JP5127240B2 - 潤滑剤組成物とそれを用いた減速機ならびに電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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本発明は、潤滑剤組成物と、前記潤滑剤組成物を充填した減速機と、前記減速機を備えた電動パワーステアリング装置とに関するものである。
自動車用の電動パワーステアリング装置には、減速機が用いられる。例えば、コラム型EPSでは、電動モータの回転を、前記減速機において、ウォーム等の小歯車から、ウォームホイール等の大歯車に伝えることで、回転速度を減速すると共に出力を増幅した後、ステアリングシャフトに付与してステアリング操作をトルクアシストしている。前記小歯車と大歯車との噛み合いには、適度なバックラッシが必要である。
しかし、バックラッシが大きすぎる場合には、例えば、前記両歯車の回転を逆転させた際や、石畳み等の悪路を走行してタイヤからの反力が入力(キックバックと言う)された際等に、バックラッシに起因して歯打ち音が発生する場合があり、それが車室内に騒音として伝わると、運転者に不快感を与えることになる。そのため、従来は、適正なバックラッシとなるように、小歯車と大歯車との組み合わせを選別して減速機を組み立てる、いわゆる層別組み立てが採用されてきたが、層別組み立ての作業には手間がかかるため、減速機の生産性を向上できないという問題があった。
また、ウォームホイールの軸の偏芯によって発生する操舵トルクのむらは、層別組み立てをしても解消することができなかった。また、これらの問題は、電動パワーステアリング装置の減速機に限らず、小歯車と大歯車とを有する一般の減速機においても存在していた。そこで、これらの問題を解決するため、特許文献1において、ウォーム軸をウォームホイールヘ向けて偏倚可能に配設すると共に、前記ウォーム軸を、ばね等を用いて、弾性的に、ウォームホイールヘ向けて偏倚させることによって、実質的に、両者間のバックラッシを無くするようにした電動パワーステアリング装置の減速機が提案された。しかし、前記構成では、減速機の構造が複雑になり、製造コストがかさむという問題があった。
そこで、特許文献2、3において、ゴムや軟質樹脂等からなる緩衝材粒子を含む潤滑剤組成物を、減速機の、少なくとも小歯車と大歯車の噛み合い部分を含む領域に充填することが提案された。前記潤滑剤組成物を用いると、緩衝材粒子が、両歯車の歯面間に介在して、歯面同士の衝突を緩衝するため、減速機の構造には手を加えずに、歯打ち音を減少することができる。しかし、前記緩衝材粒子を含む潤滑剤組成物を、特に、ウォーム軸とウォームホイールとを組み合わせた減速機に使用した場合には、電動パワーステアリング装置の操舵トルクが上昇するという問題があった。
そこで、特許文献4において、緩衝材粒子として、数平均分子量500以上の長鎖ポリオールと、1分子中に活性水素基を3つ以上有する架橋剤と、イソシアネートとを反応させて合成されたポリウレタン樹脂からなる粒子を用いることが提案された。具体的には、芳香族カルボン酸またはその誘導体(酸無水物、ポリエステル等)と低分子量ポリオールとを反応させた芳香族ポリエステルポリオールと、脂肪族カルボン酸またはその誘導体(酸無水物、ポリエステル等)と低分子量ポリオールとを反応させた脂肪族ポリエステルポリオールとを、前記長鎖ポリオールとして併用して、任意の分散媒中に、液滴状に分散させた状態で、架橋剤およびイソシアネートと反応させることで、ポリウレタン樹脂(以下「ポリエステル型ポリウレタン樹脂」と記載することがある)が合成されると共に、緩衝材粒子が製造される。
前記ポリエステル型ポリウレタン樹脂製の緩衝材粒子は、そのもとになる、前記各成分の種類と比率とを選択することで、弾性と硬さとを、任意の範囲で調整することができる。そのため、適度な弾性と硬さとを有するように調整した、前記ポリエステル型ポリウレタン樹脂からなる緩衝材粒子を含む潤滑剤組成物を、小歯車と大歯車の噛み合い部分を含む領域に充填することによって、電動パワーステアリング装置の操舵トルクを上昇させたり、摺動音を発生させて、車室内での騒音を、却って、大きくしたりすることなしに、歯打ち音を、さらに効果的に減少させることが可能となる。
特開2000−43739号公報(第0007欄〜第0009欄、図1) 特開2003−214529号公報(請求項1、第0005欄〜第0006欄) 特開2004−162018号公報(請求項1、第0009欄) 特開2005−263989号公報(請求項1、第0010欄)
近時、緩衝材粒子を含む潤滑剤組成物を、先に説明したコラム型EPSだけでなく、ピニオン型EPS等の、他の方式の電動パワーステアリング装置の減速機にも使用することが求められつつある。ピニオン型EPSとは、電動モータの回転を、減速機において、小歯車から大歯車に伝えることで、回転速度を減速すると共に出力を増幅した後、操舵機構としてのラックアンドピニオン機構のうちピニオン軸に付与して、ステアリング操作をトルクアシストするものである。
しかし、発明者が検討したところ、前記ポリエステル型ポリウレタン樹脂製の緩衝材粒子を含む潤滑剤組成物を、ピニオン型EPSの減速機等に充填した場合には、前記緩衝材粒子による、操舵トルクを過剰に上昇させたり、摺動音を発生させたりすることなしに、歯打ち音を減少させて、車室内での騒音を低減する効果が十分に得られないおそれがあるだけでなく、緩衝材粒子の耐久性が不足する場合を生じて、その場合には、前記効果が、比較的、短期間で低下してしまうおそれがあることが明らかとなった。
この原因としては、前記ポリエステル型ポリウレタン樹脂製の緩衝材粒子が、ピニオン型EPSの減速機等に使用して、長期間に亘って、歯打ち音を良好に低減させるためには、弾性や硬さが十分でないことが挙げられる。すなわち、ピニオン型EPS等においては、コラム型EPSに比べて、駆動のためにより高いトルクを必要とする上、走行時に、先に説明したキックバックが、減速機にダイレクトに加わることから、コラム型EPSの減速機用として適した弾性と硬さとを有するポリエステル型ポリウレタン樹脂製の緩衝材粒子を、そのままピニオン型EPSの減速機等に使用しても、弾性が不足して、前記効果が十分に得られない上、硬さが不足して、減速機の、小歯車と大歯車の歯面間に介在した緩衝材粒子が高いトルクを受け続けることによって、比較的、短期間で押し潰されて、前記効果が低下してしまうおそれがあるのである。
また、他の原因としては、ピニオン型EPS等においては、減速機が、主として、自動車のエンジン周りに近く、しかも車外環境にも近い、ステアリングギアボックスの周辺に設置されるため、前記減速機に充填された潤滑剤組成物が、エンジンからの熱による、およそ120℃以上といった高温環境下や、主に車外環境からもたらされる水分による、高湿環境下で使用し続けられることや、特に寒冷地等において、自動車が屋外に駐車される等した際に、潤滑剤組成物が低温に曝される場合が多いこと等も挙げられる。
すなわち、ポリエステル型ポリウレタン樹脂は、総じて耐熱性が低い上、長鎖ポリオールとしての脂肪族ポリエステルポリオールの割合が多くなるほど、耐湿性、耐水性が低下する傾向があり、場合によっては、前記高温環境下や高湿環境下での使用によって加水分解を生じることがある。その結果、ポリエステル型ポリウレタン樹脂が加水分解して低分子量化することによって、緩衝材粒子の弾性が急激に低下して、減速機の、小歯車と大歯車の歯面間に介在した際に、簡単に押し潰されたり、低分子量化に伴って粘着性が増大して、潤滑剤組成物中で、多数の緩衝材粒子が塊状に凝集したりする結果、比較的、短期間で、歯打ち音を低減させる効果が低下してしまうおそれがあるのである。
さらに、長鎖ポリオールとしての芳香族ポリエステルポリオールの割合が多くなるほど、ポリエステル型ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が高くなって、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度が上昇する傾向があるため、潤滑剤組成物が低温に曝された状態で操舵操作が行われた際に、減速機の、小歯車と大歯車の歯面間に介在した緩衝材粒子が押し潰されやすくなる結果、やはり比較的、短期間で、歯打ち音を低減させる効果が低下してしまうおそれがあるのである。そのため、特許文献4に記載の、ポリエステル型ポリウレタン樹脂製の緩衝材粒子を含む潤滑剤組成物では、特にピニオン型EPSの減速機等に使用した際に、歯打ち音を低減させる効果が十分に得られないおそれがあるだけでなく、緩衝材粒子の耐久性が不足する場合を生じて、その場合にはして、前記効果が、比較的、短期間で低下してしまうおそれがある。
本発明の目的は、特にピニオン型EPSの減速機等に充填して、これまでよりも高温環境下、高湿環境下、低温環境下、あるいは高いトルクを受け続ける環境下で使用しても、緩衝材粒子による、前記ピニオン型EPS等の電動パワーステアリング装置の操舵トルクを過剰に上昇させたり、摺動音を発生させたりすることなしに、歯打ち音を減少させて、車室内での騒音を低減する効果を、これまでより長期間に亘って、良好に維持し続けることができる潤滑剤組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、前記本発明の潤滑剤組成物を使用することによって、特に長期間に亘って、高温環境下や高湿環境下、あるいは高いトルクを受け続ける環境下で使用し続けても騒音が小さい上、電動パワーステアリング装置等に組み込んだ際に、その操舵トルクを上昇させるおそれのない減速機と、前記減速機を用いた電動パワーステアリング装置とを提供することにある。
本発明は、少なくとも、
(1) 1分子中に活性水素基を3つ有する3官能のポリカプロラクトンポリオール、および1分子中に活性水素基を2つ有する2官能のポリカプロラクトンポリオールからなる群より選ばれた少なくとも1種を含み、かつ、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300であるポリオール成分と、
(2) 分子中にイソシアヌレート骨格を有し、かつ1分子中にNCO基を3つ以上有するイソシアネートと、
を反応させて合成された、架橋構造を有するポリウレタン樹脂からなる緩衝材粒子と、潤滑剤とを含有することを特徴とする潤滑剤組成物である。
発明者の検討によると、1分子中に活性水素基を3つ有する3官能のポリカプロラクトンポリオール、および/または1分子中に活性水素基を2つ有する2官能のポリカプロラクトンポリオールを含むポリオール成分を、少なくとも分子中にイソシアヌレート骨格を有し、かつ1分子中にNCO基を3つ以上有するイソシアネートと反応させて合成される、架橋構造を有するポリウレタン樹脂(以下「ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂」と記載することがある)は、前記ポリカプロラクトンポリオールが耐油性に優れていることから、従来のポリエステル型ポリウレタン樹脂と同等またはそれ以上の高い耐油性を有する上、前記ポリカプロラクトンポリオールが、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度を引き下げる機能をも有するため、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度を、従来に比べて大幅に低下させることもできる。
また、前記ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分の、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内に規定されていること
ポリカプロラクトンポリオールとして、1分子中に活性水素基を3つ有する3官能のポリカプロラクトンポリオール、および1分子中に活性水素基を2つ有する2官能のポリカプロラクトンポリオールからなる群より選ばれた少なくとも1種を用いていること、および
イソシアネートとして、分子中にイソシアヌレート骨格を有し、かつ、1分子中にNCO基を3つ以上有する多官能のイソシアネートを用いていること、
から、分子の架橋密度が、従来に比べて高くなる傾向にある。
そのため、前記ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂は、前記のように分子の架橋密度が高いことと、分子中にイソシアヌレート骨格を導入していることとが相まって、従来のポリエステル型ポリウレタン樹脂に比べて、耐熱性、耐湿性、および耐水性に優れていると共に、緩衝材粒子の弾性と強度とを、従来に比べて、大幅に向上して、その耐久性を改善することもできる。
そのため、前記ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂からなる緩衝材粒子を含む、本発明の潤滑剤組成物によれば、特にピニオン型EPSの減速機等に充填して、これまでよりも高温環境下、高湿環境下、低温環境下、あるいは高いトルクを受け続ける環境下で使用しても、前記緩衝材粒子による、前記ピニオン型EPS等の電動パワーステアリング装置の操舵トルクを過剰に上昇させたり、摺動音を発生させたりすることなしに、歯打ち音を減少させて、車室内での騒音を低減する効果を、これまでより長期間に亘って、良好に維持し続けることが可能となる。なお、本発明においては、ポリカプロラクトンポリオール等のポリオール成分の数平均分子量を、前記ポリオール成分の水酸基価と、官能基数とから求めた値でもって表すこととする。
記ポリオール成分としては、前記3官能のポリカプロラクトンポリオールを、1種単独で使用してもよいが、少なくとも3官能のポリカプロラクトンポリオールを含む、2種以上のポリオールを併用することもできる。
例えば、ポリオール成分として、
(i) 数平均分子量の異なる2種以上の、3官能のポリカプロラクトンポリオールを、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となるように併用するか、
(ii) 3官能のポリカプロラクトンポリオールと、1分子中に活性水素基を2つ有する2官能のポリカプロラクトンポリオールとを、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となるように併用するか、あるいは
(iii) カルボン酸またはその誘導体(酸無水物、ポリエステル等)とポリオールとの反応生成物であるポリエステルポリオールと、3官能のポリカプロラクトンポリオールとを、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となり、かつ、式(a):
Figure 0005127240
〔式中、PKはポリカプロラクトンポリオールの質量、PEはポリエステルポリオールの質量を示す。〕
で求められる、ポリカプロラクトンポリオールの、両ポリオールの総量中に占める割合RP(質量%)が50質量%を超える範囲内となるように併用する
ことによって、先に説明した種々の特性を維持しながら、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂に、併用するポリオール成分に基づく、様々な、新たな特性を付与することができる。
なお本発明においては、1分子中に活性水素基を3つ以上有する架橋剤を併用することもでき、かかる併用によって、分子の架橋密度をさらに向上することができる。ただし、架橋剤が多すぎる場合には、分子の架橋密度が高くなりすぎて、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂が、硬く、かつ脆くなるため、前記架橋剤の、ポリオール成分に対するモル比は2.0倍未満の範囲内とされる。
緩衝材粒子は、ポリオール成分を、分散媒中に、液滴状に分散させた状態で、少なくともイソシアネートと反応させて合成されたポリウレタン樹脂からなる球状の粒子であるのが好ましい。前記球状の粒子を用いた場合には、潤滑剤組成物の流動性を向上させて、電動パワーステアリング装置の操舵トルクの上昇や、摺動音の発生を、さらに確実に防止することができる。また、前記製造方法によれば、球状で、しかも粒径の揃った緩衝材粒子を、効率よく製造できるという利点もある。
本発明の減速機は、小歯車と大歯車とを備え、前記両歯車の噛み合い部分を含む領域に、本発明の潤滑剤組成物を充填したものであるため、特に長期間に亘って、高温環境下や高湿環境下、あるいは高いトルクを受け続ける環境下で使用し続けても騒音が小さい上、電動パワーステアリング装置等に組み込んだ際に、その操舵トルクを上昇させるおそれがない点で好ましい。また、本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵補助用のモータの出力を、前記減速機を介して舵取機構に伝えるものであるため、車室内での騒音を、コスト安価に低減できる点で好ましい。
本発明によれば、特にピニオン型EPSの減速機等に充填して、これまでよりも高温環境下、高湿環境下、低温環境下、あるいは高いトルクを受け続ける環境下で使用しても、緩衝材粒子による、前記ピニオン型EPS等の電動パワーステアリング装置の操舵トルクを過剰に上昇させたり、摺動音を発生させたりすることなしに、歯打ち音を減少させて、車室内での騒音を低減する効果を、これまでより長期間に亘って、良好に維持し続けることができる潤滑剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記本発明の潤滑剤組成物を使用することによって、特に長期間に亘って、高温環境下や高湿環境下、あるいは高いトルクを受け続ける環境下で使用し続けても騒音が小さい上、電動パワーステアリング装置等に組み込んだ際に、その操舵トルクを上昇させるおそれのない減速機と、前記減速機を用いた電動パワーステアリング装置とを提供することができる。
〈潤滑剤組成物〉
本発明の潤滑剤組成物は、少なくとも、
(1) 1分子中に活性水素基を3つ有する3官能のポリカプロラクトンポリオール、および1分子中に活性水素基を2つ有する2官能のポリカプロラクトンポリオールからなる群より選ばれた少なくとも1種を含み、かつ、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300であるポリオール成分と、
(2) 分子中にイソシアヌレート骨格を有し、かつ1分子中にNCO基を3つ以上有するイソシアネートと、
を反応させて合成された、架橋構造を有するポリウレタン樹脂からなる緩衝材粒子と、潤滑剤とを含有することを特徴とするものである。
前記本発明の潤滑剤組成物は、先に説明したように、特にピニオン型EPSの減速機等に充填して、これまでよりも高温環境下、高湿環境下、低温環境下、あるいは高いトルクを受け続ける環境下で使用しても、緩衝材粒子による、前記ピニオン型EPS等の電動パワーステアリング装置の操舵トルクを過剰に上昇させたり、摺動音を発生させたりすることなしに、歯打ち音を減少させて、車室内での騒音を低減する効果を、良好に維持し続けることができるという、特有の作用効果を奏する。
前記(1)のポリオール成分のうち、ポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンを開環重合させて合成されたものが挙げられる。前記ポリカプロラクトンポリオールは、ε−カプロラクトンを開環重合させる際に用いる重合開始剤の、重合の開始点として機能する官能基の数に基づいて、分子中に導入される、官能基としての活性水素基の個数を前記3つまたは2つに調整することができる。すなわち重合開始剤として、1分子中に、官能基としての活性水素基を3つ有する、トリメチロールプロパン等を用いた場合には、開環重合によって、1分子中に活性水素基を3つ有する3官能のポリカプロラクトンポリオールを合成することができる。
また、重合開始剤として、1分子中に、官能基としての活性水素基を2つ有するエチレングリコール等を用いた場合には、開環重合によって、1分子中に活性水素基を2つ有する2官能のポリカプロラクトンポリオールを合成することができる。前記ポリカプロラクトンポリオールを含むポリオール成分の、活性水素基1つあたりの数平均分子量は250〜1300に限定される。ポリオール成分の、活性水素基1つあたりの数平均分子量が1300を超える場合には、少なくともイソシアネートと反応させて合成される、架橋構造を有するポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の、分子の架橋密度が不足して、前記ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の耐熱性、耐湿性、および耐水性を向上すると共に、緩衝材粒子の弾性と強度とを向上する効果が得られないため、緩衝材粒子の耐久性が低下してしまう。
また、前記数平均分子量が250未満では、少なくともイソシアネートと反応させて合成される、架橋構造を有するポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の、分子の架橋密度が高くなりすぎて、前記ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂が、硬く、かつ脆くなりすぎるため、却って、緩衝材粒子の耐久性が低下してしまう。なお、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の、分子の架橋密度を適度な範囲に調整して、前記ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の各特性を、いずれも向上させることによって、緩衝材粒子の耐久性を向上することを考慮すると、ポリオール成分の、活性水素基1つあたりの数平均分子量は、前記範囲内でも300〜1250、特に350〜1200であるのが好ましい。
ポリオール成分の、活性水素基1つあたりの数平均分子量を、前記範囲内となるように調整するためには、前記ポリオール成分として、3官能のポリカプロラクトンポリオール、または2官能のポリカプロラクトンポリオールを、いずれか1種単独で使用する場合は、前記ポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量を調整すればよい。例えば、3官能のポリカプロラクトンポリオールを単独で使用する場合は、その数平均分子量を、750〜3600の範囲に調整することで、前記ポリカプロラクトンポリオールの、ひいてはポリオール成分の、活性水素基1つあたりの数平均分子量を250〜1300の範囲内とすることができる。
また、ポリオール成分として、2官能のポリカプロラクトンポリオールを単独で使用する場合は、その数平均分子量を、500〜2600の範囲に調整することで、前記ポリカプロラクトンポリオールの、ひいてはポリオール成分の、活性水素基1つあたりの数平均分子量を250〜1300の範囲内とすることができる。また、ポリオール成分として、少なくともポリカプロラクトンポリオールを含む、2種以上のポリオールを併用する場合には、各ポリオールの数平均分子量の総量と、活性水素基の総量とから求められる、活性水素基1つあたりの数平均分子量が前記範囲内となるように、それぞれのポリオールの数平均分子量と活性水素基の数、各ポリオールの配合割合を調整すればよい。
2種以上のポリオールを併用する場合、その少なくとも1種がポリカプロラクトンポリオールであれば、併用する他のポリオールについては特に限定されないが、先に説明した(i)〜(iii)の組み合わせを採用するのが好ましい。このうち(i)の、数平均分子量の異なる2種以上の、3官能のポリカプロラクトンポリオールを併用する場合には、それぞれのポリカプロラクトンポリオールとして、活性水素基1つあたりの数平均分子量が前記範囲内となるものを用いてもよいし、少なくとも1種は、前記数平均分子量が、前記範囲を外れるものを用いることもできる。いずれの場合においても、ポリオール成分全体としてみたときに、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となるように、各ポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量と配合割合を調整すればよい。
(ii)の、3官能のポリカプロラクトンポリオールと2官能のポリカプロラクトンポリオールとを併用する場合には、前記3官能のポリカプロラクトンポリオールとして、1種のみを単独で用いてもよいし、数平均分子量の異なる2種以上を併用してもよい。同様に、2官能のポリカプロラクトンポリオールとしても、1種のみを単独で用いてもよいし、数平均分子量の異なる2種以上を併用してもよい。
その他の構成は、前記(i)の場合と同様である。すなわち、それぞれのポリカプロラクトンポリオールとして、活性水素基1つあたりの数平均分子量が前記範囲内となるものを用いてもよいし、少なくとも1種は、前記数平均分子量が、前記範囲を外れるものを用いることもできる。いずれの場合においても、ポリオール成分全体としてみたときに、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となるように、各ポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量と配合割合を調整すればよい。
(iii)において、3官能のポリカプロラクトンポリオールと併用する、カルボン酸またはその誘導体(酸無水物、ポリエステル等)とポリオールとの反応生成物であるポリエステルポリオールとしては、先に説明した、芳香族カルボン酸またはその誘導体と低分子量ポリオールとを反応させた芳香族ポリエステルポリオールや、脂肪族カルボン酸またはその誘導体と低分子量ポリオールとを反応させた脂肪族ポリエステルポリオール等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、1種のみを単独で用いてもよいし、数平均分子量や構造の異なる2種以上を併用してもよい。また、3官能のポリカプロラクトンポリオールとしても、1種のみを単独で用いてもよいし、数平均分子量の異なる2種以上を併用してもよい。前記併用によって、緩衝材粒子の引張強度を向上したり、ポリエステルポリオールが芳香族ポリエステルポリオールである場合には、前記緩衝材粒子の耐熱性を向上したりする効果が得られる。
前記併用系においては、式(a):
Figure 0005127240
〔式中、PKはポリカプロラクトンポリオールの質量、PEはポリエステルポリオールの質量を示す。〕
で求められる、ポリカプロラクトンポリオールの、両ポリオールの総量中に占める割合RP(質量%)が50質量%を超える範囲内である必要がある。割合RPが前記範囲未満では、ポリオール成分として、ポリカプロラクトンポリオールを用いたことによる、先に説明した、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度を引き下げて、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度を低下させる効果が得られなくなってしまう。
なお、前記効果を、より一層、良好に発揮させると共に、ポリエステルポリオールを併用したことによる、先に説明した効果とを両立させることを考慮すると、前記割合RPは、前記範囲内でも60〜95質量%、特に70〜90質量%であるのが好ましい。その他の構成は、前記(i)(ii)の場合と同様である。
すなわち、それぞれのポリオールとして、活性水素基1つあたりの数平均分子量が前記範囲内となるものを用いてもよいし、少なくとも1種は、前記数平均分子量が、前記範囲を外れるものを用いることもできる。いずれの場合においても、ポリオール成分全体としてみたときに、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となるように、各ポリオールの数平均分子量と配合割合を調整すればよい。
ポリオール成分と反応させるイソシアネートとしては、分子中にイソシアヌレート骨格を有し、かつ1分子中にNCO基を3つ以上有する種々のイソシアネートが使用可能である。前記イソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシネアート、1,12−ドデカンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどを、イソシアヌレート化反応によって3量化した3量化変性イソシアネート等が挙げられる。
前記分子中にイソシアヌレート骨格を有し、かつ、1分子中にNCO基を3つ以上有するイソシアネート、先に説明したように、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の耐熱性を向上する効果を有している。前記イソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化反応によって3量化した3量化変性イソシアネート(NCO基数:3.5)等が挙げられる。
イソシアネートは、NCO基の当量が、ポリオール成分の活性水素基の当量とほぼ等しくなるように、あるいは、1分子中に活性水素基を3つ以上有する架橋剤を併用する場合には、前記NCO基の当量が、ポリオール成分の活性水素基の当量、および架橋剤の活性水素基の当量の合計量とほぼ等しくなるように、配合割合を設定すればよい。具体的には、NCO基の当量が、活性水素基の当量の0.9倍〜1.1倍程度となるように、イソシアネートの配合割合を設定するのが好ましい。
架橋剤としては、1分子中に活性水素基を3つ以上有する種々の化合物が使用可能であり、前記架橋剤としては、例えばグリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオールや、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N,N′,N′−テトラ(ヒドロキシプロピル)ジアミン等のアミノアルコール等が挙げられ、特に活性水素基が全て1級水酸基である、トリメチロールプロパンやトリメチロールブタンが好ましい。
ポリオール成分として、少なくとも3官能のポリカプロラクトンポリオールを含む系においては、架橋剤の、ポリオール成分に対するモル比が2.0倍未満の範囲内とされる。架橋剤のモル比が前記範囲を超える場合には、分子の架橋密度が高くなりすぎて、合成されるポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂が、硬く、かつ脆くなってしまう。なお、前記系では、架橋剤を添加しなくても、3官能のポリカプロラクトンポリオールと、イソシアネートとの反応によって架橋構造が形成されるため、前記モル比の下限値は0倍、つまり架橋剤を添加しない範囲まで含まれるが、架橋剤を添加する場合には、その添加効果を有効に発揮させることを考慮すると、前記モル比は0.5〜1.5倍の範囲内であるのが好ましい。
前記各成分を反応させて合成されるポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂からなる緩衝材粒子には、必要に応じて、各種の添加剤を含有させることもできる。添加剤としては、例えば、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の劣化を防止するための酸化防止剤、老化防止剤、難燃剤等や、緩衝材粒子に磁性を付与するための磁性粉末、粒子を着色するための着色剤等が挙げられる。
緩衝材粒子の、体積分率の平均粒径D1は、50μm<D1≦300μmであるのが好ましい。体積分率の平均粒径D1が前記範囲以下では、小歯車と大歯車との噛み合いの衝撃を緩衝して歯打ち音を低減する効果に限界があり、車室内での騒音を、大幅に低減できないおそれがある。また、体積分率の平均粒径D1が前記範囲を超える場合には、電動パワーステアリング装置の操舵トルクが上昇したり、摺動音を発生したりするおそれがある。なお、緩衝材粒子の、体積分率の平均粒径は、歯打ち音を低減する効果を、さらに向上させることを考慮すると、前記範囲内でも、特に100μm以上であるのが好ましい。また、操舵トルクの上昇や摺動音の発生を、より確実に防止することを考慮すると、前記範囲内でも、特に200μm以下であるのが好ましい。
緩衝材粒子は、種々の方法によって製造できるが、ポリオール成分を、分散媒中に、液滴状に分散させた状態で、少なくともイソシアネートと反応させる分散重合法によれば、分散媒中に分散した球状を維持しつつ、しかも、粒径の揃った緩衝材粒子を、効率よく製造できる。分散媒としては、少なくともポリオール成分と、反応によって生成したポリウレタン樹脂とを溶解しない種々の、非水系の有機溶媒がいずれも使用可能であり、その具体例としてはn−ヘキサン、イソオクタン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族炭化水素や、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。特に、反応時の加熱等を考慮すると、分散媒としては、沸点が60℃以上であるものが好ましい。また必要に応じて、前記分散媒としては、トルエン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン等の極性溶媒を併用してもよい。
反応系には、必要に応じて、ウレタン化促進のための触媒を添加してもよい。触媒としては、例えばジ−n−ブチルスズジラウレート、第1スズオクトエート、第三アミン類(N−メチルモルホリン、トリエチルアミン他)、ナフテン酸鉛、鉛オクトエート等が挙げられる。触媒の添加量は、ポリオール成分等の、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂を形成する成分の総量100質量部に対して、0.01〜1質量部程度が好ましい。
反応系には、少なくともポリオール成分を、非水系の分散媒中に、安定に分散させるために、分散安定剤を添加してもよい。分散安定剤としては、種々の分散安定剤(界面活性剤)がいずれも使用可能である。好ましい分散安定剤としては、例えば、分子内に不飽和結合を有するポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオール100質量部と、炭素数6以上の炭化水素基からなる側鎖を有するエチレン性不飽和単量体20〜400質量部とを反応させて得られる化合物が挙げられる。分散安定剤は、ポリオール成分等の、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂を形成する成分の総量100質量部に対して、1〜30質量部程度が好ましい。
分散重合法を実施するには、従来公知の種々の、乳化装置等を使用することができる。各成分の仕込みの手順は、適宜、選択することができるが、下記の手順により行うのが好ましい。すなわち、ポリオール成分と、分散媒とを、装置の反応容器に仕込み、分散安定剤を加えてかく拌して、前記ポリオール成分を、分散媒中に球状に分散させた後、触媒とイソシアネートとを添加する。そして、ポリオール成分とイソシアネートとの反応による、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の生成と架橋が進行して、未反応のNCO基が消失するまで反応を続けると、緩衝材粒子が製造される。未反応のNCO基の量は、反応容器中からサンプリングしたポリウレタン樹脂の、末端NCO基の濃度を滴定して求めることができる。
架橋剤は、前記反応の任意の時点で添加することができるが、ポリオール成分とイソシアネートとの反応によるポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の生成がある程度、進んだ時点で架橋剤を添加して、補助的に架橋構造を生成させるのが好ましい。ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂の生成の進行度合いは、前記と同様に、反応容器中からサンプリングしたポリウレタン樹脂の、末端NCO基の濃度を滴定して求めることができる。
前記分散重合法において、緩衝材粒子の、体積分率の平均粒径を、先に説明した範囲内に調整するには、かく拌条件(かく拌速度、温度等)を調節したり、分散安定剤の種類や量を選択したり、分散媒の種類や量を選択したりすればよい。また、分散重合法によって製造される緩衝材粒子に、前記添加剤を添加するには、例えば、重合に用いるポリオール成分中に、添加剤を混合しておけばよい。
本発明の潤滑剤組成物における、緩衝材粒子の含有割合は、前記潤滑剤組成物の総量の5〜50質量%、特に20〜40質量%であるのが好ましい。含有割合が前記範囲未満では、緩衝材粒子による、小歯車と大歯車との噛み合いの衝撃を緩衝して、歯打ち音を低減する効果が十分に得られず、車室内での騒音を、十分に低減できないおそれがある。また、前記範囲を超える場合には、電動パワーステアリング装置の操舵トルクが上昇したり、摺動音が発生して、却って、車室内での騒音が大きくなったりするおそれがある。
緩衝材粒子と共に潤滑剤組成物を構成する潤滑油としては、動粘度が5〜200mm2/s(40℃)、特に、20〜100mm2/s(40℃)であるものを用いるのが好ましい。前記潤滑油としては合成炭化水素油〔例えばポリαオレフィン油(PAO)〕が好ましいが、シリコーン油、フッ素油、エステル油、エーテル油等の合成油や鉱油等を用いることもできる。潤滑油はそれぞれ単独で使用できる他、2種以上を併用しても良い。潤滑剤組成物は、液状であってもよいし、半固形状の、いわゆるグリースであってもよい。
グリースは、緩衝材粒子を添加した状態での混和ちょう度(25℃)が265〜475、特に355〜430であるのが好ましい。潤滑剤組成物をグリースにするためには、増ちょう剤を添加すればよい。増ちょう剤としては、石けん系増ちょう剤、ウレア系増ちょう剤、有機系増ちょう剤、無機系増ちょう剤等の、従来公知の種々の増ちょう剤が挙げられる。
このうち、石けん系増ちょう剤としては、アルミニウム石けん、カルシウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん等の金属石けん型増ちょう剤、リチウム−カルシウム石けん、ナトリウム−カルシウム石けん等の混合石けん型増ちょう剤、アルミニウムコンプレックス、カルシウムコンプレックス、リチウムコンプレックスナトリウムコンプレックス等のコンプレックス型増ちょう剤等が挙げられ、特にリチウムステアレート等のリチウム石けんが好ましい。また、ウレア系増ちょう剤としてはポリウレア等が挙げられ、有機系増ちょう剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナトリウムテレフタラート等が挙げられる。さらに無機系増ちょう剤としては、有機ベントナイト、グラファイト、シリカゲル等が挙げられる。
液状の、またはグリースとしての潤滑剤組成物には、必要に応じて、フッ素樹脂(PTFE等)、二硫化モリブデン、グラファイト、ポリオレフィン系ワックス(アマイド等を含む)等の固体潤滑剤、リン系や硫黄系の極圧添加剤、トリブチルフェノール、メチルフェノール等の酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤、油性剤等を添加してもよい。
本発明の潤滑剤組成物は、先に説明したピニオン型EPSだけでなく、コラム型EPS、ラック型EPS等の、種々の方式の電動パワーステアリング装置の減速機に充填して使用することができる他、例えば、前記ステアリングシャフトと、ラックアンドピニオン機構等の操舵機構との間を繋ぐ中間軸に組み込まれるスプライン継手等の、種々の動力伝達部品に充填することで、歯打ち音等の異音を低減するために機能させることができる。
〈減速機および電動パワーステアリング装置〉
図1は、本発明の一実施の形態の電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、前記ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結される中間軸5と、前記中間軸5に自在継手6を介して連結されるピニオン軸7と、前記ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン歯7aに噛み合うラック歯8aを有して自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラックバー8とを有しており、前記ピニオン軸7とラックバー8とによって、操舵機構としてのラックアンドピニオン機構Aが構成されている。
ラックバー8は、ハウジング9内に、図示しない複数の軸受を介して、直線往復動自在に支持されている。ラックバー8の両端部は、ハウジング9の両側へ突出し、各端部には、それぞれタイロッド10が結合されている。各タイロッド10は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して、対応する車輪11に連結されている。操舵部材2が操作されて、ステアリングシャフト3が回転されると、前記回転が、ピニオン歯7aおよびラック歯8aによって、自動車の左右方向に沿う、ラックバー8の直線運動に変換されて、車輪11の転舵が達成される。
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸3aと、ピニオン軸7に連なる出力軸3bとに分割されており、これら入出力軸3a、3bは、トーションバー12を介して、同一の軸線上で相対回転可能に互いに連結されている。トーションバー12の近傍には、前記トーションバー12を介する、入出力軸3a、3b間の相対回転変位量から操舵トルクを検出するトルクセンサ13が設けられており、前記トルクセンサ13のトルク検出結果は、ECU(Electric Control Unit:電子制御ユニット)14に与えられる。ECU14では、トルク検出結果や、図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、駆動回路15を介して、操舵補助用の電動モータ16を駆動制御する。そして、電動モータ16の出力回転が、伝動装置としての減速機17を介して減速されて、ラックアンドピニオン機構Aを構成するピニオン軸7に伝達され、前記ピニオン軸7を介して、ラックバー8の直線運動に変換されて、操舵が補助される。
減速機17は、電動モータ16により回転駆動される、小歯車としてのウォーム軸18と、前記ウォーム軸18に噛み合うと共に、ピニオン軸7に一体回転可能に連結される、大歯車としてのウォームホイール19とを備えており、ラックバー8を収容するハウジング9内に収容されている。
図2を参照して、ウォーム軸18は、電動モータ16の回転軸16aに、スプライン継手34を介して連結された状態で、ハウジング9によって保持される第1および第2の転がり軸受20、21によって、それぞれ、回転自在に支持されている。前記第1および第2の転がり軸受20、21の内輪22、23は、ウォーム軸18の、対応するくびれ部に嵌合されている。外輪24、25は、ハウジング9の軸受保持孔26、27に、それぞれ保持されている。ハウジング9は、ウォーム軸18の周面の一部に対して、径方向に対向する部分9aを含んでいる。
ウォーム軸18の一端部18aを支持する第1の転がり軸受20の外輪24は、ハウジング9の段部28に当接して位置決めされている。一方、内輪22は、ウォーム軸18の位置決め段部29に当接されることによって、他端部18b側への移動が規制されている。また、ウォーム軸18の、他端部18b(継手側端部)の近傍を支持する第2の転がり軸受21の内輪23は、ウォーム軸18の位置決め段部30に当接されることによって、一端部18a側への移動が規制されている。
外輪25は、予圧調整用のねじ部材31によって、第1の転がり軸受20側へ付勢されている。ねじ部材31は、ハウジング9に形成されるねじ孔32にねじ込まれることで、一対の転がり軸受20、21に予圧を付与すると共に、ウォーム軸18を、軸方向に位置決めしている。33は、予圧調整後のねじ部材31を止定するため、当該ねじ部材31に係合されるロックナットである。
ウォームホイール19は、ピニオン軸7に、一体回転可能に結合された、環状の芯金19aと、前記芯金19aの周囲を取り囲んで外周面部に歯が形成された、合成樹脂部材19bとを備えている。芯金19aは、例えば、合成樹脂部材19bの樹脂成形時に、金型内にインサートされる。そして、このインサートした状態での樹脂成形によって、芯金19aと合成樹脂部材19bとが結合、一体化されている。
ハウジング9内において、ウォーム軸18とウォームホイール19の噛み合い部分Bを少なくとも含む領域には、先に述べた、本発明の潤滑剤組成物が充填される。すなわち、潤滑剤組成物は、噛み合い部分Bのみに充填されてもよいし、噛み合い部分Bとウォーム軸18の周縁全体に充填されてもよいし、ハウジング9内全体に充填されてもよい。なお、本発明は、図1、2の実施形態には限定されない。例えば、先に説明したように、本発明の電動パワーステアリング装置の構成は、ピニオン型EPS以外の、他の方式の電動パワーステアリング装置に適用することができ、本発明の減速機の構成は、電動パワーステアリング装置以外の他の装置用の減速機に適用することができる等、本発明の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で、種々の変形を施すことができる。
〈ポリオール成分〉
(3官能のポリカプロラクトンポリオール)
3官能のポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンを、重合開始剤としてトリメチロールプロパンを用いて開環重合させて合成した、活性水素基数nPが3で、かつ数平均分子量MP、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nP、および水酸基価が表1に示す値である、3PCL1〜3PCL8の8種のポリカプロラクトンポリオールを用意した。
(2官能のポリカプロラクトンポリオール)
2官能のポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンを、重合開始剤としてエチレングリコールを用いて開環重合させて合成した、活性水素基数nPが2で、かつ数平均分子量MP、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nP、および水酸基価が表1に示す値である、2PCL1、2PCL2の2種のポリカプロラクトンポリオールを用意した。
(ポリエステルポリオール)
カルボン酸またはその誘導体とポリオールとの反応生成物であるポリエステルポリオールとして、脂肪族ポリエステルポリオールとしてのポリブチレングリコールアジピン酸エステル〔活性水素基数nP:2、数平均分子量MP:2000、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nP:1000、水酸基価:56.1mgKOH/g、2PEP1〕と、芳香族ポリエステルポリオールとしてのポリヘキサメチレングリコールイソフタル酸エステル〔活性水素基数nP:2、数平均分子量MP:1000、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nP:500、水酸基価:112.2mgKOH/g、2PEP2〕とを用意した。
Figure 0005127240
〈緩衝材粒子の製造〉
(実施例1)
ポリオール成分としては、前記表1に示した3官能のポリカプロラクトンポリオール3PCL3〔活性水素基数nP:3、数平均分子量MP:800、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nP:266.7、水酸基価:210.4mgKOH/g〕を用いた。窒素置換した1リットルのフラスコ中に、前記ポリカプロラクトンポリオール570gと、分散媒としてのイソオクタン995gと、分散安定剤〔日本ポリウレタン工業(株)製のN−5741〕10gとを仕込んだ。
次に、かく拌を開始して、ポリカプロラクトンポリオールを、イソオクタン中に、液滴状に分散させた状態で、ヘキサメチレンジイソシアネートを3量化変性した3量化変性イソシアネート〔NCO基数nC:3.5、数平均分子量MC:695.3、NCO基1つあたりの数平均分子量MC/nC:198.7、NCO基含量:21.1%、C−HX〕425gと、触媒としてのジ−n−ブチルスズジラウレート〔日本ポリウレタン工業(株)製のU−600〕とを加えて、未反応のNCO基が消失するまで、80〜90℃で約8時間、反応させた後、固形分をロ別し、シリカ系打粉剤(平均粒径:0.1μm)5gを混合して乾燥させ、目開き300μmの篩を用いて大粒径の異物を除去して、ポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂からなる緩衝材粒子980gを製造した。
レーザー回折式粒度分布計〔日機装(株)製の登録商標マイクロトラック〕を用いて測定した、前記緩衝材粒子の、体積分率の平均粒径は150μm、粒度分布は40〜300μmであった。また、前記緩衝材粒子について、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したガラス転移温度Tgは−48℃であった。また、分散媒と分散安定剤とを除く同一処方で作製したシート(厚み約2mm)から切り出した試験片の、測定温度25℃での物性は、日本工業規格JIS K6301:1995「加硫ゴム物理試験方法」所載の測定方法に則って測定した破断時伸びEBが160%、破断時強度TBが33MPaであった。
また、前記試験片を、80℃の温水に250時間、及び1000時間、浸漬した後、再度、破断時強度TBを測定して、先に測定した初期値に対するTB保持率(%)を求めたところ、250時間浸漬後が92%、1000時間浸漬後が80%であった。なお、試験片のもとになるシートは、ポリプロピレン製の薄板状成形型に、分散媒と分散安定剤とを除く各成分を同一処方で配合した混合液を注入し、90℃に加熱して硬化させた後、同温度で熟成させて形成した。
(実施例2〜5、比較例1〜3)
ポリオール成分として、表1に示した3官能のポリカプロラクトンポリオール3PCL1、3PCL2、3PCL4〜3PCL8のいずれか1種を用いると共に、各成分の仕込み量を、表2に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして緩衝材粒子980gを製造した。また、分散媒と、分散安定剤とを除く同一処方でポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂のシートを作製した。そして、前記緩衝材粒子およびシートについて、先に説明した各特性を評価した。結果を、実施例1の結果と併せて表2に示す。
Figure 0005127240
表2より、ポリオール成分として、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPが250未満である3官能のポリカプロラクトンポリオール3PCL1、3PCL2のいずれかを用いて製造された比較例1、2の緩衝材粒子は、共に、試験片の破断時伸びEBが小さかったことから、分子の架橋密度が高すぎて、硬く、かつ脆いものとなっており、耐久性が不十分であることが判った。また、ポリオール成分として、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPが1300を超える3官能のポリカプロラクトンポリオール3PCL8を用いて製造された比較例3の緩衝材粒子は、試験片の破断時強度TBの保持率が、温水に浸漬することによって大きく低下したことから、分子の架橋密度が不足して、耐熱性、耐湿性、および耐水性が十分でなく、やはり耐久性が不十分であることが判った。
これに対し、ポリオール成分として、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPが250〜1300の範囲内である3官能のポリカプロラクトンポリオール3PCL3〜3PCL7のいずれかを用いて製造された実施例1〜5の緩衝材粒子は、いずれも、試験片の破断時伸びEBが大きく、かつ、破断時強度TBの保持率の低下が小さかったことから、分子の架橋密度が適度な範囲内にあり、柔軟でかつ強靭である上、耐熱性、耐湿性、および耐水性に優れていて、耐久性に優れていることが確認された。また、前記実施例1〜5の緩衝材粒子は、いずれも、ガラス転移温度が十分に低い値にあったことから、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度を、大幅に低くできることも確認された。
〈潤滑剤組成物の調製〉
実施例1〜5、比較例1〜3で製造した緩衝材粒子を、ポリαオレフィン油にカルシウムスルフォネートを添加したグリース〔動粘度(40℃):48mm2/s〕に配合して、潤滑剤組成物としてのグリースを調製した。緩衝材粒子の含有量は、グリースの総量の30質量%とした。次に、前記グリースを、140℃の恒温槽中で加熱して、加熱開始から168時間後、336時間後、504時間後、1008時間後、および1440時間後にグリースから分離した緩衝材粒子の弾性率を、下記の方法で測定した。
(弾性率の測定)
図3に示すように、各実施例、比較例で作製した緩衝材粒子101を、平面状とされた石英製のベース102上に載置し、その上から、先端面が平面状とされた石英製の検出棒103の、前記先端面を、緩衝材粒子101に当接させた状態で、前記緩衝材粒子101を、検出棒103によって、一定の荷重Fを加えて、ベース102の方向に圧縮した際の、前記ベース102の表面と、検出棒103の先端面との間の間隔Gを測定し、測定結果から、式(b):
F=(21/2/3)・S3/2・R1/2・E/(1−ν2) (b)
〔式中、Rは緩衝材粒子101の圧縮前の半径、Sは、緩衝材粒子101の半径Rと、前記間隔Gとから、式(c):
S=2R−G (c)
によって求められる、緩衝材粒子101の圧縮変形量、Eは緩衝材粒子101の弾性率、νはポアソン比(=0.49)を示す。〕
に基づいて、緩衝材粒子101の弾性率Eを求めた。
そして、グリースに添加する前に、あらかじめ、同じ測定方法で測定しておいた、各実施例、比較例の緩衝材粒子の、弾性率の初期値E0と、前記測定値Eとから、式(d):
ΔE(%)=(1−E/E0)×100 (d)
により、弾性率の維持率ΔE(%)を求めた。結果を図4に示す。図より、前記比較例3の緩衝材粒子は、グリースに添加して高温で保持した際に、実施例1〜5、比較例1、2に比べて、弾性率の低下が大きかったことから、耐熱性が十分でないことが確認された。
(実施例6〜9、比較例4、5)
ポリオール成分として、表3に示すように、3官能のポリカプロラクトンポリオールを2種ずつ併用すると共に、併用するポリカプロラクトンポリオールの、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPと、仕込量とを調整することで、ポリオール成分の全体としての、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPを、表3に示す値とし、なおかつ、各成分の仕込み量を、表3に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして緩衝材粒子980gを製造した。また、分散媒と、分散安定剤とを除く同一処方でポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂のシートを作製した。そして、前記緩衝材粒子およびシートについて、先に説明した各特性を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0005127240
表3より、2種の3官能のポリカプロラクトンポリオールを併用したものの、ポリオール成分の全体としての、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPが250未満であった比較例4、5の緩衝材粒子は、共に、試験片の破断時伸びEBが小さかったことから、分子の架橋密度が高すぎて、硬く、かつ脆いものとなっており、耐久性が不十分であることが判った。
これに対し、2種の3官能のポリカプロラクトンポリオールを併用して、ポリオール成分の全体としての、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPを250〜1300の範囲内とした実施例6〜9の緩衝材粒子は、いずれも、試験片の破断時伸びEBが大きく、かつ、破断時強度TBの保持率の低下が小さかったことから、分子の架橋密度が適度な範囲内にあり、柔軟でかつ強靭である上、耐熱性、耐湿性、および耐水性に優れていて、耐久性に優れていることが確認された。また、前記実施例6〜9の緩衝材粒子は、いずれも、ガラス転移温度が十分に低い値にあったことから、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度を、大幅に低くできることも確認された。
(実施例10〜13、比較例6、7)
ポリオール成分として、表4に示すように、3官能のポリカプロラクトンポリオールと、2官能のポリカプロラクトンポリオール、または2官能のポリエステルポリオールとを併用すると共に、併用するポリオールの、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPと、仕込量とを調整することで、ポリオール成分の全体としての、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPを、表4に示す値とし、なおかつ、各成分の仕込み量を、表4に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして緩衝材粒子980gを製造した。また、分散媒と、分散安定剤とを除く同一処方でポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂のシートを作製した。そして、前記緩衝材粒子およびシートについて、先に説明した各特性を評価した。結果を表4に示す。
Figure 0005127240
表4より、3官能のポリカプロラクトンポリオールと2官能のポリカプロラクトンポリオールとを併用するとともに、ポリオール成分の全体としての、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPを250〜1300の範囲内とした実施例10、11は、いずれも、試験片の破断時伸びEBが大きく、かつ、破断時強度TBの保持率の低下が小さかったことから、分子の架橋密度が適度な範囲内にあり、柔軟でかつ強靭である上、耐熱性、耐湿性、および耐水性に優れていて、耐久性に優れていることが確認された。また、前記実施例10、11の緩衝材粒子は、いずれも、ガラス転移温度が十分に低い値にあったことから、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度を、大幅に低くできることも確認された。
また、3官能のポリカプロラクトンポリオールと2官能のポリエステルポリオールとを併用した実施例、比較例のうち、ポリオール成分の全体としての、活性水素基1つあたりの数平均分子量MP/nPを250〜1300の範囲内としたものの、ポリカプロラクトンポリオールの、両ポリオールの総量中に占める割合RP(質量%)を50質量%とした比較例6、7の緩衝材粒子は、共に、試験片の破断時強度TBの保持率が、温水に浸漬することによって大きく低下したことから、分子の架橋密度が不足して、耐熱性、耐湿性、および耐水性が十分でなく、耐久性が不十分であることが判った。また、比較例7の緩衝材粒子は、ガラス転移温度が高いことから、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失いやすいことも判った。
これに対し、ポリカプロラクトンポリオールの、両ポリオールの総量中に占める割合RP(質量%)を50質量%未満とした実施例12、13の緩衝材粒子は、いずれも、試験片の破断時伸びEBが大きく、かつ、破断時強度TBの保持率の低下が小さかったことから、分子の架橋密度が適度な範囲内にあり、柔軟でかつ強靭である上、耐熱性、耐湿性、および耐水性に優れていて、耐久性に優れていることが確認された。また、前記実施例12、13の緩衝材粒子は、いずれも、ガラス転移温度が十分に低い値にあったことから、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度を、大幅に低くできることも確認された。
比較例8〜10
イソシアネートとして、表5に示すように、3量化変性イソシアネートC−HXと、ヘキサメチレンジイソシアネート〔NCO基数n:2、数平均分子量M:168.2、NCO基1つあたりの数平均分子量M/n:84.1、NCO基含量:50.0%、HDI〕とを併用するか、または前記HDIを単独で使用すると共に、各成分の仕込み量を、表5に示す値としたこと以外は、実施例2と同様にして緩衝材粒子980gを製造した。また、分散媒と、分散安定剤とを除く同一処方でポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂のシートを作製した。そして、前記緩衝材粒子およびシートについて、先に説明した各特性を評価した。結果を、実施例2の結果と併せて表5に示す。
Figure 0005127240
表5より、イソシアネートとして3量化変性イソシアネートC−HXのみを単独で用いた実施例2が、最も試験片の破断時伸びEBが大きく、かつ、破断時強度TBの保持率の低下が小さかったことから、分子の架橋密度が適度な範囲内にあり、柔軟でかつ強靭である上、耐熱性、耐湿性、および耐水性に優れていて、耐久性に優れていることが確認された
(実施例17〜19、比較例11
1分子中に活性水素基を3つ以上有する架橋剤としてのトリメチロールプロパン〔活性水素基数n:3、数平均分子量M:134.2、活性水素基1つあたりの数平均分子量M/n:44.7、水酸基価:1254.5mgKOH/g、TMP〕を、ポリオール成分に対するモル比が、表6に示す値となるように添加すると共に、各成分の仕込み量を、表6に示す値としたこと以外は、実施例2と同様にして緩衝材粒子980gを製造した。また、分散媒と、分散安定剤とを除く同一処方でポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂のシートを作製した。そして、前記緩衝材粒子およびシートについて、先に説明した各特性を評価した。結果を、実施例2の結果と併せて表6に示す。
Figure 0005127240
表6より、TMPの、ポリオールに対するモル比を2.0倍とした比較例11の緩衝材粒子は、試験片の破断時伸びEBが小さかったことから、分子の架橋密度が高すぎて、硬く、かつ脆いものとなっており、耐久性が不十分であることが判った。
これに対し、前記モル比を2.0倍未満とした実施例17〜19の緩衝材粒子は、いずれも、実施例2と同様に、試験片の破断時伸びEBが大きく、かつ、破断時強度TBの保持率の低下が小さかったことから、分子の架橋密度が適度な範囲内にあり、柔軟でかつ強靭である上、耐熱性、耐湿性、および耐水性に優れていて、耐久性に優れていることが確認された。また、前記実施例17〜19の緩衝材粒子は、いずれも、ガラス転移温度が十分に低い値にあったことから、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度を、大幅に低くできることも確認された。
(実施例20、21)
ポリオール成分として、表7に示すように、2官能のポリカプロラクトンポリオールを単独で使用し、かつイソシアネートとして3量化変性イソシアネートC−HXを使用すると共に、各成分の仕込み量を、表7に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして緩衝材粒子980gを製造した。また、分散媒と、分散安定剤とを除く同一処方でポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂のシートを作製した。そして、前記緩衝材粒子およびシートについて、先に説明した各特性を評価した。
(比較例1213
ポリオール成分として、表7に示すように、2官能のポリエステルポリオールを単独で使用し、かつイソシアネートとして3量化変性イソシアネートC−HXを使用すると共に、各成分の仕込み量を、表7に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして緩衝材粒子980gを製造した。また、分散媒と、分散安定剤とを除く同一処方でポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂のシートを作製した。そして、前記緩衝材粒子およびシートについて、先に説明した各特性を評価した。
(比較例1415
特許文献4に記載された従来の緩衝材粒子を再現するために、ポリオール成分として、2種の2官能のポリエステルポリオールを併用し、かつイソシアネートとしてHDIを使用すると共に、架橋剤としてTMPを用い、各成分の仕込み量を、表7に示す値としたこと以外は、実施例1と同様にして緩衝材粒子980gを製造した。また、分散媒と、分散安定剤とを除く同一処方でポリカプロラクトン型ポリウレタン樹脂のシートを作製した。そして、前記緩衝材粒子およびシートについて、先に説明した各特性を評価した。以上の結果を表7に示す。
Figure 0005127240
表7より、ポリオール成分として、脂肪族ポリエステルポリオール2PEP1を単独で使用した比較例12の緩衝材粒子、および特許文献4の従来の緩衝材粒子を再現した比較例1415の緩衝材粒子は、いずれも、試験片の破断時強度TBの保持率が、温水に浸漬することによって大きく低下したことから、分子の架橋密度が不足して、耐熱性、耐湿性、および耐水性が十分でなく、耐久性が不十分であることが判った。また、ポリオール成分として、芳香族ポリエステルポリオール2PEP2を単独で使用した比較例13の緩衝材粒子は、ガラス転移温度が高いことから、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失いやすいことが判った。
これに対し、ポリオール成分として、2官能のポリカプロラクトンポリオールを使用すると共に、イソシアネートとして、3量化変性イソシアネートC−HXを用いた実施例20、21の緩衝材粒子は、共に、試験片の破断時伸びEBが大きく、かつ、破断時強度TBの保持率の低下が小さかったことから、分子の架橋密度が適度な範囲内にあり、柔軟でかつ強靭である上、耐熱性、耐湿性、および耐水性に優れていて、耐久性に優れていることが確認された。また、前記実施例20、21の緩衝材粒子は、いずれも、ガラス転移温度が十分に低い値にあったことから、低温環境下で、緩衝材粒子が脆化して弾性を失う温度を、大幅に低くできることも確認された。
本発明の一実施の形態の電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。 電動パワーステアリング装置の要部の断面図である。 実施例、比較例の緩衝材粒子の弾性率を測定する方法を説明する断面図である。 図3の方法で測定された、実施例1〜5、比較例1〜3の緩衝材粒子における、弾性率の維持率ΔE(%)の、試験時間による推移を示すグラフである。 図3の方法で測定された、実施例22、23、比較例13の緩衝材粒子における、弾性率の維持率ΔE(%)の、試験時間による推移を示すグラフである。
符号の説明
1 電動パワーステアリング装置、16 電動モータ、17 減速機、18 ウォーム軸(小歯車)、19 ウォームホイール(大歯車)、B 噛み合い部分

Claims (9)

  1. 少なくとも、
    (1) 1分子中に活性水素基を3つ有する3官能のポリカプロラクトンポリオール、および1分子中に活性水素基を2つ有する2官能のポリカプロラクトンポリオールからなる群より選ばれた少なくとも1種を含み、かつ、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300であるポリオール成分と、
    (2) 分子中にイソシアヌレート骨格を有し、かつ1分子中にNCO基を3つ以上有するイソシアネートと、
    を反応させて合成された、架橋構造を有するポリウレタン樹脂からなる緩衝材粒子と、潤滑剤とを含有することを特徴とする潤滑剤組成物。
  2. 前記ポリウレタン樹脂の原料であるポリオール成分として、数平均分子量の異なる2種以上の、3官能のポリカプロラクトンポリオールが、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となるように併用されている請求項に記載の潤滑剤組成物。
  3. 前記ポリウレタン樹脂の原料であるポリオール成分として、3官能のポリカプロラクトンポリオールと2官能のポリカプロラクトンポリオールとが、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となるように併用されている請求項に記載の潤滑剤組成物。
  4. 前記ポリウレタン樹脂の原料であるポリオール成分として、カルボン酸またはその誘導体とポリオールとの反応生成物であるポリエステルポリオールと、3官能のポリカプロラクトンポリオールとが、活性水素基1つあたりの数平均分子量が250〜1300の範囲内となり、かつ、式(a):
    Figure 0005127240
    〔式中、Pはポリカプロラクトンポリオールの質量、Pはポリエステルポリオールの質量を示す。〕
    で求められる、ポリカプロラクトンポリオールの、両ポリオールの総量中に占める割合R(質量%)が50質量%を超える範囲内となるように併用されている請求項に記載の潤滑剤組成物。
  5. 1分子中に活性水素基を3つ以上有する架橋剤が併用されていると共に、前記架橋剤の、前記ポリオール成分に対するモル比が2.0倍未満の範囲内である請求項ないしのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
  6. ポリウレタン樹脂の原料としてのポリカプロラクトンポリオールが、1分子中に活性水素基を2つ有する2官能のポリカプロラクトンポリオールである請求項1に記載の潤滑剤組成物。
  7. 緩衝材粒子が、ポリオール成分を、分散媒中に、液滴状に分散させた状態で、少なくともイソシアネートと反応させて合成されたポリウレタン樹脂からなる球状の粒子である請求項1ないしのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物。
  8. 小歯車と大歯車とを備え、前記両歯車の噛み合い部分を含む領域に、請求項1ないしのいずれか1項に記載の潤滑剤組成物を充填したことを特徴とする減速機。
  9. 操舵補助用のモータの出力を、請求項に記載の減速機を介して減速して、舵取機構に伝達することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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