JP5138426B2 - 組立式クランク軸 - Google Patents
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また、クランク軸において、クランクジャーナルには、耐摩耗性および疲労強度を向上させるための熱処理として、例えば高周波焼入れが行われる。(例えば、特許文献2参照)
例えば、図5に示されるように、ピン孔fの近傍にクランクジャーナルaとクランクウェブbとの境界部dや、クランクウェブbにおいてクランクジャーナルaを支持する軸受が軸方向で当接する段部eが形成されたクランク軸cでは、図6に示されるように、境界部dや段部eの段差部e1での応力集中による高応力部S1,S2が存在する。
このうち、境界部dは、クランクジャーナルaに隣接することから、高周波焼入れを施すための加熱コイルhによるクランクジャーナルaの焼入れの際に、クランクジャーナルaと共に焼入れによる硬化領域が形成される焼入れ範囲(図6に、二点鎖線のハッチングで示される。)内にあるので、疲労強度が向上して、高い応力にも十分に耐えることができる。一方、段差部e1は、境界部dに比べてクランクジャーナルaから径方向で遠方に位置するため、加熱コイルhによる熱が十分に伝わらず、焼入れによる十分な強度を確保することが困難な部分である。このため、ピン孔f近傍の段差部e1近傍における疲労強度を高めるには、クランクジャーナルaのための焼入れとは別に焼入れを施したり、浸炭処理を施す必要が生じて、クランク軸cのコスト増加を招来する。
前記段部の外周側段差部が、周方向で前記ピン孔に近い近接部と、周方向で前記近接部よりも前記ピン孔から遠い遠方部とに二分され、前記近接部の径方向幅を規定する、クランク軸回転中心線から該近接部外周までの半径が、前記遠方部の径方向幅を規定する、クランク軸回転中心線から該遠方部外周までの半径より小さいように前記近接部が形成されたことを特徴とする組立式クランク軸である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の組立式クランク軸において、径方向で前記境界部と前記ピン孔との間において、前記段部が連続して形成されることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の組立式クランク軸において、前記近接部における少なくとも前記ピン孔寄りの応力集中部で焼入れがなされていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1、2または3記載の組立式クランク軸において、前記近接部は、前記ピン孔に隣接した部位において途切れることなく同じ径方向幅で連続して形成されることを特徴とする。
請求項2記載の事項によれば、段部が、近接部を含むピン孔に近接した部位において途切れることがなく、したがって全周またはほぼ全周に渡って形成される。この結果、軸受からのスラスト荷重を段部の全周またはほぼ全周で負担できるので、段部の耐久性が向上し、さらにはクランク軸の耐久性が向上する。
請求項3、4記載の事項によっても、上記した効果が得られる。
図1〜図3は、第1実施形態を説明するための図である。
図1を参照すると、本発明が適用された組立式クランク軸Cは、クランク機構を備える内燃機関に備えられる。単気筒の4ストローク内燃機関は、ピストン3が往復運動可能に嵌合するシリンダ孔1aが形成されたシリンダブロック1と、該シリンダブロック1に結合されたクランクケース2とから構成される機関本体を備える。
ここで、第1,第2クランク部材10,20およびクランクピンPは、互いに別個の部材であると共に組立式クランク軸Cを構成するクランク構成部品である。
転がり軸受である各軸受5,6は、クランクジャーナル12,22に嵌合して保持されるインナレース5a,6aと、クランクケース2に圧入されて保持されるアウタレース5b,6bと、両レース5a,5b;6a,6bの間に保持される転動体5c,6cとを備える。
各クランクジャーナル12,22には、耐摩耗性および疲労強度向上のための熱処理として焼入れが施される。焼入れは、高周波焼入れであり、図5(a)に示される加熱コイルhと同様の、加熱部材としての加熱コイルにより加熱される。
なお、軸方向とは、クランク軸Cの回転中心線Lcに平行な方向であり、径方向および周方向とは、それぞれ、回転中心線Lcを中心とする径方向および周方向である。
また、第2クランク部材20のクランクジャーナル22、ピン孔25および段部26の構造および焼入れは、第1クランク部材10と基本的に同様であるので、以下では、第1クランク部材10について説明する。
段部16は、インナレース5aが当接すると共にインナレース5aから主に軸方向での荷重(以下、「スラスト荷重」という。)が作用する当接面16sと、外周縁において当接面16sから軸方向に、この実施形態では軸方向内方に向かって延びている外周側段差部30を有する。
ここで、軸方向内方は、軸方向において、軸方向でのクランクピンPの中心点を含むと共に回転中心線Lcに直交する基準平面Hに向かう方向であり、軸方向外方は、軸方向内方とは反対方向である。
また、近接部31および遠方部32の形状は、軸方向から見て、基準線L0に関して線対称である。
クランクジャーナル12には焼入れが施されており、クランクウェブ13には、クランクジャーナル12を支持する軸受5のインナレース5aが軸方向で当接する段部16が境界部14の周囲に形成された内燃機関の組立式クランク軸Cにおいて、段部16の外周側段差部30が、周方向でピン孔15に近い近接部31と、周方向で近接部31よりも遠い遠方部32とに二分されるとき、近接部31は、遠方部32よりも径方向でクランクジャーナル12に近い位置にあることにより、軸受5が当接する段部16の段差部30のうちで、周方向でクランクピンPが圧入されるピン孔15に近い近接部31は、段差部30の遠方部32に比べて径方向内方に位置するので、該近接部31をクランクジャーナル12に施された焼入れによる焼入れ範囲内に位置させることができる。この結果、近接部31が焼入れにより形成される硬化領域内に位置させることができるので、クランクウェブ13においてピン孔15の近傍に位置する近接部31近傍での疲労強度が向上する。しかも、近接部31でのこの疲労強度の向上は、クランクジャーナル12に施される焼入れによる熱を利用して行われるので、ピン孔15近傍の段差部30近傍での疲労強度を向上させるために、クランクジャーナル12の焼入れとは別の焼入れや浸炭処理が不要になって、クランク軸Cのコストが削減される。
なお、この第2実施形態の別の形態として、図4に二点鎖線で示されるように、ピン孔151の一部が近接部31よりも径方向内方に形成されていて、段差部30の近接部31がピン孔151により途切れていてもよい。
径方向で境界部14とピン孔15,151との間において、段部16が連続して形成されていることにより、段部16が、近接部31を含むピン孔15,151に近接した部位において途切れることがなく、したがって全周またはほぼ全周に渡って形成される。この結果、軸受5(図1参照)からのスラスト荷重を段部16の全周またはほぼ全周で負担できるので、段部16の耐久性が向上し、さらにはクランク軸Cの耐久性が向上する。
ここで、ほぼ全周とは、段部16が、前述した「ほぼ環状」である場合である。
クランク軸は、第2クランク部材20とクランクピンPとが一体成形されたクランク構成部品と、第1クランク部材10からなるクランク構成部品とから構成されてもよい。
内燃機関は、多気筒内燃機関であってもよい。また、クランク軸は内燃機関以外の機械に備えられてもよい。
C…クランク軸、P…クランクピン。
Claims (4)
- 一体成形されたクランクジャーナル(12)およびクランクウェブ(13)と、前記クランクウェブ(13)に形成されたピン孔(15, 151)に圧入されたクランクピン(P)とを備える組立式クランク軸であって、前記クランクジャーナル(12)には焼入れが施されており、前記クランクウェブ(13)には、前記クランクジャーナル(12)を支持する軸受(5)が軸方向で当接する段部(16)が、前記クランクジャーナル(12)と前記クランクウェブ(13)との境界部(14)の周囲に形成され、前記段部(16)の外周側に環状の段差部(30)が形成された組立式クランク軸において、
前記段部(16)の外周側段差部(30)が、周方向で前記ピン孔(15)に近い近接部(31)と、周方向で前記近接部(31)よりも前記ピン孔(15, 15 1 )から遠い遠方部(32)とに二分され、
前記近接部(31)の径方向幅(w1)を規定する、クランク軸回転中心線(Lc)から該近接部(31)外周までの半径(d1)が、前記遠方部(32)の径方向幅(w2)を規定する、クランク軸回転中心線(Lc)から該遠方部(32)外周までの半径(d2)より小さいように前記近接部(31)が形成されたことを特徴とする組立式クランク軸。 - 径方向で前記境界部(14)と前記ピン孔(15, 151)との間において、前記段部(16)が連続して形成される請求項1記載の組立式クランク軸。
- 前記近接部(31)における少なくとも前記ピン孔(15, 15 1 )寄りの応力集中部で焼入れがなされている請求項1または2記載の組立式クランク軸。
- 前記近接部(31)は、前記ピン孔(15, 15 1 )に隣接した部位において途切れることなく同じ径方向幅(w1)で連続して形成される請求項1、2または3記載の組立式クランク軸。
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