以下に添付図面を参照して、本発明に係る流量制御弁、方向制御弁ユニット及び油圧回路の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態である方向制御弁ユニットを示す油圧回路図、図2−1は、その要部を拡大して示したものである。ここで例示する油圧回路は、例えばフォークリフトのリフトシリンダとして適用される単動型の油圧シリンダ1に対して油の供給制御及び排出制御を行うためのもので、方向制御弁ユニット10を備えている。
方向制御弁ユニット10は、バルブ本体11にドレンポート12、シリンダポート13、ポンプポート14、入力ポート15及び出力ポート16を有するとともに、これらのポート12,13,14,15,16を連通するように設けたスプール孔17に給排制御スプール20及び流量制御スプール30を備えて構成してある。
バルブ本体11のドレンポート12は、図1において最も左側に位置するポートであり、絞り40を有した出力油路41を介して油タンクTに接続してある。シリンダポート13は、ドレンポート12に隣接するポートであり、パイロットチェック弁42を有した給排油路43を介して油圧シリンダ1のピストン室1aに接続してある。パイロットチェック弁42は、油圧シリンダ1のピストン室1aに対する油の通過を常時許容する一方、パイロット圧がドレンされた場合にのみ油圧シリンダ1のピストン室1aからの油の通過を許容するものである。
パイロットチェック弁42のパイロット圧をドレンするためのパイロットドレン通路44は、電磁切替弁45を介して給排制御スプール20のドレン通路21に連通している。ドレン通路21は、給排制御スプール20の中心部に軸心方向に沿って形成した空所であり、径方向に沿って形成したキリ孔22を介して給排制御スプール20の外周面に開口している。電磁切替弁45は、制御信号が与えられた場合にのみパイロットドレン通路44を開放するものである。電磁切替弁45を開放させるための制御信号は、例えばフォークリフトの運転席に運転者が着座した場合に出力されるように構成してある。
ポンプポート14は、連絡ポート18を挟んでシリンダポート13に隣接するポートであり、供給油路46を介して油圧ポンプPに接続してある。入力ポート15は、サブポート19を挟んでポンプポート14に隣接するポートであり、上述のパイロットチェック弁42を有した給排油路43を介して油圧シリンダ1のピストン室1aに接続してある。出力ポート16は、入力ポート15に隣接するポートであり、上述の絞り40を有した出力油路41を介して油タンクTに接続してある。
給排制御スプール20及び流量制御スプール30は、それぞれ外周面の適宜箇所に切欠を有した円柱状のスプール部20S,30Sを備えたもので、互いにスプール部20S,30Sの軸心を合致させた状態で相互に端面を当接させ、かつそれぞれが軸心方向に沿って移動可能となるようにバルブ本体11のスプール孔17に嵌入してある。
このうち、給排制御スプール20のスプール部(以下、「リフトスプール部20S」という)は、バルブ本体11のスプール孔17においてドレンポート12、シリンダポート13、連絡ポート18、ポンプポート14に亘る部位に配設してあり、軸心方向に沿って移動させた場合にこれらドレンポート12、シリンダポート13、連絡ポート18、ポンプポート14の接続状態を切り換えるものである。
具体的に説明すると、リフトスプール部20Sが図1に示す中立位置に配置された状態においては、リフトスプール部20Sの外周面に形成した第1切欠20Saが連絡ポート18にのみ位置するとともに、リフトスプール部20Sの第2切欠20Sbがシリンダポート13にのみ位置する。この結果、バルブ本体11のドレンポート12、シリンダポート13、連絡ポート18及びポンプポート14は、それぞれが互いに遮断された状態となる。このとき、上述のドレン通路21に連通するキリ孔22は、ドレンポート12とシリンダポート13との間においてドレンポート12の僅かに右方側に位置しており、その外周面の開口がスプール孔17の内周面によって閉塞された状態にある。
中立位置からリフトスプール部20Sが図1において右方側(以下、「リフト側」という)に移動した場合には、図4に示すように、リフトスプール部20Sの第1切欠20Saによってポンプポート14と連絡ポート18とが互いに接続されるとともに、リフトスプール部20Sの外周面に形成した第2切欠20Sbによって連絡ポート18とシリンダポート13とが互いに接続された状態となる。つまり、中立位置からリフトスプール部20Sが図1においてリフト側に移動すると、バルブ本体11のポンプポート14とシリンダポート13とが互いに接続されることになる。これら第1切欠20Sa及び第2切欠20Sbによるポンプポート14とシリンダポート13との間の開口面積は、リフトスプール部20Sの移動量が増加するに従って増大するように構成してある。尚、上述のドレン通路21に連通するキリ孔22もリフトスプール部20Sの移動によって変位するが、リフトスプール部20Sが図1においてリフト側に移動する場合、図4に示すように、キリ孔22はスプール孔17においてドレンポート12とシリンダポート13との間に位置し、依然としてスプール孔17の内周面によって閉塞された状態を維持する。
これに対してリフトスプール部20Sが中立位置から図1において左方側(以下、「ダウン側」という)に移動すると、図5、図6、図7、図8に順次示すように、第2切欠20Sbによってドレンポート12とシリンダポート13とが互いに接続された状態となる。第2切欠20Sbによるドレンポート12とシリンダポート13との間の開口面積は、リフトスプール部20Sのダウン側への移動量が増加するに従って増大するように構成してある。尚、リフトスプール部20Sがダウン側に移動した場合には、ドレン通路21のキリ孔22が直ちにドレンポート12と連通する位置に移動し、ドレンポート12とドレン通路21とが互いに接続されることになる。
一方、流量制御スプール30のスプール部(以下、「ダウンコンスプール部30S」という)は、バルブ本体11のスプール孔17において入力ポート15及び出力ポート16に亘る部位に配設してあり、軸心方向に沿って移動させた場合にこれら入力ポート15及び出力ポート16の間の接続状態を切り換えるものである。
具体的に説明すると、ダウンコンスプール部30Sが図1に示す中立位置に配置された状態においては、ダウンコンスプール部30Sの外周面に形成した第3切欠30Saが出力ポート16にのみ位置し、バルブ本体11の入力ポート15及び出力ポート16が互いに遮断された状態となる。
中立位置からダウンコンスプール部30Sが図1においてダウン側に移動した場合には、図5、図6、図7、図8に順次示すように、ダウンコンスプール部30Sの第3切欠30Saが入力ポート15と出力ポート16とに亘る部位に位置し、これら入力ポート15及び出力ポート16が互いに接続されることになる。第3切欠30Saによる入力ポート15と出力ポート16との間の開口面積は、ダウンコンスプール部30Sのダウン側への移動量が増加するに従って増大するように構成してある。特に、本実施の形態では、図9の(c)に示すように、入力ポート15と出力ポート16との間の開口面積が曲折点Xをもって変化し、ダウンコンスプール部30Sがダウン側に移動した場合、動作初期よりも動作後期の変化量が大きくなるように第3切欠30Saが構成してある。
これに対してダウンコンスプール部30Sが中立位置から図1においてリフト側に移動した場合には、図4に示すように、第3切欠30Saが出力ポート16にのみ位置することになり、入力ポート15と出力ポート16とが互いに離隔された状態を維持する。
尚、本実施の形態で適用するダウンコンスプール部30Sは、いわゆる「段差スプール」と称されるもので、図1において第3切欠30Saよりも右方側に位置する部分30SRの外径が、第3切欠30Saよりも左方側に位置する部分30SLの外径よりも大きく構成してある。このダウンコンスプール部30Sを左側の端面から見た場合、図2−2に示すように、二つの部分30SRと30SLとの間に円環状の段差部分30Cが構成されることになる。
図1からも明らかなように、本実施の形態では、給排制御スプール20のリフトスプール部20Sにおいてバルブ本体11の外部に突出する端部に操作入力部20Mが設けてある一方、流量制御スプール30のダウンコンスプール部30Sにおいてバルブ本体11の外部に突出する端部にリテーナ部30Mが設けてある。
給排制御スプール20の操作入力部20Mは、図示せぬ操作レバーの操作に応じてリフトスプール部20Sを移動させるための動力が入力される部分であり、互いに軸心を合致させた状態でリフトスプール部20Sの端部に固着してある。この操作入力部20Mは、基端部がリフトスプール部20Sとほぼ同じ外径を有する一方、リフトスプール部20Sとの連結部分が細径の円柱状を成すもので、細径に構成した連結部分20Maに一対のバネ座23を有している。バネ座23は、それぞれ中心孔に連結部分20Maが貫通し、操作入力部20Mの基端部とリフトスプール部20Sとの間を互いに近接離反するように移動可能に配設したものである。これらバネ座23の間には、両者を互いに離隔した状態に維持するリフト側押圧バネ24が介在させてある。これらバネ座23及びリフト側押圧バネ24は、バルブ本体11に取り付けたバネケース25の内部に収容してある。バネケース25は、リフト側押圧バネ24の押圧力により一対のバネ座23が互いに最も離隔した状態において、一方のバネ座23がワッシャプレート26を介してバルブ本体11の外表面に当接し、かつ他方のバネ座23がバネケース25の内壁面に当接するだけの寸法に構成してある。尚、図1中の符号27は、バルブ本体11とリフトスプール部20Sとの間に介在させたオイルシール部材である。
上記のように構成した給排制御スプール20は、操作レバー(図示せず)に操作力を付与しない場合、リフト側押圧バネ24によって一対のバネ座23がそれぞれ連結部分20Maの両端に位置するとともに、これらバネ座23がバネケース25の内壁面及びバルブ本体11の外表面に当接した状態に維持され、リフトスプール部20Sが図1に示した中立位置に配置されることになる。この中立位置から操作レバー(図示せず)を操作し、リフト側押圧バネ24の押圧力に抗して操作入力部20Mに操作力を与えれば、リフトスプール部20Sを図1においてダウン側及びリフト側の両方向に移動させることができる。リフトスプール部20Sを移動させた状態から操作入力部20Mに与えていた操作力を除去すると、リフト側押圧バネ24の押圧力によってリフトスプール部20Sが中立位置に復帰する。
一方、流量制御スプール30のリテーナ部30Mは、バルブ本体11の外表面に取り付けたパイロットケース31の内部に収容してある。このリテーナ部30Mは、一端部が他端部よりも太径の円柱状を成し、かつ一端面に収容凹部30aを有したもので、ダウンコンスプール部30Sの端部を収容凹部30aの内部に配置した状態でダウンコンスプール部30Sの延長上に配設してある。
リテーナ部30Mを収容するパイロットケース31は、図1及び図2−1に示すように、その内部の軸心方向に沿った長さがリテーナ部30Mよりも大きく構成してあるとともに、リテーナ部30Mの一端部側に位置する内周面に環状の摺接リブ31aを有している。摺接リブ31aは、その内周面を介してリテーナ部30Mの一端部に嵌合するように構成したものである。この摺接リブ31aは、リテーナ部30Mの一端部外周面に摺接することによってリテーナ部30Mの軸心方向に沿った移動を案内するとともに、パイロットケース31の内部を2つの室32,33に分割する機能を有している。パイロットケース31とリテーナ部30Mの他端部との間に構成される室(以下、「圧力室32」という)、並びにパイロットケース31とリテーナ部30Mの一端部及びバルブ本体11の間に構成される室33(以下、「パイロット室(パイロット油路)33」という)は、リテーナ部30Mの移動に伴ってそれぞれの容積が変化するものである。尚、本実施の形態では、ダウンコンスプール部30Sが上述の中立位置に配置され、かつリテーナ部30Mの端面とダウンコンスプール部30Sの端面とが互いに当接した状態においてリテーナ部30Mの両端面がパイロットケース31の内壁面及びバルブ本体11の外表面からそれぞれ離隔するようにパイロットケース31の寸法が設定してある。
パイロットケース31の圧力室32には、リテーナ部30Mとの間にスプールバネ(押圧部材)34が配設してある。スプールバネ34は、ダウンコンスプール部30Sの軸心に沿って配設したコイルバネであり、リテーナ部30Mを常時ダウンコンスプール部30Sに向けて押圧し、さらにダウンコンスプール部30Sの端面をリフトスプール部20Sの端面に押圧するものである。
パイロットケース31のパイロット室33には、導入油路(パイロット油路)35及び導出油路36が接続してある。導入油路35は、上述した絞り40の下流側において出力油路41に接続し、出力油路41を通じてパイロット室33を油タンクTに接続するものである。この導入油路35は、パイロットケース31の内周面において摺接リブ31aよりもバルブ本体11に近接する位置に開口するように形成してある。導出油路36は、パイロット室33とバルブ本体11のサブポート19の間を互いに接続するもので、ダウンコンスプール部30Sの軸心方向に沿ってその中心部に形成し、ダウンコンスプール部30Sの両端面に開口している。図2−1からも明らかなように、このダウンコンスプール部30Sの導出油路36には、リテーナ部30Mに近接する端部にバネ収容部36a及び通孔36bが設けてある。バネ収容部36aは、内径を大きく構成した部分であり、その内部に補助バネ37が配設してある。補助バネ37は、ダウンコンスプール部30Sに対してリテーナ部30Mを離隔する方向に押圧するものである。この補助バネ37は、圧力室32に配設したスプールバネ34よりも設定荷重が小さく設定してある。通孔36bは、ダウンコンスプール部30Sの径方向に沿って形成した開口であり、バネ収容部36aとパイロット室33との間を常時連通している。
図1及び図2−1に示すように、パイロットケース31の圧力室32とパイロット室33との間には、絞り油路50及び連絡油路60が並列的に設けてある。絞り油路50は、リテーナ部30Mの軸心方向に沿ってその中心部に形成した通路であり、その中間部に可動弁体51を備えている。可動弁体51は、内部に細孔51aを有し、絞り油路50に設けた弁座52に離接可能に配設したものである。この絞り油路50では、圧力室32からパイロット室33に向けて油が通過する場合、可動弁体51が弁座52から離隔することにより、リテーナ部30Mに形成した本来の開口面積が確保される。これに対してパイロット室33から圧力室32に向けて油が通過する場合には、可動弁体51が弁座52に当接することによって可動弁体51の細孔51aのみが開口面積となり、油の通過が大きく絞られることになる。
連絡油路60は、リテーナ部30Mの一端部外周面に切欠61を形成することによって構成したものである。本実施の形態では、図2−1に示すように、リテーナ部30Mの互いに異なる2カ所に互いに異なる形態の切欠61A,61Bを形成することによって2つの連絡油路60A,60Bを形成するようにしている。
第1の連絡油路60Aは、リテーナ部30Mが図1に示す中立位置に配置された状態において、パイロットケース31の摺接リブ31aに対向する部位の中間位置から圧力室32に向けて軸方向に沿った切欠61Aを形成することにより構成してある。第1の連絡油路60Aを構成する切欠61Aは、リテーナ部30Mがダウン側に移動するに従って開口面積が漸次増大するように構成してある。
この第1の連絡油路60Aは、リテーナ部30Mが図1に示す中立位置からリフト側に移動した場合、図4に示すように、常に圧力室32にのみ開口し、圧力室32とパイロット室33との間を遮断した状態に維持する。一方、リテーナ部30Mが図1に示す中立位置からダウン側に移動した場合、第1の連絡油路60Aは、移動初期において圧力室32にのみ開口し、移動後期においてリテーナ部30Mの端面がバルブ本体11の外表面に当接するまでの間、圧力室32とパイロット室33との間を連通する。より具体的には、ダウンコンスプール部30Sとリテーナ部30Mとが連動した場合、図9の(b)及び図9の(c)並びに図5及び図6に示すように、第1の連絡油路60Aは、第3切欠30Saの曲折点Xに至る以前となる図5の位置(以下、「ダウン操作1位置」という)から第3切欠30Saの曲折点Xを超える図6の位置(以下、「ダウン操作2位置」という)までは圧力室32にのみ開口し、パイロット室33との間を遮断した状態に維持する。図9の(b)及び図9の(c)並びに図7及び図8に示すように、ダウン操作2位置を通過した位置からは、リテーナ部30Mの一端面がバルブ本体11の外表面に当接する図7及び図8の位置(以下、図7の位置を「ダウン操作3位置」、図8の位置を「ダウン操作4位置」という)までの間、その開口面積が移動量に応じて漸次増加するように圧力室32とパイロット室33との間を連通するようになる。
第2の連絡油路60Bは、リテーナ部30Mが図1に示す中立位置に配置された状態にある場合に、リテーナ部30Mの外周面においてパイロットケース31の摺接リブ31aを超えて圧力室32の内部に臨む位置からパイロット室33に向けて軸方向に沿った切欠61Bを形成することにより構成してある。図1に示す中立位置において、第2の連絡油路60Bを構成する切欠61Bは、パイロット室33から摺接リブ31aに対向するまで切欠を大きい部分と小さい部分とで構成することにより、図9(b)において中立からリフト側に示す開口面積となるように設定してある。
この第2の連絡油路60Bは、リテーナ部30Mが図1に示す中立位置からリフト側に移動した場合、図4に示すように、その開口面積が移動量に応じて漸次増加するように圧力室32とパイロット室33との間を連通する。一方、リテーナ部30Mが図1に示す中立位置からダウン側に移動した場合、第2の連絡油路60Bは、移動初期において開口面積の小さい切欠61Bにより圧力室32とパイロット室33との間を連通し、移動後期において圧力室32とパイロット室33との間を遮断する。より具体的には、ダウンコンスプール部30Sとリテーナ部30Mとが連動した場合、図9の(b)及び図9の(c)並びに図5に示すように、第3切欠30Saの曲折点Xに至る以前のダウン操作1位置においては、第2の連絡油路60Bが開口面積が小さい切欠61Bにより圧力室32とパイロット室33との間を連通した状態に維持する。このダウン操作1位置を通過した以降、図9の(b)及び図9の(c)並びに図6、図7、図8に示すように、第2の連絡油路60Bは、パイロット室33にのみ開口し、圧力室32とパイロット室33との間を遮断した状態を維持するようになる。
絞り油路50、第1の連絡油路60A及び第2の連絡油路60Bを上記のように構成した流量制御スプール30では、圧力室32とパイロット室33との間に確保されるトータルの開口面積が、図9の(a)に示すような特性となる。すなわち、中立位置から流量制御スプール30がダウン側に移動した場合、ダウン操作1位置までの間においては、第1の連絡油路60Aのみが圧力室32とパイロット室33との間を連通する(区間A1→A2)。
ダウン操作1位置からダウン操作2位置までの間においては、つまり、流量制御スプール30がダウン側に移動している状態においてダウンコンスプール部30Sに形成した第3切欠30Saの曲折点Xを含む範囲では、絞り油路50の可動弁体51に形成した細孔51aのみによって圧力室32とパイロット室33との間が連通することになる(区間A2→A3)。
ダウン操作2位置を超えて流量制御スプール30がダウン側に移動している場合には、リテーナ部30Mの一端面がバルブ本体11の外表面に当接するまでの間、第2の連絡油路60Bによって圧力室32とパイロット室33とが互いに連通することになる(区間A3→A4)。尚、図8に示す状態においては、給排制御スプール20及びダウンコンスプール部30Sがダウン側に移動するものの、バルブ本体11の外表面に当接したリテーナ部30Mのダウン側への移動がない。従って、第2の連絡油路60Bによって圧力室32とパイロット室33とが一定の開口で連通された状態となる(区間A4→A5)。
上述したいずれの状態にあっても、流量制御スプール30がリフト側に移動する場合には、絞り油路50において可動弁体51が弁座52から離隔することになるため、常にダウン側に移動する場合に比べて絞り油路50の分だけ大きな開口面積をもって圧力室32とパイロット室33とが互いに連通することになる(区間A6→A11)。尚、流量制御スプール30が最もリフト側に位置した状態から中立位置までの間を移動する場合には、第2の連絡油路60Bによって圧力室32とパイロット室33とが連通された状態を維持する(区間A12→A1)。
図3は、上述した油圧回路における方向制御弁ユニット10の機能を模式的に示した油圧回路図である。以下、これら図1〜図8を適宜参照しながら油圧回路の作用について説明する。尚、以下においては、給排制御スプール20及び流量制御スプール30を総称して単に「制御スプール20,30」と記載する場合がある。
まず、運転席に運転者が着座せず、かつ制御スプール20,30が中立位置にある場合には、図1及び図3に示すように、バルブ本体11のドレンポート12、シリンダポート13及びポンプポート14のそれぞれが互いに遮断され、かつ入力ポート15及び出力ポート16が互いに遮断された状態となる。従って、油圧シリンダ1のピストン室1aに対して油の流通が生じることはなく、油圧シリンダ1が現在のピストン位置を維持する。
また、図1及び図3に示すように、運転者が着座しない状態においては、電磁切替弁45がパイロットドレン通路44を閉じた状態に維持されるため、パイロットチェック弁42のパイロット圧がドレンされることはなく、油圧シリンダ1のピストン室1aに充填された油が外部に流出することもない。従って、仮に、油圧シリンダ1によって荷をリフトアップさせた状態から誤って制御スプール20,30が動作したとしても、荷の重量によって油圧シリンダ1が縮退動作する事態を招来する虞れはない。
この状態から運転席に運転者が着座すると、電磁切替弁45が作動してパイロットドレン通路44が開放することになる。さらに、操作レバー(図示せず)を操作することにより、スプールバネ34及びリフト側押圧バネ24の押圧力に抗して制御スプール20,30をリフト側に移動させると、図4に示すように、バルブ本体11のポンプポート14とシリンダポート13とが互いに接続されることになる一方、入力ポート15と出力ポート16とが互いに離隔された状態を維持する。この結果、油圧ポンプPから吐出された油が供給油路46、ポンプポート14、連絡ポート18、シリンダポート13、給排油路43、パイロットチェック弁42を介して油圧シリンダ1のピストン室1aに供給され、油圧シリンダ1が伸長動作することになる。従って、例えばフォークリフトのフォークに搭載した運搬対象物である荷を所望の高さ位置までリフトアップさせることができるようになる。
ここで、制御スプール20,30をリフト側に移動させる場合、流量制御スプール30のリテーナ部30Mもリフト側に移動するため、パイロットケース31の圧力室32に油が貯留されたままではこの油が圧縮され、制御スプール20,30の移動が抑制されることになる。すなわち、制御スプール20,30を応答良くリフト側に移動させるには、圧力室32に貯留されている油をドレンする必要がある。
この場合、上記方向制御弁ユニット10によれば、可動弁体51が弁座52から離隔するため絞り油路50の開口面積が大きく確保され、またリテーナ部30Mのリフト側への移動に伴って第2の連絡油路60Bが大きく開放されるため、圧力室32に貯留された油が直ちにパイロット室33及び導入油路35を通じて油タンクTにドレンされる。この結果、制御スプール20,30を動作させる際に圧力室32の油がこれを抑制するように作用する虞れがなく、軽い操作力によって応答良く荷をリフトアップさせることが可能となる。
図4に示す状態から操作レバー(図示せず)に加えていた操作力を除去すると、上述したスプールバネ34及びリフト側押圧バネ24の弾性復元力により、バルブ本体11に対して制御スプール20,30がダウン側に移動し、図1に示した中立位置において停止する。
ここで、図4に示す状態から制御スプール20,30を中立位置に復帰させる場合には、流量制御スプール30のリテーナ部30Mもダウン側に移動するため、先とは逆に、圧力室32が減圧状態とならないようにするために油を流入させる必要がある。
この場合、上記方向制御弁ユニット10によれば、中立位置に達するまでの間、継続的に第2の連絡油路60Bが開放されるため、この第2の連絡油路60Bを通じてパイロット室33の油が直ちに圧力室32に供給される。この結果、制御スプール20,30を動作させる際に圧力室32が減圧状態となってこれを抑制するように作用する虞れがなく、応答良く中立位置へ復帰することになる。しかも、制御スプール20,30が中立位置へ到達する直前の状態においては、第2の連絡油路60Bの開口面積が急激に減少するため、圧力室32への油の流入が制限され、制御スプール20,30のダウン側への移動を抑制するように機能する。この結果、制御スプール20,30が中立位置を超えてダウン側へオーバーシュートする事態を防止することが可能になる。
上記のようにして制御スプール20,30が中立位置に復帰した場合には、図1及び図3に示すように、再びバルブ本体11のドレンポート12、シリンダポート13及びポンプポート14が互いに遮断され、かつ入力ポート15及び出力ポート16が互いに遮断された状態となる。従って、重量の大きな荷をリフトアップさせた状態にあっても、油圧シリンダ1のピストン室1aに対して油の流通が生じることはなく、油圧シリンダ1が現在のピストン位置を維持する。
一方、上述した図1の中立位置から操作レバー(図示せず)を操作することにより、リフト側押圧バネ24の押圧力に抗して制御スプール20,30をダウン側に移動させると、図5〜図8に示すように、バルブ本体11のドレンポート12とシリンダポート13とが互いに接続され、かつ入力ポート15と出力ポート16とが互いに接続された状態となる。さらに、制御スプール20,30がダウン側に移動した場合には、ドレン通路21のキリ孔22が直ちにドレンポート12と連通する位置に移動し、パイロットチェック弁42のパイロット圧がドレンポート12にドレンされる。この結果、油圧シリンダ1のピストン室1aに貯留された油は、給排油路43、パイロットチェック弁42、シリンダポート13、ドレンポート12、出力油路41を介して油タンクTに至る経路と、給排油路43、パイロットチェック弁42、入力ポート15、出力油路41を介して油タンクTに至る経路との2つの経路によって油タンクTにドレンされる。従って、荷の重量によって油圧シリンダ1が縮退動作するようになり、リフトアップしていた荷を下ろすことができるようになる。
この間、上記方向制御弁ユニット10によれば、操作レバー(図示せず)の操作量に応じてリフトスプール部20Sの位置が制御される一方、このリフトスプール部20Sの位置とは別にダウンコンスプール部30Sの位置が制御されることになる。すなわち、ダウンコンスプール部30Sには、出力ポート16の圧力が図2−2に示す円環状の段差部分30Cにリフト側へ移動させるように作用する一方、スプールバネ34の押圧力がダウン側へ移動させるように作用する。これにより、ダウンコンスプール部30Sは、段差部分30Cに作用する出力ポート16の圧力とスプールバネ34の押圧力とがバランスした位置に移動し、入力ポート15と出力ポート16との間の開口面積を変化させることによって通過する油の流量制御を行う。ダウンコンスプール部30Sの段差部分30Cに作用する油の圧力は、絞り前の油圧である出力ポート16と、絞り後の油圧であるパイロットケース31の室32,33及びサブポート19との差圧である。
例えば、リフトアップしていた荷が比較的重量物である場合には、油圧シリンダ1のピストン室1aから排出される油の量が大幅に多くなる。このため、絞り40を通過する流量が多くなり、絞り40の上流の入力ポート15及び出力ポート16の油圧も大きくなる。この結果、ダウンコンスプール部30Sがリフトスプール部20Sの端面から離隔し、スプールバネ34の押圧力に抗してリフト側に移動することにより、第3切欠30Saによる入力ポート15と出力ポート16との間の開口面積が操作レバー(図示せず)によって設定されたものよりも小さくなる。これにより、油圧シリンダ1のピストン室1aから排出される油の流量が制限され、縮退動作の速度、つまり荷の下降速度を抑制することができるようになる。
一方、第3切欠30Saによる入力ポート15と出力ポート16との間の開口面積が過小となると、入力ポート15及び出力ポート16を流れる油が減少するため、スプールバネ34の押圧力によりダウンコンスプール部30Sがダウン側に移動する。この結果、ダウンコンスプール部30Sの第3切欠30Saによる入力ポート15と出力ポート16との間の開口面積が増大することになる。つまり、油圧シリンダ1のピストン室1aから排出される油の流量が増加する。
以降、上述した動作が繰り返し行われ、常に、入力ポート15及び出力ポート16の油圧と、パイロットケース31の室32,33及びサブポート19の油圧との差が一定となるようにダウンコンスプール部30Sが移動し、出力油路41を通じて油タンクTにドレンされる油の流量が制御されることになる。
尚、リフトアップしていた荷が比較的軽量物である場合には、油圧シリンダ1のピストン室1aから排出される油の量が大幅に多くなることはなく、入力ポート15及び出力ポート16の油圧も小さなものとなる。この結果、ダウンコンスプール部30Sがリフト側に移動することなくその端面をリフトスプール部20Sの端面に当接した状態を維持し、第3切欠30Saが操作レバー(図示せず)によって設定されたダウンコンスプール部30Sの開口面積のままとなる。これにより、上述した2つの経路を通じて効率的に油が排出されることになり、荷を迅速に下降させることができるようになる。
ところで、本実施の形態では、上述したように、ダウンコンスプール部30Sの第3切欠30Saとして、図9の(c)に示すように、入力ポート15と出力ポート16との間の開口面積が曲折点Xをもって変化し、ダウンコンスプール部30Sがダウン側に移動した場合、動作初期に比べて動作後期の変化量が大きくなるものを適用している。このため、操作レバー(図示せず)の操作による制御スプール20,30の設定位置が曲折点Xの付近となった場合には、上述した圧力の差に基づく流量制御の際にダウンコンスプール部30Sにチャタリングと称される振動現象が招来される虞れがある。すなわち、曲折点Xを超えた場合に油の流量が急激に変化するため、ダウン側に移動して曲折点Xを超えたダウンコンスプール部30Sが直ちにリフト側に移動し、その後、曲折点Xを超えたダウンコンスプール部30Sが直ちにダウン側に移動する虞れがある。
ダウンコンスプール部30Sにチャタリングが発生した場合には、油圧シリンダ1のピストン室1aから排出される油の流量がこれに伴って変化するため、油圧シリンダ1に振動の影響を及ぼす虞れがある。
しかしながら、上述した方向制御弁ユニット10では、パイロットケース31において圧力室32とパイロット室33との間に連絡油路60A,60B及び絞り油路50を並列的に設け、ダウン操作1位置からダウン操作2位置までの間においては絞り油路50のみによって圧力室32とパイロット室33との間を連通するようにしている。つまり、流量制御スプール30がダウン側に移動している状態においてダウンコンスプール部30Sに形成した第3切欠30Saの曲折点Xを含む範囲においては、第1の連絡油路60A及び第2の連絡油路60Bが共に閉じた状態となる一方、絞り油路50の可動弁体51に形成した細孔51aのみが開放し、圧力室32とパイロット室33との間がこの細孔51aによって連通されることになる。この結果、パイロット室33から圧力室32への油の流入が大きく絞られ、ダウンコンスプール部30Sの移動速度が大幅に抑制されることになり、チャタリングが発生する事態を招来する虞れがなくなる。
しかも、ダウンコンスプール部30Sがダウン操作2位置を超えてダウン側へ移動する場合には、第1の連絡油路60Aが開放し、この第1の連絡油路60Aを通じてパイロット室33から圧力室32へ油が流入するため、ダウンコンスプール部30Sの移動が容易となり、応答性が大きく損なわれることもない。
尚、上述した実施の形態では、給排制御スプールを備えた方向制御弁ユニットを例示しているが、給排制御スプールのない流量制御弁として構成しても構わない。この場合にも、実施の形態と同様に、ダウンコンスプール部の応答性を大きく損なうことなくチャタリングを確実に防止することができるようになる。