以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図9は、本実施の形態に係る紙葉類収納カセットを示す図である。このうち、図1は、本実施の形態における紙葉類収納カセットの外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示す紙葉類収納カセットの内部の構成の概略を示す構成図である。また、図3Aは、図2に示す紙葉類収納カセットの下部にあるプーリおよびこのプーリに接続された駆動モータを示す図であり、図3Bは、図2に示す紙葉類収納カセットの中央部にあるプーリおよびこのプーリに接続されたトルクリミッタを示す図である。また、図4乃至図6は、図2に示すステージ昇降規制機構の構成の詳細を示す構成図である。また、図7は、図2に示す紙葉類収納カセットにおいて、ステージに紙幣が3000枚集積されたときに当該ステージを上昇させる際の状態を示す説明図であり、図8は、図2に示す紙葉類収納カセットにおいて、ステージに紙幣が集積されていないときに当該ステージを下降させる際の状態を示す説明図であり、図9は、図2に示す紙葉類収納カセットにおいて、ステージに紙幣が3000枚集積されたときにモータが無通電状態となっている場合の状態を示す説明図である。
図1に示すように、紙葉類収納カセット10は、略直方体形状の筐体12を有し、紙幣や小切手等の紙葉類を筐体12の内部に収納するようになっている。図1に示すように、紙葉類収納カセット10において、投出入口16が筐体12の上面に設けられている。この投出入口16は、筐体12の外部から内部への紙葉類の投入および筐体12の内部から外部への紙葉類の投出を行うために用いられるようになっている。また、紙葉類収納カセット10の上部には把持部14が設けられており、操作者はこの把持部14を持つことにより紙葉類収納カセット10の持ち運びを行うことができるようになっている。
このような紙葉類収納カセット10は、概して、紙葉類の収納や投出を行うための紙葉類処理装置(図示せず)に着脱自在に収容されている。そして、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されたときに、この紙葉類処理装置の本体部分から紙葉類が1枚ずつ紙葉類収納カセット10に送られたり、この紙葉類収納カセット10から紙葉類が1枚ずつ紙葉類処理装置の本体部分に戻されたりするようになっている。
次に、図2を用いて紙葉類収納カセット10の内部の構成の概略について説明する。図2に示すように、紙葉類収納カセット10の筐体12の内部には、投出入口16により筐体12の外部から内部に投入された紙葉類が集積されるステージ(紙葉類載置台)30が設けられている。このステージ30は筐体12の内部において上下方向に往復移動するよう、すなわち昇降するようになっている。また、図2に示すように、ステージ30が昇降する範囲を覆うよう、鉛直方向に延びる案内部材31、32が設けられており、ステージ30上に集積された紙葉類は案内部材31、32により当該ステージ30上に集積された状態から位置がずれないようになっている。
ステージ30には、紙葉類処理装置の駆動モータ46(後述)からの駆動力を当該ステージ30に伝達する駆動力伝達機構が設けられている。紙葉類を筐体12の外部から内部に投入する際には、紙葉類処理装置の駆動モータ46からの駆動力を、駆動力伝達機構を介してステージ30に伝達することにより、当該ステージ30を降下させるようになっている。また、紙葉類を筐体12の内部から外部に投出する際には、紙葉類処理装置の駆動モータ46からの駆動力を、駆動力伝達機構を介してステージ30に伝達することにより、ステージ30を上昇させるようになっている。この駆動力伝達機構の構成の詳細については後述する。
筐体12の内部には収納繰出機構が設けられている。この収納繰出機構は、投出入口16により筐体12の外部から内部に投入された紙葉類をステージ30上に送るとともに、ステージ30上に集積された紙葉類を投出入口16に繰り出すようになっている。収納繰出機構は、筐体12の内部における上部領域に設けられた、フィードローラ20、ゲートローラ22およびキッカローラ24から構成されている。これらのフィードローラ20、ゲートローラ22およびキッカローラ24は、図2の左方から見て左右一対のものとなっている。また、フィードローラ20およびゲートローラ22は互いに当接しており、これらのフィードローラ20とゲートローラ22との間にはニップ部が形成されている。
キッカローラ24はステージ30の真上の位置に設けられている。このキッカローラ24には軸24aが設けられており、この軸24aを中心として回転するようになっている。具体的には、キッカローラ24は、紙葉類を筐体12の内部から外部に投出する際に図2の時計回りの方向に回転するようになっている。そして、キッカローラ24は、紙葉類を筐体12の内部から外部に投出する際にステージ30が上昇したときに、このステージ30に集積された紙葉類のうち最も上方にある紙葉類の表面に当接し、この当接した紙葉類をフィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部に(すなわち、図2の左方向に向かって)蹴り出すようになっている。
フィードローラ20には軸20aが設けられており、この軸20aを中心として回転するようになっている。具体的には、フィードローラ20は、紙葉類を筐体12の外部から内部に投入する際には図2において反時計回りに回転し、投出入口16から紙葉類搬送路18(後述)を経てフィードローラ20に送られた紙葉類をステージ30上に送るようになっている。一方、フィードローラ20は、紙葉類を筐体12の内部から外部に投出する際には図2において時計回りに回転し、キッカローラ24によりフィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部に送られた紙葉類を紙葉類搬送路18に送るようになっている。このフィードローラ20は、図示しないフィードローラ駆動機構により図2における時計回りまたは反時計回りに連続的に回転させられるようになっている。
ゲートローラ22は、図2に示すようにフィードローラ20に対して当接するよう設けられている。このゲートローラ22には軸22aが設けられている。軸22aはその位置が固定されており、回転しないようになっている。また、ゲートローラ22と軸22aとの間にはトルクリミッタ(図示せず)が配設されている。このトルクリミッタは、ゲートローラ22に対して周方向に沿って予め設定された設定トルク以上の力が加えられたときには、軸22aに対するゲートローラ22の回転を許容するようになっている。一方、トルクリミッタは、ゲートローラ22に加えられる周方向の力が設定トルクよりも小さいときにはゲートローラ22と軸22aとを連動させるようになっている。すなわち、この場合には、軸22aが固定されているので、ゲートローラ22も回転しないようになっている。
ゲートローラ22と軸22aとの間には上述のようなトルクリミッタが設けられているので、フィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部に紙葉類が送られない場合には、前述のようにフィードローラ20はフィードローラ駆動機構により連続的に回転しており、フィードローラ20とゲートローラ22は当接しているのでこのゲートローラ22にもフィードローラ20による連れ回りの力がかかることになる。このようなゲートローラ22にかかる連れ回りの力はトルクリミッタにおける設定トルクよりも大きいため、軸22aに対するゲートローラ22の回転が許容され、ゲートローラ22はフィードローラ20に連れ回るようになる。
一方、1枚の紙葉類がフィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部に送られると、この紙葉類がフィードローラ20とゲートローラ22との間に挟まれるためゲートローラ22にはフィードローラ20による連れ回りの力がかからなくなり、このゲートローラ22に加えられる周方向の力は設定トルクよりも小さくなる。このため、トルクリミッタによりゲートローラ22と軸22aとが連動させられ、軸22aが固定されているのでゲートローラ22も回転しないようになる。このように、フィードローラ20により紙葉類を紙葉類搬送路18からステージ30上に送ったり、ステージ30上の紙葉類を紙葉類搬送路18に送ったりする際には、ゲートローラ22は回転しないこととなる。
紙葉類搬送路18は、フィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部から、投出入口16まで延びるよう設けられている。このような紙葉類搬送路18には複数の案内ローラ25、26、27が設けられており、筐体12の外部から投出入口16に投入された紙葉類は紙葉類搬送路18に沿って案内ローラ25、26、27によりフィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部に送られるようになっている。また、紙葉類を筐体12の内部から外部に投出する際に、フィードローラ20によりこのフィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部から繰り出された紙葉類は、紙葉類搬送路18に沿って案内ローラ25、26、27により投出入口16に送られるようになっている。
また、筐体12の内部におけるフィードローラ20やゲートローラ22の近傍には札叩き用羽根車(図示せず)が設けられている。この札叩き用羽根車は例えばゴムから形成されており、フィードローラ20からステージ30に送られる紙葉類を叩くようになっている。また、筐体12の内部におけるフィードローラ20やゲートローラ22の近傍にはコシ付け部材(図示せず)が設けられている。このコシ付け部材は例えばステンレス鋼等の金属から形成されており、フィードローラ20からステージ30に送られる紙葉類を波形状に変形させてコシを付けるようになっている。
図2に示すように、筐体12の内部には無端状の例えばゴムベルトからなるタイミングベルト33が設けられている。このタイミングベルト33は複数のプーリ34、36、38、40、42に張架されており、図2における時計回りおよび反時計回りにそれぞれ循環移動することができるようになっている。ここで、ステージ30には取付部30aが設けられており、タイミングベルト33はこの取付部30aに取り付けられている。このため、タイミングベルト33が循環移動すると、ステージ30が昇降させられることとなる。
図3Aに示すように、タイミングベルト33が張架されたプーリ36には水平方向に延びる軸36aが取り付けられている。そして、プーリ36を駆動するための駆動モータ46が紙葉類処理装置に設置されている。具体的には、紙葉類収納カセット10を紙葉類処理装置に装着したときに、図3Aに示すように駆動モータ46とプーリ36とが接続され、駆動モータ46の駆動によりタイミングベルト33を循環移動させることが可能になっている。すなわち、紙葉類収納カセット10を紙葉類処理装置に装着したときに、駆動モータ46が軸36aを正逆両方向に回転させることができるようになっており、このことによりプーリ36に張架されたタイミングベルト33が図2における時計回りおよび反時計回りに循環移動するようになっている。一方、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置から取り外されたときには、この紙葉類処理装置の駆動モータ46と紙葉類収納カセット10のプーリ36とが離間し、駆動モータ46からプーリ36に駆動力が伝達されなくなる。
また、図3Bに示すように、タイミングベルト33が張架されたプーリ42には水平方向に延びる軸42aが取り付けられている。そして、この軸42aの先端部分にはトルクリミッタ44が設けられている。トルクリミッタ44は、プーリ42に対して所定のトルク以上の回転力が加えられたときには、プーリ42の軸42aの回転を許容するようになっている。一方、トルクリミッタ44は、プーリ42に加えられる回転力が所定のトルクよりも小さいときには、プーリ42の軸42aの回転を許容しないようになっている。
駆動モータ46による駆動力をステージ30に伝達するための駆動力伝達機構は、タイミングベルト33、プーリ36、軸36a、プーリ42、軸42a等から構成されている。そして、駆動力伝達機構は、駆動モータ46からの駆動力をステージ30に伝達し、この駆動力によりステージ30を収納繰出機構に近づく方向および収納繰出機構から遠ざかる方向の両方向に往復移動させるようになっている。より具体的には、紙葉類を筐体12の外部から内部に投入する際には、駆動モータ46がプーリ36を図2における時計回りに回転させてタイミングベルト33を図2における時計回りに循環移動させることによりステージ30を降下させるようになっている。一方、紙葉類を筐体12の内部から外部に投出する際には、駆動モータ46がプーリ36を図2における反時計回りに回転させてタイミングベルト33を図2における反時計回りに循環移動させることによりステージ30を上昇させるようになっている。
また、ステージ30には、このステージ30を常時上昇方向に引っ張るための引っ張りバネ50が取り付けられている。より具体的には、図2に示すように、引っ張りバネ50は、筐体12の上部に設けられたプーリ50cに掛けられており、この引っ張りバネ50の一端50aは紙葉類収納カセット10の筐体12の内壁に固定されている。また、引っ張りバネ50の他端50bがステージ30に接続されている。そして、引っ張りバネ50の収縮力により、引っ張りバネ50の他端50bはプーリ50cに向かって、すなわち上昇方向に引っ張られるようになっており、このことによりステージ30は引っ張りバネ50により上昇方向に引っ張られるようになっている。
また、紙葉類収納カセット10には、ステージ30の昇降を規制するステージ昇降規制機構が設けられている。より具体的には、ステージ昇降規制機構は、タイミングベルト33が張架されたプーリ36の回転を規制するようになっている。このようなステージ昇降規制機構の詳細について、図4乃至図6を用いて説明する。ここで、図4は、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置から取り外されるとともにこの紙葉類収納カセット10の扉(図示せず)が閉められているときの状態を示す図であり、図5は、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置から取り外されるとともにこの紙葉類収納カセット10の扉が開かれているときの状態を示す図であり、図6は、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されているときの状態を示す図である。
図4に示すように、タイミングベルト33が張架されたプーリ36は、軸36aを中心として回転するようになっている。そして、このプーリ36には歯車部材37が取り付けられており、この歯車部材37も軸36aを中心として回転するようになっている。なお、歯車部材37はプーリ36と同期して回転するようになっている。また、歯車部材37の外周面には等間隔で凹部37aが形成されている。
一方、紙葉類収納カセット10の扉(図示せず)には扉ロック板52が取り付けられている。この扉ロック板52は、扉の開閉により昇降方向に往復移動するようになっている。より具体的には、図4に示すように扉が閉じた状態では扉ロック板52は下方の位置にあり、図5に示すように扉が開いた状態では扉ロック板52は上方の位置にある。この扉ロック板52の下端部には、細長いカム部材54の軸54aが取り付けられており、カム部材54は軸54aを中心として扉ロック板52に対して揺動自在となっている。また、この細長いカム部材54は略鉛直方向に延びており、このカム部材54の下端部には当該カム部材54の長手方向に延びる開口部54bが形成されている。
カム部材54の下方にはロック部材56が設けられており、このロック部材56に取り付けられたピン56bがカム部材54の開口部54bに挿入されるようになっている。ピン56bはカム部材54の細長い開口部54bに沿って案内されるようになっている。また、ロック部材56には軸56aが設けられており、ロック部材56は軸56aを中心として揺動自在となっている。また、ロック部材56には、先端部分が下方に折れ曲がった係合部分56cが設けられており、この係合部分56cは歯車部材37の凹部37aに進入可能となっている。そして、ロック部材56の係合部分56cが歯車部材37の凹部37aに入り込んだときに、このロック部材56が歯車部材37の回転を規制し、この歯車部材37を固定するようになっている。また、ロック部材56には受け部分56dが設けられており、この受け部分56dは、紙葉類処理装置に設けられた押圧部材60を受けるようになっている。
ここで、図4および図5に示すように、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されていない場合には、紙葉類収納カセット10に設けられたロック部材56は紙葉類処理装置に設けられた押圧部材60から離間し、このロック部材56の受け部分56dが押圧部材60により押圧されることはない。そして、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されていない場合において、紙葉類収納カセット10の扉が閉じているときには、図4に示すように、この扉に取り付けられた扉ロック板52は下方の位置にある。この場合、カム部材54がロック部材56を上方に引っ張ることはなく、ロック部材56の係合部分56cが歯車部材37の凹部37aに入り込み、ロック部材56が歯車部材37の回転を規制するようになっている。
一方、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されていない場合において、紙葉類収納カセット10の扉を開いたときには、図5に示すように、この扉に取り付けられた扉ロック板52が上方に移動する。この場合、カム部材54がロック部材56を上方に引っ張り、ロック部材56が軸56aを中心として図5の反時計回りに回転する。このことにより、ロック部材56の係合部分56cが歯車部材37の凹部37aから外れ、この係合部分56cが歯車部材37の回転を規制することはなくなるので、歯車部材37は自在に回転するようになり、この歯車部材37と同期して回転するプーリ36も自在に回転するようになる。
また、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容された場合には、図6に示すように、ロック部材56の受け部分56dが、紙葉類処理装置に設けられた押圧部材60に押圧されることとなる。このことにより、ロック部材56は図6における上方に押圧され、このロック部材56は軸56aを中心として図6の反時計回りに回転する。このため、ロック部材56の係合部分56cが歯車部材37の凹部37aから外れ、この係合部分56cが歯車部材37の回転を規制することはなくなるので、歯車部材37は自在に回転するようになり、この歯車部材37と同期して回転するプーリ36も自在に回転するようになる。
次に、このような構成からなる紙葉類収納カセット10の動作について以下に説明する。具体的には、紙葉類収納カセット10を紙葉類処理装置に装着したときの状態における動作、および紙葉類収納カセット10を紙葉類処理装置から取り外したときの状態における動作についてそれぞれ説明する。
まず、紙葉類収納カセット10を紙葉類処理装置に装着したときの状態における動作について説明する。
紙葉類を筐体12の外部から内部に投入する際に、まずステージ30を下降させる。より具体的には、駆動モータ46がプーリ36の軸36aを図2における時計回りに回転させ、タイミングベルト33を図2における時計回りに循環移動させることにより、ステージ30が下降する。このことにより、ステージ30の上方に紙葉類の収納スペースが設けられることとなる。
その後、投出入口16により紙葉類が1枚ずつ筐体12の内部に投入されると、この紙葉類は紙葉類搬送路18を経てフィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部に送られ、このニップ部に送られた紙葉類はフィードローラ20によりステージ30上に送られる。この際に、フィードローラ20からステージ30に送られる紙葉類は札叩き用羽根車(図示せず)により叩かれることとなる。このため、紙葉類を迅速にステージ30上に落下させることができるとともに、ステージ30上で紙葉類が縦向きになることはなく横向きの積層状態で集積されることとなる。また、フィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部に送られた紙葉類は、コシ付け部材(図示せず)により波形状に変形させられる。このことにより、紙葉類にコシを付けることができる。
一方、紙葉類を筐体12の内部から外部に投出する際には、まずステージ30を上昇させる。より具体的には、駆動モータ46がプーリ36の軸36aを図2における反時計回りに回転させ、タイミングベルト33を図2における反時計回りに循環移動させることにより、ステージ30が上昇する。このことにより、ステージ30上に集積された紙葉類を収納繰出機構のキッカローラ24に当接させることができる。また、ステージ30を上昇させると、札叩き用羽根車(図示せず)およびコシ付け部材(図示せず)は収納繰出機構から退避し、紙葉類の投出が行われる間に紙葉類がこれらの札叩き用羽根車およびコシ付け部材に当接することはなくなる。
そして、ステージ30が上昇することによりこのステージ30上に集積された紙葉類がキッカローラ24に当接した後、キッカローラ24により、ステージ30に集積された紙葉類のうち最も上方にある紙葉類をフィードローラ20とゲートローラ22との間のニップ部に蹴り出す。ニップ部に送られた紙葉類は、フィードローラ20により紙葉類搬送路18に送られ、この紙葉類は最終的には投出入口16まで搬送されることとなる。このことにより、紙葉類収納カセット10の筐体12の外部へ紙葉類が投出される。
なお、上述のような、筐体12の外部から内部に紙葉類を投入する場合や、筐体12の内部から外部に紙葉類を投出する場合において、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されているので、図6に示すように、ロック部材56の受け部分56dが、紙葉類処理装置に設けられた押圧部材60に押圧されることとなる。この場合、ロック部材56は図6における上方に押圧され、このロック部材56は軸56aを中心として図6の反時計回りに回転する。このことにより、ロック部材56の係合部分56cが歯車部材37の凹部37aから外れ、この係合部分56cが歯車部材37の回転を規制することはなくなるので、歯車部材37は自在に回転するようになり、この歯車部材37と同期して回転するプーリ36も自在に回転するようになる。このため、プーリ36に張架されたタイミングベルト33も図2における時計回りおよび反時計回りに自在に循環移動させることができるようになり、ステージ30の昇降がロック部材56等により規制されることはない。
次に、紙葉類収納カセット10のステージ30上に集積された紙葉類を回収する際に、あるいは紙葉類収納カセット10に紙葉類を装填する際に、この紙葉類収納カセット10を紙葉類処理装置から取り外した場合について説明する。紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されていない場合には、紙葉類収納カセット10に設けられたロック部材56は紙葉類処理装置に設けられた押圧部材60から離間し、このロック部材56の受け部分56dが押圧部材60により押圧されることはない。
紙葉類収納カセット10を紙葉類処理装置から取り外した場合において、紙葉類収納カセット10の扉が閉まっているときには、図4に示すように、この扉に取り付けられた扉ロック板52は下方の位置にある。この場合、カム部材54がロック部材56を上方に引っ張ることはなく、ロック部材56の係合部分56cが歯車部材37の凹部37aに入り込み、ロック部材56が歯車部材37の回転を規制する。このため、プーリ36の回転が規制されるので、タイミングベルト33は循環移動しなくなり、ステージ30の位置も固定されることとなる。このことにより、紙葉類収納カセット10の持ち運びの際に、ステージ30に集積された紙葉類がばらつくことを抑制することができる。
一方、紙葉類収納カセット10を紙葉類処理装置から取り外した場合において、紙葉類収納カセット10の扉を開いたときには、図5に示すように、この扉に取り付けられた扉ロック板52が上方に移動する。この場合、カム部材54がロック部材56を上方に引っ張り、ロック部材56が軸56aを中心として図5の反時計回りに回転する。このことにより、ロック部材56の係合部分56cが歯車部材37の凹部37aから外れ、この係合部分56cが歯車部材37の回転を規制することはなくなるので、歯車部材37は自在に回転するようになり、この歯車部材37と同期して回転するプーリ36も自在に回転するようになる。このため、プーリ36に張架されたタイミングベルト33も図2における時計回りおよび反時計回りに自在に循環移動させることができるようになり、ステージ30の昇降がロック部材56等により規制されることはない。
そして、紙葉類収納カセット10の扉を開いた状態で、操作者は手でステージ30を押し下げると、プーリ42に対して予め設定された設定トルク以上の回転力が加えられることとなるため、トルクリミッタ44により、プーリ42の軸42aの回転が許容されるようになる。このため、操作者がステージ30を手で押し下げた分だけプーリ42の軸42aが回転するようになるので、ステージ30が降下することとなる。一方、ステージ30が降下する前の状態、およびステージ30が降下した後の状態において、操作者がステージ30から手を離し、プーリ42に対して予め設定された設定トルク以上の回転力が加えられないようになると、トルクリミッタ44により、プーリ42の軸42aの回転が許容されないようになる。このように、プーリ42が回転しなくなるので、タイミングベルト33が循環移動することはなくなる。このことにより、ステージ30の位置が固定される。このようにして、ステージ30を任意の位置で固定することができる。
以上のように本実施の形態の紙葉類収納カセット10によれば、駆動モータ46からの駆動力をステージ30に伝達するような駆動力伝達機構にはトルクリミッタ44が接続されている。そして、このトルクリミッタ44は、ステージ30に対して予め設定された設定トルク以上の力が当該ステージ30の昇降方向(往復移動方向)に加えられたときにステージ30の移動を許容し、ステージ30に加えられる力が設定トルクよりも小さいとき(ステージ30に対して外部から力が加えられていない場合も含む)にはステージ30の移動を規制するようになっている。このように、紙葉類が集積されるステージ30は、操作者により当該ステージ30に対して予め設定された設定トルク以上の力が加えられないときには、ステージ30に加えられる力が設定トルクよりも小さくなるのでこのステージ30の移動がトルクリミッタにより規制され、当該ステージ30は停止状態となる。一方、操作者によりステージ30に対して設定トルク以上の力が加えられたときにはステージ30が移動するようになる。
このため、紙葉類収納カセット10の扉を開いて紙葉類を紙葉類収納カセット10内に装填したり紙葉類収納カセット10から紙葉類を回収したりする際に、まずステージ30を手で下方に押し下げ(この際に、トルクリミッタ44によりステージ30の移動が規制されることはない)、その後、ステージ30を任意の位置で停止させた状態において(この際に、トルクリミッタ44によりステージ30の移動が規制される)、片手ではなく両手で紙葉類をステージ30上に載置したりステージ30上にある紙葉類を取り出したりすることができる。このことにより、シンプルな構成により紙葉類収納カセット10の操作性を向上させることができる。
また、紙葉類収納カセット10は、紙葉類の処理を行うとともに駆動モータ46が設けられた紙葉類処理装置に着脱自在に収容されるようになっており、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されたときに紙葉類処理装置の駆動モータ46と紙葉類収納カセット10のプーリ36とが接続されて駆動モータ46からプーリ36に駆動力が伝達されるようになっており、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置から取り外されたときに紙葉類処理装置の駆動モータ46と紙葉類収納カセット10のプーリ36とが離間し駆動モータ46からプーリ36に駆動力が伝達されなくなるようになっている。このため、紙葉類処理装置に対して紙葉類収納カセット10を着脱するだけで、紙葉類処理装置の駆動モータ46から紙葉類収納カセット10のステージ30への駆動力の伝達およびその遮断を行うことができるようになる。
また、紙葉類収納カセット10は、ステージ30を常時上昇方向に引っ張る引っ張りバネ50を更に備えている。このため、ステージ30を昇降した場合における、当該ステージ30を釣り合わせるための駆動モータ46による駆動力を低減することができる。このことについて図7乃至図9を用いてより具体的に説明する。
図7に示すように、図2に示す紙葉類収納カセット10において、紙葉類を筐体12の内部から外部に投出する場合に、例えば紙幣が3000枚集積されたステージ30を上昇させると、ステージ30には紙幣の質量である例えば3kgfの力が下向きにかかるとともに、トルクリミッタ44による例えば0.6kgfの力が下向きにかかり、さらに駆動力伝達機構の様々な部材における摩擦抵抗等の動作負荷による例えば0.4kgfの力が下向きにかかる。一方、このステージ30は、引っ張りバネ50により上昇方向に引っ張られ、ステージ30には、この引っ張りバネ50による例えば1.0kgfの力が上向きにかかる。このため、駆動モータ46がステージ30を上昇させる際に、駆動モータ46はこのステージ30に対して3.0kgfの上向きの力をかけることとなる。ここで、引っ張りバネ50が設けられていない場合には、駆動モータ46はステージ30に対して4.0kgfの上向きの力をかけなければならなかったため、引っ張りバネ50を設けることにより、駆動モータ46による駆動力を低減することができる。
一方、図8に示すように、図2に示す紙葉類収納カセット10において、紙葉類を筐体12の外部から内部に投入する場合に、例えば紙幣が集積されていないステージ30を下降させると、ステージ30には引っ張りバネ50による例えば1.0kgfの力が上向きにかかるとともに、トルクリミッタ44による例えば0.6kgfの力が上向きにかかり、さらに駆動力伝達機構の様々な部材における摩擦抵抗等の動作負荷による例えば0.4kgfの力が上向きにかかる。このため、駆動モータ46がステージ30を下降させる際に、駆動モータ46はこのステージ30に対して2.0kgfの下向きの力をかけることとなるが、この2.0kgfの力は、前述のような駆動モータ46がステージ30を上昇させる際に必要な3.0kgfの力よりも小さいため、駆動モータ46がステージ30に対して2.0kgfの下向きの力をかけることについて問題はない。
また、図9は、図2に示す紙葉類収納カセット10において、ステージ30に例えば紙幣が3000枚集積されたときに駆動モータ46が無通電状態となっている場合の状態を示す図である。この場合、ステージ30には紙幣の質量である例えば3kgfの力が下向きにかかる。一方、ステージ30には引っ張りバネ50による例えば1.0kgfの力が上向きにかかるとともに、トルクリミッタ44による摩擦力、具体的には例えば0.6kgfの力がステージ30を下げないように上向きにかかり、さらに駆動力伝達機構の様々な部材における摩擦抵抗等の動作負荷による例えば0.4kgfの力がステージ30を下げないように上向きにかかる。このため、駆動モータ46が無通電状態となることにより生じるステージ30への保持力が1.0kgfである場合には、ステージ30は移動することなく固定されることとなる。ここで、引っ張りバネ50が設けられていない場合には、無通電状態の駆動モータ46は当該駆動モータ46が静止しようとする保持力によりステージ30に対して2.0kgfの保持力が作用するが、引っ張りバネ50を設けることにより、保持力の合計が不足してステージ30が落下してしまうことを防止することができる。
また、本実施の形態の紙葉類収納カセット10は、ステージ30の往復移動を規制するためのカム部材54やロック部材56等(規制機構)を更に備え、これらのカム部材54やロック部材56等は、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置から取り外されるとともに紙葉類収納カセット10の扉が閉められているときに、すなわち図4に示す状態のときにステージ30の往復移動を規制するようになっている。このため、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置から取り外されるとともに紙葉類収納カセット10の扉が閉められているときには、ステージ30の位置が固定されるので、紙葉類収納カセット10の持ち運びの際に、ステージ30に集積された紙葉類がばらつくことを抑制することができる。
より具体的には、紙葉類収納カセット10の扉が閉じたときに(図4に示す状態のときに)ステージ30の往復移動を規制し、扉が開いたときに(図5に示す状態のときに)ステージ30の往復移動の規制を解除するようなロック部材56が設けられており、このロック部材56は、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されたときに(図6に示す状態のときに)当該紙葉類処理装置に設けられた押圧部材60に押圧されることによりステージ30の往復移動の規制を解除するようになっている。このため、紙葉類収納カセット10が紙葉類処理装置に収容されたときには、ステージ30の往復移動の規制が解除されるので、紙葉類処理装置の装置本体から紙葉類収納カセット10に紙葉類を送ったり紙葉類収納カセット10から紙葉類処理装置の装置本体に紙葉類を戻したりする際に、ステージ30を昇降方向に自在に移動させることができるようになる。
なお、本発明による紙葉類収納カセット10は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。例えば、駆動モータ46による駆動力をステージ30に伝達する駆動力伝達機構としては、図2や図3等に示すようなものに限定されることはない。
また、ステージ30を常時上昇方向に引っ張る引っ張り機構としては、図2等に示すような引っ張りバネ50に限定されることはない。引っ張り機構として、引っ張りバネ50以外の弾性部材を有するものを用いてもよい。また、引っ張り機構として、ステージ30を常時上昇方向に引っ張るものであれば、弾性部材以外のものを用いてもよい。
また、カム部材54やロック部材56等からなる、紙葉類載置台の往復移動を規制するための規制機構は必ずしも設置する必要がなく、このような規制機構の設置を省略することもできる。