵室87と注射針82とを連通するためのものである。具体的には、シート保持部85aは、図17に示すように、薬液の貯蔵室87に連通する管路86aと、ガイド83の管路83aを介して注射針82の管路82aに連通する管路86bとが形成される。また、シート保持部85aは、かかる管路86a,86bの各開口を覆う態様でシート部材12bを保持する。この場合、シート部材12は、押圧部材12dによって押圧力が印加された場合に管路86a,86bの連通状態を遮断し、かかる押圧力が減少または零になった場合に管路86a,86bを連通状態にする。
かかる連通調整機構85は、制御回路13の制御に基づいて管路86a,86bの連通状態を調整でき、管路86a,86bを連通状態にすることによって、ピストン81の摺動に基づく薬液の吐出動作を開始でき、管路86a,86bの連通状態を遮断することによって、かかる薬液の吐出動作を停止できる。
被検体内導入装置80の薬液吐出機構は、ピストン81、ガイド83、シート保持部85a、およびバネ88と筐体2の一部分とを用いて構成される。この場合、貯蔵室87は、ピストン81とガイド83とシート保持部85aと筐体2の一部分(すなわちピストン81とシート保持部85aとの間またはピストン81とガイド83との間に位置する部分)とによって囲まれた領域に形成される。かかる筐体2の一部分は、ピストン81が摺動するシリンダーとして機能する。
注射針82は、薬液の吐出に関する所定の駆動源を用いて筐体2から突出し、上述した注射針5と同様に被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針82は、被検体に穿刺する先端側と側部の開口とを連通する管路82aが形成される。また、注射針82は、その後端部がピストン81に取り付けられ、ピストン81の摺動に連動してガイド23内を摺動するように配置される。
ガイド83は、注射針82の摺動方向を規制するためのものである。具体的には、ガイド83は、注射針82を挿通可能な貫通孔が形成されたほぼ筒状の部材であり、注射針82の摺動位置に対応して配置される。また、ガイド83は、シート保持部85aの管路86bに連通する管路83aが形成される。かかる管路83aは、内壁面側に開口領域H1が形成され、ピストン81の摺動に連動して注射針82が摺動した場合であっても、管路82aとの連通状態を維持する。また、ガイド83は、後端側すなわち貯蔵室87の近傍の内壁にオーリング84が設けられる。オーリング84は、注射針82を挿通するガイド83の貫通孔と貯蔵室87との水密を確保する。
このような被検体内導入装置80の薬液吐出機構は、貯蔵室87の容積を縮小して貯蔵室87内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液に印加する加圧力)を用いて注射針82を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出機構は、貯蔵室87内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針82を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
つぎに、被検体内導入装置80の動作について説明する。図18は、ピストン81の加圧力を用いて注射針82を筐体2から突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図18を参照しつつ注射針82の突き出し動作および薬液の吐出動作について説明する。
連通調整機構85が上述した制御回路13による制御に基づいて管路86a,86bを連通状態にした場合、ピストン81は、バネ88によって生成された駆動力を用い、貯蔵室87の容積を縮小する方向に摺動して薬液を加圧する。このように加圧された薬液は、管路86a,86bとガイド83の管路83aと注射針82の管路82aとを介して注射針82の先端から吐出される。これと同時に、ピストン81は、このバネ88による加圧力を用いて注射針82を押し出す。かかるピストン81の摺動作用によって、注射針82は、ガイド83に沿って摺動するとともに筐体2から突出し、たとえば被検体内の所望部位に薬液を注射する。
ここで、かかるバネ88によって生成される駆動力は、ピストン81が貯蔵室87の容積を縮小して薬液を加圧するための加圧力(薬液の吐出に関する物理力の一例)であり、かつ薬液の吐出動作の駆動力である。ピストン81は、上述したように、かかる加圧力を用いて薬液の吐出動作と注射針82の突き出し動作とを同時に行う。したがって、注射針82は、新たな駆動電力を消費せずに、かかる加圧力を用いて筐体2から突出することができる。
このような構成を採用した被検体内導入装置80は、注射針82の突き出し動作に対して駆動電力を新たに消費せずに、ピストン81の加圧力を用いて薬液の吐出動作と注射針82の突き出し動作とをともに実行でき、被検体の所望部位に薬液を注射する際の注射針の突き出し動作を省電力化して行うことができる。
また、かかる被検体内導入装置80は、ピストン81に注射針82を取り付けてピストン81の摺動と注射針82の摺動とを連動して注射針82を突き出すようにしている。したがって、注射針の突き出し動作を実行する新たな駆動機構を設ける必要がなく、駆動機構の単純化を促進するとともに、かかる被検体内導入装置の小型化を実現できる。
さらに、かかる被検体内導入装置80は、制御回路13の制御に基づいて連通調整機構85が管路86a,86bの連通状態と遮断状態とを調整できるので、薬液の吐出動作の開始および停止を間欠的に繰り返すことができる。
また、かかる被検体内導入装置80は、薬液の吐出圧力の低下によらず注射針82の突出状態を維持でき、これによって、所望量の薬液を被検体内の所望部位に確実に注射でき、かつ筐体2内に薬液が無駄に残ることを抑制できる。
(実施の形態4の変形例)
つぎに、この発明の実施の形態4である被検体内導入装置80の変形例について説明する。上述した実施の形態4では、連通調整機構85の作用によって薬液の吐出動作の開始および停止を制御していたが、この実施の形態4の変形例では、制御回路によって駆動制御されるピストン駆動機構を備え、このピストン駆動機構の作用によって、ピストンと注射針とを同時に摺動するようにしている。
図19は、この発明の実施の形態4の変形例である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図19に示すように、この被検体内導入装置90は、上述した実施の形態4である被検体内導入装置80の連通調整機構85に代えてチューブ10と保持基板91とが設けられ、バネ88に代えてピストン駆動機構92が設けられる。また、被検体内導入装置90は、上述した制御回路13に代えてピストン駆動機構92を制御するための制御回路96が設けられ、制御回路96に対して駆動電力を供給する電源部14が配置される。その他の構成は実施の形態4と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
かかる被検体内導入装置90のピストン機構は、貯蔵室95の容積を縮小するように摺動するピストン81と、注射針82の摺動方向を規制するガイド83と、チューブ10を保持するための保持基板91と、ピストン駆動機構92と、筐体2の一部分とを用いて構成される。この場合、貯蔵室95は、ピストン81とガイド83と保持基板91と筐体2の一部分(すなわちピストン81と保持基板91との間またはピストン81とガイド83との間に位置する部分)とによって囲まれた領域に形成される。かかる筐体2の一部分は、ピストン81が摺動するシリンダーとして機能する。
保持基板91は、貯蔵室95の外周部分を形成するとともに、チューブ10を保持する。この場合、チューブ10は、一端が保持基板91に挿通されるとともに他端がガイド83の開口部に挿通され、貯蔵室95とガイド83の管路83aとを連通する。なお、この被検体内導入装置90において、ガイド83の管路83aは、図19に示すように内壁面側に開口領域H2が形成され、注射針82が筐体2内に収納された状態であれば管路82aに連通せず、注射針82が筐体2から突出し始めてから突出し終わるまでの間において管路82aとの連通状態を維持する。
ピストン駆動機構92は、制御回路96の制御に基づいてピストン81の駆動力(すなわち加圧力)を生成し、貯蔵室95の容積を縮小する方向にピストン81を摺動させるためのものである。具体的には、ピストン駆動機構92は、ピストン81を押圧するための押圧部材92aと、回転駆動を押圧部材92aのリニア駆動に変換するための回転軸92bと、押圧部材92aの移動方向を規制するためのガイド92cと、回転軸92bの回転駆動を実行するモータ92dとを有する。このガイド92cおよびモータ92dは、保持基板94上に設けられる。
押圧部材92aは、ピストン81に対して押圧力を印加し、貯蔵室95の容積を縮小する方向にピストン81を摺動させるためのものである。具体的には、押圧部材92aは、たとえばコの字形状を有する部材であり、図19に示すように、回転軸92bの外周の雄ネジ部に螺合され、且つガイド92cに貫通された構造を有する。かかる押圧部材92aは、回転軸92bの回転駆動に基づいてリニア駆動し、ピストン81に対して端部を押圧する。押圧部材92aは、このように端部をピストン81に押圧することによって、ピストン81を摺動させることができる。
モータ92dは、上述したように保持基板94上に設けられ、制御回路96の制御に基づいて回転軸92bの回転駆動を実行する。すなわち、かかるモータ92dおよび回転軸92bは、押圧部材92aをピストン81に押圧するためのリニアアクチュエータとして機能する。
制御回路96は、モータ92dの駆動を制御するためのものである。具体的には、制御回路96は、モータ92dの駆動を制御し、このモータ92dの駆動制御によって押圧部材92aのリニア駆動を開始または停止する。この場合、制御回路96は、このように押圧部材92aのリニア駆動を制御することによって、ピストン81の摺動を開始または停止することができ、貯蔵室95の容積を縮小して薬液を加圧することに基づく薬液の吐出動作を制御できる。なお、制御回路96によるモータ92dの駆動制御の実行タイミングを規定する構成としては、たとえばタイマー機構を備えることとしてもよいし、無線受信機構を内蔵するとともに外部より制御信号を供給することとしてもよい。
このような被検体内導入装置90のピストン機構とピストン駆動機構92とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室95の容積を縮小して貯蔵室95内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液に印加する加圧力)を用いて注射針82を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室95内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針82を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
つぎに、被検体内導入装置90の動作について説明する。図20は、ピストン駆動機構92の作用によって注射針82を筐体2から突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図20を参照しつつ注射針82の突き出し動作および薬液の吐出動作について説明する。
まず、制御回路96は、モータ92dの駆動制御を行って回転軸92bの回転駆動を開始する。回転軸92bは、自身の回転駆動を押圧部材92aのリニア駆動に変換する。押圧部材92aは、かかる回転軸92bの回転駆動に基づいてピストン81を押圧し、ガイド92cによって移動方向が規制されるとともにピストン81を押し進める。この場合、かかる回転軸92bおよびモータ92dは、ピストン81を摺動するための押圧力を生成し、押圧部材92aを介して、この生成した押圧力をピストン81に印加している。
かかるピストン駆動機構92の作用によって、ピストン81は、貯蔵室95の容積を縮小する方向に摺動して薬液を加圧する。かかるピストン81の摺動は、ピストン駆動機構92によって生成された押圧力を用いて行われる。このように加圧された薬液は、チューブ10とガイド83の管路83aと注射針82の管路82aとを介して注射針82の先端から吐出される。これと同時に、ピストン81は、このピストン駆動機構92による押圧力を用いて注射針82を押し出す。かかるピストン81の摺動作用によって、注射針82は、ガイド83に沿って摺動するとともに筐体2から突出し、たとえば被検体内の所望部位に薬液を注射する。
ここで、上述した押圧部材92aを介して印加される押圧力は、ピストン81が貯蔵室95の容積を縮小して薬液を加圧するための加圧力(薬液の吐出に関する物理力の一例)であり、かつ薬液の吐出動作の駆動力である。ピストン81は、上述した実施の形態4の場合とほぼ同様に、かかる加圧力を用いて薬液の吐出動作と注射針82の突き出し動作とを同時に行う。したがって、注射針82は、新たな駆動電力を消費せずに、かかる加圧力を用いて筐体2から突出することができる。
このような構成を採用した被検体内導入装置90は、ピストン81を摺動するための駆動電力を消費しさえすれば、ピストン81に印加される押圧力すなわちピストン81の加圧力を用いて薬液の吐出動作と注射針82の突き出し動作とをともに実行できる。また、かかる被検体内導入装置90は、上述した実施の形態4である被検体内導入装置80とほぼ同様に、ピストン81と注射針82とを一体化してピストン81の摺動と注射針82の突き出し動作とを連動させている。したがって、かかる被検体導入装置90は、上述した実施の形態4と同様の作用効果を享受できる。
また、かかる被検体内導入装置90は、制御回路96の制御に基づいてピストン駆動機構92がピストン81の摺動を開始または停止できるので、薬液の吐出動作の開始および停止を間欠的に繰り返すことができる。さらに、上述した押圧部材92aをピストン81に対して固定し、ピストン駆動機構92が、制御回路96の制御に基づいて押圧部材92aを逆方向に移動させ、かかる押圧部材92aとともにピストン81を元の位置に戻すように構成することによって、かかる被検体導入装置90に対して注射針82の収納動作機能を追加できる。
さらに、かかる被検体内導入装置90は、薬液の吐出圧力の低下によらず注射針82の突出状態を維持できるので、所望量の薬液を被検体内の所望部位に確実に注射でき、かつ筐体2内に薬液が無駄に残ることを抑制できる。
(実施の形態5)
つぎに、この発明の実施の形態5について説明する。この実施の形態5にかかる被検体内導入装置では、薬液を貯蔵する貯蔵袋を備え、この貯蔵袋を圧縮するための加圧力を用いて薬液の吐出動作と注射針の突き出し動作とを同時に行うように構成している。
図21は、この発明の実施の形態5である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図22は、図21に示す被検体内導入装置のF−F線断面模式図である。図21,22に示すように、この被検体内導入装置110は、筐体2の内部に、薬液を予め貯蔵する貯蔵袋111を有する。かかる被検体内導入装置110は、貯蔵袋111を圧縮するための加圧力を用いて薬液の吐出動作と注射針の突き出し動作とを同時に行う機能を有するために、貯蔵袋111を締め付けて圧縮するためのベルト112と、ベルト112の一端を保持するためのベルト保持部材113と、注射針114と、貯蔵袋111の圧縮動作と注射針114の突き出し動作とを連動するための連動部材115とを筐体2の内部に有する。また、被検体内導入装置110は、筐体2の内部に、連動部材115の移動方向を規制するためのガイド116と、貯蔵袋111と注射針114とを連通するためのチューブ117と、かかる圧縮動作の駆動力(すなわち加圧力)を生成するための形状記憶部材118a〜118eとを備える。さらに、被検体内導入装置110は、筐体2の内部に、形状記憶部材118a〜118eの形状変化を制御するための制御回路13と、制御回路13に対して駆動電力を供給するための電源部14とを有する。
貯蔵袋111は、薬液を予め貯蔵するための貯蔵室111aを内部に形成する袋状部材であって、ベルト等を用いて締め付けることによって貯蔵室111aの容積を容易に縮小可能な柔らかい部材である。貯蔵袋111は、貯蔵室111a内の薬液を外部に流出するための流出口を有し、かかる流出口にチューブ117が接続される。
ベルト112は、貯蔵袋111を圧縮して薬液を吐出するためのものである。具体的には、ベルト112は、両端を互いに交差した状態で貯蔵袋111に巻き付けられる。この場合、ベルト112は、かかる両端のうちの一端が固定端であり、かつ他端が摺動可能な自由端である。かかるベルト112は、この固定端がベルト保持部材113に取り付けられるとともに自由端が連動部材115に取り付けられ、かかる自由端を引き動かすことによって貯蔵袋111を締め付けることができる。ベルト112は、このように貯蔵袋111を締め付けることによって、貯蔵室111aの容積を縮小して薬液を加圧し、この薬液を吐出することができる。
ベルト保持部材113は、ベルト112を保持するためのものである。具体的には、ベルト保持部材113は、筐体2に対して固定され、上述したベルト112の一端を保持することによってベルト112を保持し、このベルト112を介して貯蔵袋111を保持する。この場合、ベルト保持部材113は、このように保持した一端をベルト112の固定端にする。
注射針114は、薬液の吐出に関する駆動源を用いて筐体2から突出し、上述した注射針5と同様に被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針114は、被検体に穿刺する先端側と後端側とを連通する管路114aが内部に形成され、後端側が連動部材115によって保持される。かかる注射針114は、連動部材115の駆動に伴って摺動し、より具体的には、連動部材115の駆動に伴って筐体2から突出し、または筐体2内に戻る。また、注射針114は、後端側にチューブ117が接続され、このチューブ117を介して薬液が流入された場合に、この薬液を先端側から吐出する。なお、筐体2における注射針114の出入り口には、筒状のガイド2aが形成される。このガイド2aは、注射針114の摺動方向を規制する。
連動部材115は、ベルト112による貯蔵袋111の圧縮動作と注射針114の突き出し動作とを連動するためのものである。具体的には、連動部材115は、図21に示すように、ベルト112の自由端と注射針114とが取り付けられ、ガイド116の貫通孔に一端が摺動自在に挿通される。かかる連動部材115は、ベルト112を締める(すなわち貯蔵袋111を圧縮する)方向に移動するとともに注射針114を筐体2から突き出す。また、連動部材115は、ベルト112を緩める方向に移動するとともに注射針114を筐体2内に収納する。
ガイド116は、連動部材115の移動方向を規制するためのものである。具体的には、ガイド116は、縦長の貫通孔が形成された板状部材であって、かかる貫通孔に連動部材115の一端を摺動自在に挿通することによって、この連動部材115の移動方向を規制する。この場合、連動部材115は、かかるガイド116の貫通孔に沿って移動することによって、注射針114の突き出し動作および収納動作を確実に行うことができる。
チューブ117は、貯蔵袋111内の薬液を注射針114の管路114aに流通するためのものである。具体的には、チューブ117は、可撓性または弾性を有する柔軟なチューブ部材であり、一端が貯蔵袋111に接続されるとともに他端が注射針114に接続される。かかるチューブ117は、注射針114の突き出し動作または収納動作に合わせて動くことによって貯蔵袋111内の貯蔵室111aと注射針114の管路114aとの連通状態を維持し、貯蔵袋111から吐出された薬液を注射針114の管路114aに流通する。
形状記憶部材118a〜118eは、上述した貯蔵袋111の圧縮動作と注射針114の突き出し動作とを連動して行うための駆動力を生成する。具体的には、形状記憶部材118a〜118eは、棒状またはコイル状(たとえばSMAコイル)の構造を有し、所定の形状記憶特性を有するとともに所定の電気抵抗値を有する形状記憶合金によって形成される。かかる形状記憶部材118a〜118eは、一端が筐体2に対して固定されるとともに他端が連動部材115に対して固定され、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件において、連動部材115が注射針114を収納するとともにベルト112を緩める(貯蔵袋111の圧縮動作を停止する)に充分な長さを有する。一方、形状記憶部材118a〜118eは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に比して充分高い温度条件の下ではその形状を変化させ、連動部材115が注射針114を突き出すとともにベルト112を締める(貯蔵袋111の圧縮動作を開始する)ように作用する。なお、このような形状記憶部材は、上述した貯蔵袋111の圧縮動作と注射針114の突き出し動作とを連動して行うことができる駆動力を生成するに必要な数量が配置されていればよく、その配置数量は特に5つに限定されない。
また、形状記憶部材118a〜118eは、連動部材115に設けた配線(図示せず)等を介して制御回路13と電気的に接続される。この制御回路13は、上述した形状記憶部材12eの場合とほぼ同様に形状記憶部材118a〜118eの形状変化を制御する。かかる制御回路13は、被検体の内部に導入された被検体内導入装置110が被検体内の所望部位たとえば患部に到達した場合に形状記憶部材118a〜118eに対して電流を供給するように機能し、これによって形状記憶部材118a〜118eを形状変化(収縮変化)させる。かかる制御回路13の制御によって形状記憶部材118a〜118eは上述した駆動力を生成し、連動部材115は、この駆動力を用いて貯蔵袋111の圧縮動作と注射針114の突き出し動作とを連動して行う。一方、かかる制御回路13は、この電流供給を停止することによって形状記憶部材118a〜118eを元の形状に復帰させる。この場合、連動部材115は、かかる形状記憶部材118a〜118eの形状復帰によって生成される駆動力を用い、ベルト112を緩める(すなわち貯蔵袋111の圧縮動作を停止する)とともに注射針114を収納する。
ここで、上述した貯蔵袋111とベルト112とベルト保持部材113と連動部材115と形状記憶部材118a〜118eとチューブ117とを備えて実現される薬液吐出手段は、貯蔵室111aの容積を縮小して貯蔵室111a内の薬液を吐出するとともに、この薬液の吐出に関する物理力(例えば薬液に印加する加圧力)を用いて注射針114を筐体2から突き出す。すなわち、かかる薬液吐出手段は、貯蔵室111a内の薬液を吐出するとともに、筐体2から注射針114を突き出すための駆動力(薬液の吐出に関する物理力)を生成する駆動源(薬液の吐出に関する駆動源)として機能する。
つぎに、被検体内導入装置110の動作について説明する。図23は、貯蔵袋111の圧縮動作に連動して注射針114を筐体2から突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。図24は、図23に示す被検体内導入装置のG−G線断面模式図である。以下、図23,24を参照しつつ注射針115の突き出し動作および薬液の吐出動作について説明する。
まず、制御回路13は、上述したように形状記憶部材118a〜118eの形状変化を制御し、形状記憶部材118a〜118eの形状を変化(具体的には収縮)させる。形状記憶部材118a〜118eは、かかる形状変化に伴って駆動力を生成し、ベルト112を締める方向に連動部材115を移動させる。この場合、連動部材115は、かかる駆動力を用いてベルト112の自由端を引き動かす。かかる連動部材115の作用によって、ベルト112は、貯蔵袋111を締め付けて圧縮するとともに貯蔵室111aの容積を縮小して薬液を加圧する。このように加圧された貯蔵袋111内の薬液は、チューブ117および管路114aを介して注射針114の先端から吐出される。
かかる貯蔵袋111の圧縮動作と同時に、連動部材115は、上述した形状記憶部材118a〜118eの形状変化に基づく駆動力を用い、注射針114を筐体2から突き出す。このように突出した注射針114は、たとえば被検体内の所望部位を穿刺し、この所望部位に薬液を注射する。
一方、制御回路13の制御に基づいて形状記憶部材118a〜118eがほぼ元の形状に復帰した場合、連動部材115は、かかる形状記憶部材118a〜118eの形状復帰作用によって、ベルト112を緩める方向に移動して貯蔵袋111の圧縮を解除するとともに、注射針114を筐体2の内部に収納する。この場合、ベルト112による貯蔵袋111の圧縮動作が停止しているので、貯蔵袋111内の薬液は吐出されない。なお、上述した連動部材115の作用によってベルト112が貯蔵袋111の圧縮動作を再開した場合、かかる薬液の吐出が再開される。
ここで、上述した形状記憶部材118a〜118eの形状変化によって生成される駆動力は、ベルト112が貯蔵袋111を圧縮すなわち貯蔵室111aの容積を縮小して薬液を加圧するための加圧力(薬液の吐出に関する物理力の一例)である。連動部材115は、かかる加圧力を用いて貯蔵袋111の圧縮動作と注射針114の突き出し動作とを連動して行う。したがって、注射針114は、新たな駆動電力を消費せずに、かかる加圧力を用いて筐体2から突出することができる。
なお、ベルト112、連動部材115、および形状記憶部材118a〜118eは、かかる加圧力を用いて貯蔵袋111を圧縮し、薬液を加圧する薬液加圧手段として機能し、さらに貯蔵袋111およびチューブ117を追加することによって薬液吐出手段として機能する。かかる薬液吐出手段は、上述した貯蔵袋111の圧縮動作に基づいて薬液の吐出動作を行う。
このような構成を採用した被検体内導入装置110は、貯蔵袋111を圧縮するための加圧力を生成するために駆動電力を消費しさえすれば、この生成された加圧力を用いて薬液の吐出動作(すなわち薬液袋111の圧縮動作)と注射針114の突き出し動作とを連動して実行できる。また、かかる被検体内導入装置110は、形状記憶部材118a〜118eの形状復帰作用によって、薬液の吐出動作を停止するとともに注射針114の収納動作を行うことができる。したがって、かかる被検体導入装置110は、上述した実施の形態1と同様の作用効果を享受できる。
また、ベルト112の自由端と注射針114とを取り付けた連動部材115を移動させることによって薬液袋111の圧縮動作と注射針114の突き出し動作とが連動するように構成しているので、薬液を吐出するとともに注射針を突き出すための駆動機構を単純化でき、装置規模の小型化を促進できる。
さらに、形状記憶部材118a〜118eの形状変化作用によって注射針114の突き出し動作を行っているので、薬液の吐出圧力の低下によらず、所望量の薬液が被検体内の所望部位に注射し終えるまで注射針114の突出状態を維持できる。これによって、被検体内の所望部位に対して薬液を確実に注射できるとともに、筐体2内に薬液が無駄に残ることを抑制できる。
(実施の形態6)
つぎに、この発明の実施の形態6について説明する。この実施の形態6にかかる被検体内導入装置では、所定の駆動源を用いて筐体から注射針を突き出すとともに薬液の吐出動作を開始するように構成している。
図25は、この発明の実施の形態6である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。この被検体内導入装置201は、被検体の内部に導入され、予め貯蔵室内に貯蔵した薬液を被検体内の所望部位に注射するためのものである。図25に示すように、被検体内導入装置201は、患者等の被検体が飲み込み易い大きさのカプセル型の筐体202を有する。また、被検体内導入装置201は、筐体202の内部に、薬液を予め貯蔵するための貯蔵室203を形成するバルーン204と、この薬液を被検体内の所望部位に注射するための注射針205と、貯蔵室203に連通する第1管路と注射針205に連通する第2管路を形成するチューブ206および管路形成部207とを有する。さらに、被検体内導入装置201は、筐体202の内部に、かかる第1管路と第2管路との連通状態を調整するとともに注射針を突き出す連通調整機構208と、連通調整機構208の駆動状態を制御する制御回路213と、制御回路213に対して駆動電力を供給する電源部214とを有する。
貯蔵室203は、被検体内の所望部位に注射する薬液を予め貯蔵するためのものである。具体的には、この実施の形態6において、貯蔵室203はバルーン204の内表面と管路形成部207の表面によって覆われた領域に形成され、かかる領域に薬液が貯蔵される。
バルーン204は、貯蔵室203の外壁の大部分を形成し、ゴム等の弾性部材を用いて実現される。バルーン204は、所定量の薬液が注入されることによって伸長し、このように伸長した状態すなわち貯蔵室203を膨張させた状態を維持しつつ薬液を貯蔵する。また、バルーン204は、後述する連通調整機構208の作用によって貯蔵室203と注射針205とが連通した場合、その収縮力を用いて貯蔵室2の容積を縮小(圧縮)して薬液を加圧し、注射針205を介して薬液を吐出する。すなわち、バルーン204は、自身の収縮力を用いて貯蔵室203を圧縮するとともに薬液を加圧し、この薬液を吐出する薬液吐出動作を行う薬液吐出手段として機能する。
注射針205は、薬液の吐出に関する駆動源を用いて筐体202から突出し、貯蔵室203に貯蔵した薬液を被検体内の所望部位に注射するためのものである。具体的には、注射針205は、被検体に穿刺する先端側(尖形をなす側)と基端側とを連通する管路205aが内部に形成され、筐体202の開口部に設けたガイド202aの近傍に出し入れ自在に設けられる。この場合、注射針205は、管路205aの内部にチューブ206が摺動自在に挿入される。かかる注射針205は、後述する連通調整機構208の作用によって摺動し、ガイド202aに沿って筐体202から突出する。ガイド202aは、注射針205を円滑に突出または収納できるように注射針205の移動方向を規制する。
チューブ206および管路形成部207は、上述した第1管路および第2管路を形成するためのものである。具体的には、管路形成部207は、管路207a,207bが内部に形成され、この管路207bにチューブ206が接続される。この場合、管路207aは貯蔵室203に連通し、管路207bはチューブ206を介して注射針205の管路205aに連通する。すなわち、管路207aは上述した第1管路を形成し、管路207bおよびチューブ206は上述した第2管路を形成する。また、管路207a,207bおよびチューブ206は、互いに連通する場合に貯蔵室203の薬液を注射針205の管路205aに流通する薬液管路として機能する。
なお、かかる管路207a,207bは、筐体202の長手方向に沿って互いに平行に形成されることが望ましい。このように管路207a,207bを形成することによって、管路形成部207の規模を可能な限り小さくでき、被検体内導入装置201の小型化を促進できる。
連通調整機構208は、制御回路213の制御に基づいて上述した第1管路と第2管路との間すなわち管路207a,207bの間を連通した状態(連通状態)に調整するとともに注射針205を突き出すように機能する。この場合、連通調整機構208は、かかる管路207a,207bの間を連通状態に調整する連通調整動作を行うことによって、バルーン204の収縮動作すなわち薬液吐出動作を開始させる吐出開始手段として機能する。また、連通調整機構208は、バネによる弾性力を用い、かかる管路207a,207bの間の連通状態を遮断した状態(遮断状態)に調整するとともに注射針205を筐体202に収納する機能を有する。この場合、連通調整機構208は、かかる管路207a,207bの間を遮断状態に調整する遮断調整動作を行うことによって、バルーン204の収縮動作すなわち薬液吐出動作を停止させる。
かかる連通調整機構208は、制御回路213の制御に基づいて注射針205を突き出す突き出し動作と連通調整動作とを連動して行い、またはバネによる弾性力を用いて注射針205を筐体202に収納する収納動作と遮断調整動作とを連動して行う。このような機能を有するために、連通調整機構208は、管路形成部207を挿通したシート保持部208aと、シート保持部208a上に露出する管路形成部207の端部を覆うようにシート保持部208aに配置されたシート部材208bと、シート部材208bの周縁部分をシート保持部208aに対して密着した状態で固定する固定部材208cとを有する。また、連通調整機構208は、シート部材208bに対して所定の押圧力を印加する押圧部材208dと、注射針205の基端部を保持する保持基板208eと、押圧部材208dの動作と保持基板208eの動作とを連動させる連動部材208f,208gとを有する。さらに、連通調整機構208は、押圧部材208dが印加する押圧力を生成するバネ208hと、バネ208hを保持するバネ基板208iと、押圧部材208dの動作および保持基板208eの動作の駆動源である形状記憶部材208j,208kとを有する。
シート保持部208aは、シート部材208bを保持するためのものである。具体的には、シート保持部208aは、たとえば筐体202に対して固定され、管路形成部207に貫通された態様で管路形成部207を保持するとともに、かかる管路形成部207の端部が露出する領域を覆う態様でシート部材208bを保持する。
シート部材208bは、上述した第1管路と第2管路との間を連通状態または遮断状態に調整するためのものである。具体的には、シート部材208bは、たとえばシリコンシート等の水密かつ柔軟な材料によって形成され、シート保持部208a上に露出する管路形成部207の端部を覆うようにシート保持部208aに配置されるとともに、固定部材208cによって周縁部分がシート保持部208aに対して密着した状態で固定される。かかるシート部材208bは、押圧部材208dによって所定の押圧力が印加された場合、管路形成部207の端部に密着した状態に維持され、これによって管路207a,207bの間(すなわち上述した薬液管路の一部)を遮断状態にする。かかる管路形成部207の端部にはオーリング212が設けられ、オーリング212は、この遮断状態における管路形成部207の端部とシート部材208bとの接触界面の水密を確実にする。一方、シート部材208bは、押圧部材208dによる押圧力が低下した場合、管路207aから流通される薬液の吐出圧力等によって管路形成部207の端部から離れ、これによって管路207a,207bの間を連通状態にする。
固定部材208cは、シート部材208bの周縁部分をシート保持部208aに対して固定するためのものである。具体的には、固定部材208cは、シート部材208bの周縁部分に対してシート保持部208a側に押圧力を印加することによってシート部材208bの周縁部分とシート保持部208aとを密着固定する。かかる態様で固定部材208cがシート部材208bを固定することによって、シート部材208bの中心部分すなわち管路形成部207の端部近傍は、押圧部材208dの押圧力に応じて形状を自由に変形させる。これと同時に、このように配置されたシート部材208bは、管路207a,207bの間を流通する薬液が管路207a,207b以外たとえば押圧部材208dまたは制御回路213等が配置された筐体202内の領域に漏出することを防止する。
押圧部材208dは、上述したようにシート部材208bに所定の押圧力を印加して管路207a,207bの間を遮断状態に調整し、上述した遮断調整動作を達成する。また、押圧部材208dは、シート部材208bから離間する方向に移動してこの押圧力を減少または零にすることによって、管路207a,207bの間を連通状態に調整し、上述した連通調整動作を達成する。
保持基板208eは、注射針205に貫通された態様で注射針205を保持する。かかる保持基板eは、形状記憶部材208j,208kによって生成された駆動力を用い、この注射針205を筐体から突き出す突出手段として機能する。また、保持基板208eは、連動部材208f,208gを介して伝達されたバネ208hの弾性力を用い、突出した注射針205を筐体202の内部に収納する機能を有する。
連動部材208f,208gは、かかる押圧部材208dの動作と保持基板208eの動作とを連動させるためのものである。具体的には、連動部材208f,208gは、たとえば可撓性を有する糸状の部材であって、それぞれの一端が保持基板208eに接続されるとともに他端が押圧部材208dに接続される。より具体的には、連動部材208f,208gは、かかる押圧部材208dまたは保持基板208e上で互いに反対に位置するように端部がそれぞれ接続される。この場合、図25に示すように、連動部材208fは、保持基板208eからガイド部材211a〜211cを順次経由して押圧部材208dに到達する。また、連動部材208gは、保持基板208eからガイド部材211d〜211fを順次経由して押圧部材208dに到達する。かかる連動部材208f,208gは、形状記憶部材208j,208kによる駆動力を押圧部材208dに伝達して保持基板208eによる注射針205の突き出し動作と押圧部材208dによる連通調整動作とを連動させる。また、連動部材208f,208gは、バネ208hによる弾性力を保持基板208eに伝達して保持基板208eによる注射針205の収納動作と押圧部材208dによる遮断調整動作とを連動させる。
また、かかるガイド部材211a〜211fは、筐体202内の所定位置に設けられ、連動部材208f,208gの経路を規制する。具体的には、ガイド部材211a〜211fは、平滑な表面形状の柱状部材または滑車等を用いて実現され、保持基板208eによる注射針205の突き出し動作に伴って移動する連動部材208f,208gの移動方向と押圧部材208dがシート部材208bから離隔する場合の連動部材208f,208gの移動方向とが合致するように配置される。なお、筐体202の内部には必要数量のガイド部材が配置されればよく、その配置数量は特に6つに限定されない。
バネ208hは、押圧部材208dがシート部材208bに対して印加する押圧力を生成するためのものである。具体的には、バネ208hは、一端がバネ基板208iに対して固定されるとともに他端が押圧部材208dに対して固定され、かつバネ長が自然長に比して短い状態に維持されている。このように配置されたバネ208hは、押圧部材208dに対し、シート部材208bが位置する方向に弾性力(弾発力)を付勢するように機能する。この場合、バネ208hは、シート部材208bを押圧する押圧力として、かかる弾性力を押圧部材208dに伝達する。
形状記憶部材208j,208kは、上述した注射針205の突き出し動作と連通調整動作とを行う連通調整機構208の駆動源であり、かかる注射針205の突き出し動作と連通調整動作とをともに行うための駆動力を生成する。具体的には、形状記憶部材208j,208kは、棒状またはコイル状(たとえばSMAコイル)の構造を有し、所定の形状記憶特性を有するとともに所定の電気抵抗値を有する形状記憶合金によって形成される。かかる形状記憶部材208j,208kは、それぞれ一端がガイド202aに対して固定されるとともに他端が保持基板208eに対して固定され、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件下では筐体202の内部に注射針205を収納するに充分な長さを有する。この場合、押圧部材208dは、バネ208hによる弾性力を用いてシート部材208bを押圧する。連動部材208f,208gは、かかる注射針205の収納状態またはシート部材208bに対する押圧部材208dの押圧状態を阻害しない程度の長さを有する。
一方、形状記憶部材208j,208kは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に比して充分高い温度条件下ではその形状を変化させ、かかる形状変化(具体的には収縮変形)に伴って所定の駆動力を生成する。かかる駆動力は、保持基板208eに伝達されるとともに連動部材208f,208gを介して押圧部材208dに伝達される。この場合、保持基板208eは、かかる駆動力を用いて注射針205を筐体から突き出し(注射針205の突き出し動作)、かかる注射針205の突き出し動作に連動して、押圧部材208dは、シート部材208bから離隔して管路207a,207bの間を連通状態に調整する(連通調整動作)。形状記憶部材208j,208kは、このように注射針205の突き出し動作と連通調整動作とを連動して行うに足る駆動力を生成する。
ここで、かかる形状記憶部材208j,208kの作用によって管路207a,207bが連通状態に調整された場合、管路207a,207bを介してバルーン204と注射針205とが連通状態になる。この場合、バルーン204は、かかる管路207a,207bと注射針205の管路205aとを介して筐体202の外部(例えば被検体内の所望部位)に薬液を吐出する。したがって、形状記憶部材208j,208kによって生成される駆動力は、かかる注射針205の突き出し動作を行うために用いられる駆動力であるとともに、バルーン204による薬液の吐出動作を開始するための連通調整動作に用いられる駆動力(すなわち薬液の吐出に関する物理力の一例)である。すなわち、かかる薬液の吐出に関する物理力を生成する形状記憶部材208j,208kは、薬液の吐出に関する駆動源である。
制御回路213は、形状記憶部材208j,208kに対する電流供給の有無によって形状記憶部材208j,208kの形状変化を制御し、かかる形状変化の制御を通じて注射針205の突き出し動作とバルーン204による薬液吐出動作とを制御するように機能する。具体的には、制御回路213は、被検体の内部に導入された被検体内導入装置201が被検体内の所望部位たとえば患部に到達した場合に形状記憶部材208j,208kに対して電流を供給するように機能する。かかる電流が形状記憶部材208j,208kを流れることによって、形状記憶部材208j,208kにジュール熱が発生し、このジュール熱に起因して形状記憶部材208j,208kが所定の温度以上に上昇する。この温度上昇に起因して、形状記憶部材208j,208kは、その形状を変化させて上述した注射針の突き出し動作と連通調整動作との駆動力を生成し、保持基板208eが注射針205を突き出すとともに押圧部材208dがシート部材208bから離隔するように作用する。これによって、注射針205が突出するとともに、バルーン204が薬液吐出動作を行う。
一方、制御回路213は、形状記憶部材208j,208kに対する電流供給を停止することによって形状記憶部材208j,208kを所定温度未満(たとえば被検体内の温度と同程度)に低下させる。かかる温度低下に起因して、形状記憶部材208j,208kは、上述した連通調整機構208に対する駆動力を消失する。この場合、押圧部材208dがシート部材208bを押圧するとともに、かかる押圧力すなわちバネ208hの弾性力を用いて保持基板208eが注射針205を収納する。これによって、注射針205が筐体202の内部に収納されるとともに、バルーン204が薬液吐出動作を停止する。
なお、制御回路213による電流供給のタイミングを規定する構成としては、たとえばタイマー機構を備えることとしてもよいし、無線受信機構を内蔵するとともに外部より制御信号を供給することとしてもよい。
つぎに、被検体内導入装置201の動作について説明する。図26は、被検体内導入装置201の注射針205を突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図26を参照しつつ注射針205の突き出し動作および薬液吐出動作について説明する。
まず、制御回路213は、形状記憶部材208j,208kに対して所定の電流を供給し、形状記憶部材208j,208kにジュール熱を発生させて形状記憶部材208j,208kの温度を上昇させる。形状記憶部材208j,208kは、所定温度以上に温度上昇がなされた場合に形状を変化させる。具体的には、形状記憶部材208j,208kは、コイル状に形成されるとともに高温時に長手方向長さが収縮するように予め形状記憶がなされており、ジュール熱によって所定の温度以上に温度上昇した場合、その長手方向長さが短くなるように形状を変化する。形状記憶部材208j,208kは、かかる形状変化によって駆動力を生成する。この生成した駆動力は、保持基板208eに伝達されるとともに、連動部材208f,208gを介して押圧部材208dに伝達される。
この場合、保持基板208eは、かかる駆動力を用いて注射針205を筐体202から突き出すとともに、連動部材208f,208gを注射針205の突出方向に引き動かす。これに連動して、かかる連動部材208f,208gは、押圧部材208dをシート部材208bから離隔する方向に動かす。押圧部材208dは、かかる連動部材208f,208gの作用によってシート部材208bに対する押圧力を減少し、シート部材208bと管路形成部207の端部との密着状態を解消して連通調整動作を達成する。バルーン204は、かかる連通調整動作によって管路207a,207bが連通状態に調整されたことをトリガーとして薬液吐出動作を行う。この場合、貯蔵室203内の薬液は、かかるバルーン204の薬液吐出動作によって、管路207a,207bとチューブ206と注射針205の管路205aとを順次通過し、突出した注射針205の先端から吐出される。かかる突出した注射針205は、たとえば患部等の被検体内の所望部位を穿刺し、この所望部位に薬液を注射する。
このような構成を有する連通調整機構208は、形状記憶部材208j,208kによって生成された駆動力を用いて注射針205の突き出し動作と連通調整動作とを連動して行い、筐体202から注射針205を突き出すとともにバルーン204の薬液吐出動作を開始させる吐出開始手段として機能する。バルーン204は、自身の収縮力を用いて薬液吐出動作を行い、注射針205を介して所望量の薬液を被検体内の所望部位に注入できる。
一方、制御回路213が形状記憶部材208j,208kに対する電流供給を停止した場合、かかる形状記憶部材208j,208kは、ジュール熱の発生が抑制されて徐々に温度低下し、収縮変形を解除して上述した駆動力を消失する。この場合、押圧部材208dは、バネ208hによる弾性力を用いてシート部材208bを押圧し、管路207a,207bの間を遮断状態に調整する。かかる押圧部材208dの遮断調整動作によって、バルーン204は、薬液吐出動作を停止する。また、かかるバネ208hによる弾性力は、連動部材208f,208gを介して保持基板208eに伝達される。すなわち、押圧部材208dは、連動部材208f,208gを用い、この遮断調整動作に連動して保持基板208eを管路形成部207に向かう方向に動かす。保持基板208eは、かかる押圧部材208dの作用によって注射針205を筐体202の内部に収納する。このようにして、連通調整機構208は、バネ208hの弾性力を用い、バルーン204の薬液吐出動作を停止するとともに注射針205を筐体202の内部に収納できる。
ここで、かかる連通調整機構208がバルーン204の薬液吐出動作を停止した時点において、バルーン204は、所望量以上の薬液を吐出し終えていなければ、その収縮動作を再開できる程度の弾性力(収縮力)を有している。したがって、連通調整機構208が制御回路213の制御に基づいて上述した連通調整動作を再度行った場合、管路207a,207bは再度連通状態に調整され、バルーン204は薬液吐出動作を再開する。このように連通調整機構208が連通調整動作と遮断調整動作とを繰り返すことによって、バルーン204は、所望量以上の薬液を吐出し終えるまで、薬液吐出動作を間欠的に繰り返すことができる。
以上、説明したように、この発明の実施の形態6では、薬液管路を連通状態または遮断状態に調整する押圧部材の動作と注射針を保持する保持基板の動作とが連動部材によって連動するようにし、形状記憶部材の形状変化によって生成される駆動力を用いて、保持基板が注射針を筐体から突き出す動作と押圧部材が薬液管路を連通状態に調整する動作とを連動して行うように構成した。このため、かかる形状記憶部材に対して所定の電力を供給することによって、薬液を連通状態にして薬液吐出動作を開始するとともに注射針を突き出すことができ、かかる注射針の突き出し動作を実行するために新たな駆動電力を消費する必要がなく、注射針の突き出し動作を省電力化して実行できる被検体内導入装置を実現することができる。
また、バネによる弾性力を用いて押圧部材が薬液管路を遮断状態に調整する動作と保持基板が注射針を筐体内に収納する動作とを連動して行うに構成している。このため、かかる注射針の収納動作を実行するために新たな駆動電力を消費する必要がなく、注射針の収納動作を省電力化して実行できる被検体内導入装置を実現することができる。このように注射針を筐体内に収納できる被検体内導入装置は、被検体内の必要な箇所に対してのみ注射針を穿刺することができる。また、薬液管路を遮断状態に調整することによって薬液吐出動作を停止でき、薬液管路を連通状態または遮断状態に繰り返し調整することによって、薬液を間欠的に吐出することができる。
さらに、このように注射針を突出または収納する保持基板と薬液管路を連通状態または遮断状態に調整する押圧部材とこれらを連動する連動部材を用いることによって、注射針の突き出し動作と薬液管路の連通調整動作とを連動して行える連通調整機構を一体的に構成できる。かかる構成を採用した連通調整機構を用いることによって、注射針の突き出し動作を実行する新たな駆動機構を設ける必要がなく、被検体内の所望部位に薬液を注射するための駆動機構を単純化でき、装置規模を小さくした被検体内導入装置を簡易に実現できる。
また、かかる連通調整機構は、押圧部材が薬液管路を遮断状態に調整する動作と保持基板が注射針を筐体内に収納する動作とを連動して行うようにしている。このため、注射針の収納動作を実行する新たな駆動機構を設ける必要がなく、被検体内の所望部位に薬液を注射し終えた後の注射針を収納するための駆動機構を単純化でき、装置規模を小さくした被検体内導入装置を簡易に実現できる。
さらに、伸長自在なバルーンを用いて薬液の貯蔵室を形成し、このバルーンの収縮力を用いて薬液吐出動作を実行している。このため、この薬液吐出動作を実行するために新たな駆動電力を消費する必要がなく、この発明にかかる被検体内導入装置の省電力化を促進できる。
このような構成を採用した被検体内導入装置は、装置規模の小型化を実現するとともに、被検体内の所望部位に薬液を注射する局注機能を備えることができ、注射針を突き出して薬液を被検体内の所望部位に注射し、その後、この注射針を収納するまでの局注動作をより少ない消費電力によって実行することができる。
(実施の形態6の変形例1)
つぎに、この発明の実施の形態6である被検体内導入装置201の変形例1について説明する。上述した実施の形態6では、注射針205を保持する保持基板208eに駆動源である形状記憶部材208j,208kを取り付け、かかる形状記憶部材208j,208kの収縮作用によって保持基板208eが注射針205を突き出し、これに連動して押圧部材208dがシート部材208bから離隔していたが、この実施の形態6の変形例1では、押圧部材208dに駆動源である形状記憶部材208j,208kを取り付け、かかる形状記憶部材208j,208kの収縮作用によって押圧部材208dがシート部材208bから離隔し、これに連動して保持基板208eが注射針205を突き出すようにしている。
図27は、この発明の実施の形態6の変形例1である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図27に示すように、この被検体内導入装置220は、駆動源である形状記憶部材208j,208kがバネ208hに代えて設けられ、バネ208hが形状記憶部材208j,208kに代えて設けられる。その他の構成は実施の形態6と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
具体的には、バネ208hは、一端がガイド202aに対して固定されるとともに他端が保持基板208eに対して固定され、かつバネ長が自然長に比して短い状態に維持される。このように配置されたバネ208hは、保持基板208eに対し、注射針205を収納する方向に弾性力を付勢するように機能する。
かかる被検体内導入装置220では、図27に示すように、連動部材208fは、保持基板208eからバネ208hの近傍を通ってガイド202aを摺動自在に貫通し、ガイド部材211a〜211cを順次経由して押圧部材208dの表側(シート部材208bに対向する側)に到達する。また、連動部材208gは、保持基板208eからバネ208hの近傍を通ってガイド202aを摺動自在に貫通し、ガイド部材211d〜211fを順次経由して押圧部材208dの表側に到達する。この場合、ガイド部材211a〜211fは、図27に示すように、かかる連動部材208f,208gの経路を実現するように筐体202の内部に配置される。
一方、形状記憶部材208j,208kは、それぞれ一端が押圧部材208dの裏側(バネ基板208iに対向する側)に対して固定されるとともに他端がバネ基板208iに対して固定され、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件下では押圧部材208dがシート部材208bに当接するに充分な長さを有する。かかる形状記憶部材208j,208kは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に比して充分高い温度条件の下ではその形状を変形(具体的には収縮変形)させ、押圧部材208dがシート部材208bから離隔するように作用する。
ここで、かかる押圧部材208dは、形状記憶部材208j,208kが所定の温度未満すなわち収縮変形していない場合、連動部材208f,208gによって伝達されるバネ208hの弾性力を用いてシート部材208bを押圧する。その後、形状記憶部材208j,208kが制御回路213の制御に基づいて収縮変形した場合、押圧部材208dは、かかる収縮変形による作用(すなわち形状記憶部材208j,208kによって生成される駆動力)によってシート部材208bから離隔するように動かされる。これと同時に、かかる駆動力は、連動部材208f,208gによって保持基板208eに伝達される。この場合、保持基板208eは、かかる押圧部材208dの動作に連動し、連動部材208f,208gによって注射針205が突出する方向に動かされる。このように保持基板208eは、かかる駆動力を用いて注射針205を筐体202から突き出す。
その後、制御回路213が形状記憶部材208j,208kに対する電流供給を停止した場合、形状記憶部材208j,208kは、上述したように収縮変形を停止して駆動力を消失する。この場合、保持基板208eは、バネ208hによる弾性力を用いて注射針205を筐体202内に収納するとともに、かかる注射針205を収納する方向に沿って連動部材208f,208gを引き動かす。かかる連動部材208f,208gは、このバネ208hによる弾性力を押圧部材208dに伝達する。すなわち、押圧部材208dは、かかる保持基板208eによる収納動作に連動し、連動部材208f,208gによってシート部材208bを押圧する方向に動かされる。かかる押圧部材208dは、このバネ208hによる弾性力を用いてシート部材208bを押圧する。
このように、連通調整機構208は、形状記憶部材208j,208kによって生成される駆動力を用い、シート部材208bから押圧部材208dを離隔して上述した連通調整動作を達成し、この連通調整動作に連動して保持基板208eを引き動かし、注射針205を筐体202から突き出す。また、連通調整機構208は、バネ208hによる弾性力を用い、注射針205を収納する方向に保持基板208eを動かして注射針205を筐体202内に収納し、この注射針205の収納動作に連動して、押圧部材208dをシート部材208bに押圧して上述した遮断調整動作を達成する。
このような構成を採用した被検体内導入装置220は、上述した実施の形態6である被検体内導入装置201と同様の機能を有することができる。たとえば、被検体内導入装置220は、上述した被検体内導入装置201と同様に、形状記憶部材208j,208kの収縮変形による作用(すなわち形状記憶部材208j,208kによって生成された駆動力)によって注射針205を突き出すとともに薬液を吐出することができる。かかる被検体内導入装置220は、上述した被検体内導入装置201と同様の作用効果を享受できる。
(実施の形態6の変形例2)
つぎに、この発明の実施の形態6である被検体内導入装置201の変形例2について説明する。上述した実施の形態6では、バルーン204がその収縮作用によって薬液を吐出していたが、この実施の形態6の変形例2では、薬液を貯蔵する貯蔵室を形成するピストン機構を備え、かかるピストン機構がバネの弾性力を用いて貯蔵室を圧縮し、薬液を吐出するようにしている。
図28は、この発明の実施の形態6の変形例2である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図28に示すように、この被検体内導入装置240は、上述した実施の形態6である被検体内導入装置201のバルーン204に代えてピストン機構241が設けられ、管路形成部207に代えて管路形成部243が設けられる。その他の構成は実施の形態6と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
ピストン機構241は、薬液を予め貯蔵する貯蔵室242を内部に形成し、貯蔵室242を圧縮してこの薬液を吐出する薬液吐出手段として機能する。具体的には、ピストン機構241は、その外壁の大部分を形成するシリンダー241aと、貯蔵室242を圧縮するようにシリンダー241a内を摺動するピストン241bと、ピストン241bに対して所定の弾性力を印加するバネ241cとを有する。
シリンダー241aは、ピストン機構241の外壁の大部分を形成し、シート保持部208aの裏面(シート部材208bが配置されていない面)によってその開口が覆われるように、シート保持部208aに取り付けられる。かかるシリンダー241aは、その内部にピストン241bが摺動自在に設けられ、底部とピストン241bとの間にバネ241cが設けられる。この場合、ピストン241bは、シート保持部208aに設けられた管路形成部243によって摺動自在に貫通された態様で設けられ、バネ241cは、かかる管路形成部243がそのコイル中心を通過する態様で設けられる。また、シリンダー41は、管路形成部243によって底部が貫通された態様で設けられる。
この場合、貯蔵室242は、シート保持部208aの裏面とピストン241bとシリンダー241aの一部(すなわちシート保持部208aの裏面とピストン241bとの間に位置する部分)とによって囲まれた領域に形成される。
ピストン241bは、かかる貯蔵室242を圧縮して薬液を吐出するためのものである。具体的には、ピストン241bは、上述した連通調整機構208の作用によって管路243a,207bの間が連通状態に調整された場合、バネ241cによる弾性力を用いてシリンダー241aの内壁と管路形成部243の外壁とを摺動し、これによって貯蔵室242を圧縮して薬液を吐出する。
バネ241cは、ピストン241bに対して所定の弾性力を印加するためのものである。具体的には、バネ241cは、一端がシリンダー241aの底部に対して固定されるとともに他端がピストン241bに対して固定され、かつバネ長が自然長に比して短い状態に維持されている。このように配置されたバネ241cは、ピストン241bに対し、貯蔵室242を圧縮する方向に弾性力(弾発力)を付勢するように機能する。
管路形成部243は、貯蔵室242に連通する管路243aとチューブ206を介して注射針205の管路205aに連通する管路207bとが内部に形成される。かかる管路形成部243は、管路243a,207bの開口を形成した端部が上述した管路形成部207と同様にシート保持部208aに設けられ、他端がシリンダー241aの底部を貫通する態様で設けられる。この場合、管路形成部243は、上述した連通調整機構208の作用(連通調整動作または遮断調整動作)によって管路243a,207bの間が連通状態または遮断状態に調整される。
このような構成を採用した被検体内導入装置240は、上述した実施の形態6である被検体内導入装置201のバルーン204と同様に薬液吐出動作を行うことができ、この被検体内導入装置201と同様の機能を有することができる。したがって、かかる被検体内導入装置240は、上述した被検体内導入装置201と同様の作用効果を享受できる。
(実施の形態7)
つぎに、この発明の実施の形態7について説明する。上述した実施の形態6では、連動部材208f,208gを用いて押圧部材208dの動作(たとえば連通調整動作)と保持基板208eの動作(たとえば注射針205の突き出し動作)とを連動させていたが、この実施の形態7では、この押圧部材208dに注射針を直接設け、かかる押圧部材208dの動作とともに注射針の突き出し動作を行うようにしている。
図29は、この発明の実施の形態7である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図29に示すように、この被検体内導入装置250は、筐体202の内部に、被検体内の所望部位に薬液を注射するための注射針251と、この注射針251の内部に形成された管路251aに薬液を流通するためのチューブ252と、上述した貯蔵室203を形成する薬液吐出手段としてのバルーン204とを有する。また、被検体内導入装置250は、かかる貯蔵室203とチューブ252との間を連通状態に調整するとともに注射針251を筐体202から突き出す連通調整機構253と、連通調整機構253の駆動状態を制御する制御回路213と、制御回路213に対して駆動電力を供給する電源部214とを有する。
注射針251は、薬液の吐出に関する駆動源を用いて筐体202から突出し、被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針251は、被検体に穿刺する先端側(尖形をなす側)と側部の所定位置とを連通する管路251aが内部に形成される。また、注射針251は、後端部が連通調整機構253の押圧部材208dに対して固定される。かかる注射針251は、筐体202の注射針出入り口に設けられた筒状構造のガイド202b内に摺動自在に挿通する態様で設けられる。このガイド202bは、注射針251を円滑に突出または収納できるように注射針251の移動方向を規制するとともに、注射針251の管路251aに流通された薬液がチューブ252以外たとえば制御回路213または連通調整機構253等が配置された筐体202内の領域に漏出することを防止する。
チューブ252は、突出した状態の注射針251の管路251aに薬液を流通する管路を形成するためのものである。具体的には、チューブ252は、一端がガイド202bに接続されるとともに他端が連通調整機構253のシート保持部253aに接続される。より具体的には、チューブ252は、注射針251が筐体202から突出した場合に管路251aと連通するように、ガイド202bの所定位置に接続される。かかるチューブ252は、このシート保持部253aに形成された管路254bに連通するとともに、筐体202から突出した状態の注射針251の管路251aに連通する。
連通調整機構253は、制御回路213の制御に基づいて貯蔵室203とチューブ252(すなわち注射針251の管路251a)との間を連通状態に調整する連通調整動作または遮断状態に調整する遮断調整動作を行うように機能する。また、連通調整機構253は、かかる連通調整動作に連動して注射針251を筐体から突き出し、かかる遮断調整動作に連動して注射針251を筐体202内に収納する。かかる連通調整機構253は、貯蔵室203に連通する管路254aとチューブ252に連通する管路254bとが内部に形成されたシート保持部253aと、かかる管路254a,254bの開口を覆うようにシート保持部253a上に配置されたシート部材208bと、シート部材208bの周縁部分をシート保持部208aに対して密着した状態で固定する固定部材208cとを有する。また、連通調整機構253は、シート部材208bに対して所定の押圧力を印加する押圧部材208dと、押圧部材208dが印加する押圧力を生成するバネ208hと、バネ208hを保持するバネ基板208iと、シート部材208bに対する押圧部材208dの位置を変える形状記憶部材208j,208kとを有する。なお、かかるシート部材208b、固定部材208c、押圧部材208d、バネ208h、バネ基板208i、および形状記憶部材208j,208kは、上述した実施の形態6における連通調整機構208の場合とほぼ同様に機能する。
シート保持部253aは、管路254aにバルーン204が接続されるとともに管路254bにチューブ252が接続される。かかるシート保持部253aは、形状記憶部材208j,208kの作用によって押圧部材208dがシート部材208bに対する押圧力を減少した場合、シート部材208bと管路254a,254bの開口との密着状態が解消されて管路254a,254bの間が連通状態に調整される。かかる連通状態では、バルーン204が薬液吐出動作を開始し、シート保持部253aは、管路254a,254bを介して薬液をチューブ252に流通する。一方、押圧部材208dがバネ208hの弾性力を用いてシート部材208bを押圧した場合、シート保持部54aは、シート部材208bと管路254a,254bの開口とが密着状態になるとともに管路254a,254bの間が遮断状態に調整される。かかる遮断状態では、シート保持部253aは、貯蔵室203とチューブ252(すなわち注射針251の管路251a)との間の薬液の流通が遮断される。これによって、バルーン204は、薬液吐出動作を停止する。
ここで、注射針251は、上述したように押圧部材208dの裏面(バネ基板208iに対向する面)に接続される。このように押圧部材208dに対して固定された注射針251は、押圧部材208dの動作に連動してガイド202b内を摺動する。具体的には、注射針251は、シート部材208bから離隔する方向への押圧部材208dの動作(すなわち管路254a,254bの間を連通状態に調整する連通調整動作)に連動して筐体202から突出する。かかる突出した状態において、注射針251は、チューブ252と管路251aとを連通させる。その後、かかる突出した注射針251は、シート部材208bを押圧する方向への押圧部材208dの動作(すなわち管路254a,254bの間を遮断状態に調整する遮断調整動作)に連動して筐体202内に戻る、すなわち収納される。
つぎに、被検体内導入装置250の動作について説明する。図30は、被検体内導入装置250の注射針251を突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図30を参照しつつ注射針251の突き出し動作および薬液吐出動作について説明する。
まず、制御回路213は、バルーン204が薬液吐出動作を開始するように連通調整機構253の駆動制御を行う。具体的には、制御回路213は、連通調整機構253の駆動源である形状記憶部材208j,208kに対して所定の電流を供給して形状変化(収縮変形)させる。形状記憶部材208j,208kは、かかる形状変化によって駆動力を生成するとともに、この駆動力を用いて押圧部材208dを引き動かす。この場合、押圧部材208dは、かかる駆動力によって、シート部材208bから離隔する方向に移動するとともにシート部材208bに対する押圧力を減少する。これによって、押圧部材208dは上述した連通調整動作を達成し、バルーン204は薬液吐出動作を開始する。
かかる押圧部材208dは、このようにシート部材208bから離隔する方向に移動することによって、注射針251を押し動かす。注射針251は、かかる押圧部材208dの作用によってガイド202b内を摺動し、チューブ252と管路251aとを連通させるとともに筐体202から突出する。すなわち、押圧部材208dは、形状記憶部材208j,208kによる駆動力によって、上述した連通調整動作と注射針251の突き出し動作とを同時に行う。
このように注射針251が突出した状態では、貯蔵室203および注射針251の管路251aが管路254a,254bとチューブ252とを介して連通し、かつバルーン204は薬液吐出動作を継続する。かかる薬液吐出動作によって、貯蔵室203内の薬液は、管路254a,254bとチューブ252と管路251aとを順次通過して注射針251の先端から吐出される。
このような構成を有する連通調整機構253は、形状記憶部材208j,208kによって生成された駆動力を用いて注射針205の突き出し動作と連通調整動作とを同時に行い、筐体202から注射針251を突き出すとともにバルーン204の薬液吐出動作を開始させる吐出開始手段として機能する。かかる注射針251は、たとえば患部等の被検体内の所望部位を穿刺し、バルーン204は、自身の収縮力を用いて薬液吐出動作を行い、この注射針251を介して所望量の薬液を被検体内の所望部位に注入できる。
その後、制御回路213が形状記憶部材208j,208kに対する電流供給を停止した場合、形状記憶部材208j,208kは、上述したように収縮変形を停止して駆動力を消失する。この場合、押圧部材208dは、バネ208hによる弾性力を用いてシート部材208bを押圧するとともに注射針205を筐体202内に引き戻す。かかる押圧部材208dの作用によって、管路254a,254bの間が遮断状態に調整されるとともに注射針251が筐体202内に収納される。
ここで、バルーン204は、所望量以上の薬液を吐出し終えていなければ、このように管路254a,254bの間が遮断状態に調整されることによって薬液吐出動作を停止(中断)する。その後、押圧部材208dが再度シート部材208bから離隔するとともに注射針251を突き出した場合、管路254a,254bの間が連通状態に再度調整され、バルーン204は薬液吐出動作を再開する。このように連通調整機構253が連通調整動作と遮断調整動作とを繰り返すことによって、バルーン204は、所望量以上の薬液を吐出し終えるまで、薬液吐出動作を間欠的に繰り返すことができる。
このような構成を採用した被検体内導入装置250は、上述した実施の形態6である被検体内導入装置201とほぼ同様の機能を有するので、上述した被検体内導入装置201の作用効果を享受できる。
また、かかる被検体内導入装置250は、押圧部材208dに対して注射針251を直接固定し、押圧部材208dがシート部材208bから離隔する動作と注射針251を筐体202から突き出す動作とを連動させ、押圧部材208dがシート部材208bを押圧する動作と注射針251を筐体202内に収納する動作とを連動させている。このため、上述した連動部材208f,208gに例示されるような押圧部材の動きと注射針の動きとを連動させる部材を設ける必要がなく、筐体202内部の省スペース化を促進するとともに、装置規模をより小型化できるという効果を奏する。
(実施の形態7の変形例)
つぎに、この発明の実施の形態7である被検体内導入装置250の変形例について説明する。上述した実施の形態7では、管路254a,254bの連通状態を調整する押圧部材208dに注射針を直接設けていたが、この実施の形態7の変形例では、注射針内の管路とバルーン内との連通状態を調整する押圧部材に対して固定された管路形成部に注射針を接続し、かかる管路形成部の動作とともに注射針の突き出し動作を行うようにしている。
図31は、この発明の実施の形態7の変形例である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図31に示すように、この被検体内導入装置250aは、上述した実施の形態7である被検体内導入装置250の注射針251に代えて注射針255を有し、連通調整機構253に代えて連通調整機構258を有する。また、被検体内導入装置250aは、上述した被検体内導入装置250のチューブ252およびシート保持部253aの代わりにバルーン204の内部(貯蔵室203)と注射針255の管路255aとを連通するための管路256a,259aをそれぞれ形成する管路形成部256およびチューブ259を有する。さらに、被検体内導入装置250aは、薬液が管路の外部に漏出することを防止する漏出防止手段としてのオーリング257aと、管路の連通状態をより確実に遮断する連通遮断手段としてのオーリング257bとを有する。かかるオーリング257a,257bは、押圧されることによって弾性力を発生しつつ変形する弾性部材である。その他の構成は実施の形態7と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
注射針255は、薬液の吐出に関する駆動源を用いて筐体202から突出し、被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針255は、被検体に穿刺する先端側(尖形をなす側)と基端側とを連通する管路255aが内部に形成される。また、注射針255は、筐体202の注射針出入り口に設けられた筒状構造のガイド202a内を摺動自在に挿通する態様で設けられる。このような注射針255は、この管路255aとバルーン204内の貯蔵室203とを連通状態にしてバルーン204の薬液吐出動作を開始する連通調整機構258の動作によって筐体202から突出する。一方、このような注射針255は、かかる管路255aと貯蔵室203との連通状態を遮断してバルーン204の薬液吐出動作を停止する連通調整機構258の動作によって筐体202内に戻る(すなわち収納される)。
管路形成部256およびチューブ259は、注射針255の管路255aとバルーン204内の貯蔵室203とを連通するための管路を形成するためのものである。具体的には、管路形成部256は、その内部に管路256aが形成され、この管路256aと注射針255の管路255aとが連通する態様で注射針255の基端部に接続される。一方、チューブ259は、バルーン204の吐出口(開口部)に挿通され、かかるバルーン204内の貯蔵室203に連通する管路259aを形成する。かかる管路形成部256の管路256aとチューブ259の管路259aとの連通状態は、連通調整機構258によって調整される。
連通調整機構258は、制御回路213の制御に基づいて貯蔵室203と管路形成部256の管路256a(すなわち注射針255の管路255a)との間を連通状態に調整する連通調整動作または遮断状態に調整する遮断調整動作を行うように機能する。また、連通調整機構258は、かかる連通調整動作に連動して注射針255を筐体202から突き出し、かかる遮断調整動作に連動して注射針255を筐体202内に収納する。このような連通調整機構258は、チューブ259の開口端を押圧して閉じる押圧部材258aと、管路256a,259aを連通する内部空間を形成する手段であるシリンダー258bと、注射針255を保持する保持基板258cと、上述した実施の形態7の連通調整機構253と同様のバネ208hおよび形状記憶部材208j,208kとを有する。
押圧部材258aは、例えばシリコーン樹脂等の軟質な部材あるいは弾性部材によって形成され、バネ208hの弾性力(押圧力)によってチューブ259の開口端を押圧するとともに、この開口端に対して密着した状態になる。このような押圧部材258aは、かかるチューブ9の開口端に対して密着状態になることによって、チューブ259の管路259aを閉じる。この場合、管路256a,259aの連通状態、すなわち、注射針255の管路255aとバルーン204内の貯蔵室203との連通状態は、遮断される。なお、かかる押圧部材258aによって密着されるチューブ259の開口端近傍の側部には、オーリング257bが設けられる。このオーリング257bと押圧部材258aとが密着することによって、チューブ259からシリンダー258b内に対する薬液の漏出が防止される。
一方、押圧部材258aは、形状記憶部材208j,208kの作用によってチューブ259の開口端に対する押圧力を減少した場合、このチューブ259の開口端に対する密着状態が解消されるとともに、このチューブ259の管路259aと管路形成部256の管路256aとを連通状態に調整する。かかる連通状態において、バルーン204は薬液吐出動作を開始する。かかるバルーン204によって吐出された薬液は、管路259a、シリンダー258bの内部空間、および管路256aを順次流通して注射針255の管路255aに到達し、この管路255aを流通して筐体202の外部(例えば被検体内の所望部位)に注射される。
シリンダー258bは、管路形成部256の管路256aとチューブ259の管路259aとを連通する内部空間を形成するとともに、かかる内部空間に、上述した注射針255の基端側部分領域と管路形成部256と押圧部材258aとを収容する。この場合、シリンダー258bは、かかる注射針255の基端側部分領域を摺動自在に支持する。このようなシリンダー258bは、上述したように押圧部材258aとチューブ259の開口端との密着状態が解消された場合、かかる内部空間を介して管路形成部256の管路256aとチューブ259の管路259aとを連通する。
かかるシリンダー258bの内部空間に収容される管路形成部256は、上述したように注射針255の基端部に設けられ、かかる管路形成部256が設けられた注射針255の基端側部分領域は、シリンダー258bの開口部を摺動自在に貫通した態様で設けられる。一方、押圧部材258aは、かかる管路形成部256の外壁であってチューブ259に対向する壁面に設けられる。また、かかる管路形成部256の外壁面上であって注射針255の基端側部分領域にはオーリング257aが設けられる。かかるオーリング257aは、注射針255を挿通するシリンダー258bの開口部の径に比して内径が大きく、注射針255が筐体202から突出した場合にシリンダー258bの開口部近傍に密着した状態になる。
保持基板258cは、注射針255を保持するとともに、上述した連通調整動作に連動して注射針255を筐体202の外部に突出し、上述した遮断調整動作に連動して注射針255を筐体202の内部に戻す(収納する)。具体的には、保持基板258cは、注射針255の側部(例えば上述した注射針255の基端側部分領域に比して先端側の部分)に対して固定され、且つ、バネ208hおよび形状記憶部材208j,208kが接続される。この場合、バネ208hは、例えば一端が保持基板258cに固定され且つ他端がガイド202aに固定される。形状記憶部材208j,208kのそれぞれは、例えば一端が保持基板258cに固定され且つ他端が筐体202の内壁に固定される。このような保持基板258cは、形状記憶部材208j,208kの作用によって注射針255を筐体202の外部に向けて突き出すとともに、上述した押圧部材258aとチューブ259の開口端との密着状態を解消して注射針255の管路255aと貯蔵室203とを連通状態にする。この場合、バルーン204は、貯蔵室203内の薬液を吐出する。一方、かかる保持基板258cは、バネ208hの作用によって注射針255を筐体202の内部に収納するとともに、上述したチューブ259の開口端に押圧部材258aを押圧して密着状態にし、注射針255の管路255aと貯蔵室203とを遮断状態にする。この場合、バルーン204は、薬液の吐出動作を停止する。
なお、このような構成を有する被検体内導入装置250aにおいて、制御回路213は、上述した実施の形態7である被検体内導入装置250の場合とほぼ同様に、形状記憶部材208j,208kの伸縮動作を制御する。
つぎに、被検体内導入装置250aの動作について説明する。図32は、被検体内導入装置250aの注射針255を突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図32を参照しつつ注射針255の突き出し動作および薬液吐出動作について説明する。
まず、制御回路213は、バルーン204が薬液吐出動作を開始するように連通調整機構258の駆動制御を行う。具体的には、制御回路213は、連通調整機構258の駆動源である形状記憶部材208j,208kに対して所定の電流を供給して形状変化(収縮変形)させる。形状記憶部材208j,208kは、かかる形状変化によって駆動力を生成するとともに、この駆動力を用いて保持基板258cを引き動かす。この場合、保持基板258cは、かかる形状記憶部材208j,208kの駆動力によって、注射針255を筐体202の外部に向けて突き出すとともに、チューブ259の開口端から離隔する方向に押圧部材258aを移動する。押圧部材258aは、かかる注射針255および管路形成部256とともに移動し、チューブ259の開口端に対する密着状態を解消する。
これと略同時に、保持基板258cは、シリンダー258bの開口部(すなわち注射針255が挿通された開口部)近傍にオーリング257aを圧接する。この場合、オーリング257aは、かかる注射針255および管路形成部256とともに移動するとともに、管路形成部256によってシリンダー258bの開口部近傍に押圧され、且つ、かかる管路形成部256とシリンダー258bとの間に挟み込まれる。このような状態のオーリング257aは、シリンダー258bの開口部から筐体202の内部に対する薬液の漏出を防止する。
一方、管路形成部256の管路256aおよびチューブ259の管路259aは、上述した押圧部材258aとチューブ259の開口端との密着状態の解消とともに、シリンダー258bの内部空間を介して連通状態になる。この場合、注射針255の管路255aと貯蔵室203とが連通状態になるとともに、バルーン204は、貯蔵室203に貯蔵した薬液を吐出し始める。
このような構成を有する連通調整機構258は、形状記憶部材208j,208kによって生成された駆動力によって、バルーン204の薬液吐出動作を開始する連通調整動作と注射針255の突き出し動作とを同時に行う吐出開始手段として機能する。かかる連通調整機構258の連通調整動作によって注射針255の管路255aと貯蔵室203とが連通状態に調整された場合、貯蔵室203内の薬液は、チューブ259の管路259a、シリンダー258bの内部空間、管路形成部256の管路256a、注射針255の管路255aを順次流通して注射針255の先端から吐出される。かかる薬液吐出動作の開始とともに突出した注射針255は、たとえば患部等の被検体内の所望部位に薬液を注射する。この場合、バルーン204は、自身の収縮力を用いて薬液吐出動作を行い、この注射針255を介して所望量の薬液を被検体内の所望部位に注入できる。
その後、制御回路213が形状記憶部材208j,208kに対する電流供給を停止した場合、形状記憶部材208j,208kは、上述したように収縮変形を停止して駆動力を消失する。この場合、保持基板258cは、バネ208hによる弾性力を用いて注射針255を筐体202の内部に引き戻すとともに押圧部材258aをチューブ259の開口端に押圧する。この場合、注射針255が筐体202の内部に収納されるとともに、押圧部材258aは、チューブ259の開口端に対して密着状態になり、かかる押圧部材258aとチューブ259の開口端との密着状態によって管路256a,259aが遮断状態に調整される。
ここで、バルーン204は、所望量以上の薬液を吐出し終えていなければ、このように管路256a,259aの間が遮断状態に調整されることによって薬液吐出動作を停止(中断)する。その後、押圧部材258aが再度チューブ259の開口端から離隔するとともに注射針255が突出した場合、管路256a,259aの間が連通状態に再度調整され、バルーン204は薬液吐出動作を再開する。このように連通調整機構258が連通調整動作と遮断調整動作とを繰り返すことによって、バルーン204は、所望量以上の薬液を吐出し終えるまで、薬液吐出動作を間欠的に繰り返すことができる。
このような構成を採用した被検体内導入装置250aは、上述した実施の形態7である被検体内導入装置250とほぼ同様の機能を有するので、上述した被検体内導入装置250の作用効果を享受できる。
また、この実施の形態7の変形例では、上述したシート保持部253aに形成された管路254a,254bに例示されるようにシート部材208bを介して折り返す管路(折り返し管路)を形成せずに、薬液の貯蔵室203と注射針255の管路255aとを連通する管路を形成している。このため、かかる折り返し管路を形成する場合に比して、薬液の貯蔵室203から注射針255の管路255aに薬液を流通する管路を簡易に形成することができる。
(実施の形態8)
つぎに、この発明の実施の形態8について説明する。この実施の形態8では、薬液を貯蔵する貯蔵室と注射針の管路とを連通するチューブの一部分を押圧して遮断状態にし、かかる遮断状態を解除する動作(すなわち薬液吐出動作を開始する動作)に連動して注射針を筐体から突き出すように構成している。
図33は、この発明の実施の形態8である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図33に示すように、この被検体内導入装置260は、筐体202の内部に、上述した貯蔵室203を形成する薬液吐出手段としてのバルーン204と、被検体内の所望部位に薬液を注射するための注射針261と、貯蔵室203内の薬液を注射針261に流通するためのチューブ262と、バルーン204およびチューブ262を互いに連通する態様で保持する保持基板263とを有する。また、被検体内導入装置260は、筐体202の内部に、チューブ262を連通状態に調整するとともに注射針261を筐体202から突き出す連通調整機構264と、連通調整機構264の駆動状態を制御する制御回路213と、制御回路213に対して駆動電力を供給する電源部214とを有する。
注射針261は、薬液の吐出に関する駆動源を用いて筐体202から突出し、被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針261は、被検体に穿刺する先端側(尖形をなす側)と後端側とを連通する管路261aが内部に形成される。かかる注射針261は、先端側が筐体202のガイド202c内を摺動自在に挿通し、かつ後端側が連通調整機構264に対して固定される。このガイド202cは、筒状構造を有する部材であって、筐体202における注射針の出入り口に設けられる。かかるガイド202cは、注射針261を円滑に突出または収納できるように注射針261の移動方向を規制する。
チューブ262は、貯蔵室203内の薬液を注射針261の管路261aに流通する薬液管路を形成するためのものである。具体的には、チューブ262は、一端が貯蔵室203に連通する態様で保持基板263に接続されるとともに他端が管路261aに連通する態様で注射針261に接続される。また、チューブ262は、図33に示すように、一部分が筐体202に対して固着される。チューブ262は、かかる一部分に、所定の押圧力を印加することによって容易に押し潰すことができる可変領域262aを有する。チューブ262は、この可変領域262aが押し潰されることによって、貯蔵室203と管路261aとの間の薬液の流通が遮断される(遮断状態)。また、チューブ262は、可変領域262aに印加される押圧力を減少して遮断状態を解除することによって、貯蔵室203と管路261aとを連通する(連通状態)。
連通調整機構264は、制御回路213の制御に基づいてチューブ262を連通状態に調整する連通調整動作または遮断状態に調整する遮断調整動作を行うように機能する。また、連通調整機構264は、かかる連通調整動作に連動して注射針261を筐体から突き出し、かかる遮断調整動作に連動して注射針261を筐体202内に収納する。かかる連通調整機構264は、チューブ262の可変領域262aに対して所定の押圧力を印加する押圧部材264aと、押圧部材264aの動きと注射針261の動きとを連動させる連動部材264bと、注射針261を保持する保持基板264cとを有する。また、連通調整機構264は、押圧部材264aが印加する押圧力を生成するバネ264dと、バネ264dを保持するバネ基板264eと、保持基板264cの移動方向を規制するガイド264fと、可変領域262aに対する押圧部材264aの位置を変化させる形状記憶部材264gとを有する。
押圧部材264aは、バネ264dによって生成された押圧力をチューブ262の可変領域262aに印加してチューブ262を遮断状態に調整する。具体的には、押圧部材264aは、端部が連動部材264bに回動自在に取り付けられ、連動部材264bによって伝達されるバネ264dの弾性力すなわち押圧力を可変領域262aに印加する。
連動部材264bは、押圧部材264aの動きと注射針261の動きとを連動させるためのものである。具体的には、連動部材264bは、一端に押圧部材264aが回動自在に設けられるとともに他端に保持基板64が押し当てられる。また、連動部材264bは、両端の間の所定位置に回転軸265が設けられ、この回転軸265を中心に回動する。かかる回転軸265は、保持基板264c側の端部よりも押圧部材264a側の端部に近い位置に設けられる。このように回転軸265を設けることによって、連動部材264bは、押圧部材264aを可変領域262aから離隔させるとともに注射針261を筐体202から突き出すに足る移動量を保持基板264cに与えることができる。
保持基板264cは、注射針261に貫通された態様で注射針261を保持するとともに押圧部材264aの動きに連動して注射針261を動かすためのものである。具体的には、保持基板264cは、連動部材264bの端部とバネ264dによって支えられるとともに一端がガイド264fの貫通孔に摺動自在に挿通される。かかる保持基板264cは、連動部材264bの回動作用によってガイド202cに近づく方向に押し動かされるとともに注射針261を筐体202から突き出す。また、保持基板264cは、バネ264dの弾性力によってガイド202cから離れる方向に引き動かされるとともに注射針261を筐体202内に収納する。かかる保持基板264cは、ガイド264fの貫通孔に沿って移動する。
バネ264dは、上述した押圧部材264aが可変領域262aに印加する押圧力と注射針261を収納する収納動作の駆動力を生成するためのものである。具体的には、バネ264dは、一端が保持基板264cに対して接続されるとともに他端がバネ基板264eに対して固定され、かつバネ長が自然長に比して長い状態に維持されている。このように配置されたバネ264dは、保持基板264cをガイド202cから離す方向に弾性力(収縮力)を付勢するように機能する。この場合、かかるバネ264dの弾性力は、連動部材264bによって押圧力として押圧部材264aに伝達されるとともに、注射針261の収縮動作の駆動力として保持基板264cに伝達される。
バネ基板264eは、バネ264dを保持するためのものである。具体的には、バネ基板264eは、筐体202に対して固定されるとともにバネ264dの一端が固定され、このようにバネ264dを保持する。ガイド264fは、保持基板264cを摺動自在に挿通できる貫通孔が形成された枠状部材であって、保持基板264cの移動方向を規制する。保持基板264cは、ガイド264fに移動方向が規制されることによって注射針261の突き出し動作または収納動作を確実に行うことができる。
形状記憶部材264gは、チューブ262の連通調整動作と注射針261の突き出し動作とを連動して行う連通調整機構264の駆動源であり、かかる注射針261の突き出し動作と連通調整動作とをともに行うための駆動力を生成する。具体的には、形状記憶部材264gは、上述した実施の形態6における形状記憶部材208j,208kとほぼ同様の機能および構造を有する。かかる形状記憶部材264gは、一端が連動部材264bの押圧部材264a側の端部に対して固定されるとともに他端が筐体202に対して固定され、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件下では押圧部材264aがチューブ262の可変領域262aを押し潰すに充分な長さを有する。一方、形状記憶部材264gは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に比して充分高い温度条件下ではその形状を変化させ、かかる形状変化(具体的には収縮変形)に伴って所定の駆動力を生成する。かかる駆動力は、バネ264dの弾性力に比して強い物理力であって、連動部材64が押圧部材264aを可変領域262aから離隔させるとともに注射針261が突出するように保持基板264cを押し動かすに足る物理力である。
ここで、かかる押圧部材264aが可変領域262aから離れた場合、チューブ262を介してバルーン204と注射針261とが連通状態になる。この場合、バルーン204は、かかるチューブ262と注射針261の管路261aとを介して筐体202の外部(例えば被検体内の所望部位)に薬液を吐出する。したがって、形状記憶部材264gによって生成される駆動力は、かかる注射針261の突き出し動作を行うために用いられる駆動力であるとともに、バルーン204による薬液の吐出動作を開始するための連通調整動作に用いられる駆動力(すなわち薬液の吐出に関する物理力の一例)である。かかる薬液の吐出に関する物理力を生成する形状記憶部材264gは、薬液の吐出に関する駆動源である。
なお、この実施の形態8である被検体内導入装置260では、制御回路213は、上述した形状記憶部材208j,208kの場合とほぼ同様に、形状記憶部材264gに対する電流供給の有無によって形状記憶部材264gの形状変化を制御し、かかる形状変化の制御を通じて注射針261の突き出し動作とバルーン204による薬液吐出動作とを制御するように機能する。
つぎに、被検体内導入装置260の動作について説明する。図34は、被検体内導入装置260の注射針261を突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図34を参照しつつ注射針261の突き出し動作および薬液吐出動作について説明する。
まず、制御回路213は、バルーン204が薬液吐出動作を開始するように連通調整機構264の駆動制御を行う。具体的には、制御回路213は、連通調整機構264の駆動源である形状記憶部材264gに対して所定の電流を供給して形状変化(収縮変形)させる。形状記憶部材264gは、かかる形状変化によって所定の駆動力を生成するとともに、この駆動力を用いて連動部材264bの押圧部材264a側の端部を引き動かす。この場合、押圧部材264aは、かかる駆動力によって、チューブ262の可変領域262aから離隔する方向に移動するとともに可変領域262aに対する押圧力を減少する。これによって、押圧部材264aはチューブ262を連通状態に調整し、バルーン204は薬液吐出動作を開始する。
また、連動部材264bは、かかる形状記憶部材264gの作用によって押圧部材264aを可変領域262aから離隔させるとともに、保持基板264cをガイド202cに近づく方向に押し動かす。保持基板264cは、かかる連動部材264bの作用によって、上述したチューブ262の連通調整動作に連動して注射針261を筐体202から突き出す。
このように注射針261が突出した状態では、貯蔵室203および注射針261の管路261aがチューブ262を介して連通し、かつバルーン204は薬液吐出動作を継続する。かかる薬液吐出動作によって、貯蔵室203内の薬液は、チューブ262と管路261aとを順次通過して注射針261の先端から吐出される。
このような構成を有する連通調整機構264は、形状記憶部材264gによって生成された駆動力を用いて注射針261の突き出し動作とチューブ262の連通調整動作とを連動して行い、筐体202から注射針261を突き出すとともにバルーン204の薬液吐出動作を開始させる吐出開始手段として機能する。かかる注射針261は、たとえば患部等の被検体内の所望部位を穿刺し、バルーン204は、自身の収縮力を用いて薬液吐出動作を行い、この注射針261を介して所望量の薬液を被検体内の所望部位に注入できる。
その後、制御回路213が形状記憶部材264gに対する電流供給を停止した場合、形状記憶部材264gは、収縮変形を停止して駆動力を消失する。この場合、保持基板264cは、バネ264dの弾性力によってガイド202cから離れる方向に移動するとともに注射針261を筐体202内に収納する。これと同時に、保持基板264cは、バネ264dの弾性力によって連動部材264bの端部を押し動かす。連動部材264bは、かかる保持基板264cの作用によって回動するとともに押圧部材264aをチューブ262の可変領域262aに近づく方向に動かす。かかる押圧部材264aは、連動部材264bによって伝達されるバネ264dの弾性力を押圧力として可変領域262aに再度印加し、可変領域262aを押し潰す。これによって、チューブ262は、遮断状態に再度調整される。
ここで、バルーン204は、所望量以上の薬液を吐出し終えていなければ、このようにチューブ262が遮断状態に調整されることによって薬液吐出動作を停止(中断)する。その後、押圧部材264aが可変領域262aから再度離隔した場合、チューブ262が連通状態に再度調整され、バルーン204は薬液吐出動作を再開する。このように連通調整機構264が連通調整動作と遮断調整動作とを繰り返すことによって、バルーン204は、所望量以上の薬液を吐出し終えるまで、薬液吐出動作を間欠的に繰り返すことができる。
このような構成を採用した被検体内導入装置260は、上述した実施の形態6である被検体内導入装置201とほぼ同様の機能を有するとともに、注射針の突き出し動作に連動して薬液吐出動作を開始する連通調整機構を単純化できる。したがって、かかる被検体内導入装置260は、上述した被検体内導入装置201の作用効果を享受でき、かつ筐体202内部の省スペース化を促進するとともに装置規模をより小型化できるという効果を奏する。
(実施の形態9)
つぎに、この発明の実施の形態9について説明する。この実施の形態8では、薬液吐出動作を行うピストン機構を備え、注射針を突き出すとともに、かかるピストン機構の駆動エネルギーを化学的に生成して薬液吐出動作を開始するように構成している。
図35は、この発明の実施の形態9である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図35に示すように、この被検体内導入装置270は、筐体202の内部に、被検体内の所望部位に薬液を注射するための注射針271と、注射針271を摺動自在に保持する保持基板272aと、注射針271の近傍に磁界を発生するためのソレノイド273と、かかる磁界によって注射針271を筐体202から突き出す磁性部材271bとを有する。また、被検体内導入装置270は、筐体202の内部に、薬液吐出動作の駆動エネルギーを生成するための薬剤A,Bをそれぞれ貯蔵するバルーン274aおよび貯蔵室274bと、注射針271が突出するとともにバルーン274aを破裂させる針275とを有する。さらに、被検体内導入装置270は、筐体202の内部に、薬液を予め貯蔵する貯蔵室274cと、貯蔵室274cを圧縮して薬液を吐出するためのピストン276と、かかる薬液を流通する管路を形成する管路形成部277と、管路形成部277を保持する保持基板272bと、管路形成部277と注射針271とを連通するチューブ278と、ソレノイド273の磁界発生を制御する制御回路279と、制御回路279に対して駆動電力を供給する電源部214とを有する。
注射針271は、薬液の吐出に関する駆動源を用いて筐体202から突出し、被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針271は、被検体に穿刺する先端側(尖形をなす側)と後端側とを連通する管路271aが内部に形成される。かかる注射針271は、先端部がガイド202cの内部に位置するように配置される。ガイド202cは、筒状構造を有する部材であって、筐体202における注射針271の出入り口に設けられる。かかるガイド202cは、注射針271を円滑に突出または収納できるように注射針271の移動方向を規制する。
保持基板272aは、注射針271を摺動自在に保持するためのものである。具体的には、保持基板272aは、筐体202に対して固定され、注射針271に貫通された態様で注射針271を摺動自在に保持する。
磁性部材271bは、ソレノイド273によって発生した磁界によって注射針271を筐体202から突き出す突出手段として機能する。具体的には、磁性部材271bは、鉄、ニッケル、またはコバルト等の強磁性体あるいは磁石を用いて実現され、注射針271に対して貫通された態様で固定される。かかる磁性部材271bは、保持基板272aとガイド202cとの間に位置するように設けられ、ソレノイド273が発生させた磁界によって保持基板272aとガイド202cとの間を移動することによって注射針271を筐体202から突き出す、または筐体202内に収納する。
ソレノイド273は、制御回路279の制御に基づいて注射針271の近傍に磁界を発生させるためのものであり、注射針271の突き出す磁性部材271bの駆動源として機能する。具体的には、ソレノイド273は、注射針271および磁性部材271bを内部に挿通できるコイル径を有し、ガイド202cの近傍に配置される。かかるソレノイド273は、制御回路279の制御に基づいて磁性部材271bをガイド202cに引き寄せる磁界(突出方向の磁界)または磁性部材271bをガイド202cから遠ざける磁界(収納方向の磁界)を発生させる。なお、ソレノイド273の巻き数は、かかる注射針271および磁性部材271bを移動するに充分な強さの磁界を発生するに充分なものであればよい。
バルーン274aは、ピストン276を摺動させる駆動エネルギーを化学的に生成するための薬剤A,Bのうちの薬剤Aを内部に貯蔵する。かかるバルーン274aは、保持基板272aを境界にして磁性部材271bと反対側になる注射針271上の位置に配置される。この場合、バルーン274aは、注射針271が筐体202から突出した場合に保持基板272aに接触するように配置される。
針275は、注射針271の突き出し動作とともにバルーン274aを破裂させるためのものである。具体的には、針275は、注射針271が突出した場合にバルーン274aが接触する保持基板272a上の領域に設けられる。かかる針275は、注射針271が筐体202から突出すると同時にバルーン274aを破裂させる。
なお、針275は、かかるバルーン274aに代えて注射針271の後端部に設けられてもよい。この場合、バルーン274aは、保持基板272a上に設け、注射針271が突出するとともに後端部の針275によって破裂されるようにすればよい。
貯蔵室274bは、上述した薬剤Bを予め貯蔵するためのものである。具体的には、貯蔵室274bは、保持基板272aとピストン276と筐体202の一部分(すなわち保持基板272aとピストン276との間に位置する部分)とによって囲まれた領域に形成される。かかる貯蔵室274bに貯蔵された薬剤Bは、バルーン274aが破裂することによって薬剤Aと混合される。このように混合された薬剤A,Bは、所定の化学反応によって発泡するとともに貯蔵室274bの気圧を上昇させ、ピストン276に印加する力学的エネルギーを生成する。
貯蔵室274cは、被検体内の所望部位に注射する薬液を予め貯蔵するためのものである。具体的には、貯蔵室274cは、保持基板272bとピストン276と筐体202の一部分(すなわち保持基板272bとピストン276との間に位置する部分)とによって囲まれた領域に形成される。
ピストン276は、薬液を予め貯蔵する貯蔵室274cを圧縮して薬液を吐出するためのものである。具体的には、ピストン276は、貯蔵室274bと貯蔵室274cとを仕切るように保持基板272a,272bの間に配置される。また、ピストン276は、管路形成部277に摺動自在に貫通される。かかるピストン276は、上述した薬剤A,Bを混合して化学的に生成される力学的エネルギーによって保持基板272bに向けて摺動し、貯蔵室274cを圧縮するとともに薬液を加圧する。
管路形成部277は、ピストン276によって加圧された薬液を流通するためのものである。具体的には、管路形成部277は、貯蔵室274cに連通する管路277aが内部に形成される。また、管路形成部277は、貯蔵室274cに開口する側の一端が保持基板272bに対して固定されるとともに他端がピストン276を貫通する。管路形成部277は、かかる他端に管路277aの開口が形成される。保持基板272bは、ピストン276を境界にして保持基板272aと反対側の筐体202の端部近傍に設けられる。
チューブ278は、可撓性を有する柔軟なチューブ部材であって、一端が管路277aの開口に接続されるとともに他端が注射針271の管路271aの開口に接続される。かかるチューブ278は、管路277aを介して貯蔵室274cと管路271aとを連通する。この場合、管路形成部277は、ピストン276によって加圧された薬液をチューブ278を介して注射針271の管路271aに流通できる。
ここで、保持基板272a,272b、ピストン276、および筐体202の一部分(すなわち保持基板272a,272bの間に位置する部分)は、被検体内導入装置270のピストン機構を構成する。また、管路形成部277およびチューブ278は、薬液を注射針271の管路271aに流通する薬液管路を形成する。かかるピストン機構は、薬剤A,Bを混合して化学的に生成される力学的エネルギーによって貯蔵室274cを圧縮して薬液を吐出する。かかる薬液は、この薬液管路すなわち管路277aおよびチューブ278を介して管路271aに流通される。また、上述したバルーン274aおよび針275は、薬剤A,Bを混合して力学的エネルギーを化学的に生成するエネルギー生成手段として機能する。また、上述したソレノイド273によって生成される駆動力は、磁性部材271bとともに注射針271を動かすための駆動力であるとともに、かかる薬剤A,Bを混合して力学的エネルギー(薬液の吐出動作に用いられる駆動エネルギー)を生成するために用いられる駆動力である。したがって、ソレノイド273によって生成される駆動力は、薬液の吐出に関する物理力の一例である。かかる薬液の吐出に関する物理力を生成するソレノイド273は、薬液の吐出に関する駆動源である。
制御回路279は、ソレノイド273に対して電流を供給して磁性部材271bを駆動する磁界を発生させる制御を行い、かかる磁界発生の制御を通じて注射針271の突き出し動作と薬液吐出動作とを制御するように機能する。具体的には、制御回路279は、被検体の内部に導入された被検体内導入装置270が被検体内の所望部位に到達した場合にソレノイド273に対して順方向の電流を供給するように機能する。かかる順方向の電流がソレノイド273に流れることによって、突出方向の磁界が磁性部材271bの近傍に発生し、磁性部材271bはガイド202cに引き寄せられる。かかる磁性部材271bは、注射針271を筐体202から突き出す。かかる磁性部材の駆動と同時に、バルーン274aは針275に接触して破裂し、これによって薬液A,Bが混合され、ピストン276を駆動する力学的エネルギーが生成される。かかる力学的エネルギーによって薬液吐出動作が開始される。一方、制御回路279は、ソレノイド273に対して逆方向の電流を供給することによって収納方向の磁界を発生させる。磁性部材271bは、かかる収納方向の磁界によってガイド202cから離れる方向に駆動し、これによって注射針271を筐体202内に収納する。
なお、制御回路279による電流供給のタイミングを規定する構成としては、上述した制御回路213の場合とほぼ同様に、たとえばタイマー機構を備えることとしてもよいし、無線受信機構を内蔵するとともに外部より制御信号を供給することとしてもよい。
つぎに、被検体内導入装置270の動作について説明する。図36は、注射針271を突き出すとともに薬剤A,Bを混合して力学的エネルギーを化学的に生成する状態を模式的に例示する模式図である。図37は、被検体内導入装置270の注射針271を突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図36,37を参照しつつ注射針271の突き出し動作および薬液吐出動作について説明する。
まず、制御回路279は、ソレノイド273に対して順方向に電流を供給し、磁性部材271bの近傍に突出方向の磁界を発生させる。磁性部材271bは、かかる突出方向の磁界によってガイド202cに近づく方向に移動するとともに注射針271を突出する方向に摺動させる。この場合、図36に示すように、バルーン274aは、かかる注射針271の摺動に伴って移動し、注射針271が筐体から突出するとともに針275と接触する。かかる針275は、バルーン274aを破裂させ、バルーン274a内の薬剤Aと貯蔵室274b内の薬液Bとを混合する。このように混合された薬剤A,Bは、化学反応によって発泡するとともに貯蔵室274bの気圧を高める。この場合、かかる化学反応によって生成された力学的エネルギーが、ピストン276を押圧する押圧力としてピストン276に印加される。
つぎに、ピストン276は、このように生成された力学的エネルギーすなわち押圧力によって保持基板272bに近づく方向に摺動し、貯蔵室274cを圧縮するとともに薬液を加圧する。かかる薬液は、管路277aとチューブ278と管路271aとを順次流通し、突出した注射針271の先端から吐出される。このようにして薬液吐出動作が開始される。その後、ピストン276は、かかる力学的エネルギーによって所望量以上の薬液を吐出し終えるまで貯蔵室274cを圧縮し続ける。したがって、上述したように突出した注射針271は、たとえば患部等の被検体内の所望部位を穿刺し、ピストン276の作用によって吐出された所望量の薬液をこの所望部位に注射する。
その後、制御回路279は、ソレノイド273に対して逆方向の電流を供給することによって収納方向の磁界を発生させる。磁性部材271bは、かかる収納方向の磁界によってガイド202cから離れる方向に駆動するとともに注射針271を筐体202内に引き戻す。注射針271は、かかる磁性部材271bの作用によって筐体202内に収納される。
このような構成を採用した被検体内導入装置270は、ソレノイド273に対して電流を供給して突出方向の磁界を発生し、かかる突出方向の磁界によって注射針271を突き出すとともにピストン276に対して力学的エネルギーを印加して薬液吐出動作を開始できる。したがって、かかる被検体内導入装置270は、ソレノイド273に対して所定の電流を供給することによって注射針の突き出し動作と薬液吐出動作とを同時に行うことができ、かかる注射針の突き出し動作を実行するために新た駆動電力を消費する必要がなく、注射針の突き出し動作を省電力化して実行できる。
また、注射針271に対して直接固定した磁性部材271bと上述した突出方向の磁界を発生させるソレノイド273とによって注射針271の突出手段を形成し、薬剤Bを貯蔵する貯蔵室274bと注射針271の突き出し動作に連動して薬剤A,Bを混合するバルーン74bおよび針275とを用い、ピストン276の駆動エネルギーを生成するエネルギー生成手段を形成した。かかる構成を採用した被検体内導入装置270は、注射針の突き出し動作と薬液吐出動作とを連動して行う機構を単純化でき、装置規模を容易に小型化できる。さらに、かかる被検体内導入装置270は、突出した注射針271を筐体202内に収納できるので、被検体内の必要な箇所に対してのみ注射針を穿刺することができる。
さらに、かかる被検体内導入装置270は、所定の薬剤を混合することによって化学的に生成した力学的エネルギーを用いて薬液吐出動作を行うので、この薬液吐出動作を実行するために新たな駆動電力を消費する必要がなく、薬液吐出動作を省電力化して行うことができる。
(実施の形態10)
つぎに、この発明の実施の形態10について説明する。この実施の形態10では、形状記憶部材を駆動源とするピストン機構を薬液吐出手段として備え、この形状記憶部材に対して所定の熱エネルギーを伝導して薬液吐出動作を開始するとともに注射針の突き出し動作を行うように構成している。
図38は、この発明の実施の形態10である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図38に示すように、この被検体内導入装置280は、筐体202の内部に、被検体内の所望部位に薬液を注射するための注射針281と、薬液を吐出するピストン機構282と、ピストン機構282の駆動エネルギーである熱エネルギーを生成する熱生成部284と、熱生成部284に対して所定の押圧力を印加するとともに注射針281を筐体202から突き出すための連動部材285とを有する。また、被検体内導入装置280は、筐体202の内部に、連動部材285の駆動源であるリニアアクチュエータ286と、リニアアクチュエータ286を保持する保持基板287と、リニアアクチュエータ286の駆動状態を制御する制御回路288と、制御回路288に対して駆動電力を供給する電源部214とを有する。
注射針281は、薬液の吐出に関する駆動源を用いて筐体202から突出し、被検体内の所望部位に薬液を注射するためのものである。具体的には、注射針281は、被検体に穿刺する先端側(尖形をなす側)と後端側とを連通する管路281aが内部に形成される。かかる注射針281は、後端部から側部の所定位置に至る領域がピストン機構282の薬液の吐出口282eに摺動自在に挿通され、先端部がガイド202c内に摺動自在に挿通される。ガイド202cは、筒状構造を有する部材であって、筐体202における注射針281の出入り口に設けられる。かかるガイド202cは、注射針281を円滑に突出または収納できるように注射針281の移動方向を規制する。
ピストン機構282は、貯蔵室283内に予め貯蔵された薬液を吐出する薬液吐出手段として機能する。具体的には、ピストン機構282は、薬液の吐出口282eが形成されたシリンダー282aと、シリンダー282a内を摺動するピストン282bと、ピストン282bが摺動するための駆動源として機能する形状記憶部材282cと、ピストン機構282の底部を形成する熱伝導部材282dとを有する。また、貯蔵室283は、シリンダー282aとピストン282bとによって囲まれた領域に形成される。
シリンダー282aは、ピストン機構282の外壁の大部分を形成する筒状部材であって、一端に薬液の吐出口282eが形成されるとともに他端の開口を閉じる態様で熱伝導部材282dが設けられる。吐出口282eは、貯蔵室283に対して連通するシリンダー82の開口を形成する。かかる吐出口282eは、シリンダー82の所定の位置に筒状に形成され、注射針281を摺動自在に支持する。
ピストン282bは、貯蔵室283に貯蔵された薬液を吐出するためのものである。具体的には、ピストン282bは、シリンダー282aの内部に摺動自在に設けられ、後述する形状記憶部材282cの作用によってシリンダー282a内を摺動するとともに貯蔵室283を圧縮する。かかるピストン282bは、貯蔵室283内の薬液を加圧するとともに吐出口282eから吐出するように機能する。
形状記憶部材282cは、ピストン282bがシリンダー282a内を摺動するための駆動力を生成する駆動源として機能する。具体的には、形状記憶部材282cは、棒状またはコイル状(たとえばSMAコイル)の構造を有し、所定の形状記憶特性を有する形状記憶合金によって形成される。かかる形状記憶部材282cは、一端がピストン282bに対して固定されるとともに他端が熱伝導部材282dに対して固定され、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件下ではピストン282bに対して駆動力を印加しない状態である。この場合、形状記憶部材282cは、たとえばピストン282bと熱伝導部材282dとの間で弛んだ状態または縮れた状態であり、ピストン282bを摺動させる駆動力を生成していない。
一方、形状記憶部材282cは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に対して充分高い温度条件下ではその形状を変化させる。この場合、形状記憶部材282cは、ピストン282bが所望量以上の薬液を吐出し終えるまでシリンダー282a内を摺動するに充分な長さを有する。形状記憶部材282cは、かかる形状変化(具体的には伸長変形)に伴って所定の駆動力を生成し、この駆動力をピストン282bに印加する。
熱伝導部材282dは、熱生成部284によって生成された熱エネルギーを形状記憶部材282cに伝導するためのものである。具体的には、熱伝導部材282dは、金属等の高い熱伝導率を有する部材であって、シリンダー282aの端部の開口を閉じてピストン機構282の底部を形成する。かかる熱伝導部材282dは、内面(ピストン282bに対向する面)に上述した形状記憶部材282cを接続するとともに外面(この内面に対する裏面)に熱生成部284を面的に密着する。このように配置された熱伝導部材282dは、熱生成部284によって生成された熱エネルギーを効率的に形状記憶部材282cに伝導する。
熱生成部284は、上述した形状記憶部材282cの形状変化を発生させるに充分な熱エネルギーを生成するためのものである。具体的には、熱生成部284は、その内部の空間を隔壁284cによって分割して形成される貯蔵室284a,284bを有し、かかる貯蔵室284a,284bの内部に薬剤C,Dをそれぞれ貯蔵する。また、隔壁284cは、膜状の部材であって、外部から所定の押圧力を印加することによって容易に破壊される。貯蔵室284a,284bは、このように隔壁284cが破壊されることによって互いに連通した状態になる。この場合、薬剤C,Dは、互いに混ざり合うとともに化学反応を起こし、上述した形状記憶部材282cの形状変化を発生させるに充分な熱エネルギーを発生する。熱生成部284は、かかる化学反応によって生成された熱エネルギーを熱伝導部材282dに伝導する。その後、かかる熱エネルギーは、上述したように形状記憶部材282cに伝導する。
なお、熱生成部284は、別体として熱伝導部材282dに外付けしていたが、これに限らず、熱伝導部材282dと熱生成部284とを一体的に形成し、かかる熱伝導部材282dが薬剤C,Dの各貯蔵室284a,284bの外壁の一部分を形成するように構成してもよい。
連動部材285は、ピストン機構282による薬液吐出動作を開始するとともに注射針281を筐体202から突き出すためのものである。具体的には、連動部材285は、一端に熱生成部284の隔壁284cに押圧力を印加する押圧部285aが形成される。また、連動部材285は、かかる押圧部285aがリニアアクチュエータ286の駆動軸に接続されるとともに他端が注射針281の側部に接続される。かかる連動部材285は、リニアアクチュエータ286の作用によって、熱生成部284に押圧部285aを押圧して隔壁284cに押圧力を印加するとともに注射針281を筐体202から突き出す。この場合、押圧部285aの押圧力によって隔壁284cが破壊されるので、熱生成部284は、上述したように熱エネルギーを生成する。かかる熱エネルギーは、熱伝導部材282dを介して形状記憶部材282cに伝導される。形状記憶部材282cは、かかる熱エネルギーによって形状変化するとともにピストン82を摺動させ、これによってピストン機構282による薬液吐出動作が開始される。すなわち、連動部材285は、リニアアクチュエータ286を駆動源として用いて注射針281を突き出すとともに薬液吐出動作を開始する吐出開始手段として機能する。
リニアアクチュエータ286は、制御回路288の制御に基づいて連動部材285を駆動する駆動源として機能する。具体的には、リニアアクチュエータ286は、保持基板287に保持されるとともに連動部材285の押圧部285aに駆動軸が接続される。かかるリニアアクチュエータ286は、制御回路288によって所定の駆動電力が供給された場合、かかる駆動電力を消費して駆動軸を繰り出すとともに連動部材285に対して所定の駆動力を伝達する。かかる駆動力は、押圧部285aが隔壁284cを破壊するとともに連動部材285が注射針281を突き出すに充分な強さである。一方、リニアアクチュエータ286は、制御回路288の制御に基づいて連動部材285を元の位置に引き戻すように駆動軸を駆動する。この場合、連動部材285は、かかる駆動軸の作用によって注射針281を筐体202内に収納する方向に移動する。かかる連動部材285は、リニアアクチュエータ286の作用によって押圧部285aを熱生成部284から離隔するとともに注射針281を筐体202内部に収納する。このようなリニアアクチュエータ286によって生成される駆動力は、注射針281の突き出し動作を行うための駆動力であるとともに、隔壁284cを破壊して薬剤C,Dを混合することによって薬液の吐出動作を開始するための駆動力(すなわち薬液の吐出に関する物理力の一例)である。かかる薬液の吐出に関する物理力を生成するリニアアクチュエータ286は、薬液の吐出に関する駆動源である。
制御回路288は、リニアアクチュエータ286の駆動状態を制御し、かかる駆動制御を通じて注射針281の突き出し動作とピストン機構282による薬液吐出動作とを制御するよう機能する。具体的には、制御回路288は、被検体の内部に導入された被検体内導入装置280が被検体内の所望部位に到達した場合にリニアアクチュエータ286に対して駆動電力を供給するように機能する。かかる駆動電力がリニアアクチュエータ286に供給されることによって、リニアアクチュエータ286は、押圧部285aを熱生成部284に押圧する方向に連動部材285を押動かす。このようにして、制御回路288は、ピストン機構282が熱生成部284による熱エネルギーを用いて薬液吐出動作を開始するとともに注射針281が突出するようにリニアアクチュエータ286の駆動状態を制御する。また、制御回路288は、リニアアクチュエータ286の駆動を制御し、押圧部285aが熱生成部284から離隔する方向に連動部材285を移動させる。これによって、注射針281は、筐体202内に収納される。
なお、制御回路288による駆動電力供給のタイミングを規定する構成としては、上述した制御回路213の場合とほぼ同様に、たとえばタイマー機構を備えることとしてもよいし、無線受信機構を内蔵するとともに外部より制御信号を供給することとしてもよい。
つぎに、被検体内導入装置280の動作について説明する。図39は、被検体内導入装置280の注射針281を突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図39を参照しつつ注射針281の突き出し動作および薬液吐出動作について説明する。
まず、制御回路288は、リニアアクチュエータ286に対して駆動電力を供給し、連動部材285に対して所定の駆動力を伝達するようにリニアアクチュエータ286を駆動させる。連動部材285は、かかる駆動力を用いて熱生成部284を押圧する方向に移動する。この場合、連動部材285は、注射針281を筐体202から突き出すとともに押圧部285aを熱生成部284に押し付ける。かかる押圧部285aは、隔壁284cに対して所定の押圧力を印加し、これによって隔壁284cを破壊する。
隔壁284cが破壊された場合、熱生成部284は、貯蔵室284a,284bを連通した状態にするとともに薬剤C,Dを混合し、形状記憶部材282cを伸長変形させるに充分な熱エネルギーを生成する。かかる熱エネルギーは、熱伝導部材282dを介して形状記憶部材282cに伝導する。形状記憶部材282cは、このように熱生成部284から供給された熱エネルギーを用いて伸長変形するとともにピストン282bを押動かす。この場合、形状記憶部材282cはピストン282bの駆動力を生成し、ピストン282bは、この形状記憶部材282cによる駆動力を用いてシリンダー84a内を摺動するとともに貯蔵室283を圧縮する。かかるピストン282bは、貯蔵室283内の薬液を加圧するとともに吐出口8eを介して吐出する。この場合、薬液は、吐出口8eおよび管路281aを順次通過して注射針281の先端から吐出される。このように注射針281の突き出し動作に連動して、ピストン機構282は、薬液吐出動作を開始する。
その後、ピストン85は、形状記憶部材282cによる駆動力を用いて所望量以上の薬液を吐出し終えるまで貯蔵室283を圧縮し続ける。したがって、上述したように突出した注射針281は、たとえば患部等の被検体内の所望部位を穿刺し、ピストン282bの作用によって吐出された所望量の薬液をこの所望部位に注射する。
一方、制御回路288は、連動部材285を元に位置に引き戻すようにリニアアクチュエータ286を制御する。リニアアクチュエータ286は、かかる制御回路288の制御に基づいて、熱生成部284から離隔する方向に押圧部285aを引き動かす。連動部材285は、かかるリニアアクチュエータ286の作用によって注射針281を筐体202内に収納する。
このような構成を採用した被検体内導入装置280は、リニアアクチュエータ286が押圧部285aを介して熱生成部284に所定の押圧力を印加するように駆動し、かかるリニアアクチュエータの駆動に基づいて、連動部材285が注射針281を突き出し、これに連動して、熱生成部284が形状記憶部材282cに対して熱エネルギーを供給してピストン機構282による薬液吐出動作を開始できる。したがって、かかる被検体内導入装置280は、リニアアクチュエータ286に対して所定の駆動電力を供給することによって注射針の突き出し動作と薬液吐出動作とを同時に行うことができ、かかる注射針の突き出し動作を実行するために新た駆動電力を消費する必要がなく、注射針の突き出し動作を省電力化して実行できる。
また、注射針281を突き出すとともに熱生成部284に所定の押圧力を印加する連動部材285と駆動源であるリニアアクチュエータ286とを用いて注射針281の突出手段を形成し、かかる連動部材285の動作に連動して熱エネルギーを生成する熱生成部284によってピストン機構282の駆動エネルギーを生成するエネルギー生成手段を形成している。かかる構成を採用した被検体内導入装置280は、注射針を突き出すとともに薬液吐出動作を開始する吐出開始手段をより単純な機構で形成でき、装置規模を容易に小型化できる。さらに、かかる被検体内導入装置280は、突出した注射針281を筐体202内に収納できるので、被検体内の必要な箇所に対してのみ注射針を穿刺することができる。
さらに、かかる被検体内導入装置280は、所定の薬剤を混合することによって化学的に生成した熱エネルギーを用いて薬液吐出動作を行うので、この薬液吐出動作を実行するために新たな駆動電力を消費する必要がなく、薬液吐出動作を省電力化して行うことができる。
(実施の形態11)
つぎに、この発明の実施の形態11について説明する。この実施の形態11では、それぞれ形状記憶部材を駆動源とするピストン機構と注射針の突出機構とを備え、かかるピストン機構と突出機構とに所定の熱エネルギーを同時に供給して注射針の突き出し動作と薬液吐出動作とを連動して行うように構成している。
図40は、この発明に実施の形態11である被検体内導入装置の一構成例を模式的に示す断面模式図である。図40に示すように、この被検体内導入装置290は、筐体202の内部に、被検体の所望部位に薬液を注射するための注射針291と、注射針291を筐体202から突き出すための針突出機構292と、薬液を吐出するためのピストン機構293とを有する。また、被検体内導入装置290は、筐体202の内部に、注射針291とピストン機構92との間を連通するチューブ297と、針突出機構292およびピストン機構293の駆動エネルギーを生成する熱生成部294と、熱生成部294による熱エネルギーの生成処理を開始するためのヒーター295と、ヒーター295の駆動状態を制御する制御回路296と、制御回路296に駆動電力を供給する電源部214とを有する。
注射針291は、薬液の吐出に関する駆動源を用いて筐体202から突出し、被検体内の所望部位に薬液注射するためのものである。具体的には、注射針291は、被検体に穿刺する先端側(尖形をなす側)と後端部近傍の側部とを連通する管路291aが内部に形成される。かかる管路291aは、注射針291の側部の開口にチューブ297が接続され、このチューブ297を介して薬液の貯蔵室298と連通する。また、注射針291は、後端部に鍔状の基端部291bが形成される。かかる基端部291bは、後述する針突出機構292のシリンダー292a内を摺動するピストンとして機能する。
また、注射針291は、先端部がガイド202c内に摺動自在に挿通される。ガイド202cは、筒状構造を有する部材であって、筐体202における注射針291の出入り口に設けられる。かかるガイド202cは、注射針291を円滑に突出または収納できるように注射針291の移動方向を規制する。
針突出機構292は、熱エネルギーを用いて注射針291を筐体202から突き出す突出手段として機能する。具体的には、針突出機構292は、注射針291の基端部291bを摺動自在に支持するシリンダー292aと、かかる注射針291の突き出し動作の駆動源である形状記憶部材292bと、形状記憶部材292bに対して熱エネルギーを伝導する熱伝導部材292cとを有する。
シリンダー292aは、筒状構造の部材であって、内部に注射針291を摺動自在に支持する。具体的には、シリンダー292aは、その内壁面と注射針291の基端部291bの側面とが接触するように注射針291を支持する。また、シリンダー292aは、一端が開口するとともに他端が熱伝導部材292cによって閉塞される。かかるシリンダー292aは、この一端の開口がガイド202cに対向するように配置され、注射針291を摺動自在に支持するとともに注射針291の摺動方向を規制するガイドとしても機能する。
形状記憶部材292bは、注射針291がシリンダー292a内を摺動するための駆動力を生成する駆動源として機能する。具体的には、形状記憶部材292bは、棒状またはコイル状(たとえばSMAコイル)の構造を有し、所定の形状記憶特性を有する形状記憶合金によって形成される。かかる形状記憶部材292bは、一端が注射針291の基端部291bに対して固定されるとともに他端が熱伝導部材292cに対して固定され、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件下では注射針291に対して駆動力を印加しない状態である。この場合、形状記憶部材292bは、たとえば基端部291bと熱伝導部材292cとの間で弛んだ状態または縮れた状態であり、注射針291を摺動させる駆動力を生成していない。
一方、形状記憶部材292bは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に対して充分高い温度条件下ではその形状を変化させる。この場合、形状記憶部材292bは、注射針291を筐体202から突き出すに充分な長さを有する。形状記憶部材292bは、かかる形状変化(具体的には伸長変形)に伴って所定の駆動力を生成し、この駆動力を注射針291の基端部291bに印加する。
熱伝導部材292cは、熱生成部294によって生成された熱エネルギーを形状記憶部材292bに伝導するためのものである。具体的には、熱伝導部材292cは、金属等の高い熱伝導率を有する部材であって、シリンダー292aの底部を形成する。かかる熱伝導部材292cは、内面(基端部291bに対向する面)に上述した形状記憶部材292bを接続するとともに外面(この内面に対する裏面)に熱生成部294を面的に密着する。このように配置された熱伝導部材292cは、熱生成部294によって生成された熱エネルギーを効率的に形状記憶部材292bに伝導する。
ピストン機構293は、貯蔵室298内に予め貯蔵された薬液を吐出する薬液吐出手段として機能する。具体的には、ピストン機構293は、貯蔵室298の外周の大部分を形成するシリンダー293aと、シリンダー293a内を摺動するピストン293bと、ピストン293bが摺動するための駆動源として機能する形状記憶部材293cと、ピストン機構293の底部を形成する熱伝導部材293dとを有する。また、貯蔵室298は、シリンダー293aとピストン293bとによって囲まれた領域に形成される。
シリンダー293aは、ピストン機構293の外壁の大部分を形成する筒状部材であって、一端にチューブ297が接続されるとともに他端の開口を閉じる態様で熱伝導部材293dが設けられる。かかるチューブ297は、貯蔵室298と連通する態様でシリンダー293aに接続される。
ピストン293bは、貯蔵室298に貯蔵された薬液を吐出するためのものである。具体的には、ピストン293bは、シリンダー293aの内部に摺動自在に設けられ、後述する形状記憶部材293cの作用によってシリンダー293a内を摺動するとともに貯蔵室298を圧縮する。かかるピストン293bは、貯蔵室298内の薬液を加圧するとともにチューブ297に流通するように機能する。
形状記憶部材293cは、ピストン293bがシリンダー293a内を摺動するための駆動力を生成する駆動源として機能する。具体的には、形状記憶部材293cは、棒状またはコイル状(たとえばSMAコイル)の構造を有し、所定の形状記憶特性を有する形状記憶合金によって形成される。かかる形状記憶部材293cは、一端がピストン293bに対して固定されるとともに他端が熱伝導部材293dに対して固定され、たとえば被検体内部の温度と同等の温度条件下ではピストン293bに対して駆動力を印加しない状態である。この場合、形状記憶部材293cは、たとえばピストン293bと熱伝導部材293dとの間で弛んだ状態または縮れた状態であり、ピストン293bを摺動させる駆動力を生成していない。
一方、形状記憶部材293cは、所定の温度たとえば被検体内部の温度に対して充分高い温度条件下ではその形状を変化させる。この場合、形状記憶部材293cは、ピストン293bが所望量以上の薬液を吐出し終えるまでシリンダー293a内を摺動するに充分な長さを有する。形状記憶部材293cは、かかる形状変化(具体的には伸長変形)に伴って所定の駆動力を生成し、この駆動力をピストン293bに印加する。
熱伝導部材293dは、熱生成部294によって生成された熱エネルギーを形状記憶部材293cに伝導するためのものである。具体的には、熱伝導部材293dは、金属等の高い熱伝導率を有する部材であって、シリンダー293aの端部の開口を閉じてピストン機構293の底部を形成する。かかる熱伝導部材293dは、内面(ピストン293bに対向する面)に上述した形状記憶部材293cを接続するとともに外面(この内面に対する裏面)に熱生成部294を面的に密着する。このように配置された熱伝導部材293dは、熱生成部294によって生成された熱エネルギーを効率的に形状記憶部材293cに伝導する。
熱生成部294は、上述した形状記憶部材292b,293cの形状変化を同時に発生させるに充分な熱エネルギーを生成するためのものである。具体的には、熱生成部294は、その内部の空間を隔壁294cによって分割して形成される貯蔵室294a,294bを有し、かかる貯蔵室294a,294bの内部に薬剤C,Dをそれぞれ貯蔵する。また、隔壁284cは、所定の温度以上に加熱することによって溶解する高分子膜である。貯蔵室294a,294bは、このように隔壁294cが溶解または破れることによって互いに連通した状態になる。この場合、薬剤C,Dは、互いに混ざり合うとともに化学反応を起こし、上述した形状記憶部材292b,293cの形状変化を同時に発生させるに充分な熱エネルギーを発生する。熱生成部294は、かかる化学反応によって生成された熱エネルギーを熱伝導部材292c,293dに伝導する。その後、かかる熱エネルギーは、上述したように形状記憶部材292b,293cにそれぞれ伝導する。このような熱生成部294は、注射針291の突出動作に用いられる駆動エネルギー(形状記憶部材292bに伝達される熱エネルギー)を生成する駆動源であるとともに、薬液の吐出動作に用いられる駆動エネルギー(形状記憶部材293cに伝達される熱エネルギー)を生成する駆動源、すなわち薬液の吐出に関する駆動源である。
なお、熱生成部294は、別体として熱伝導部材292c,293dに外付けしていたが、これに限らず、熱伝導部材292c,293dと熱生成部294とを一体的に形成し、かかる熱伝導部材292c,293dが熱生成部294の外壁の一部分をそれぞれ形成するように構成してもよい。
ヒーター295は、制御回路296の制御に基づいて隔壁294cを所定の温度以上に加熱するためのものである。具体的には、ヒーター295は、隔壁294cに取り付けられ、制御回路296によって所定の電流が供給されることによって発熱する。かかるヒーター295は、このように発熱することによって隔壁294cを所定の温度以上に加熱し、隔壁294cを溶解することができる。すなわち、ヒーター295は、熱生成部294が熱エネルギーの生成処理を開始するため駆動エネルギー(熱エネルギー)を発生する駆動源として機能する。
また、上述した針突出機構292と熱生成部294とを組み合わせることによって、ヒーター295を駆動源として用い、注射針291を突き出すとともにピストン機構293による薬液吐出動作を開始させる熱エネルギーを生成する吐出開始手段を構成できる。この場合、針突出機構292は、かかる吐出開始手段における注射針の突出手段であり、熱生成部294は、かかる吐出開始手段におけるエネルギー生成手段である。
制御回路296は、ヒーター295に対する電流供給の有無によって熱生成部294の熱エネルギーの生成処理開始を制御し、かかる生成処理開始の制御を通じて注射針291の突き出し動作とピストン機構293による薬液吐出動作とを制御するように機能する。具体的には、制御回路296は、被検体の内部に導入された被検体内導入装置290が被検体内の所望部位に到達した場合にヒーター295に対して電流を供給するように機能する。このようにヒーター295に電流を供給することによって、制御回路296は、熱生成部294による熱エネルギーの生成処理開始を制御し、これによって、注射針291の突き出し動作とピストン機構293による薬液吐出動作とを同時に行うように制御できる。
なお、制御回路296による電流供給のタイミングを規定する構成としては、上述した制御回路213の場合とほぼ同様に、たとえばタイマー機構を備えることとしてもよいし、無線受信機構を内蔵するとともに外部より制御信号を供給することとしてもよい。
つぎに、被検体内導入装置290の動作について説明する。図41は、被検体内導入装置290の注射針291を突き出した状態を模式的に例示する断面模式図である。以下、図41を参照しつつ注射針291の突き出し動作および薬液吐出動作について説明する。
まず、制御回路296は、ヒーター295に対して電流を供給し、隔壁294cを所定の温度以上に加熱できるようにヒーター295を発熱させる。隔壁294cは、かかるヒーター295の加熱処理によって溶解し、または破れる。この場合、貯蔵室294a,294bは連通した状態になり、薬剤C,Dは、互いに混合しあって、形状記憶部材292b,293cをともに伸長変形させるに充分な熱エネルギーを生成する。かかる熱エネルギーは、熱伝導部材292cを介して形状記憶部材292bに伝導し、かつ熱伝導部材293dを介して形状記憶部材293cに伝導する。
形状記憶部材292bは、このように熱生成部294から供給された熱エネルギーを用いて伸長変形するとともに注射針291を押動かす。この場合、形状記憶部材292bは注射針291の駆動力を生成し、注射針291は、この形状記憶部材292bによる駆動力を用いてシリンダー292a内を摺動するとともに筐体202から突出する。
これと同時に、形状記憶部材293cは、このように熱生成部294から供給された熱エネルギーを用いて伸長変形するとともにピストン293bを押動かす。この場合、形状記憶部材293cはピストン293bの駆動力を生成し、ピストン293bは、この形状記憶部材293cによる駆動力を用いてシリンダー293a内を摺動するとともに貯蔵室298を圧縮する。かかるピストン293bは、貯蔵室298内の薬液を加圧するとともにチューブ297を介して管路291aに吐出する。この場合、薬液は、管路291aを通過して注射針291の先端から吐出される。このように注射針291の突き出し動作に連動して、ピストン機構293は、薬液吐出動作を開始する。
その後、ピストン293bは、形状記憶部材293cによる駆動力を用いて所望量以上の薬液を吐出し終えるまで貯蔵室298を圧縮し続ける。したがって、上述したように突出した注射針291は、たとえば患部等の被検体内の所望部位を穿刺し、ピストン293bの作用によって吐出された所望量の薬液をこの所望部位に注射する。
このような構成を採用した被検体内導入装置290は、ヒーター295に電流を供給することによって所定の熱エネルギーを化学的に生成し、かかる熱エネルギーを用いて注射針291を突き出すとともに薬液吐出動作を開始できる。したがって、かかる被検体内導入装置290は、ヒーター295に対して所定の電流を供給することによって注射針の突き出し動作と薬液吐出動作とを同時に行うことができ、かかる注射針の突き出し動作を実行するために新た駆動電力を消費する必要がなく、注射針の突き出し動作を省電力化して実行できる。
また、上述した針突出機構292と熱生成部294とを組み合わせることによって、ヒーター295を駆動源として用い、注射針291を突き出すとともにピストン機構293による薬液吐出動作を開始させる熱エネルギーを生成する吐出開始手段を構成できる。かかる構成を採用した被検体内導入装置290は、注射針を突き出すとともに薬液吐出動作を開始する吐出開始手段をより単純な機構で形成でき、装置規模を容易に小型化できる。
さらに、かかる被検体内導入装置290は、所定の薬剤を混合することによって化学的に生成した熱エネルギーを用いて注射針の突き出し動作と薬液吐出動作とを行うので、注射針の突き出し動作を実行するための新たな駆動電力と薬液吐出動作を実行するために新たな駆動電力とを消費する必要がなく、注射針の突き出し動作および薬液吐出動作を省電力化して行うことができる。
なお、この発明の全実施の形態および各変形例では、それぞれ所定の方向に注射針を突き出すようにしていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、注射針の突き出し方向は所望の方向としてもよく、たとえば筐体の長手方向の中心軸に対して所望の角度をなす方向に注射針を突き出してもよい。たとえば、上述した実施の形態2である被検体内導入装置40は、筐体2の長手方向とほぼ同方向に注射針41を突き出すものに限らず、図42に示すように、筐体2の側面たとえば筐体2の長手方向の中心軸に対してほぼ90度の角度をなす方向に注射針41を突き出してもよい。この場合、注射針に薬液を流通するチューブ(たとえばチューブ10)は、かかる注射針の突き出し方向に対応して変形して設ければよい。このことは、他の実施の形態および変形例についても同様である。
また、この発明の実施の形態2の変形例1では、バルーン4の収縮力を用いて薬液を吐出していたが、この発明はこれに限定されるものではなく、上述した実施の形態2の変形例2とほぼ同様にピストン機構を用いて薬液を吐出してもよい。この場合、かかるピストン機構の駆動力は、バネの弾性力であってもよいし、上述した実施の形態1の変形例2と同様に形状記憶部材の形状変化に基づくものであってもよい。このことは、上述した実施の形態2の変形例2についても同様である。
さらに、この発明の実施の形態3では、連結部材77,78を介してバルーン4と注射針71とを連結し、バルーン4の収縮動作を連結部材77,78によって注射針71の突き出し動作に変えていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、上述した実施の形態1の変形例1の場合と同様に、バルーン4に代えてピストン機構を設け、かかるピストン機構によるピストンの摺動作用を用いて注射針を突き出してもよい。この場合、連結部材を介してピストンと注射針とを連結し、かかるピストンの摺動を連結部材によって注射針の突き出し動作に変えればよい。
また、この発明の実施の形態4の変形例では、ピストン機構の駆動源としてリニアアクチュエータを用いていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、かかるピストン機構の駆動源として、超音波アクチュエータまたはソレノイドを用いてもよいし、上述した実施の形態1の変形例2と同様に形状記憶部材を用いてもよい。
さらに、この発明の実施の形態6およびその変形例1,2では、連動部材208f,208gを用いて連通調整機構208による連通調整動作と注射針の突き出し動作とをほぼ同時に行うようにしていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、連動部材208f,208gに弛みを形成して、連通調整機構208による連通調整動作と注射針の突き出し動作と時間差をつけて行うようにしてもよい。かかる構成を採用することによって、注射針を突き出した後に薬液吐出動作を開始することができ、注射針が被検体内の所望部位を穿刺するまでの間に被検体内の他の部位に薬液が無駄にもれることを抑制できる。
また、この発明の実施の形態7,8では、薬液吐出動作を行う薬液吐出手段としてバルーンを用いていたが、この発明はこれに限定されるものではなく、上述した実施の形態6の変形例2に例示されるように、かかるバルーンに代えて薬液吐出動作を行うピストン機構を備えるようにしてもよい。また、上述したバルーンやピストン機構のように、薬液の貯蔵室を圧縮して薬液を吐出する薬液吐出手段に限らず、吸引ポンプ等を用いて薬液の貯蔵室内の容積を減少させることによって薬液を吐出する薬液吐出手段を備えてもよい。この場合、かかる薬液吐出手段の薬液吐出動作を開始する吐出開始手段は、注射針の突き出し動作を行うとともに、この薬液吐出手段の吸引ポンプの吸引動作を開始して薬液吐出動作を開始するものであればよい。
(付記1)カプセル型の筐体内に薬液を貯蔵する貯蔵室と注射針とを有し、被検体内に導入して該被検体内の所望部位に前記薬液を注射する被検体内導入装置において、
前記貯蔵室の容積を縮小して前記薬液を吐出するとともに、該薬液の吐出に関する物理力を用いて前記注射針を前記筐体から突き出す薬液吐出手段と、
前記薬液吐出手段による前記貯蔵室の容積縮小を開始する制御を行って前記薬液の吐出を開始する吐出制御手段と、
を備えたことを特徴とする被検体内導入装置。
(付記2)前記薬液の吐出に関する物理力は、前記薬液の吐出圧力であることを特徴とする付記1に記載の被検体内導入装置。
(付記3)前記薬液の吐出に関する物理力は、前記貯蔵室の容積を縮小して前記薬液を加圧する加圧力であることを特徴とする付記1に記載の被検体内導入装置。
(付記4)前記薬液吐出手段は、
前記貯蔵室の容積を縮小して前記薬液を加圧する薬液加圧手段と、
前記注射針を保持する弾性膜と、
前記薬液加圧手段によって加圧された薬液を前記弾性膜側に流出する薬液管路と、
を備え、前記弾性膜は、前記薬液管路を介して流出した前記薬液の吐出圧力を用いて伸張し、この伸張によって前記注射針を前記筐体から突き出すことを特徴とする付記2に記載の被検体内導入装置。
(付記5)前記弾性膜は、前記薬液の吐出圧力を用いて伸張するとともに弾性力を生成し、前記薬液の吐出圧力が前記弾性力以下に低下した場合、前記弾性力を用いて前記注射針を前記筐体内に戻すことを特徴とする付記4に記載の被検体内導入装置。
(付記6)前記薬液吐出手段は、
前記貯蔵室の容積を縮小して前記薬液を加圧する薬液加圧手段と、
前記薬液加圧手段によって加圧された薬液を前記注射針の端部に流出する薬液管路と、
を備え、前記薬液加圧手段は、前記薬液の吐出圧力を前記注射針の端部に加えて前記注射針を押し出すことを特徴とする付記2に記載の被検体内導入装置。
(付記7)前記薬液管路の一端は、前記注射針の端部に接続され、
前記薬液管路の一端近傍は、前記注射針の突き出し方向に伸長自在であることを特徴とする付記6に記載の被検体内導入装置。
(付記8)前記薬液吐出手段によって前記注射針を突き出すとともに弾性力を生成し、前記薬液の吐出圧力が前記弾性力以下に低下した場合、前記弾性力を用いて前記注射針を前記筐体内に戻す弾性部材を備えたことを特徴とする付記6または7に記載の被検体内導入装置。
(付記9)前記薬液吐出手段は、
前記貯蔵室の容積を縮小して前記薬液を加圧する薬液加圧手段と、
前記薬液加圧手段によって加圧された薬液を前記注射針に流出する薬液管路と、
前記薬液加圧手段と前記注射針とを連結し、前記薬液加圧手段による前記加圧力を用い、前記貯蔵室の容積縮小に連動して前記注射針を突き出す連結手段と、
を備えたことを特徴とする付記3に記載の被検体内導入装置。
(付記10)前記注射針の突出とともに前記筐体内に前記注射針を戻す方向に弾性力を生成する弾性部材と、
前記注射針が所定位置まで突き出るとともに前記連結手段を切断する切断手段と、
を備え、前記弾性部材は、前記切断手段が前記連結手段を切断した場合、前記弾性力を用いて前記注射針を前記筐体内に戻すことを特徴とする付記9に記載の被検体内導入装置。
(付記11)前記薬液吐出手段は、
前記注射針が設けられ、前記貯蔵室の容積を縮小して前記薬液を加圧するとともに、前記注射針を前記筐体から突き出す薬液加圧手段と、
前記薬液加圧手段によって加圧された薬液を前記注射針に流出する薬液管路と、
を備えたことを特徴とする付記3に記載の被検体内導入装置。
(付記12)前記薬液加圧手段は、
前記加圧力を生成する加圧力源と、
前記注射針が設けられ、前記加圧源による加圧力を用いて前記貯蔵室内を摺動し、前記薬液を加圧するとともに前記注射針を前記筐体から突き出すピストンと、
を備えたことを特徴とする付記11に記載の被検体内導入装置。
(付記13)前記貯蔵室は、前記薬液管路を設けた変形可能な薬液袋によって形成され、
前記薬液加圧手段は、
前記薬液袋に巻き付けたベルトと、
所定温度に達するとともに変形して前記加圧力を生成する形状記憶部材と、
前記ベルトの一端と前記注射針と前記形状記憶部材とが取り付けられ、前記形状記憶部材による加圧力を用い、前記薬液袋を締め付ける方向に前記ベルトの一端を移動するとともに前記注射針を前記筐体から突き出す連動手段と、
を備えたことを特徴とする付記11に記載の被検体内導入装置。
(付記14)前記形状記憶部材は、前記所定温度未満に低下した場合、元の形状に復帰して前記加圧力を消失するとともに、前記注射針を前記筐体内に戻すことを特徴とする付記13に記載の被検体内導入装置。
(付記15)前記吐出制御手段は、前記形状記憶部材を前記所定温度以上に温度上昇する制御を行って前記薬液の吐出を開始し、前記形状記憶部材を前記所定温度未満に温度下降する制御を行って前記薬液の吐出を停止することを特徴とする付記14に記載の被検体内導入装置。
(付記16)前記吐出制御手段は、前記薬液吐出手段による前記貯蔵室の容積縮小を停止する制御を行って前記薬液の吐出を停止することを特徴とする付記1〜12のいずれか一つに記載の被検体内導入装置。
(付記17)前記薬液管路は、
前記貯蔵室に連通する第1管路と、
前記注射針側に連通する第2管路と、
を有し、前記吐出制御手段は、前記第1管路と前記第2管路との連通状態を制御し、前記薬液吐出手段は、前記第1管路と前記第2管路とが連通した場合に前記貯蔵室の容積縮小を開始し、前記第1管路と前記第2管路とが閉じた場合に前記貯蔵室の容積縮小を停止することを特徴とする付記16に記載の被検体内導入装置。
(付記18)カプセル型の筐体内に薬液と注射針とを有し、被検体内に導入して該被検体内の所望部位に前記薬液を注射する被検体内導入装置において、
前記薬液を加圧して吐出するとともに、前記筐体から前記注射針を突き出す薬液吐出手段と、
前記注射針の突出とともに前記筐体内に前記注射針を戻す方向に弾性力を生成し、前記注射針を突き出す物理力が前記弾性力以下に低下した場合、前記弾性力を用いて前記注射針を前記筐体内に戻す弾性部材と、
を備えたことを特徴とする被検体内導入装置。
(付記19)前記注射針を突き出す物理力は、前記薬液の吐出圧力であって、前記薬液吐出手段が所望量の前記薬液を吐出し終えた場合に前記弾性力以下に低下することを特徴とする付記18に記載の被検体内導入装置。
(付記20)前記薬液の吐出を停止する制御を行い、前記注射針を突き出す物理力を前記弾性力以下に低下する吐出制御手段を備えたことを特徴とする付記18または19に記載の被検体内導入装置。
(付記21)前記注射針を突き出す物理力は、前記薬液を加圧する加圧力であり、
前記薬液吐出手段は、
前記注射針と当該薬液吐出手段とを連結し、前記加圧力を用いて前記注射針を突き出す連結手段と、
前記注射針が所定位置まで突き出るとともに前記連結手段を切断し、前記注射針を突き出す物理力を前記弾性力以下にする切断手段と、
を備えたことを特徴とする付記18に記載の被検体内導入装置。
(付記22)カプセル型の筐体内に薬液を貯蔵する貯蔵室と注射針とを有し、被検体内に導入して該被検体内の所望部位に前記薬液を注射する被検体内導入装置において、
前記貯蔵室の容積を変化させることによって前記薬液を吐出する薬液吐出手段と、
所定の駆動源を用いて前記筐体から前記注射針を突き出すとともに前記薬液吐出手段の吐出動作を開始する吐出開始手段と、
を備えたことを特徴とする被検体内導入装置。
(付記23)前記薬液吐出手段は、前記貯蔵室を圧縮して前記薬液を吐出することを特徴とする付記22に記載の被検体内導入装置。
(付記24)前記薬液吐出手段は、前記貯蔵室と前記注射針とを連通する薬液管路を備え、
前記吐出開始手段は、前記薬液管路の一部に対して押圧力を印加して前記薬液管路の連通状態を遮断し、前記所定の駆動源を用いて前記注射針を突き出すとともに前記押圧力を減少して前記薬液管路を連通状態に調整し、前記薬液吐出手段の吐出動作を開始する連通調整手段であることを特徴とする付記22または23に記載の被検体内導入装置。
(付記25)前記連通調整手段は、
前記薬液管路の一部に対して押圧力を印加して前記薬液管路の連通状態を遮断する押圧手段と、
前記注射針を保持するとともに、前記所定の駆動源を用いて前記注射針を前記筐体から突き出す突出手段と、
前記突出手段が前記注射針を突き出す突出動作と前記押圧手段が前記押圧力を減少して前記薬液管路を連通状態に調整する連通調整動作とを連動させる連動手段と、
を備えたことを特徴とする付記24に記載の被検体内導入装置。
(付記26)前記薬液管路は、
前記貯蔵室に連通する第1管路と、
前記注射針に連通する第2管路と、
によって形成され、
前記連通調整手段は、前記第1管路と前記第2管路との間の領域に対して押圧力を印加して前記薬液管路の連通状態を遮断し、前記所定の駆動源を用いて前記注射針を突き出すとともに前記押圧力を減少して前記薬液管路を連通状態に調整し、前記薬液吐出手段の吐出動作を開始することを特徴とする付記24または25に記載の被検体内導入装置。
(付記27)前記所定の駆動源は、形状記憶部材であり、
前記連通調整手段は、前記形状記憶部材の形状変化によって生成された駆動力を用いて前記注射針を突き出すとともに、前記薬液管路を連通状態に調整することを特徴とする付記24〜26のいずれか一つに記載の被検体内導入装置。
(付記28)前記連通調整手段は、前記押圧力を生成する弾性部材を備え、前記形状記憶部材が前記駆動力を消失した場合、前記押圧力を用いて少なくとも前記注射針を前記筐体内に収納することを特徴とする付記27に記載の被検体内導入装置。
(付記29)前記吐出開始手段は、
前記所定の駆動源を用いて前記注射針を突き出す突出手段と、
第1の薬剤と第2の薬剤とを有し、前記突出手段が前記注射針を突き出す突出動作に連動して前記第1の薬剤と前記第2の薬剤とを混合し、化学的に駆動エネルギーを生成するとともに該駆動エネルギーを前記薬液吐出手段に伝達するエネルギー生成手段と、
を備え、前記薬液吐出手段は、前記駆動エネルギーを用いて前記薬液を吐出することを特徴とする付記22または23に記載の被検体内導入装置。
(付記30)前記吐出開始手段は、
第1の薬剤と第2の薬剤とを有し、前記所定の駆動源を用いて前記第1の薬剤と前記第2の薬剤とを混合し、化学的に駆動エネルギーを生成するとともに該駆動エネルギーを前記薬液吐出手段に伝達するエネルギー生成手段と、
前記駆動エネルギーを用いて前記注射針を突き出す突出手段と、
を備えたことを特徴とする付記22または23に記載の被検体内導入装置。
(付記31)前記駆動エネルギーは、熱エネルギーであり、
前記突出手段は、前記熱エネルギーを用いて伸長し、前記注射針を突き出す駆動力を生成する形状記憶部材を備えたことを特徴とする付記30に記載の被検体内導入装置。
(付記32)前記駆動エネルギーは、熱エネルギーであり、
前記薬液吐出手段は、前記熱エネルギーを用いて伸長し、前記貯蔵室を圧縮する加圧力を生成する形状記憶部材を備えたことを特徴とする付記29〜31のいずれか一つに記載の被検体内導入装置。
(付記33)カプセル型の筐体内に薬液を貯蔵する貯蔵室と注射針とを有し、被検体内に導入して該被検体内の所望部位に前記薬液を注射する被検体内導入装置において、
所定の温度条件の下で形状を変化して駆動力を生成する形状記憶部材と、
前記駆動力未満であって前記駆動力に対抗する弾性力を生成する弾性部材と、
前記駆動力を用いて前記筐体から前記注射針を突き出し、前記形状記憶部材が前記駆動力を消失した場合、前記弾性力を用いて前記注射針を前記筐体内に収納する出し入れ手段と、
を備えたことを特徴とする被検体内導入装置。
(付記34)前記貯蔵室と前記注射針とを連通する薬液管路を有し、該薬液管路を介して前記薬液を吐出する薬液吐出手段を備え、
前記出し入れ手段は、前記薬液管路の一部に対して前記弾性力を印加して前記薬液管路の連通状態を遮断し、前記薬液吐出手段の吐出動作を停止することを特徴とする付記33に記載の被検体内導入装置。