JP5122046B2 - ポリカーボネートの製造方法 - Google Patents
ポリカーボネートの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5122046B2 JP5122046B2 JP2001273408A JP2001273408A JP5122046B2 JP 5122046 B2 JP5122046 B2 JP 5122046B2 JP 2001273408 A JP2001273408 A JP 2001273408A JP 2001273408 A JP2001273408 A JP 2001273408A JP 5122046 B2 JP5122046 B2 JP 5122046B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- scrubber
- liquid
- water
- weight
- polycarbonate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Polyesters Or Polycarbonates (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、溶融重合によりポリカーボネートを製造する方法に関し、更に詳しくは、溶融重合で生成したポリカーボネートについて脱揮処理を行い、低分子量物質の少ないポリカーボネートを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融重合により製造されるポリカーボネートについて、安定剤の添加処理および脱揮処理を行うに際し、減圧で操作しつつ、ベント配管と真空発生器との間で、発生する低分子物質を真空下で捕集することが一般に実施される。
【0003】
従来の捕集では、冷却ジャケットおよび/またはコイルを有する複数の熱交換器または槽類を用い、真空下において低分子物質をその融点以下に冷却して伝熱面に凝縮させ捕集し、低分子物質の付着によって装置入出での圧力差が増大すると予備装置へ切替えた後、加熱洗浄または溶剤等での洗浄を行うことで低分子物質を回収する方法(冷却・固化型方法)や、発生する低分子量物質を溶解し得る溶媒をスクラバー液として使用し、該スクラバー液と低分子量物質蒸気とを接触させて溶解捕集する方法が用いられていた。
【0004】
しかしながらこのような方法では、装置の切替や洗浄を必要とするため、複雑な設備が必要であったり、スクラバー液を循環使用するために大量の溶剤を蒸留などで再生する必要があり、真空捕集を連続的に安定に実施するためには多大なコストを要すると言う問題があった。
【0005】
このため、冷水をスクラバー液としたスクラバーコンデンサーを用いて該スクラバー液と低分子量物質蒸気とを接触させて冷却凝縮させ捕集し、固液分離によりスクラバー液の不溶物を分離回収する方法が本願発明者らにより先に提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
冷水をスクラバー液とする改良された方法では脱揮された低分子物質をその融点以下に冷却して伝熱面に凝縮させ捕集する方法に比べ格段に操作性が向上し、また有機溶媒を使用しないために回収の負荷が格段に低減される。
【0007】
しかしながら、この冷水をスクラバー液として使用する方法においては、スクラバー液に不溶である低分子量物質が徐々に装置内に付着し、長期連続運転においては付属機器の能力低下および冷水循環系内での閉塞などを引き起こすという問題があった。
【0008】
本願発明の目的は、冷水スクラバーの長期連続運転性を改善し、安価で操作性に優れた捕集方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本願発明の1態様は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、触媒の存在/非存在下にエステル交換させて生成したポリカーボネートについて脱揮処理を行い、低分子量物含有量が低減したポリカーボネートを製造する方法において、脱揮処理で発生した脱揮物をスクラバーに導き、当該スクラバーの操作圧力における水の沸点以下の温度の、水を主体としアルカリ性を示す物質を含むスクラバー液と接触させて、当該脱揮物をスクラバー捕集液の一部として凝縮、捕集することを特徴とするポリカーボネートの製造方法、である。
【0010】
この場合、前記スクラバー捕集液の少なくとも一部を前記スクラバー液の一部として使用することが望ましい。
【0011】
脱揮処理にはベント式2軸ルーダーを用い、水を添加して行うことが有用である。
【0012】
ここで、「水を主体としアルカリ性を示す物質を含むスクラバー液」としては、運転の開始時には、アルカリ性を示す通常の水が使用されるが、このスクラバー液は、通常循環使用されるため、運転の途中では、スクラバーによって捕集されたポリカーボネートの脱揮物の一部が含まれた状態となる。
【0013】
なお、以下に説明する発明の実施の形態や図面の中で、本発明の更なる特徴が明らかにされる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明の実施の形態を図や実施例を使用して説明する。なお、これらの図,実施例及び説明は本願発明を例示するものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。本願発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本願発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0015】
本願発明で言うポリカーボネートとは、主たる成分である芳香族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとを、例えば塩基性窒素化合物とアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物とよりなるエステル交換触媒等の存在下、または非存在下に溶融重縮合させたポリカーボネートである。一般にはエステル交換触媒を使用して重合を行う場合が多い。
【0016】
このような芳香族ジオール化合物(芳香族ジヒドロキシ化合物)としては例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキサイド、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)オキサイド、p,p’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0017】
本願発明に用いられる炭酸ジエステル化合物としては、例えばジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが用いられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0018】
本願発明に用いられる2種類の原料の使用比率は、炭酸ジエステル化合物の使用モル数を芳香族ジヒドロキシ化合物の使用モル数で除した値であらわした原料モル比において、1.00から1.10の範囲の中から選択することが好ましい。
【0019】
さらに、本願発明のポリカーボネートは、必要に応じて、脂肪族ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,10−デカンジオール等を、ジカルボン酸類として、例えば、コハク酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、シクロヘキサンカルボン酸、テレフタル酸等;オキシ酸類例えば、乳酸、P−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等を含有していても良い。
【0020】
本願発明に用いられる触媒は特に限定されないが、塩基性窒素化合物とアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物とよりなるエステル交換触媒を使用することができる。
【0021】
本願発明で使用されるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属化合物についても、得られるポリカーボネートの色相を低下させるものでなければ特に制限はなく種々の公知のものを使用することができる。
【0022】
触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化ホウ素塩、安息香酸塩、リン酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。
【0023】
具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、シアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素ジカリウム、リン酸水素ジリチウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩、ジリチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
【0024】
触媒として用いられるアルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。
【0025】
具体例としては、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸バリウム、亜硫酸ストロンチウム、シアン酸カルシウム、シアン酸バリウム、シアン酸ストロンチウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸バリウム、チオシアン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸ストロンチウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素バリウム、水素化ホウ素ストロンチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸バリウム、安息香酸ストロンチウム、ビスフェノールAのカルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩、フェノールのカルシウム塩、バリウム塩、ストロンチウム塩などが挙げられる。
【0026】
本願発明においては所望により、触媒のアルカリ金属化合物として、(a)周期律表第14族の元素のアート錯体のアルカリ金属塩または(b)周期律表第14族の元素のオキソ酸のアルカリ金属塩を用いることができる。ここで周期律表第14族の元素とは、ケイ素、ゲルマニウム、スズのことをいう。
【0027】
(a)周期率表第14族元素のアート錯体のアルカリ金属塩としては、特開平7−268091号公報に記載のものをいうが、具体的には、ゲルマニウム(Ge)の化合物;NaGe(OMe)5、NaGe(OEt)3、NaGe(OPr)5、NaGe(OBu)5、NaGe(OPh)5、LiGe(OMe)5、LiGe(OBu)5、LiGe(OPh)5を挙げることができる。
【0028】
スズ(Sn)の化合物としては、NaSn(OMe)3、NaSn(OMe)2(OEt)、NaSn(OPr)3、NaSn(O−n−C6H13)3、NaSn(OMe)5、NaSn(OEt)5、NaSn(OBu)5、NaSn(O−n−C12H25)5、NaSn(OEt)、NaSn(OPh)5、NaSnBu2(OMe)3を挙げることができる。
【0029】
また(b)周期律表第14族元素のオキソ酸のアルカリ金属塩としては、例えばケイ酸(silicic acid)のアルカリ金属塩、スズ酸(stanic acid)のアルカリ金属塩、ゲルマニウム(II)酸(germanous acid)のアルカリ金属塩、ゲルマニウム(IV)酸(germanicacid)のアルカリ金属塩を好ましいものとして挙げることができる。
【0030】
ケイ酸のアルカリ金属塩は、例えばモノケイ酸(monosilicic acid)またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その例としては、オルトケイ酸モノナトリウム、オルトケイ酸ジナトリウム、オルトケイ酸トリナトリウム、オルトケイ酸テトラナトリウムを挙げることができる。
【0031】
スズ酸のアルカリ金属塩は、例えばモノスズ酸(monostanic acid)またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その例としてはモノスズ酸ジナトリウム塩(Na2SnO3・XH2O、X=0〜5)、モノスズ酸テトラナトリウム塩(Na4SnO4)を挙げることができる。
【0032】
ゲルマニウム(II)酸(germanous acid)のアルカリ金属塩は、例えばモノゲルマニウム酸またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その例としてはゲルマニウム酸モノナトリウム塩(NaHGeO2)を挙げることができる。
【0033】
ゲルマニウム(IV)酸(germanic acid)のアルカリ金属塩は、例えばモノゲルマニウム(IV)酸またはその縮合体の酸性あるいは中性アルカリ金属塩であり、その例としてはオルトゲルマニウム酸モノリチウム酸(LiH3GeO4)オルトゲルマニウム酸ジナトリウム塩、オルトゲルマニウム酸テトラナトリウム塩、ジゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge2O5)、テトラゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge4O9)、ペンタゲルマニウム酸ジナトリウム塩(Na2Ge5O11)を挙げることができる。
【0034】
触媒としてのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、当該触媒中のアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素が芳香族ジオール化合物1モル当り1×10-8〜5×10-5当量となる場合で好ましく使用される。より好ましい割合は同じ基準に対し5×10-7〜1×10-5当量となる割合である。
【0035】
当該触媒中のアルカリ金属元素量またはアルカリ土類金属元素量が芳香族ジオール化合物1モル当り1×10-8〜5×10-5当量の範囲を逸脱すると、得られるポリカーボネートの諸物性に悪影響を及ぼしたり、また、エステル交換反応が充分に進行せず高分子量のポリカーボネートが得られない等の問題があり好ましくない。
【0036】
また、触媒としての含窒素塩基性化合物としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(φ−CH2(Me)3NOH)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するアンモニウムヒドロオキシド類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ヘキサデシルジメチルアミンなどの3級アミン類、あるいはテトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)などの塩基性塩を挙げることができる。
【0037】
上記含窒素塩基性化合物は、含窒素塩基性化合物中のアンモニウム窒素原子が芳香族ジオール化合物1モル当り1×10-5〜5×10-3当量となる割合で用いるのが好ましい。より好ましい割合は同じ基準に対し2×10-5〜5×10-4当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し5×10-5〜5×10-4当量となる割合である。
【0038】
なお、本願明細書において、仕込み芳香族ジオール化合物(芳香族ジヒドロキシ化合物ともいう)に対するアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素塩基性化合物の割合いを、「芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対し金属または塩基性窒素としてW(数値)当量のZ(化合物名)量」として表現したが、これは、例えば、Zがナトリウムフェノキシドや2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンモノナトリウム塩のようにナトリウム原子が一つであり、またはトリエチルアミンのように塩基性窒素が一つであれば、Zの量がWモルに相当する量であることを意味し、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジナトリウム塩のように二つであれば、W/2モルに相当する量であることを意味する。
【0039】
本願発明の重縮合反応には、上記触媒と一緒に、必要により、周期律表第14族元素のオキソ酸および同元素の酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の助触媒を共存させることができる。
【0040】
これら助触媒を特定の割合で用いることにより、末端の封鎖反応、重縮合反応速度を損なうことなく、重縮合反応中に生成し易い分岐反応や、成形加工時における装置内での異物の生成、やけといった好ましくない副反応をより効果的に抑制することができる。
【0041】
上記方法で得られたポリカーボネートについて、触媒失活剤の添加処理および脱揮処理を行なうことが多い。
【0042】
このような処理を行う装置に特に制限はなく、例えば、竪型撹拌槽、横型撹拌槽、1軸ルーダー、2軸ルーダー等が使用できるが、特に、ベント式2軸ルーダーはセルフクリーニング性や表面積を大きく取れるなどの利点があり、好ましく使用される。ここで、「ベント式2軸ルーダー」とは2軸ルーダーの所定の場所(ベント部と呼ばれる)の上面に設けられた配管等を通じて、当該2軸ルーダー内のガス、低分子で揮発可能な化合物等を排気する機能を有する2軸ルーダーであることを意味する。
【0043】
この際に、ポリカーボネートを重合機から直接溶融状態でルーダーに供給しても良く、一旦冷却・ペレット化してルーダーに供給しても良い。
【0044】
本願発明に係る脱揮処理においては、それに先立ち、重合で得られたポリカーボネートに含まれる前記の重合触媒を、触媒失活剤を用いて予め失活させておくことが好ましい。
【0045】
本願発明において、重合で得られたポリカーボネート中に含まれる低沸点物を除去する目的で実施する脱揮処理の方法自体については特に制限が無く、上記の装置を使用し減圧下でポリカーボネートを処理する方法や、脱揮助剤を使用して減圧下でポリカーボネートを処理する方法などの公知の方法が使用できるが、特に、水を脱揮助剤として使用し、減圧下で処理する方法(水添加脱揮)が脱揮効率や脱揮助剤の処理の観点から、好ましく使用される。
【0046】
本願発明は、脱揮物が、原料として使用した炭酸ジエステル、芳香族ジヒドロキシ化合物、分子量1000以下のオリゴカーボネートから選ばれた少なくとも1種を含む場合に好ましく使用される。
【0047】
水添加脱揮を行う回数は特に制限は無く1回以上行えばよいが、複数の水添加脱揮を行う場合には、最初の脱揮において水と触媒失活剤とを同時に加えることにより失活と脱揮を同時に行うこともできる。このようにすることにより、脱揮操作におけるポリカーボネートの劣化を抑えることができ好ましい。
【0048】
本願発明に使用する失活剤としては、公知の失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましく、更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の上記塩類やパラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の上記塩類が好ましい。またスルホン酸のエステルとしてベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられ、就中、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0049】
これらの失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた前記重合触媒1モル当たり0.5〜50モルの割合で、好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
【0050】
これらの失活剤は直接、または適当な溶剤に溶解または分散させて溶融状態のポリカーボネートに添加、混練する。
【0051】
このような溶剤に特に制限は無いが、引き続く脱揮処理に使用される脱揮助剤と同一の溶剤である水を溶剤として使用することが最も好ましい。このようにすることにより前述のように失活操作と同時に脱揮操作を行うことが可能となる。
【0052】
失活剤を混練するために使用される設備としては特に制限はないが、2軸ルーダー等が好ましく、失活剤を溶剤に溶解または分散させた場合はベント付きの2軸ルーダーが特に好ましく使用される。
【0053】
本願発明においては、上記のようにして得られた失活剤により重合触媒の活性をなくしたポリカーボネートに水を添加混練せしめた後、減圧にして脱揮処理することで不純物、特に揮発性不純物等の低分子量物質の含有量が極めて少なく、熱安定性、色相安定性、耐加水分解性に優れたポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0054】
この場合、水の添加量はポリカーボネートに対し0.1〜5重量%であることが望ましい。少なすぎると効果がなく、多すぎると、ポリカーボネートが加水分解を起こしたり、水添加量の割には不純物除去効果が上昇しないため、経済的に不利になるという問題が起こることがある。
【0055】
ここで、上記のように脱揮処理を行うために添加する水は、脱揮助剤と呼ばれ、熔融したポリカーボネートに添加され、蒸発する際にポリカーボネート中に含まれている不純物を同伴して系外に取り出す役目を有する。
【0056】
本願発明の脱揮処理において、使用する水の添加混練は、マテリアルシール部を挟んで混練部とベント部からなる単位処理ゾーンを備えたベント式2軸ルーダーを使用することが好ましい。単位処理ゾーンの数は、1つでもよいが複数個所有してもよい。なお、マテリアルシール部とは、その上流部と下流部とで異なる操作圧力をとることを可能にする目的で設置された2軸ルーダーの攪拌単位で、ルーダーの断面を見た場合にその空間部分が混練される樹脂で実質的に完全に充填されている部分を含むものを意味し、シールリング部やバックフライト部がマテリアルシール部となりうる。
【0057】
ベント部では真空ポンプ等により減圧処理し、脱揮助剤として使用した水および低分子量揮発物を系外に除去する。減圧処理条件としては、760mmHg(1.01×102kPa)以下、好ましくは500mmHg(0.665×102kPa)以下の圧力で0.1秒間以上行う。
【0058】
ベント部圧力が760mmHg(1.01×102kPa)を越えると添加した水ならびに揮発性不純物等の低分子量物質を系外に除去できないため好ましくない場合が多い。なお上記記載および本文中記載において使用する圧力の単位は、特に記述しない限りすべて絶対圧力である。
【0059】
本願発明者等は、水添加脱揮で発生する揮発物の捕集方法として冷水を用いたスクラバー捕集を先に提案した。
【0060】
冷水スクラバーは脱揮助剤として使用した水と同物質である水を利用できるためスクラバー液の処理が簡単となり、また、冷却・固化型の捕集方法と比較した場合、切り替えが必要なく運転性に優れると言う特徴があった。しかしながら、この運転性に優れる水スクラバーにおいても1か月を超える長期の連続運転を行った場合にスクラバー液循環系に脱揮捕集物に起因する閉塞が発生し安定運転を損なう恐れがあることが解った。
【0061】
本願発明は冷水スクラバーの運転性を更に改善させる目的で本願発明者等が継続した検討をもとに到達したものである。
【0062】
図1は本願発明に係る製造方法を実施するための装置の一例を示す。
【0063】
図1において、本願発明における真空発生器1とは真空ポンプまたはエジェクター等の真空を発生させるための装置を言う。
【0064】
ベント式2軸ルーダー8と真空発生器1とを接続するベント配管2の途中にスクラバー3が設置される。
【0065】
本願発明に使用されるスクラバーとしては特に限定はなく、スクラバー液と蒸気とが良好に接触でき、かつ、圧力損失が小さい構造のものであれば如何なる構造のものでも使用することができる。たとえば、スプレー式、充填塔式、留水スプラッシュ式、水面衝突式等が考えられる。この中でもスプレー式スクラバーが操作効率上好ましい。一例を図2に示す。
【0066】
図2において、垂直に設置された円筒状の竪型の塔であるスクラバー3の内部の高さの異なる位置に、複数のスプレーノズル10が設置されており、当該スプレーノズル10より必要量のスクラバー液が噴霧供給される。
【0067】
スクラバー3の側面には2軸ルーダーより発生した水蒸気と脱揮物とを含むガスを導くスクラバー入り口ノズル5が設けられており、これより塔内に導かれたガスはスクラバー液と接触し、それによって水蒸気と脱揮物とが捕集除去される。
【0068】
このようにして水蒸気と脱揮物とが捕集除去された後のガスはスクラバー3の塔頂部に設けられたスクラバー出口ノズル4より真空発生器1に導かれ排気される。
【0069】
スクラバー入り口ノズル5には噴霧供給されるスクラバー液が直接かからないように配慮することが重要である。
【0070】
また、捕集された水蒸気と脱揮物とを含むスクラバー液(本願発明ではこのようなスクラバー液をスクラバー捕集液という)は塔下部に設置されたスクラバー排出液ノズル6から排出される。
【0071】
本願発明において、スクラバー液は脱揮助剤と同一の水を主としたアルカリ溶液を使用するため、スクラバーから排出されるスクラバー捕集液は捕集された固体状の脱揮物を含むアルカリ水のスラリーとなる。該アルカリ水スラリーは図1の配管11を通ってポット7に導かれる。
【0072】
本願発明においてポット7はスラリーの沈降を防止する目的やアルカリ等の濃度を均一に保つ目的で撹拌機を設置することが好ましい。
【0073】
スクラバー捕集液を撹拌混合することはスクラバー捕集液中の固形物の沈殿を防止するためと、添加されたアルカリ性を示す物質の混合を確保するためとの役割を果たすためのもので、スクラバー循環系のうち、スクラバー捕集液の存在する部分で行うのがよく、その手段としては、撹拌機、ラインミキサー等、公知のどのようなものでも、本願発明の目的に合致する限り使用することができるが、このポット7に撹拌機を設置することが最も実際的な方法の一つである。
【0074】
本願発明に上記スクラバー3を使用する場合は、使用するスプレーノズル10として図3に示すような、スプレー円錐内面にも噴霧液滴が存在する中実コーンノズルまたは図4に示すような内面が中空の中空コーンノズルが好ましく、就中、中実コーンノズルが好ましい。
【0075】
本願発明において、スクラバー液流量は、ベント式2軸ルーダーより揮発する水蒸気および低分子量物質ガス量の100〜1000倍(体積基準)とするのが望ましい。
【0076】
本願発明においては、脱揮処理で発生した脱揮物を、スクラバーの操作圧力における水の沸点以下の温度の、水を主体としアルカリ性を示す物質を含むスクラバー液と接触させる。ここでの水の温度は、スクラバーに入る直前のスクラバー液の温度であり、スクラバーの操作圧力とはスクラバー内部の圧力を意味する。
スクラバーの操作圧力は通常1気圧より低い。
【0077】
前記スクラバーの操作圧力において、液温が水の沸点より高い場合スクラバー液の蒸発により、脱揮操作に必要な真空度の維持が困難となり、また、真空発生器へ揮発物が逃散するため好ましくない。捕集効率の面から該液温を捕集操作圧力における水の沸点より5℃以上低くして制御するのがより望ましい。
【0078】
スクラバーの操作圧力における水の沸点以下の温度に冷却する工程は、最終的に、スクラバーに供給されるスクラバー液の温度がスクラバーの操作圧力における水の沸点以下の温度になるように冷却できるのであればどの段階において実施してもかまわず、固体状の脱揮物を分離する前のスクラバー捕集液を冷却したり、固体状の脱揮物を分離したスクラバー捕集液を冷却したり、その両者を組み合わせることが考えられる。
【0079】
固体状の脱揮物を分離したスクラバー捕集液を冷却するのがより好ましい。その手段としては公知のどのようなものでも、本願発明の目的に合致する限り使用することができる。
【0080】
本願発明において、図1,2に示すベント式2軸ルーダー8とスクラバー3とを接続する配管2の部分およびスクラバー3に設けられたスクラバー入り口ノズル5には、低分子量揮発物の付着を防止するため、スチーム等の熱媒体によるトレースまたは、ジャケット等の加温を施し、常に該ノズルおよび配管を100℃以上に保つのが望ましい。
【0081】
本願発明において、スクラバー入り口ノズル5はスクラバー3に向かって下がり勾配をつけるのが望ましく、具体的には、スクラバー入り口ノズル5の中心線とスクラバー3の中心線とのなす設置角度αは、45〜80゜であるのが望ましい。
【0082】
本願発明において、スクラバー3内に低分子量物質が付着する場合、付着箇所の洗浄を目的としたスプレーノズルを設置し、スプレーによる強制的な洗浄を行なってもよい。
【0083】
配管11においては、固体の付着を防止するため、スクラバー捕集液の流れの抵抗となる急激な異径部分を設けないのが望ましい。やむを得ず異径部分を設ける場合、絞り角度を10゜以下とするのが望ましい。
【0084】
図1に示すようにポット7内のスクラバー捕集液はポンプ13を介し、スクラバー捕集液中の捕集固形物を除去するための固液分離装置14に導かれる。
【0085】
本願発明においては必要に応じて固体状の脱揮物を分離するが、固体状の脱揮物を分離する方法に特に限定はなく、スクラバー液中の固形物を効率的に十分除去することが可能な機構のものであれば何でも構わないが、遠心分離により実施するもの、濾過により分離を行うものが好ましく使用できる。
【0086】
固形物の分離を遠心分離により実施する装置としては特に制限が無く、市販の遠心分離装置を使用することができるが、例えば、横型の連続式遠心分離装置や、竪型の内部スクリーンを有するセミ連続式の遠心分離装置を挙げることができる。
【0087】
固形物の分離を濾過により実施する装置としては特に制限はないが、例えば、ベルト式フィルター、ドラム式フィルター等の連続濾過装置または、カートリッジ式フィルター、バスケット式フィルター、ストレーナー等を挙げることができる。これらの設備は必要に応じ複数組み合わせて使用することもできる。
【0088】
本願発明において、スクラバー捕集液中の脱揮物固形分を分離するために捕集する精度は100μm以上の粒子直径の粒子を90%以上捕集することが望ましく、更に好ましくは50μm以上の粒子直径の粒子を90%以上捕集する精度が望ましい。十分な固液分離が行われない装置を使用した場合、配管16の内面および付属装置内に非溶解固形物が付着し、長時間の連続運転を阻害するため、好ましくない。
【0089】
なお、粒子直径は顕微鏡法、レーザー前方散乱法で測定したものである。
【0090】
また、ポット7と固液分離装置14との間の配管12および15においては、固形物が配管内面に付着するのを防ぐため、配管内流速を1m/s以上とし、不要な曲がり部分等の配管抵抗を極力抑えることが好ましい。
【0091】
上記固液分離装置14を経た後、適宜、系外へ余剰な水を排出し、必要に応じ排水処理を施す。
【0092】
本願発明においては、固体状の脱揮物を除去した液はその少なくとも一部をスクラバー液として循環使用するのが好ましい。
【0093】
スクラバー液はスクラバーへの入り口において、スクラバーの操作圧力における水の沸点以下の所定温度になるように冷却される。
【0094】
この目的に使用する装置に特に制限はなく、例えば、前記撹拌機を有するポット7に冷却ジャケットおよび/またはコイルを設置したり、多管式熱交換器、プレート式熱交換器、掻き取り式熱交換器等の熱交換器を使用することができる。
【0095】
本願発明者等の検討によると、アルカリ性を示す物質を含む水をスクラバー液として使用することにより、スクラバー3からポット7、固液分離装置14等を経てスクラバー3に戻るスクラバー液循環系中において、長期の連続運転により発生する閉塞が大幅に改善されると共に固液分離装置の負荷が大幅に減少することが見出された。
【0096】
この内、閉塞は特に配管や装置(符号11,7,12,13,15,14,18,16,19)の液の流れが滞る部位に生じやすいものであるが、本願発明の方法によれば顕著な改善が得られる。
【0097】
また、固液分離器の負荷の低減は、使用する固液分離器のサイズ低減やフィルター交換頻度の低減をもたらし、運転コストや安定運転性の観点で大きな効果をもたらす。
【0098】
本願発明の方法では、アルカリ性を示す物質を含む水をスクラバー液として使用することにより、捕集された固体状の脱揮物が分解され、水に可溶な物質に変化するため、上述した効果が得られるものと考えられる。
【0099】
アルカリ性を示す物質を添加する工程は後述するスクラバー循環系のどの部分にあってもよく、その添加手段は単なる配管の接続や、十分な均一混合を確保するためにラインミキサーを伴う添加配管等公知のどのようなものでも、本願発明の目的に合致する限り使用することができる。
【0100】
本願発明に使用するアルカリ性を示す物質は、スクラバーの操作圧力において水の沸点より高い沸点を持つものであれば特に制限はなくアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルキルアミン類、アルキルジアミン類、芳香族アミン類、ヘテロ環アミン類が使用できる。
【0101】
スクラバー液のpHは11以上であることが好ましい。11未満では不溶物が水に可溶な物質に変化する速度が充分でない場合が多い。
【0102】
スクラバー液のpHはpH試験紙、pHメーター等公知の測定方法で分析することができる。
【0103】
脱揮処理にて脱揮される物質は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)等公知の分析方法で分析することができる。
【0104】
スクラバーの操作圧力において水の沸点より高い沸点を持つことを条件とするのは、スクラバーの操作圧力においてこれらの物質の蒸発が起こり、脱揮物の捕集効果を低下させる恐れがあるからである。
【0105】
使用されるアルカリ性を示す物質は、複数使用しても良い。これには同種の物を複数含む場合も含まれる。また必要に応じて、相間移動触媒や界面活性剤を使用しても良い。
【0106】
本願明細書においては、アルカリ性を示す物質の量(%)また相間移動触媒や界面活性剤の量(重量ppm)は重量基準の値である。
【0107】
このようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムなどが挙げられる。アルキルアミン類、アルキルジアミン類、芳香族アミン類、ヘテロ環アミン類としては例えば、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジプロピルアミン、N−エチルブチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、ピロール、インドールなどが挙げられるが、使用量と効果の観点から少量で大きな分解・可溶化効果をもたらすアルカリ金属の水酸化物が好ましく、中でも水酸化ナトリウムが最も好ましい。
【0108】
本願発明において、これらのアルカリ性を示す物質の濃度は、スクラバー液中の濃度で表わした場合、10重量%以下が好ましく、水に不溶な脱揮捕集物(すなわち、脱揮捕集物のうち水に不溶な成分)の分解・可溶化効果およびスクラバー循環系から排出される余剰のスクラバー液の処理を考えた場合、0.1〜5重量%とするのが更に好ましい。
【0109】
本願発明においては、アルカリ性を示す物質が次第に消費されていく。
【0110】
本願発明において、アルカリ性を示す物質を添加する方法に特に制限はないが、例えば、抜き出されたスクラバー液に含まれるアルカリ性を示す物質に相当する量を、ポット7に間歇的または連続的に添加することが好ましく実施される。
【0111】
また、先述したごとく、pHを11以上に保つように補充するのも好ましい方法である。
【0112】
このほか、固体が系内の壁面等に付着するのを抑制するようにして補充する方法としては、残存する不溶物(不溶成分)を固液分離すること、また、分離された固体の量に応じて、スクラバー液にアルカリ性を示す物質を添加するのが有用であることが判明した。
【0113】
本願発明を実際に適用するにあたって、残存する不溶物を固液分離する処理のためにたとえばフィルタを設置した場合、このフィルタのつまり具合を、詰まり物の量(すなわち分離された固体の量)として把握し、この量が一定範囲内になるようにアルカリ性を示す物質を添加するのである。
【0114】
さらに実際に即して説明すれば、フィルタの詰まり物あるいはスクラバー液に含まれる不溶物には、ジフェニルカーボネートのごとく、アルカリ性を示す物質を添加することによって比較的容易に可溶化する成分と、オリゴマーのごとく可溶化し難い成分とがあるが、この「比較的容易に可溶化する成分であって不溶状態にあるもの」が増加するとフィルタのつまりが多くなる。そこで、このような「比較的容易に可溶化する成分であって不溶状態にあるもの」を主に溶解せしめるためアルカリ性を示す物質を添加するのである。
【0115】
具体的には、一定期間毎にフィルタの詰まり物量を測定し、この量が一定範囲内に収まるように、適時アルカリ性を示す物質を添加するのである。
【0116】
このようにすると、固体が系内の壁面等に付着するのを抑制できることが判明した。
【0117】
また、この方法に代えて、スクラバー捕集液を目開き1μmのフィルターでろ過した場合に、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の捕集される割合が、50重量%未満であるように、スクラバー液にアルカリ性を示す物質を添加する方法も有用であり、これによって、固体が系内の壁面等に付着するのを抑制できる。50重量%以上では、固体が系内の壁面等に付着する量が多くなり好ましくない場合が多い。ここで、目開き1μmのフィルターとは、補集物を球体と仮定した場合に、直径1μmのものを98%捕集することができるフィルターを意味する。
【0118】
なお、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分とは、実質的に水に不溶である成分を意味し、炭酸ジエステル、芳香族ジヒドロキシ化合物、分子量1000以下のオリゴカーボネートを含む場合が多い。なかんずく炭酸ジエステルを含む場合が多い。本願発明に係る検討では、具体的には、15℃の水に対する溶解度が1重量%未満であるものを水に不溶な成分とした。
【0119】
上記のスクラバー液で捕集された脱揮物は厳密に言えば、脱揮処理で発生した脱揮物のうちでスクラバー液で捕集されたものを意味する。しかし、本願発明の検討範囲内では、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分に限って言えば、その量は脱揮処理で発生した脱揮物中の水に不溶な成分の量とほとんど差がないことが判明した。このため、本願発明の検討に際しては、脱揮処理前後の脱揮処理対象物(ポリカーボネート)中の成分量の比較(マスバランス)から、脱揮処理で発生した脱揮物中の水に不溶な成分の量を推算し、これをスクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の量とした。
【0120】
スクラバー捕集液を目開き1μmのフィルターでろ過することが、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の量を追跡するのに有用であることが判明した。観察によれば、このろ過で不溶な成分の大半がろ過でき、また、この量が脱揮処理で発生した脱揮物中の水に不溶な成分の量に対して一定範囲を超えなければ、固体が系内の壁面等に付着するのを抑制できることが見出された。
【0121】
具体的に、「スクラバー捕集液を目開き1μmのフィルターでろ過した場合に、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の捕集される割合が、50重量%未満である」ことは、一定時間内に目開き1μmのフィルターでろ過した場合のろ過残量の、当該一定時間内における上記マスバランスの差(すなわち、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の量)に対する割合が50重量%未満であることを意味する。
【0122】
本願発明において、相間移動触媒および界面活性剤は必要に応じ添加することができ、一方または両方を使用することができる。
【0123】
相間移動触媒および界面活性剤は、水に不溶な脱揮捕集物とアルカリ性を示す物質との間の反応促進に寄与している物と推察される。
【0124】
本願発明に使用する相間移動触媒は特に制限はなく、テトラアルキルアンモニウム塩類、テトラアルキルホスホニウム塩類、クラウンエーテル類が使用できる。
【0125】
このようなクラウンエーテル類としては例えば、1,4,7,10−テトラオキサシクロドデカン(12−クラウン−4)、1,4,7,10,13−ペンタオキサシクロペンタデカン(15−クラウン−5)、1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(18−クラウン−6)など、テトラアルキルアンモニウム塩類、テトラアルキルホスホニウム塩類としては例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、テトラメチルアンモニウムブロマイド(Me4NBr)、テトラエチルアンモニウムブロマイド(Et4NBr)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(Bu4NBr)、テトラメチルアンモニウムクロライド(Me4NCl)、テトラエチルアンモニウムクロライド(Et4NCl)、テトラブチルアンモニウムクロライド(Bu4NCl)、テトラメチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート[Me4N(HSO4)]、テトラエチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート[Et4N(HSO4)]、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート[Bu4N(HSO4)]、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド[CH3(CH2)15N(CH3)3Br]、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド「CH3N[CH3(CH2)7]3Cl」、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド(Me4POH)、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド(Et4POH)、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(Bu4POH)、テトラメチルホスホニウムブロマイド(Me4PBr)、テトラエチルホスホニウムブロマイド(Et4PBr)、テトラブチルホスホニウムブロマイド(Bu4PBr)、テトラメチルホスホニウムクロライド(Me4PCl)、テトラエチルホスホニウムクロライド(Et4PCl)、テトラブチルホスホニウムクロライド(Bu4PCl)、などが挙げられるが、アルカリ性を示す物質として水酸化ナトリウムを使用した場合、18−クラウン−6が最も好ましい。
【0126】
本願発明において、これらの相間移動触媒の濃度は、スクラバー液中の濃度で表わした場合、100重量ppm以下が好ましく、スクラバー循環系から排出される余剰のスクラバー液の処理を考えた場合、10重量ppm以下とするのが更に好ましい。
【0127】
本願発明において、相間移動触媒を添加する方法に特に制限はないが、例えば、抜き出されたスクラバー液に含まれる相間移動触媒に相当する量を、ポット7に間歇的または連続的に添加することが好ましく実施される。
【0128】
本願発明に使用する界面活性剤は特に制限はなくノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が使用できるが、使用量と効果の観点から少量で大きな閉塞防止効果をもたらすノニオン系界面活性剤が好ましく使用される。
【0129】
このようなノニオン系界面活性剤としては例えば、N,N’,N’トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−アルキル(C14〜18)1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−ポリオキシエチレン−N−アルキル(C14〜18)−1,3−ジアミノプロパン、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸メチル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート等が挙げられ、就中、アルキルジアミンタイプのN,N’,N’トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−アルキル(C14〜18)1,3−ジアミノプロパンが最も好ましい。なお、本願明細書では、(C14〜18)とはアルキル基の炭素数が14〜18であることを意味する。
【0130】
本願発明において、これらの界面活性剤の濃度は、スクラバー液中の濃度で表わした場合、1重量ppm以上が好ましく、10重量ppm以上とするのが更に好ましい。また、使用する界面活性剤の上限濃度は特に制限はないが、スクラバー循環系から排出される余剰のスクラバー液の処理を考えた場合、1重量%以下が好ましく、1000重量ppm以下が更に好ましい。
【0131】
本願発明において、界面活性剤を添加する方法に特に制限はないが、例えば、抜き出されたスクラバー液に含まれる界面活性剤に相当する量を、ポット7に間歇的または連続的に添加することが好ましく実施される。
【0132】
また本願発明においては、本願発明の目的を損なわない範囲でポリカーボネートにその他の添加剤を添加することができる。
【0133】
このような添加剤としては、例えば、加工安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、金属石鹸類、造核剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃剤、離型剤、防黴剤、着色剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤、エポキシ化合物をあげることができる。
【0134】
これらの内でも耐熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤等が特に一般的に使用され、これらは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0135】
本願発明に用いられる加工安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤等の目的のためには、例えば、燐化合物、フェノール系安定剤、有機チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等を挙げることができる。
【0136】
光安定剤、紫外線吸収剤等としては、一般的な紫外線吸収剤が用いられ、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0137】
離型剤としては一般的に知られた離型剤を用いることができ、例えば、パラフィン類などの炭化水素系離型剤、ステアリン酸等の脂肪酸系離型剤、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド系離型剤、ステアリルアルコール、ペンタエリスリトール等のアルコール系離型剤、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸エステル系離型剤、シリコーンオイル等のシリコーン系離型剤等を挙げることができる。
【0138】
着色剤としては有機系や無機系の顔料や染料を使用することができる。
【0139】
金属不活性化剤としては、例えばN、N’−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等が、金属石鹸類としては例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ニッケル等が挙げられる。
【0140】
帯電防止剤としては、例えば(β−ラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート等の第4級アンモニウム塩系、アルキルホスフェート系化合物が挙げられる。
【0141】
造核剤としては、例えばジ(4−t−ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム、ジベンジリデンソルビトール、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム塩等のソルビトール系、リン酸塩系化合物が挙げられる。
【0142】
滑剤としては、例えばエルカ酸アミド、ステアリン酸モノグリセリド等が、難燃剤としては、例えばトリス(2−クロロエチル)ホスフェートなどの含ハロゲンリン酸エステル類、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモフェニルオキサイドなどのハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウムなどの金属無機化合物類、これらの混合物等が挙げられる。
【0143】
これらの添加剤は、直接に、または適当な溶剤またはポリマーに溶解または分散させて、あるいはマスターペレットとして、溶融状態のポリカーボネートに添加、混練する。このような操作を実施するのに用いられる設備に特に制限は無いが、例えば2軸押出機等が好ましく、添加剤を溶液の形で供給する場合はプランジャーポンプ等の定量ポンプが用いられ、添加剤をマスターポリマーの形で供給する場合はサイドフィーダー等が一般に使用される。添加剤を溶剤に溶解または分散させた場合はベント付きの2軸押出機が特に好ましく使用される。
【0144】
【実施例】
以下に、本願発明の実施例を示す。なお、この実施例は本願発明を例示するためのものであり、本願発明はこの実施例によって制限されるものではない。
【0145】
用語の定義および分析は、下記の通りである。
【0146】
(脱揮捕集物総量)
スクラバーで捕集された液を含まず、一定濃度のアルカリ性を示す物質,相間移動触媒,界面活性剤を含む水を連続的に図1の配管19に供給し、スクラバー3で捕集された液を循環せず、そのまま採取してその中にある脱揮捕集物総量を測定した。
【0147】
具体的には、採取した固体を含む液について、ジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル、そのエステル交換反応で生じるモノヒドロキシ化合物、1分子のジヒドロキシ化合物と1分子の炭酸ジエステルが反応したオリゴマー(1量体)、1分子のジヒドロキシ化合物と2分子の炭酸ジエステルが反応したオリゴマー(1.5量体)の量をHPLCで分析して重量を求め、この総量を本願発明に関する脱揮捕集物総量とした。
【0148】
なお、HPLCのピーク分析では、これらの物質の総量は全ピーク量の98%以上を占めており、上記の量を総量とすることが実際上問題ないことが確認されている。
【0149】
スクラバーで捕集された液を含んでいる場合にも、同程度の量が捕集されることを別途実験により確認した。
【0150】
(脱揮処理で発生した脱揮物中の水に不溶な成分の量)
脱揮処理前後の脱揮処理対象物(ポリカーボネート)中の成分分析を行い、脱揮物中の水に不溶な成分として、以下の実施例では、ジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル、1分子のジヒドロキシ化合物と1分子の炭酸ジエステルが反応したオリゴマー(1量体)、1分子のジヒドロキシ化合物と2分子の炭酸ジエステルが反応したオリゴマー(1.5量体)が存在することを確認した。
【0151】
そこで、脱揮処理前後の脱揮処理対象物(ポリカーボネート)中のジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル、1分子のジヒドロキシ化合物と1分子の炭酸ジエステルが反応したオリゴマー(1量体)、1分子のジヒドロキシ化合物と2分子の炭酸ジエステルが反応したオリゴマー(1.5量体)の分析値から、マスバランスにより、脱揮処理で発生した脱揮物中の水に不溶な成分の量を求めた。
【0152】
[実施例1]
d 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1モルに対し、ジフェニルカーボネートを1.01モルの割合で混合・溶融し、該混合液に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1モルに対し1×10-6当量のビスフェノールAジナトリウム塩と1×10-4当量のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドとを連続的に加え、生成したフェノールを除去して反応を行って得られた[η]=0.35のポリマーを図1に示す設備を使用して後処理を実施した。
【0153】
重合で得られたポリマーを33kg/hrで、マテリアルシール部を挟んで二つづつの混練部とベント部とからなる4段の処理ゾーンを備えたベント式2軸ルーダー8に供給した。
【0154】
次いで、ベント式2軸ルーダー8においてドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の0.01重量%水溶液を0.33kg/hrの供給速度で、添加ノズル9aから添加混錬し、ベント圧15mmHg(2.0kPa)で真空吸引した後、更に純水を0.33kg/hrの供給速度で、添加ノズル9b,9cおよび9dから3段階で添加混錬し、ベント圧15mmHg(2.0kPa)で真空吸引した。ここで、ベント圧は、ベント式2軸ルーダーの近傍のベント配管2から測定した。
【0155】
本願発明に係るスクラバーの運転を開始する際には、スクラバーに予めアルカリ性を示す物質として水酸化ナトリウムを1重量%の濃度で、界面活性剤としてN,N’,N’トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−アルキル(C14〜18)1,3−ジアミノプロパンを75重量ppmの濃度で純水に混合した液温10℃のスクラバー液を使用し、135kg/hr/スプレーノズルの量で2個のスプレーノズルから供給した。なお、図3に示す中実コーンのスプレーノズルを用いた。
【0156】
使用したスクラバー液と固体状ジフェニルカーボネートとの室温における接触角は運転開始当初は15゜であり、運転中は15゜以下に保たれた。
【0157】
なお、界面活性剤については、本願発明者等の検討の結果、界面活性剤の働きにより水に不溶な脱揮捕集物の主成分である反応に使用した炭酸ジエステル化合物とアルカリ性を示す物質を含むスクラバー液との間の界面張力が低下し、炭酸ジエステル化合物とアルカリ性を示す物質を含むスクラバー液との間の親和性が向上することが判明しており、これらの事柄から、水に不溶な脱揮捕集物とアルカリ性を示す物質との間の反応が促進されたものと考えられている。
【0158】
実際に、本願発明の目的とする水に不溶な脱揮捕集物の可溶化と固体状炭酸ジエステルとアルカリ性を示す物質を含むスクラバー液との間の接触角は良好な相関を示し、本願発明に使用する界面活性剤の種類や濃度の選定には上記接触角が45゜以下、好ましくは15゜以下となるようにすることが有効な指標として使用できることが判明している。
【0159】
なお接触角はJIS R 3257:1999基板ガラス表面の濡れ性試験方法に記載される静滴法に準じて測定したものである。
【0160】
ベント配管2は、スチームトレースを施すことにより加温を行った。また、スクラバー入り口ノズル5については低沸点物の局部冷却による析出を防ぐため、スチームジャケットを施した。
【0161】
次いでスクラバーから排出されるスクラバー捕集液は配管11により接続されたポット7に落下供給され、撹拌機による完全混合を行った後、ポット7とポンプ13とを接続する配管12を通し、ポンプ13によって連続的に271.3kg/hrの速度で抜出した。
【0162】
2軸ルーダーから発生した脱揮助剤である水の捕集による、スクラバー液中の界面活性剤の濃度低下を防止するため、ポット7には、界面活性剤N,N’,N’トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−アルキル(C14〜18)1,3−ジアミノプロパンを4時間ごとに0.4gずつ添加した。また、消費された水酸化ナトリウムを補うため、水酸化ナトリウムを1時間毎に13.2gずつ添加した。
【0163】
更に、ポンプにより抜出されたスクラバー捕集液を、目開き1μmのカートリッジ式フィルター14に供給し濾過処理を行った後、伝熱面積0.35m3のプレート式熱交換器18に供給し、スクラバーに供給されるスクラバー液の液温が10℃になるように冷却し、スクラバーに循環使用した。
【0164】
カートリッジフィルターにより濾過処理された固体状の脱揮物は、カートリッジフィルター切り替えにより回収し、脱揮助剤である水の増加分については、連続的に排出配管17から1.32kg/hrの速度で払い出した。
【0165】
本実施例では、60日間問題なく連続運転が可能であり、カートリッジフィルターの切り替え頻度は20日間に1回であった。
【0166】
カートリッジ式フィルターにより捕集された物質の総量は、脱揮捕集物総量に対して2重量%であった。また、スクラバー捕集液を目開き1μmのフィルターでろ過した場合に、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の捕集される割合としては、13重量%であった。
【0167】
60日間の連続運転後、本装置の解体点検を行ったところ、装置内部での付着物は全く見られず、円滑な連続運転が行えることが確認できた。
【0168】
なお、上記処理の間スクラバー液のpHは13〜14の間に保たれていた。
【0169】
また、上記処理の間のスクラバーの内部の圧力は1.95〜2.05kPaに保たれていた。この圧力での水の沸点は17〜18℃である。
【0170】
[実施例2]
相間移動触媒として18−クラウン−6を10重量ppmの濃度になるようスクラバー液に添加した以外は実施例1と同様にして運転を行った結果、カートリッジフィルターの切り替え頻度は30日に1回であり、捕集された物質の総量は脱揮捕集物総量に対して1重量%であった以外は実施例1と同様の良好な結果を得た。
【0171】
また、スクラバー捕集液を目開き1μmのフィルターでろ過した場合に、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の捕集される割合としては、6重量%であった。
【0172】
なお、上記処理の間スクラバー液のpHは13〜14の間に保たれていた。
【0173】
[実施例3]
界面活性剤としてN,N’,N’トリス(2−ヒドロキシエチル)−N−アルキル(C14〜18)1,3−ジアミノプロパンを使用しなかった以外は実施例1と同様にして運転を行った結果、カートリッジフィルターの切り替え頻度は19日に1回であり、捕集された物質の総量は脱揮捕集物総量に対して3重量%であった。
【0174】
また、スクラバー捕集液を目開き1μmのフィルターでろ過した場合に、スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の捕集される割合としては、19重量%であった。
【0175】
60日間の連続運転後、本装置の解体点検を行ったところ、装置内部での付着物は実施例1と比較して若干多いものの問題となる程度ではなく、円滑な連続運転が行えることが確認できた。
【0176】
なお、上記処理の間スクラバー液のpHは13〜14の間に保たれていた。
【0177】
[比較例1]
実施例3に用いたスクラバー液中にアルカリ性を示す物質を全く添加しない以外は実施例3と同様にして、スクラバーで運転を行なった。
【0178】
その結果、約40日間の連続運転で、スクラバー液循環ポンプ13の吐出圧に変動が生じ、ポンプのサクションラインに閉塞の兆候が認められた。このため運転を打ち切り設備の点検を実施した結果、ポンプサクション配管やポット7や配管11の内面に5〜20mmの厚みに固体が付着しており、さらに直径が20mm程度の塊状の固形物も見られた。
【0179】
なお、本40日間の運転中、カートリッジフィルターは4日に一度の頻度で切り替える必要があり、カートリッジ式フィルターより捕集した固形物は、脱揮捕集物総量に対して84重量%相当量であった。
【0180】
なお、捕集物を分析した結果、原料として使用した炭酸ジエステルが87.6重量%、芳香族ジヒドロキシ化合物が0.6重量%、分子量1000以下のオリゴカーボネートが11.8重量%含まれていることが判明した。
【0181】
【発明の効果】
本願発明に依れば、捕集物をアルカリ性を示す物質を含むスクラバー液で分解し、可溶化させることにより、スクラバー液循環系の閉塞が抑制、防止され、スクラバーの長期連続運転性が改善される。
【0182】
またフィルター等で回収される揮発物総量が低減され、この結果長期間の連続運転が可能となり、従来必要であった予備機への切り替え・洗浄作業が不要になるか大幅に低減される。
【0183】
これにより運転に要する労力やエネルギーが低減でき、運転コストが削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る製造装置の一例を示す。
【図2】本願発明に係るスクラバーの一例を示す。
【図3】内面が液密である円錐スプレー形状(中実円錐スプレー)を示す。
【図4】内面が中空である円錐スプレー形状(中空円錐スプレー)を示す。
【符号の説明】
1 真空発生器
2 ベント配管
3 スクラバー
4 スクラバー出口ノズル
5 スクラバー入り口ノズル
6 スクラバー排出液ノズル
7 ポット
8 ベント式2軸ルーダー
9a−9d 安定剤や脱揮助剤の添加ノズル
10 スプレーノズル
11 配管
12 ポット7とポンプ13とを接続する配管
13 ポンプ
14 固液分離装置
15 ポンプ13と固液分離装置14とを接続する配管
16 固液分離装置14からスクラバー3までを接続する配管
17 排出配管
18 スクラバー液冷却器
19 スクラバー液冷却器とスクラバーとを接続する配管
Claims (22)
- 芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを、触媒の存在/非存在下にエステル交換させて生成したポリカーボネートについて脱揮処理を行い、炭酸ジエステル、芳香族ジヒドロキシ化合物、分子量1000以下のオリゴカーボネートから選ばれた少なくとも1種の低分子量物の含有量が低減したポリカーボネートを製造する方法において、
脱揮処理で発生した脱揮物をスクラバーに導き、当該スクラバーの操作圧力における水の沸点以下の温度の、水を主体としアルカリ性を示す物質を含むスクラバー液と接触させて、当該脱揮物をスクラバー捕集液の一部として凝縮、捕集することを特徴とするポリカーボネートの製造方法。 - 前記スクラバー捕集液の少なくとも一部を前記スクラバー液の一部として使用することを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記脱揮処理をベント式2軸ルーダーを用い、水を添加して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記水の添加量が前記ポリカーボネートに対し0.1〜5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
- 前記スクラバー液のpHが11以上であり、スクラバー液に含まれるアルカリ性を示す物質の沸点が、前記スクラバーの操作圧力において、水の沸点より高いことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記アルカリ性を示す物質がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 前記アルカリ性を示す物質がアルキルアミン類、アルキルジアミン類、芳香族アミン類、ヘテロ環アミン類から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 前記スクラバー液に含まれるアルカリ性を示す物質の濃度が10重量%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 前記スクラバー液に含まれるアルカリ性を示す物質の濃度が0.1〜5重量%であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
- 前記スクラバー捕集液中に残存する水に不溶な成分を固液分離することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記スクラバー捕集液を目開き1μmのフィルターでろ過した場合に、前記スクラバー液で捕集された脱揮物中の水に不溶な成分の捕集される割合が、50重量%未満であるように、前記スクラバー液に前記アルカリ性を示す物質を添加することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記水に不溶な成分が炭酸ジエステルを含むことを特徴とする請求項10または11に記載のポリカーボネートの製造方法。
- 前記スクラバー液に更に相間移動触媒を含ませることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
- 前記相間移動触媒がテトラアルキルアンモニウム塩類、テトラアルキルホスホニウム塩類、クラウンエーテル類から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
- 前記スクラバー液の相間移動触媒含有量が100重量ppm以下であることを特徴とする請求項13または14に記載の製造方法。
- 前記スクラバー液の相間移動触媒含有量が10重量ppm以下であることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
- 前記スクラバー液に更に界面活性剤を含ませることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
- 前記界面活性剤がノニオン系界面活性剤から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
- 前記スクラバー液の界面活性剤含有量が1重量ppm以上1重量%以下であることを特徴とする請求項17または18に記載の製造方法。
- 前記スクラバー液の界面活性剤含有量が10重量ppm以上100重量ppm以下であることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
- 前記スクラバーがスプレー式スクラバーであることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法。
- 前記スクラバー捕集液から水に不溶な成分を分離する工程を遠心分離および/またはフィルターを用いた濾過で実施することを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001273408A JP5122046B2 (ja) | 2001-09-10 | 2001-09-10 | ポリカーボネートの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001273408A JP5122046B2 (ja) | 2001-09-10 | 2001-09-10 | ポリカーボネートの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003082086A JP2003082086A (ja) | 2003-03-19 |
JP5122046B2 true JP5122046B2 (ja) | 2013-01-16 |
Family
ID=19098629
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001273408A Expired - Fee Related JP5122046B2 (ja) | 2001-09-10 | 2001-09-10 | ポリカーボネートの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5122046B2 (ja) |
Family Cites Families (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH09169837A (ja) * | 1995-12-19 | 1997-06-30 | Mitsubishi Chem Corp | 芳香族ポリカーボネートの製造方法 |
JP3946845B2 (ja) * | 1997-12-24 | 2007-07-18 | 日本ジーイープラスチックス株式会社 | ビスフェノール類の製造方法およびポリカーボネートの製造方法 |
SG101544A1 (en) * | 1998-04-27 | 2004-01-30 | Teijin Ltd | Carbonic acid diester, aromatic polycarbonate and facilities, and preparation thereof |
JP2000044669A (ja) * | 1998-08-04 | 2000-02-15 | Teijin Ltd | 芳香族ポリカーボネートの製造方法および真空捕集系 |
JP2000319380A (ja) * | 1999-05-10 | 2000-11-21 | Teijin Ltd | ポリカーボネートの製造方法 |
US6252035B1 (en) * | 1999-11-29 | 2001-06-26 | General Electric Company | Salts of chelating agents as polymerization catalysts |
JP4469070B2 (ja) * | 2000-08-21 | 2010-05-26 | 帝人株式会社 | 芳香族ポリカーボネートの製造方法および装置 |
-
2001
- 2001-09-10 JP JP2001273408A patent/JP5122046B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003082086A (ja) | 2003-03-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2000044669A (ja) | 芳香族ポリカーボネートの製造方法および真空捕集系 | |
US5922826A (en) | Process for producing polycarbonate | |
JP2006502278A (ja) | 高分子量の溶融法ポリカーボネートの製造方法及び装置 | |
RU2430935C2 (ru) | Способ получения поликарбонатной смолы | |
JP5241552B2 (ja) | ポリカーボネートおよびジアリールカーボネートの製造方法 | |
KR101608984B1 (ko) | 폴리카르보네이트 제조를 위한 상 계면 방법 | |
JPH06234845A (ja) | 芳香族ポリカーボネートの製造法 | |
US9700840B2 (en) | Method for removing an ester from a vapor mixture | |
US6380345B1 (en) | Process for producing polycarbonates | |
KR100318656B1 (ko) | 방향족폴리카보네이트수지의제조방법 | |
JP4469070B2 (ja) | 芳香族ポリカーボネートの製造方法および装置 | |
JP5122046B2 (ja) | ポリカーボネートの製造方法 | |
JP5303847B2 (ja) | 炭酸ジエステルの精製方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 | |
KR101818727B1 (ko) | 폴리카보네이트 제조 공정에서 필터 정열 | |
JP2008214552A (ja) | 芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットの製造方法、その製造方法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂ペレット及び成形品 | |
JP5464166B2 (ja) | 炭酸ジエステルの精製方法及びポリカーボネート樹脂の製造方法 | |
JP2000319380A (ja) | ポリカーボネートの製造方法 | |
JP2003138001A (ja) | 芳香族ポリカーボネートの製造方法 | |
JP4856317B2 (ja) | 芳香族ポリカーボネートの製造方法 | |
US20040044239A1 (en) | Method for producing polycarbonate | |
JP2000256456A (ja) | ポリカーボネート樹脂の製造方法 | |
JP2003183380A (ja) | 芳香族ポリカーボネートの製造方法 | |
JP4342703B2 (ja) | 芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法 | |
JP6036142B2 (ja) | ポリカーボネート樹脂の製造方法 | |
JPH09235368A (ja) | ポリカーボネートの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080812 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20120126 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20120228 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120416 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20121002 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20121024 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151102 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |