上記のような集塵装置の運転を継続して行うと、集塵部の電極の表面に塵埃が徐々に堆積していく。特に、各電極の上流側端部の近傍を流れる空気は、比較的大きな粒径の塵埃を含んでいる。従って、集塵電極の上流側端部には、比較的大径の塵埃が誘引されて付着していくので、塵埃の肥大化を招き易い。
以上のようにして、各電極の上流側端部に塵埃が堆積すると、集塵電極と電界形成用電極との間での漏れ電流が流れ易くなる。特に、集塵部の雰囲気が高湿度状態となると、この漏れ電流が大きくなってしまう。ここで、特許文献1に開示のように集塵部の電極の少なくとも一方を比較的抵抗の大きな導電性樹脂材料で構成すると、上記の漏れ電流に起因する樹脂材料での電圧降下が大きくなり、その表面電位も低下してしまう。これにより、両者の電極の間の電位差が低下し、集塵部の集塵効率が低下してしまうという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、集塵部の集塵性能を長期間に亘って維持できる集塵装置を提案することである。
第1の発明は、被処理空気中の塵埃を帯電させる荷電部(31)と、第1電極(41)と第2電極(51)とを有して該第1電極(41)と第2電極(51)との間に上記荷電部(31)で帯電された塵埃を捕集する電界を形成する集塵部(40)とを備え、上記第1電極(41)と第2電極(51)とは、互いに交互に配列される複数の電極部(71,72,81,82)をそれぞれ有し、上記第1電極(41)と上記第2電極(51)との少なくとも一方が導電性樹脂で構成されている集塵装置を対象とする。そして、この集塵装置は、上記第1電極(41)の複数の電極部(71,81)は、第1電極部(81)と、該第1電極部(81)よりも空気流れの上流側への突出長が大きく形成される第1突出電極部(71)とで構成され、上記第2電極(51)の複数の電極部(72,82)は、第2電極部(82)と、該第2電極部(82)よりも空気流れの上流側への突出長が大きく形成される第2突出電極部(72)とで構成され、上記第1電極(41)及び第2電極(51)の各電極部(71,72,81,82)は、上記第1突出電極部(71)及び第2突出電極部(72)の上流部が互いに対向し、且つ該両者の突出電極部(71,72)の下流部の間に第1電極部(81)と第2電極部(82)とが1組以上設けられるように配列されていることを特徴とする。
第1の発明の集塵装置では、まず、被処理空気が荷電部(31)を通過する。荷電部(31)では、被処理空気中の塵埃が帯電される。帯電された塵埃を含む被処理空気は、集塵部(40)の近傍を流れる。
集塵部(40)の上流側では、第1突出電極部(71)の上流部と第2突出電極部(72)の上流部との間で電界が形成されている。ここで、両者の突出電極部(71,72)の間の距離は、集塵部(40)の下流側に位置する第1電極部(81)と第2電極部(82)との間の距離よりも広くなる。このため、両突出電極部(71,72)の上流部の間の電界強度が比較的弱くなっている。従って、両突出電極部(71,72)の上流部の表面では、比較的大径の塵埃が多量に捕捉されてしまうことが抑制される。
集塵部(40)の下流側では、第1電極(41)及び第2電極(51)の複数の電極部(81,82)が交互に配列されている。つまり、例えば第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間に、1組の第1電極部(81)と第2電極部(82)とが設けられる場合には、第1突出電極部(71)、第2電極部(82)、第1電極部(81)、第2突出電極部(72)という順で各電極部(71,72,81,82)が配列されている。これにより、集塵部(40)の下流側では、各電極部(71,72,81,82)の間の距離は、第1突出電極部(71)の上流部と第2突出電極部(72)の上流部との間の距離よりも短くなっている。このため、集塵部(40)の下流側においては、電界強度が比較的大きくなる。従って、集塵部(40)の下流側では、比較的小径の塵埃であっても各電極部(71,72,81,82)の表面に充分に捕捉される。
第2の発明は、第1の発明において、上記第1電極(41)及び第2電極(51)の各電極部(71,72,81,82)は、上記両者の突出電極部(71,72)の下流部の間に第1電極部(81)と第2電極部(82)とが1組だけ設けられるように配列されていることを特徴とする。
第2の発明では、突出電極部(71,72)の下流部の間には、第1と第2の電極部(81,82)が一組だけしか設けられない。これにより、例えば両者の突出電極部(71,72)の下流部の間に、2組以上の第1電極部(81)と第2電極部(82)とを配列した場合と比較して、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間の距離が狭くなる。従って、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間の距離が広くなり過ぎることを防止でき、これにより両者の突出電極部(71,72)の間の電界強度が弱くなり過ぎるのを防止できる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記第1電極(41)は、空気が流れる複数の通気孔(46)が形成される格子状に形成されると共に該第1電極(41)の複数の電極部(71,81)が支持される基台部(42)を有し、上記第2電極(51)は、空気が流れる複数の通気孔(56)が形成される格子状に形成されると共に該第2電極(51)の複数の電極部(72,82)が支持される基台部(52)を有し、上記集塵部(40)では、上記第1電極(41)の基台部(42)の通気孔(46)に第2電極(51)の複数の電極部(72,82)が挿通され、且つ上記第2電極(51)の基台部(52)の通気孔(56)に第1電極(41)の複数の電極部(71,81)が挿通されることを特徴とする。
第3の発明では、第1電極(41)と第2電極(51)とにそれぞれ格子状の基台部(42,52)が設けられる。そして、第1電極(41)の電極部(71,81)が第2電極(51)の基台部(52)の通気孔(56)に挿通され、第2電極(51)の電極部(72,82)が第1電極(41)の基台部(42)の通気孔(46)に挿通される。これにより、第1電極(41)の電極部(71,81)と第2電極(51)の通気孔(56)の内壁との間に、放射状の電界を形成できる。同様に、第2電極(51)の電極部(72,82)と第1電極(41)の通気孔(46)の内壁との間にも放射状の電界を形成できる。その結果、集塵部(40)では、被処理空気中の塵埃を効率良く捕集することができる。
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記第1電極(41)では、上記第1電極部(81)と上記第1突出電極部(71)との空気流れ方向の長さが等しくなっており、且つ第1突出電極部(71)が第1電極部(81)よりも空気流れの上流側寄りに配置されていることを特徴とする。
第4の発明では、第1電極(41)側において、第1電極部(81)と第1突出電極部(71)との空気流れ方向の長さが等しくなる。これにより、第1電極部(81)と第1突出電極部(71)とを同じ製法によって製造できる。第1突出電極部(71)は、第1電極部(81)よりも空気流れの上流側寄りに配置される。その結果、第1突出電極部(71)における空気流れの上流側の突出長は、第1電極部(81)よりも大きくなる。
本発明の集塵部(40)では、空気流れの上流側に突出長が大きくなる第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)とを設け、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)の各下流部の間に第1電極部(81)と第2電極部(82)とを設けるようにしている。これにより、第1突出電極部(71)の上流部と第2突出電極部(72)の上流部との間には、比較的弱い電界を形成でき、且つ第1突出電極部(71)の下流部と第2突出電極部(72)の下流部との間に比較的強い電界を形成することができる。このため、集塵部(40)の上流側では、比較的大径の塵埃が電極表面に多量に付着してしまうことを防止できるので、この部位に付着した塵埃が肥大化してしまうのを回避できる。その結果、両電極(41,51)間での漏れ電流を抑制できるので、集塵部(40)の集塵性能を長期に亘って維持することができる。また、集塵部(40)の下流側では、比較的小径の塵埃を電極(41,51)の表面に積極的に捕捉できるので、集塵部(40)の性能を充分に発揮させることができる。
また、第2の発明によれば、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間に、第1電極部(81)と第2電極部(82)とを1組だけ配列しているので、第1突出電極部(71)の上流部と第2突出電極部(72)の上流部との間の距離が広くなり過ぎてしまうのを防止できる。これにより、集塵部(40)の上流側において、集塵性能が低下し過ぎてしまうのを回避できる。
第3の発明の集塵部(40)では、格子状の基台部(42,52)の通気孔(46,56)の内壁と電極部(71,72,81,82)との間に放射状の電界を形成しているので、被処理空気中の塵埃を効率良く電極(41,51)の表面に捕捉することができる。
第4の発明では、第1突出電極部(71)と第1電極部(81)との空気流れ方向の長さを同じとしているため、これらの電極(71,81)を同一の金型等で製作でき、製造コストを低減できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
実施形態の集塵装置(30)は、室内の床面等に設置される室内置き式の空気清浄機(10)に搭載されている。この空気清浄機(10)は、室内空気を浄化し、浄化した空気を室内へ供給する。
図1に示すように、空気清浄機(10)は、室内に設置されるケーシング(11)を備えている。ケーシング(11)は、前後に扁平な中空の直方体状に形成されている。ケーシング(11)の一方の側面には、室内空間に臨むように吸込口(12)が形成されている。ケーシング(11)の他方の側面には、室内空間に臨むように給気口(13)が形成されている。
ケーシング(11)の内部には、吸込口(12)から給気口(13)に向かって、被処理空気が流れる空気通路(20)が形成されている。空気通路(20)には、被処理空気を浄化するための空気浄化手段として、プレフィルタ(21)とイオン化部(31)と集塵部(40)と放電部(22)と触媒フィルタ部(23)とが、上流側から下流側に向かって順に配置されている。また、これらの空気浄化手段の下流側には、室内へ空気を供給するための給気ファン(24)が設置されている。上記イオン化部(31)と集塵部(40)とは、塵埃を除去するための集塵ユニット(集塵装置(30))を構成している。
プレフィルタ(21)は、被処理空気中の比較的大きな塵埃を物理的に捕集する、前処理用のフィルタ部材を構成している。
イオン化部(31)は、被処理空気中の塵埃を帯電させる荷電部を構成している。図2(A)及び(B)に示すように、イオン化部(31)は、棒状電極(32)と鋸歯状電極(33)と電源(34)とを有している。電源(34)は、直流の高圧電源である。棒状電極(32)は電源(34)のプラス側と接続し、鋸歯状電極(33)は電源(34)のマイナス側と接続している。また、電源(34)のプラス側は接地されている。これにより、棒状電極(32)がゼロ電位となり、鋸歯状電極(33)がマイナス電位となっている。つまり、イオン化部(31)では、鋸歯状電極(33)の電位が棒状電極(32)の電位がよりも低くなっている。
空気通路(20)には、複数の上記棒状電極(32)が互いに平行に配列されている。棒状電極(32)は、空気流れと直交するように水平に延びている。本実施形態の棒状電極(32)の横断面は略円形状をしているが、これに限らず例えば略矩形状であっても良い。また、棒状電極(32)は、少なくとも1本あれば良いが、2本以上であることが好ましい。また、鉛直方向に延びる棒状電極(32)を左右方向(水平方向)に配列しても良い。
鋸歯状電極(33)は、基板部(33a)と針状電極(33b)とで構成されている。基板部(33a)は、複数の棒状電極(32)の間の中間位置に配置され、棒状電極(32)と平行となるように延びている。つまり、基板部(33a)は、空気流れと直交するように水平に延びている。また、本実施形態の基板部(33a)は、平板状に形成されて、その厚さ方向が空気流れの方向と略一致する姿勢となっている。基板部(33a)の幅方向の両端には、複数の上記針状電極(33b)がそれぞれ形成されている。本実施形態の針状電極(33b)は、先鋭な針状ないし突起状に形成されて、各棒状電極(32)に向かって突出している。これにより、上記棒状電極(32)は、針状電極(33b)に対向する対向電極を構成している。
図3に示すように、集塵部(40)は、集塵電極(41)と高圧電極(51)と、これらの電極(41,51)に電圧を印加する電源(S)とを備えている。集塵電極(41)と高圧電極(51)とは、一方が第1電極を構成して他方が第2電極を構成している。本実施形態では、集塵電極(41)がステンレス等の金属材料によって構成され、高圧電極(51)が導電性の樹脂材料で構成されている。なお、高圧電極(51)は、微導電性の樹脂であることが好ましく、樹脂の体積抵抗率が105Ωcm以上で1010Ωcm未満であることが好ましい。
電源(S)は、高圧の直流電源を構成している。電源(S)のプラス側はアースに接続されて接地されている。電源(S)のプラス側(即ち、アース側)に集塵電極(41)が接続され、電源(S)のマイナス側に高圧電極(51)が接続されている。電源(S)から両者の電極(41,51)に電圧が印加されると、両電極(41,51)の間に電界が形成される。これにより、本実施形態では、集塵電極(41)の表面に、マイナスに帯電した塵埃を捕集するための集塵面が形成される。つまり、集塵電極(41)は、塵埃を電気的に誘引するための集塵側の電極を構成している。一方、高圧電極(51)は、両電極(41,51)の間で電界を形成するための電界形成用の電極であり、塵埃が電気的に誘引されない非集塵側の電極を構成している。
図3〜図7に示すように、集塵電極(41)は、格子状の基台部(42)と、該基台部(42)の端部から下流側へ突出する突起板(43)とを有している。集塵電極(41)の基台部(42)には、互いに直交(交差)する複数の縦壁部(44)と複数の横壁部(45)とが形成されている。複数の縦壁部(44)は、互いに平行となりながら等間隔で水平方向に配列されている。
複数の横壁部(45)は、互いに平行となりながら等間隔で鉛直方向に配列されている。複数の横壁部(45)は、複数の第1横壁部(45a)と複数の第2横壁部(45b)とで構成されている。第1横壁部(45a)は、空気流れ方向の長さが上記縦壁部(44)と概ね等しくなっている。これに対し、第2横壁部(45b)は、空気流れ方向の長さが縦壁部(44)よりも短くなっており、基台部(42)の下流側寄りの部位に形成されている。そして、集塵電極(41)の基台部(42)では、隣接する2枚の第1横壁部(45a,45a)の間に2枚の第2横壁部(45b,45b)が介在するように各横壁部(45)が配列されている。
複数の突起板(43)は、各横壁部(45)の下流端部と連接している。つまり、突起板(43)は、第1横壁部(45a)と第2横壁部(45b)との双方に連接している。また、基台部(42)では、縦壁部(44)と横壁部(45)との間に被処理空気が流通可能な通気孔(46)が形成されている。具体的には、集塵電極(41)の基台部(42)の上流側寄りには、縦壁部(44)と第2横壁部(45b)との間に上流側通気孔(46a)が形成されている(図5を参照)。また、基台部(42)の下流側寄りには、縦壁部(44)と第1横壁部(45a)と第2横壁部(45b)との間に下流側通気孔(46b)が形成されている(図6を参照)。上流側通気孔(46a)の縦方向の開口高さは、下流側通気孔(46b)の縦方向の開口高さよりも大きくなっている。
高圧電極(51)は、格子状の基台部(52)と、該基台部(52)の端部から上流側へ突出する突起板(53)とを有している。高圧電極(51)の基台部(52)には、互いに直交する複数の縦壁部(54)と複数の横壁部(55)とが形成されている。複数の縦壁部(54)は、互いに平行となりながら等間隔で水平方向に配列されている。また、複数の横壁部(55)は、互いに平行となりながら等間隔で鉛直方向に配列されている。高圧電極(51)の基台部(52)には、縦壁部(54)と横壁部(55)との間に通気孔(56)が形成されている。
複数の突起板(53)は、各横壁部(55)の上流端部と連接している。高圧電極(51)の複数の突起板(53)は、第1突起板(53a)と第2突起板(53b)とで構成されている。第1突起板(53a)は、第2突起板(53b)よりも空気流れ方向に長くなっている。そして、高圧電極(51)では、隣接する2枚の第1突起板(53a)の間に2枚の第2突起板(53b)が介在するように各突起板(53)が配列されている。
集塵部(40)では、高圧電極(51)の基台部(52)の各通気孔(56)内に、集塵電極(41)の各突起板(43)が挿通し、且つ集塵電極(41)の基台部(42)の各通気孔(46)内に、高圧電極(51)の突起板(53)が挿通するように、両者の電極(41,51)が組み合わされる(図4を参照)。
集塵電極(41)と高圧電極(51)との組み合わせ状態では、高圧電極(51)の第1突起板(53a)が、上流側通気孔(46a)内まで挿通される(図5を参照)。これにより、集塵電極(41)の基台部(42)の上流側寄りの部位では、第1突起板(53a)の外周面と上流側通気孔(46a)の内周面との間に塵埃を捕集するための電界が形成される。また、集塵電極(41)と高圧電極(51)との組み合わせ状態では、高圧電極(51)の第1突起板(53a)及び第2突起板(53b)が、下流側通気孔(46b)まで挿通される(図6を参照)。これにより、集塵電極(41)の基台部(42)の下流側寄りの部位では、第1突起板(53a)の外周面や第2突起板(53b)の外周面と下流側通気孔(46b)の内周面との間に塵埃を捕集するための電界が形成される。更に、集塵電極(41)と高圧電極(51)との組み合わせ状態では、集塵電極(41)の突起板(43)が、通気孔(56)内まで挿通される(図7を参照)。これにより、高圧電極(51)の基台部(52)では、突起板(43)の外周面と通気孔(56)の内周面との間に塵埃を捕集するための電界が形成される。
以上のような構成の集塵電極(41)では、複数の第1横壁部(45a)及び突起板(43)が、複数の第1突出電極部(71)を構成しており、複数の第2横壁部(45b)及び突起板(43)が、複数の第1電極部(81)を構成している。即ち、第1突出電極部(71)は、第1電極部(81)よりも空気流れの上流側への突出長が大きく形成されている。また、高圧電極(51)では、複数の第1突起板(53a)及び横壁部(55)が、複数の第2突出電極部(72)を構成しており、複数の第2突起板(53b)及び横壁部(55)が、複数の第2電極部(82)を構成している。即ち、第2突出電極部(72)は、第2電極部(82)よりも空気流れの上流側への突出長が大きく形成されている。
そして、本実施形態の集塵部(40)では、第1突出電極部(71)の上流部と第2突出電極部(72)の上流部とが互いに対向し、且つ両者の突出電極部(71,72)の下流部の間に第1電極部(81)と第2電極部(82)とが1組だけ設けられるように、各電極部(71,72,81,82)が配列されている。
放電部(22)は、ストリーマ放電を生起することで低温プラズマを生成するように構成されている。放電部(22)は、高圧の直流電圧が印加される一対の電極を有している。例えば放電部(22)では、線状ないし棒状の放電電極が、平板状の対向電極と実質的に平行となるように配置されている。放電部(22)では、放電電極の先端から対向電極に向かってストリーマ放電が進展し、低温プラズマが生成される。これにより、放電部(22)では、臭気成分と反応性の高い活性種(電子、イオン、オゾン、ラジカルなど)が生成される。
触媒フィルタ部(23)は、複数の通気孔が形成されたメッシュ状、ハニカム状、格子状等の基材の表面に、触媒や吸着剤等の機能材料が担持されて構成されている。触媒としては、マンガン系触媒や貴金属系触媒等が用いられ、吸着剤としてはゼオライトや活性炭等が用いられる。触媒フィルタ部(23)は、臭気成分を捕捉する脱臭部を構成している。つまり、触媒フィルタ部(23)では、被処理空気中の臭気成分が吸着/分解されて除去される。触媒フィルタ部(23)に吸着された臭気成分は、放電部(22)で発生した活性種によって徐々に分解されていく。
−運転動作−
次に、空気清浄機(10)の運転動作について説明する。給気ファン(24)が運転されると、図1に示すように、室内空気が吸込口(12)を通じてケーシング(11)内の空気通路(20)へ導入される。
空気通路(20)を流れる被処理空気は、プレフィルタ(21)を通過する。プレフィルタ(21)では、被処理空気中の比較的大きな塵埃が物理的に捕捉される。次に、被処理空気は、イオン化部(31)を流れる。ここで、イオン化部(31)では、棒状電極(32)と鋸歯状電極(33)との間に直流電圧が印加されている。これにより、イオン化部(31)では、針状電極(33b)が棒状電極(32)よりも低電位となりながら、これらの電極(33b,32)の間に電界が形成される。その結果、針状電極(33b)の先端から棒状電極(32)へ向かって電子やマイナスイオン等が移動し、これらの電子等が棒状電極(32)へ衝突する。被処理空気が、これらの電極(33b,32)の間を流れると、被処理空気中の塵埃がマイナスに帯電される。
集塵部(40)では、電源(S)から両電極(41,51)に電圧が印加されており、両電極(41,51)の間で電界が形成されている。図3に示すように、集塵部(40)では、まず被処理空気が上流側通気孔(46a)を流れる。この上流側通気孔(46a)では、第1突起板(53a)と上流側通気孔(46a)の内壁(第1横壁部(45a)や縦壁部(44))との間に電界が形成されている。ここで、上流側通気孔(46a)では、第1突起板(53a)と第1横壁部(45a)との間の距離が比較的広いため、第1突起板(53a)と第1横壁部(45a)との間に形成される電界強度は、比較的弱くなる。従って、上流側通気孔(46a)では、被処理空気中に含まれる大径の塵埃が、第1横壁部(45a)に多量に付着してしまうことが防止される。
上流側通気孔(46a)を通過した被処理空気は、次いで基台部(42)の下流側通気孔(46b)を流れる。下流側通気孔(46b)では、第1突起板(53a)と下流側通気孔(46b)の内壁(第2横壁部(45b)や縦壁部(44))との間や、第2突起板(53b)と下流側通気孔(46b)の内壁との間に電界が形成されている。ここで、下流側通気孔(46b)では、例えば第2突起板(53b)と第2横壁部(45b)との間の距離や、第1突起板(53a)と第2横壁部(45b)との間の距離が、上記第1突起板(53a)と第1横壁部(45a)との間の距離よりも狭くなっている(概ね1/3の距離になっている)。このため、第1突起板(53a)と第2横壁部(45b)との間や、第2突起板(53b)と第2横壁部(45b)との間に形成される電解強度は、比較的強くなる。従って、下流側通気孔(46b)では、上記上流側通気孔(46a)と比較すると、被処理空気中の比較的小さな塵埃が効率良く除去される。即ち、下流側通気孔(46b)では、比較的小径の塵埃が第1横壁部(45a)や第2横壁部(45b)の表面に積極的に付着していく。
下流側通気孔(46b)を通過した被処理空気は、高圧電極(51)の基台部(52)の通気孔(56)を流れる。通気孔(56)では、突起板(43)と通気孔(56)の内壁(縦壁部(54)や横壁部(55))との間で電界が形成されている。通気孔(56)では、突起板(43)と横壁部(55)との間の距離が、上記第1突起板(53a)と第1横壁部(45a)との間の距離よりも狭くなっている(概ね1/3の距離になっている)。このため、突起板(43)と横壁部(55)との間に形成される電界強度は、比較的強くなる。従って、通気孔(56)では、上記上流側通気孔(46a)と比較すると、被処理空気中の比較的小さな塵埃が効率良く除去される。即ち、通気孔(56)では、比較的小径の塵埃が突起板(43)の表面に積極的に付着していく。
集塵ユニット(30)を通過した空気は、放電部(22)の近傍を流れる。放電部(22)では、放電電極と対向電極との間でストリーマ放電が行われており、空気中で活性種が生成されている。この活性種が被処理空気中の臭気成分と接触することで、臭気成分が酸化分解されて除去される。また、被処理空気が触媒フィルタ部(23)を通過すると、被処理空気中の臭気成分が触媒フィルタ部(23)に吸着されて除去される。触媒フィルタ部(23)に吸着された臭気成分は、放電部(22)で生成された活性種によって徐々に分解されていく。これにより、触媒フィルタ部(23)における臭気成分の捕捉能力(吸着能力)が回復することになる。
以上のようにして、比較的大径の塵埃、及び比較的小径の塵埃が除去されると共に、臭気成分が除去された被処理空気は、給気口(13)を通じてケーシング(11)外の室内へ供給される。その結果、室内には清浄な空気が供給されるので、室内の清浄化が図られる。
−実施形態の効果−
上記実施形態の集塵部(40)では、空気流れの上流側に突出長が大きくなる第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)とを設け、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)の各下流部の間に第1電極部(81)と第2電極部(82)とを1組設けるようにしている。これにより、第1突出電極部(71)の上流部と第2突出電極部(72)の上流部との間には、比較的弱い電界を形成でき、且つ第1突出電極部(71)の下流部と第2突出電極部(72)の下流部との間には、各電極部(71,81,82,72)の間に比較的強い電界を形成することができる。このため、集塵部(40)の上流側(上流側通気孔(46a)の内部)では、比較的大径の塵埃が電極表面に多量に付着してしまうことを防止できるので、この部位に付着した塵埃が肥大化してしまうのを回避できる。その結果、集塵電極(41)と高圧電極(51)との間での漏れ電流を抑制できるので、集塵部(40)の集塵性能を長期に亘って維持できる。また、集塵部(40)の下流側(下流側通気孔(46b)や通気孔(56)の内部)では、比較的小径の塵埃を電極表面に積極的に捕捉できるので、集塵部(40)の性能を充分に発揮させることができる。
また、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間に、第1電極部(81)と第2電極部(82)とを1組だけ配列しているので、第1突出電極部(71)の上流部と第2突出電極部(72)の上流部との間の距離が広くなり過ぎてしまうのを防止できる。即ち、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間に、例えば第1と第2の電極部(81,82)を2組設けると、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間の電極間距離は、第1と第2の電極部(81,82)との間の電極間距離の約6倍となってしまう。そうなると、集塵部(40)では、上流側通気孔(46a)における集塵性能が低くなり過ぎてしまい、集塵ユニット(30)の全体としての集塵性能がかえって低下してしまう虞がある。これに対し、本実施形態では、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間に、第1電極部(81)と第2電極部(82)とを1組だけ設けているため、上流側通気孔(46a)内の集塵性能が低くなり過ぎてしまうことも回避できる。
−実施形態の変形例−
上記実施形態においては、以下のような変形例としても良い。
〈変形例1〉
図8に示すように、第1突出電極部(71)と第1電極部(81)とを空気流れ方向に同じ長さとし、且つ第2突出電極部(72)と第2電極部(82)とを空気流れ方向に同じ長さとしても良い。この変形例1では、第1突出電極部(71)が、第1電極部(81)よりも上流側寄りに配列されることで、第1突出電極部(71)の突出長が上流側に向かって大きくなっている。同様に、第2突出電極部(72)が、第2電極部(82)よりも上流側寄りに配列されることで、第2突出電極部(72)の突出長が上流側に向かって大きくなっている。
変形例1では、第1電極部(81)の下流端部が、通気孔(56)を貫通して基台部(52)の下流側まで延出している。また、第2電極部(82)の下流端部も、基台部(52)の下流側まで延出している。そして、第1電極部(81)及び第2電極部(82)の両者の延出部(81a,82a)においても、塵埃を捕捉するための電界が形成される。
変形例1では、第1突出電極部(71)と第1電極部(81)とが長手方向に概ね同じ長さとなっており、且つ第2突出電極部(72)と第2電極部(82)とが長手方向に概ね同じ長さとなっている。このため、これらの電極(71,72,81,82)を同一の金型等によって製造することで、製造コストの低減を図ることができる。
また、変形例1では、高圧電極(51)の下流側において、対となる延出部(81a,82a)の間で被処理空気中の塵埃を捕捉できる。このため、変形例1の集塵部(40)では、比較的小径の塵埃を確実に除去することができる。
〈変形例2〉
図9に示す変形例2では、上記変形例1において、第1突出電極部(71)の下流端部が、基台部(52)よりも更に下流側まで延出している。これにより、変形例2では、第1突出電極部(71)の延出部(71a)が、第2電極部(82)の延出部(82a)と対向している。従って、この変形例2では、これらの延出部(71a,82a)の間においても、塵埃を捕捉すするための電界を形成できるため、比較的小径の塵埃を一層確実に除去することができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記各実施形態において、上述の如く第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間の距離が広くなりすぎると、集塵ユニット(30)の集塵性能がかえって低下してしまう虞がある。そこで、例えば図9や図10に示すように、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間の距離を狭くする構成としても良い。
具体的には、図9に示す例では、第1突出電極部(71)における上流側端部に拡大部(73)を形成している。拡大部(73)は、空気流れの上流側に向かうに連れて第1突出電極部(71)の板厚を拡大させる、縦断面が略台形状をしている。図9の例では、このように拡大部(73)を形成することで、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間の距離が若干狭くなる。その結果、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間での集塵性能が低下し過ぎてしまうことを回避できる。なお、この拡大部(73)を第2突出電極部(72)にのみ形成しても良いし、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との双方に形成しても良い。
また、図10に示す例では、第1突出電極部(71)の上流端部に、下流側へ向かって折り返し部(74)が形成されている。この折り返し部(74)によって第1突出電極部(71)の実質的な板厚が拡大され、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間の距離が若干狭くなる。その結果、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との間での集塵性能が低下し過ぎてしまうことを回避できる。なお、この折り返し部(74)を第2突出電極部(72)にのみ形成しても良いし、第1突出電極部(71)と第2突出電極部(72)との双方に形成しても良い。
また、上記各実施形態では、集塵電極(41)をアースと接続してゼロ電位とし、高圧電極(51)をマイナス側に接続しているが、これを逆としても良いし、いずれか一方をプラス側に接続してもいい。要するに、集塵電極(41)と高圧電極(51)のいずれか一方が高電位側となり、他方が低電位側となれば良い。また、集塵電極(41)と高圧電極(51)とは、いずれか一方又は両方が導電性樹脂材料であれば良い。
また、上記実施形態では、集塵電極(41)や高圧電極(51)を格子状のいわゆる集塵セルで構成しているが、集塵電極(41)や高圧電極(51)を交互に配列される平板電極(電極部)のみで構成しても良い。
また、各実施形態では、室内置き式の空気清浄機(10)に集塵ユニット(30)を適用しているが、天井裏置き式の空気清浄機や、室内の空調を行う空気調和装置等に集塵ユニット(30)を適用しても良い。