JP5141943B2 - 分子素子 - Google Patents
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上記構成において、第1の電極と第2の電極との間には、好ましくは、ナノオーダーの間隙が存在する。
金属内包フラーレンに外部電界を印加して、金属内包フラーレンの双極子モーメントを多段に変化させ、多段スイッチとして動作させることができる。
第1の電極と前記第2の電極との配置方向に対し直交する方向には、好ましくは、ゲート電極を備える。
上記構成によれば、金属内包フラーレンの双極子モーメントの向きが、外部からの電界により多段に変化することで、分子素子を多段スイッチとして動作させることができる。
一対のゲート電極に電圧を印加し、金属内包フラーレンのオフセット電荷を変えることにより第1及び第2の電極間の電流を制御し、排他的論理和回路(XOR)又は排他的論理和の否定回路(XNOR)の動作を行なわせるようにしてもよい。
自己組織化単分子膜は、好ましくは、第1又は第2の電極となる金属原子に化学吸着する第1の官能基と、第1の官能基に結合する第2の官能基とから成り、第1の官能基が、チオール基、ジチオカルバメート基、キサンテート基の何れかの基である。自己組織化単分子膜の第2の官能基は、アルカン、アルケン、アルカン又はアルケンの水素分子の一部又は全部をフッ素に置換したもの、アミノ基、ニトロ基、アミド基の何れかの基であってよい。
図1は本発明の分子素子10の構造を模式的に示す図である。図1に示すように、本発明の分子素子10は、基板1上に所定の隙間を有するよう対向配置される第1の電極2及び第2の電極3と、第1の電極2上に配置される第1の自己組織化単分子膜4と、第2の電極3上に配置される第2の自己組織化単分子膜5と、第1の自己組織化単分子膜4と第2の自己組織化単分子膜5との間に金属を内包したフラーレン(以下、「金属内包フラーレン」という。)6が配置されて構成される。つまり、本発明の分子素子10は、図1の左側から順に、第1の電極2と、第1の電極2上に配置される第1の自己組織化単分子膜4と、第1の自己組織化単分子膜4と第2の自己組織化単分子膜5との間に配置される金属内包フラーレン6と、第2の自己組織化単分子膜に接続される第2の電極3と、が配置されている。分子素子10は、金属内包フラーレン6と第1の自己組織化単分子膜4を介して第1の電極2との間に形成される第1のトンネル接合と、金属内包フラーレン6と第2の自己組織化単分子膜5を介して第2の電極3との間に形成される第2のトンネル接合とを有している。
また、第1の電極2と第2の電極3との隙間には、第1の自己組織化単分子膜4、第2の自己組織化単分子膜5を介在させて金属内包フラーレン6が配置されるので、第1の電極2と第2の電極3との隙間の長さは、金属内包フラーレン6の大きさよりも大きいことが必要である。
さらに、第1の電極2と第2の電極3との隙間は、不要なトンネル過程によるリーク電流を少なくすることが好ましい。
図3は、本発明に用いることができる自己組織化単分子膜の化学構造として、(A)がジチオカルバメート基を示し、(B)〜(M)がその誘導体を示す図である。図3(A)に示すジチオカルバメート基において、R1及びR2はそれぞれ異なるアルキル基である。図3(B)はジエチルジチオカルバメート(Diethyldithiocarbamate)を、図3(C)はジブチルジチオカルバメート(Dibutyldithiocarbamate)を、図3(D)はジイソプロピルジチオカルバメート(Diisopropyldithiocarbamate)を、図3(E)はピペリジンジチオカルバメート(Piperidine-dithiocarbamate)を、図3(F)はモルフォリンジチオカルバメート(Morpholinedithiocarbamate)を、図3(G)はビス-2-フィリジルメチルジチオカルバメート(Bis(2-pyridylmethyl)dithiocarbamate)を、図3(H)はメタフェタジチオカルバメート(Methamphetdithiocarbamate)を、それぞれ示している。
図3(I)〜図3(M)は、用いることができるR1又はR2のアルキル基を示し、それぞれ、(I)がtert−ブチル(tert-butyl)を、(J)がイソブチル(isobutyl)を、(K)がsec−ブチル(sec-butyl)を、(L)がneo−ペンチル(neopentyl)を、(M)がイソペンチル(isopentyl)を示している。
第1及び第2の自己組織化単分子膜4、5の鎖長を選択することで、基板1上の第1及び第2電極2、3と金属内包フラーレン6との間に働く力学的・電気的相互作用を制御し、ある温度下において金属内包フラーレン6の回転を止めることができることを本発明者らは確認している。即ち、自己組織化単分子膜4、5として鎖長の異なるアルカチオール分子を採用し、各自己組織化単分子膜上に金属内包フラーレンとしてTb@C82を配置してなる分子素子をSTMで観察した。すると、極低温68Kで観察したSTM像から、オクタンチオールやデカンチオール上のTb@C82分子は熱ゆらぎにより回転する一方、ヘキサンチオール上のTb@C82分子はその内部構造に起因すると考えられるストライプが観測されたので、ヘキサンチオール上のTb@C82分子は静止している。この結果から、アルカチオール分子の鎖長で、その上に配置される金属内包フラーレンに働く相互作用力を制御することができることが分かった。
即ち、図16(A)に示すように+Z方向に沿った双極子モーメント6Cを有する金属内包フラーレン6に対し、+Y方向の外部電界7の強度を大きくしていくと、図16(B)の右半分側に示すように+X方向側から−X方向に見て(図の正面から見て)時計回りに双極子モーメント6Cが回転する。その状態が符号6aの金属内包フラーレンである。そして、+Y方向の外部電界7がある一定の電界強度以上になると、+Y方向に沿った双極子モーメント6Cの状態を維持する。その状態が符号6bの金属内包フラーレンである。
逆に、図16(A)に示すように+Z方向に沿った双極子モーメント6Cを有する金属内包フラーレン6に対し、−Y方向の外部電界7の強度を大きくしていくと、図16(B)の左半分側に示すように+X方向側から−X方向に見て反時計回りに双極子モーメント6Cが回転する。その状態が符号6cの金属内包フラーレンである。そして−Y方向の外部電界7がある一定の電界強度以上になると、−Y方向に沿った双極子モーメント6Cの状態を維持する。その状態が符号6dの金属内包フラーレンである。
以上のことから、外部電界7の強度及び向きを調節することで金属内包フラーレン6を段階的に回転させ、その外部電界7の強度及び方向を維持することで金属内包フラーレン6の状態を固定することができる。
図17は、図1に示す分子素子10を動作させるための回路構成を模試的に示す図である。図17に示すように、分子素子10を動作させるための回路は、分子素子10の第1の電極2に所定の電圧を印加するための可変直流電源11と、分子素子10から流れ出す電流を検知する電流計12とを、分子素子10に対し直列的に接続して構成されている。図1に示す分子素子10は、第1の自己組織化単分子膜4を介して第1の電極2と金属内包フラーレン6との間に形成される第1のトンネル接合8と、第2の自己組織化単分子膜5を介して第2の電極3と金属内包フラーレン6との間に形成される第2のトンネル接合9とが、金属内包フラーレン6で構成されるクーロン島を挟んで構成される。ここで、第1及び第2のトンネル接合の幅は何れも数nmであり、クーロン島である金属内包フラーレン6は直径1nm程度である。第1の電極2は可変直流電源11に接続され、第2の電極3は電流計12に接続される。よって、第1の電極2から第1のトンネル接合8を介して金属内包フラーレン6のクーロン島に対して単一電子(e−)が輸送され、さらに、金属内包フラーレン6のクーロン島から第2のトンネル接合9を介して第2の電極3に単一電子が輸送される。第2の電極3に輸送された電子は、電流計12に流れる。
図20は、本発明の分子素子20を示す図で、(A)はその模式図、(B)はその等価回路を示す図である。本発明の分子素子20は、図1に示す分子素子10において、第1の電極2と第2の電極3との配置方向に垂直で、第1の電極2と第2の電極3との隙間に臨むように、第3の電極21が図示しない基板上に配置されて構成されている。第1の電極2、第2の電極3、第3の電極21は、それぞれ、ソース電極S、ドレイン電極D、ゲート電極Gとして作用する。この分子素子20の等価回路は、図20(B)に示すように、第1の自己組織化単分子膜4を介して第1の電極2と金属内包フラーレン6との間に形成される第1のトンネル接合8と、第2の自己組織化単分子膜5を介して第2の電極3と金属内包フラーレン6との間に形成される第2のトンネル接合9とが直列に接続され、第1のトンネル接合8と第2のトンネル接合9との間の所謂、中間電極(クーロン島)にゲートキャパシタンスCgを介して容量結合された回路として表される。
例えば、ソース−ドレイン間とゲートにそれぞれ一定の電圧を加えたとき、電流が流れている状態があり、さらに、ソース−ドレイン間の電圧を徐々に大きくしたり、パルス状に加えることにより、双極子モーメント6Cの向きを変化させることができる。また、元と同じソース−ドレイン間及びゲートに各電圧を印加することで分子配向が変化し、この変化に起因してオフセット電荷Q0が変化するので、クーロンダイヤモンドがゲート電圧軸方向にシフトし、電流値が変化し、電流が流れない状態とすることができる。
分子素子30において、金属内包フラーレン6はクーロン島として作用し、金属内包フラーレン6上のエネルギー準位は離散化しており、不連続化している。
図22は分子素子30のエネルギーダイヤグラムであり、(A)はクーロンブロッケードの状態、(B)は単一電子トンネルの状態でのエネルギーダイヤグラムである。図において、μS、μDはそれぞれソースとドレインのフェルミ準位(electrochemicalポテンシャル)を示している。このフェルミ準位より下側の領域は電子に占有されて、フェルミ準位より上側の部分には電子が存在しない。
図23は、図20に示す分子素子30がXOR論理素子を実現している場合のタイムチャートである。図23において、(a)は第1のゲート電極(G1)31に印加する電圧Vg1波形、(b)は第2のゲート電極(G2)32に印加する電圧Vg2波形、(c)はソース−ドレイン間に流れる電流波形を示している。なお、横軸は時間である。図24は、図23に示すタイムチャートを真理値表として示したテーブルである。
図23に示すように、第1のゲート電極(G1)31及び第2のゲート電極(G2)32に、それぞれ、「1」に対応するパルス電圧印加を繰り返す。そのとき、第2のゲート電極(G2)32に印加するパルス幅を、第1のゲート電極(G1)31に印加するパルス幅の自然数倍(図では2倍)とする。第1のゲート電極(G1)31及び第2のゲート電極(G2)32に印加される電圧の値により、金属内包フラーレン6のオフセット電荷が制御され、所定の電圧を印加されたソース電極Sからドレイン電極Dに流れ出る電流が制御される。図22に示したタイムチャートの例では、第1のゲート電極(G1)31及び第2のゲート電極(G2)32に対する「0」「1」の各入力に応じて、ドレイン電極Dから排他的論理和(XOR)を出力させることができる。また同様に、排他的論理和の否定(XNOR)をドレイン電極Dから出力させることもできる。
基板1に電子線リソグラフィー法(EBL)及びめっき法により第1の電極2と第2の電極3とを所定の隙間を開けて形成する。このとき、先ず、電子線リソグラフィー法では、10〜15nmの隙間が開くように、一対の電極をパターン化して形成する。その後、その一対の電極に、無電解めっきや電解めっきを施すことで、所定の隙間を有するよう第1の電極2と第2の電極3を作製する。なお、分子素子20の場合には第3の電極21、分子素子30の場合には第3の電極31及び第4の電極32も、同様にして第1の電極2及び第2の電極3と同時に形成する。
以上により、本発明の分子素子10、20、30を作製することができる。
先ず、ステップ1として、電子線リソグラフィー法により、電極パターンを形成する。即ち、シリコン基板上に熱酸化膜を形成したシリコン熱酸化膜基板上に、電子線露光によりソース及びドレイン電極2,3間に30〜40nm程度のギャップをもつパターンを描画する。さらに、このパターンに直交するようにソースあるいはドレイン電極2,3から50nmのギャップをもつゲート電極対31,32のパターンも併せて描画する。この作製したパターンにクロム(Cr)を5nm、金(Au)を15nm蒸着し、リフトオフすることで、シリコン熱酸化膜基板上に金電極パターンを作製する。
以上のプロセスを経ることで分子素子を作製する。
図25及び図26から、第1の電極2としてのソース電極と、第2の電極3としてのドレイン電極との隙間が3〜5nmであることが分かる。よって、10nm以下の幅のナノギャップ電極が作製できていることが分かる。
以上のステップを経ることで分子素子が作製できたことを確認した。
1A:導電性基板
1B:絶縁層
2:第1の電極(ソース電極)
3:第2の電極(ドレイン電極)
4、5:自己組織化単分子膜
4A、5A:第1の官能基
4B、5B:第2の官能基
6、6a、6b、6c:金属内包フラーレン
6A:フラーレン
6B:金属原子
6C:双極子モーメント
7:外部電界
8:第1のトンネル接合
9:第2のトンネル接合
10、20、30:分子素子
11:可変直流電源
12:電流計
21、31:第3の電極(第1のゲート電極)
32:第4の電極(第2のゲート電極)
Claims (8)
- 第1の電極と、該第1の電極上に配置される第1の自己組織化単分子膜と、第2の電極と、該第2の電極上に配置される第2の自己組織化単分子膜と、上記第1の自己組織化単分子膜と上記第2の自己組織化単分子膜との間に配置される金属内包フラーレンと、を備え、
上記金属内包フラーレンと上記第1の電極との間には上記第1の自己組織化単分子膜を介して第1のトンネル接合が形成され、
上記金属内包フラーレンと上記第2の電極との間には上記第2の自己組織化単分子膜を介して第2のトンネル接合が形成され、
上記金属内包フラーレンに印加する電界で、上記金属内包フラーレンの双極子モーメントの方向を制御することを特徴とする、分子素子。 - 前記第1の電極と前記第2の電極とがナノオーダーの間隙で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の分子素子。
- 前記金属内包フラーレンに外部電界を印加して、該金属内包フラーレンの双極子モーメントを多段に変化させ、多段スイッチとして動作させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の分子素子。
- 前記第1の電極と前記第2の電極との配置方向に対し直交する方向に、ゲート電極を備えることを特徴とする、請求項1に記載の分子素子。
- 前記第1の電極と前記第2の電極との配置方向に対し直交する方向の両側に、一対のゲート電極を備えることを特徴とする、請求項1に記載の分子素子。
- 前記一対のゲート電極に電圧を印加し、前記金属内包フラーレンのオフセット電荷を変えることにより第1及び第2の電極間の電流を制御し、排他的論理和回路(XOR)又は排他的論理和の否定回路(XNOR)の動作を行わせることを特徴とする、請求項5に記載の分子素子。
- 前記自己組織化単分子膜は、前記第1又は第2の電極となる金属原子に化学吸着する第1の官能基と、該第1の官能基に結合する第2の官能基とから成り、
上記第1の官能基が、チオール基、ジチオカルバメート基、キサンテート基の何れかの基であることを特徴とする、請求項1に記載の分子素子。 - 前記自己組織化単分子膜の第2の官能基が、アルカン、アルケン、アルカン又はアルケンの水素分子の一部又は全部をフッ素に置換したもの、アミノ基、ニトロ基、アミド基の何れかの基であることを特徴とする、請求項7に記載の分子素子。
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