JP5127544B2 - ドレープ付き開瞼器 - Google Patents
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Description
本発明は、眼科における内眼手術のさいに、感染予防の観点から睫毛等を術野に出さないため、及び、手術中の視野を確保しておくため、眼瞼を開いた状態で保持する開瞼器に関する。
更に、前記の器具では、結膜嚢内に挿入するフレアスカート部が厚く、大きな面積となるため、手術中、安定した装着が可能となる反面、眼球との接触面積が大きくなり、該眼球への負担が大きく悪影響を与えてしまう懸念がある。
また、眼瞼や眼球への負担が少ない安全性の高いドレープ付き開瞼器を提供することを課題とした。
更に、手術中の手術部に溜まる水や分泌物の排除作業を容易で効率の良いものとするドレープ付き開瞼器を提供することを課題とした。
・上リングは、可撓性を有する扁平なリング状プレートより形成する。
・上リング及び下リングは、円形または楕円形、あるいは、楕円類似形状に形成する。
尚、楕円類似形状とは、楕円の定義からは外れているが、全体としての概観が楕円に類似して見える形状を示し、例えば、弾性体円形リングを2方向から押しつぶす、あるいは引っ張って形成される形状を示している。
・下リングの最大直径部は、上リングの最大直径部の25%以上、40%以下の長さに形成する。
・弾性シートは、透明あるいは半透明なシートより形成する。
・弾性シートは、引張り伸び率600%以上の樹脂より形成する。
・弾性シートに接続するチューブは、該弾性シートに設けるアタッチメントを介してシートに接続する。
・チューブに逆止弁を備えて構成する。
前記手段のドレープ付き開瞼器によると、前記弾性シートの最小部(上リングと、下リングの間の括れ部分)の外径が、瞼裂とほぼ同等か、それよりも大きな径に形成されており、また、該弾性シートが上リングと下リングに拡張等により取付けて固定された構造であることにより、該開瞼器の下リングを結膜嚢内部に挿入し、眼瞼に装着すると、前記上下のリング及び弾性シートの張力によって、瞼裂が外側方向に引っ張られるため、上眼瞼と下眼瞼の閉じようとする力に抗して、開瞼状態を保持することができる。また、前記弾性シートの最小部は、前記上眼瞼と下眼瞼の閉じようとする力により僅かに押し縮められるため、顔面側に位置する上リングと瞼結膜側に位置する下リングの間隔が狭まり、弾性シートによる眼瞼内外への密着度が増し、該眼瞼の一層確実な挟持ができ、また、該弾性シートによる皮膚側から瞼結膜側までの密着度も増すことで確実な装着状態が自然に形成される。
また、上リングは、可撓性を有していることにより、前記のように上下の眼瞼により弾性シートが押し縮められると、該弾性シートにリングが引っ張られることで撓み、自然に顔面形状に適合して密着するため、顔面に一層フィットした装着状態となる。
また、弾性シートに接続して、術中に手術部となるシート内側と外部を連通するチューブを設けると、手術中、手術部に溜まってしまう水や分泌物を、該チューブを通して外部に排除することができるため、助手による、別途吸引チューブを手術部に挿入しての排水作業の必要がなく、この作業により術野を塞ぐこともない。更に、チューブの外部側端部を自動吸引装置に接続しておくと、この排除作業が自動化されるため、該作業に人手をかける必要がない。
また、このチューブを利用すれば、例えば、アルカリ化学外傷に対する、大量の生理食塩水を用いた持続洗眼などのさいには、該チューブから水を逆流させて、結膜嚢の深い位置を洗眼するなどの手技を容易にすることができる。
また、上リングを楕円、あるいは楕円類似形状とすることにより、上リングの顔面横方向への大きさを確保しても、突起部となる鼻に器具が掛かるなどにより装着を不安定にすることなく、顔面に適合させての装着ができる。一方、下リングを楕円、あるいは楕円類似形状とすることにより、眼球への縦方向の長さを変えることなく、横方向のより広い領域の視野を展開することが可能となる。
また、下リングの最大直径部を、上リングの最大直径部の25%以上、40%以下の長さに形成すると、下リングを眼球内に挿入するのに適正な大きさとしたときに、上リングが顔面の適正な範囲を覆うことのできる大きさとなり、本発明の用途に最も適合する器具とすることができる。例えば、これを逆に、下リングの直径を上リングの25%未満とすると、下リングを眼球内に挿入したさいに、上リングが大きすぎ、顔面より大きくはみ出す可能性が高くなり、一方、40%より大きくした場合は、下リングの眼球内挿入時に、上リングが十分に顔面を覆うことができない可能性が高くなってしまう。
更に、弾性シートが透明あるいは半透明であるため、術中、眼瞼や眼球の状態を確認しながらの処置が可能で、充血や乾燥などの異常状態を容易に把握して、直に対応することができる。
加えて、弾性シートの引張り伸び率を600%以上とすると、製造段階で拡張してのリングへの取り付けが容易となり、また、装着後の前記弾性に起因する作用を無理なく達成することができ、適正な開瞼状態を獲得することができる。例えば、これを逆に、伸び率が600%未満のものとすると、拡張しての製造が困難であることに加え、結膜嚢内へ装着したさいの張力が大きくなることで、必要以上の開孔状態となって眼瞼に負担をかけてしまう懸念があり、また、弾性シートの柔軟性も損なわれるため装着時にシワが発生してしまい術野が確保し難くなることが懸念される。
また、弾性シートに接続するチューブを、該弾性シートに設けたアタッチメントを介してシートに接続すると、弾性シートとチューブを直接接続する場合の製造手段となる接着に比較して、製造を容易にすることができる。
更に、該チューブに、弾性シート内側から外部方向にのみ流通を許容する逆止弁を備えると、手術部(眼球)への万一の不潔液逆流による不都合を、未然に防止することができる。
また、結膜嚢内に挿入され瞼結膜側に接触する下リングの面積を小さくしても、前記作用のように眼瞼をしっかり挟持して、確実な装着を可能とすることができるため、該下リングを従来のものと比較して小さくすることができ、結果、眼球への接触面積が小さくなり、該眼球に対する負担を小さくすることができる。
更に、弾性シートが透明、あるいは半透明であるため眼瞼の状態を確認しながらの手術が可能であり、また、弾性シートにより、睫毛やマイボーム腺が覆われ、術野に出ないため、感染予防が図られるなど安全性の高い器具とすることができる。
加えて、手術部に溜まってしまう水や分泌物を排除するチューブを備えることで、クリアな術野を確保するための排水作業が、人手(助手)を必要としないなど前記作用のように著しく容易となり、また、作業のために手術部を塞ぐことがないため、手術の進行を妨げることなく、効率の良いものとすることができる。
図1は、本発明の第一の実施の形態を示すドレープ付き開瞼器の全体構成図(Aが正面図、Bが底面図)で、図2はその一部断面図を示している。
本実施の形態のドレープ付き開瞼器は、眼瞼に装着したさいに、顔面側に位置する上リング1と、結膜嚢内に挿入される(瞼結膜側に位置する)下リング2と、両端部を前記上リング1と下リング2に取り付けた顔面側から結膜嚢に位置する、ドレープの役割も兼ねる弾性シート3と、該弾性シート3に一方端部を接続し、手術部となる弾性シート内側と外部とを連通するチューブ4により構成される。
尚、上下のプレートに取付ける前の弾性シート3の形状は、特定するものではないが、本例においては、製造時に該プレートへの取り付けを容易とするため、上プレート11に取付ける側の径は大きく、下プレート21に取付ける側の径は小さく形成された円筒状シートを用いている。即ち、下プレート21に取り付ける側となる、下部の半分程度は径が小さく一定の円筒状に形成され、上プレート11に取付ける側となる、上部の半分程度は、前記下側の円筒の径から、放射状に径を拡大して成形されたシートを使用した。
また、前記下半分の円筒の内径は、瞼を開いた状態に維持するといった目的から当然、上眼瞼と下眼瞼の間の瞼裂と同等か、あるいは、大きく形成されるが、本例においては適正な大きさとして20mmとした。そして、この大きさはそのまま開瞼器の開口部6の大きさとなっている。
尚、本例では、上リング1、下リング2を楕円形状に形成しているため、該開口部6は、眼瞼に装着されていない自然状態にあっても、該リングに連係する形で楕円形状となっている。また、協働して瞼を内外から挟持する上リング1と下リング2との間(上リングと下リングの隙間の長さ)の弾性シート3の長さを、装着したさいに確実に、かつ無理なく安全に保持できる長さとして、装着前の自然状態で、2mm以上、6mm以下程度(本例においては、4mm)に設定し構成した。
尚、チューブ4の弾性シート3への取り付け位置(弾性シートの貫通孔31の位置)は、前記の通り上リング1と下リング2の間の筒状部分となるが、下リングを結膜嚢内に装着したさい通孔が確実に確保されるように、眼球に接触してしまう可能性がある筒状部分下方部ではなく上方部に設けることが望ましい。また、該チューブ4の取り付け位置(貫通孔31の位置)は、臨床での使用において、顔の角度や、器具の装着状態を僅かに変えることで、排水作業に適切な液面位置に設定することができるため、製造段階では、それ程正確な位置に設定する必要はない。
また、本器具を眼瞼に装着するさいは、操作性や装着性を考慮して、チューブ4が目尻側から外部に取り出されるように装着するため、例えば上下のリングが楕円形状の場合は、チューブ4は、楕円の長径側に取付けられる。
また、本例においては、逆止弁42をチューブ基41と一体化したものを用いたが、逆止弁42は、別部品として、チューブ4の中途部分などに設けても良く、該チューブを注入管としても利用することが想定される場合には使用されない。
本例のドレープ付き開瞼器は、器具を眼瞼に装着したさい、装着部位の顔面形状に一層フィットしやすいように、上リング1の形状を、予め円形あるいは楕円でなく、変形された液滴形状とし、また、装着したさいに、顔面の曲線に沿うように鼻側から耳側に低く下がるように傾斜させて形成したものを示している。
予め、このような形状に形成された上リング1を用いると、器具を眼瞼に装着したさいに、より確実な顔面との密着状態が得られると共に、手術中の洗眼のさい、洗眼水の逃げ道になり、手術部位に洗眼した水が溜まりにくい形状となっている。
上記されるように、上リング1の形状は本例(円形、楕円等を含む)に限定するものではなく、顔面装着部を考慮して適切となる、どの様な形状も採ることができる。
本例のアタッチメント5は、樹脂あるいは金属よりなり、チューブとの接続部となる、該チューブの内径と同じかあるいは僅かに大きな外径に形成される凸部51と、該チューブ4と協働して弾性シート3を挟持して保持する、弾性シート3の貫通孔31より大きく形成される留部51より構成され、弾性シート3に、該アタッチメントの凸部51とほぼ同じ径で設けた貫通孔31に、シート内側より該凸部51を挿入し、該凸部51にシート外側よりチューブ4を接続することにより、前記留部52とチューブ4により弾性シート3を挟持して、該弾性シート3とチューブ4を固定している。
本器具を眼瞼に装着するさいは、瞼裂を大きく開き、上リング1を半分に折り曲げるように大きく撓ませると共に、下リング2の一部を手指で掴み、該下リング2を掴んだ側と反対側から結膜嚢内(瞼結膜側)に挿入する。尚、この挿入のさい、チューブ4が目尻側に位置するように配置する。
挿入すると、該下リング2は眼球及び瞼結膜側に接触して位置し、上リング1は眼瞼を囲繞して顔面に接触して位置することになり、弾性シート3は、皮膚側から瞼結膜側に接触して位置することになる。そして、この状態で、弾性シート3により、上眼瞼及び下眼瞼は外方方向に開かれ、開瞼状態が維持され、前記弾性シート3の開口を手術のための開口部6として用い手術が行われることになる。
そして、このように装着されると、前述の通り、弾性シート3が上リング1と下リング2に拡張して取り付けられていることにより、該弾性シート3が上下瞼の閉じようとする力に抗して、瞼裂を開いた状態に維持すると同時に、同じ上下瞼の閉じようとする力により、該弾性シート3が僅かに押しつぶされ、該シートに連結している上リング1及び下リング2が近接する方向に引っ張られることにより、リング間の距離が小さくなり、結果、上リング1と下リング2とにより眼瞼を挟持する力が強くなり、装着状態が安定したものとなり、また、上リング1が可撓性を有しているため、この引っ張りの作用により、撓む等の変形が自然におこることで、顔面との密着状態を高め、顔面形状(例えば、鼻側が高く、耳側に低く傾斜する形状)に適合した装着状態を獲得することができる。
また、目尻側から外部に取り出されたチューブ先端を、自動吸引機に接続すると、手術中に手術部に溜まってしまう水や分泌物を排除する作業を自動化することができる。
尚、以上全ての実施の形態を含め本発明の開瞼器は、ディスポーザブル(一回使い捨て)の器具を想定しており、従来の開瞼器で一般的な滅菌して複数回使用するものに比較して、清潔であり、使用勝手に優れ、使用のための面倒もない。
11. 上プレート
2. 下リング
21. 下プレート
3. 弾性シート
31. 貫通孔
4. チューブ
41. チューブ基
42. 逆止弁
5. アタッチメント
51. 凸部
52. 留部
6. 弾性シート内側(開口部、手術部)
Claims (8)
- 眼瞼を囲繞し、顔面に接して装着される可撓性を有する上リングと、
結膜嚢内に挿入され、瞼結膜側に接して装着される扁平なリング状プレートよりなる下リングと、
柔軟な筒型薄膜の端部の一方を前記上リングへ、他方を下リングへ各々取り付け、顔面側から瞼結膜側にかけて位置する弾性シートと、
該弾性シートに接続し、シート内側と外部を連通するチューブを備えて構成し、
前記弾性シートの最小部の外径が、瞼裂(上眼瞼と下眼瞼の間)と同等か、あるいは、大きく形成されたことを特徴とするドレープ付き開瞼器。 - 前記上リングは、可撓性を有する扁平なリング状プレートよりなる請求項1のドレープ付き開瞼器。
- 前記上リング及び下リングは、円形または楕円形、あるいは楕円類似形状に形成される請求項1乃至2のいずれかのドレープ付き開瞼器。
- 前記下リングの最大直径部は、前記上リングの最大直径部の25%以上、40%以下の長さに形成される請求項1乃至3のいずれかのドレープ付き開瞼器。
- 前記弾性シートは、透明あるいは半透明である請求項1乃至4のいずれかのドレープ付き開瞼器。
- 前記弾性シートは、引張り伸び率600%以上の樹脂より形成する請求項1乃至5のいずれかのドレープ付き開瞼器。
- 前記弾性シートに接続するチューブは、該弾性シートに設けるアタッチメントを介してシートに接続する請求項1乃至6のいずれかのドレープ付き開瞼器。
- 前記弾性シートに接続するチューブに、逆止弁を備えた請求項1乃至7のいずれかのドレープ付き開瞼器。
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- 2008-04-14 JP JP2008104234A patent/JP5127544B2/ja active Active
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