JP5128457B2 - 車両姿勢角推定装置及びプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、車両姿勢角推定装置及びプログラムにかかり、特に、ピッチ角速度の推定値を利用してオブザーバによって車両物理量としての鉛直軸に対する車両の姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する車両姿勢角推定装置及びプログラムに関する。
剛体運動の加速度及び角速度とオイラー角で記述される車両の姿勢角との関係は、非特許文献1等で知られており、この関係に基づいて積分演算を行うことによって、車両の姿勢角を導出することができる。しかしながら、単純な積分演算ではセンサドリフト誤差が蓄積されて正確な姿勢角を導出することはできない。このような積分演算での誤差の蓄積を回避するためには、他のセンサ信号の出力と比較し、略一致するように出力を補正するオブザーバを構成する必要がある。
また、車体の鉛直軸に対するロール角を推定する従来技術として、スピン等の影響を受けない低周波数領域の車両運動の横方向の成分と車両の姿勢角の影響との関係からロール角を推定する技術が知られている(特許文献1)。
航空機力学入門(p12、加藤、大屋、柄沢:東京大学出版会、1982) 特開2008−94375号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、姿勢角オブザーバにおいて、「時定数の長いフィルタ処理した鉛直方向加速度は重力加速度に等しい」という条件を利用しており、この条件は、路面勾配変化などによる短時間の鉛直方向加速度変化をフィルタによって除去できることを仮定して設定された条件であり、下り坂から上り坂に変化する路面勾配の最下点で、鉛直方向加速度が増大する場合には、フィルタ処理によって、鉛直方向加速度が変化することによる影響を十分に除去できないため、推定精度が劣化してしまう、という問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、鉛直方向加速度が変化する路面であっても、精度よく姿勢角を推定することができる車両姿勢角推定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために第1の発明の車両姿勢角推定装置は、各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度を推定する前後速度推定手段と、車両横方向の車体速度である横車体速度を推定する横速度推定手段と、ピッチ角速度を推定するピッチ角速度推定手段と、車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角速度、及びヨー角速度の各検出値に応じたセンサ信号、前記前後車体速度の推定値、並びに前記ピッチ角速度の推定値に基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する姿勢角推定手段と、を含む車両姿勢角推定装置であって、前記姿勢角推定手段は、前記ロール角の推定値及び前記ピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する補正手段と、前記前後加速度状態量、前記横加速度状態量、及び前記鉛直加速度状態量と、前記センサ信号、前記前後車体速度の推定値、及び前記横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算する状態量偏差演算手段とを備え、前記演算された前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、前記ロール角及びピッチ角を推定するようにしたものである。
第2の発明のプログラムは、コンピュータを、各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度を推定する前後速度推定手段、車両横方向の車体速度である横車体速度を推定する横速度推定手段、ピッチ角速度を推定するピッチ角速度推定手段、及び車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角速度、及びヨー角速度の各検出値に応じたセンサ信号、前記前後車体速度の推定値、並びに前記ピッチ角速度の推定値に基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する姿勢角推定手段として機能させるためのプログラムであって、前記姿勢角推定手段は、前記ロール角の推定値及び前記ピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する補正手段と、前記前後加速度状態量、前記横加速度状態量、及び前記鉛直加速度状態量と、前記センサ信号、前記前後車体速度の推定値、及び前記横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算する状態量偏差演算手段とを備え、前記演算された前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、前記ロール角及びピッチ角を推定するようにしたものである。
第1の発明及び第2の発明では、ロール角の推定値及びピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する。また、前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量と、センサ信号、前後車体速度の推定値、及び横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算する。そして、演算された前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、ロール角及びピッチ角を推定する。
第1の発明及び第2の発明では、ロール角の推定値及びピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正して、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算し、フィードバックしているので、鉛直方向加速度が変化する路面であっても、精度よく姿勢角を推定することができる。
第3の発明に係る車両姿勢角推定装置は、各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度を推定する前後速度推定手段と、車両横方向の車体速度である横車体速度を推定する横速度推定手段と、ピッチ角速度を推定するピッチ角速度推定手段と、車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角速度、及びヨー角速度の各検出値に応じたセンサ信号、前記前後車体速度の推定値、並びに前記ピッチ角速度の推定値に基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する姿勢角推定手段と、を含む車両姿勢角推定装置であって、前記姿勢角推定手段は、前記ロール角の推定値及び前記ピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量と、前記センサ信号、前記前後車体速度の推定値、及び前記横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算すると共に、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する補正手段と、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差に対して、ローパスフィルタ処理が行うローパスフィルタ処理手段とを備え、前記ローパスフィルタ処理が行われた、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、前記ロール角及びピッチ角を推定するようにしたものである。
第4の発明のプログラムは、コンピュータを、各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度を推定する前後速度推定手段、車両横方向の車体速度である横車体速度を推定する横速度推定手段、ピッチ角速度を推定するピッチ角速度推定手段、及び車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角速度、及びヨー角速度の各検出値に応じたセンサ信号、前記前後車体速度の推定値、並びに前記ピッチ角速度の推定値に基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する姿勢角推定手段として機能させるためのプログラムであって、前記姿勢角推定手段は、前記ロール角の推定値及び前記ピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量と、前記センサ信号、前記前後車体速度の推定値、及び前記横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算すると共に、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する補正手段と、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差に対して、ローパスフィルタ処理が行うローパスフィルタ処理手段とを備え、前記ローパスフィルタ処理が行われた、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、前記ロール角及びピッチ角を推定するようにしたものである。
第3の発明及び第4の発明では、ロール角の推定値及びピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量と、センサ信号、前後車体速度の推定値、及び横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算する。そして、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正し、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差に対して、ローパスフィルタ処理が行う。そして、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、ロール角及びピッチ角を推定する。
第3の発明及び第4の発明では、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正して、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算し、フィードバックしているので、鉛直方向加速度が変化する路面であっても、精度よく姿勢角を推定することができる。
上記の車両姿勢角推定装置には、車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ヨー角速度、及びロール角速度の各々を検出して検出値に応じたセンサ信号を出力するセンサを設けることができる。
また、ピッチ角速度は、前後車体速度の推定値、横車体速度の推定値、上下加速度の検出値、ロール角速度の検出値、姿勢角推定手段で推定されたロール角の前回推定値、及び姿勢角推定手段で推定されたピッチ角の前回推定値に基づいて、推定することができる。これによって、車体の上下方向運動の釣り合いからピッチ角速度を推定し、ピッチ角速度の推定値を利用して車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定しているので、上下加速度が増加するバンク走行時においても精度良くロール角及びピッチ角を推定することができる。
また、上記の各発明のプログラムを、記憶媒体に格納して提供することもできる。
以上説明したように本発明によれば、ロール角の推定値及びピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正し、又は、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正して、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算し、フィードバックしているので、鉛直方向加速度が変化する路面であっても、精度よく姿勢角を推定することができる、という効果が得られる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態は、鉛直軸に対する車両の姿勢角であるピッチ角及びロール角を推定する車両姿勢角推定装置に本発明を適用したものである。
図1に示すように、第1の実施の形態の車両姿勢角推定装置には、車両横方向の車体速度である横車体速度Vを推定する横速度推定手段10、及び各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度Uを推定する前後速度推定手段12が設けられている。
横車体速度Vは、カルマンフィルタ等を用いて推定したり、横加速度センサの検出値から推定したりすることができる。
各輪の車輪速度は、各輪に対応して設けられた車輪速センサにより検出することができ、前後車体速度Uは各輪の車輪速度、または各輪の車輪速度及び車輪速度の微分値から推定することができる。例えば、制動時には、4輪の車輪速度の最大値を前後車体速度Uとして出力し、駆動時には、従動輪の車輪速度の平均値を前後車体速度Uとして出力することができる。
また、本実施の形態の車両姿勢角推定装置には、車両運動のxyz3軸の加速度である上下加速度Gz、横加速度Gy、前後加速度Gxの各々を検出する上下加速度センサ14、横加速度センサ16、及び前後加速度センサ18が設けられている。図2に示すように、x軸は車両前後方向、y軸は車両幅方向(横方向)、z軸は車両上下方向に対応している。
また、本実施の形態の車両姿勢角推定装置には、ロール角速度Pを検出するロール角速度センサ20、及びヨー角速度Rを検出するヨー角速度センサ22が設けられている。
横速度推定手段10、前後速度推定手段12、上下加速度センサ14、及びロール角速度センサ20は、ピッチ角速度Qを推定するピッチ角速度推定手段24に接続されている。
横速度推定手段10、前後速度推定手段12、横加速度センサ16、前後加速度センサ18、及びヨー角速度センサ22は、着目すべき運動のみを通過させるローパスフィルタ処理が施された、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の各々のローパスフィルタ処理値を演算する状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26に接続されている。
状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26は、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角φ及びピッチ角θを推定する姿勢角推定手段28に接続されている。姿勢角推定手段28には、更に、上下加速度センサ14、横加速度センサ16、前後加速度センサ18、ロール角速度センサ20、ヨー角速度センサ22、及びピッチ角速度推定手段24が接続されている。
また、姿勢角推定手段28には、更に、鉛直加速度状態量を算出すると共に、鉛直加速度状態量に対して飽和特性を持たせるように補正する加速度状態量飽和特性補正手段30と、前後、横、鉛直加速度状態量の偏差のローパスフィルタ処理値のフィードバックゲインを設定するフィードバックゲイン設定手段32と、が接続されている。
姿勢角推定手段28は、ローパスフィルタ処理された前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を、フィードバックゲインを用いてフィードバックすると共に、車両運動の前後加速度Gx、横加速度Gy、上下加速度Gz、ロール角速度P、及びヨー角速度Rの各検出値に応じたセンサ信号と、ピッチ角速度Qの推定値とに基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角φ及びピッチ角θを推定する。また、姿勢角推定手段28は、ロール角φ及びピッチ角θの推定値を前回値として、ピッチ角速度推定手段24、加速度状態量飽和特性補正手段30、及びフィードバックゲイン設定手段32に入力するように、ピッチ角速度推定手段24、加速度状態量飽和特性補正手段30、及びフィードバックゲイン設定手段32に接続されている。また、姿勢角推定手段28は、オブザーバから出力される、ローパスフィルタ処理された前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量を、状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26に入力するように、状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26に接続されている。
なお、本実施の形態における、状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26、姿勢角推定手段28、加速度状態量飽和特性補正手段30、及びフィードバックゲイン設定手段32は、本発明の姿勢角推定手段に対応し、状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26は、本発明の状態量偏差演算手段に対応し、加速度状態量飽和特性補正手段30は、本発明の補正手段に対応している。
横速度推定手段10、前後速度推定手段12、ピッチ角速度推定手段24、状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26、姿勢角推定手段28、加速度状態量飽和特性補正手段30、フィードバックゲイン設定手段32は、各手段の機能を実現する1つまたは複数のコンピュータ、または1つまたは複数の電子回路で構成することができる。
次に、ピッチ角速度の推定について説明する。剛体に固定された3軸加速度及び3軸角速度を検出する3軸センサから出力されるセンサ信号と運動状態量との関係を表す剛体の運動方程式は、以下のように記述することができる。
ただし、 Gx:前後加速度、Gy:横加速度、Gz:上下加速度、P:ロール角速度、Q:ピッチ角速度、R:ヨー角速度、U:前後速度、V:横速度、W:上下速度、φ:ロール角、θ:ピッチ角、g:重力加速度である。
本実施の形態において車両を剛体とした場合、前後加速度Gx、横加速度Gy、上下加速度Gz、ロール角速度P、及びヨー角速度Rの各々は、前後加速度センサ18、横加速度センサ16、上下加速度センサ14、ロール角速度センサ20、及びヨー角速度センサ22によって検出される。横速度Vは、上記で説明したように横速度推定手段10で推定することができ、前後速度Uは、各輪の車輪速に基づいて上記で説明したように前後速度推定手段12で推定することができる。
なお、本実施の形態では、図2に示すように車体の上向きをz軸の正方向とする右手系で座標を記述すると共に角度はオイラー角で表現している。
バンク走行中は、遠心力によって上下加速度Gzが増加する。上下加速度Gzの増加は、上記(3)式において左辺の−QUが大きくなることと対応しており、この性質を利用し、(3)式において上下速度Wの変化を無視(W=0とする)すると共に、ロール角及びピッチ角の各々の前回値、及び横速度の推定値、前後速度Uとして前後車体速度の推定値Vs0を用いることによりことにより、ピッチ角速度の推定値を以下の式から求めることができる。ピッチ角速度推定手段24は、下記(6)式の演算を実行することによりピッチ角速度の推定値を求める。
ピッチ角速度が上記のように推定されると、ピッチ角もロール角と同時に姿勢角オブザーバによって推定することができる。姿勢角オブザーバを用いた場合の自動車固有の運動の拘束条件について説明する。上記の運動方程式を利用して、姿勢角オブザーバを構成する場合、積分演算によって推定される速度及び角度の状態量が発散しないように、測定できる物理量のフィードバックが必要となる。本実施の形態では、自動車運動固有の特徴を以下のようにフィードバックする物理量に利用する。なお、以下の式では、ロール角及びピッチ角として各々の前回推定値、横速度として横車体速度の推定値、前後速度Uとして前後車体速度の推定値Vs0を各々用いている。
前後車体速度の推定値Vs0を微分して上記(1)式に代入し、自動車運動固有の特徴として、車体の前後方向に関しては「車輪のスリップは長時間増加し続けない」という性質を利用すると、上記(1)式から、上下速度の変化を無視したフィードバックに利用する以下の(7)式に示す条件が得られる。
上記(7)式は、車輪速度から推定される加速度(前後車体速度の推定値Vs0の微分値)と前後加速度Gxとの差と、ピッチ角θとの関係を記述している。
また、車体の横方向に関しては、「スリップ角は長時間増加し続けない」という性質からロール角速度及び横加速度が無視できることから、上記(2)式から、フィードバックに利用する以下の(8)式に示す条件が得られる。
さらに、一般的な道路勾配を考慮すると、「鉛直方向の加速度は、重力加速度に略一致している」とみなすことができる。この条件は前後加速度Gx、横加速度Gy、上下加速度Gz、ピッチ角θ、及びロール角φを用いて、以下の(9)式に示す代数方程式によって記述することができる。
次に、基本的な非線形オブザーバの構成について説明する。ここでは、センサから出力されるセンサ信号、及びピッチ角速度の推定値を含む値uを下記(10)式のように表現している。
また、対象となる車両運動を下記(11)式のように表現し、オブザーバを構成するために測定できる物理量を(12)式のように表現すると、非線形オブザーバは、以下の(13)式及び(14)式の非線形運動方程式によって記述することができる。
ただし、xのチルダ、yのチルダは、それぞれx、yの推定値を表わし、k(xのチルダ、u)は設計するオブザーバゲインを表わしている。
上記(7)式〜(9)式は、何れもある程度長い時間を考慮したときに満足する条件であることから、オブザーバの測定量のフィードバックには、上記(7)〜(9)式の両辺の各々をローパスフィルタでローパスフィルタ処理した値を利用する。
以下の(15)〜(17)式に示す微分方程式を解くことにより、上記(7)〜(9)式の右辺、すなわち、ロール角の推定値及びピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量を、ローパスフィルタでローパスフィルタ処理した値が演算される。
ただし、τx、 τy、 τgは各々(7)〜(9)式で考慮するローパスフィルタの数秒から数十秒以上の時定数を表している。
上記(4)式、(5)式の角度に関する状態方程式には、速度の状態量が含まれていないことから、速度の推定と分離して、角度としてロール角φ及びピッチ角θを推定することができる。
このため、まず、上記のローパスフィルタによって得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量を含め、ロール角及びピッチ角を推定するためのオブザーバを構成する。本実施の形態では、オブザーバの状態量を下記(18)式で表す。
なお、上記の各変数のチルダは、推定値であることを意味している。
また、フィードバックに用いるオブザーバ出力としての状態量は、下記(19)式で表わされる。
さらに、センサ信号等から演算される、車両出力としての前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量からなる状態量yは、以下の(20)式で表わされる。
ただし、
なお、上記(21)式の右辺第2項の分子は、上記(7)式の左辺、すなわち、前後車体速度の推定値Vs0の微分値から、3軸センサで検出されたヨー角速度値Rと横車体速度の推定値との積と、3軸センサで検出された前後加速度値Gxとの和を減算した前後加速度状態量である。また、上記(22)式の右辺第2項の分子は、上記(7)式の左辺、すなわち、3軸センサで検出されたヨー角速度値Rと前後車体速度の推定値Vs0との積から3軸センサで検出された横加速度値Gyを減算した横加速度状態量である。
上記(21)式、(22)式に示す微分方程式を解くことにより、センサ信号、前後車体速度の推定値、及び横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量を、ローパスフィルタでローパスフィルタ処理した値が演算される。また、上記(20)式におけるgは、鉛直加速度状態量である。
上記(15)式〜(17)式から演算される前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の各々のローパスフィルタ処理値と、上記(20)式が表わす前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の各々のローパスフィルタ処理値とに基づいて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の各々のローパスフィルタ処理値を演算する。
また、本実施の形態では、適切なオブザーバゲインk(xのチルダ,u)を設定することによって、ロール角及びピッチ角を推定する姿勢角オブザーバを構成している。
次に、ロール角φ及びピッチ角θを推定する姿勢角オブザーバについて説明する。
まず、オブザーバゲインの一例として、オブザーバの安定性を確保するため、線形化を行ったときの対角成分が負の係数を持つように、下記(23)式のように表されるオブザーバゲインを設定した場合について説明する。
ただし、Kφy、 Kφg、 Kθx、 Kθg、 Kx、 Ky、 Kgは適切な正の定数である。
この場合には、ロール角及びピッチ角を推定する非線形オブザーバとなる姿勢角オブザーバは、以下の(24)式に示す運動方程式で記述される。
ただし、xのチルダは、以下の(25)式で表される。
ここで、上記(24)式に示す非線形オブザーバを利用して、山岳サーキットコース走行時の姿勢角を推定した結果について、図3(A)、(B)を参照して説明する。図3(A)に示すように、12〜15s付近で、実際のバンク角などの路面状況からは想定できない大きなロール角が推定されている。
このようなロール角推定値の異常は、下り坂から上り坂に変化する路面勾配の最下点で発生しており、鉛直方向加速度が増大することと関係あると推測できる。ここでの姿勢角オブザーバでは、「時定数の長いフィルタ処理した鉛直方向加速度は重力加速度に等しい」という条件を利用している。この条件は、路面勾配変化などによる短時間の鉛直方向加速度の変化は、フィルタによって除去できることを仮定して設定された条件であるが、上記の山岳サーキットコース走行のような限界走行では、鉛直方向加速度の変化の影響を十分に除去できなかったことが予想される。
図4(A)〜(C)に示すように、ローパスフィルタ処理後の鉛直加速度、横加速度、及びロール角推定値の時間変化が得られ、図4(A)に示すように、12〜15s付近で、フィルタ処理後の鉛直加速度が増加しているため、路面勾配変化などによる鉛直方向加速度の変化を、フィルタによって除去できなかったことがわかる。
また、上記(24)式からわかるように、上記(17)式で演算されるフィルタ処理後の鉛直加速度状態量が増加すると、ロール角推定値を演算する上記(24)式の1行目が増減(増減は、横加速度の符号に依存)する。例えば、上記図4(A)、(B)に示すように、鉛直方向加速度が増大している時(オブザーバへのフィードバック量g−gのチルダが負になる時)に、負の横加速度が生じた場合には、上記(24)式の1行目は増加方向に修正され、図4(C)に示すように、ロール角が、大きく正の値として推定演算される。
上述したように、下り坂から上り坂に変化する路面勾配の最下点で発生するロール角推定値の発散現象(絶対値の増加)は、鉛直加速度に関する条件のフィードバックに起因すると推測される。
そこで、下り坂から上り坂に変化する路面勾配の最下点で、鉛直加速度に関する条件のフィードバックを緩和するような補正を行うことにより、ロール角推定値の発散現象(絶対値の増加)の抑制を図ることが考えられる。
本実施の形態では、路面勾配変化などによる短時間の鉛直方向加速度の変化を除去するために、ローパスフィルタへの入力信号に飽和特性を追加する。すなわち、上記(17)式の代わりに、以下の(26)式で得られる、鉛直加速度状態量のローパスフィルタ処理値を、フィードバックに利用する。
ここで、gは、上記(26)式のローパスフィルタに入力される鉛直加速度状態量gを制限するための定数である。
上記(27)式に示すように、鉛直加速度状態量に対して飽和特性を持たせることにより、鉛直加速度状態量が上限値以上であれば、鉛直加速度状態量を上限値に補正し、鉛直加速度状態量が下限値以下であれば、鉛直加速度状態量を下限値に補正する。
加速度状態量飽和特性補正手段30は、上記(28)式に従って、鉛直加速度状態量を演算すると共に、上記(27)式に従って、鉛直加速度状態量に対して飽和特性を持たせるように、演算した鉛直加速度状態量を補正する。また、後述するように、姿勢角推定手段28の姿勢角オブザーバにおいて、上記(26)式に従って、補正した鉛直加速度状態量のローパスフィルタ処理値を演算する。
状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26は、横加速度センサ16、前後加速度センサ18、及びヨー角速度センサ22の各々の検出値、横車体速度の推定値、並びに前後車体速度の推定値に基づいて、上記(20)式に示すローパスフィルタ処理が行われた前後加速度状態量、及び横加速度状態量を演算し、演算した前後加速度状態量、及び横加速度状態量と、姿勢角オブザーバにおいて上記(15)式、(16)式に従って演算された、ローパスフィルタ処理が行われた前後加速度状態量及び横加速度状態量と、姿勢角オブザーバにおいて上記(26)式に従って演算された、ローパスフィルタ処理が行われた鉛直加速度状態量とに基づいて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の各々のローパスフィルタ処理値を演算する。
次に、本実施の形態におけるオブザーバゲインを設定する原理について説明する。
まず、上記(24)式に示す非線形オブザーバを動作点周りで線形化し、線形化されたシステムの安定性を解析する。上記(24)式を線形化した(dxのチルダ/dt=Ax+Buと表わした)ときのA行列は、以下の(29)式で表される。
上記(29)式で、各変数の添え字の0は、動作点での値を表現している。
また、ロール角、ピッチ角、ピッチ角速度、ヨー角速度、前後加速度、横加速度に関して、車両運動の想定されうる領域を設定し、この領域内の任意の点での安定性を調査した結果について説明する。
図5に、この安定性の解析結果を示す。図5では、ピッチ角を横軸に、ロール角を縦軸に表示しており、その他のすべてのパラメータを想定範囲内で探索し、1点でも不安定な動作点が存在した場合に+の記号を表示している。また、図5には、不安定極の最大実部の値を等高線で示している。上記(23)式に示すオブザーバゲインを用いた場合には、姿勢角の増大に伴い、オブザーバの不安定化の可能性のある領域が生じていることがわかる。
鉛直加速度状態量の偏差のフィードバックゲインに相当する上記(23)式の1行3列、2行3列における前後加速度及び横加速度は、それぞれのセンサ信号の符号に応じたゲイン設定を目的としているが、これに対し、本実施の形態では、不安定領域を安定化するため、以下の(30)式に示すように、オブザーバゲインを設定する。
ただし、鉛直加速度状態量の偏差のフィードバックゲインに相当する上記(30)式の1行3列、2行3列におけるKφg(G)、Kθg(G)について、以下の(31)式、(32)式に示すように、並進加速度(前後加速度、横加速度)に対する飽和特性を持たせて、オブザーバゲインが過大となることを防止する。
なお、Kφg0、Kθg0は定数ゲインであり、Gym、Gxmは、ゲインの増大を抑制するための前後加速度の上限値、横加速度の上限値であり、−Gym、−Gxmは、ゲインの増大を抑制するための前後加速度の下限値、横加速度の下限値である。
上記(24)式の1行目における鉛直加速度状態量の偏差のフィードバックゲインは、Kφgであり、横加速度Gの値に比例する構成となっているが、本実施の形態では、上記(30)式のように、鉛直加速度状態量の偏差のフィードバックゲインに対して、横加速度に応じた飽和特性を持たせることによって、ロール角推定値の発散現象(絶対値の増加)を抑制することができる。また、上記(31)式、(32)式は、鉛直加速度状態量偏差のフィードバックゲインであり、ゲイン増大を抑制することにより、鉛直加速度状態量の偏差の増大時における姿勢角誤差の増大を抑制することができる。
さらに、前後、横加速度状態量の偏差のフィードバックゲインを、姿勢角に応じて変化させることによって、姿勢角の大きな領域のオブザーバ安定性が確保できることに着目し、図6に示すように、ピッチ角の推定値の絶対値、ロール角の推定値の絶対値が大きいほど、前後、横加速度状態量の偏差のフィードバックゲインに相当する上記(30)式の2行1列、1行2列におけるKφx、Kθyを増大させて、前後、横加速度状態量偏差信号のフィードバックゲインの絶対値を増加させる。これによって、上記図5の不安定領域でKφx、Kθyの制御ゲインを大きく設定して安定化を図ることができ、図7に示すように、広い範囲で、オブザーバの安定化が可能である。
フィードバックゲイン設定手段32は、鉛直加速度状態量の偏差のフィードバックゲインにおけるKφg(G)、Kθg(G)について、前後加速度に対する飽和特性及び横加速度に対する飽和特性を持たせるように設定すると共に、ピッチ角の推定値の絶対値、ロール角の推定値の絶対値が大きくなるほど、前後、横加速度状態量の偏差のフィードバックゲインの絶対値を大きくようにKφx、Kθyを設定する。
次に、本実施の形態で用いるロール角φ及びピッチ角θを推定する非線形オブザーバについて説明する。ロール角及びピッチ角を推定する非線形オブザーバは、以下の(33)式に示す運動方程式で記述される。
姿勢角推定手段28は、上記(33)式を用いることにより、車体鉛直方向に対する姿勢角であるロール角の微分量dφのチルダとピッチ角の微分量dθのチルダとを算出し、算出したロール角の微分量dφのチルダ及びピッチ角の微分量dθのチルダの各々を積分することにより、ロール角φのチルダ及びピッチ角θのチルダを算出することができる。また、姿勢角推定手段28は、上記(33)式を用いることにより、ローパスフィルタ処理が行われた前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量を算出する。
コンピュータを、横速度推定手段10、前後速度推定手段12、ピッチ角速度推定手段24、状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26、姿勢角推定手段28、加速度状態量飽和特性補正手段30、及びフィードバックゲイン設定手段32の各手段として機能させるプログラムによる情報処理は、図8のフローチャートに示す姿勢角推定処理ルーチンで実現することができる。コンピュータは、相互にバスによって接続されたCPU、ROM、及びRAM、並びに必要に応じて接続されたHDDで構成され、これらのプログラムは、コンピュータのCPUに接続されているROMまたはHDD等の記録媒体に記録される。
この姿勢角推定処理ルーチンを説明すると、ステップ100で、上記で説明したように横車体速度を推定し、ステップ102において各輪の車輪速度に基づいて前後車体速度を推定する。
ステップ104において、最初の演算か否かを判断し、最初の演算の場合には、ロール角及びピッチ角の前回推定値、並びに前後、横、鉛直加速度状態量の前回値が存在しないので、ステップ106でロール角及びピッチ角の前回推定値、並びに前後、横、鉛直加速度状態量のローパスフィルタ処理値の前回値として、予め定められた初期値を設定し、ステップ110において、上記で説明したように上記(6)式を用いてピッチ角速度Qの推定値を演算する。
一方、2回目以降の演算の場合には、後述するステップ118でロール角及びピッチ角の推定値と、前後、横、鉛直加速度状態量のローパスフィルタ処理値とが演算されるので、ステップ108においてロール角及びピッチ角の前回推定値、並びに前後、横、鉛直加速度状態量のローパスフィルタ処理値として、前回演算された値を設定し、ステップ110において、上記で説明したように上記(6)式を用いてピッチ角速度Qの推定値を演算する。
ステップ112において、上記で説明したように、車両運動の前後加速度Gx、横加速度Gy、及びヨー角速度Rの検出値に応じたセンサ信号、前後車体速度Uの推定値Vs0に基づいて、上記(21)、(22)式に従って、前後加速度状態量及び横加速度状態量の各々のローパスフィルタ処理値を演算すると共に、ローパスフィルタ処理された前後、横、鉛直加速度状態量の値として前回演算された前回値を用いて、ローパスフィルタ処理された前後、横、鉛直加速度状態量の偏差を演算する。
次のステップ114では、上記で説明したように、前後加速度Gx及び横加速度Gyに対して飽和特性を持たせると共に、ロール角及びピッチ角の前回推定値の絶対値に応じて、フィードバックゲインを設定する。
そして、ステップ116において、車両運動の前後加速度Gx、横加速度Gy、及び上下加速度Gzの検出値に応じたセンサ信号と、ロール角及びピッチ角の前回推定値とに基づいて、上記(28)式に従って、鉛直加速度状態量を演算すると共に、上記(27)式に従って、飽和特性を持たせるように、演算した鉛直加速度状態量を補正する。
次のステップ118では、上記ステップ110で演算されたピッチ角速度Qの推定値、上記ステップ112で演算されたローパスフィルタ処理値、上記ステップ114で設定されたフィードバックゲイン、及び上記ステップ116で演算された鉛直加速度状態量を用いて、上記(33)式に従って、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角φ及びピッチ角θを推定し、ロール角φ及びピッチ角θの推定値をコンピュータのメモリに記憶して、上記ステップ100へ戻る。また、上記ステップ118では、上記(33)に従って、前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の各々のローパスフィルタ処理値を算出して、コンピュータのメモリに記憶する。
次に、本実施の形態の飽和特性を持たせる方法による推定結果について説明する。なお、飽和特性を持たせる方法の効果を確認するため、山岳サーキットを走行したときの姿勢角推定を行った。本実施の形態で説明したように、鉛直加速度状態量について飽和特性を持たせると共に、鉛直加速度状態量の偏差のフィードバックゲインについて飽和特性を持たせた場合と、従来手法として、これらの飽和特性を除いた場合との各々について、姿勢角の推定を行った。
図9(A)、(B)に示すように、飽和特性を除いた従来手法では、12〜15秒付近でのロール角の推定値の誤差が増大してしまっている。これに対し、飽和特定を持たせた場合には、12〜15秒付近でのロール角の推定値の誤差が改善されていることがわかる。
以上説明したように、第1の実施の形態に係る車両姿勢角推定装置によれば、ロール角の推定値及びピッチ角の推定値を用いて得られる鉛直加速度状態量を、飽和特性を持たせるように補正して、ローパスフィルタ処理が行われた鉛直加速度状態量の偏差を演算し、フィードバックしているので、鉛直方向加速度が変化する路面であっても、精度よく姿勢角を推定することができる。
また、ロール角の推定値の絶対値及びピッチ角の推定値の絶対値が大きいほど、前後加速度状態量の偏差及び横加速度状態量の偏差のフィードバックゲインの絶対値を大きく設定しているので、姿勢角が大きくなる急坂路であっても、精度よくロール角及びピッチ角を推定することができる。
また、車体の上下方向運動の釣り合いからピッチ角速度を推定し、ピッチ角速度の推定値を利用してロール角及びピッチ角を推定しているので、上下加速度が増加するバンク走行時においても精度良くロール角及びピッチ角を推定することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態に係る車両姿勢角推定装置の構成は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
第2の実施の形態では、鉛直加速度状態量に対してだけでなく、前後加速度状態量及び横加速度状態量に対しても、飽和特性を持たせて、ローパスフィルタ処理を行っている点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
第2の実施の形態では、加速度状態量飽和特性補正手段30において、上記(28)式に従って、鉛直加速度状態量を演算すると共に、上記(27)式に従って、飽和特性を持たせるように、演算した鉛直加速度状態量を補正する。また、加速度状態量飽和特性補正手段30は、上記(21)式の右辺の第2項の分子で表される前後加速度状態量、及び上記(22)式の右辺の第2項の分子で表される横加速度状態量を演算すると共に、鉛直加速度状態量と同様に、飽和特性を持たせるように、演算した前後加速度状態量及び横加速度状態量を補正する。
また、姿勢角推定手段28の姿勢角オブザーバにおいて、補正した、前後、横、鉛直加速度状態量を用いて、前後、横、鉛直加速度状態量のローパスフィルタ処理値を演算する。
状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段26は、上記(19)式に示すローパスフィルタ処理が行われた前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量を演算し、演算した前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量と、姿勢角オブザーバにおいて上記のように演算された、ローパスフィルタ処理が行われた前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量とに基づいて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の各々のローパスフィルタ処理値を演算する。
なお、第2の実施の形態に係る車両姿勢角推定装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
このように、ロール角の推定値及びピッチ角の推定値を用いて得られる、前後、横、鉛直加速度状態量を、飽和特性を持たせるように補正して、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算し、フィードバックしているので、鉛直方向加速度が変化する路面であっても、精度よく姿勢角を推定することができる。
なお、上記の実施の形態では、前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の各々を、飽和特性を持たせるように補正する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正するようにしてもよい。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
第3の実施の形態では、鉛直加速度状態量の偏差を演算した後に、飽和特性を持たせるように補正している点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
図10に示すように、第3の実施の形態では、横速度推定手段10、前後速度推定手段12、横加速度センサ16、前後加速度センサ18、及びヨー角速度センサ22は、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の各々を演算する状態量偏差演算手段326に接続されている。
状態量偏差演算手段326は、鉛直加速度状態量の偏差に対して飽和特性を持たせるように補正する状態量偏差飽和特性補正手段328に接続されている。
状態量偏差演算手段326及び状態量偏差飽和特性補正手段328は、着目すべき運動のみを通過させるローパスフィルタ処理が施された、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の各々のローパスフィルタ処理値を演算するローパスフィルタ値演算手段330に接続されている。
ローパスフィルタ値演算手段330は、姿勢角推定手段28に接続されている。姿勢角推定手段28は、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角φ及びピッチ角θを推定すると共に、フィードバックに用いる状態量として、上記(7)式〜(9)式の右辺で表わされる、前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量を算出する。
また、姿勢角推定手段28は、ロール角φ及びピッチ角θの推定値を前回値として、ピッチ角速度推定手段24、及びフィードバックゲイン設定手段32に入力するように、ピッチ角速度推定手段24、及びフィードバックゲイン設定手段32に接続されている。また、姿勢角推定手段28は、オブザーバから出力される、前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量を、状態量偏差演算手段326に入力するように、状態量偏差演算手段326に接続されている。
なお、本実施の形態における、状態量偏差演算手段326、状態量偏差飽和特性補正手段328、ローパスフィルタ値演算手段330、姿勢角推定手段28、及びフィードバックゲイン設定手段32は、本発明の姿勢角推定手段に対応し、状態量偏差演算手段326及び状態量偏差飽和特性補正手段328は、本発明の補正手段に対応し、ローパスフィルタ値演算手段330は、本発明のローパスフィルタ処理手段に対応している。
状態量偏差演算手段326は、横加速度センサ16、前後加速度センサ18、及びヨー角速度センサ22の各々の検出値、横車体速度の推定値、並びに前後車体速度の推定値に基づいて、上記(7)式〜(8)式の左辺で表わされる、前後加速度状態量及び横加速度状態量を演算すると共に、姿勢角推定手段28によって算出された前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量を用いて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算する。
状態量偏差飽和特性補正手段328は、以下の(34)式に従って、鉛直加速度状態量の偏差に対して飽和特性を持たせるように、鉛直加速度状態量の偏差を補正する。
ここで、ugfは、補正後の鉛直加速度状態量の偏差であり、gは、鉛直加速度状態量の偏差g−gを制限するための定数である。
上記(34)式に示すように、鉛直加速度状態量の偏差に対して飽和特性を持たせることにより、鉛直加速度状態量の偏差が上限値以上であれば、鉛直加速度状態量の偏差を上限値に補正し、鉛直加速度状態量の偏差が下限値以下であれば、鉛直加速度状態量の偏差を下限値に補正する。
また、ローパスフィルタ値演算手段330は、以下の(36)式〜(38)式に従って、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差に対してローパスフィルタ処理を行い、前後加速度状態量の偏差のローパスフィルタ処理値gxdf−gxdfのチルダ、横加速度状態量の偏差のローパスフィルタ処理値gydf−gydfのチルダ、及び鉛直加速度状態量の偏差のローパスフィルタ処理値gzdf−gzdfのチルダを演算する。
なお、第3の実施の形態に係る車両姿勢角推定装置の他の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
コンピュータを、横速度推定手段10、前後速度推定手段12、ピッチ角速度推定手段24、状態量偏差演算手段326、状態量偏差飽和特性補正手段328、ローパスフィルタ値演算手段330、姿勢角推定手段28、及びフィードバックゲイン設定手段32の各手段として機能させるプログラムによる情報処理は、図11のフローチャートに示す姿勢角推定処理ルーチンで実現することができる。コンピュータは、相互にバスによって接続されたCPU、ROM、及びRAM、並びに必要に応じて接続されたHDDで構成され、これらのプログラムは、コンピュータのCPUに接続されているROMまたはHDD等の記録媒体に記録される。
この姿勢角推定処理ルーチンを以下に説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
まず、ステップ100で、上記で説明したように横車体速度を推定し、ステップ102において各輪の車輪速度に基づいて前後車体速度を推定する。
ステップ104において、最初の演算か否かを判断し、最初の演算の場合には、ステップ346でロール角及びピッチ角の前回推定値、並びに前後、横、鉛直加速度状態量の前回値として予め定められた初期値を設定し、ステップ110において、ピッチ角速度Qの推定値を演算する。
一方、2回目以降の演算の場合には、後述するステップ356で、ロール角及びピッチ角の推定値、並びに、前後、横、鉛直加速度状態量が演算されるので、ステップ348においてロール角及びピッチ角の前回推定値、並びに前後、横、鉛直加速度状態量の前回値として前回演算された値を設定し、ステップ110において、ピッチ角速度Qの推定値を演算する。
ステップ350において、上記で説明したように、車両運動の前後加速度Gx、横加速度Gy、及びヨー角速度Rの検出値に応じたセンサ信号、並びに前後車体速度Uの推定値Vs0に基づいて、上記(7)式の左辺及び上記(8)式の左辺に従って、前後加速度状態量及び横加速度状態量を演算すると共に、前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の前回値を用いて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算する。
そして、ステップ352において、上記(34)式に従って、上記ステップ350で演算された鉛直加速度状態量の偏差を、飽和特性を持たせるように補正する。次のステップ354では、上記(36)〜(38)式に従って、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の各々のローパスフィルタ処理値を演算する。
そして、ステップ114では、上記で説明したように、前後加速度Gx及び横加速度Gyに対して飽和特性を持たせると共に、ロール角及びピッチ角の前回推定値の絶対値に応じて、フィードバックゲインを設定する。
次のステップ356では、上記ステップ110で演算されたピッチ角速度Qの推定値、上記ステップ354で演算されたローパスフィルタ処理値、及び上記ステップ114で設定されたフィードバックゲインを用いて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角φ及びピッチ角θを推定し、ロール角φ及びピッチ角θの推定値をコンピュータのメモリに記憶して、上記ステップ100へ戻る。また、上記ステップ356では、前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の各々を算出して、コンピュータのメモリに記憶する。
以上説明したように、第3の実施の形態に係る車両姿勢角推定装置によれば、鉛直加速度状態量の偏差を、飽和特性を持たせるように補正して、ローパスフィルタ処理が行われた鉛直加速度状態量の偏差を演算し、フィードバックしているので、鉛直方向加速度が変化する路面であっても、精度よく姿勢角を推定することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第4の実施の形態に係る車両姿勢角推定装置の構成は、第3の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
第4の実施の形態では、鉛直加速度状態量の偏差に対してだけでなく、前後加速度状態量の偏差及び横加速度状態量の偏差に対しても、飽和特性を持たせるように補正した後に、ローパスフィルタ処理を行っている点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
第4の実施の形態では、状態量偏差飽和特性補正手段328において、上記(34)式に従って、鉛直加速度状態量の偏差に対して飽和特性を持たせるように、鉛直加速度状態量の偏差を補正する。また、状態量偏差飽和特性補正手段328は、鉛直加速度状態量の偏差と同様に、前後加速度状態量の偏差及び横加速度状態量の偏差に対して飽和特性を持たせるように、前後加速度状態量の偏差及び横加速度状態量の偏差を補正する。
また、ローパスフィルタ値演算手段330において、補正した、前後、横、鉛直加速度状態量の偏差のローパスフィルタ処理値を演算する。
なお、第4の実施の形態に係る車両姿勢角推定装置の他の構成及び作用については、第3の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
このように、前後、横、鉛直加速度状態量の偏差を、飽和特性を持たせるように補正して、ローパスフィルタ処理が行われた、前後、横、鉛直加速度状態量の偏差を演算し、フィードバックしているので、鉛直方向加速度が変化する路面であっても、精度よく姿勢角を推定することができる。
なお、上記の実施の形態では、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の各々を、飽和特性を持たせるように補正する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正するようにしてもよい。
なお、上記の実施の形態では、各推定値の前回値を用いて、ピッチ角速度やロール角及びピッチ角を推定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、各推定値の前々回値を用いて、ピッチ角速度やロール角及びピッチ角を推定するようにしてもよい。
本発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。 本実施の形態の座標系を示す説明図である。 山岳サーキットコース走行時の姿勢角を推定した結果を示すグラフである。 (A)ローパスフィルタ処理後の鉛直加速度の時間変化を示すグラフ、(B)ローパスフィルタ処理後の横加速度の時間変化を示すグラフ、及び(C)ロール角推定値の時間変化を示すグラフである。 姿勢角オブザーバの安定性の解析結果を示す図である。 (A)ピッチ角及びロール角と、前後加速度状態量の偏差のフィードバックゲインにおけるKθxとの関係を示すグラフ、及び(B)ピッチ角及びロール角と、横加速度状態量の偏差のフィードバックゲインにおけるKθxとの関係を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態で用いる姿勢角オブザーバの安定性の解析結果を示す図である。 本発明の第1の実施の形態の処理を示す流れ図である。 第1の実施の形態におけるロール角及びピッチ角の推定結果を示す線図である。 本発明の第3の実施の形態を示すブロック図である。 本発明の第3の実施の形態の処理を示す流れ図である。
符号の説明
10 横速度推定手段
12 前後速度推定手段
14 上下加速度センサ
16 横加速度センサ
18 前後加速度センサ
20 ロール角速度センサ
22 ヨー角速度センサ
24 ピッチ角速度推定手段
26 状態量偏差ローパスフィルタ値演算手段
28 姿勢角推定手段
30 加速度状態量飽和特性補正手段
32 フィードバックゲイン設定手段
326 状態量偏差演算手段
328 状態量偏差飽和特性補正手段
330 ローパスフィルタ値演算手段

Claims (6)

  1. 各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度を推定する前後速度推定手段と、
    車両横方向の車体速度である横車体速度を推定する横速度推定手段と、
    ピッチ角速度を推定するピッチ角速度推定手段と、
    車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角速度、及びヨー角速度の各検出値に応じたセンサ信号、前記前後車体速度の推定値、並びに前記ピッチ角速度の推定値に基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する姿勢角推定手段と、
    を含む車両姿勢角推定装置であって、
    前記姿勢角推定手段は、前記ロール角の推定値及び前記ピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する補正手段と、前記前後加速度状態量、前記横加速度状態量、及び前記鉛直加速度状態量と、前記センサ信号、前記前後車体速度の推定値、及び前記横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算する状態量偏差演算手段とを備え、前記演算された前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、前記ロール角及びピッチ角を推定することを特徴とする車両姿勢角推定装置。
  2. 各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度を推定する前後速度推定手段と、
    車両横方向の車体速度である横車体速度を推定する横速度推定手段と、
    ピッチ角速度を推定するピッチ角速度推定手段と、
    車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角速度、及びヨー角速度の各検出値に応じたセンサ信号、前記前後車体速度の推定値、並びに前記ピッチ角速度の推定値に基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する姿勢角推定手段と、
    を含む車両姿勢角推定装置であって、
    前記姿勢角推定手段は、前記ロール角の推定値及び前記ピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量と、前記センサ信号、前記前後車体速度の推定値、及び前記横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算すると共に、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する補正手段と、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差に対して、ローパスフィルタ処理が行うローパスフィルタ処理手段とを備え、前記ローパスフィルタ処理が行われた、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、前記ロール角及びピッチ角を推定することを特徴とする車両姿勢角推定装置。
  3. 前記ピッチ角速度推定手段が、前記前後車体速度の推定値、前記横車体速度の推定値、前記上下加速度の検出値、前記ロール角速度の検出値、前記姿勢角推定手段で推定された前記ロール角の前回推定値、及び前記姿勢角推定手段で推定された前記ピッチ角の前回推定値に基づいて、前記ピッチ角速度を推定する請求項1又は2記載の車両姿勢角推定装置。
  4. 車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ヨー角速度、及びロール角速度の各々を検出して検出値に応じたセンサ信号を出力するセンサを更に含む請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両姿勢角推定装置。
  5. コンピュータを、
    各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度を推定する前後速度推定手段、
    車両横方向の車体速度である横車体速度を推定する横速度推定手段、
    ピッチ角速度を推定するピッチ角速度推定手段、及び
    車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角速度、及びヨー角速度の各検出値に応じたセンサ信号、前記前後車体速度の推定値、並びに前記ピッチ角速度の推定値に基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する姿勢角推定手段
    として機能させるためのプログラムであって、
    前記姿勢角推定手段は、前記ロール角の推定値及び前記ピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する補正手段と、前記前後加速度状態量、前記横加速度状態量、及び前記鉛直加速度状態量と、前記センサ信号、前記前後車体速度の推定値、及び前記横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、ローパスフィルタ処理が行われた、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算する状態量偏差演算手段とを備え、前記演算された前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、前記ロール角及びピッチ角を推定するプログラム。
  6. コンピュータを、
    各輪の車輪速度に基づいて車両前後方向の車体速度である前後車体速度を推定する前後速度推定手段、
    車両横方向の車体速度である横車体速度を推定する横速度推定手段、
    ピッチ角速度を推定するピッチ角速度推定手段、及び
    車両運動の前後加速度、横加速度、上下加速度、ロール角速度、及びヨー角速度の各検出値に応じたセンサ信号、前記前後車体速度の推定値、並びに前記ピッチ角速度の推定値に基づいて、車体の鉛直軸に対する姿勢角であるロール角及びピッチ角を推定する姿勢角推定手段
    として機能させるためのプログラムであって、
    前記姿勢角推定手段は、前記ロール角の推定値及び前記ピッチ角の推定値を用いて得られる前後加速度状態量、横加速度状態量、及び鉛直加速度状態量と、前記センサ信号、前記前後車体速度の推定値、及び前記横車体速度の推定値を用いて得られる前後加速度状態量及び横加速度状態量とに基づいて、前後加速度状態量の偏差、横加速度状態量の偏差、及び鉛直加速度状態量の偏差を演算すると共に、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差の少なくとも1つを、飽和特性を持たせるように補正する補正手段と、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差に対して、ローパスフィルタ処理が行うローパスフィルタ処理手段とを備え、前記ローパスフィルタ処理が行われた、前記前後加速度状態量の偏差、前記横加速度状態量の偏差、及び前記鉛直加速度状態量の偏差をフィードバックして、前記ロール角及びピッチ角を推定するプログラム。
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