以下,本実施の形態について,図を用いて説明する。以下では,例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor )などのトランジスタの電流電圧特性を示す実測値データを例として,本実施の形態の実測値データ選択の例を説明する。なお,電流電圧特性とは,電流と電圧との関係のことである。
図1は,トランジスタの設計開発におけるシミュレーションの概要を説明する図である。
トランジスタの設計開発は,トランジスタの電流と電圧との関係に基づいて行われる。このとき,トランジスタの電流と電圧との関係は,計算機でシミュレーションされる。シミュレーションでは,例えば,図1(A)に示すように,シミュレータ500にトランジスタのゲート長,ゲート幅,各電圧の値が入力される。シミュレータ500は,実測値に基づいて調整された実行条件に従って計算を行い,トランジスタの電流の値を出力する。なお,図1(A)の例において,電圧D,電圧G,電圧S,電圧Bは,それぞれトランジスタのドレイン電圧,ゲート電圧,ソース電圧,バックゲート電圧を示している。
実行条件の調整は,用意された実測値に基づいて,シミュレーション実行前の初期設定時に行われる。具体的には,シミュレータ500は,入力されたゲート長,ゲート幅,各電圧から実行条件に基づいて計算される電流の計算値と,用意された電流の実測値とのフィッティングを行う。すなわち,シミュレータ500は,計算値が実測値と近い値となるように,実行条件を調整する。精度が高いシミュレーションを実行するためには,信頼性が高い実測値データを用いた実行条件の調整が重要となる。
シミュレータの実行条件の調整に用いる実測値データを得るために,トランジスタを用いた実測定が行われる。測定では,測定のばらつきを低減するために,同条件の測定が複数回行われ,複数の実測値データが作成される。例えば,同一ウェハ(Wafer )上に加工された,同一のゲート長とゲート幅の値に該当する,複数のトランジスタの実測値データが作成される。作成された複数の実測値データから妥当な実測値データが選択され,シミュレータの実行条件の調整に用いられる。
実測値データの選択は,例えば,技術者の経験や知識に基づいて行われる。
技術者は,例えば,ゲート長,ゲート幅,各電圧などの測定条件から1つの条件を選んで横軸とし,測定対象である電流を縦軸とした,実測値データのグラフを作成する。ここでは,電圧Dを横軸とし,電流を縦軸とした図1(B)に示すようなグラフが作成されたものとする。図1(B)のグラフにおける各曲線は,実測値データの各レコードにおける電圧Dの値と測定された電流の値との関係から得られた近似曲線である。ここでは,3回の測定が行われ,実測値データa,実測値データb,実測値データcの3つの実測値データが視覚化されたグラフが作成されたものとする。
技術者は,作成されたグラフを目視し,中央値に対応する実測値データを,シミュレータ500の実行条件の調整に用いる実測値データとして選択する。例えば,図1(B)において,技術者は,中央値に対応する実測値データbを選択する。
このように技術者の経験や知識に基づいて実測値データの選択が行われると,選択された実測値データの信頼性は,技術者のスキルに依存したものとなる。すなわち,スキルが高い技術者によって選択された実測値データの信頼性は高いが,スキルが低い技術者によって選択された実測値データの信頼性は低い。
また,ゲート長,ゲート幅,各電圧など,測定条件が複数ある場合でも,技術者は,各測定条件と電流との関係を示すグラフをそれぞれ作成することにより,測定条件ごと個別に各実測値データの傾向を判断することはできる。しかし,同時にすべての測定条件と電流との関係を示すグラフを作成することができないため,技術者は,すべての測定条件と電流値との関係に基づいて,トータル的に各実測値データの傾向を判断することはできない。例えば,ある測定条件と電流値との関係において中央値に対応する実測値データであると判断できる実測値データが,別の測定条件と電流値との関係においては中央値に対応する実測値データであると判断できない場合も考えられる。
以下では,各実測値データについて複数の測定条件の組合せと測定対象とのデータ傾向を客観的に判断し,適切な実測値データを自動的に選択する,本実施の形態による実測値データ選択装置について説明する。
図2は,本実施の形態による実測値データ選択装置の構成例を示す図である。
実測値データ選択装置10は,統計的な解析による客観的な手法を用いて,複数の実測値データから適切な実測値データを選択する。実測値データ選択装置10は,コンピュータが備えるCPU,メモリ等のハードウェアと,ソフトウェアプログラムとにより実現される。
図3は,本実施の形態によるトランジスタを用いた実測定により得られた実測値データの例を示す図である。
本実施の形態では,トランジスタのゲート長,ゲート幅の値の組合せごとに,トランジスタの電圧D,電圧G,電圧Sの値の組合せを変えながら,測定対象である電流の測定が行われたものとする。ここでは,ゲート長とゲート幅の測定条件を合わせて第一の測定条件群と呼び,電圧Dと電圧Gと電圧Sの測定条件を合わせて第二の測定条件群と呼ぶものとする。すなわち,本実施の形態では,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに,第二の測定条件群に属する測定条件の値の組合せを変えながら,測定対象の測定が行われる。
測定は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに,それぞれ複数回行われる。すなわち,本実施の形態において,第一の測定条件群に属するトランジスタのゲート長,ゲート幅の値の組合せごとにそれぞれ複数回の測定が行われ,その結果として第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに複数の実測値データが得られる。
なお,第一の測定条件群と第二の測定条件群との分類の仕方は任意である。トランジスタについては,ゲート長とゲート幅とを第一の測定条件群に属する測定条件とし,各電圧を第二の測定条件群に属する測定条件とするのが好適である。
図3において,菱形で表された点は,測定が行われたトランジスタのゲート長とゲート幅の値の組合せを示している。本実施の形態では,説明を簡単にするために,図3に示すように,3つのゲート長L1 ,L2 ,L3 と,3つのゲート幅W1 ,W2 ,W3 との組合せごとに,それぞれ3回ずつ実測定が行われたものとする。すなわち,本実施の形態では,図3に示すように,ゲート長L1 ,L2 ,L3 とゲート幅W1 ,W2 ,W3 との組合せごとに,それぞれ3つの実測値データが得られる。
なお,あるゲート長とゲート幅との組合せにおける3つの実測値データは,1つのトランジスタに対する3回の実測定によって得られた実測値データであってもよいし,同じゲート長とゲート幅を持つ3つのトランジスタに対する実測定によって得られた実測値データであってもよい。
実測値データ選択装置10は,トランジスタのゲート長とゲート幅との組合せごとに用意された複数の実測値データから,それぞれ妥当な実測値データを選択する。
実測値データ選択装置10は,実測値データ取得部11,実測値データ記憶部12,実測値データ選択処理部13,選択実測値データ記憶部14,実測値データ検定処理部15,データ傾向提示処理部16を備える(図2)。
実測値データ取得部11は,実測定により得られた実測値データを取得し,実測値データ記憶部12に格納する。実測値データ記憶部12は,実測値データを記憶する記憶装置である。
本実施の形態において,実測値データ取得部11は,図3に示すトランジスタのゲート長とゲート幅との組合せごとに,それぞれ3回の実測定により得られた3つの実測値データを取得する。
図4は,本実施の形態による実測値データのデータ構成例を示す図である。
図4に示す実測値データは,ゲート長L2 ,ゲート幅W2 のトランジスタを用いた実測定により得られた実測値データの例である。図4(A)〜(C)は,それぞれゲート長L2 ,ゲート幅W2 のトランジスタを用いた1回目の実測定により得られた実測値データa,2回目の実測定により得られた実測値データb,3回目の実測定により得られた実測値データcの例を示す。
図4に示すように,実測値データが有する各レコードは,ゲート長,ゲート幅,電圧D,電圧G,電圧Sの各測定条件と,それらの測定条件において測定された電流の実測値とのデータを持つ。3回の測定を通して,測定条件はすべて同条件であるものとする。すなわち,図4(A)〜(C)に示す各実測値データは,互いにゲート長,ゲート幅,各電圧の値の組合せが同じレコードを,それぞれ有するものとする。
実測定では,測定条件の値が同じであっても,同じ測定対象の値が得られるとは限らない。例えば,図4(A)〜(C)に示す各実測値データにおいて,ゲート長がL2 ,ゲート幅がW2 ,電圧DがVD1,電圧GがVG1,電圧SがVS1の組合せであっても,それぞれ実測定により得られる電流の実測値Ia1,Ib1,Ic1が互いに異なる可能性は十分にある。
実測値データ選択処理部13は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに複数存在する実測値データから,適切な実測値データを1つ選択する。選択実測値データ記憶部14は,実測値データ選択処理部13により選択された実測値データに関する情報が記憶される記憶装置である。
図5は,本実施の形態の実測値データ選択処理部による実測値データ選択のイメージを示す図である。
実測値データ選択処理部13は,実測値データ記憶部12に記憶された複数の実測値データに基づいて,ゲート長,ゲート電圧,各電圧の測定条件から測定対象である電流を求める近似関数を生成する。実測値データ選択処理部13は,選択対象となる複数の実測値データについて,生成された近似関数による近似誤差を比較し,近似誤差が最小の実測値データを選択する。
図5に示すグラフにおいて,点線の曲線は,複数の実測値データから生成された近似関数による近似曲面をイメージしたものである。また,図5(A)〜(C)に示すそれぞれのグラフにおいて,実線の曲線は,選択対象となっているそれぞれの実測値データa〜cについて,各実測値データの各レコードにおける各測定条件の値と測定された電流の実測値との関係から得られる曲面をイメージしたものである。図5に示す例では,図5(C)に示す実測値データcの近似誤差が最も小さく,図5(A)に示す実測値データaの近似誤差が最も大きい。この場合には,実測値データ選択処理部13により,図5(C)に示す実測値データcが選択される。
このように,実測値データ選択処理部13は,ゲート長,ゲート電圧,各電圧の組合せの効果を統計解析により客観的に判断し,選択対象となった複数の実測値データからの適切な実測値データの選択を自動的に行う。
図2において,実測値データ選択処理部13は,近似関数算出部131,近似誤差算出部132,実測値データ選択部133を備える。
近似関数算出部131は,実測値データ記憶部12に記憶された複数の実測値データに基づいて,各測定条件を説明変数とし,測定対象を目的変数とし,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する。トランジスタの例では,近似関数算出部131は,ゲート長,ゲート電圧,各電圧を説明変数とし,電流を目的変数とする。なお,説明変数は,目的変数を説明する変数のことであり,独立変数とも呼ばれる。また,目的変数は予測したい変数のことであり,従属変数とも呼ばれる。説明変数は,物事の原因としてとらえることもでき,目的変数は,物事の結果としてとらえることもできる。
本実施の形態では,近似関数算出部131は,選択対象以外の複数の実測値データから近似関数を生成する。例えば,図3に示す例において,ゲート長L2 ,ゲート幅W2 の組合せにおける実測値データが選択対象であるものとする。このとき,近似関数算出部131は,選択対象となっていない(L1 ,W1 ),(L1 ,W2 ),(L1 ,W3 ),(L2 ,W1 ),(L2 ,W3 ),(L3 ,W1 ),(L3 ,W2 ),(L3 ,W3 )の(ゲート長,ゲート幅)の組合せにおける実測値データから,近似関数を生成する。
なお,近似関数算出部131が,選択対象の実測値データを含む複数の実測値データから近似関数を生成するようにしてもよい。選択対象の実測値データを含めて近似関数を生成すると,当然,生成された近似関数は選択対象の実測値データに近いものとなる。近似関数の客観性を考慮して,選択対象以外の複数の実測値データから近似関数を生成した方が,より信頼性の高い実測値データの選択が可能となる。
複数の測定条件の組合せと測定対象とのデータ傾向を解析する技術として,多項式関数による近似の技術がある。ただし,測定条件と測定対象とが複雑に関係する場合には,多項式関数では,十分な精度の近似ができないという問題がある。
本実施の形態では,近似関数算出部131は,ゲート長,ゲート電圧,各電圧の測定条件を説明変数とし,測定対象である電流の変数を目的変数としてSVM(Support vector machine)回帰分析の統計解析を行い,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する。
例えばデータベースマーケティングのように,顧客に対してキャンペーンを行うことを想定した場合に,顧客の属性をもとに顧客からの応答があるかないかを予測するために用いられる統計解析手法として,SVM(Support vector machine)分析がある。SVM分析は,例えば顧客からの応答があるかないかのように,目的変数が2値の場合に用いられる統計解析手法である。
SVM回帰分析は,目的変数として連続変数を扱えるように,SVM分析を拡張した統計解析手法である。SVM回帰分析は,測定条件と測定対象との関係が非線形の場合であっても,精度よく近似することができる可能性がある統計解析手法である。
本実施の形態では,近似関数算出部131は,SVM回帰分析の統計解析を用いて,選択対象以外の複数の実測値データから,例えば次の式(1)に示すような近似関数を生成する。
式(1)において,変数xは,1または複数の測定条件の変数を示す。Mは,測定条件の数である。すなわち,測定条件が複数である場合に,x(1),... ,x(M)は,各測定条件の変数を示している。
例えば,図4に示す実測値データの例において,測定条件はゲート長,ゲート幅,電圧D,電圧G,電圧Sの5つである。このとき,測定対象である電流を近似するための近似関数f(x)において,測定条件を示す変数は,それぞれx(1),x(2),x(3),x(4),x(5)となる。
また,式(1)において,dは,近似関数の生成に用いた実測値データの各レコードを示す。Nは,近似関数の生成に用いた全実測値データが有するすべてのレコードを合わせた数である。ここでは,近似関数の生成に用いた実測値データが有する各レコードを,近似対象データと呼ぶものとする。すなわち,d(i,j)は,近似関数の生成に用いるすべての近似対象データの中でi番目の近似対象データにおけるj番目の測定条件の値となる。
例えば,図3に示す例において,選択対象がゲート長L2 ,ゲート幅W2 の実測値データである場合に,近似関数の生成に用いられる実測値データは,ゲート長L2 ,ゲート幅W2 の実測値データ以外の各実測値データである。このとき,近似関数の生成に用いられる各実測値データが有する各レコードが,算出する近似関数のもととなる近似対象データとなる。
また,式(1)において,aは,近似関数の生成に用いられた実測値データのレコードごとに求められる係数である。係数aは,SVM回帰分析によって,対象のレコードのデータをもとに調整される。
図6は,SVM回帰分析の統計解析による近似関数の算出を説明する図である。
図6には,説明を簡単にするため,4つの近似対象データから,SVM回帰分析の統計解析によって,近似関数f(x)を求める例が示されている。
図6において,菱形で表された点は,近似対象データを表しており,菱形の点を中心とする実線の曲線は,近似対象データから得られた近似のもとにする関数を示している。破線の曲線は,近似対象データから得られた近似のもとにする関数に基づいて,SVM回帰分析の統計解析により算出された近似関数f(x)を表している。
SVM回帰分析では,上記の式(1)において,各近似対象データから得られた近似のもとにする関数に対する係数aを調整し,近似関数f(x)を生成する。SVM回帰分析では,近似に効果的な近似対象データが選択され,近似関数f(x)の生成に使用される。
なお,SVM回帰分析に関する詳細は,例えば参考文献1などに記載されている。
〔参考文献1〕
Nello Cristianini 著/John Shawe-Taylor 著/大北 剛訳:「サポートベクターマシン入門」,2005年,共立出版
SVM回帰分析の統計解析を用いることにより,精度が高い近似関数の生成が可能となる。
図2において,近似誤差算出部132は,選択対象である各実測値データのそれぞれについて,実測値データが有する測定対象の実測値と,算出された近似関数により得られる測定対象の近似値とから,選択対象である実測値データの近似関数に対する近似誤差を算出する。
具体的には,近似誤差算出部132は,選択対象である実測値データが有するレコードごとに,各測定条件を近似関数f(x)の各変数に代入して,測定対象の近似値を求める。
近似誤差算出部132は,選択対象である実測値データが有するレコードごとに,そのレコードが有する測定対象の実測値と,そのレコードにおける各測定条件を近似関数に代入することにより得られた近似値との差分を求める。
近似誤差算出部132は,選択対象である実測値データが有するレコードごとの実測値と近似値との差分について,例えば二乗平均を算出することにより,その実測値データの近似関数に対する近似誤差を算出する。ここで算出された実測値データの近似誤差は,その実測値データが近似関数に対してどのくらい近いかを表している。なお,実測値データの近似誤差の算出については,二乗平均に限らず,様々な計算手法を用いることができる。
近似誤差算出部132は,このような近似関数に対する実測値データの近似誤差の計算を,選択対象である複数の実測値データのそれぞれについて行う。
図7は,実測値データが有するレコードごとの測定対象の実測値と測定対象の近似値との対応の例を説明する図である。
図7に示す例は,図4(A)に示すゲート長L2 ,ゲート幅W2 における実測値データaについて,測定対象である電流の近似値が,レコードごとに求められた例である。
例えば,実測値データaの1番目のレコードについて,近似誤差算出部132は,式(1)に示す近似関数f(x)から,測定対象である電流の近似値を求める。具体的には,近似誤差算出部132は,近似関数f(x)における各変数x(1),x(2),x(3),x(4),x(5)に,レコードが有する測定条件の値L2 ,W2 ,VD1,VG1,VS1を代入し,電流の近似値Ia1’を得る。近似誤差算出部132は,実測値データaの2番目のレコード以降についても同様に各測定条件を近似関数に代入した計算を行い,レコードごとに電流の近似値Ia2’,Ia3’,... ,Ian’を求める。なお,ここでは実測値データaがn個のレコードを有しているものとする。
近似誤差算出部132は,実測値データaのレコードごとの電流の実測値と近似値との差分の二乗平均((Ia1−Ia1’)2 +... +(Ian−Ian’)2 )/nを算出する。近似誤差算出部132は,算出された実測値データaのレコードごとの電流の実測値と近似値との差分の二乗平均を,近似関数に対する実測値データaの近似誤差とする。
図2において,実測値データ選択部133は,選択対象となっている各実測値データの近似誤差を比較し,近似誤差の値が最小の実測値データを,該当する第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおける実測値データとして選択する。
例えば,図4に示すゲート長L2 ,ゲート幅W2 の組合せにおける実測値データが選択対象である場合に,実測値データ選択部133は3つの実測値データa〜cについて求められた近似誤差を比較し,実測値データaの近似誤差が最小であるものとする。このとき,実測値データ選択部133は,ゲート長L2 ,ゲート幅W2 の組合せにおける妥当な実測値データとして,実測値データaを選択する。
選択された実測値データは,選択実測値データ記憶部14に格納される。選択実測値データ記憶部14は,実測値データ選択処理部13により選択された実測値データに関する情報を記憶する記憶装置である。なお,ここでは,後の実測値データ検定処理部15による処理を考慮し,選択された実測値データの近似誤差も選択実測値データ記憶部14に格納されるものとする。
なお,選択された実測値データを表示装置(図示省略)に表示するなどにより,実測値データの選択結果を,利用者に提示するようにしてもよい。また,選択された実測値データを,実測値データを使用して処理を行うシミュレータなどに対して,自動出力するようにしてもよい。
図8は,本実施の形態の実測値データ選択処理部による実測値データ選択処理フローチャートである。
実測値データ選択装置10において,実測値データ選択処理部13は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せを,実測値データの選択対象として1つ決定する(ステップS10)。決定された第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおける複数の実測値データが,選択対象の実測値データとなる。
近似関数算出部131は,選択対象となっていない実測値データに基づいて,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する(ステップS11)。ここでは,近似関数算出部131は,SVM回帰分析の統計解析によって,近似関数を算出する。
近似誤差算出部132は,選択対象とされた複数の実測値データから,選択対象の実測値データを1つ決定する(ステップS12)。
近似誤差算出部132は,算出された近似関数を用いて,決定された選択対象の実測値データが有するレコードごとに,測定対象の近似値を算出する(ステップS13)。すなわち,近似誤差算出部132は,選択対象の実測値データが有するレコードごとに,各測定条件の値を近似関数に代入して測定対象の近似値を得る。
近似誤差算出部132は,選択対象の実測値データが有するレコードごとの測定対象の実測値と近似値とから,その選択対象の実測値データの近似関数に対する近似誤差を算出する(ステップS14)。例えば,近似誤差算出部132は,選択対象の実測値データが有するレコードごとの測定対象の実測値と近似値との差分の二乗平均を算出し,その選択対象の実測値データの近似関数に対する近似誤差とする。
近似誤差算出部132は,選択対象とされたすべての実測値データについて,近似誤差を算出したかを判定する(ステップS15)。
選択対象とされたすべての実測値データについて近似誤差を算出していなければ(ステップS15のNO),近似誤差算出部132は,ステップS12に戻り,近似誤差が算出されていない選択対象の実測値データの近似誤差の算出を行う。
選択対象とされたすべての実測値データについて近似誤差を算出していれば(ステップS15のYES),実測値データ選択部133は,選択対象とされた複数の実測値データの中から,最も近似誤差が小さい実測値データを,妥当な実測値データとして選択する(ステップS16)。ここで選択された実測値データが,ステップS10で決定された第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおける選択実測値データとなる。
実測値データ選択処理部13は,すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて,実測値データの選択を行ったかを判定する(ステップS17)。
すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて実測値データの選択を行っていなければ(ステップS17のNO),実測値データ選択処理部13は,ステップS10に戻り,実測値データの選択が行われていない測定条件の値の組合せについて,妥当な実測値データの選択を行う。
すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて実測値データの選択を行っていれば(ステップS17のYES),実測値データ選択処理部13は,処理を終了する。実測値データ選択処理部13は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとの実測値データの選択結果を出力する。
このように,本実施の形態の実測値データ選択処理部13により,選択対象の実測値データが複数の測定条件が測定対象に関係するような実測値データであっても,客観的かつ自動的に,適切な実測値データを選択することが可能となる。例えば,トランジスタのゲート長,ゲート幅,各電圧の複数の測定条件と,測定対象の電流との関係が測定された実測値データの選択も,技術者のスキルに依存せずに,客観的かつ自動的に行うことができる。
また,統計解析を用いた客観的な手法で実測値データの選択を自動化するため,熟練技術者の作業工数を削減することが可能となり,技術者の人的コストを削減することが可能となる。
また,技術者のスキルに依存しないので,実測値データの選択結果について,統計解析に基づいた客観的な説明ができる。
図2において,実測値データ検定処理部15は,実測値データ選択処理部13によって選択された各実測値データの信頼性を検定する。
実測値データ選択処理部13によって,選択対象である複数の実測値データから,最も妥当な実測値データが選択されるが,例えば選択対象である複数の実測値データの信頼性がすべて低いような場合には,最も妥当とされた実測値データの信頼性も低いものとなってしまう。
実測値データ検定処理部15は,実測値データ選択処理部13によって選択された各実測値データの近似誤差に対する統計解析により,選択された各実測値データの信頼性を検定する。
実測値データ検定処理部15は,確率密度関数算出部151,実測値データ検定部152を備える。
確率密度関数算出部151は,選択実測値データ記憶部14に記憶された,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに選択された各実測値データの近似誤差の分布について,確率密度関数を算出する。
本実施の形態では,確率密度関数算出部151は,検定対象以外の選択された実測値データの近似誤差に基づいて,確率密度関数を生成する。例えば,図3に示す例において,ゲート長L2 ,ゲート幅W2 の組合せにおいて選択された実測値データが検定対象であるものとする。このとき,確率密度関数算出部151は,検定対象となっていない(L1 ,W1 ),(L1 ,W2 ),(L1 ,W3 ),(L2 ,W1 ),(L2 ,W3 ),(L3 ,W1 ),(L3 ,W2 ),(L3 ,W3 )の(ゲート長,ゲート幅)の組合せにおいて選択された実測値データの近似誤差から,確率密度関数を生成する。
なお,確率密度関数算出部151が,検定対象の実測値データの近似誤差を含む複数の実測値データの近似誤差に基づいて,確率密度関数を生成するようにしてもよい。近似関数算出部131による近似関数の生成の場合と同様に,確率密度関数の客観性を考慮して,検定対象以外の複数の実測値データの近似誤差から確率密度関数を生成した方が,より信頼性の高い実測値データの検定が可能となる。
実測値データ検定部152は,確率密度関数により,近似誤差が検定対象である実測値データの近似誤差以上となる確率を算出し,算出された確率が所定の閾値以上である場合に,その検定対象である実測値データが信頼できると判定する。また,逆に,実測値データ検定部152は,確率密度関数により,近似誤差が検定対象である実測値データの近似誤差以上となる確率を算出し,算出された確率が所定の閾値以下である場合に,その検定対象である実測値データの信頼性が低いと判定する。
実測値データ検定処理部15は,例えば,信頼性が低いと判定された実測値データを表示装置(図示省略)に表示するなどにより,利用者に対して警告する。
図9は,本実施の形態による実測値データの検定を説明する図である。
図9において,棒グラフは,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに選択された各実測値データの近似誤差のヒストグラムをイメージしたものである。
確率密度関数算出部151は,近似誤差のヒストグラムを正規化した確率密度関数を生成する。図9において,太実線は,近似誤差のヒストグラムを正規化した確率密度関数をイメージしたものである。確率密度関数は,例えばカーネル密度推定の統計解析により,求められる。カーネル密度推定の統計解析により確率密度関数が求められた場合には,図9に示す確率密度関数のイメージよりも滑らかに,ヒストグラムが近似される。カーネル密度推定については,後述する。
実測値データ検定部152は,確率密度関数により,近似誤差が選択された実測値データの近似誤差以上となる確率を求める。図9において,例えば,ある第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおいて選択された実測値データを検定対象とし,その検定対象の実測値データの近似誤差がδであるものとする。このとき,近似誤差が検定対象の実測値データの近似誤差以上となる確率は,図9の斜線部分の面積で表される。
実測値データ検定部152は,近似誤差が検定対象の実測値データの近似誤差以上となる確率が所定の閾値以下である場合に,その検定対象の実測値データの信頼性が低いと判定する。また,逆に,実測値データ検定部152は,近似誤差が検定対象の実測値データの近似誤差以上となる確率が所定の閾値以上である場合に,その検定対象の実測値データが十分に信頼できると判定する。検定対象の実測値データの信頼性判定の基準となる所定の閾値は,例えばあらかじめ妥当と考えられる基準値が技術者により設定される。
近似誤差が検定対象の実測値データの近似誤差以上となる確率が低いということは,他の選択された実測値データの近似誤差と比べて,検定対象の実測値データの近似誤差が非常に大きいことを意味する。
なお,実測値データ検定部152が,確率密度関数により,近似誤差が検定対象となる実測値データの近似誤差以下となる確率を求め,その確率が所定の閾値以下である場合に,その検定対象の実測値データが十分に信頼できると判定するようにしてもよい。また,逆に,実測値データ検定部152が,確率密度関数により,近似誤差が検定対象となる実測値データの近似誤差以下となる確率を求め,その確率が所定の閾値以上である場合に,その検定対象の実測値データの信頼性が低いと判定するようにしてもよい。これらの判定は,上記の判定と同義である。
ここで,正規化した近似誤差のヒストグラムを近似する確率密度関数を算出する統計解析手法の例として,カーネル密度推定について説明する。
測定されたデータの分布が従う確率分布に基づいて検定を行う処理は,従来から行われている。しかし,検定の対象として,近似誤差が想定されることはなかった。これは,近似誤差が従う確率分布が明らかでないので,通常の確率分布に基づく検定をそのまま適用することができないという問題があるためである。
確率分布が明らかでないものについて,その確率分布を推定する統計解析手法として,カーネル密度推定が考えられる。
本実施の形態では,確率密度関数算出部151は,カーネル密度推定の統計解析を用いて,検定対象以外の複数の選択された実測値データの近似誤差から,例えば次の式(2)に示すような確率密度関数を生成する。
式(2)において,変数xは,近似誤差の変数を示す。また,式(2)において,dは,確率密度関数の生成に用いた実測値データの近似誤差を示す。Nは,確率密度関数の生成に用いた全実測値データの近似誤差の数である。ここでは,確率密度関数の生成に用いた全実測値データの近似誤差を,対象データと呼ぶものとする。
例えば,図3に示す例において,検定対象がゲート長L2 ,ゲート幅W2 において選択された実測値データである場合に,確率密度関数の生成に用いる実測値データの近似誤差は,ゲート長L2 ,ゲート幅W2 以外のゲート長,ゲート幅の組合せにおいて選択された各実測値データの近似誤差である。このとき,確率密度関数の生成に用いる各実測値データの近似誤差が,確率密度関数の推定のもととなる対象データとなる。
また,式(2)において,hは,バンド幅と呼ばれる平滑化パラメータである。hは,対象データのヒストグラムが適切に近似されるように,例えば技術者によって調整される。
図10は,カーネル密度推定の統計解析による確率密度関数の算出を説明する図である。
図10において,菱形で表された点は,対象データを表しており,菱形の点を中心とする実線の曲線は,対象データから得られた推定のもとにする関数を示している。破線の曲線は,複数の対象データから得られた推定のもとにする関数に基づいて,カーネル密度推定の統計解析により算出された確率密度関数,すなわち正規化したヒストグラムg(x)を表している。
なお,カーネル密度推定に関する詳細は,例えば参考文献2などに記載されている。
〔参考文献2〕
C.M.ビショップ著:「パターン認識と機械学習 上」,2007年,シュプリンガー・ジャパン
カーネル密度推定の統計解析を用いることにより,近似誤差のヒストグラムを滑らかに近似した精度が高い確率密度関数の生成が可能となる。
図11は,本実施の形態の実測値データ検定処理部による実測値データ検定処理フローチャートである。
実測値データ選択装置10において,実測値データ検定処理部15は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せを,選択された実測値データの検定対象として1つ決定する(ステップS20)。決定された第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおける選択された実測値データが,検定対象の実測値データとなる。
確率密度関数算出部151は,検定対象となっていない選択された実測値データの近似誤差に基づいて,近似誤差分布についての確率密度関数を算出する(ステップS21)。ここでは,確率密度関数算出部151は,カーネル密度推定の統計解析によって,確率密度関数を算出する。
実測値データ検定部152は,算出された確率密度関数を用いて,近似誤差が検定対象の実測値データの近似誤差以上となる確率を算出する(ステップS22)。
実測値データ検定部152は,算出された確率が所定の閾値以上であるかを判定する(ステップS23)。算出された確率が所定の閾値以上であれば(ステップS23のYES),実測値データ検定部152は,検定対象の実測値データが信頼できると判定する(ステップS24)。算出された確率が所定の閾値以上でなければ(ステップS23のNO),実測値データ検定部152は,検定対象の実測値データが信頼できないと判定する(ステップS25)。
実測値データ検定処理部15は,すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて,選択された実測値データの検定を行ったかを判定する(ステップS26)。
すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて選択された実測値データの検定を行っていなければ(ステップS26のNO),実測値データ検定処理部15は,ステップS20に戻り,選択された実測値データの検定が行われていない測定条件の値の組合せについて,選択された実測値データの検定を行う。
すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて選択された実測値データの検定を行っていれば(ステップS26のYES),実測値データ検定処理部15は,処理を終了する。実測値データ検定処理部15は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに選択された実測値データの検定結果を出力する。
このように,本実施の形態の実測値データ検定処理部15により,実測値データ選択処理部13によって選択された実測値データから,さらに信頼できる実測値データの選択を,客観的にかつ自動的に行うことができる。検定結果によっては信頼性が低い実測値データを破棄すると判断することも可能となり,より精度が高い実測値データの選択が可能となる。
図2において,データ傾向提示処理部16は,実測値データ選択処理部13によって選択された各実測値データについて,データの統計解析を行い,選択された実測値データについての統計的データ傾向を利用者に提示する。
データ傾向提示処理部16は,回帰木分析統計解析部161,統計的データ傾向提示部162を備える。
データ傾向提示処理部16は,例えば,回帰木分析統計解析部161による回帰木分析の統計解析により,選択された各実測値データのデータ傾向を解析する。
統計的データ傾向提示部162は,選択された各実測値データのデータ傾向を,利用者に分かり易い形式で提示する。
図12,図13は,回帰木分析の統計解析によるデータ傾向の解析を説明する図である。
図12,図13において,丸,四角,菱形で表された各点は,ある関数の入力パラメータの値に対する出力の評価指標を表している。丸は出力の評価指標が低く,四角は出力の評価指標が中程度であり,菱形は出力の評価指標が高いものとする。
回帰木分析では,入力パラメータの領域をしきい値で分割していくことにより,出力の傾向を解析していく。
最初に,図12(A)に示す例において,入力パラメータX,入力パラメータYのそれぞれについて,出力の分類が最も良いしきい値を探索する。ここでは,入力パラメータXの値で出力を最も良く分類するしきい値として,x1 が得られたものとする。また,入力パラメータYの値で出力を最も良く分類するしきい値として,y1 が得られたものとする。
図12(A)に示すように,入力パラメータXをしきい値x1 で分割すると,X<x1 の領域では,出力の評価指標がすべて低く,X≧x1 の領域では,出力の評価指標が中程度のものと高いものとが混在する。また,入力パラメータYをしきい値y1 で分割すると,Y<y1 の領域では,出力の評価指標が低いものと中程度のものとが混在し,Y≧y1 の領域では,出力の評価指標が低いものと高いものとが混在する。
図12(A)に示すように,入力パラメータYをしきい値y1 で分割する場合と比べて,入力パラメータXをしきい値x1 で分割する方が,より効果的に出力を分類していることがわかる。図12(B)に示すように,入力パラメータXをしきい値x1 で分割することを決定する。この時点で,X<x1 の領域では出力の評価指標がすべて低くなっているが,X≧x1 の領域では,まだ,出力の評価指標が混在している。
次に,図12(B)に示す例において,X≧x1 の領域について,さらに出力の分類が最も良いしきい値を探索する。ここでは,入力パラメータXの値で出力を最も良く分類するしきい値として,x2 が得られたものとする。また,入力パラメータYの値で出力を最も良く分類するしきい値として,y1 が得られたものとする。
図12(B)に示すように,入力パラメータXをしきい値x2 で分割すると,X<x2 の領域では,出力の評価指標がすべて高く,X≧x2 の領域では,出力の評価指標が中程度のものと高いものとが混在する。また,入力パラメータYをしきい値y1 で分割すると,Y<y1 の領域では,出力の評価指標がすべて中程度であり,Y≧y1 の領域では,出力の評価指標がすべて高い。
図12(B)に示すように,入力パラメータXをしきい値x2 で分割する場合と比べて,入力パラメータYをしきい値y1 で分割する方が,より効果的に出力を分類していることがわかる。図13(A)に示すように,入力パラメータYをしきい値y1 で分割することを決定する。図13(A)に示すように,これ以上は効率的な出力の分類ができないので,分析は終了となる。
このとき,回帰木は,例えば図13(B)のようになる。回帰木は,回帰木分析の結果を木構造で表したものである。図13(B)示す回帰木において,Tは,それぞれ分割された領域における出力の代表値を示している。出力の代表値は,例えば,領域内の出力の平均値や,中間値などである。
なお,回帰木分析に関する詳細は,例えば参考文献3などに記載されている。
〔参考文献3〕
大滝 厚著/堀江 宥治著/ダン・スタインバーグ著:「応用2 進木解析法」,1998年,日科技連出版社
このように,回帰木分析の統計解析により,入力パラメータの値の範囲に対する出力の傾向が明らかになる。
以下,フローチャートを用いて,データ傾向提示処理部16による,選択された実測値データについての統計的データ傾向の提示の例を,いくつか説明する。
図14は,本実施の形態のデータ傾向提示処理部によるデータ傾向提示処理フローチャート(1)である。
図14に示すデータ傾向提示処理の例では,第一の測定条件群に属する測定条件の値の範囲ごとの選択された実測値データの近似誤差の傾向を,利用者に提示する。
実測値データ選択装置10において,データ傾向提示処理部16は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せと,その測定条件の値の組合せにおいて選択された実測値データの近似誤差との対応データを生成する(ステップS30)。データ傾向提示処理部16は,選択実測値データ記憶部14に記憶された第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとの選択された実測値データと近似誤差とから,対応データを生成する。
図15は,本実施の形態による第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せと近似誤差との対応データの例を示す図である。
図15に示す例は,図3に示す例における,ゲート長,ゲート幅の組合せと,そのゲート長,ゲート幅の組合せにおいて選択された実測値データの近似誤差との対応データの例である。近似誤差は,実測値データ選択処理部13による実測値データ選択処理時に算出された近似誤差である。
回帰木分析統計解析部161は,生成された対応データに基づいて,第一の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,近似誤差を目的変数として,回帰木分析の統計解析を行う(ステップS31)。
図16は,本実施の形態による回帰木分析の統計解析の例を示す図である。
図16に示す例は,図15に示す対応データについて,回帰木分析の統計解析を行った例である。
回帰木分析統計解析部161は,例えば,図15に示す対応データについて,ゲート長(L)とゲート幅(W)を入力パラメータとし,近似誤差を出力として,回帰木分析の統計解析を行う。
図16に示すように,ゲート長のパラメータLの値で実測値データの近似誤差を最も良く分類するしきい値として,l1 が得られたものとする。また,ゲート幅のパラメータWの値で実測値データの近似誤差を最も良く分類するしきい値として,w1 が得られたものとする。
回帰木分析統計解析部161は,ゲート長(L)のしきい値l1 ,ゲート幅(W)のしきい値w1 で分割された領域ごとに,出力である実測値データの近似誤差の代表値,ここでは平均値を求める。
これにより,ゲート長(L)とゲート幅(W)のそれぞれの値の範囲と,近似誤差の代表値との関係を示す回帰木が得られる。
統計的データ傾向提示部162は,回帰木分析の統計解析により得られた,第一の測定条件群に属する測定条件の値の範囲と,近似誤差の代表値との関係を,表示装置(図示省略)に表示するなどにより,利用者に対して提示する(ステップS32)。
図17は,本実施の形態による第一の測定条件群に属する測定条件の値の範囲と近似誤差の代表値との関係を示す情報の例を示す図である。
図17に示す例は,図16に示す回帰木分析の統計解析によって得られた,ゲート長(L)とゲート幅(W)のそれぞれの値の範囲と,実測値データの近似誤差の代表値との関係を示す情報の例である。
統計的データ傾向提示部162は,図17に示すゲート長(L)とゲート幅(W)のそれぞれの値の範囲と,実測値データの近似誤差の代表値との関係を,例えばディスプレイに表示するなどによって,利用者に提示する。
このように,図14に示すデータ傾向提示処理により,各測定条件の値の範囲に応じた実測値データの近似状況を,利用者に分かり易く提示できるようになる。
図18は,本実施の形態のデータ傾向提示処理部によるデータ傾向提示処理フローチャート(2)である。
図18に示すデータ傾向提示処理の例では,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件の値の範囲ごとの,選択された実測値データにおける測定対象の実測値と近似関数から得られる近似値との差分の傾向を,利用者に提示する。
実測値データ選択装置10において,データ傾向提示処理部16は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せを1つ決定する(ステップS40)。決定された第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおいて,実測値データ選択処理部13により選択された実測値データが,処理対象の実測値データとなる。
データ傾向提示処理部16は,処理対象となっていない実測値データに基づいて,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する(ステップS41)。ここでは,データ傾向提示処理部16は,SVM回帰分析の統計解析によって,近似関数を算出する。
データ傾向提示処理部16は,算出された近似関数を用いて,処理対象の実測値データが有するレコードごとに,測定対象の近似値を算出する(ステップS42)。すなわち,データ傾向提示処理部16は,処理対象の実測値データが有するレコードごとに,各測定条件の値を近似関数に代入して測定対象の近似値を得る。
データ傾向提示処理部16は,処理対象の実測値データが有するレコードごとに,測定対象の実測値と算出された測定対象の近似値との差を算出する(ステップS43)。
データ傾向提示処理部16は,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件の値の組合せと,それらの測定条件の値の組合せにおいて算出された測定対象の実測値と近似値の差との対応データを追加生成する(ステップS44)。データ傾向提示処理部16は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに選択された実測値データに対して順に処理を行うことにより,測定条件の値の組合せと測定対象の実測値と近似値の差との対応を追加していき,対応データを生成する。
データ傾向提示処理部16は,すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて,処理を行ったかを判定する(ステップS45)。
すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて処理を行っていなければ(ステップS45のNO),データ傾向提示処理部16は,ステップS40に戻り,処理が行われていない測定条件の値の組合せについて,ステップS41〜ステップS44に示す処理を行う。
図19は,本実施の形態による第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件の値の組合せと,測定対象の実測値と近似値の差との対応データの例を示す図である。
図19に示す例は,図3に示す例においてゲート長,ゲート幅の組合せごとに選択された実測値データにおける,ゲート長,ゲート幅,各電圧の値の組合せと,電流の実測値と近似値の差との対応データの例である。
図19において,電流の実測値と近似値の差は,処理対象の実測値データにおける該当各測定条件の値に応じた実測値と,該当各測定条件の値を近似関数に代入して得られた近似値との差分値である。
図18において,すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて処理を行っていれば(ステップS45のYES),回帰木分析統計解析部161は,生成された対応データに基づいて,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,測定対象の実測値と近似値の差を目的変数として,回帰木分析の統計解析を行う(ステップS46)。
回帰木分析統計解析部161は,例えば,図19に示す対応データについて,ゲート長(L),ゲート幅(W),電圧D(VD ),電圧G(VG ),電圧S(VS )を入力パラメータとし,電流の実測値と近似値の差を出力として,回帰木分析の統計解析を行う。
これにより,ゲート長(L),ゲート幅(W),電圧D(VD ),電圧G(VG ),電圧S(VS )のそれぞれの値の範囲と,電流の実測値と近似値の差の代表値との関係を示す回帰木が得られる。なお,電流の実測値と近似値の差の代表値は,分割された領域ごとの電流の実測値と近似値の差の平均値であるものとする。
統計的データ傾向提示部162は,回帰木分析の統計解析により得られた,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件の値の範囲と,測定対象の実測値と近似値の差の代表値との関係を,表示装置(図示省略)に表示するなどにより,利用者に対して提示する(ステップS47)。
図20は,本実施の形態による各測定条件の値の範囲と測定対象の実測値と近似値の差の代表値との関係を示す情報の例を示す図である。
図20に示す例は,図19に示す対応データに対する回帰木分析の統計解析によって得られた,ゲート長(L),ゲート幅(W),電圧D(VD ),電圧G(VG ),電圧S(VS )のそれぞれの値の範囲と,電流の実測値と近似値の差の代表値との関係を示す情報の例である。
図20において,l2 ,w2 ,vd1 ,vg1 ,vs1 は,それぞれゲート長(L),ゲート幅(W),電圧D(VD ),電圧G(VG ),電圧S(VS )のパラメータにおけるしきい値を表している。
統計的データ傾向提示部162は,図20に示すゲート長(L),ゲート幅(W),電圧D(VD ),電圧G(VG ),電圧S(VS )のそれぞれの値の範囲と,電流の実測値と近似値の差の代表値との関係を,例えばディスプレイに表示するなどによって,利用者に提示する。
このように,図18に示すデータ傾向提示処理により,各測定条件の値の範囲に応じた実測値と近似値の差の状況を,利用者に分かり易く提示できるようになる。
図21は,本実施の形態のデータ傾向提示処理部によるデータ傾向提示処理フローチャート(3)である。
図21に示すデータ傾向提示処理の例では,実測値データ選択処理部13により選択された実測値データが有する測定対象の実測値と,近似関数により算出される測定対象の近似値との関係を,利用者に提示する。
実測値データ選択装置10において,データ傾向提示処理部16は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せを1つ決定する(ステップS50)。決定された第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおいて,実測値データ選択処理部13により選択された実測値データが,処理対象の実測値データとなる。
データ傾向提示処理部16は,処理対象となっていない実測値データに基づいて,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する(ステップS51)。ここでは,データ傾向提示処理部16は,SVM回帰分析の統計解析によって,近似関数を算出する。
データ傾向提示処理部16は,算出された近似関数を用いて,処理対象の実測値データが有するレコードごとに,測定対象の近似値を算出する(ステップS52)。すなわち,データ傾向提示処理部16は,処理対象の実測値データが有するレコードごとに,各測定条件の値を近似関数に代入して測定対象の近似値を得る。
データ傾向提示処理部16は,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとの,測定対象の実測値と測定対象の近似値との対応データを追加生成する(ステップS53)。データ傾向提示処理部16は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに選択された実測値データに対して順に処理を行うことにより,各測定条件の値の組合せごとの,測定対象の実測値と測定対象の近似値との対応を追加していき,対応データを生成する。
データ傾向提示処理部16は,すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて,処理を行ったかを判定する(ステップS54)。
すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて処理を行っていなければ(ステップS54のNO),データ傾向提示処理部16は,ステップS50に戻り,処理が行われていない測定条件の値の組合せについて,ステップS51〜ステップS53に示す処理を行う。
図22は,本実施の形態による各測定条件の値の組合せごとの,測定対象の実測値と測定対象の近似値との対応データの例を示す図である。
図22に示す例は,図3に示す例においてゲート長,ゲート幅の組合せごとに選択された実測値データにおける,ゲート長,ゲート幅,各電圧の値の組合せごとの,電流の実測値と近似値との対応データの例である。
図22において,電流の測定値は,処理対象の実測値データにおける該当各測定条件の値に応じた実測値であり,電流の近似値は,該当各測定条件の値を近似関数に代入して得られた近似値である。
図21において,すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて処理を行っていれば(ステップS54のYES),統計的データ傾向提示部162は,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せを1つ決定する(ステップS55)。決定された第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおいて,実測値データ選択処理部13により選択された実測値データが,処理対象の実測値データとなる。
統計的データ傾向提示部162は,対応データに基づいて,測定対象の実測値と測定対象の近似値との対応関係を示す散布図を,表示装置(図示省略)に表示するなどにより,利用者に対して提示する(ステップS56)。例えば,統計的データ傾向提示部162は,横軸に電流の実測値を,縦軸に電流の近似値を設定したグラフを生成する。統計的データ傾向提示部162は,生成されたグラフに対して処理対象の実測値データにおける対応データについては丸の点を,処理対象以外の実測値データにおける対応データについては菱形の点をプロットした散布図を,利用者に提示する。
統計的データ傾向提示部162は,すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて,処理を行ったかを判定する(ステップS57)。
すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて処理を行っていなければ(ステップS57のNO),統計的データ傾向提示部162は,ステップS55に戻り,処理が行われていない測定条件の値の組合せについて,利用者へのデータ提示の処理を行う。
すべての第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せについて処理を行っていれば(ステップS57のYES),データ傾向提示処理部16は,データ傾向提示処理を終了する。
なお,図21に示す処理の例では,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに,処理対象の実測値データにおける対応データと,処理対象以外の実測値データにおける対応データのプロット点を変えて生成した散布図の提示が行われている。
実測値データ選択処理部13により選択された各実測値データにおける対応データのプロット点を,実測値データ検定処理部15による検定結果に応じて変えた散布図を,利用者に提示するようにしてもよい。
図23は,本実施の形態による測定対象の実測値と近似値との対応をプロットした散布図の例を示す図である。
図23に示す散布図の例では,実測値データ検定処理部15による選択された実測値データの検定結果に応じてプロット点を変えた散布図の例である。
図23に示す散布図は,横軸に測定対象の実測値が,縦軸に測定対象の近似値が設定されている。図23に示す散布図において,斜めに引かれた実線は,近似値=実測値の直線を示している。図23に示す散布図において,菱形のプロット点は,実測値データ検定処理部15において,信頼できると判定された実測値データにおける実測値と近似値との対応データを示している。また,丸のプロット点は,実測値データ検定処理部15において,信頼できないと判定された実測値データにおける実測値と近似値との対応データを示している。
図23の散布図に示すように,検定により信頼できると判定された実測値データについては,測定対象の実測値と近似値との対応点が,ほぼ近似値=実測値の直線に沿って並ぶ。これに対して,検定により信頼できないと判定された実測値データについては,測定対象の実測値と近似値との対応点が,近似値=実測値の直線から離れたところに並ぶ。このように,利用者は,図23に示すような散布図によって,選択された実測値データの信頼性の確認を行うことができる。
逆に,図23に示すような散布図によって,実測値データ検定処理部15において判定に用いられる閾値の調整を行うこともできる。例えば,図23に示す散布図において,近似値=実測値の直線から離れたところに並んだ点が菱形であれば,利用者が,検定処理に用いられた閾値が適切でないと判断し,閾値の設定変更を行うことができる。
このように,図21に示すデータ傾向提示処理により,各測定条件の値ごとの近似状況の良し悪しを,利用者に分かり易く提示できるようになる。
ここでは,具体的な3つの例を挙げて,データ傾向提示処理部16によるデータ傾向提示処理の例について説明したが,選択された実測値データのデータ傾向の提示については,ここで説明したもの以外にも様々な応用例が考えられる。
このように,本実施の形態のデータ傾向提示処理部16により,実測値データ選択処理部13によって選択された実測値データについて,統計解析により得られた客観的なデータ傾向を,利用者に対して分かりやすく提示することができる。
以上説明した実測値データ選択装置10による処理は,コンピュータが備えるCPU,メモリ等のハードウェアとソフトウェアプログラムとにより実現することができ,そのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することも,ネットワークを通して提供することも可能である。
以上,本実施の形態について説明したが,本発明はその主旨の範囲において種々の変形が可能であることは当然である。
例えば,本実施の形態では,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに,複数の実測値データが存在し,それぞれ適切な実測値データを選択する例について説明した。特に,測定条件に第一の測定条件群や第二の測定条件群の分類がなく,1または複数の測定条件と,測定条件の値に応じた測定対象の実測値とを有する複数の実測値データから,適切な実測値データを選択するようにしてもよい。
例えば,図2において,1または複数の測定条件と,測定条件の値に応じた測定対象の実測値とを有する複数の実測値データが,実測値データ記憶部12に記憶されているものとする。
このとき,実測値データ選択処理部13において,近似関数算出部131は,実測値データ記憶部12に記憶された複数の実測値データに基づいて,測定条件を説明変数とし,測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する。近似誤差算出部132は,複数の実測値データのそれぞれについて,実測値データが有する測定対象の実測値と近似関数により得られる測定対象の近似値とから,近似関数に対する前記実測値データの近似誤差を算出する。実測値データ選択部133は,実測値データ記憶部12に記憶された複数の実測値データから,算出された近似誤差が最小となる実測値データを選択する。
これにより,測定条件に第一の測定条件群や第二の測定条件群の分類がなくても,客観的かつ自動的に,妥当な実測値データの選択が可能となる。
なお,測定条件に第一の測定条件群や第二の測定条件群の分類があり,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに実測値データを選択する方が,より信頼性の高い実測値データの選択が可能となる。例えば,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに実測値データを選択する場合には,近似関数の生成に選択対象以外の実測値データを用いることができるので,より信頼性の高い実測値データの選択が可能となる。また,選択された実測値データに対して上述の実測値データ検定処理やデータ傾向提示処理が実行できるので,より信頼性の高い実測値データの選択が可能となる。
また,本実施の形態では,トランジスタに関する実測値データの選択の例を中心に説明を行ったが,トランジスタ以外の実測値データの選択についても当然実施可能である。
以上説明した本実施の形態の特徴を列記すると以下のとおりである。
(付記1)
第一の測定条件群に属する1または複数の測定条件と,第二の測定条件群に属する1または複数の測定条件と,測定条件の値に応じた測定対象の実測値とを有する実測値データが,複数記憶された実測値データ記憶部と,
ある第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおける複数の実測値データを選択対象とした場合に,全実測値データまたは選択対象以外の実測値データに基づいて,前記第一の測定条件群および前記第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,前記測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する近似関数算出部と,
前記選択対象とされた複数の実測値データのそれぞれについて,前記選択対象とされた実測値データが有する測定対象の実測値と前記近似関数により得られる測定対象の近似値とから,前記近似関数に対する前記選択対象とされた実測値データの近似誤差を算出する近似誤差算出部と,
前記選択対象とされた複数の実測値データから,前記算出された近似誤差が最小となる実測値データを選択する実測値データ選択部とを備える
ことを特徴とする実測値データ選択装置。
(付記2)
前記近似関数算出部は,SVM回帰分析の統計解析により,前記近似関数を算出する
ことを特徴とする付記1に記載された実測値データ選択装置。
(付記3)
ある第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおいて前記選択された実測値データを検定対象とした場合に,前記選択された全実測値データの近似誤差の分布または検定対象以外の前記選択された実測値データの近似誤差の分布について,近似誤差の確率密度関数を算出する確率密度関数算出部と,
前記確率密度関数により,近似誤差が前記検定対象である実測値データの近似誤差以上となる確率を算出し,算出された確率が所定の閾値以上である場合に,前記検定対象である実測値データが信頼できると判定する実測値データ検定部とを備える
ことを特徴とする付記1または付記2に記載された実測値データ選択装置。
(付記4)
前記確率密度関数算出部は,カーネル密度推定の統計解析により,前記確率密度関数を算出する
ことを特徴とする付記3に記載された実測値データ選択装置。
(付記5)
前記第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せごとに選択された実測値データに基づいて,データの統計解析を行い,前記選択された実測値データについての統計的データ傾向を提示するデータ傾向提示部を備える
ことを特徴とする付記1から付記4までのいずれかに記載された実測値データ選択装置。
(付記6)
前記データ傾向提示部は,
前記第一の測定条件群に属する測定条件の組合せごとに選択された実測値データの近似誤差から,第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せと近似誤差との対応データを生成し,
前記対応データに基づいて,第一の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,近似誤差を目的変数とする回帰木分析の統計解析を行い,
前記回帰木分析の統計解析により得られた,第一の測定条件群に属する測定条件の値の範囲と近似誤差の代表値との関係を提示する
ことを特徴とする付記5に記載された実測値データ選択装置。
(付記7)
前記データ傾向提示部は,
前記第一の測定条件群に属する測定条件の組合せごとに選択された実測値データのそれぞれについて,他の選択された実測値データに基づいて,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する第二の近似関数を算出し,
前記第一の測定条件群に属する測定条件の組合せごとに選択された実測値データのそれぞれについて,前記実測値データが有する測定対象の実測値と前記第二の近似関数により得られる測定対象の近似値とから,測定対象の実測値と近似値の差を算出し,
前記算出された測定対象の実測値と近似値の差から,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件の値の組合せと,測定対象の実測値と近似値の差との対応データを生成し,
前記対応データに基づいて,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,測定対象の実測値と近似値の差を目的変数とする回帰木分析の統計解析を行い,
前記回帰木分析の統計解析により得られた,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件の値の範囲と,測定対象の実測値と近似値の差の代表値との関係を提示する
ことを特徴とする付記5に記載された実測値データ選択装置。
(付記8)
前記データ傾向提示部は,
前記第一の測定条件群に属する測定条件の組合せごとに選択された実測値データのそれぞれについて,他の選択された実測値データに基づいて,第一の測定条件群および第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する第二の近似関数を算出し,
前記第一の測定条件群に属する測定条件の組合せごとに選択された実測値データのそれぞれについて,前記第二の近似関数により測定対象の近似値を算出し,
前記選択された実測値データが有する測定対象の実測値と,前記算出された測定対象の近似値との対応データを生成し,
前記対応データに基づいて,前記選択された実測値データが有する測定対象の実測値と前記算出された測定対象の近似値との関係を提示する
ことを特徴とする付記5に記載された実測値データ選択装置。
(付記9)
前記第一の測定条件群に属する測定条件が,トランジスタのゲート長とゲート幅とであり,
前記第二の測定条件群に属する測定条件が,トランジスタの電圧であり,
前記測定対象がトランジスタの電流である
ことを特徴とする付記1から付記8までのいずれかに記載された実測値データ選択装置。
(付記10)
1または複数の測定条件と,測定条件の値に応じた測定対象の実測値とを有する実測値データが,複数記憶された実測値データ記憶部と,
前記複数の実測値データに基づいて,前記測定条件を説明変数とし,前記測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する近似関数算出部と,
前記複数の実測値データのそれぞれについて,前記実測値データが有する測定対象の実測値と前記近似関数により得られる測定対象の近似値とから,前記近似関数に対する前記実測値データの近似誤差を算出する近似誤差算出部と,
前記複数の実測値データから,前記算出された近似誤差が最小となる実測値データを選択する実測値データ選択部とを備える
ことを特徴とする実測値データ選択装置。
(付記11)
第一の測定条件群に属する1または複数の測定条件と,第二の測定条件群に属する1または複数の測定条件と,測定条件の値に応じた測定対象の実測値とを有する実測値データが,複数記憶された記憶部を備える実測値データ選択装置のコンピュータによる実測値データ選択方法であって,
前記コンピュータが,
ある第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおける複数の実測値データを選択対象とした場合に,前記記憶部に記憶された,全実測値データまたは選択対象以外の実測値データに基づいて,前記第一の測定条件群および前記第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,前記測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する過程と,
前記選択対象とされた複数の実測値データのそれぞれについて,前記選択対象とされた実測値データが有する測定対象の実測値と前記近似関数により得られる測定対象の近似値とから,前記近似関数に対する前記選択対象とされた実測値データの近似誤差を算出する過程と,
前記選択対象とされた複数の実測値データから,前記算出された近似誤差が最小となる実測値データを選択する過程とを実行する
ことを特徴とする実測値データ選択方法。
(付記12)
第一の測定条件群に属する1または複数の測定条件と,第二の測定条件群に属する1または複数の測定条件と,測定条件の値に応じた測定対象の実測値とを有する実測値データが,複数記憶された記憶部を備える実測値データ選択装置のコンピュータが実行するプログラムであって,
前記コンピュータに,
ある第一の測定条件群に属する測定条件の値の組合せにおける複数の実測値データを選択対象とした場合に,前記記憶部に記憶された,全実測値データまたは選択対象以外の実測値データに基づいて,前記第一の測定条件群および前記第二の測定条件群に属する測定条件を説明変数とし,前記測定対象を目的変数として,説明変数をもとに目的変数を近似する近似関数を算出する手順と,
前記選択対象とされた複数の実測値データのそれぞれについて,前記選択対象とされた実測値データが有する測定対象の実測値と前記近似関数により得られる測定対象の近似値とから,前記近似関数に対する前記選択対象とされた実測値データの近似誤差を算出する手順と,
前記選択対象とされた複数の実測値データから,前記算出された近似誤差が最小となる実測値データを選択する手順とを
実行させるための実測値データ選択プログラム。