JP5145531B2 - ポリ乳酸組成物及びポリ乳酸成形体 - Google Patents

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本発明は、ヒマシ硬化油系反応生成物をポリ乳酸用改質剤として含有するポリ乳酸組成物、及びこの組成物を用いてなるポリ乳酸成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、ヒマシ硬化油にラクタイド又はα−ヒドロキシ酸の鎖状オリゴマーを反応させてなるヒマシ硬化油系反応生成物を含有し、ポリ乳酸の改質、特に可塑化に用いられる改質剤とポリ乳酸とを含有するポリ乳酸組成物、及びこの組成物を用いてなり、十分な生分解性を有するフィルム等のポリ乳酸成形体に関する。
近年、石油資源由来のプラスチックが広範な用途に使用されているが、これらの材料は焼却されることにより、大気中の二酸化炭素量を増加させ、地球温暖化を引き起こすおそれがあるとともに、埋立等すると環境中では分解、腐食されないため、土壌中に残留し、埋立地の不足を引き起こすことが懸念されている。
また、汎用樹脂の中のポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンのような塩素を含むプラスチックやハロゲン元素を含むプラスチックの改質剤は、焼却時にダイオキシン等の有害物質を生成させてしまうことが知られている。そのため、リサイクルも種々検討されているが、コスト等の面で課題も多く、早急な普及には至っていないのが実情である。
上記のような状況に鑑み、化石資源に依存しないバイオマスから得られる材料を積極的に使用していくことにより、地球環境に負荷を与えないようにすることが必要になってきている。すなわち、植物材料、動物材料のように数年から数十年のサイクルで生産、再生産を繰り返すことができるバイオマスを出発物質として作られ、使用後、自然環境において最終的に腐食、分解されていく材料の開発である。
このような材料は、最近では環境循環型材料と呼ばれており、地球環境中の総二酸化炭素量を増大させるのではなく、炭素の収支バランスを保つことができる環境低負荷のものである。知られているものとして、木質バイオマスから得られるセルロース、リグニン、甲殻類のカニなどから得られるキチン、キトサン、トウモロコシ等の植物資源から作られるポリ乳酸等がある。これらの中で特にポリ乳酸は、熱可塑性のプラスチックであり、焼却の際の発熱量も汎用樹脂のポリエチレン等に比べて少なく、焼却炉を損傷させることが少なく、これらの汎用樹脂の代替材料として期待されている。
ポリ乳酸は植物バイオマスに含まれるデンプン等を微生物発酵して乳酸を生合成により生産し、それを重合して作られる物質で、以前は生分解性プラスチックとして分類されていた。しかし、最近、分子量が数万以上のものは、微生物等の作用による生分解は遅く、加水分解作用による分解が優先となることが知られるようになり、環境循環型材料として扱われるようになった。
ポリ乳酸はガラス転移点が約60℃、融点が約170℃で、熱的性質はポリスチレンに類似であり、室温においてガラス状態にある透明性に優れた硬質樹脂である。生分解が遅いこと、耐衝撃性に欠けること、柔軟性に乏しいこと等の短所があるため、農業用マルチフィルム、一般包装、食品包装等の生活環境に類似した環境での確実な生分解性が求められる分野への応用範囲は限られており、反面、電機製品の筐体等や自動車の内装部品等の剛性が求められる分野での研究開発が進んでいる。
一方、ポリ乳酸は高融点、高透明性等の性質を持っているが、プラスチックは一般に種々の需要があることに対応して、ポリ乳酸の物性を改良して応用範囲を拡げようとする研究開発が行われてきた。例えば、ポリ乳酸に既存の石油系由来のプラスチックをブレンドする方法(例えば、ポリ乳酸とポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸とナイロン等)がある。また、ポリ乳酸と石油由来の生分解する性質をもつプラスチックとをブレンドする方法(例えば、ポリ乳酸とポリカプロラクトン、ポリ乳酸とポリビニルアルコール等)、ポリ乳酸にフタル酸ジエステル等の低分子量の可塑剤を配合する方法(例えば、特許文献1参照)、ポリ乳酸骨格に共重合等により他の成分を導入する方法(例えば、特許文献2参照)、及びポリ乳酸を延伸配向させる方法、等が挙げられる。
特開平4−335060号公報 特開2005−113001号公報
上記の方法はポリ乳酸の柔軟性及び耐衝撃性等を向上させるために行われるが、ポリ乳酸と石油系の非生分解性樹脂とのブレンドでは樹脂が一部分解せず、環境中に残留してしまう問題があること、石油系の生分解性樹脂とのブレンドではブレンドする材料が石油依存であることから、結局、二酸化炭素増加などの環境負荷が大きいこと、透明な樹脂とならないこと等の問題がある。また、特許文献1に記載の方法では、可塑剤が低分子量であることからブリードアウトする傾向があり、経時とともに柔軟性が低下することがある。更に、特許文献2に記載の方法では、それぞれの成分の反応性の違いにより、分子量の制御が困難で、実用的な柔軟性と強度とのバランスをとるのが難しいことがある。このように、ポリ乳酸の環境調和型材料としての特長や透明性を保持したまま、柔軟性及び生分解性を向上させる改良が必要である。
本発明は上記の状況を鑑みてなされたものであり、環境循環型の植物バイオマス由来であるヒマシ硬化油の分子内のヒドロキシル基に2〜24個の乳酸分子がエステル結合することによって生成するヒマシ硬化油系反応生成物を含有し、ポリ乳酸の改質、特に可塑化に用いられる改質剤とポリ乳酸とを含有するポリ乳酸組成物、及びこの組成物を用いてなり、ポリ乳酸が本来有する透明性が損なわれることなく、且つ実用的な引張伸び、及び改良された生分解性等を有するフィルム等のポリ乳酸成形体を提供することを課題とする。
ヒマシ硬化油とラクタイド等とを反応させ、ヒマシ硬化油が有するヒドロキシル基にラクタイド等を付加させることにより、特にヒマシ硬化油1分子に4〜32個のラクタイド(鎖状オリゴマーのときは相当量のα−ヒドロキシ酸単位を有するもの)を付加させることにより、ポリ乳酸を可塑化するための改質剤として有用な反応生成物が得られることが分かった。この反応生成物は、柔軟性に乏しくフィルム等の用途への展開が容易ではないポリ乳酸の柔軟性を向上させ、例えば、フィルムに成形したときに、その伸び等を十分に向上させることができ、且つ生分解性を向上させ得ることが分かった。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
本発明は以下のとおりである。
1.ポリ乳酸と、ポリ乳酸用改質剤としてヒマシ硬化油系反応生成物とを含有するポリ乳酸組成物であって、上記ヒマシ硬化油系反応生成物は、ヒマシ硬化油と、ラクタイド又はα−ヒドロキシ酸の鎖状オリゴマーとを反応させてなり、上記ポリ乳酸と、上記ヒマシ硬化油系反応生成物との合計を100質量%とした場合に、該ヒマシ硬化油系反応生成物の含有量は、該ヒマシ硬化油系反応生成物の重量平均分子量が1500〜3500であるときは13〜35質量%であり、該ヒマシ硬化油系反応生成物の重量平均分子量が3500を越え、5500までであるときは15〜37質量%であることを特徴とするポリ乳酸組成物。
2.上記反応に上記ラクタイドが用いられ、該ラクタイドは炭素数が2〜3個のα−ヒドロキシ酸の環状二量体である上記1.に記載のポリ乳酸組成物。
3.上記ヒマシ硬化油系反応生成物の含有量は、該ヒマシ硬化油系反応生成物の重量平均分子量が1500〜3500であるときは13〜27質量%である上記1.又は2.に記載のポリ乳酸組成物。
4.上記含有量が15〜25質量%である上記3.に記載のポリ乳酸組成物。
5.上記ヒマシ硬化油系反応生成物の含有量は、該ヒマシ硬化油系反応生成物の重量平均分子量が3500を越え、5500までであるときは23〜37質量%である上記1.又は2.に記載のポリ乳酸組成物。
6.上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸組成物を用いてなることを特徴とするポリ乳酸成形体。
7.フィルム又はシートの形態である上記.に記載のポリ乳酸成形体。
本発明のポリ乳酸組成物によれば、柔軟性が必要とされる成形体を製造することができ、且つこの成形体を生分解させることができる。
本発明のポリ乳酸成形体は、改質剤の可塑化作用により実用的な強度を有し、且つ生分解させることができる。
また、成形体がフィルム又はシートの形態である場合は、十分な伸び及び生分解性等を有するフィルム又はシートとすることができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]ヒマシ硬化油系反応生成物
本発明で用いられるヒマシ硬化油系反応生成物は、ヒマシ硬化油と、ラクタイド又はα−ヒドロキシ酸の鎖状オリゴマーとを反応させてなる。
上記「ヒマシ硬化油」は、ヒマシ油に水素添加することにより生成するものである。このヒマシ硬化油は、その1分子当たり約2.7個のヒドロキシル基を有しており、このヒドロキシル基に開環したラクタイド等が付加することで反応生成物が生成する。
上記「ラクタイド」は、α−ヒドロキシ酸の環状二量体である。このラクタイドとしては、炭素数が2〜3個のα−ヒドロキシ酸の環状二量体を用いることができる。すなわち、ラクタイドは、グリコール酸の環状二量体及び/又は乳酸の環状二量体である。ラクタイドの種類は特に限定されず、また、1種のみを用いてもよいし、2種を併用してもよい。
ラクタイドとしては炭素数が3のα−ヒドロキシ酸である乳酸の環状二量体が好ましい。乳酸の環状二量体としては、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクタイド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクタイド、D−乳酸とL−乳酸との環状二量体であるmeso−ラクタイド及びD−ラクタイドとL−ラクタイドとのラセミ混合物であるDL−ラクタイドが挙げられる。これらのラクタイドはいずれを用いてもよい。また、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ラクタイドとしては、L−ラクタイド及び/又はD−ラクタイドを用いることが好ましく、L−ラクタイドを用いることがより好ましい。
ヒマシ硬化油とラクタイドとの配合割合は特に限定されないが、ヒマシ硬化油とラクタイドとを1:4〜32、特に1:5〜25、更に1:6〜18のモル比で配合し、反応させることが好ましい。このモル比でヒマシ硬化油とラクタイドとを反応させた場合、ヒマシ硬化油が有するヒドロキシル基1個当たり平均で1.5〜11.9、特に1.8〜9.3個、更に2.2〜6.7個のラクタイドが付加し、ポリ乳酸を可塑化させる作用に優れた反応生成物とすることができる。
上記「鎖状オリゴマー」は、α−ヒドロキシ酸の重合体である。この鎖状オリゴマーとしては、炭素数が2〜3個のα−ヒドロキシ酸の鎖状オリゴマーを用いることができる。このオリゴマーの重合度は特に限定されないが、重合度が6〜14、特に8〜12のオリゴマーを用いることが好ましい。この鎖状オリゴマーとしては、乳酸の鎖状オリゴマー及びグリコール酸の鎖状オリゴマーが挙げられる。
この鎖状オリゴマーとしては、炭素数が3のα−ヒドロキシ酸である乳酸の鎖状オリゴマーが好ましい。乳酸にはL−乳酸、D−乳酸、及びDL−乳酸があるが、これらの乳酸はいずれを用いてもよい。また、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。乳酸としては、L−乳酸及び/又はD−乳酸を用いることが好ましく、L−乳酸を用いることがより好ましい。
ヒマシ硬化油と鎖状オリゴマーとの配合割合は特に限定されず、鎖状オリゴマーの重量平均分子量等により設定することができる。この配合割合は、ヒマシ硬化油が有するヒドロキシル基1個当たり平均で、上記のヒマシ硬化油とラクタイドとを反応させてなる場合と同数のα−ヒドロキシ酸単位が付加した反応生成物を生成させることができる配合割合とすることが好ましい。すなわち、鎖状オリゴマーの重量平均分子量をα−ヒドロキシ酸単位の式量で除した値をaとした場合に、ヒマシ硬化油と鎖状オリゴマーとを1:(8/a〜64/a)、特に1:(10/a〜50/a)、更に1:(12/a〜36/a)のモル比で配合し、反応させることが好ましい。このようにすれば、ポリ乳酸を可塑化させる作用に優れた反応生成物とすることができる。
尚、上記式量は、α−ヒドロキシ酸のヒドロキシル基の水素及びカルボキシル基が有するヒドロキシル基を除いた部分の式量であるとする。
反応生成物の後記の実施例における方法により測定した重量平均分子量は特に限定されない。この重量平均分子量は1500〜5500であればよく、1700〜4500、特に1800〜3500であることが好ましい。すなわち、1個のヒマシ硬化油分子に、このヒマシ硬化油が有するヒドロキシル基1個当たり平均で、1.5〜11.9個、特に1.8〜9.3個、更に2.2〜6.7個のラクタイド、又は3.0〜23.8個、特に3.6〜18.6個、更に4.4〜13.4個の乳酸単位又はグリコール酸単位が付加した反応生成物であることが好ましい。このような反応生成物であれば、ポリ乳酸を可塑化させる作用等により優れた反応生成物とすることができる。この分子量が大きいと、後記[6]のポリ乳酸組成物の透明性が良好であり、組成物から反応生成物がブリードアウトすることもない。一方、分子量が小さいと、ポリ乳酸組成物の柔軟性がより向上する。また、組成物の生分解性は分子量にかかわりなく同様に向上させることができる。従って、ポリ乳酸組成物に特に必要とされる特性を勘案しながら分子量を設定することが好ましい。
尚、反応生成物の重量平均分子量が過大であると、例えば、重量平均分子量が7000程度を越えると、引張強さは大きく低下しないものの、配合量によらず、伸びが低下し、又は顕著な向上はみられず、好ましくない。
[2]ヒマシ硬化油系反応生成物の製造方法
本発明で用いられるヒマシ硬化油系反応生成物の製造方法は特に限定されず、例えば、以下の方法により製造することができる。
ヒマシ硬化油とラクタイド又は鎖状オリゴマーとは、これらの各々を前記[1]に記載のモル比で使用し、触媒の存在下、70〜180℃で反応させて製造することができる。この反応温度は、80〜150℃、特に90〜120℃とすることが好ましい。また、この反応は上記の温度範囲で相対的に低温域で反応させ、その後、相対的に高温域で反応させる2段階の反応とすることもできる。更に、ラクタイド等の分解及び着色等を抑えるため、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気等の不活性雰囲気下に反応させることが好ましい。また、ヒマシ硬化油及びラクタイド等は反応前に乾燥させ、水分を除去しておくことが好ましい。反応時間も特に限定されないが、10分〜20時間、特に1〜20時間、更に12〜18時間とすることができる。
反応に用いる触媒は特に限定されず、例えば、エステル化触媒及び開環重合触媒等において一般に用いられている触媒を使用することができる。この触媒としては、(1)オクタン酸スズ、乳酸スズ、酒石酸スズ、ジカプリル酸スズ、ジラウリン酸スズ、ジパルミチン酸スズ、ジステアリン酸スズ、ジオレイン酸スズ、α−ナフトエ酸スズ、β−ナフトエ酸スズ、ジオクチル酸スズ等のスズ化合物、(2)ハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛等の亜鉛化合物、(3)テトライソプロポキシチタネート等のチタン化合物、(4)ジルコニウムイソプロポキシド等のジルコニウム化合物、(5)三酸化アンチモン等のアンチモン化合物(6)酸化ビスマス等のビスマス化合物、(7)酸化アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウム化合物、などが挙げられる。これらのうちでは、活性の高いスズ化合物が好ましい。触媒の使用量は、ヒマシ硬化油とラクタイド又は鎖状オリゴマーとの合計を100質量部とした場合に、0.1〜5質量部、特に0.5〜4質量部、更に1〜3質量部とすることが好ましい。
ヒマシ硬化油とラクタイド又は鎖状オリゴマーとを効率よく反応させるためには、ヒマシ硬化油とラクタイド等とを予めより均一に混合しておくことが好ましい。この混合の方法も特に限定されないが、例えば、反応容器にヒマシ硬化油とラクタイド等とを投入し、更に所要量の溶剤を投入し、加熱して昇温させ、攪拌することにより混合させることができる。攪拌時の温度は上記の反応時の温度と同程度とすることができる。また、溶媒は攪拌時の温度においてヒマシ硬化油とラクタイド等とを十分に溶解させることができる溶媒であればよく、例えば、トルエン、キシレン等を用いることができる。更に、反応時と同様に不活性雰囲気下に混合することが好ましい。混合時間も特に限定されないが、30分〜3時間、特に40分〜2時間とすることができる。この混合の後、混合溶液をそのまま反応溶液として使用し、上記の反応条件により反応させることで反応生成物を製造することができる。
反応終了後、反応液から反応生成物を回収する方法も特に限定されない。例えば、容量比で2〜10倍、特に3〜8倍の室温(20〜25℃、以下、「室温」の温度範囲は同様である。)の貧溶媒に反応液を投入して反応生成物を沈殿させ、その後、上澄み液を除去することにより反応生成物を回収することができる。また、反応生成物を貧溶媒により洗浄し、次いで、減圧乾燥し、反応溶媒及び貧溶媒を十分に除去することが好ましい。貧溶媒は反応液から反応生成物を十分に析出させることができる溶媒であればよく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等を用いることができる。反応終了後、未反応のラクタイド等が残留する場合は、再沈を繰り返すことにより除去することができる。
[3]ポリ乳酸用改質剤
本発明で用いられるポリ乳酸用改質剤(以下、改質剤ということもある。)は、前述のヒマシ硬化油系反応生成物を含有する。
このポリ乳酸用改質剤は、ポリ乳酸の改質、特に可塑化する作用、及び生分解性を向上させる作用に優れる。すなわち、この改質剤は、ポリ乳酸の可塑剤として用いることができる。また、この改質剤は、ポリ乳酸の生分解性向上剤として用いることができる。ポリ乳酸用改質剤におけるヒマシ硬化油系反応生成物の含有量は、改質剤を100質量%とした場合に、80質量%以上、特に90質量%以上であることが好ましい。また、ポリ乳酸用改質剤の全量がヒマシ硬化油系反応生成物であることがより好ましい。
ポリ乳酸用改質剤には、ポリ乳酸を可塑化させる作用等が損なわれない範囲で、炭酸カルシウム等の充填剤が含有されていてもよく、タルク等の増量剤が含有されていてもよい。これらの他の成分の含有量は、ポリ乳酸改質剤を100質量%とした場合に、20質量%以下、特に10質量%以下であることが好ましい。
[4]ポリ乳酸組成物
本発明のポリ乳酸組成物は、ポリ乳酸と、ポリ乳酸用改質剤とを含有する。
上記「ポリ乳酸」としては、乳酸の単独重合体、又は乳酸とグリコール酸との共重合体が挙げられる。乳酸の単独重合体は、L−乳酸及び/又はD−乳酸を脱水重縮合させることにより製造することができる。この乳酸としてはL−乳酸を用いることが好ましい。また、単独重合体は、乳酸の環状二量体であるL−ラクタイド、D−ラクタイド、meso−ラクタイド及びDL−ラクタイドのうちの1種以上の環状二量体を開環重合させることにより製造することもできる。このラクタイドとしてはL−ラクタイドを用いることが好ましい。
一方、共重合体は、L−乳酸及び/又はD−乳酸と、グリコール酸とを脱水重縮合させることにより製造することができる。また、共重合体は、上記の乳酸の環状二量体のうちの1種以上と、グリコライドとを開環重合させることにより製造することもできる。乳酸の環状二量体としてはL−ラクタイドを用いることが好ましい。共重合体における乳酸単位とグリコール酸単位との割合は特に限定されないが、乳酸単位が85モル%以上であることが好ましい。
上記の単独重合体及び共重合体の各々の平均分子量は特に限定されないが、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量が、単独重合体及び共重合体のいずれも、50000以上、特に50000〜500000、更に70000〜300000であることが好ましい。
乳酸としてL−乳酸とD−乳酸とを用いるとき、それらの使用割合は特に限定されないが、L−乳酸とD−乳酸との合計を100モル%とした場合に、L−乳酸が80モル%以上、特に95モル%以上であることが好ましい。L−乳酸が80モル%以上であれば、透明性が高く、且つ融点の高い重合体とすることができる。また、ラクタイドとしてL−ラクタイドとD−ラクタイドとを用いるとき、それらの使用割合は特に限定されないが、L−ラクタイドとD−ラクタイドとの合計を100モル%とした場合に、L−ラクタイドが80モル%以上、特に95モル%以上であることが好ましい。L−ラクタイドが80モル%以上であれば、透明性が高く、且つ融点の高い重合体とすることができる。
ポリ乳酸用改質剤のポリ乳酸への配合方法は特に限定されず、樹脂に改質剤等の各種添加剤などを配合する従来の方法により配合することができる。例えば、押出機、ニーダー、加熱ロール及びこれらの装置を組み合わせて用いる方法により配合することができる。これらの装置のうちでは押出機が好ましく、この押出機としては、単軸押出機及び二軸押出機等を用いることができるが、二軸押出機が好ましい。また、混練後、残留する揮発分等を減圧除去するためにはベント口が付設された押出機が好ましい。配合温度も特に限定されないが、通常、120〜250℃、好ましくは150〜200℃の温度範囲で配合される。
ポリ乳酸組成物におけるポリ乳酸用改質剤の含有量は特に限定されず、ポリ乳酸組成物に要求される物性及びその用途等によって設定することが好ましい。ポリ乳酸用改質剤は可塑剤として優れた作用を有するため、特にポリ乳酸組成物を用いてなる成形体に必要とされる柔軟性等により含有量を設定することが好ましい。ポリ乳酸用改質剤の含有量は、ポリ乳酸と、改質剤に含有されるヒマシ硬化油系反応生成物との合計を100質量%とした場合に、ヒマシ硬化油系反応生成物の含有量が10〜45質量%となる含有量であることが好ましい。この含有量は、特に柔軟性を大きく向上させるためには10質量%以上、特に20質量%以上であることが好ましく、反応生成物の重量平均分子量が1500〜3500(好ましくは2000〜3000)であるときは13〜35質量%であり、13〜27質量%であることが好ましい。反応生成物の重量平均分子量が3500を越え、5500(好ましくは4000〜5000)までであるときは15〜37質量%であり、23〜37質量%であることが好ましい。また、この改質剤は、上記の上限値を越えて含有させた場合、含有量の増加とともに改質剤がブリードアウトし、ポリ乳酸組成物及びこれを用いてなる成形体が経時的に変質することがある。
本発明のポリ乳酸組成物には、ポリ乳酸とポリ乳酸用改質剤の他、更に他の成分を配合することができる。この他の成分としては、例えば、フタル酸エステル等の従来から用いられている可塑剤、及びその他の添加剤等が挙げられる。この添加剤としては、例えば、耐ブロッキング剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、艶消剤、顔料、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤及び抗菌剤等が挙げられる。
[5]ポリ乳酸成形体
本発明のポリ乳酸成形体は、本発明のポリ乳酸組成物を用いてなる。
ポリ乳酸組成物を用いて成形体を製造する方法は特に限定されず、通常の樹脂の成形方法により製造することができる。この成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、圧縮成形等が挙げられる。成形条件も特に限定されず、ポリ乳酸の通常の成形条件とすることができる。例えば、押出成形の場合、ペレット形状等のポリ乳酸組成物をシリンダ内において加熱し、溶融させて混練し、その後、ポリ乳酸の融点を越える温度に調温された成形ダイから連続的に押し出して成形することができる。また、射出成形の場合、ペレット形状等のポリ乳酸組成物をシリンダ内において加熱し、溶融させて混練し、その後、ポリ乳酸の融点を越える温度に調温された金型内に射出し、冷却して固化させることにより成形することができる。
成形体の種類も特に限定されず、フィルム、シート、容器、管状体等の各種の成形体とすることができる。また、成形体の用途も特に限定されず、食品包装用等の包装材、日用雑貨品、産業用資材及び農業用、園芸用資材等として用いられる成形体とすることができる。更に、剛性が高く、柔軟性に乏しいポリ乳酸が本発明のポリ乳酸用改質剤により十分に可塑化されるため、これまで実質的に成形体とすることができなかったフィルム及びシート等の成形体とすることができる。このように、特に生分解性を有するフィルム及びシート等の成形体とすることができるため、環境負荷の低い包装材及び農業用マルチフィルム等の農業用、園芸用資材などとして有用である。
尚、フィルムとシートとは厚さが異なり、この厚さによって特定の用途において用いられる成形体である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]ヒマシ硬化油系反応生成物の製造
製造例1
反応容器に、ヒマシ硬化油939質量部と、L−乳酸の環状二量体であるL−ラクタイド1061質量部とを投入し(ヒマシ硬化油とL−ラクタイドとのモル比は1:7.4である。)、更に溶剤としてトルエンを投入した。その後、窒素ガス雰囲気に置換し、100〜110℃で1時間、攪拌しながら加熱した。次いで、触媒としてオクタン酸スズを2質量部添加し、100〜110℃で16時間反応させた。その後、反応液を約5倍量のヘキサン中に投入し、冷却した。次いで、上澄み液を除去し、残部をヘキサンで洗浄し、その後、120℃で2時間減圧乾燥し、反応生成物を得た。得られた反応生成物は粘度の高い無色の液体であった。
この反応生成物の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量は2300であった。また、GPCの分子量分布曲線にはショルダーは認められず、ほぼ同一の分子構造を有する反応生成物が生成していることが分かった。
比較製造例1
ヒマシ硬化油に代えてヒマシ油を用いた他は製造例1と同様にして反応生成物を得た。得られた反応生成物は粘度の高い無色の液体であった。この反応生成物のGPCにより測定した重量平均分子量は2300であった。GPCの分子量分布曲線にはショルダーは認められず、ほぼ同一の分子構造を有する反応生成物が生成していることが分かった。
上記のGPCの測定条件等は下記のとおりである。
装置;昭和電工社製(型式「Shodex 104」)
溶媒;テトラヒドロフラン
溶媒流速;0.6ミリリットル/分
検量線標準;ポリエチレングリコール
[2]反応生成物の加熱減量、酸価及び色相
実験例1〜6
製造例1の反応生成物(表1では「HCO/L−Ltd(a)」と表記する。また、以下、「HCO/L−Ltd(a)」という。)及び比較製造例1の反応生成物(表1では「CO/L−Ltd」と表記する。また、以下、「CO/L−Ltd」という。)の各々の加熱減量、酸化及び色相を測定した。実験例1はHCO/L−Ltd(a)を加熱せず、酸価と色相を測定したものであり、実験例2はHCO/L−Ltd(a)を150℃で3時間加熱し、その後、加熱減量、酸価及び色相を測定したものであり、実験例3はHCO/L−Ltd(a)を180℃で3時間加熱し、その後、加熱減量、酸価及び色相を測定したものである。また、実験例4はCO/L−Ltdを加熱せず、酸価と色相を測定したものであり、実験例5はCO/L−Ltdを150℃で3時間加熱し、その後、加熱減量、酸価及び色相を測定したものであり、実験例6はCO/L−Ltdを180℃で3時間加熱し、その後、加熱減量、酸価及び色相を測定したものである。
測定方法は下記のとおりである。
(1)加熱減量:JIS K0067に準じて測定した。
(2)酸価:JIS K0070に準じて測定した。
(3)色相:JIS K0071−2に準じて測定した。具体的には、ガードナー比色計を用いて測定し、ガードナー・ヘリーゲ標準番号で表示した。
尚、試料の色が二つの色ガラスの間にあるときは、例えば、5、5+、5−6、6−、6のように5段階で表示する。
結果を表1に記載する。
Figure 0005145531
表1の結果によれば、加熱しないとき、及び150℃又は180℃で加熱したとき、のいずれの場合も、加熱減量及び酸価は、HCO/L−Ltd(a)とCO/L−Ltdとで差はないといえる。しかし、色相は、加熱したとき、特に180℃で加熱したとき、CO/L−Ltd(実験例6)はHCO/L−Ltd(a)(実験例4)に比べて劣っており、加熱により生じた不飽和結合に起因する着色成分が生成していることが分かる。
[3]ポリ乳酸組成物の物性(その1)
実験例7〜10
フラスコに、HCO/L−Ltd(a)(表2でも「HCO/L−Ltd(a)」と表記する。)を、表2に記載の質量割合となるように投入し、その後、ポリ乳酸(三井化学社製、商品名「LACEA H−400」)を投入した(HCO/L−Ltd(a)とポリ乳酸との合計が100質量%である。)。次いで、クロロホルムを投入し、室温で12時間静置し、その後、室温でスターラーバーにより3時間攪拌した。次いで、エバポレーターにより溶剤を回収し、固体状の混合物を得た。その後、この混合物を50〜60℃で、減圧下、5〜6時間乾燥させてポリ乳酸組成物を製造した。次いで、このポリ乳酸組成物を用いて、各々の物性を測定するための試験片を、押出成形により180℃で作製し、物性を評価した。
測定方法は下記のとおりである。
(1)伸び及び引張強さ:JIS K 7113に従って測定した。
装置;島津製作所製(島津オートグラフ、型式「AGS−10KNG」)
試験片;ダンベル形状(長さ45mm、幅5mm、厚さ2.7mm)
つかみ具間距離;15mm
引張速度;5mm/分
測定環境;温度23℃、相対湿度50%
(2)曲げ強さ;JIS K 7113に従って測定した。
装置;島津製作所製(商品名「オートグラフ」、型式「AGS−50KNG」)
試験片;角柱形状(長さ50mm、幅6mm、厚さ4mm)
クロスヘッド移動速度;5mm/分
測定環境;温度23℃、相対湿度50%
(3)衝撃強さ;JIS K 7111のシャルピー衝撃試験方法に従って測定した。
装置;東京試験機社製(計装化シャルピー試験機、型式「CI−8E」)
試験片;角柱形状(長さ50mm、幅6mm、厚さ4mm)
測定環境;温度23℃、相対湿度50%
結果を表2に記載する。
Figure 0005145531
表2の結果によれば、ポリ乳酸にHCO/L−Ltd(a)を配合した場合、配合量の増加とともに衝撃強さが向上していることが分かる。特に、HCO/L−Ltd(a)が20質量%配合された実験例9では、最大エネルギー値までの吸収エネルギー値が大きく、組成物の柔軟性が大きく向上していることが分かる。更に、HCO/L−Ltd(a)が30質量%配合された実験例10では、最大エネルギー値以降の吸収エネルギー値が大きく、組成物の柔軟性がより大きく向上していることが分かる。また、HCO/L−Ltd(a)の配合によって伸びも向上し、特にHCO/L−Ltd(a)を20質量%配合した実験例9では伸びの向上が著しく、フィルム等の用途での使用が期待される。一方、HCO/L−Ltd(a)の配合量の増加とともに、引張強さ及び曲げ強さが低下する傾向にあるが、それほど大きな低下ではない。
[4]ポリ乳酸組成物の物性(その2)
平均分子量の異なるHCO/L−Ltdを用いてポリ乳酸組成物を製造し、その伸び及び引張強さを評価した。
(1)平均分子量の異なるHCO/L−Ltdの製造
製造例2
ヒマシ硬化油939質量部と、L−ラクタイド2061質量部とを用いた他は製造例1と同様にして反応生成物を得た(表3では「HCO/L−Ltd(b)」と表記する。また、以下、「HCO/L−Ltd(b)」という。)。得られた反応生成物は無色のろう状物であった。このようにして得られた反応生成物の平均分子量は約3000である。
製造例3
ヒマシ硬化油939質量部と、L−ラクタイド3061質量部とを用いた他は製造例1と同様にして反応生成物を得た(表3では「HCO/L−Ltd(c)」と表記する。また、以下、「HCO/L−Ltd(c)」という。)。得られた反応生成物は無色のろう状物であった。このようにして得られた反応生成物の平均分子量は約4000である。
製造例4
ヒマシ硬化油939質量部と、L−ラクタイド4061質量部とを用いた他は製造例1と同様にして反応生成物を得た(表3では「HCO/L−Ltd(d)」と表記する。また、以下、「HCO/L−Ltd(d)」という。)。得られた反応生成物は白色の固形物であった。このようにして得られた反応生成物の平均分子量は約5000である。
(2)ポリ乳酸組成物の製造及び物性評価
実験例11〜28
製造例2〜4の反応生成物を表3に記載の質量割合となるように用いた他は上記[3]と同様にしてポリ乳酸組成物を製造した。その後、このポリ乳酸組成物を用いて、上記[3]、(1)に記載の方法により伸び及び引張強さを測定した。
尚、HCO/L−Ltdに代えてヒマシ硬化油を用いてポリ乳酸組成物を製造してみたが、このポリ乳酸組成物は成形が容易ではなく、伸び及び引張強さを測定するための試験片を成形することができなかった。
結果を表3に記載する。
Figure 0005145531
表3の結果によれば、伸びはHCO/L−Ltdの種類及び配合量にかかわりなく向上がみられた。特に、HCO/L−Ltd(b)では配合量が15〜25質量%であるとき、HCO/L−Ltd(c)では配合量が30〜35質量%であるとき、HCO/L−Ltd(d)では配合量が25〜30質量%であるとき、に伸びの顕著な向上がみられた。また、HCO/L−Ltd(b)、(c)及び(d)のいずれの場合も、ポリ乳酸組成物の引張強さには大きな差異はみられなかった。
[5]ポリ乳酸組成物の物性(その3)
実験例29〜32
HCO/L−Ltd(a)(表4でもHCO/L−Ltd(a)と表記する。)を用いて上記[3]と同様にして製造したポリ乳酸組成物のガラス転移点と融点を下記の方法により測定した。
(1)ガラス転移点及び融点;JIS K 7121に従い、示差走査熱量計を用いて測定した。
装置;ブルーカー社製
結果を表4に記載する。
Figure 0005145531
表4の結果によれば、ガラス転移点は、HCO/L−Ltd(a)の配合量によらず低下する傾向にあり、ポリ乳酸とHCO/L−Ltd(a)とが均一に混合されていることが分かる。また、HCO/L−Ltd(a)が融点を有していないため、実験例29〜32の融点は、いずれもポリ乳酸そのものの融点であるが、実験例30〜32では、HCO/L−Ltd(a)の配合により融点が低温側にシフトする傾向がみられる。
[6]ポリ乳酸組成物の物性(その4)
実験例33〜40
HCO/L−Ltd(a)及びHCO/L−Ltd(b)(表5でもHCO/L−Ltd(a)又はHCO/L−Ltd(b)と表記する。)を用いて上記[3]と同様にして製造したポリ乳酸組成物、並びにHCO/L−Ltdに代えてヒマシ硬化油を用いて同様にして製造したポリ乳酸組成物のブリード性と透明性を下記の方法により測定した。
(1)ブリード性;押出成形により作製した長さ45mm、幅6mm、厚さ4mmの試験片の温度が室温にまで降温した時点で、その外観を目視で観察し、ブリードの有無を確認した。
(2)透明性;紙に幅0.5mm、長さ10mmの2本の直線を3mmの間隔をおいて相対向するように描画し、この直線上に厚さ6mmのダンベル形状の試験片を置き、2本の直線を判別できるか否かを目視で判断した。
結果を表5に記載する。
Figure 0005145531
表5の結果によれば、ブリード性については、HCO/L−Ltd(a)、(b)による差異及び各々の配合量による差異はなく、いずれも良好である。一方、ポリ乳酸にヒマシ硬化油を配合した場合は、配合量が5質量%と少量であってもブリードがみられた。また、透明性についても、HCO/L−Ltd(a)、(b)による差異及び各々の配合量による差異はなく、いずれも良好である。一方、ポリ乳酸にヒマシ硬化油を配合した場合は、配合量が5質量%と少量であっても透明性の低下がみられた。
[7]反応生成物を配合したポリ乳酸組成物の生分解性
実験例41〜46
(1)試料フィルムの作製
HCO/L−Ltd(a)(表6でもHCO/L−Ltd(a)と表記する。)と、ポリ乳酸(三井化学社製、商品名「LACEA H−400」)とを、表6に記載の質量割合となるように秤量した(HCO/L−Ltd(a)とポリ乳酸との合計が100質量%である。)。その後、容器にポリ乳酸を投入し、更にクロロホルムを投入してポリ乳酸を溶解させた。次いで、HCO/L−Ltd(a)を投入し、3時間攪拌して溶解させた。その後、溶液をポリテトラフルオロエチレンがコーティングされたバットに注ぎ入れ、バット内に流延させた。次いで、ドラフト内に5日間静置し、クロロホルムを揮散させてフィルムを成形した。このフィルム(厚さは約50μmである。)からコルクボーラを用いて直径11.5mmの試片を切り出した。
(2)反応液の調製
スクリューバイアル管にトリス−塩酸緩衝液(pH=8.6)5mlを量り取り、これにプロテナーゼK(from Tritirachium album min.30units/mg protein,Lyophilized powder、シグマ−アルドリッチ株式会社から購入)1mgとアジ化ナトリウム1mgとを加えて反応液を調製した。
(3)生分解性の評価
上記(1)で作製した各々の試片を超精密微量天秤(測定下限0.001mg)により秤量し、上記(2)で調製した反応液に浸漬し、37℃に設定したインキュベータ内に静置した。その後、所定時間経過するごとに試片をピンセットにより取り出し、上記(2)に記載の緩衝液で静かに洗浄し、次いで、水分を拭き取って上記の天秤により秤量し、酵素としてプロテナーゼKを用いたときの生分解性を評価した。
結果を表6に記載し、図1に示す。尚、表6において上段は試片の質量(単位;mg)であり、下段の括弧内は初期質量に対する所定時間経過後の質量割合(単位;%)である。
質量割合(%)=(所定時間経過後の質量/初期質量)×100
Figure 0005145531
表6及び図1の結果によれば、HCO/L−Ltd(a)が配合されていない実験例41では、5時間経過後も初期質量に対する割合は89.6%と高く、ポリ乳酸のみでは分解が十分ではないことが分かる。一方、実験例42〜46では、いずれも実験例41に比べて分解が促進されていることが分かる。より具体的には、HCO/L−Ltd(a)の配合量が5質量%と少量である実験例42でも、実験例41に比べて明らかに分解が促進されており、配合量が15質量%である実験例44では質量はほぼ半減しており、配合量が30質量%である実験例46では質量は1/3弱にまで減少している。このように、僅か5時間で分解が十分に促進されており、本発明のヒマシ硬化油系反応生成物がポリ乳酸の生分解を促進する十分な作用、効果を有することが裏付けられている。
本発明は、一般成形フィルム、特に生分解性が必要とされる農業用フィルム、シート、管状体及び各種容器等の種々の成形体の分野において利用することができる。また、その成形方法も特に限定されず、押出成形、射出成形、真空成形及び圧空成形等の各種の方法により成形することができる。
ポリ乳酸用改質剤の配合量と生分解性の経時変化との相関を表すグラフである。

Claims (7)

  1. ポリ乳酸と、ポリ乳酸用改質剤としてヒマシ硬化油系反応生成物とを含有するポリ乳酸組成物であって、
    上記ヒマシ硬化油系反応生成物は、ヒマシ硬化油と、ラクタイド又はα−ヒドロキシ酸の鎖状オリゴマーとを反応させてなり、
    上記ポリ乳酸と、上記ヒマシ硬化油系反応生成物との合計を100質量%とした場合に、該ヒマシ硬化油系反応生成物の含有量は、該ヒマシ硬化油系反応生成物の重量平均分子量が1500〜3500であるときは13〜35質量%であり、該ヒマシ硬化油系反応生成物の重量平均分子量が3500を越え、5500までであるときは15〜37質量%であることを特徴とするポリ乳酸組成物。
  2. 上記反応に上記ラクタイドが用いられ、該ラクタイドは炭素数が2〜3個のα−ヒドロキシ酸の環状二量体である請求項1に記載のポリ乳酸組成物。
  3. 上記ヒマシ硬化油系反応生成物の含有量は、該ヒマシ硬化油系反応生成物の重量平均分子量が1500〜3500であるときは13〜27質量%である請求項1又は2に記載のポリ乳酸組成物。
  4. 上記含有量が15〜25質量%である請求項3に記載のポリ乳酸組成物。
  5. 上記ヒマシ硬化油系反応生成物の含有量は、該ヒマシ硬化油系反応生成物の重量平均分子量が3500を越え、5500までであるときは23〜37質量%である請求項1又は2に記載のポリ乳酸組成物。
  6. 請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載のポリ乳酸組成物を用いてなることを特徴とするポリ乳酸成形体。
  7. フィルム又はシートの形態である請求項に記載のポリ乳酸成形体。
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