以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図1において、通信システム100は、本発明に係る無線通信装置である無線基地局200と、本発明に係る無線通信端末である通信ノード300とを有する。無線基地局200は、インターネット等の有線通信ネットワーク(図示せず)に接続している。通信ノード300は、無線基地局200との間でアソシエーションを確立することによって、無線基地局200を介して有線通信ネットワークと接続することが可能となっている。
無線基地局200は、指向性の電波によるミリ波UWB(Ultra WideBand)無線通信のピコネットコントローラ機能を備えており、指向性アンテナを用いて、ミリ波の到達範囲である通信可能圏410に進入した通信ノード300のサーチを行う。より具体的には、無線基地局200は、指向性アンテナの放射方向を、一定の角速度で水平面上に360度の方向に往復回転させながら、ミリ波によりサーチトーンを送信する。そして、無線基地局200は、このサーチトーンを受信した通信ノード300から返信される応答トーンに基づいて、通信ノード300のサーチを行う。以下、通信ノード300の方向の検出を行うべき範囲(以下「検出対象範囲」という。ここでは水平面上の全周方向)の全てを、指向性アンテナの一連の動作でカバーするようなミリ波射出方向履歴のうち最短のものを、適宜「被覆パス」という。なお、図1においては、被覆パスは、通信可能圏410と同じである。
通信ノード300は、無線基地局200から送信されるサーチトーンを受信し、サーチトーンを2回受信したとき、応答トーンを無線基地局200に返信する。より具体的には、通信ノード300は、無線基地局200が指向性アンテナの放射方向を往復回転させる際に、その往路と復路とでサーチトーンを2回受信する。そして、通信ノード300は、その受信間隔に関する情報と自ノードの識別情報(ID:IDentifier)とを含む応答トーンを、無線基地局200に送信する。
サーチの手順としては、まず、無線基地局200が、指向性アンテナの電波照射範囲420を、往路として基準方向430を基点として所定の方向(以下「正方向」といい、これとは逆の方向を「逆方向」という)に360度回転させ(S1100)、その後に復路として逆方向に360度回転させる(S1200)。この結果、電波照射範囲420は被覆パスにおいて通信ノード300の位置を往復で2回通過することになり、通信ノード300は、この2回の通過タイミングにおいてサーチトーンを2回受信することになる。
また、電波照射範囲420は、上述したように一定の角速度で往復する。したがって、被覆パス上の往路でサーチトーンが受信されるタイミングから被覆パス上の往復が切り替わるタイミングまでの時間長さと、被覆パス上の往復が切り替わるタイミングから被覆パス上の復路でサーチトーンが受信されるタイミングまでの時間長さは、通信ノード300の位置にかかわらず等しい。また、被覆パス上の往復が切り替わる方向は、基準方向430に一致する。したがって、通信ノード300における2回のサーチトーンの受信間隔を半分にした時間長さと、電波照射範囲420の角速度とを乗算し、基準方向430から逆方向に乗算結果の角度だけ回転させた方向を、通信ノード300の方向として算出することができる。
そこで、通信ノード300は、2回のサーチトーンの受信間隔、この受信間隔を半分にした時間長さ、またはこの時間長さと電波照射範囲420の角速度との積のいずれかを算出し、算出結果を無線基地局200に送信する(S1300)。
そして、無線基地局200は、通信ノード300から受信したサーチトーンの受信間隔に関する情報と、基準方向430とに基づいて通信ノード300の方向を決定し、決定した方向に電波照射範囲420を向けて、アソシエーションを開始する(S1400)。
このような通信システム100によれば、無線基地局200は、指向性の高い電波を用いて、カバレッジの広いサーチを行うことができる。しかも、無線基地局200は、放射方向を回転させながらサーチトーンを送信し、これに対応して通信ノード300から返信される情報に基づいて通信ノード300の方向を決定するので、セクタごとに順次サーチを行う場合に比べて、より素早くサーチを完了することができる。
以下、通信ノード300は、サーチトーンの受信間隔に関する情報として、2回のサーチトーンの受信間隔を半分にした時間長さを示す時間パラメタを送信するものとして説明を行う。
次に、無線基地局200の構成の構成について説明する。
図2は、無線基地局200の構成を示すブロック図である。
図2において、無線基地局200は、アンテナ部210、RF(Radio Frequency)部220、PHY(PHysical Layer)部230、MAC(Media Access Control)部240、トーン送信部250、指向性制御部260、トーン解析部270、および指向性テーブル格納部280を有する。
アンテナ部210は、少なくとも水平面上で360度の方向に放射方向を制御可能な指向性アンテナを有し、電波の送受信を行う。
RF部220は、アンテナ部210を用いてミリ波の送受信を行う。
PHY部230は、RF部220のミリ波の送受信を制御する。
MAC部240は、アプリケーション部(図示せず)からの指示を受け、PHY部230、RF部220、およびアンテナ部210を介して、ビーコンを利用したスーパフレームの送受信を行う。
トーン送信部250は、RF部220およびアンテナ部210を介してサーチトーンの送信を行う。より具体的には、トーン送信部250は、MAC部240により送信されるスーパフレームの所定の区間で、サーチトーンを送信する。
図3は、無線基地局200から送信されるスーパフレームの構成を示す図である。
図3に示すように、無線基地局200から送信されるスーパフレーム500は、同期トーン区間510、個別ビーコン区間520、およびデータ通信スロット区間530により構成される。
同期トーン区間510は、サーチを行い、無線基地局200と通信ノード300との間でスーパフレームの同期を取るための区間である。同期トーン区間510は、固定長であり、正サーチトーン区間511、逆サーチトーン区間512、および個別ビーコン要求区間513により構成される。
正サーチトーン区間511は、無線基地局200の電波照射範囲420が正方向に回転する時間に対応する区間である。逆サーチトーン区間512は、無線基地局200の電波照射範囲420が逆の方向に回転する時間に対応する区間である。逆サーチトーン区間512は、正サーチトーン区間511の後に連続して配置され、正サーチトーン区間511と同一長さとなっている。正サーチトーン区間511から逆サーチトーン区間512に切り替わる点は、図1に示す基準方向に対応する基準点514であり、通信ノード300と無線基地局200とのフレーム同期の基準として用いられる。個別ビーコン要求時間513は、通信ノード300から返信される応答トーンを受信する区間である。
トーン送信部250は、正サーチトーン区間511および逆サーチトーン区間512の全区間において、連続するサーチトーンを生成して送信する。以下、適宜、正サーチトーン区間511に送信されるサーチトーンを「正サーチトーン」といい、逆サーチトーン区間512に送信されるサーチトーンと「逆サーチトーン」という。
個別ビーコン区間520は、無線基地局200と通信ノード300との間で個別の各種制御情報を送受信するための区間である。個別ビーコン区間520は、可変長であり、1つまたは複数の個別スロット521により構成されている。個別スロット521は、アソシエーションが確立し無線基地局200が提供する通信サービスへの加入済みのデバイス(以下「既加入ノード」という)と、応答トーンの送信元である上記通信サービスへの新規加入のデバイス(以下「新規加入ノード」という)に対して設けられる。個々の個別スロット521は、それぞれ個別ビーコンスロット522および個別要求スロット523により構成される。個別スロット521は、通信ノード300に対する個別のビーコン送信に用いられる。個別要求スロット523は、通信ノード300からの個別の要求受信に用いられる。
データ通信スロット区間530は、無線基地局200と既加入ノードとの間で各種データを送受信するための区間である。データ通信スロット区間530は、個別ビーコン区間520の長さとの関係でスーパフレーム500全体の長さが一定となる長さの範囲内で、1つまたは複数のデータ通信スロット531を含む。データ通信スロット531は、既加入ノードとの間での個別のデータ送受信に用いられる。各データ通信スロット531は、時間軸上で排他的に配置されてもよいが、個別に分離可能であれば、図3に示すように時間軸上で重なって配置されてもよい。
図2の指向性制御部260は、MAC部240が送受信するスーパフレーム500に同期して、ビームフォーミング、つまりアンテナ部の放射方向の制御を行う。より具体的には、指向性制御部260は、スーパフレーム500の正サーチトーン区間511の開始時刻から、正サーチトーン区間511の時間長さで360度回転する角速度で、アンテナ部210の電波照射範囲420を回転させる。また、指向性制御部260は、スーパフレーム500の逆サーチトーン区間512の開始時刻から、逆サーチトーン区間512の時間長さで360度回転する角速度で、アンテナ部210の電波照射範囲420を回転させる。したがって、電波照射範囲420の回転の往復が切り替わる時刻(以下「基準時刻」という)は、スーパフレーム500の基準点514と一致し、電波照射範囲420の回転の1往復が終了する時刻は、逆サーチトーン区間512の終了時刻と一致する。また、正サーチトーン区間511のサーチ時間と、逆サーチトーン区間512のサーチ時間は、一致する。なお、無線基地局200は、電波照射範囲420の角速度が先に決定される場合には、正サーチトーン区間511および逆サーチトーン区間512の時間長さを、電波照射範囲420が360度回転するのに要する時間と一致するように設定してもよい。
トーン解析部270は、通信ノード300から送信される応答トーンを受信し、受信した応答トーンに含まれる時間パラメタを解析して、通信ノード300の方向を決定する。そして、決定結果に基づいて、サーチが完了した通信ノード300の方向を記述する指向性テーブルを作成または更新する。
指向性テーブル格納部280は、上述の指向性テーブルを格納する。指向性テーブルは、MAC部240によって、通信ノード300と個別に通信を行う際にその通信ノードに電波照射範囲420を向けるために参照される。
無線基地局200は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する(いずれも図示せず)。すなわち、CPUが制御プログラムを実行することで、上記した無線基地局200の各部の機能は実現される。
このような構成を有する無線基地局200によれば、指向性電波の放射方向を一定の角速度で往復回転させながらサーチトーンを送信し、このサーチトーンを受信した通信ノード300から返信される応答トーンに基づいて、通信ノード300のサーチを行うことができる。
次に、通信ノード300の構成の構成について説明する。
図4は、通信ノード300の構成を示すブロック図である。
図4において、通信ノード300は、アンテナ部310、RF部320、PHY部330、MAC部340、トーン解析部350、パラメタ算出部360、トーン送信部370、およびパラメタ格納部380を有する。
アンテナ部310は、無指向性アンテナを有し、電波の送受信を行う。
RF部320は、アンテナ部310を用いて、無線基地局200から送信されるミリ波の受信を含む無線信号の送受信を行う。
PHY部330は、RF部320のミリ波の送受信を制御する。
MAC部340は、アプリケーション部(図示せず)からの指示を受け、PHY部330、RF部320、およびアンテナ部310を介して、ビーコンを利用したスーパフレームの送受信を行う。
トーン解析部350は、アンテナ部310の受信信号を解析し、無線基地局200から送信される正サーチトーンおよび逆サーチトーンの受信を検出する。
パラメタ算出部360は、トーン解析部350によって検出された正サーチトーンおよび逆サーチトーンの受信間隔から、時間パラメタおよび基準時刻を算出し、これらのうち基準時刻をMAC部340に出力する。この基準時刻は、MAC部340で、スーパフレームの同期に用いられる。
トーン送信部370は、パラメタ算出部360によって算出された時間パラメタを含む応答トーンを生成する。そして、トーン送信部370は、無線基地局200からのサーチトーンに対する応答として、つまりアソシエーションの要求として、生成した応答トーンを、RF部320およびアンテナ部310を介して無線基地局200に送信する。
パラメタ格納部380は、パラメタ算出部360で算出された時間パラメタの履歴を格納する。時間パラメタの履歴は、前回時間パラメタの送信を行ってから自ノードが大きく移動したか否か、つまり無線基地局200が決定した方向から実際の自ノードの方向がずれたか否かを判断するために参照される。
通信ノード300は、CPU、制御プログラムを格納したROM等の記憶媒体、およびRAM等の作業用メモリを有する(いずれも図示せず)。すなわち、CPUが制御プログラムを実行することで、上記した通信ノード300の各部の機能は実現される。
このような構成を有する通信ノード300によれば、無線基地局200に対して時間パラメタを送信し、自ノードのサーチを行わせることができる。
以下、上記構成を有する無線基地局200および通信ノード300の動作について詳細に説明する。まず、無線基地局200の動作について説明する。
図5は、無線基地局200の全体動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS2100で、無線基地局200は、スーパフレーム500の正サーチトーン区間511に、電波照射範囲420を正方向に回転させながら正サーチトーンを送信する。
そして、ステップS2200で、無線基地局200は、スーパフレーム500の逆サーチトーン区間512に、電波照射範囲420を逆方向に回転させながら逆サーチトーンを送信する。
図6は、上記したステップS2100無線基地局200による指向性アンテナの指向性制御の様子を示す図である。
図6に示すように、無線基地局200の通信可能圏410に、新たに第1および第2の通信ノード300−1、300−2が進入した場合を想定する。この場合、無線基地局200は、第1および第2の通信ノード300−1、300−2のそれぞれと個別ビーコンでアソシエーションを結ぶ関係の構築を試みる。
無線基地局200は、図8に示すように、スーパフレーム500の終盤、厳密にはスーパフレーム500の基準点514から正サーチトーン区間511のサーチ時間Tだけ前に遡った時刻から、正サーチトーンの送信を開始する。つまり、スーパフレーム500は、基準点514から開始する。そして、無線基地局200は、アンテナ部210の放射方向440を、被覆パスの経路上を、ある一定の角速度を超えずに移動するように制御する。
この一定の角速度は、例えば、通信ノード300でトーンを検出することが可能な角速度の最大値である。放射方向440の角速度は、基準時刻に対して時間軸上で対称であれば良いが、ここでは、無線基地局200は、被覆パスの経路上を正方向に一定の角速度ωで移動するように、アンテナ部210の放射方向440を制御するものとする。正サーチトーン区間511における、放射方向440の基準方向430を基準とした正方向における角度θは、正サーチトーン区間511の開始時刻からの経過時間tと、角速度ωとから、以下の式(1)で表わすことができる。
θ = ωt (0≦t≦T) ・・・・・・(1)
そして、無線基地局200は、スーパフレーム500の基準点514で逆サーチトーンに切り替え、被覆パスの経路上を逆方向に一定の角速度ωで移動するように、アンテナ部210の放射方向440を制御する。逆サーチトーン区間512における、放射方向440の基準方向430を基準とした正方向における角度θは、正サーチトーン区間511の開始時刻からの経過時間tと、角速度ωとから、以下の式(2)で表わすことができる。
θ = ω(2T−t) (T≦t≦2T) ・・・・・・(2)
通信可能圏410が、無線基地局200を中心とした半径Lの円周の内部であるとすると、この円周のうち電波照射範囲420が一時に被覆する部分である部分円周は、基準方向430を基準とした角度θにより、角度θの関数C(θ)=C(ωt)として表わすことができる。したがって、無線基地局200は、アンテナ部210の放射方向を被覆パスの方向に制御して全周方向に向けることで、アンテナ部210指向性を制御することができる範囲内の全ての方向に、ある一定時間以上、トーンを送信し続けることができる。ある方向にトーンが連続して送信される時間Tcは、部分円周の角度θrを用いて、以下の式(3)で表わすことができる。
Tc = θr/ω ・・・・・・(3)
したがって、通信ノード300は、自己の位置を電波照射範囲420が通過する区間だけ、無線基地局200から送信されるサーチトーンを受信でき、その区間で搬送波の受信強度が高くなる。また、放射方向440が通信ノード300の方向に一致するときに、搬送波の受信強度はピークを取る。図6に示す例では、第1の通信ノード300−1と第2の通信ノード300−2は、基準方向430に対して異なる角度の方向に位置しているため、それぞれ異なる時刻で搬送波の受信強度のピークを検出することになる。
図5のステップS2300で、無線基地局200は、スーパフレーム500の個別ビーコン要求区間513に、電波照射範囲420を反復させて、通信ノード300から応答トーンを受信したか否かを判断する。無線基地局200は、個別ビーコン要求区間513にて、応答トーンを受信しなかった場合には(S2300:NO)、ステップS2400に進む。
ステップS2400で、無線基地局200は、既にアソシエーションが完了している既加入ノードがあれば、スーパフレーム500の個別ビーコン区間520およびデータ通信スロット区間530を用いて、その既加入ノードとの通信を行う。具体的には、無線基地局200は、例えば、各既加入ノードに対し、その既加入ノードに割り当てた個別スロット521にて、既に使用されているデータ通信スロット区間530の情報と、自身が行うデータ送受信のタイミングの情報とを、既加入ノードに送信する。
そして、ステップS2500で、無線基地局200は、既加入ノードから個別スロット521にて時間パラメタを受信したか否かを判断し、受信していない場合には(S2500:NO)、ステップS2600に進む。
ステップS2600で、無線基地局200は、通信ノード300との通信を継続するか否かを判断し、継続する場合には(S2600:YES)、ステップS2100に戻る。この結果、処理は、次のスーパフレーム500に移ることになる。
一方、無線基地局200は、ステップS2300で、個別ビーコン要求区間513にて時間パラメタを受信した場合には(S2300:YES)、ステップS2700に進む。
ステップS2700で、無線基地局200は、受信した応答トーンから時間パラメタを取得し、取得した時間パラメタから、応答トーンの送信元の通信ノード300、つまり新規加入ノードの方向を決定する。より具体的には、無線基地局200は、取得した時間パラメタTpと電波照射範囲420の角速度ωから、例えば以下の式(4)を用いて、逆の方向における基準方向430からの角度Θを算出する。
Θ = ωTp ・・・・・・(4)
そして、無線基地局200は、基準方向430に対して、逆サーチトーン区間512における電波照射範囲420の回転方向に算出した角度だけ回転させた方向を、新規加入ノードの方向と判断する。
そして、ステップS2800で、無線基地局200は、決定した通信ノード300の方向を、その通信ノード300の識別情報棚と対応付けて指向性テーブルに記述し、その後、新規加入ノードとのアソシエーションを開始し、ステップS2400に進む。より具体的には、無線基地局200は、まず、スーパフレーム500に新規加入ノード用の個別スロット521を設定する。
以降の通信において、無線基地局200は、新規加入ノードとの間で通信を行う際に、その新規加入ノードが位置する方向として決定した方向に電波照射範囲420が向くように、アンテナ部210の放射方向を制御する。また、無線基地局200は、応答トーンを受信したスーパフレーム500の次のスーパフレーム500の新規に設定された個別スロット521にて、個別ビーコンとアソシエーションの要求を受け付けるための基本的な情報とを、応答トーンの送信元に送信する。
また、無線基地局200は、ステップS2500で、既加入ノードから個別スロット521にて時間パラメタを受信した場合には(S2500:YES)、ステップS2900に進む。
ステップS2900で、無線基地局200は、受信した時間パラメタに基づいて、その既加入ノードの方向を再決定し、再決定結果で指向性テーブルを更新して、ステップS2600に進む。
通信ノード300が、無線基地局200が決定した方向から大きく移動した場合、無線基地局200からの送信信号が通信ノード300に届かなくなるおそれがある。そこで、後述するように、通信ノード300は、大きく移動した場合に、変化した時間パラメタを個別スロット521にて無線基地局200に送信する。これにより、無線基地局200は、通信ノード300がアソシエーション開始時から移動しても、通信ノード300の方向を正しく検出することができる。なお、無線基地局200は、受信した応答トーンの指向性情報(例えば、到来方向推定によって求められる送信方向に対応する時間パラメタ)が、受信された指向性情報(時間パラメタ)と異なる場合には、その既加入ノードとの通信において、受信と送信とで個別に指向性制御を行ってもよい。
そして、無線基地局200は、処理の停止を指示されるなどして、通信ノード300との通信を停止すると判断した場合には(S2600:NO)、一連の処理を終了する。
このように、無線基地局200は、各スーパフレーム500で、アンテナ部210の放射方向を、所定の複数の方向に順次変動させた後に、その順序とは真逆の順序で変動させてサーチトーンを送信し、返信される時間パラメタに基づいて通信ノード300のサーチを行うことができる。
次に、通信ノード300の動作について説明する。
図7は、通信ノード300の全体動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS3100で、通信ノード300は、無線基地局200から送信されるサーチトーンの受信を開始する。
そして、ステップS3200で、通信ノード300は、搬送波の受信強度を見て、ほぼ同じ高さのピークを2つ検出したか否かを判断する。ほぼ同じ高さのピークを2つ検出していない場合には(S3200:NO)、ステップS3300に進む。
ステップS3300で、通信ノード300は、無線基地局200との通信を継続するか否かを判断し、継続する場合には(S3300:YES)、ステップS3200に戻る。
一方、通信ノード300は、ほぼ同じ高さのピークを2つ検出した場合には(S3200:YES)、ステップS3400に進む。なお、この検出間隔には、正サーチトーン区間511および逆サーチトーン区間512の時間長さよりも長く、スーパフレーム500の残りの時間長さよりも短い時間で、タイムアウトを設定しておくことが望ましい。これにより、異なるスーパフレーム500にまたがって2つのピークが検出されるのを防ぐことができる。
ステップS3400で、通信ノード300は、検出した2つのピークの時刻から、時間パラメタを算出する。より具体的には、通信ノード300は、2つのピークの時間差を半分にした時間長さ、または検出した2つのピークの中間の時刻と1つ目または2つ目のピークとの時間差を時間パラメタとして算出する。
図8は、時間パラメタおよび時間パラメタの算出手法について説明するための図である。
図8に示すように、通信ノード300では搬送波の電界強度540が検出される。電界強度540は、無線基地局200から送信されるスーパフレーム500の正サーチ区間511および逆サーチ区間512で、ピーク541、542を取る。これらピーク541、542は、時間軸上に、スーパフレーム500の基準点514を挟んで線対称に配置される(電界強度540の他の極大極小値も同様に線対称となる)。
ピーク541、542の中間の時刻は、通信ノード300がどの方向に位置するかに関係なく、常に無線基地局200が設定する基準時刻t0と一致する。したがって、通信ノード300は、例えば、以下の式(5)を用いて、基準時刻t0を算出し、算出した基準時刻t0を用いて自ノードのフレーム同期を行う。
t0 = (t1+t2)/2 ・・・・・・(5)
また、既に説明したように、1つ目のピークの時刻t1は、無線基地局200の放射方向440が被覆パスの往路で自ノードの方向に一致した時刻であり、2つ目のピークの時刻t2は、無線基地局200の放射方向440が被覆パスの復路で自ノードの方向に一致した時刻である。すなわち、時間パラメタTpは、無線基地局200の放射方向440が往路で通信ノード300に向いてから基準方向430に向くまでに要した時間と一致する。このような時間パラメタTpを無線基地局200に送信することにより、無線基地局200側で、例えば上記した式(4)から、通信ノード300の方向を決定することが可能となる。したがって、通信ノード300は、例えば、以下の式(6)を用いて、時間パラメタTpを算出する。
Tp=t0−t1=(t2−t1)/2 ・・・・・・(6)
図7のステップS3500で、通信ノード300は、算出した時間パラメタを、応答トーンに変調しスーパフレーム500の個別ビーコン要求区間513の全てを使用して送信し続けるとともに、無線基地局200に送信した時間パラメタとして記録する。
なお、無線基地局200からみて同じ方向に複数の新規加入ノードが位置し、これら複数の新規加入ノードから送信される応答トーンが衝突することが起こり得る。この場合、無線基地局200側にいずれの新規加入ノードからの応答トーンも正しく受信されず、次のスーパフレームで新規の個別ビーコンは送信されない。したがって、通信ノード300は、応答トーンを送信した次のスーパフレームで個別ビーコンを受信しない場合には、バックオフ(乱数に応じた待機時間)をかけて別のスーパフレームにてアソシエーション開始を再チャレンジする。
そして、ステップS3600で、通信ノード300は、無線基地局200との通信を開始する。より具体的には、通信ノード300は、無線基地局200によって設定された自ノード用の個別スロット521を用いて、アソシエーションを開始する。以降の通信において、無線基地局200が、通信ノード300にビーコンを送信するときに通信ノード300の方向に電波照射範囲420を向けることは、既に説明した通りである。
そして、ステップS3700で、通信ノード300は、ステップS3200と同様に、搬送波の受信強度にほぼ同じ高さのピークを2つ検出したか否かを判断し、ほぼ同じ高さのピークを2つ検出した場合には(S3700:YES)、ステップS3800に進む。
ステップS3800で、通信ノード300は、ステップS3400と同様に、ステップ検出した2つのピークの時刻から、時間パラメタを算出する。
そして、ステップS3900で、通信ノード300は、無線基地局200に送信した時間パラメタとして前回記録した時間パラメタと、今回算出した時間パラメタとを比較し、その差分が所定値以上であるか否かを判断する。通信ノード300は、時間パラメタの差分が所定値未満の場合には(S3900:NO)、ステップS4000に進む。
つまり、通信ノード300が、無線基地局200が決定した方向から大きく移動した場合、無線基地局200からの送信信号が通信ノード300で受信されないおそれがある。したがって、このように時間パラメタの差分を所定値と比較することにより、無線基地局200に対して方向の再決定を行わせるべきか否かを判断することができる。所定値は、例えば、無線基地局200の電波照射範囲420の角度(図6における部分円周の角度θr)の半分の角度を放射方向440の角速度ωで除した値とすればよい。なお、所定値は、システムによって、最適値が存在する値である。
ステップS4000で、通信ノード300は、既加入ノードとして、スーパフレーム500の個別ビーコン区間520およびデータ通信スロット区間530を用いて、無線基地局200との通信を行う。具体的には、通信ノード300は、例えば、無線基地局200に対し、自ノードに割り当てられた個別スロット521にて、データ通信スロット区間530の追加、変更、および廃棄などの要求を、無線基地局200に送信する。
そして、ステップS4100で、通信ノード300は、無線基地局200との通信を継続するか否かを判断し、継続する場合には(S4100:YES)、ステップS3700に戻る。
一方、ステップS3800で算出した時間パラメタの差分が所定値以上である場合には(S3900:YES)、ステップS4200に進む。
ステップS4200で、通信ノード300は、自ノードに割り当てられた個別スロット521にて、算出した時間パラメタを無線基地局200に送信するとともに、無線基地局200に送信した時間パラメタとして記録して、ステップ4000に進む。これにより、無線基地局200で、通信ノード300の方向が再決定される。
そして、通信ノード300は、処理の停止を指示されるなどして無線基地局200との通信を停止すると判断した場合には(S3300:NO、S4100:NO)、一連の処理を終了する。
このように、通信ノード300は、無線基地局200からサーチトーンのピークを2回受信したとき、その2つのピークの時間差を半分にした時間長さである時間パラメタを算出して、算出した時間パラメタを無線基地局200に送信することができる。また、通信ノード300は、サーチトーンのピークを2回受信したときに、迅速に無線基地局200とのフレーム同期を取ることができる。
このような無線基地局200および通信ノード300によれば、無線基地局200は、指向性電波を用いた簡単な処理により、通信ノード300の方向を検出することができる。
なお、無線基地局200の被覆パスは、放射方向が360度よりも少ない角度範囲や水平面以外の平面で変動するものであってもよく、放射方向が三次元的に変動するものであってもよい。また、被覆パスの開始点および終了点と往復の切り替わり点とは、異なる方向に位置していてもよい。更に、検出対象範囲を複数の領域に分割し、分割領域のそれぞれで被覆パスを設定してもよい。ただし、1つの被覆パスは、放射方向が往復路で同じルートを辿る必要があることから、一筆書きが可能な線を形成している必要がある。
以下、検出対象範囲が無線基地局200を中心とした半球面(以下単に「半球面」という)である場合の、被覆パスのバリエーションについて、図9〜図12を用いて説明する。以下に説明する図9〜図12では、被覆パスを電波照射範囲の包絡線を用いて示し、被覆パスの往路または復路における放射方向の変動方向を矢印で示す。
図9は、半球面において渦巻形状を形成する被覆パスの一例を示す図である。図9では、半球面を上方から見たときの状態で、被覆パスを示す。
半球面450のうち、電波照射範囲が同時に被覆する部分である部分球面は、方位角θaと基準方向に対する仰角φとの関数S(θa,φ)として表わすことができる。したがって、被覆パスの往路は、部分球面S{θa(t),φ(t)}を、その0≦t≦Tにおける和集合が半球面450に一致するように、設定すればよい。そして、被覆パスの復路は、T≦t≦2Tにおいて、部分球面S{θa(2T−t),φ(2T−t)}を実現するように、指向性を制御すればよい。
図9において、半球面450における被覆パス460は、渦巻状となっており、開始点Psを無線基地局200の水平方向に、往復の切り替わり点Pcを無線基地局200の真上方向に置いている。このような被覆パス460においても、通信ノード300で正サーチトーンの受信時刻から基準時刻までの時間長さと基準時刻から逆サーチトーンの受信時刻までの時間長さは同一となる。また、無線基地局200では、被覆パス460における放射方向の変動の制御と、通信ノード300で算出される時間パラメタとから、通信ノード300の三次元方向を検出することができる。すなわち、図9に示す被覆パスによれば、渦巻状無線基地局200における通信ノード300の方向の検出と、無線基地局200と通信ノード300と間のフレーム同期とを、正しく行うことができる。
図10は、半球面において渦巻形状を形成する被覆パスの他の例を示す図である。図10では、半球面を斜め上方から見たときの状態で被覆パスを示す。
図10において、半球面450における被覆パス460は、図9に示す被覆パス460と類似しているが、仰角を段階的に増加させた形状となっている。図10に示す被覆パス460によれば、放射方向の仰角を固定させて水平面上における方向のみを制御する区間が大部分となり、指向性制御をより単純化することが可能となる。
図11は、ビーコンを送信すべき全方位を複数の矩形領域に分割した場合の、矩形領域における被覆パスの一例を示す図である。図11において、矩形領域470における被覆パス460は、矩形領域470の形状に沿った渦巻形状となっている。
図12は、ビーコンを送信すべき全方位を複数の矩形領域に分割した場合の、矩形領域における被覆パスの他の例を示す図である。図12において、矩形領域470における被覆パス460は、矩形領域470の形状に沿った折り返し形状となっている。
このような分割された領域ごとの被覆パス460は、例えば、サブアンテナとしてセクタアンテナを用いた無線基地局200に好適である。
ただし、複数のセクタアンテナを用いる場合、隣接する分割領域が重なり、複数のセクタから電波を照射される領域が存在する。このような複数の分割領域が重なった領域に位置する通信ノード300は、無線基地局200の複数のセクタと通信可能であり、いずれかのセクタに対して送信した応答トーンが、他のセクタでも受信される。この場合、無線基地局200が、それぞれのセクタで独立してアソシエーションを行おうとすると、通信ノード300に対して、同じ時間帯に個別ビーコンや送受信フレームが複数送信される可能性があり、結果として、通信ノード300との通信を開始することが困難になるおそれがある。
そこで、複数のセクタアンテナを用いる場合には、無線基地局200は、隣接するセクタで同様の被覆パスの形状とし、同じ方向に放射方向を移動させていくことが望ましい。なぜなら、上記のような障害が発生するのは、同じ通信ノード300への指向性制御を、同じ時刻に行うことに起因するからである。被覆パスの移動順序を同一にしておけば、同じ通信ノード300に対する指向性を同じ時刻に行うことはない。この場合、通信ノード300に対して隣接する複数のセクタから、同じ個別ビーコンが同時に送信されるのを防ぐことができる。
しかし、外界状況の変化や、多数の分割領域の配置の都合により、通信ノード300に対して隣接する複数のセクタから個別ビーコンが同時に送信される場合もある。
一方で、それぞれのサーチトーンは通信ノード300を同時刻に通過することはなく、応答トーンに含める時間パラメタも同一の値となることはない。したがって、隣接するセクタで同一の時間パラメタがされた場合、その時間パラメタは同一の通信ノード300から送信されたものだということが推測される。
したがって、複数のセクタアンテナを用いる無線基地局200は、隣接する2つのセクタによって、同様の被覆パスの形状を用いて同じ方向に放射方向を移動させた上で、隣接するセクタで同一の時間パラメタを受信した場合には、その時間パラメタの送信元に対するアソシエーションの開始は、送信したビーコンに反応する一方のセクタのみによって行うことになる。
ただし、偶然に同じ時間パラメタを送信する複数の通信ノード300が存在する可能性もあるため、他方のセクタも、時間をずらしてアソシエーションを開始したり、アソシエーション確立後のフレーム送信を行うことが望ましい。この場合には、通信ノード300のリアソシエーションを行うまでの待機時間を、この時間のずれを考慮して設定する必要がある。
なお、各セクタアンテナのサーチトーンを変調させて、各セクタのIDを信号として送ることも可能である。また、いくつかのセクタからのトーン信号が、重複して送信されていることを検知できる程度に、受信感度の高い別セクタのトーン信号を受信している場合は、個別要求スロットにおいて、各セクタのIDを通知するとともに、受信感度の高いトーン信号により時間パラメタを通知するようにしてもよい。これにより、自分のスロットが別のセクタの同じスロット時間において、当該方向に向けて送信しないように制御することが可能となる。
このように、無線基地局200の放射方向を三次元的に変動させることにより、通信ノード300の三次元方向を検出することができる。
なお、電波照射範囲の包絡線により近い領域では、電波の照射時間はより短くなる。また、電波の照射時間がより短くなると、通信ノード300がサーチトーンを検出できなくなるおそれがある。そこで、放射方向を三次元的に変動させる場合において、検出対象範囲を部分球面Sが少なくとも二重に覆うように被覆パスを設定する方式についても、ここで提案する。
図13は、二重被覆パスの場合の隣り合う部分球面の位置関係の一例を示す図である。
図13に示すように、ある時刻における第1の部分球面S1に対し、第1の部分球面S1の移動方向480に直交する方向に、他の時刻における第2の部分球面S2が位置するものとする。この場合に、第1の部分球面S1と第2の部分球面S2との中心距離を、第1の部分球面S1および第2の部分球面S2の半径dとする。
この場合、第1の部分球面S1と第2の部分球面S2との間の領域のうち、電波の照射時間が最も短いのは、第1の部分球面S1と第2の部分球面S2との中間点490である。そして、中間点490における電波の照射時間は、√3・d/2≒0.87dとなる。これは、電波の照射時間が、2つの照射の合計ではないためである。
このように、二重被覆パスを採用することにより、少なくとも検出対象範囲の外周部以外の全ての受信点において、電波の照射時間を所定の長さ以上確保することができる。検出対象範囲の外周部についても電波の照射時間を確保しようとする場合には、例えば電波照射範囲が検出対象範囲の外周部にはみ出すように被覆パスを設定すればよい。
なお、この方式を用いる場合、通信ノード300が、往路と復路のそれぞれで2回以上ずつサーチトーンのピークを受信する可能性がある。このような場合には、通信ノード300は、ピークの回数が偶数であることを確認したうえで受信した全てのサーチトーンの受信時刻の平均を取ったり、最初と最後の受信時刻のみを使用するなどして、基準時刻を計算し、そこから時間パラメタを算出してもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、無線基地局200は、指向性アンテナの放射方向を、所定の複数の方向に順次変動させた後に、その順序とは真逆の順序で変動させてサーチトーンを送信し、通信ノード300は、無線基地局200から受信した2回のサーチトーンの受信間隔に関する情報を無線基地局200に送信する。これにより、無線基地局200は、放射方向の変動と受信間隔に関する情報とから、通信ノード300の方向を検出することができる。すなわち、無線基地局200が通信ノード300の方向を検出することにより通信が開始する通信システム100において、指向性電波を用いた簡単な処理により通信ノード300の方向を検出することができるため、通信可能圏の拡大と、通信ノード300の方向の迅速な検出とを両立させることができる。
なお、本実施の形態では、放射方向の角速度が一定の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、基準時刻に対して時間軸上で対称であれば良い。この場合には、無線基地局は、例えば、時間パラメタに対応する区間で角速度を積分することにより、通信ノードの基準方向からの角度を求めることができる。
また、本実施の形態では、無線基地局および通信ノードに本発明を適用した例について説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、無線通信装置が無線通信端末の方向を検出する無線通信システムで使用される、各種の無線通信装置地および無線通信端末に適用することができる。
また、本実施の形態では、指向性アンテナの放射方向を被覆パスで往復させる例について説明したが、指向性アンテナの放射方向の変動のさせ方は、これに限定されるものではない。例えば、それぞれ高い指向性を有する複数のセクタアンテナを配置し、これらのセクタアンテナを順次切り替えてサーチトーンを送信した後に、その順序とは真逆の順序でセクタアンテナを切り替えてサーチトーンを送信するようにしてもよい。