JP5147786B2 - カム位相可変型内燃機関 - Google Patents
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Description
<全体構成>
図1に示すエンジン(カム位相可変型内燃機関)Eは、自動車に搭載されるDOHC4バルブ型の4サイクル直列4気筒ガソリンエンジンであり、そのシリンダヘッド1に、各気筒2本ずつの吸気バルブ2および排気バルブ3、これら吸排気バルブ2,3を駆動する吸気カムシャフト4および排気カムシャフト5を備えている。両カムシャフト4,5は、クランクスプロケット6、カムチェーン7、吸気カムスプロケット8、排気カムスプロケット9を介して、クランクシャフト10によって1/2の回転速度をもって回転駆動される。また、クランクシャフト10は、コネクティングロッド11を介してピストン12に連結されるとともに、チェーン13を介して斜め下方に設置されたオイルポンプ14を駆動する。
図2に示すように、VTCアクチュエータ21は、外周に吸気カムスプロケット8が形成されたハウジング(第1回転部材)22、ハウジング22内に回転自在に保持されるとともに吸気カムシャフト4の前端にその後面が締結されるロータ(第2回転部材)23、ハウジング22の前面を覆うフロントプレート24、ハウジング22の後面を覆うバックプレート25、フロントプレート24の内周側に配置されたリードバルブ26、リードバルブ26をロータ23に固定するリードバルブカバー27、ハウジング22とロータ23とを進角方向に相対回動させるバイアススプリング28、軸心に設置されたスプールバルブ29、エンジンECUによって制御されることによってスプールバルブ29を駆動するリニアソレノイド31、ロータ23に保持されたロックピン33、ロックピン33をバックプレート25側に付勢するロックピンスプリング34、ロータ23に保持されたバイパスバルブ36、バイパスバルブ36をバックプレート25側に付勢するバイパスバルブスプリング37等を構成要素としている。なお、スプールバルブ29は、吸気カムシャフト4やロータ23の軸心に保持されたバルブスリーブ38と、バルブスリーブ38に摺動自在に内嵌したスプール39と、スプール39をリニアソレノイド31側に付勢するリターンスプリング40とから構成されている。
図4に示すように、エンジンECU70には、入力インタフェース71と、上位司令部72と、カム位相変化速度推定部73と、位相制御部74と、速度制御部75と、保持モード制御部76と、保持入力値学習部77と、制御選択部78と、抵抗率補償部79と、出力インタフェース80とが内装されている。
エンジンEの運転時において、エンジンECU70は、VTCアクチュエータ21の駆動制御を所定の制御インターバル(例えば、5ms)をもって繰り返し実行する。駆動制御を開始すると、エンジンECU70は、運転操作状態量および機関運転状態量に基づき吸気カムシャフト4の速度制御目標値や位相制御目標値を決定した後、これらを実現するための駆動電圧をVTCアクチュエータ21のリニアソレノイド31に対して適宜出力する。
(進角作動)
エンジンEの運転中に吸気カムシャフト4を進角させる場合、エンジンECU70は、図5に示すように、電磁シャットバルブ17によって作動油供給油路16を連通させた状態で、リニアソレノイド31によってスプール39を進角方向(図中、右方)に移動させる。すると、オイルポンプ14から作動油供給油路16を経由して供給された作動油は、ロックピン33を解除状態で保持するとともに、スプールバルブ29を介して第1,第2OPA61,62側の進角側油圧室45a,46aに流入して第1,第2ベーン41,42を進角側に付勢する。なお、エンジンEの通常運転時には電磁シャットバルブ17に駆動電流が供給されず(作動油供給油路16が連通され)、オイルポンプ14からの作動油によってロックピン33が解除状態で保持される。一方、CTA63では、吸気カムシャフト4に進角側のカムトルクが作用し、ハウジング22に対してロータ23が進角側に相対回転するごとにリードバルブ26の第2弁体26bが開き、遅角側油圧室47b内の作動油がスプールバルブ29を介して進角側油圧室47aに流入する。また、遅角側のカムトルクが作用した場合には、リードバルブ26の第1,第2弁体26a,26bは閉じ、作動油の移動は起こらずにカム位相が保持される。これら第1,第2OPA61,62およびCTA63の作動により、ロータ23がハウジング22に対して図中時計回りに相対回転し、吸気カムシャフト4が進角する。なお、CTA63への作動油の供給は、エンジンEの運転開始時にCTA63が満たされるまで行われる。
エンジンEの運転中に吸気カムシャフト4を遅角させる場合、エンジンECU70は、図6に示すように、リニアソレノイド31によってスプール39を遅角方向(図中、左方)に移動させる。すると、オイルポンプ14から作動油供給油路16を経由して供給された作動油は、スプールバルブ29およびOPA側遅角油路53,54を介してOPA側遅角室45b,46bに流入し、第1,第2ベーン41,42を遅角側に相対回転させる。なお、OPA側進角室45a,46a内の作動油は、OPA側進角油路51,52を介してスプール39の右方から外部に排出される。一方、CTA63では、スプール39が遅角ポジションに移動したスプールバルブ29を介して、第1CTA油路56と中央油路57とが連通する。そして、排気カムシャフト5に遅角側のカムトルクが作用し、ハウジング22に対してロータ23が遅角側に相対回転するごとにリードバルブ26の第1弁体26aが開き、CTA側進角室47a内の作動油がCTA側遅角室47bに流入して第3ベーン43を遅角側に相対回転させる。また、進角側のカムトルクが作用した場合には、リードバルブ26の第1,第2弁体26a,26bは閉じ、作動油の移動は起こらずにカム位相が保持される。
上述した進角作動や遅角作動によって目標カム位相が得られると、エンジンECU70は、図7に示すように、リニアソレノイド31によってスプール39を保持位置(図中、中央)に移動させる。すると、第1,第2OPA61,62では、進角側油圧室45a,46a内の作動油がスプールバルブ29によって封じ込められ、第1,第2ベーン41,42が移動できなくなる。一方、CTA63では、進角側油圧室47aと遅角側油圧室47bとの間で作動油が移動できなくなり、第3ベーン43も移動できなくなる。これら第1,第2OPA61,62およびCTA63の作動により、ロータ23がハウジング22に対して相対回転しなくなり、吸気カムシャフト4のカム位相が保持される。
リニアソレノイド31の断線やスプールバルブ29の固着等が生じ、カム位相の制御が行えなくなった場合、エンジンECUは、インストルメントパネル等に設置された異常警告灯を点灯させるとともに、エンジンEの再始動時に電磁シャットバルブ17への電流供給を行う。
エンジンECU70は、運転操作状態量や機関運転状態量に基づいて目標カム位相CAtgtや要求カム位相変化速度CAcmd’を設定した後、図9のフローチャートに示す手順をもって、VTCアクチュエータ21に対する目標制御入力設定制御を所定の制御周期(本実施形態では、5ms)で繰り返し実行する。
目標制御入力設定制御を開始すると、エンジンECU70は、図9のステップS1で下式によりリニアソレノイド31の抵抗率Rhatを推定する。
Rhat(Ak)
=Rhat(A(k−1))+KP(A(k−1))・eid(A(k−1))
ここで、kは制御周期(5ms)、Aはインダクタンス等による遅れを無視できるようにするための係数(本実施形態では、200)であり、Akは1,000ms(1sec)となる。
また、KPは学習ゲインであり、リニアソレノイド31の駆動電流Iと同定ゲインPとから、逐次最小二乗法を用いて下式によって求められる。
KP(A(k−1))
=P・ζ/(1+ζT(A(k−1))・P・ζ(A(k−1)))
=P・I(A(k−1))/(1+I2(A(k−1))・P)
一方、eidは推定誤差であり、リニアソレノイド31への最終入力電圧Ufinalと駆動電流Iと抵抗率Rhatとから、下式によって求められる。
eid(A(k−1))
=Ufinal(A(k−1))−I(A(k−1))・Rhat(A(k−1))
次に、エンジンECU70は、ステップS2で、図10のフローチャートにその手順を示すドライバ要求判定処理を実行する。ドライバ要求判定処理を開始すると、エンジンECU70は、図10のステップS41で、アクセルペダルセンサ19から入力したアクセルペダル開度APに基づき、図11のペダル開度−要求トルクマップから目標要求トルクTRQcmdを検索/設定した後、ステップS42で目標要求トルクTRQcmdの今回値TRQcmd(k)と前回値TRQcmd(k−1)とに基づきエンジンEが急加減速状態にあるか否かを判定する。そして、エンジンECU70は、この判定がYesであればステップS43で急加減速フラグFgunを1とする一方、NoであればステップS44で急加減速フラグFgunを0としてドライバ要求判定処理を終了する。なお、本実施形態の場合、エンジンECU70は、下式(1),(2)のどちから一方と、下式(3)とが同時に満たされたとき、急加減速状態であると判定する。
TRQcmd(k)<Tlow ・・・(1)
TRQcmd(k)>Thigh ・・・(2)
|TRQcmd’|>Dtlim ・・・(3)
ここで、Tlowは低トルク判定閾値、Thighは高トルク判定閾値、TRQcmd’は要求トルク変化率(TRQcmd(k)−TRQcmd(k−1))、Dtlimはトルク変化判定閾値である。
次に、エンジンECU70は、図9のステップS3で、図12のフローチャートにその手順を示す制御選択処理を実行する。制御選択処理を開始すると、エンジンECU70は、図12のステップS51で、急加減速フラグFgunが1であるか否かを判定し、この判定がNoであればステップS52で位相制御フラグFpcを1として制御選択処理を終了する。
位相制御停止処理を開始すると、エンジンECU70は、図16のステップS61で後述する位相入力値算出処理における位相制御偏差e(k)を0とし、ステップS62で同じく位相入力値算出処理における外乱推定誤差Kp・edobs(k)を0とする(外乱推定の積分機構(積分項)を停止する)。これにより、位相制御が再び開始される際には、積分機構の作動等に起因する過剰な出力が発生しなくなる。
次に、エンジンECU70は、ステップS6で、図17のフローチャートにその手順を示す速度制御終了判定処理を実行する。速度制御終了判定処理を開始すると、エンジンECU70は、図17のステップS71で前回の処理時にも速度制御が行われていたか否かを判定し、この判定がNoであれば(位相制御から速度制御に切り換わったときには)ステップS72で速度制御終了フラグFvcendを0とする。また、ステップS71の判定がYesであった場合(すなわち、現在が速度制御中であった場合)、エンジンECU70は、ステップS73で要求動作方向の突当付近であるか否かを判定し、この判定がNoであればステップS72で速度制御終了フラグFvcendを0とする。
速度目標値設定処理を開始すると、エンジンECU70は、図18のステップS81で各種エンジンパラメータを取得した後、ステップS82で、要求トルク変化率TRQcmd’およびエンジン回転速度Neに基づき、図19の要求空気量変化速度マップから要求空気量変化速度SAcmd’を検索/設定する。次に、エンジンECU70は、ステップS83で、要求空気量変化速度SAcmd’、吸気管圧力Pbおよびエンジン回転速度Neに基づき、図20の速度目標値マップから速度目標値DCAcmd(k)を検索/設定した後、ステップS84で速度目標値DCAcmd(k)にフィルタリング処理を施す。なお、吸気管圧力Pbによる速度目標値DCAcmd(k)の相違は、要求空気量変化速度マップではなく、演算によって求めるようにしてもよい。
次に、エンジンECU70は、図9のステップS9で、図21のフローチャートにその手順を示す速度入力値算出処理を実行する。速度入力値算出処理を開始すると、エンジンECU70は、図21のステップS91で、速度目標値DCAcmd(k)に基づいて、図22のFF目標電流マップからFF(フィードフォワード)用の目標入力電流(以下、FF目標電流と記す)Ucrnt(k)を検索/設定する。なお、FF目標電流マップでは、リニアソレノイド31の作動特性に影響を与えるエンジンパラメータ(エンジン油温Toやエンジン回転速度Ne等)に応じてFF目標電流Ucrnt(k)の値を変えているが、これを学習によって行うようにしてもよい。
Udff(k)=Ucrnt(k)・Rhat(k)
先ず、エンジンECU70は、速度目標値DCAcmd(k)と実速度DCA(k)から、下式によって速度制御偏差ed(k)を求める。
ed(k)=DCAcmd(k)−DCA(k)
次に、エンジンECU70は、今回および前回の速度制御偏差ed(k),ed(k−1)と応答指定パラメータPoleとから、下式によって拡大速度制御偏差σd(k)を求める。
σd(k)=ed(k)+Pole・ed(k−1)
次に、エンジンECU70は、拡大速度制御偏差σd(k)とフィードバックゲインKp,Kadpとから、下式によって速度制御FB生値Udftemp(k)を求める。
Udftemp(k)=Kp・σd(k)+Kadp・Σσd(k)
しかる後、エンジンECU70は、速度制御FB生値Udftemp(k)、抵抗率Rhat(k)および抵抗率初期値Rbaseとから、下式によって速度制御FB項Udfb(k)を求める。
Udfb(k)=(Rhat(k)/Rbase)・Udftemp(k)
Ud(k)=Udff(k)+Udfb(k)
次に、エンジンECU70は、図9のステップS10で、図23のフローチャートにその手順を示すメイン制御入力値設定処理を実行する。メイン制御入力値設定処理を開始すると、エンジンECU70は、図23のステップS101で、速度制御終了フラグFvcendあるいは後述する保持モードフラグFcnstmdの少なくとも一方が1であるか否かを判定し、この判定がNoであればステップS102で制御入力値Uctr(k)をそのままメイン制御入力値Umain(k)とする。なお、制御入力値Uctr(k)は、上述した速度制御入力値Ud(k)、あるいは後述する位相制御入力値Up(k)である。
Umain(k)=Uctr(k)
Umain(k)=λUtemp(k−1)+Uoft(k)
ここで、λ(0<λ<1)は忘却係数であり、Uoft(k)はVTCアクチュエータ21の突当方向への微少値である。これにより、速度制御終了フラグFvcendあるいは保持モードフラグFcnstmdが1となった場合(すなわち、速度制御が終了している場合)、メイン制御入力値Umain(k)が速度制御終了時点から漸減してゆく。
メイン制御入力値設定処理を終了すると、エンジンECU70は、図9のステップS11で、下式を用いて目標制御入力値U(k)を算出する。
U(k)=Uctr(k)+Umain(k)
ここで、Uctr(k)は保持入力であり、以下に述べる手順で設定される。
エンジンECU70は、目標制御入力設定制御と並行して、図24のフローチャートにその手順を示す保持入力値学習処理を所定の制御周期(本実施形態では、1sec)で繰り返し実行する。保持入力値学習処理を開始すると、エンジンECU70は、図24のステップS211で位相制御中であるか否かを判定し、この判定がNoであれば保持入力学習を行わずにスタートに戻る。
Uctr(k)=Uctrint+α(Ak)
α(Ak)=α(A(k−1))+KP(Ak)・eid(Ak)
ここで、kは制御周期(5ms)、Aはインダクタンス等による遅れを無視できるようにするための係数(本実施形態では、200)であり、Akは1,000ms(1sec)となる。
また、KPは学習ゲインであり、リニアソレノイド31の駆動電流Iと同定ゲインPとから、固定ゲイン法を用いて下式によって求められる。
KP(Ak)
=P・ζ/(1+ζT(Ak)・P・ζ(Ak))
=P/(1+P)
一方、eidは、位相制御入力が0となるように、下式によって算出される。
eid(Ak)=Umain(Ak)
速度制御が終了して(速度制御終了フラグFvcendが1となって)、図9のステップS7の判定がYesになると、エンジンECU70は、ステップS12で、図25のフローチャートにその手順を示す速度制御停止処理を実行する。速度制御停止処理を開始すると、エンジンECU70は、図25のステップS111で前述した速度入力値算出処理における速度制御偏差ed(k)を0とし、ステップS112で同じく位相入力値算出処理におけるフィードバックゲインKadpを0とする(積分機構を停止する)。これにより、速度制御が再び開始される際には、積分機構の作動等に起因する過剰な出力が発生しなくなる。
速度制御停止処理を終えると、エンジンECU70は、ステップS13で、保持モード移行処理を実行する。すなわち、速度制御終了フラグFvcendを0とすると同時に、保持モードフラグFcnstmdを1とする。
速度制御フラグFvcが0であり、図9のステップS4の判定がNoとなった場合、エンジンECU70は、ステップS14で現在が保持モード中であるか否かを判定する。そして、この判定がYesであった場合、エンジンECU70は、ステップS15で図26のフローチャートにその手順を示す位相制御移行判定処理を実行する。位相制御移行判定処理を開始すると、エンジンECU70は、図26のステップS121で後述する位相目標値CAcmd(k)が突当付近に無い(5°<CAtgt<65°)か否かを判定し、この判定がNoであればそのまま処理を終了し、YesであればステップS122で保持モードフラグFcnstmdを0とすると同時に位相制御フラグFpcrを1とする。
位相制御フラグFpcrが1となり、ステップS16の判定がYesになると、エンジンECU70は、ステップS17で図27のフローチャートにその手順を示す位相目標値設定処理を実行する。位相目標値設定処理を開始すると、エンジンECU70は、図27のステップS131で各種エンジンパラメータを取得した後、ステップS132で、BMEPとエンジン回転速度Neとに基づいて、図28の定常燃費最適点マップからVTCアクチュエータ21の位相目標値CAcmd(k)を検索/設定する。
次に、エンジンECU70は、図9のステップS18で、図31のフローチャートにその手順を示す位相入力値算出処理を実行する。位相入力値算出処理を開始すると、エンジンECU70は、図31のステップS141で、下記の手順によって位相制御入力Uphaseを設定する。
CA(k+1)=a1・CA(k)+a2・CA(k−1)+b1・Uphase(k)
+b2・Uphase(k−1)+c(k)
ここで、a1,a2,b1,b2はモデルパラメータであり、Uphaseは位相制御の制御入力であり、cは外乱推定パラメータである。
CAcmd_f(k)=Polef・CAcmd_f(k−1)
+(1−Polef_lf)・CAcmd(k)
e(k)=CA(k)−CAcmd_f(k)
σ(k)=e(k)+Pole・e(k−1)
c(k)=c(k−1)+Kp・edobs(k)
ここで、Kpおよびedobs(k)は、それぞれ下式によって求められる。
Kp=P/(1+P)
edobs(k)=CA(k)−CAhat(k)
CAhat(k)=a1・CA(k−1)+a2・CA(k−2)+
b1・Uphase(k−1)+b2・Uphase(k−2)+c(k−1)
なお、本実施形態では、フィードバックゲインKpの推定に固定ゲイン法を用いたが、重み付け最小二乗法等、他の推定方法を採用してもよい。
Uphase(k)=Ueq(k)+Urch(k)
ここで、Ueq(k),Urch(k)は、それぞれ以下の式によって求められる。
Ueq(k)=(1/b1)・{(1−Pole−a1)・CA(k−1)
+(Pole−a2)・CA(k−1)+CAcmd_f(k+1)−c(k)
+(Pole−1)・CAcmd_f(k)+Pole・CAcmd_f(k−1)
−b2・Uphase(k−1)}
Urch(k)=(−Krch/b1)・σ(k)
edov(k)=Liftin(k)−Liftin_hat(k)
Uphase_f(k)=(Rhat(k)/Rbase)・Uphase(k)
ステップS14の判定がNoであった場合、エンジンECU70は、ステップS19で前回の処理時に位相制御が行われていたか否かを判定する。速度制御から移行して未だ位相制御に至っていない場合、ステップS19の判定がNoとなるため、エンジンECU70は、ステップS20で速度制御停止処理(図25)を実行した後、ステップS21で前述した保持モード移行処理を実行する。これにより、速度制御が再び開始される際には、積分機構の作動等に起因する過剰な出力が発生しなくなるとともに、メイン制御入力値Umain(k)が速度制御終了時点から漸減してゆく。
VTCアクチュエータ21が位相制御中であり、ステップS19の判定がYesとなった場合、エンジンECU70は、ステップS22で速度制御停止処理(図25)を実行する。これにより、速度制御が再び開始される際には、積分機構の作動等に起因する過剰な出力が発生しなくなる。次に、エンジンECU70は、ステップS17の位相目標値設定処理(図27)と、ステップS18の位相入力値算出処理(図31)とを実行する。
速度制御入力値Ud(k)に基づく目標制御入力値U(k)がリニアソレノイド31に出力されると(すなわち、VTCアクチュエータ21が速度制御されると)、図32のグラフに実線で示すように、カム位相CAの変化速度(角速度)が急峻に立ち上がり、カム位相CAは遅角側あるいは進角側に速やかに変化する。なお、図32はカム位相CAが遅角側に変化する状態を示しており、同図から、速度目標値に基づく速度制御(実線で示す)を行うと、位相目標値に基づく位相制御を行った場合(破線で示す)に較べ、カム位相CAの最遅角位置への変化が遅滞なくかつ短時間で実現されることが判る。
VTCアクチュエータ21が速度制御終了時点から保持モードに移行すると、図33のグラフに示すように、カム位相CAが最遅角位置あるいは最進角位置で保持されたまま、制御入力値U(k)が保持入力値に微少値を加算した小さなものとなる。そのため、位相制御が再開された際には、保持モードを経由しない場合に較べ、カム位相CAが速やかに変化し、制御遅れに起因するエンジンレスポンスの低下等が効果的に抑制される。
本実施形態では、以上述べた手順でリニアソレノイド31の制御入力値U(k)を算出するようにしたため、急加減速時に速度制御によってVTCアクチュエータ21を最遅角状態あるいは最進角状態に迅速に作動させることができる。また、速度制御の終了時点で保持モードに移行し、制御入力値U(k)(すなわち、作動油圧)をごく小さな値とするようにしたため、位相制御の再開時における制御遅れが効果的に抑制される。また、リニアソレノイド31の抵抗率に応じて目標駆動電圧を補償するようにしたため、より高い精度をもってリニアソレノイド31(すなわち、VTCアクチュエータ21)を駆動制御できる。
10 クランクシャフト
18 吸気側カム角センサ
19 アクセルペダルセンサ(運転操作状態検出手段)
20 ECONスイッチ(運転モード切換手段)
21 VTCアクチュエータ
22 ハウジング(第1回転部材)
23 ロータ(第2回転部材)
29 スプールバルブ(カム位相切換手段)
31 リニアソレノイド
61 第1OPA
62 第1OPA
63 CTA
70 エンジンECU
72 上位司令部
73 カム位相変化速度推定部
74 位相制御部(位相制御手段)
75 速度制御部(速度制御手段)
76 保持モード制御部(保持制御手段)
77 保持入力値学習部(保持制御量学習手段)
78 制御選択部(制御選択手段)
79 抵抗率補償部(抵抗率補償手段)
E エンジン(カム位相可変型内燃機関)
Claims (15)
- 所定の角度範囲をもってカム位相が可変制御されるカム位相可変型内燃機関であって、
クランクシャフトに同期して回転する第1回転部材と、
カムシャフトと一体に回転するとともに前記第1回転部材に相対回転可能に連結される第2回転部材と、
前記第1回転部材および前記第2回転部材の間に形成された進角側油室と遅角側油室とに連絡する作動油回路を切り換えることにより、カム位相を進角と遅角と保持との間でシフトさせるカム位相切換手段と、
運転者による運転操作状態を検出する運転操作状態検出手段と、
機関運転状態を検出する機関運転状態検出手段と、
前記運転操作状態検出結果と機関運転状態検出結果の少なくとも一方から目標角速度を設定し、当該目標角速度に基づいて前記カム位相変化速度を制御する速度制御手段と、
前期運転操作状態検出結果と機関運転状態検出結果の少なくとも一方から目標カム位相を設定し、当該目標カム位相に基づいて、前記カム位相を制御する位相制御手段と、
前記運転操作状態検出手段の検出結果と前記機関運転状態検出手段の検出結果との少なくとも一方に基づき、前記速度制御と前記位相制御とのどちらか一方を選択する制御選択手段と、
前記速度制御の終了を判定する速度制御終了判定手段と、
前記速度制御終了判定手段によって速度制御が終了したと判定された場合、速度制御終了時点でのカム位相を当該速度制御の方向に所定の付勢力をもって保持制御する保持制御手段と
を備えたことを特徴とするカム位相可変型内燃機関。 - 前記位相制御において、カム位相を保持するための保持制御量を逐次学習する保持制御量学習手段を備え、
前記保持制御手段は、前記保持制御量に対して前記速度制御の方向への付加制御量を加えることで前記付勢力を設定することを特徴とする、請求項1に記載されたカム位相可変型内燃機関。 - 前記保持制御手段は、前記速度制御終了判定手段によって速度制御が終了したと判定された場合、速度制御終了時点での制御量から前記付勢力を与える制御量に向けて、所定の漸減量をもって制御量を漸減させることを特徴とする、請求項2に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 前記制御選択手段は、急加速時あるいは急減速時に前記速度制御手段を選択することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 前記制御選択手段は、機関回転速度、機関負荷および実カム位相の少なくとも1つと、要求トルク変化速度とに基づいて前記選択を行うことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 前記制御選択手段は、機関負荷の増加速度が高い場合に前記速度制御手段を選択することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 前記制御選択手段は、目標カム位相と実カム位相との差が大きい場合に前記速度制御手段を選択することを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 前記制御選択手段は、実カム位相が突き当て付近であり、かつ実カム位相の変化速度が所定値を下回った場合に前記位相制御手段を選択することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 前記速度制御手段が積分項を含むフィードバック制御を実行し、
当該速度制御手段は、前記制御選択手段によって位相制御手段が選択された場合、前記積分項を停止させることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。 - 前記速度制御手段は、機関回転速度、機関負荷および実カム位相の少なくとも1つと、要求トルク変化速度とに基づいて速度目標値を設定することを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 前記速度制御手段は、機関回転速度、機関負荷および実カム位相の少なくとも1つと、要求トルク変化速度とに基づいて要求空気量変化速度を算出し、当該要求空気量変化速度に基づいて前記速度目標値を設定することを特徴とする、請求項10に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 前記位相制御手段が積分項を含むフィードバック制御を実行し、
前記位相制御手段は、前記制御選択手段によって速度制御手段が選択された場合、前記積分項を停止させることを特徴とする、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。 - 前記位相制御手段は、機関回転速度と要求トルクとに基づいて位相目標値を設定することを特徴とする、請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。
- 燃費優先モードを含む運転モードのうちの1つが運転者によって選択される運転モード切換手段を備え、
前記燃費優先モードが運転者によって選択された場合、前記位相制御から前記速度制御に切り換える閾値を高くすることを特徴とする、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。 - 前記カム位相切換手段がリニアソレノイドによって駆動され、
当該リニアソレノイドの抵抗率の変化を補償する抵抗率補償手段を更に備えたことを特徴とする、請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載されたカム位相可変型内燃機関。
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