JP5139624B2 - スピラエ属植物抽出液処理方法および害虫忌避剤 - Google Patents

スピラエ属植物抽出液処理方法および害虫忌避剤 Download PDF

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Description

本発明は、植物由来の新規な害虫忌避剤に係わり、さらに詳しくはスピラエ(Spiraea)属植物の葉、花、枝、茎、若しくは根の抽出物を有効成分とするものに関する。
従来から、防虫剤や虫避け剤として、ナフタリン、パラジクロールベンゾールなどが広く用いられている。また、スプレーやジェル、フォームなどの害虫忌避剤も野外などで広く使用されている。これらは、工業的に安価大量に得られるものである。一方、昔から樟脳や月桂樹、ユーカリの精油、各種ハーブなど、天然植物由来の防虫剤や虫避け剤も知られている。
ただ、最近ではパラジクロールベンゾールなどの発癌性が問題になり、また虫除けスプレー等に非常に多く使用されているディート(N,N−ジエチル−mトルアミド)は、非常に効果はあるが強い突然変異性や頭痛、湿疹、記憶障害など様々な弊害をもたらすことが判明している。そのため、植物などの天然物由来のものに人気がでてきている。
例えば、最近ユーカリ精油単独或いはユーカリ、レモングラス、ミント、クローブなどの精油を混合したもの、針葉樹の樹液やハーブ等などが市販されはじめている。しかし、これら精油製品は忌避効果が持続しない(せいぜい噴霧後1〜2時間程度)し高価であり、また忌避効果は上記化学品に比べてかなり劣る。
このような観点から、本発明者は、身近にある種々な植物についてその抽出物を得て様々な試験を行っているうちに、スピラエ属植物の抽出液が優れた害虫忌避性を示すことを見いだして本発明を完成させたものである。
まず、本発明者は、キャベツに産卵のためにくるモンシロチョウを防ぐ目的で、くま笹やトベラ、月桂樹、ゆきやなぎなど、害虫の被害が少ない庭や野山の種々な植物の葉を刻んでキャベツ畑に散布してみたところ、その中の何種類かは幾分かの効果がみられた。そこで、これらのエキスを得る目的で、これらの植物の葉を水とともに破砕してその抽出液をビンに入れておいたところ、殆どの植物がカビが生えたり腐敗して嫌な臭いを発しだしたが、その中で唯一ゆきやなぎにはこのような変化が見られなかった。
しかも、ゆきやなぎの抽出液は、ビーカーに入れて炎天下で放置しておいても蒸発しにくい現象を発見した。そこで、鉄板上に抽出液を適量垂らして同様に放置しておいたところ、水分の蒸発にともない粘稠性を増し、遂には水飴状を呈するに至った。水飴状を呈するまでには、約1〜2日を要した。この水飴状物質は、速やかに水に溶解した。また、この水飴状物質は雨の日など湿気が多いときは水分を吸収して軟化した。
更に、この抽出液を入れたビーカーや、この液を振りかけたごはんや菓子類の周りには羽虫や蠅がよりつかず、また、液をこぼした辺りにはいつの間にか蟻が一匹もいなくなることに気がついた。これは、ゆきやなぎの生葉に含まれる物質が、水の蒸発を抑制する作用を有するとともに、虫などの忌避作用を有していることを意味する。ゆきやなぎに限らず、こでまり、しもつけ、しじみ花などスピラエ属に属する他の植物の場合も同様でった。但し、現在のところその物質は特定されていない。また、単独の物質であるのか、複数の物質の相乗効果であるのかも不明である。
ゆきやなぎやこでまり、しもつけ、しじみ花などは、わが国では野生或いは庭木として一般に広く分布している。しかし、これらは庭木或いは生け花として花自体を愛でる以外は他に用途がなく、薬用植物辞典類には何等の記載もない。そして、本発明者が知る限り、これらの植物の抽出物が昆虫類忌避効果を有することは従来全く知られていない。もっとも、その後ゆきやなぎについては、抗菌効果を有することが判明した(特許文献1、特許文献2)。
抽出液が腐敗しないのは、そのためとも思われる。ただ、これらの抗菌成分は、スピラエ属植物の新鮮葉や幹、実若しくは花をエタノールやブタノールで抽出し、更に酢酸エチル−ベンゼンで溶出して得られるもので、水で抽出した場合には含まれていない。しかし、水抽出物も同様に殺菌効果があるので、水抽出物の場合は、特許文献1や特許文献2に記載のものとは異なる抗菌成分が含まれているものと思われる。
特開昭50−24423号公報 特開昭50−24424号公報
忌避効果、効果の持続性ともに優れた植物由来の害虫忌避剤を提供する。
以下、本発明をゆきやなぎの場合を例にとって説明する。ゆきやなぎは、コゴメバナとも言い、3〜4月に若葉と同時に白い花がかたまって咲く。茎は株立ち状で高さは1〜3mとなる。葉は、次第に緑色を濃くし秋口から次第に黄色くなり落葉する。
当初、本発明者は、ゆきやなぎの生葉や花を採取し、水とともにミキサーに掛け、その上澄み液を実験に使用していたが、単に水に数日間浸漬したものの効果は相当劣るが同様に忌避効果が見られた。また、生葉や花を水で煮だしたものや、前記の上澄み液を加熱濃縮したものも、ある程度の忌避効果を示した。また、水とともに破砕(ミキサー掛け)して得た液は、1〜数日すると上澄み液と繊維質に分離する(後者が沈降する)。そして、1ケ月程度すると上澄み液は透明茶褐色(所謂ウイスキー色)を呈する。尚、上澄み液よりも、繊維質からなるら沈殿物の絞り汁の方が、より優れた昆虫類忌避効果を示す。また、上澄み液と繊維質の分離後、液全体の攪拌と分離を繰り返すと、理由はわからないが上澄み液が濃色になったり逆に淡色になったりすることがある。
この上澄み液は、当初は薄い褐色で青臭い匂いがするが、熟成が進むにつれて(1ケ月程度)濃い透明な褐色になり、匂いは紫蘇のような匂いから梅酒と紫蘇が混ざったような特有の芳香を示すようになる。このままの状態で3年以上経っても、腐敗などは生じない。害虫忌避の効果は、1ケ月程度から次第に強くなる。このような変化は、何らかの化学変化によるか、或いは酵素の働きによるものと推察される。味も変化するが、いずれも幾分かの渋味や苦味が感じられる。
尚、上澄み液は水分を蒸発させると、容器の底に粘稠な溶液が少量残る。この溶液は、上澄み液と同様の匂いがし、水を加えるとまた元の上澄み液に戻る。この溶液、戻った上澄み液も、同様に害虫忌避効果を示す。このことから、本発明の植物抽出物には、保湿効果と言うか、化学物質を包み込む効果があることが判る。
一方、上澄み液を除去した残り滓と言うか残渣物(1ケ月以上経過のもの)にも、上澄液と同等の害虫忌避効果が認められる。従って、この滓を皿などに入れて部屋の隅にでも置いておけば、虫除けの効果がある。或いは、滓を十分に乾燥して線香のようにして使用してもよい。
溶媒として、水に代えてエタノールを用いてミキサーに掛けた場合、上澄み液を分取したものは水の場合に比べて蒸発速度が早く、固く乾燥した残渣が残った。溶媒としては、この他メタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールや、含水低級アルコールも使用できる。その他、エーテル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、等の各種有機溶媒やグリセリン等の多価アルコールも使用できる。ただ、肌に使用する蚊避け剤や食材が置いてある台所で散布するものなどは、水や含水メタノール、メタノールで抽出したものが安全の面で好ましい。尚、アルコールや有機溶媒の場合、葉緑素が多く溶解するかの、液が鮮やかな緑色をしている。これに対し、水とともにミキサーに掛けた場合、やや薄い緑色をしているが、そのうちに緑褐色になってくる。
使用するゆきやなぎの部位は、葉、花、枝、茎、若しくは根のいずれでもよいが、なかでも葉、ことに新鮮な生葉が害虫忌避効果には最も好ましい。尚、水を溶媒にしてミキサーに掛けた場合、表面に浮いた繊維質に稀にカビが生えることがある。その理由は定かではないが、植物や容器の洗浄が不十分なことによるのかも知れない。その場合、カビが付着した繊維質部分を除去し、全体を攪拌すると繊維質は沈殿し、その後カビは殆ど生じない。尚、稀に酷くカビが生えることがある。この場合、上澄み液は腐敗臭を示し、害虫忌避効果も少ない。
一方、熟成が進んだ上澄み液(抽出液)は、容器に蓋をせずそのまま常温で保管しておいても、腐敗やカビは一切生じない。また、上述のように、抽出液は梅の実や紫蘇の葉等の仄かな植物の匂いする。この匂いが気になる場合、少量の月桂樹の葉やハッカその他のハーブ類等と一緒にミキサーに掛けたり、ハーブ類など芳香性のある植物の抽出物やエキスを微量添加しておくと、匂いが消える。
抽出物の処理物とは、抽出液を濃縮したり希釈したり精製したり或いは粉末化したものを言う。濃縮は、抽出液を加熱して水分を減らすことを言うが、成分の熱の影響を避けるために、減圧して行うとよい。希釈は、水やアルコールで任意の割合で行うことができるが、防虫効果は劣る。また、通常の熱風乾燥はしにくいので、粉末化は抽出液を真空乾燥するとよい。これらの処理は、用途によって選択して行う。
本発明の抽出液には害虫忌避効果はあるが、殺虫効果はない。この意味では、ナフタリンや樟脳のような防虫剤とは異なる。従って、庭や台所で行列している蟻にこの抽出液を噴霧しても、死んだり列をみだして暴れ出すこともない。垂らした液の中を平気で歩いたりする。ところが、暫くたつと、いつの間にかその辺りには1匹の蟻もいなくなる。また、蚊や蠅もこの抽出液を噴霧したり抽出液に浸した布を吊り下げてある箇所へは一切寄りつかない。更に、昆虫以外に、蜘蛛やダンゴムシ、ナメクジなど所謂一般にムシと言われる小動物(これらの昆虫や小動物は、衛生害虫や不快害虫などと言われる)も、液を噴霧したり垂らした箇所から何時のほどにか見えなくなってしまう。このような現象が起きるのは、理由は定かではないがこれらの小動物が嫌う臭いを発することによるのではないかと思われる。その臭い成分はヒトも感じることができ、梅の実や梅酒ににた臭いがする。小動物が嫌う臭いは、単独物質か複数物質或いはその相互作用によるものかは現在のところ不明である。
尚、この抽出液には殺虫効果はないが、前述の通り殺菌効果や抗菌効果はある。従って、台所などで生ゴミを保管しておいても数日間は腐敗臭がしないうえ、蠅や小蝿を寄せつけないのでうじがわくこともなく、極めて衛生的である。この抽出液或いはその処理物に何らかの殺虫成分を混合して使用することも可能である。この場合、その混合物は、殺虫効果も併せ持つことになる。
例えば、ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、有機塩素殺虫剤などの化学合成品や除虫菊やニーム(特公平7−39332号公報)、万両(特開昭59−128319号公報)など殺虫性を有する植物エキス等を添加したり、除虫菊やニーム、万両など殺虫性を有する植物の葉や枝等を混ぜて抽出したりすることにより、本発明の抽出液に殺虫性が与えられる。また、同様の観点から、忌避効果を高めるために、DEET等の化学的忌避剤や月桂樹、カイヅカイブキ、トベラ、銀杏、よもぎなど虫忌避性を有する植物のエキスを添加したり、これらの植物の葉等を混ぜて抽出することもできる。更に、抗菌物質や保湿物質を添加してこれらの効果を強化することもできる。
尚、この抽出液は木材や竹材などに対する浸透性が極めて強い。またこの抽出液は極めて蒸発しにくく完全に乾燥することもないし、殺菌効果や抗菌効果もあるの。従って、建築材料に使用した場合、白蟻や腐敗菌に侵される心配がない。このような害虫忌避効果は、水で流されないかぎりほぼ半永久的に続く。
以上説明したように、本発明はスピラエ属植物の葉、花、枝、茎、若しくは根の抽出物を有効成分とする害虫忌避剤である。
従って、以下に述べる効果がある。
(1) 本発明の害虫忌避剤は、蚊、蠅、蟻、コバエ、ダンゴ虫、ナメクジ、蝸牛、蝶などに対して、なかんずく蚊に対して絶大なる忌避効果を示す。
(2)ナフタリン、パラジクロールベンゾール、ディートなどの化学品とは異なり、天然の植物から得られるもの故、安全性が非常に高い。また、同じ植物由来の除虫菊や樟脳と比べて、毒性(殺虫成分)を有していないので、肌に付けたり食品に付いたりした場合でも安全である。
(3)害虫忌避効果は非常に強く、ディートを有効成分とする従来型虫除けスプレーに比べても勝とも劣ることはない。しかも、その効果は、水で洗わない限り、従来の虫除けスプレーよりも遙に長持ちする。
(4)本発明の抽出物はそれ自体殺菌性や抗菌性を有しているため保存料などは必要とせず、また毒性がないので長時間その匂いをかいでも全く問題がない。また、台所等食材がある近辺に噴霧しても安心である。
(5)ゆきやなぎをはじめこでまり、しもつけ、しじみ花などスエビラ属の植物は、野生や庭木に広くみられ、また減反田での栽培にも適しており、成長も早く、手がかからなず、安価大量の入手が可能である。
(6)本発明の抽出液は、簡単な操作と装置で容易に得られるため、加工コストは安価ですむ。
(7)溶媒が水の場合、コストが非常に廉価であるとともに抽出作業を簡単安全に行うことができるとともに、溶剤を使用することによ副次的な反応が抑えられ、安全性に優れたものを得ることができる。
(8)溶媒が水の場合も、抽出液は数年間(現在3年を確認)は腐敗や変色もせず、また害虫忌避効果も持続する。
(9)本発明の抽出液は濃縮が可能であるので、海外で蚊や蠅などの昆虫に悩まされている国への輸送も低コストで行える利点がある。
ゆきやなぎの新鮮な生葉を良く水洗いした後、家庭用のミキサーに充填し、水を注ぎミキサーで3〜5分間粉砕攪拌する。これを容器に移し、1〜数日放置して固液分離する。繊維質が浮き上がったら、攪拌する。1週間位で透明な茶褐色の液体が得られた。この液は、害虫特に蚊に対して優れた忌避効果を示す。
(製法1)
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。まず、ゆきやなぎの新鮮な生葉50gを良く水洗いした後、家庭用のミキサーに充填し、水300gを注ぎミキサーで3〜5分間破砕攪拌する。これを容器に移し、1〜数日放置して固液分離する。繊維質が浮き上がったら、攪拌する。生葉の青臭い臭いがするが、1ケ月もたつとウイスキー様の赤褐色味を帯びた透明な溶液となる。この溶液は、梅果実様の臭いがする。数日間放置したのみの上澄み液300ccをビンに採り、5〜6月にかけて日向に放置したところ、1月で約270ccに減少した。
尚、ミキサーによる破砕では、生葉50gに対して、水は200〜1000ccの範囲で使用する。搾汁の場合には、非常に濃度の濃い液が得られる。
(製法2)
ゆきヤナギの花、及びコデマリの葉をそれぞれ別個に、実施例1と同様にして処理して、透明な溶液を得た。前者は、1ケ月経過後も実施例1の場合に比べて匂いも薄く、害虫忌避剤効果も劣っていた。後者は、1ケ月経過後同様な匂いはしたか幾分異なった金属的な匂いがした。効果は、実施例1の場合と同等以上であった。尚、枝を使用する場合、滓が多くなり、カビも生えやすくなる。
(製法3)
水の代わりに、含水アルコール(水150cc、エタノール150cc)を用い、実施例1と同様にしてミキサーで攪拌し上澄み液をビンに採り、同様に日向に放置したところ、20日経過後200ccに減少、28日で120ccに減少した。残液は、強いエタノール臭が残る。
(製法4)
水の代わりに、エタノール(試薬1級)180ccを用い、実施例1と同様にしてミキサーで攪拌し上澄み液をビンに採り、同様に日向に放置したところ、20日経過後100ccに減少、26日でほぼ乾燥したが残滓はべとつく状態で梅酒香がした。
(製法5)
ゆきやなぎの生葉200gを良く水洗いした後、水1Lとともに鍋に入れ、沸騰させた後弱火にして煮沸を続けた。水量が約2/3になった時点で火をとめた。煮だし汁は実施例1における1月後の色よりも濃い赤褐色を呈した。
実施例1で得られた溶液50ccに、ハーブ香水3滴を添加して攪拌した。この溶液を服地に噴霧したところ、1週間たっても香水の匂いが残っていた。
(製法6)
実施例1において、ゆきやなぎの生葉50gにカイヅカイブキの生葉10gを加えて同様に処理した。得られた溶液は、実施例1のものと同じ程度の害虫忌避効果を示した。
(安全性の確認1)
(雌雄マウスを用いた急性経口毒性試験−限度試験−:財団法人日本食品分析センター平成15年12月12日報告)
要約:検体投与群には20ml/Kgの容量の検体(本発明害虫忌避剤:実施例1で得られたもの)を、対照群には注射用水を雌雄マウスに単回経口投与し、14日間観察を行った。その結果、観察期間(平成15年11月20日〜12月12日の14日間)中には、異状及び死亡例は認められなかった。従って、検体のマウスにおける単回経口投与によるLD50値は、雌雄とも20ml/Kg以上であるものと考えられる。
投与前及び投与後のマウスの体重を測定した結果を、表1(雄)及び表2(雌)に示す。雌雄とも、対照群と比較して差は認められなかった。
Figure 0005139624
Figure 0005139624
(安全性の確認2)
実施例1で得られた溶液(1月後のもの)を広口ビンに少量入れ、2匹の蝸牛を入れてその挙動を観察した。1ケ月以上たっても生存していた。尚、その間給餌は全くしなかった。また、本発明者がウイスキーと間違えて20cc程飲み込んだが気分が悪くなるなどの現象は見られなかった。人体に付着して数日経過しても皮膚に何らの異常もなかった。尚、上述のように蟻の行列に噴霧しても死んだり逃げたりしないことから、昆虫に対する急性毒性はないことが明らかである。
(害虫忌避剤の効果の確認1−蚊)
A 通常、ある墓地内に蚊が多数おり夕方には数分間も耐えることができないほどである。そこで、夕方、周辺の山林や墓地内の墓石、地面、植栽等に溶液を約50cc散布するもその間に2ヶ所蚊に刺されたので散布後直ちに退避した。20分経過後再び現地に行くと蚊は1匹もいなかった。2時間経過後もその場所に蚊は全くいなく周辺は溶液の匂いが残っていた。翌日の夕方も蚊は1匹も見当たらなかった。このように、効果が続くことが本発明害虫忌避剤の大きな特徴である。
同様の実験を場所をかえて2回実施したが同様の結果であった。なお屋外で風のある日は風上で散布しないと効果はない。
尚、昼間同様に松の庭木の手入れの為に溶液を約50cc散布したところ、蚊は全く来なかったが、理由は明らかではないが不思議なことにトンボが数十匹集まってきた。
B 自宅居室では従来蚊取り線香その他の様々な市販品で蚊の対策をしていた。そこで、この溶液を布に浸透させて部屋の片隅に吊るして置いたところその夜は蚊に全く刺されなかった。カーテンの陰に2匹いたのが飛んでいるようだったが刺されるようなことはなかつた。翌朝部屋には溶液の匂いが残っていた。4日間同様の効果が継続していたが布が少し乾いてきたので今度は溶液を3回布に噴霧しておいた。その後も蚊の姿は無く叉蚊が死んだ形跡も見られなかった。部屋にはすこしでも匂いが残っていれば蚊は飛来しないことを確信した。この夏(平成15年)蚊取り線香その他の虫除剤を使用することはなかった。
C 平成15年7月下旬のある日の19時30分頃の、自宅屋外露天駐車 場(100m2 )周辺の果樹園。1分間に3箇所蚊に刺される状況であり溶液を周辺に12回噴霧更に地面に3回噴霧しその間1箇所蚊に刺される。直ちに退避する。20分経過後現場に行くと蚊は1匹もいなかった。
しばらくしても蚊がいないのであらためて上半身裸で蚊の飛来を待つ事10分経過するも蚊の気配はなかった。シートを持参し星空を見ているうちに寝てしまった。気が付いたら23時であった。蚊にどこも刺されてはいなかった。周辺に溶液の匂いがしていた。〈当日無風〉
D Cと同じ部屋で、以前ユーカリ、レモングラス、ミント、クローブなどの精油を混合した忌避剤を数回噴霧してみた。しかし、効果は1時間程度した持続しなかった。
(害虫忌避剤の効果の確認2−ダンゴ虫)
A 図1に示すように、62cm×40cm深さ10cmのプラスチック容器1の3つの隅に、水に浸した布地(3cm×2cm)2、DEET製剤(10%:噴霧式)を5回噴霧した布地3、及び実施例1で得られた害虫忌避剤に浸した布地4をセットした。この容器の中に、ダンゴ虫20匹を入れた。ダンゴ虫はいっせいに動き出し隅から隅へあるいは一周したりと様々な動きをしていたが、4時間程度経過すると8匹の虫が水を浸透した布に集まりその場所で動かなくなった。更に時間の経過とともにその数は多くなるも10匹程度は常に動きまわっていた。8時間経過後は1匹を除いて全て水のところに集まっていた。
その結果、本発明の害虫忌避剤はDEET製品以上に忌避効果があることが判明した。隅の布の置き場所容器の方向 容器の場所を変えても結果は同じであった。3日経過後その場所から動かなくなり殆んど布の下に入り込んだ。容器中に死んだダンゴ虫は1匹もいなかった。実験を終了し虫を屋外に放したところ全て何処かににげた。
植木鉢の下にダンゴ虫が8匹いたので溶液を散布しておいたところ10分後には1匹もいなくなっていた。他の植木鉢の下にダンゴ虫が3匹とコーロギが2匹いたので同様に散布しておいたところ10分後ダンゴ虫はいなくなったがコーロギは2匹ともいた。その後コーロギのテストをしたが忌避効果は無かった。ダンゴ虫がいつも集まる場所に溶液を噴霧しておいたところ虫はこなかった。他の場所でも同様の結果であった。植木鉢の下は溶液の匂いが残っていた。雨が降ると水溶性溶液の為効果は半減する。尚、ダンゴ虫に直接溶液をかけても虫が死ぬることは無い。
(害虫忌避剤の効果の確認3−蟻)
A 図2に示すように、直径10cm程度の2枚の小皿6に、市販のかまぼこ7を同じ大きさに切って載せたものを台所の流しの上にセットした。2個の皿6を接触させ(図2では幾分離れている)、1個には本発明の害虫忌避剤溶液を噴霧してアリ(家アリと言うか体長0.5mm程度の小さな蟻)のくるのを待った。翌日何もしないかまぼこ(図2(b))には数百匹のアリがきていた。溶液噴霧のかまぼこ(図2(a))には全くきていなかった。2日経過するも状況は同じであった。アリのいる方に溶液を噴霧したらアリは直ちに退散し10分以内にすべてのアリがいなくなった。死んだアリ1匹もいなかった。更に、普段アリがくる所に散布しておくとその場所にはアリは来なくなる。
B 行列しているアリに散布するとその場所で混乱が発生し、70%は引き返すが残りは場所を変えて行列をつくる。その内いなくなることが多い。事前に一帯に散布しておけばその場所にはアリは来ない。
(害虫忌避剤の効果の確認4−アオムシ)
キャベツの葉に居た2匹のアオムシを捕獲し地面においた。逃げようとするので其の前方5cmの所に溶液を幅1cm長さ5cmの長方形で虫の進行方向に直角になるよう溶液を噴霧しておくとその1cm手前で頭を大きく持ち上げ、そのまま90度方向転換しその場所を避けて逃げていった。2匹とも同じ行動をとった。
(害虫忌避剤の効果の確認5−ナメクジ・カタツムリ、蝶)
ナメクジ・カタツムリに付いても同様の実験をしたが結果は実施例12と全く同じであった。キャベツの葉に散布しておくとナメクジやカタツムリ来なかった。蝶は飛来してきても、葉には止まらなかった。屋外散布の時は降雨で流失するので散布時期を選定する必要がある。
(害虫忌避剤の効果の確認6−蜘蛛)
松の木に蜘蛛の巣が6箇所あり噴霧したあと蜘蛛の巣を除去したが、それ以降は1週間たっても蜘蛛の巣は見当たらなかった。
(害虫忌避剤の効果の確認7−羽虫)
夏季には玄関の門灯にたくさんの虫が飛んでくるので門灯に直接溶液を噴霧したところ虫の飛来が激減した。以降効果は長期間持続するが再度噴霧しておくほうがより効果的である
(害虫忌避剤の効果の確認8−蠅)
A 鮮魚(l0cmの小鯵)に溶液を噴霧し日の当る屋外に放置していたが蝿は近くまではくるが 魚にはとまらず飛び去った。同様に数回(別の蝿)も飛来してきたが飛び去った。そのこ蝿 はこなくなった。屋外に生ゴミを置き溶液を噴霧して放置した。蝿がきて生ゴミに止まったがすぐとびさった。近くまできて生ゴミの上 を旋回してそのまま飛び去るのもいた。その後生ゴミは腐敗臭は発生せずコバエも1匹もよりっかなかった。蛆虫の発生も当然見られなかった。生ゴミの近くは溶液の匂いがしていた。また、防腐効果もあり更に効果が長期持続することも確認した。(噴霧の方法によるが5日以上は効 果は持続)
B 例年干し柿を吊るしておくと沢山のコバエがくるが対策がなかった。干し柿を吊るした下に溶液を少し皿に入れて置いたところその後はコバエが全くいなくなつた。
(害虫忌避剤の効果の確認9−コバエ)
果物リンゴ:みかん等の皮を屋外に放置しておくと数日経過すると多くのコバエがよりつくので皮に直接溶液をスプレイで2〜3回噴霧しておくとコバエは全ていなくなりその後は1匹もこなかった。保湿性成分が溶液にあるので有効効果が長期間持続する。
本発明の害虫忌避剤は、害虫特に蚊に対して特異的といってよい程の効果を示す。しかも、植物由来のもの故安全性は従来のDEETなどに比べて格段に高い。更に、本発明害虫忌避剤の原料となるゆきやなぎなどスピラエ属の植物は、野生や庭木に広くみられ、また減反田での栽培にも適しており、成長も早く、手がかからなず、安価大量に入手できる。しかも、簡単な操作と装置で容易に得られるため、加工コストは安価でむ。
本発明害虫忌避剤を用いた実験の状態を示す平面図である。(実施例10 本発明害虫忌避剤を用いた他の実験の状態を示す平面図である。(実施例11
符号の説明
1 プラスチック容器
2 水を浸み込ました布切
3 DEETを浸み込ました布切
4 本発明害虫忌避剤を浸み込ました布切
5 ダンゴ虫
6 小皿
7 蒲鉾の1片
8 家アリ

Claims (5)

  1. ゆきやなぎの生葉、ゆきやなぎの花又はコデマリの生葉を水と破砕攪拌して得られる上澄み液を1ケ月以上熟成することを特徴とするスピラエ属植物抽出液処理方法。
  2. ゆきやなぎの生葉、ゆきやなぎの花又はコデマリの生葉を水と破砕攪拌して得られる上澄み液を1ケ月以上熟成したものを有効成分とする害虫忌避剤。
  3. 合成あるいは天然の殺虫剤や忌避剤を添加したものである、請求項2記載の害虫忌避剤。
  4. 月桂樹、カイヅカイブキ、トベラ、銀杏、よもぎなど虫忌避性を有する植物、或いは除虫菊やニーム、万両など殺虫性を有する植物の葉や枝等を、水、アルコール等の有機溶媒、含水有機溶媒に浸漬したり煮出したり或いは搾汁、粉砕して得るものを、ゆきやなぎの生葉、ゆきやなぎの花又はコデマリの生葉を水と破砕攪拌して得られる上澄み液を1ケ月以上熟成したものに対して30%以下の割合で混合して得るものである、請求項3記載の害虫忌避剤。
  5. ハーブ類など芳香性のある少量の植物(葉等)を一緒に破砕したり、その抽出物やエキスを微量添加したものである、請求項2、請求項3又は請求項4記載の害虫忌避剤。
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